遊心六中記

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茲愉有人

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2018.03.13
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カテゴリ: 観照
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東の対(対の屋) を北東側から眺めて
今回、この部分には 平安時代の遊びの姿 が具現化されています。

碁に興じる
北の端で女房たちが碁をしています。碁は上代に中国から伝来しました。平安時代には男女を問わず盛んに行われたようです。『源氏物語』では、「空蝉と軒端萩(空蝉)、玉蔓の大君と中の君(竹河)、今上帝と薫(宿木)、浮舟と少将の尼(手習)など。物語の展開で重要な場面に、碁を打つ様が描かれている」 (資料1) のです。

「空蝉」の巻
 (小君)「なぞ、かう暑きにこの格子下ろされたる」と問へば、
 (年配の女房たち)「昼より西の御方の渡らせたまひて、碁打たせたまふ」と言ふ。
このやり取りを聞いていた源氏は、妻戸から歩み出て簾の隙間に入り、 空蝉と軒端萩が碁を打っている姿を垣間見るという場面 が描写されます。源氏が観察した二人の姿が描き込まれていきます。そんなことを知らない二人の碁のやり取りも書き込まれています。
 (空蝉)「待ちたまへや。そこは持にこそあらめ、このわたりの劫をこそ」など言へど
 (軒端萩)「いで、この度は負けにけり。隅の所どころ、いでいで」と指をかがめて
 「十、二十、三十、四十」など数ふるさま、伊予の湯桁もたどたどしかるまじう見ゆ。
  すこし品おくれたり。
源氏は、負けたと言ってすらすらと盤上の隅の目を数える様子を見て、多少気品には欠けてはいるが・・・・と観察している場面が続きます。 (資料2)

「偏つぎ」遊び
その南隣りでは、主として女性や幼少の者たちが漢字の知識を競い合う遊戯の場面を具現化しています。 漢字の旁 (つくり) と偏を組み合わせて文字を作ったり、訓みを答えさせたり、一方を隠し漢字を当てさせるという遊び
「葵」の巻には、「つれづれなるままに、ただこなたにて碁を打ち、偏つぎなどしつつ日を暮らしたまふに」(手持ち無沙汰に、ただこちらで碁を打ち、偏つぎなどをしては日を暮していらっしゃる)という描写が出て来ます。 (資料3)
  几帳が部屋の仕切りとなり遮蔽となります。



さらに南隣りでは 双六

双六盤を部分拡大してみました。併せて、衣裳の文様やかさね色目にもご注目ください。

「盤の上に白黒の石(駒)を並べて、相対する二人が交互に二個の『賽 (さい) 』を『筒 (どう) 』に入れて振り出し、目の数だけ石を進めて、先に全部の石を敵陣に送り終えたほうを勝ちとする盤上遊戯」 (資料1) です。駒の数は各6,12,15と諸説あるとか。

双六もまた、『源氏物語』の各所に出て来ます。その圧巻は 「常夏」の巻 に出てきます。内大臣が近江君を弘徽殿女御に託します。そして、内大臣が女御の御方のところを訪れた時、近江の君の部屋にも様子を見に立ち寄るのです。近江の君は五節の君と双六に興じています。そこでの二人の滑稽な問答を見聞し、内大臣はとんでもない宿縁にウンザリとするという場面です。双六遊びを介してその滑稽な様が描き込まれています。


まずは「東の対」の南面に回り込みます。

今回、ここには 師走(十二月)の年中行事である「仏名会」の場面 が再現されています。
「幻」の巻の最後の方に、「御仏名も今年ばかりにこそはと思せばにや、常よりもこと錫杖の声々などあはれに思さる」という書き出しから始まり、「仏名会」に関連した様子が書き込まれています。 (資料5)

初めて「仏名会」が行われたのは、宝亀5年(774)に光仁天皇の宮中でのことと言われています。そして、承和2年(835)に仁明天皇が行って以降、宮中での恒例儀式となり、その後、各地に広まり、寺院などで勤められるようになったそうです。 (資料6)

仏名会は「毎年12月19日から3夜の間、清涼殿で、過去・現在・未来の三千の仏名を唱えて、その年の罪業を懺悔し消滅させる法会」 (資料6) です。貴族の家でも仏名会を催すようになったのです。つまり、 「幻」の巻では、源氏52歳の12月(旧暦)に六條院で行われた仏名会の一端を描いています 。昨年の8月14日に紫の上が43歳で亡くなり、一周忌を終えた年の暮れに行われました。紫の上が世を去った後、この仏名会の日に、初めて晴れの場で源氏が人々の前に姿を現したのです。 (資料5,7)

御帳台 (みちょうだい) の中に、過去(法蔵比丘)・現在(阿弥陀如来)・未来(弥勒菩薩)の三世の仏 を中心に 三千仏が描かれた三千仏図 が掲げられ、 廂には地獄絵屏風が立てられて周囲を囲まれる中で、三千仏に罪障消滅を祈り続ける法会 です。


