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小説すばる 2020年12月号浮雲心霊奇譚 第二十五回 彼岸の口裂け女 神永学浮雲は己の運命と対峙するために道誉を追って京都に向かう。土方が浮雲の旅の道連れとなり、川﨑宿の六郷の渡しに至る。そこで武士の才谷梅太郎と、船頭から怪異を聞く。夜、舟で川を渡る武士が姿を消し、翌日骸で発見されたのは河童の仕業だと。(小説すばるより転載)河童と口裂け女が登場する怪異な川﨑宿の六郷での顛末、今回が最終回でした。色々と引っ張ってきましたが、解決編は例によってあっさり、テキパキと進みました。事件の裏が明らかになりますが、その裏の裏にまた人物がいたんですね。これには驚かされました。この人が黒幕だったとは・・・。太陽のような才谷梅次郎とは対照的に自分の闇を自覚した土方。土方はどのようになっていくのか、続編が楽しみですね。
2020年12月23日
小説すばる 2020年12月号空を駆ける 第十五回 梶よう子天から授けられた命をこの世に送り出す。病いを抱える身でありながら、カシは怯まなかった。(小説すばるより転載)女性の地位が低いことを話題にする巌本夫妻と知人たち。話を読んでいると、まるで現在の話のようで、暗々たる気持ちになります。結局、日本は明治の頃と全然変わっていない、ということですよね・・・。カシが将来の子供たちのために翻訳した小説。配慮を重ねた翻訳本は、カシの渾身の出来だったでしょうね。この当時、外国文学を翻訳出来る人物は少なかったでしょうから、とても貴重な本だったと想像出来ます。
2020年12月22日
小説すばる 2020年12月号リバー 第十六回 奥田英朗娘を殺された松岡芳邦は犯人逮捕に異様な執着を示す。民間人ながら聞き込みをする松岡芳邦は、耳寄りな情報を得る。一方、池田の行方を追う警察OBの滝本誠司は、独自の捜査でとある場所に向かう。そこで見たものは・・・。色々情報が小出しに出てきますが、まだ犯人を決定するほどのものではありません。うーん、犯人は誰なんでしょうね?
2020年12月21日
小説すばる 2020年12月号ブレイクニュース 第八回 薬丸岳ある男性の自殺の真相を調べていた真柄は四年前にも同じ職場で自殺があったことを知り・・・。(小説すばるより転載)週刊現実の真柄新次郎は京北医科大学病院の医師・新藤良晴の自殺について調べていた。京北医科大学病院では、四年前にも和田という消化器外科の医師が自殺していた。関係者に話を聞きに行くが、全員口が重く、思うように取材出来ない。一方、北川詩織はブレイクニュースの野依美鈴から、京北医科大学病院の医療過誤のインタビューを依頼される。京北医科大学病院の不穏な動きをブレイクニュースで報道するが、それをみて動揺した医師がいた・・・。大学病院でも色々繋がりがあるようですが、思わぬ人物も繋がっていて驚きます。全てが一つになりそうで、次回以降が物凄く楽しみです。重たいテーマですが、早く続きが読みたいですね。
2020年12月17日
小説すばる 2020年12月号布武の果て 第九回 上田秀人南蛮にもっと船を出せと求めよ。交易の利に走る信長からの命令に今井彦八郎は戸惑う。(小説すばるより転載)長篠の戦いで武田勝頼を撃破した織田信長は越前の一向一揆衆を根絶やしにして、越前を平定する。一向一揆衆で、残るは石山本願寺のみ。しかし石山本願寺はまだまだ強力です。長篠の戦いで鉄砲の重要性が益々増してきて、鉄砲の奪い合いになってきました。織田信長の支配領域が大分増えてきましたが、時代は戦国時代、まだ裏切る者が続々と出てきます。まったく気が抜けないですね。高みの見物の堺の商人たちがあれこれ想像するのが面白いですが、何時堺に火の粉が飛んでくるかわからないので、本人たちは必死だったでしょうね。
2020年12月16日
小説すばる 2020年12月号黄金の刻 第六回 楡周平いよいよナナコ彫りを施した懐中時計の販売が始まる!のちに「東洋の時計王」と呼ばれる男に、様々な転帰が・・・。(小説すばるより転載)服部金太郎は、無地物の懐中時計に彫りを施して売り出す、ということを思いつく。信頼出来る職人・吉川鶴彦を探り当てて、仕事を依頼する。服部金太郎の考案した時計は飛ぶように売れるが、当然、同業者にも追従しようとする人物が現れて・・・。誠実と真心で信頼を得る服部金太郎に周りも見事に答えてくれます。上手くいけば、やっかみもでるわけで、色々邪魔をしてくる人が出てきます。服部金太郎に、思わぬ名誉な話が持ち上がりますが、謙虚な金太郎は受けようとしません。出来ることなら、同業者も一緒に発展させたいと思っている金太郎なのですが、とある人物に説得されて考えを改めます。頭が良くて、人柄も良い金太郎は周囲がほっておかないですね。ここからはさらに飛躍しそうです。そして念願の時計製造になだれ込みそう。次回も滅茶苦茶楽しみです。
2020年12月15日
小説すばる 2020年12月号禁漁区 第十五回 石田衣良暴露記事を書く、そうでなければ夫に夏生との写真を送られてしまう。文美子は結婚生活で一番の窮地に立たされた。(小説すばるより転載)文美子が行ったスーパーで意外な人物に出会う。出会うというか、待ち伏せされたというか・・・。修羅場が続きます。スーパーの修羅場の後は自宅での修羅場が・・・(^^;)。どっちもどっちなので、しらけて読んでいますが、夫・賢吾はみっともないですねえ。でも男ってこんなもんかなあ。
2020年12月10日
