遊心六中記

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茲愉有人

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2018.03.09
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カテゴリ: 観照
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六條院・春の御殿宸殿の南面を西面に回り込みます。

通路を挟み反対側には、等身大の美女人形を使い、 「十二単 (じゅうにひとえ) の変遷」 という服飾史がビジュアルに理解できるようになっています。この画像は、宸殿の北西側にあたる通路付近から撮った全景です。
第1回でご紹介したエレベータを降りてこの博物館に入った最初の場面の画像を注意深くご覧いただいていると、画像の左端にちょっと違和感をもたれていたことでしょう。まるでガリバーのように、図抜けた女性像が写っているのですから。

それがこの衣裳を着た人形です。 奈良時代、唐の文化を取り入れて、日本の服制の大綱が確立した時の衣裳の一例 がこれだそうです。この人形の傍に衣裳各部の名称も示した説明パネルが個々の人形に掲示されていますので、具体的には現地でお読みいただくとよく理解できるでしょう。
「養老の衣服令による四位の命婦礼服」 だそうです。すなわち当時の女官の礼服だとか。これが源氏物語のころの十二単に変遷するルーツだそうです。


平安時代の初期 「女官朝服」 の形式だとか。「平安時代初期の女神像や吉祥天女象などによった貴婦人の姿」になります。


平安時代の894年8月、菅原道真は遣唐大使に指名されますが、逆に道真の提言を受け入れて9月には遣唐使派遣が中止されることになります。これを契機にして 国風文化と称される日本文化が芽生えて行きます。 これがその頃の 公家女房装束の晴れの姿 だそうです。
「裙帯比礼 (くんたいひれ) の物具装束 (もののぐしょうぞく)
と称するそうです。裙帯とは、「裳の腰につけて左右に長く垂らした紐。官女が正装の時、装飾として用いた」 (『大辞林』三省堂) というもの。比礼( ひれ :領布)は領巾 (ひれ) と同じでしょう。領巾について手許の辞典には、「奈良時代から平安時代にかけて、正装した婦人が肩にかけて左右に長くたらした薄い布」 (同上) と説明されています。


そして、 平安時代中期になると、日本独自の十二単が完成される のです。 「公家女房晴れの装い」 唐衣裳 (からごろも) 」姿とも称されたそうです。

そして、季節に応じて、 この十二単の「かさね色目」を装うことが美しさの条件 となり、その女性のセンスの良さを表すことになったといいます。
左手に持っているのは「畳紙・帖紙 (たとうがみ) 」です 。「衣冠・束帯のとき、たたんでふところに入れた紙。懐紙」 (『日本語大辞典』講談社)

表着 (うわぎ) には「浮線藤文」中の 「八つ藤丸」 の文様が使われています。この文様は指貫 (さしぬき) や掌侍 (ないしのじょう) の唐衣などに使われたそうです。打衣 (うちぎぬ) には 胡蝶文様 が使われています。


紅の袴 を着けています。 若年で未婚の場合には、濃き色 、つまり濃き紅の意味で紫に近い色の袴を着けるそうです。



これは「源氏物語絵巻」の「竹河」(上)と「東屋」(下)の場面です 。様々な十二単が描き分けられています。ウィキペディアから引用しました。 (資料1)


そして、 江戸時代後期 になると、 公家女房の正装 がこのように変化して行ったそうです。尚、「この姿は天明頃から天保11年(1843)平安朝の裳再興までの姿」だとか。

ここでは触れませんが、もう一つ、髪形の変遷にも着目してください。館内の説明パネルには関連事項として言及してあります。訪れられた折にはその点もご注目ください。


この等身大の人形を利用した具現化展示のセクションには、実物大の襖も展示されています。時代の雰囲気が醸し出されています。

それでは、宸殿の西側側面に目を転じてみましょう。
宸殿の母屋の四周を囲む部分は「廂 (ひさし) 」と呼ばれます。そして、この西の廂の間と簀子を利用して、

「かさね色目」の実例をミニチュア衣裳で再現されています。 この 説明パネル が廂の間の南端に掲げてあります。
次の様に具現展示され、それぞれに説明パネルが設置されています。

梅かさね   旧暦11月~2月

藤かさね   旧暦4月頃

白撫子 (しろなでしこ) かさね  旧暦4月~6月

紅紅葉 (くれないもみじ) かさね  旧暦10・11月頃

雪の下かさね  旧暦11月中旬~春頃まで

松かさね  四季通用・祝いに着る色

「かさねの色目」については、長崎盛輝著『譜説 かさねの色目配彩考』が昭和62年(1987)に出版されています。それをもとに構成・編集した本が、平成8年に京都書院アーツコレクションの1冊として文庫本化されました。その本を継承して、 長崎盛輝著『新版 かさねの色目 平安の配彩美』 という同サイズの文庫本が青幻舍から2006年9月に出版されています。紙面上で「かさねの色目」の名称と配色の実際を見て、配彩美を詳細に知ることができます。しかし、それを衣裳の形にしてみた実際がどういうものかというイメージをつかむことはよほど熟知した人でないと難しいと思います。

