遊心六中記

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2019.10.20
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カテゴリ: 観照
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奈良公園の入口に、いつものように現在の 奈良国立博物館で催中の展示案内 が掲示されています。
9月8日までの展示期間、残す日数少しというところで鑑賞してきました。
そのときの印象のご紹介です。

これが事前に入手していた 特別陳列の案内チラシ です。裏面の仏像写真を後で利用させていただきます。
併設展示されていたのが、「いのりの世界のどうぶつえん」 という企画展示でした。

博物館への通路を歩む途中で大樹の向こうに、 建仁寺垣様の垣根と門 が見えます。
博物館の南側にある庭園への入口 です。普段は閉まっています。

いつもの通り、展示PRの案内を眺めつつ、博物館に近づきます。
 鹿が出迎えてくれました。


              当日購入した 図録の表紙と裏表紙
奈良市十輪院町に位置する 融通念仏宗のお寺、法徳寺に寄進された仏像群に注目して企画された特別陳列 でした。その注目の意味しているところが、付記されている「 近代を旅した仏たち 」というメッセージでしょう。
展示品目録を確認すると、展示されていたのは27躯の仏像です。
法徳寺の仏像群は、これまでその存在さえ認知されていなかった、いわば知られざる仏たちです。 (図録・ごあいさつより)



チラシ、ポスターや図録の表紙に使われているのがやはりハイライトとなる仏像でした。 文珠菩薩坐像 です。鎌倉時代(13世紀)の作で、一説に奈良・室生寺伝来と言われているそうです。頭上に5つの髻 (もとどり) を結うところから、 五髻文珠 (ごけいもんじゅ) と称されているとか。 童子形の文珠菩薩像 です。
眉根を寄せて目尻を少しあげ、厳しい感じの顔立ちに造形されています。眺める角度により、その相貌の印象が微妙に変化していくところが興味深いところです。上掲の写真と見比べてみてください。
正面の髪際中央で巻毛が対向し、鬢髪は左右対照になっています。
五髻文珠の姿像は鎌倉時代以降、南都を中心に広まりをみせたそうです 。その中で優品に数えられるものといいます。

文珠菩薩の左に写る 地蔵菩薩立像 は木造・古色で、平安時代(11-12世紀)の作。
この仏像は、明治39年(1906)7月1日に興福寺で撮られた古写真に写る地蔵菩薩像と一致するということが確認されているそうです。
今回展示された諸像は、奈良の古美術商と親交のあった一人の実業家が蒐集した仏像群で、それが法徳寺に寄進されたと言います。海外へと片道の旅立ちをしたのではなく、この仏像は奈良という地の中で旅をしたということになりますね。


図録の裏表紙にも使われている 菩薩立像 です。括弧書きで 興福寺千体仏 と記されています。
1躯(45.8cm)を除き、像高35.2~39.8cmのものが19躯、 合計20躯の木像 が一列に展示されていました。20躯も並ぶとやはり壮観です。これが千体仏という名の通りずらりとならんでいれば、実に壮観かつ荘厳でしょうね。木造で彩色・漆箔・彩色の像ですので、当初の姿のままであれば、荘厳さに加えて華やかささえ感じられることでしょう。平安時代(11世紀)の作だそうです。観音信仰が盛んになったという証左の一つかもしれません。像高はほぼ同じですが、興味深いことに一躯ごとに作風が異なりバラエティがあることでした。図録によれば、興福寺千体仏の一部と比定されるものが、大阪・藤田美術館に50躯所蔵されているということです。
規模は違いますが、後白河法皇(1127~1192)の発願で平清盛が建立した三十三間堂の1001体の千手観音立像群へと連想が繋がります。


飛鳥時代(7-8世紀)の銅造・鍍金で像高23.6cmの 観音菩薩立像 も展示されていました。
X線CTスキャン調査によれば、左手首先と持物を除き、頭頂から台座まで全容を一鋳した像だそうです。銅造の成分の違いから、左手首先と持物は近代の補作と判断されています。昭和11年頃は、史料により、著名な日本画家・橋本関雪が所有していた仏像だそうです。複数の人々の手許を旅してきた仏像だとか。
ほかに、如来坐像と飛天像が各1点展示されていました。