小説すばる 2020年12月号剛心 第十三回 木内昇議院建築は大蔵省が担うべき、と妻木。対して、設計競技に持ち込みたい辰野。二人の溝は深まるばかりだった。(小説すばるより転載)議院建築に情熱を傾ける妻木頼黄だが、在野の巨匠・辰野金吾が立ちふさがる。官僚の親玉・妻木に対抗心を燃やしている辰野金吾は何といっても実力、権力ともにあるので、強敵です。妻木本人ももちろん大変でしょうが、部下も大変。でも、直属の上司に従うしかないですよね。議院建築は政府の予算が絡むだけに、政治が大事です。最後に政治に大ごとが起きます。これは妻木にとっては不利ですねえ。
2020年12月09日
小説すばる 2020年12月号母の自画像 宇佐美まこと今際の父から語られる、亡き母がかつて行方不明になった一週間。美大生だった母には、生島という風変わりな恋人がいて・・・。(小説すばるより転載)父から、二十七年前の母の一週間行方不明事件を聞かされる克也。父の死去の後、ふと気になって母の跡を追っていくと・・・。前回の話も怖かったですが、今回も負けず劣らず怖いです。ただ、今回は不思議さが強いので、怖さは少なめかなあ・・・。現実は夢のよう、と言われますが、ホント夢なんだか、現実なんだか自信がなくなってくる話でした。映画マトリックスや、森見登美彦さんの夜行にも通じる話。現実には体験したくないですね(^-^;
2020年12月08日
小説すばる 2020年12月号沈黙を聞かせて 第三回 本多孝好四半世紀前に娘を亡くした老夫婦と向き合う唯子。カウンセリングの最中、思わぬ問いかけをされた唯子は、自らの家族の「秘密」に思いを馳せるが・・・。(小説すばるより転載)小峰春雄と小峰季衣夫妻は二十五年前に娘を失った。今、小峰春雄は死期が近づいている。病院の紹介でカウンセリングを頼まれた唯子は小峰春雄の話を聞くが、手ごたえのなさを感じていた。その物足りなさの真相は?毎回そうですが、真相は意外なもの。人の思いは様々ですね。今回も最後は涙涙でした。犯罪被害者のカウンセリングを縦軸に、唯子の人生を横軸に描く連載は物凄く読みごたえがあります。ミステリーとしても一級品で、真実が明らかになる最後は感動もの。そして何より人にやさしいのがいいです。連載で読んでも感激しますが、これ単行本になったら、感動の嵐に見舞われそうです。
2020年12月07日
小説すばる 2020年12月号はぐれ鴉 第八回 赤神諒才次郎は前浜に呼び出された。果たして、どんな駆け引きになるのか・・・。(小説すばるより転載)十四年前の城代山田家一族惨殺の真相がついに明らかになりました。いやはや、すさまじい闇です。これは絶対に明らかにできないですね。はぐれ鴉が墓場まで持っていく、と言っていたのが納得です。陰謀渦巻く竹田藩。才次郎は間に合うのか?次回クライマックスっぽいです。どう決着をつけるのでしょうね。
2020年12月03日
小説すばる 2020年12月号黄金旅程 第十一回 馳星周レース前に突如馬が興奮してしまう謎の現象・・・獣医の敬子が語る、その真相とは?(小説すばるより転載)獣医の敬子から語られる馬の興奮現象の真相は衝撃的なものでした。競馬界も人間の集合ですから、こういう話があっても不思議ではないですね。まあ、闇は闇ですけど。亮介の借金といい、この興奮現象の元凶といい、競馬界の暗い部分を敬が一人で引き受けているみたい。エゴンウレアの栄光と引き換えなんでしょうね。一人でなんとかしようとする敬はうまく立ち回ることが出来るんでしょうかねえ・・・。次回も大注目。
2020年12月02日
小説すばる 2020年12月号累々 第四回 松井玲奈美大時代、なかなか実らないハジメ先輩への恋。いよいよ小夜の過去が明らかに・・・。(小説すばるより転載)二十三歳の小夜は、同棲している彼氏の葉さんに突然プロポーズされ困惑する。どうして自分が結婚を受け入れられないのかもよくわからない。しかし、親友・深鈴の言葉や様々なきっかけで結婚に前向きになることができた。というのが前回までのあらすじ(小説すばるの転載です)美大デザイン科の二年生の時にハジメ先輩と出会ってあっというまに恋に落ちた。しかし、先輩に思い切って告白したら、「特定の人とは付き合わない」と言われて振られてしまう。といいながら、突き放さずに、一定の距離をもって小夜と一緒に居る先輩とは?美大が舞台だけに、一癖も二癖もある人物ばかり。青春時代まっさかりの恋愛小説のはずですが、松井玲奈さんが書くと全然キラキラしておらず、むしろ嫌なものを見てしまった感じ。恋する小夜は一途ですけど、先輩のキャラはつかみどころがない。ズルイ男だと思って読んでいましたが、先輩には先輩の事情があり、難しいものだなあ、と思ってしまいました。
2020年12月01日
小説すばる 2020年12月号塞王の楯 第十六回 今村翔吾大津城決戦は匡介らの善戦で京極家の圧倒的優勢が続いていた。挽回の機を伺う立花宗茂は、彦九郎と「ある秘策」を講じるが・・・。(小説すばるより転載)攻める西軍。立花宗茂は後詰めだったが、不利な戦況を打開しようと、毛利元康は立花宗茂の力を借りる。戦巧者の立花宗茂は秘策を講じる。大津城を舞台にした攻防戦、手に汗を握ります。今のところ京極家が優勢ですが、秘策によって戦況ががらりと変わってきそうです。対抗策はあるのか?面白さが加速しています。クライマックスに向けて次回も楽しみです。
2020年11月30日
