320life

PR

プロフィール

ノマ@320life

ノマ@320life

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

2021.08.07
XML
テーマ: 読書(8289)
カテゴリ: 【読書】未分類

本のタイトル・作者



老後レス社会 死ぬまで働かないと生活できない時代 (祥伝社新書) [ 朝日新聞特別取材班 ]

本の目次・あらすじ


序章 消える「老後」
1章 高齢警備員ー過酷な現場でも「死ぬまで働く」理由
2章 会社の妖精さんー働かないおじさんたち
3章 ロスジェネたちの受難ー私たちは、のたれ死に?
4章 定年前転職の決断ー妖精さんとは呼ばせない
5章 死ぬまで働くー前を向いた高齢者たち
6章 老後レス社会を生きるー定年延長、再雇用、そして年金。近未来へのヒント

引用


「あなたはどういう働き方がしたいのか、が問われています。いつまで、どのように働き、いくら(給料が)欲しいのかを、自分なりに考えることです。会社に残ることも選択肢だし、賃金は下がるけどやりたい仕事に転職することも選択肢でしょう。自分で自分の将来を決断する勇気が必要だと思います」

立教大学教授(人材開発論)中原淳


感想


2021年読書:153冊目
おすすめ度:★★★


宝くじが当たったらすぐに辞めるのに。

毎日、毎朝、そんなことを思う。

そもそも私、働くことに向いていないと思う。
それに、今の会社に合ってない。ミスマッチ半端ない。

電車に揺られながら、考える。

転職しようかな。
でも、じゃあ、いったい私に何が出来るだろう?
なんにも。
既卒で何とかもぐりこんだ会社で安定した職がある―――有難いことじゃないか。
子どももまだ小さい。これからお金がかかるばかり。
第一、夫とずっと一緒かもわからない。


会社の最寄り駅に着く。
頭をもたげた感情に蓋をして、1日をやり過ごす。
職場に着けば、げんなりするほどの仕事が待っている。
私は何をしているんだろう、と立ち止まる暇もないほど。

そして私は定年までこうして働くんだろうか?65だか70の定年まで?

給料は、退職金は、きっと今のシニアほどよくないだろう。
たとえ働けたとして―――私は最後に、思わないだろうか。
定年を迎え、死ぬまでの時間を考えた時。
何十年後かに、きっと。

私は何のために生まれて、生きて、死んでいくんだろうか。

お金のために、働く。生きていくために、暮らしていくために。
稼いで、使って、貯めて。
時折、ハムスターが回し車を回すように、どこへも行けない場所で空回りし続けているような気がする。
カラカラカラ、音がする。
摩尼車を回す。祈りが回る。コンビニエントな功徳。
何もしなかったことを、最後に私は懺悔するだろう。
自分に正直に、自分に与えられた人生をよく生きなかったことを。

この世にユートピアはなく、すばらしい仕事もない。
けれどどこかで、考えている。

「これはあなたにしかできない仕事なんだ!」

そんなふうに、何かができることを。
求められることを、与えられることを。
待っていてもきっと、永遠に変わらない日々の中で。

この本は、書きぶりはイマイチなのだけど、取材されている方々の言葉が含蓄に富んでいて、読んでいて色々と考えさせられた。

働くこと、って何なんだろうか。
死ぬまで働き続けなくてはいけない、と言うとものすごくネガティブに聞こえるけど、違うんじゃないかと思った。
労働、苦役だと思えばそれは、神が人に与えた罰のようであるだろう。
けれど、働くことは、生きることなんだ。

こんなふうに世界が発展する以前、働かなければ生きていくことは出来なかった。
社会保障が脆弱な世界では、働けないことは貧困と飢餓に苦しむことを意味する。
長時間労働、短い寿命。
でも今は―――種々の問題を多く孕んでいるし制度は崩壊を迎えつつあるけれど―――生活の時間の百パーセントを労働に捧げなくてもいい。

働かざるを得ない、としても、働くことを楽しめないのだろうか?
そこに何がしかの意味を見いだせないだろうか?

「高齢者施設で働く高齢者」78歳。亡くなる寸前まで働いていた。
彼は、人の役に立つことを心底喜んでいた。

子どもを産み、社会から離れて、育休から復帰して思った。
組織に帰属し、その一員として仕事をするのって、楽しい。
人間は、人間が好きなんだな。私のような人間嫌いであっても。

本の中で、集落で働くお年寄りたちは、「働くことと」と「生きること」の境目がない、と言う。
地域おこし協力隊に参加した西村さんは思う。
これは、働き方改革ではなく、生き方改革なのではないか?

石井あらた 『「山奥ニート」やってます。』(2021.07.01「 2021年6月に読んだ本まとめ/これから読みたい本 」)を読んだときも思った。
もっと別の世界があるんじゃないか、もっと別の働き方があるんじゃないか。
私たちは、もっと、違う生き方ができるんじゃないか?
山奥に行かなくても。

子どもを抱えて働く。病気を持ちながら働く。介護をしながら働く。年を取って働く。
働き方は、多様性が必要な局面を迎えている。
誰しもが、定時で8時間働けるわけじゃないし、それを望んでいるわけでもない。
もっと柔軟な働き方を選べるようにならないといけない。
「働かなかった分給料が削られる」ではなく、「働いた分給料が得られる」。

2021.07.13「 日本人が知らない世界標準の働き方 [ 谷本真由美 ] 」で、ライブのセッションのように、その時々のプロジェクトに寄せ集められる働き方が広がっている、とあった。
でもそれって、「必要とされない」人はどうなるんだろう。
自分がそうなったら、どうするの?

エッセンシャルワーカーの仕事は、なくならない。
この本の中では高齢警備員が登場する。
安全のために日常の暮らしを支える仕事の多くが、低賃金に置かれている。
コロナで如実に表れた、その不平等。

本の中に登場する人たちは、楽しい、と言う。
働くことは、必要とされることは、お金を稼ぐことは。
いいな。

働くことを、楽しみたい。
一日のうちの長い時間を―――私は本当はこんなに働きたくないけど―――過ごすのだから。
嫌なこともある。でも、できることが、知識がどんどん増えていく。
裁量権が増える。やりたい仕事が、少し、出来るようになる。
それを純粋に喜びたい。

こんなことして、何になるのかな。
でも私がしなければ、その仕事はそこにあったのだ。
社会の隅っこで、世界の端っこで、今日も私は世界のねじを回した。

電車に揺られて家に帰る。その時に思う。

みんな、ねじを巻いた。
今日も世界がちゃんと動くように。
明日も世界がきちんと動くように。
誰も褒めてくれない、誰の名前も刻まれていない。
でも私たちは、力を合わせて今日を繋げて、明日に送り出した。
世界中で、誰かが自分の仕事をした。

カラカラカラ、摩尼車が回る。
世界は誰かの仕事の上に成り立っている。
働くことは、それ自体が功徳であるように思える。
だから、イージーでもいいだろう。それを回しても。

死ぬときに、後悔するだろうか?
私は何もしませんでした、何も成し遂げなかった。
神様は首を傾げて言うんだろうか。

「なぜ?あなたは毎日、世界のネジを回してくれていたのに」




にほんブログ村 にほんブログ村へ







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021.08.07 00:00:12
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: