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橋の上に
樂書をして遊ぶ子ら
春をのせたる
馬車もくるらし
三好達治の短歌です。(1933年)
「楽(原本では旧字)書」は「落書き」。のびやかに遊ぶ子どもたちに春のイメージが重なり、明るい日差しと温かなまなざしを感じる歌です。
「春をのせた馬車が来る」という表現は、近づく春の予感にどきどきします。
「春を乗せた馬車」と言えば 横光利一『春は馬車に乗って』が有名です。
死を迎えようとする妻に向かい合う夫を描いた短編です。肺の病勢が進む妻の傍を離れがたくなり、執筆もできず疲弊する夫。
冬から次第に春に向かうある日、知人からスイートピーの花束が届きます。岬を廻って。
「この花は馬車に乗って、海の岸を真っ先に春を撒き撒きやってきたのさ。」
夫は言います。妻は花束に顔をうずめて恍惚として眼を閉じました。
この後妻の死までの記述はありません。『春は馬車に乗って』は著者、横光利一自身の体験に基づく小説です。
友人の妹キミが作品中の「妻」です。付き合いを周囲に反対され、キミの親の承諾がなかったので婚姻届けも出せませんでした。(当時キミが18歳だったため)
結核患者だったキミは20歳で亡くなり、死後やっと婚姻届けを出すことができました。この作品は、キミへの鎮魂歌、挽歌だと言われます。

☆廻…カイ、エ、まわ(す)、まわ(る)、めぐ(る)、めぐ(らす)
…めぐり歩く、ぐるっとまわる。身をかわす。→現代では「回」に書き換えられることが多い。
☆撒…サン、サツ、ま(く)
…一面にまき散らす。手元から放つ。
☆惚…コツ、ほ(れる)、ほう(ける)、ぼ(ける)、とぼ(ける)
…ぼんやりととらえがたい。心を奪われるさま。うっとりする。(日本で)ほれる=たまらなく好きになる。
☆挽…バン、ひ(く)
…本字は車編+免(ベン)で、引っ張る、引き戻す(立て直す)の意味→棺を乗せた車を引いたことから死者を悼む意味にもなった。
挽
歌…棺を引くときに歌った歌から、死者を悼む歌。
挽
回…失ったものを取り戻す。回復する。
『三好達治全集 第一巻』筑摩書房 より『短歌集 日まはり』
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