小説すばる 2020年12月号箱庭に降る星は 加納朋子廃部直前の三つの部。その部長たちに生徒会副会長からとんでもない提案が・・・。「スペミス部」って一体?(小説すばるより転載)僕が通う高校で「オカルト研究会」「天文部」「文芸部」の部長が生徒会副会長に呼び出された。言われることはほぼ予想されていたが、思った通りの提案をされて、それぞれの部長は困惑する・・・。部長を呼び出した生徒会副会長というのが、地元名門一族の生まれで、絵に描いたように品行方正、成績は入学以来トップを独走し続け、スポーツは万能という、「設定盛りすぎ」「マンガかよ」と言われている人物。最初は部活動の話かと思われたが、次第に個人の話に持っていく上手さ。スーパースターが快刀乱麻の活躍で問題を解決する話なのですが、解決の仕方があまりにも見事で思わず拍手喝さいをしてしまいました。ミステリーとしても一流だし、キャラクターは立ちまくっているし、加納さんの上手さ爆発、という感じでした。この連載はどれも出来が良いですが、今のところ今回が白眉。いや~楽しいなあ。
2020年11月26日
小説すばる 2020年12月号フェイクフィクション 第二回 誉田哲也潤平は意中の美祈との距離を縮めるべく、彼女の「情報収集」を開始するが・・・。それぞれの運命が動き出す、急展開の第2話。(小説すばるより転載)東京五日市署管内の路上で男性の首なし死体が発見された。刑生組対課の鵜飼道弘は、警視庁捜査一課の梶浦将生と再会、二人はペアを組んで捜査に当たる。一方、プロのキックボクサーだった河野潤平は引退後、北村製餡所で働いていた。同じ職場に入ってきた有川美祈にひと目惚れしてアプローチを開始する。首無し死体と北村製餡所がどうつながるのか第一回ではさっぱり見えていませんでしたが、今回ようやくそのつながりが判明しました。それにしても美祈という女性は「不思議ちゃん」ですね。潤平と会話が成立していない。会話がズレまくりです。そして今回はある組織の話が語られました。よくあるタイプの組織ですが、得体がしれなくて、恐ろしい・・・。今回あっさりと首なし死体の身元が判明して拍子抜けしましたが、話はここからなんでしょうね。底知れぬ闇がありそうで、次回も楽しみです。
2020年11月25日
小説すばる 2020年12月号令和元年生まれルリカ50歳 第一回 王谷 晶定年まで元気に働いて過ごす、それがルリカの最大の幸福であり望だった。首都埼玉で50歳の誕生日を迎えたその日までは。「幸せ」を超えたその先とは・・・近未来SFアクションここに開幕!(小説すばるより転載)令和五十年の近未来。クリーンセンターで働くルリカは首都埼玉で同僚のユアと会社の寮で暮らしていた。国内最大手の派遣会社の名前がヒトナというのがまず笑えます。日本有数の高級住宅街として有名な東松山の駅前に聳える大ショッピングモールの名前が「東松山コルパ」というのもかなりウケました。ちょっと笑いが入った導入部から、次第に話は深刻化を増してきます。住みやすそうな社会に思えたこの世界の欺瞞が少し明らかになります。ちょっとマトリックスを思わせる展開で、後半は怒涛の展開。ルリカはどうなるのか?次の展開が非常に気になります。SFですが、読みやすくて話についていけました。楽しみな連載が始まりましたね。
2020年11月24日
小説すばる 2020年12月号櫓太鼓がきこえる 鈴村ふみ篤は、呼出見習いとして相撲部屋に入門。稽古と本場所を繰り返す日々が始まった。(小説すばるより転載)第33回小説すばる新人賞受賞作の抄録が12月号に掲載されました。主人公の篤は相撲の呼出という、裏方の仕事についている若者。相撲に全く疎い私は、呼出という役割の人がいるのを初めて知りました(^-^;呼出というのは、相撲の試合の前に力士の名前を呼ぶ人なんですが、仕事はそれだけで無く、土俵を作ったり、懸賞金の旗を持って歩いたりと、多岐にわたります。高校を中退して呼出の世界に飛び込んだ篤はうまく力士の名前も呼べなかったり、土俵がうまく掃けなかったりと、まだまだ修行中。呼出の先輩と比べて自分のヘタさが情けなく、へこんでばかりの毎日を送っています。そんな自分の将来が思い描けなかったり対人関係に戸惑ったりと、悩みながらの毎日を送っている。社会に出たばかりの若者の新鮮な悩み。弱小相撲部屋に所属する力士や先輩呼出など若者が相撲社会で苦闘している姿が活き活きと描かれていて、非常に魅力的な前半部でした。大相撲が舞台ですが、裏方と幕下の力士しか出てこない相撲小説。その視点がとてもいいですね。青春小説としても、お仕事小説としても出来が良く、あっという間にのめりこんでしまいました。いや~、これは、またまた小説すばる新人賞の質の高さをまざまざと見せつける小説でした。抄録なので、後半が載っていません。単行本になったら、是非、全編を読みたいですね。
2020年11月23日
小説すばる 2020年11月号奇跡集 最終話 小野寺史宜電車の中に居合わせた人々のそれぞれの物語の連作の最終話でした。電車の中に居る人物が微妙に交差します。今回は第三話にてできた東原達人に関係する人物でした。その名は黒瀬悦生。黒瀬悦生の半生が語られます。その半生はもの悲しく、救いのないものでした。動きのとれない人生は辛いですね。でも、黒瀬が選んだ最後は勇気の要る行為でしたね。これで少し人生が開けることを願うばかりです。最終話はかなり重い話でしたが、一番読み応えがありました。この連作、それぞれが少しずつ関連しているので、単行本だと何度も読み返しそうです。
2020年11月13日
小説すばる 2020年11月号はぐれ鴉 第七回 赤神諒おお・・・、遂に竹田藩の秘密が明らかになりつつあります!衝撃でした!こんな秘密だったとは・・・。これなら守りを固めて、竹田藩を探る人間を排除するわけです。しかし、はぐれ鴉はこの竹田藩の秘密とはあまり関係がなさそうですね。はぐれ鴉の隠された面とは何なんでしょう?この残された謎がとても気になります。
