『呪われた炎』 ブルー・オイスター・カルト 「Fire of Unknown Origin」Blue Öyster Cult(81) 吹き荒れるヘヴィ・メタル・サウンドは、巨大なモンスターを起こしてしまった。
A面 1.呪われた炎- Fire of Unknown Origin お前に焦がれて- Burnin' for You 3.恐怖の薬物戦争- Veteran of the Psychic Wars 4.たった一人の生存者- Sole Survivor 5.ヘヴィ・メタル(黒と銀)- Heavy Metal: the Black and Silver B面 1.復讐のメッセージ- Vengeance (The Pact) 2.アフター・ダーク 3.ジョーン・クロフォード- Joan Crawford 4.ドント・ターン・ユア・バック- Don't Turn Your Backフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドWelcome To The Pleasuredome」の1曲目 “The World Is My Oyster” を、“世界は私の牡蠣ってどういうこと!?” と思っていた当時の私。後にそれは “世界は自分のもの” だという意味であり、シェイクピア(William Shakespeare)の「ウィンザーの陽気な女房たち(The Merry Wives of Windsor)」という作品に出てくる台詞だと知った。 さて、今回取り上げるのはニューヨーク・ヘヴィメタルの創始者ともいわれるブルー・オイスター・カルト(Blue Öyster Cult。以下BÖC)が81年にリリースした8thアルバム「呪われた炎(Fire of Unknown Origin)」についてで、冒頭のFGTHやシェイクスピアの話は1ミリも関係ない。
BÖCの結成は67年で、サンディ・パールマン(Sandy Pearlman)が大学生の時に「イマジノス(Imaginos)」という一連の詩を書き、ロックバンドのミュージシャンを厳選してイマジノスの詩に基づいた歌詞を演奏させ、自らはマネージメントを担当してバンドを売り込んだ。当初のバンド名はソフト・ホワイト・アンダーベリー(Soft White Underbelly)。この言葉は英首相ウィンストン・チャーチル(Sir Winston Churchill)が第二次世界大戦のスピーチでイタリアを “the soft underbelly of the Axis.” と表現したことに由来しているそうな。その後、パールマンはバンド名をいくつか変え、現在のブルー・オイスター・カルトに落ち着いたのは70年のことらしい。 ちなみにブルー・オイスター・カルトとは、「イマジノス」で語られる「地球の歴史を監視するエイリアン組織(group of aliens who had assembled secretly to guide Earth's history )」の名称だそうで、英国の音楽雑誌のインタビューでは "Cully's Stout Beer" のアナグラムであるとも述べている。 …と、ここまでの説明でもお分かりのように――いや、私の書き方が悪いせいでパールマンに踊らされているだけのバンドのようだが決してそんなことはなく、米国のHR/HMバンドというのは能天気野郎ばかりだというのに(すごい偏見!)、BÖCは皆さん大卒のインテリバンドなのである。
「呪われた炎」は米国で24位、英国でも29位を記録するなどBÖCのスタジオアルバムの中では最もヒットした作品で、シングルカットされた “お前に焦がれて(Burnin' for You)” はビルボードチャートで40位まで上がった。 ちなみに “お前に焦がれて” と “ドント・ターン・ユア・バック(Don't Turn Your Back)” はバック・ダーマがヴォーカルをとっており、“恐怖の薬物戦争(Veteran of the Psychic Wars)” の作詞を手掛けているのは、作家のマイケル・ムアコック(Michael Moorcock)なのであーる…って彼の作品を読んだことはないけど。 個人的にはBÖCだと初期のアルバムの方が音楽的にも邦題的にも好みではあるが、ジャケットの色合いに惹かれて今回は8thアルバムを取り上げた次第。これ!というお勧め曲は特にないけど、全体的によくまとまっていてBÖCを知らない方でもすんなり入りやすいアルバムだと思う。