今回、その配色の組み合わせイメージの代表例にしかすぎませんが、上掲の実物事例という形で見ることができます。このインパクトはやはり大きい!! かさね色目の配色が、こんな感じになるのか・・・・・というところです。これは精緻なミニチュアの衣裳ですが、実物はやはり良い感じ・・・・というところです。
対比しながら眺めて行くと、やはりこのかさね色目が一番惹かれるな・・・・という好みが出て来ておもしろいものです。

余談ですが、『満佐須計装束抄』には、紅葉の様々として、上掲の「紅紅葉」の他に、「櫨紅葉 (はじもみじ) 、青紅葉、楓紅葉、捩 (もじ) り紅葉」という4種のかさねの色目が載っているそうです、 (資料2)


「十二単の変遷」セクションの傍の柱には、 上段・中段に「有職文様」、下段に「地紋にもなる文様」「それ以外」についての説明パネル も掲示されています。このパネルに列挙されている文様の名称を左から右へという順番でご紹介しておきます。風俗博物館でパネルをご覧いただくか、この名称を手がかりに調べていただくと興味が広がることでしょう。

上段:立涌文 (たてわくもん) 、窠文 (かもん) 、霰文 (あられもん) 、浮線綾 (ふせんりょう)
中段:唐草文 (からくさもん) 、菱文 (ひしもん) 、亀甲文 (きっこうもん) 、小葵 (こあおい)
下段には、最初に襷文 (たすきもん) 、そして「それ以外」の見出しの下に次の名称が続きます。朽木形 (くつきがた) 、繧繝縁 (うんげんべり) 、高麗縁 (こうらいべり) 、蕃絵文 (ばんえもん) 、海賦文 (かいぶもん)

しっかりパネルの説明を読み、具現展示品の細部まで観察していると、この部分だけでも1時間くらいは楽しめると思います。

初めて風俗博物館を訪れた時に、ここで購入した本からいくつか補足説明として、引用しておきます。 (資料3)
女房装束 とは、朝廷に出仕する高位女官の奉仕姿をいう。
*袴に単 (ひとえ) 、重ね袿 (うちき) に裳と唐衣 (からぎぬ) を着けた姿を 唐衣裳 と称し、主上の不在時は唐衣ばかりは略することも許されたが、裳は必ず着けねばならなかった。
*平安末期から鎌倉時代には重ね袿を五領までとする 「五衣 (いつつぎぬ) の制」 が定められる。
*五衣の上に、砧打ちをした打衣 (うちぎぬ) と二陪 (ふたえ) 織物の表着を着込め、さらに張袴 (はりばかま) を穿いて 「物の具」 と称して晴の正装とした。
元来の十二単 とは、袿を幾枚も着重ねた装束の表現であり、唐衣や裳を着けない寛いだ袿姿を指していたと思われる。

つづく

参照資料
*風俗博物館でいただいた資料と館内の説明パネルを参照
1) ​ 源氏物語絵巻 ​  :ウィキペディア
2) 『新版 かさねの色目 平安の配彩美』 長崎盛輝著  青幻舍  p56-57
3) 『源氏物語と京都 六條院へでかけよう』 監修・五島邦治 編集・風俗博物館 p71

補遺
風俗博物館 ​  ホームページ
王朝の華 -源氏物語絵巻- ​  名品コレクション展示室 :「徳川美術館」
国宝源氏物語絵巻 ​ :「五島美術館」
源氏物語絵巻 [1] ​ :「国立国会図書館デジタルコレクション」
源氏物語絵巻. [2] ​ :「国立国会図書館デジタルコレクション」
源氏物語絵巻. [3] ​ :「国立国会図書館デジタルコレクション」
  この[1]~[3]は絵巻物の形です。
源氏物語絵巻 ​  :「国立国会図書館デジタルコレクション」
  徳川美術館が本形式で出版したもの。
十二単の基礎知識 ​  :「民族衣裳文化普及協会」
十二単 ​  :ウィキペディア
十二単 ​  :「コトバンク」
指貫 → ​ 括り緒の袴 ​  :ウィキペディア
掌侍 ​ :ウィキペディア
有職文様素材集1-2 ​ :「綺陽装束研究所」
古典文様(四君子文様・有職文様・吉祥文様) ​ :「着付入門講座」

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Last updated  2018.03.13 11:10:46コメント(0) | コメントを書く


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