2020年11月12日
小説すばる 2020年11月号黄金の刻 第五回 楡周平再婚後の生活は、順調に滑り出した。外国商館からの引き合いも殺到し・・・。(小説すばるより転載)服部金太郎の再婚後の生活は、まんの支えがあって順調だった。服部時計店も輸入時計を扱えるようになり、益々繁栄している。支払いをきちんと守る服部金太郎の信用度が上がり、取り扱い量を増やしてもらえたが、その分、同業者からの非難があがってきて・・・。同業者のやっかみというか、不満はわかります。結局江戸時代のように仲間内で同じように商売する習慣が脈々と残っていたのでしょうね。新参者が仲間内と違うルールで商売をしてそれが儲けに繋がると文句も言いたくなるわけです。商売としては服部金太郎のやり方が正しいので、それを曲げる気はありませんが、同業者を全面的に批判できない金太郎の気持ちも良くわかります。そして、新しい商売を思いつく金太郎だが、それに必要な人材が見つからない。ようやく探し当てた人物は、理想的な人物だったというのは、まさしく神様が引き合わせたようですね。世の中には同じ感覚を持った人がいるんですね。そんな人物に出会えたのも、日頃の心がけのおかげだとしか思えません。服部金太郎の小説、滅茶苦茶面白いです。
2020年11月11日
小説すばる 2020年12月号布武の果て 第八回 上田秀人信長から急いで鉄砲を用意するよう命じられた今井。戦うのに三千丁以上もの鉄砲が必要となる敵とは・・・。(小説すばるより転載)長島の一向一揆と平定した織田信長はいよいよ石山本願寺との対立を深める。織田信長は堺に大量の鉄砲を注文してくる。もともと多くの鉄砲を所持しているのに、これ以上誰に対して使うのか?堺としては鉄砲や硝石が売れて、笑いが止まらない状態ですが、一歩間違えば堺も戦に巻き込まれますから、情報収集に懸命です。堺周辺でも荒木村重や三好など、攻めたり攻められたりと刻々と情勢が変わる。そして遂に武田勝頼との戦が始まる・・・。戦国武将はもちろん、堺の商人もいつ戦になって、命を落とすかわかりませんから、毎日が薄氷を踏む思いですね。戦国時代は全く恐ろしい時代です。日本国中が内戦状態・・・。平和な令和の時代で良かった、とつくづく思わせますね。
2020年11月10日
小説すばる 2020年11月号黄金旅程 第十回 馳星周亮介に憧れて、門別から浦河にやってきた明良の目が輝く・・・。新直木賞作家が故郷を舞台に描く競走馬の世界!(小説すばるより転載)調教師の息子・明良が亮介の乗り方を見たい、というので敬が浦河に連れてくる。そこで見たのは、怪物馬エゴンウレアを乗りこなす亮介の姿だった・・・。今迄もそうでしたが、今回は特に競馬界への愛情が溢れています。馬の美しさ、強さの描写も凄まじいし、競馬界に係わる人間の情熱の描き方も半端ないです。馳星周の地元が舞台とはいえ、馳星周さんて本当に馬と競馬が好きなんでしょうね。
2020年11月09日
小説すばる 2020年11月号少年激走録 佐川恭一マラソン大会優勝者のみが読むことができるエロマンガ。少年たちの熱い戦いの火蓋が切られる。(小説すばるより転載)中学二年生の「僕」は、一番仲のいい松田とクラス替えになっても一緒になった。同じクラスに校内随一の変人・矢内もいる。矢内は休み時間にエロマンガを描きまくっていて、このエロマンガは校内の男子に大人気だ。勉強も運動も顔も平凡な「僕」と違い、東京から転校してきた三津谷は顔がかっこいいため、女子に人気だ。今迄順番待ちで見られた矢内のマンガが突然貸し出し禁止になり見られなくなった。不満が溜まる中、学校のマラソン大会の優勝者に矢内のマンガが賞品として出される、という噂が流れて、校内は騒然となる・・・。あははは・・・、まことに馬鹿馬鹿しい話です(褒め言葉です)気になる女の子と、エロマンガにしか関心がないようなおバカ中学生が必死になるところが滅茶苦茶オカシイ。主人公と友達が、まんま中学生、というキャラで、そこらへんに居そうです。画力と構成力が物凄くある矢内という天才エロマンガ家のキャラもいいですね。やけにスカしている三津谷も良い味を出していました。短篇ですが、青春小説として傑作なのでは?最後のオチも素晴らしかった。
2020年11月05日
小説すばる 2020年11月号塞王の盾 第十五回 今村翔吾大津城決戦は序盤から西軍の擁する国友衆による砲撃も投入され、熾烈さを増していた。匡介ら穴太衆はある「秘策」でそれを迎え撃つが・・・。(小説すばるより転載)いよいよ毛利元康率いる西軍が大津城を攻めてきました。西国無双の武将・立花宗茂は後詰にとどまっている。兵力差はあまりにも大きく、普通ならあっという間に落城しても不思議ではない状況の中、匡介が対抗策を練っていた。乗りに乗っている今村翔吾さんなので、城攻めの場面も、ゲームか映画を見ているかのような臨場感で、ドキドキします。今のところ京極軍が有利ですが、この先どうなることやら。
2020年11月04日
