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2012.04.08
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カテゴリ: 昭和期・後半

『赤頭巾ちゃん気をつけて』庄司薫(中公文庫)

 本小説の初出は1969年とあります。そしてその年の芥川賞を受賞し、小説はベストセラーになった、と。
 なるほど。私の年齢で言いますと、リアルタイムでの読書はちょっと無理っぽい微妙な年度ですが(シリーズ第4作目の『ぼくの大好きな青髭』が、私にとってはリアルタイムの読書でした。連載当時と単行本との内容が、大きく異なっているのに驚いた記憶があります)、しかし読みましたねー、この「薫くんシリーズ」は。

 時代をほぼ同じくする方ならきっと大いに同感し、そして懐かしがっていただけると思いますが、本当に当時はむさぼるように読みました。
 そして、すごく影響を受けました。
 今日に至るまで、好きな作家はいろいろと出てきましたが、あれほど強烈に影響を受けた小説は、私にとっては、他にはないと思います。

 それは、そのころの読書好きな青少年にとっては、おそらくライフスタイル全般に関わった、ほとんど「全人格的」な影響じゃなかったかと思います、私もその一人でありますが。(本作はベストセラーになったし、映画化もされていますから、別に読書好きな青少年だけに限ったわけではないですが、しかし読書好きな青少年にとっては、たぶん別格だったと思います。)

 そんな、そのころは我が青春の「バイブル」のように思っていた作品でしたが、その後急速に「熱が冷めた」(少々はしたない話ですが)のは、少し客観的かつ散文的に考えますと、やはり新作が出なかったからでしょうね。

 同じような感じで、デビュー作『風の歌を聴け』から読み始め、それも始めはさほど「ぞっこん」の読者でもなかった村上春樹が、いまだに私のフェイヴァレット作家であることを考えますと、やはりある程度、次々と新作を発表していただかねば、読者はいつまでも付いていないことが分かります。
 だって、恋愛と同じでしょう。どうしても去る者は日々に疎くなっていきます。

 というわけで、この度、全く久し振りに本書を手にしましたが(例の大型古書籍販売店で再廉価本の棚にありました。私がかつて読んだ本は、たぶんもう我が家にはないと思いますが、ひょっとしたらどこか本棚の隅にあるかも知れません)、うーん、何といいますか、ちょっと、客観視しにくいですよねー。
 あたかも、初恋の彼女に数十年ぶりに会ったみたいで。

 脈絡のない、分析的でない感想が、だらだらと浮かんできたりしました。
 この「由美ちゃん」は、今読んでもやはりなかなか魅力的なお嬢さんだなー、とか、あ、思い出した、乳房を見せてくれた女医さんはアンニュイに煙草を吸っていたんだっけ、とか、やはり久し振りに出会った初恋の彼女(別に初恋の彼女でなくてもよいとは思いますが)みたいに、あの遊園地に二人でよく行ったよねー、とか、カラオケでユーミン得意だったよねーとか、あなたはよく浜省歌っていたじゃない、とか、全くとりとめのない会話がしばらく続きます。

 そして、少し落ち着いて振り返った時、私に浮かんだのは、この小説にはどんな事件が起こっていたのだったっけということでありました。
 実は、この小説には、何も事件が起こっていなかったのであります。

 スキーのストックに足の親指をぶつけて生爪を剥がした薫くんが、ガールフレンドの由美ちゃんと喧嘩をする(まー、じゃれているような喧嘩でありますが)話と、友人の小林君が家にやって来てぐずくずよく分からない話をして、そしてその後片足を引きずりながら街に出た薫くんが5歳位の女の子と知り合いになるという話と、まー、これだけであります。
 出来事の量的なものだけで言いますと(一般的に考えられる「質的」なもので言っても)、例えば保坂和志の何も起こらない小説と同じくらいのものであります。
 でも、言うまでもなく、保坂和志の小説とは読後感がかなり違います。(これは別に保坂和志の小説がダメだと言っているわけでは、もちろんありません。)

 では結局、この小説には何が書かれていて、昔の私は、一体何に強烈に惹かれていたのかと、少し考えてみました。
 分かったのはこういう事でした。そして少し驚いたのですが、私の考えついた作品のテーマ(にひょっとして近いと思われるもの、あるいは作品全体の骨格)には、作品中にキーワードが書かれていました。これであります。

エンペドクレス

 えー、すみません。次回に続きます。


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Last updated  2012.04.08 08:33:12コメント(0) | コメントを書く
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