そして、この 持国天 (左・54.3cm)と 増長天 (右・52.5cm)の立像です。鎌倉時代(13世紀)の作。括弧内は像高を記しました。
鎌倉時代に再興された大仏殿四天王像を典拠とする 大仏殿様四天王像 に相当するそうです。大仏殿様四天王像の造像は、南都に広がりをみせたといいます。


併設されていた企画展は、「 わくわくびじゅつギャラリー 『いのりの世界のどうぶつえん』 」です。これは、会場入口でいただいたこの企画展のための ワークシート です。

会場は11のセクションで構成されていました。折り畳まれたシートを一部見開きにしますと、その中から6つのセクションでの質問がこのワークシートに出ています。
夏休みに、子供たちに神仏像と親しんでもらおうという企画です。祈りの世界を正面から切り込むのではなく、祈りの世界に存在する神や仏たちと一緒に居る動物たちに着目して、その動物を切り口に神像や仏像を知ってもらおうという試みです。
大人にとっても意外な盲点になるかも知れません 。展示された神・仏像を隅々まで見つめてその像の全容をちゃんと捉えているかという問題意識につながります。なかなかおもしろい試みだと感じました。
なんとなく、す~っと、眺めながらとおり過ぎるということができなくなる質問です。
この質問シートを読み、即座にご回答されたなら、あなたはかなり仏女あるいは仏男の部類と言えるでしょう。

残りの4問を列挙しましょう。
Q3 42「仏涅槃図」には、たくさんのどうぶつやいきものが登場しているよ。この絵で登場しないのはどれだろう?
     1)ゾウ 2)ニワトリ 3)龍 4)オオサンショウウオ

Q4 51「火焔宝珠形舎利容器」にはある動物が隠れているよ。そのどうぶつとは何かな?
     1)獅子 2)ヘビ 3)キツネ 4)イノシシ

Q5 55「獅子・狛犬」の顔について、正しい組み合わせは次のうちどれかな?
   (ツノと口にご注意!)

                選択肢の図を切り出してみました。即答できますか?
子供たちなら、55の展示品と見比べっこして、熱心に正解を探すでしょうね。

Q6 59「舞楽面陵王」のお面で、頭の上に乗っているのはどれかな?
     1)ネコ 2)トラ 3)龍 4)ウマ

普段とは違う切り口を提示されたことにより、楽しくこの併設企画展を鑑賞することができました。

質問3で思いだしたことを付記します。
京都の東福寺では3月の涅槃会の行事で、 明兆筆「大涅槃図」 がご開帳されます。(現在その修復作業期間中ですので、当面はご開帳なし)
この大涅槃図を見たくて、涅槃会の期間中に東福寺を訪れたことがあります。この明兆筆の涅槃図には、通常は涅槃図に描かれることのない ネコが描かれています 。その記述がありましたので、大涅槃図を見上げながら、どこに描かれているか探したことを思いだしました。
修復期間が終わり、再び「大涅槃図」がご開帳される機会を楽しみにしてください。

博物館を出て、奈良公園と興福寺を通り抜けて、三条通に出て駅に向かいます。 

       奈良公園の通路では、礎石の列と、

鹿の群れを眺めることが戻り道での私の慣例になっています。

ご覧いただきありがとうございます。

参照資料
『特別陳列 法徳寺の仏像-近代を旅した仏たち-』 奈良国立博物館 2019年7月

補遺
仏涅槃図 ​ 画像データベース :「奈良国立博物館」
東福寺涅槃会・大涅槃図御開帳・ ​ :「東福寺」
金銅火焔宝珠形舎利容器 ​  :「文化遺産オンライン」
密観宝珠形舎利容器について ​   内藤 榮氏  :「奈良国立博物館」
狛犬とは何か? ​ 100万人の狛犬講座
狛犬 ​ :ウィキペディア
舞楽面 陵王 ​ :「文化遺産オンライン」
舞楽面の楽しみ方 ​  :「東京国立博物館」

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

探訪 奈良・興福寺  境内のお地蔵さまほかと境内点描 へ

こちらもご覧いただけるとうれしいです。
スポット探訪 [再録] 東福寺とその周辺 -7  東福寺涅槃会-大涅槃図御開帳-の折に
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Last updated  2019.10.20 15:46:00 コメントを書く


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