小説すばる 2020年11月号巣籠り箪笥 清水裕貴注目の新鋭が贈る「あの日」を生き延びた家具たちの物語、連作化。雨のやまない野原のアトリエで、作業を続ける寡黙な職人。そこに運び込まれたのは、60年前未曽有の大水害で一度沈んだ家具だった。(小説すばるより転載)2020年8月号に載っていた「花盛りの椅子」の続編が連作化されました。千葉の古家具店を舞台に家具職人にまつわる話が展開します。今回は龍太、という名前の木製家具のリメイクを得意とする職人の話。龍太は妻の桜と二人で森に囲まれたアトリエで仕事をしている。「私」こと鴻池が時々アシスタントに入っているが、龍太の長年の大作は完成しない。妻の桜のおなかの子供がどんどん大きくなる中、警察官が森のアトリエを訪ねてくる。そしてある日鴻池がアトリエに行ってみると・・・。元々かなり不思議ちゃん的な職人の龍太ですが、話がどんどん不思議な方向になっていきます。龍太の年齢でまずびっくり。そして桜に異変が起きてからは、一気に話が方向転換しました。SFなのか、ホラーなのか、ファンタジーなのか・・・。ラストはあっと驚く展開で、あまりにも唐突に変化するので、もう一度最初から読み直してしまいました。不思議な話であると同時に、とても悲しい話でした。繰り返したくないですが、やっぱり毎年繰り返されてますよね。人間は無力だということを実感させる話。次の作品も楽しみです。
2020年11月03日
小説すばる 2020年11月号リバー 第十五回 奥田英明鑑識からの報告で、例の第一容疑者が益々犯人に思えてきました。しかし、まだ決定的な証拠はない。一方、お騒がせ人間の池田が行方不明のままで何が何だかさっぱりわからない状態も続いています。もう一人の容疑者の病気(?)が進行して、深刻な状態になっていて、これまた容疑者かな?とも思わせます。池田は今回の事件に直接の関係はなさそうですが、あとの二人はどちらも怪しくて、警察も読者も決めかねています。もう少し第一容疑者の背景がわかるといいのですが・・・。
2020年11月02日
小説すばる 2020年11月号累々 第三回 松井玲奈選択肢から正解を選び、女の子を”攻略”する・・・。作家・松井玲奈による渾身のパパ活小説!(小説すばるより転載)マッチングアプリを使ってパパ活をしている女の子とデートを重ねる「私」・星野。星野は中学生の頃から恋愛シミュレーションゲームにのめりこみ、ありとあらゆるゲームをやった。幼いころから女の人に苦手意識を持つ星野は、現実の女性と会話する時もシミュレーションゲームのように会話を選択している。パパ活をしているユイちゃんと新たに知り合った星野は、ユイちゃんを攻略しようと努力を重ねるが・・・。女性を攻略して、成功すると興味を失ってしまうというちょっと変わった性格の星野ですが、ゲームと違い、人間はもっと複雑で深遠なもの。コミュ障の星野が、現実の人間と会話をしていてゲームのようにいかなくなると会話の選択肢がなくなってしまうのが面白かったです。松井さんの作品にしては珍しく、最後に明るさがあって読後が非常にさわやかでした。それにしても、色々な話を思いつきますね。
2020年10月28日
小説すばる 2020年11月号飛べない雄蜂の嘘 道尾秀介わたしは恋人からの暴力に晒されていた。彼が包丁を振りかざしたその夜、思いもよらぬ闖入者が現れ・・・。「光媒の花」「鏡の花」に続く花シリーズ、第三話。(小説すばるより転載)大学の昆虫研究室に勤めている「私」は、飯坂という男と暮らしていた。始終襲ってくる飯坂の暴力が最高潮になった時に意外な出来事が起こる。窮地を救ってくれた男・ニシキモと会話を重ねるうちに、ニシキモの母親が見た、という風景がニシキモから語られて・・・。意外な方向に進む物語に驚きます。真相は明らかになりませんが、主人公の「私」の推察はほぼ真実だったのではないでしょうか?最後の二行が心に刺さります。幸薄い二人の物語でした。
2020年10月27日
小説すばる 2020年11月号フェイクノンフィクション 第一回 誉田哲也ジャンルを横断した数々のヒット作を持つ誉田哲也氏の本誌初連載がスタート。穏やかな山村の変死体発見を機に、予測不能な慟哭の物語が動き出す。(小説すばるより転載)おおお・・・、誉田哲也さんが小説すばるで新連載ですっ!これは非常に嬉しいですね。小説すばるの楽しみが一つ増えました。さて、この新連載は警察小説です。舞台はなんと多摩地区の五日市警察署。多摩地区と言っても、どちらかというと奥多摩のほうですね。私も多摩地区に住んでいるので、身近に感じて嬉しいです。普段はノンビリムードの五日市警察署ですが、檜原村で死体が発見されます。刑生組対課強行犯捜査係の警部補・鵜飼が現場に急行。底にあった死体には首が無かった・・・。という強烈な展開で始まりました。本格警察小説になりそうな雰囲気。途中に挟まれる潤平という人物がどう物語に絡んで来るのかも興味津々です。
2020年10月26日
小説すばる 2020年10月号紅蓮の雪 最終回 遠田潤子牧原伊吹は双子の姉・朱里が突然自殺した真相を探るべく、遺品にあった半券から大坂の大衆演劇・鉢木座を訪れる。座長の秀太に軽くあしらわれるも、秀太の息子で若座長の慈丹にスカウトされ鉢木座の一員となった。(小説すばるより転載)双子の姉・朱里の死因を探る小説の最終回。牧原伊吹が朱里の死因を探るうちに大衆演劇の世界に入り込んでいきます。大衆演劇の裏側が披露されていて非常に興味深かったです。最終回は、全てを知る人物の告白により、過去の出来事が明らかになりました。なるほどねえ、これなら伊吹の両親の異様とも言える態度と、兄弟の過去に納得がいきます。全てが運命とは言え、余りにも過酷な過去でした。しかし、父親はともかく、母親は母親なりの愛情を持って子供に接していたんですね。二世代にわたる、歪んだ親子関係は悲劇しか生まなかったのか・・・。大衆演劇というあまり馴染みの無い世界を舞台に、親子の愛情、憎悪を描いたこの小説は読み応えがありました。思いっきり非日常の世界でした。
2020年10月21日
小説すばる 2020年10月号ルコネサンス 第九回 有吉玉青どちらかというと、夫の征太郎との生活は平穏に過ぎていたが、意外な形で問題が発生する。この方向の意見の食い違いがあったか・・・。この二人は付き合いも長いし、結婚しても上手くいっていましたが、こうなるとは思いませんでしたね。結婚て・・・・難しいですね。