母屋では参集した七僧が仏名経三巻を読み、導師は仏名を唱えながら錫杖を振り鳴らし、御仏名を唱えるたびに礼拝します。僧が薮椿を散華します。それとともに三千仏に香が手向けられます。 (資料7)




源氏は導師をもてなします。




この年最後の六條院での仏名会の行事に親王や上達部 (かんだちめ) の多くが参列しました。
「幻」の巻のこの場面で「例の、宮たち上達部など、あまた参りたまへり」と記しています。 (資料5)





東の対の東端にここにも地獄絵屏風を立て渡し、御簾ごしに仏名会に参集する女房たちがいます

この場所の屏風絵を部分拡大してみました。地獄の様相の一部が見やすくなるでしょう。


この六曲一双のミニチュア版屏風絵の全体が良く見えるように、東の対の南西隅、通路側に展示してあります。

左隻

右隻

「幻」の巻では、仏名会を終えて導師が退出するに際し、源氏は導師を前に呼び、盃を与え、併せて禄を与えます。盃を与えるとき、源氏と導師が歌を贈答します。これがこの場面描写の締め括りになっています。 (資料5)
 源氏 春までの命も知らず雪のうちに色づく梅を今日かざしてん
         (春までの命があるかどうかも分からないのだから、
          この雪の中でほころびはじめた梅の花を
          今日は挿頭 (かざし) とすることにしよう)
 導師 千代の春見るべき花といのりおきてわが身ぞ雪とともにふりぬる
         (千歳にわたって春にあう花のようにと、院のご長寿をお祈りしておいて、
                   この白髪の私は、雪が降るのといっしょに年ふりてしまいました。)

風俗博物館内に設置された六條院春の御殿をひと巡りしました。前期展示の大凡をご紹介したことになります。


博物館フロアーの北東隅には、 「竹取物語」の場面が具現化されています。
こちらは既にご紹介していますので、拙ブログ記事をこちらからご覧いただけるとうれしいです。
(探訪&観照 風俗博物館(京都) -4 竹取物語・等身大の時代装束展示)

まだまだ見落としている部分や気づいていない事柄が数多くあると思います。
是非、実物の具現展示をご覧いただき、当時の衣裳や場面を通じ、平安時代、源氏物語の世界の雰囲気をお楽しみください。そのお役にたてば幸いです。

ご一読ありがとうございます。

参照資料
1) 『源氏物語図典』 秋山虔・小町谷照彦編 須貝稔作図 小学館 p144
2) 『源氏物語 1』 新編 日本古典文学全集 小学館  p118-121
3) 『源氏物語 2』 新編 日本古典文学全集 小学館  p70
4) 『源氏物語 3』 新編 日本古典文学全集 小学館  p242-243
5) 『源氏物語 4』 新編 日本古典文学全集 小学館  p548-549, p548-549
6)  ​ 仏名会 ​ :「浄土宗」
7) 当日いただいた案内説明資料

補遺
風俗博物館 ​ ホームページ
源氏物語の世界 ​ 渋谷栄一氏 ホームページ
寝殿造から書院造へ ​  文化史 :「フィールド・ミュージアム京都」
平安の遊びの数々 ​  :「綺陽装束研究所」
盤双六(ばんすごろく) ​ :「伝統ゲーム紹介」
すごろく ​  :ウィキペディア
佛名会 ​ :「浄土宗総本山 知恩院」
仏名会 ​ :「石山寺」
仏名会 ​ :「清水寺」
仏名会 ​ :「東大寺」
地獄をのぞいてみませんか? 「熊野観心十界曼荼羅」の世界 ​ :「東京国立博物館」
描かれた地獄~浄光寺の六道絵~ ​ 愛荘町立歴史文化博物館 pdfファイル
地獄ワンダーランド ​ 三井記念美術館 2017年7~9月 :「ART Age ndA」
三井記念美術館 特別展 地獄絵ワンダーランド ​  :YouTube
地獄絵 其の三 絵師の魂 ​  :「死の古美術」
沙門地獄草紙(沸屎地獄) ​ :「奈良国立博物館」
創作佛画 地獄極楽図 六曲一双屏風絵 ​  :「京都佛画研究所」
[仏教] 八大地獄って何?今さら聞けない地獄の成り立ち ​  :YouTube

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

観照 風俗博物館 2018年前期展示 -1 『年中行事絵巻』「祇園御霊会」へ
観照 風俗博物館 2018年前期展示 -2 十二単の変遷とかさね色目 へ
観照 風俗博物館 2018年前期展示 -3 七夕・文月の年中行事、局・女房の日常 へ ​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​





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Last updated  2018.03.13 10:56:43コメント(0) | コメントを書く


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