2020年10月20日
小説すばる 2020年10月号布武の果て 第七回 上田秀人鉄砲鍛冶の橘屋又三郎のもとに三河の者が現れた。徳川の動きを知りたい今井彦八郎は接触を試みる。(小説すばるより転載)いや~、商人たちから見た戦国時代、物凄く面白いです!堺の商人たちにとって、今迄、全く眼中に無かった徳川家康が武田信玄の死去によって、俄然注目の的に。とはいえ、徳川家康とは全然接触が無く、情報も皆無。そりゃそうですよね。商売の取引も無く、お世辞にも金持ちとは言えない徳川家と堺は、お互い別世界の人間でしたから。しかし、徳川家に注目しだした堺にとって好都合な三河武士が堺の町にやってきた!これは好都合、とばかりに接触しますが、この武士、何やら訳ありのようで・・・。三河と言えば一向一揆、一向一揆というのは戦国時代の小説には必ず登場しますが、ほとんどが、一向一揆に苦しめられた、という描写で終わってしまう存在。しかし、考えてみれば、越前は国が一向一揆に占拠されてしまうくらいですから、スンゴイ勢力だったのでしょうねえ。総本山の石山本願寺も頑強に信長に抵抗していますし、一向一揆は大名にとって頭痛の種だったでしょう。堺としては、しょせん人ごとなので、冷静に分析をしているのが妙におかしいです。
2020年10月19日
小説すばる 2020年10月号黄金の刻 第四回 楡周平娘が誕生し奮い立つ金太郎。しかし、家庭に予期せぬ不和が・・・。(小説すばるより転載)災害に巻き込まれて、店を失う服部金太郎ですが、再建を始めます。銀座の近く、木挽町に新しく店を構えます。しかし、その一方、亀田六輔の娘・はま子との結婚生活に暗い影がさしだします。これほど優秀な服部金太郎ですら、公私共々に上手くいく、なんてことは、そうそう無いんですよね。順調な服部時計店に飛躍の予感があり、商売の方は益々上手くいきそうです。次回も楽しみ~。
2020年10月15日
小説すばる 2020年10月号浮雲心霊奇譚 第二十四回 彼岸の口裂女 神永学私は、ただ忠告をしに来ただけです。虚無僧姿の狩野遊山は口許に冷たい笑みを浮かべる。(小説すばるより転載)浮雲に土方歳三に玉藻と人物が揃っている上に、今回は狩野遊山まで登場して、オールスター共演になっています。その上、才谷梅太郎(坂本龍馬)まで登場して賑やかで楽しい。多摩川の河童に、口裂け女、ある日突然消える人間の問題は全然解決しません。しかし、浮雲にはほぼ全貌が見えているようです。次回解決編で終了の雰囲気。早いとこ解決編が読みたいです。
2020年10月14日
小説すばる 2020年10月号トラッシュ vol.6 増島拓哉この連載、最初の数回は、バカな 無軌道な若者が、思いつくまま犯罪を犯す、という吐き気を催すような話でした。しかし、前回の第5話から話が急変し、ある人物のシナリオ通りに進められたことが判明してから、俄然面白くなりました。シナリオを進める首謀者。だが、何故かそこに妨害が入る・・・。おお~、謎の人物の妨害。頓挫する計画。益々面白くなってきましたね。この謎の人物は誰なのか?目的は?次回大注目です。
2020年10月13日
小説すばる 2020年10月号剛心 第十一回 木内昇議院建築が頓挫する中妻木が次に取り掛かったのは日本橋の装飾意匠だった。(小説すばるより転載)明治の建築家・妻木頼黄の生涯を描く連載。議院建築が、予算が高すぎる、ということで議会が通らず、議院建築は中止になってしまう。妻木は相変わらず精力的に動いていたが、その一方で後輩の選別も行っていた。矢橋賢吉や遠藤於菟に目を付けて、その仕事ぶりを見ていた。妻木の下で働く矢橋賢吉は妻木とソリが合わず、胃が痛む毎日だったのはお気の毒としかいいようがないですね。次に妻木が手がけるのは日本橋。妻木は矢橋にも意見を聞いてくるが・・・。浅学の私は全く知りませんでしたが、日本橋の欄干の装飾は妻木が創案したのですね。あの有名な麒麟なんかも妻木のアイディアなんでしょうか。妻木が設計した建物はほとんど残っていませんが、日本橋は今でも見ることが出来る貴重なものですね。
2020年10月12日
小説すばる 2020年10月号沈黙を聞かせて 第二回 本多孝好偏見が追いかけてくる・・・。日系ペルー人の男性をカウンセリングする唯子は、彼らが晒されている世間の目と向き合っていく。(小説すばるより転載)臨床心理士の高階唯子が、犯罪被害者のカウンセリングをする連載の第二回目。前回も重い話でしたが、今回はよりいっそう重い話でした。交通事故で犠牲になったダイ君。その事故は、弟のアキラ君の目の前で起こった。遺族調書を作りたい、という警察の要望で高階唯子がアキラ君と話をするが、アキラ君の口は重たかった・・・。アキラ君とダイ君の過去が明らかになるにつれ、彼らへの偏見と差別問題が浮かび上がってきます。現代の日本の差別と偏見の問題(世界的にそうなのかもしれませんが)が静かな口調で、克明に描かれます。こういう社会は良くない、とわかっていても、現実はこうなんでしょうね・・・。いじめや差別が無くなる社会が理想なのですが、現社会はそんなに単純ではないし、人の意見は様々である以上、この手の問題は永遠に無くなりそうもありません。せめて、この主人公のように、手を差し伸べられてあげられれば少しでも助けになるのでしょうか。ナイフでグサグサと刺されるような話でした。
2020年10月08日
小説すばる 2020年10月号塞王の楯 第十四回 今村翔吾大津城に籠もり、領民たちと供に西軍を迎え撃つ決断をした京極高次。匡介ら飛田組も「懸」の総動員態勢で負けられない戦いへと臨むが・・・。(小説すばるより転載)大津城を取り囲んだ西軍。まずは降伏を促す使者を送り込んでくる。京極高次の天真爛漫さのため、コントのような交渉場面が繰り広げられ、とても命のやり取りをしているとは思えない面白状況でした。京極高次本人は戦が下手でも、部下には優秀な人材が揃っているのは京極高次の人柄のおかげか。しかし、攻めるのはかの有名な立花宗茂です・・・(゜Д゜)敵方としては恐ろしい人物ですねえ。もう激戦必至ですね。次回も滅茶苦茶楽しみです。
2020年10月07日
小説すばる 2020年10月号リバー 第十四回 奥田英朗警察は容疑者を絞り込んでいて、行確を続けていた。娘を殺された松岡芳邦は、独自に容疑者を特定して一人で追っていた。松岡芳邦は大胆にも容疑者の顔を見に行きます。警察も本丸とみているのか、監視を続けています。しかし、気になるのはお騒がせ人間の池田。元やくざの福田興産の社長が行方不明になっていて、池田が絡んでいる可能性が高い。この二人の行方と連続殺人の間に関係があるのか、ないのか?う~ん、気になりますが、中々話が進みませんね。いよいよクライマックスっぽいのですが、奥田さん、じっくりと書いています。次回も楽しみ。
2020年10月06日
小説すばる 2020年10月号明の日(あけのひ) 降田天<未来ドア>って知ってる?自分の未来の姿がわかるんだって・・・。(小説すばるより転載)地下鉄S線内殺傷事件に係わった人々のその後を描く連作。今回は、小説すばる6・7月合併号に掲載された「顔」という話の続編になっています。元テニス部の池渕と、元報道部員の野江が「未来ドア」という都市伝説のような噂を追いかけます。テニスで挫折している池渕も、地下鉄S線内殺傷事件でトラウマをかかえる野江も、悩みが深い。果たして「未来ドア」とは本当なのか?未来ドアの本質を見抜く野江ですが、それは良いことなのか、悪いことなのか判断が難しいところ。しかし、この噂を追いかける中、二人とも、少し前に進めてそれはとても良かったのではないでしょうか。都市伝説の中には、こういうものがあっても不思議ではないですよね。毎度の事ながら、意外な展開が面白かったです。
2020年10月05日
小説すばる 2020年10月号ギャグマンガ家めざし日和 第(19)幕 増田こうすけ実家を出て一人暮らしをした増田こうすけさんですが、ある日、実家に帰ろうと思ったら思いもよらぬ出来事が!もう大爆笑です。まるでネタのようで、とても事実とは思えません(笑)でもこういうことがあったら、気になりますよね。それにしても、こんな形で一人暮らしが挫折するなんて、やっぱり増田こうすけさん、面白すぎです。
2020年10月02日
小説すばる 2020年10月号はぐれ鴉 第六回 赤神諒仇敵はどうやら、藩士や民に慕われているらしい。才次郎も次第に巧左衛門に惹かれていった。(小説すばるより転載)いやー、これも面白すぎる。巧左衛門が私財をなげうって完成を目指す荒平堤だが、ナメクジこと三宅宣蔵の思惑で、藩士が引き上げてしまう。人手が無くなった堤工事をどうするか・・・。堤工事の進捗にハラハラドキドキですが、堤の決壊に意外な原因があることが判明します。これには唖然としてしまいました。こんな原因があれば、いくら工事しても無駄ですよね・・・。そして堤工事に手を貸した才次郎にもナメクジの怒りが飛んできます。覚悟を決めた才次郎は、一大決心をする。今回一気に話が進みました。後半の、ある人物の告白に納得のいく部分と、納得のいかない部分があります。じらしかたが上手いですね。ある人物が隠していることは何か?そして、やらなければいけないことは何か?次回も大注目です。
2020年10月01日
小説すばる 2020年10月号あなたのママじゃない 古矢永塔子映画宣伝会社で昼も夜もなく働く弥生は、夜のコンビニで優雅にパスタをすする女性を目撃する。「窓際のドヌーブ」と噂される貴婦人は、弥生のよく知る人物で・・・。(小説すばるより転載)すごく良かった~。三鷹駅の近くの映画宣伝会社で働く弥生は、三鷹駅南口のコンビニでとある人物を目撃する。その人物は会社でも噂になっていて、社長の広岩は「窓際のドヌーブ」と呼んでいた。弥生の勤める映画宣伝会社は残業が多く、夜遅くなるのは当たり前。夫の友樹はフォトグラファーだが、そちらは開店休業状態だった。友樹はバイトをしながら、家事全般をやってくれていて、弥生は物凄く助かっていたが、5年間の結婚生活で問題も発生していた・・・。夫の実家とは、ソリが合わず、ほぼ疎遠状態な弥生ですが、意外な形で夫の実家とかかわることなります。物語の前半は、働きウーマンの仕事ぶりを散々読ませられますが、後半にかけて大きく物語が変化します。そして最初から「引っかかっていた」役所と引っ越しの話が、後半の鍵となります。あまりの意外な展開に、読み終わった後、呆然としてしまいました。ええ~、そんなあ・・・。でも仕方無いか。友樹の母親との関係が凄く良い味を出しています。短篇ですが、濃密な内容で、とても読み応えがありました。夫婦の関係は様々ですね。誰が悪いわけでも無い。二人の気持ちが合うか合わないか。二人の今後を応援したいです。
2020年09月30日
小説すばる 2020年10月号黄金旅程 第九回 馳星周亮介の乗り役としての評判はうなぎ登りだった・・・。新直木賞作家が競走馬の世界を描く注目連載。(小説すばるより転載)元中央競馬の一流ジョッキーだった亮介が馬に乗ると、それは素晴らしいようで、あっという間に評判が広がります。過去の経歴から、表立っての活躍は無理ですが、裏方としてひっぱりだこになりそうな雰囲気ですね。亮介に憧れる人物も出てきて、やっぱりスターですね。私生活がひどくなければいいのですが、世の中そううまくはいかないです。亮介が目立てば目立つほど、主人公の平野敬が霞んできて、気の毒になってきました(笑)
2020年09月29日
小説すばる 2020年10月号星は、すばる 加納朋子私には、大事な友達と約束した夢があった。でもその夢は、生まれてすぐに潰えてしまった。(小説すばるより転載)加納朋子さんの新連載。わーい、うれしい~!加納朋子さんは大好きな作家さんの一人です。主人公の美星は小学校四年生。きまじめで大人しくて読書好きな子。変に目立たず、でしゃばらず、人気があるわけでも嫌われているわけでもない。とくに苦手なものもなく、だからどんくさい失敗もしない。そして実は、運動も勉強もできる、子だった。しかし、九月の掃除の時間のある出来事でそのポジションがもろくもくずれ去った・・・そこからはどん底の日々を送る美星だったが、夏休みの家族旅行で、星空観賞会に行ったときに、運命が変わる・・・!小学校四年生で、絶望の淵に立たされた女の子の成長を描いた物語ですが、思いもよらぬ展開、意表を突く人物とまあ、面白いことこのうえなし。最後は加納さんらしい、ほっこり展開で、心が温まる、温まる!読んでよかったと思える物語です。この話が続くのか、次回は違う話になるのか、次回の連載が大注目です。
2020年09月28日
小説すばる 2020年9月号黄金の刻 第三回 楡周平いよいよ「服部時計店」新店舗の開店に漕ぎ着けた。しかし金太郎にまたしても試練が・・・。(小説すばるより転載)服部金太郎は自己資金百五十円で自分の店を持つ。もちろん開店資金は十分でないので、中古販売と修理という、不本意な門出だったが、腕の良い職人である服部金太郎が売った中古時計は故障しないので、あっというまに評判になる。順調にいくかと思われた矢先、思わぬ不幸が服部金太郎を襲う。挫ける金太郎・・・。妻の実家から誘われたので、再出発を妻の実家から、と決心するが、ある人物の助言により、もう一度考え直す・・・。頭が良く、手先が器用な服部金太郎は成功するのが間違いない人物なのですが、そんな人物でも、不可抗力の災いが襲ってくると、ひとたまりもありません。禍福はあざなえる縄のごとしという言葉が文中に出て来ます。まさしくその通りになるのですが、これを転じて、成功に向かえるかどうかで力量が問われますね。文中に珠玉の言葉が山積し、小説と言うより、人生訓のような内容です。人生の栄養になる小説です。
2020年09月24日
小説すばる 2020年9月号隠れの子 最終回 小路幸也江戸一番の秣商・遠州屋を営む佐吉。ある日、両国橋の上で若い同心に出会う。名は堀田州次郎、人柄から「仏の堀田」と皆に慕われた北町奉行所定廻り同心・堀田惣一郎の養子で、その跡を継いでいた。佐吉は州次郎から「墨色の屋形船」について何か知らないかと唐突に尋ねられる。不審に思った佐吉は顔なじみの瓦版屋・新吾を呼び出し、州次郎の意図を探ろうとする。(小説すばる2019年12月号より転載)江戸時代の「隠れ」を題材にしたワクワクする連載の最終回でした。時代小説ですが、SFでもあり、ミステリーでもあり、不思議な小説でした。面白さは抜群。読み出したら止まらないページターナー。謎は面白いし、キャラクターも魅力的。最終回での解決編は意外とあっさりとしたものでした。これは続編がある、ということですよね?というか、絶対に続編を書いてほしいです。登場人物を全部書き切ったとは思えません。早い続編を期待します。
2020年09月23日
小説すばる 2020年9月号トライアングル ファーザー 最終回 三崎亜記離島で暮らし、動画サイトYuuQveに妻りんかと一歳の息子サトルとの生活を投稿し、生計を立てるショーエイ。地方都市の工務店で働きながら、共働きの妻かなめと二歳の息子のシオンを育てるエータ。そして、会社で初の男性育児休暇取得者となり、首都圏のタワーマンションで三ヶ月の娘スズナの育児を担う雄一郎。三人のイクメンパパはそれぞれに問題を抱えていた。(小説すばるより転載)三人のイクメンパパの奮闘を描いた連作の最終回でした。どの男性も問題がアリアリでしたが、台風をきっかけに、事態が変化していきます。災い転じて福となす、ということわざのように問題が解決していく様は(ちょっと出来すぎとしても)気持ち良い展開でした。タワーマンションの話が、近年話題になった事例とそっくりで苦笑してしまいました・・・。タイムリーな話題を取り込んでいますねえ。財政破綻した国の問題をもう少し入れてくるのかな?・・・と思いましたが、それほど突っ込んでいませんでしたね。どの話も、逃げている男性が問題に正面から取り組むと何とか解決の糸口が見えてくる、という話で、中々耳の痛い話のような・・・(^^;)今迄の三崎さんの小説とは毛色が違っていて面白かったです。
2020年09月22日
小説すばる 2020年9月号トラッシュ vol.5 増島拓哉自殺願望の若者が集まって、無軌道に犯罪を犯す話ですが、第5話に至って、意外な展開になってきました。何となく集まって、何となく行動をしていた若者たちのようでしたが、実は裏話があったとは!ある人物の、ある目的のために集められた若者たち。仲間割れに繋がっていきます。囚われた彼はどうなるのでしょう?次回大注目です。
2020年09月21日
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