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2022.08.02
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カテゴリ: 観照 & 探訪
長刀鉾
7月13日に祇園祭前祭の山鉾巡り をしました。記録の整理を兼ねたご紹介です。
今年は巡行が決定されました。幸いにも当日はそこそこの天気になり良かったと思います。宵山と巡行を見に出かけるのは回避し、その前に山鉾を眺めに出かけた次第です。
今回は駒札を参照する程度で、 山鉾の写真での点描を中心にまとめてみたいと思います
末尾に今年の祇園祭案内チラシから切り出した図を掲載します。位置関係が分かりやすいと思いますので。

冒頭の写真は四条通・北側歩道を東から傍近くまで行き撮ったものです。13日は曇空。
 長刀鉾の前に 神酒 が奉納されています。懸装品に透明カバーシートが被せてあるかと思っていたのですが、それがなくてラッキーでした。
北東側から見上げた景色
北面の前部
北面の後部

上掲、北面後部の 下水引をズームアップ してみました。 「五彩雲麒麟図刺繍」の図 (復元新調品)です。


西面
一番から三番まで水引が重ねてあります。
西側から 長刀鉾の真木 疫病・邪悪をはらう大長刀 (おおなぎなた) が取り付けてあります。これが鉾名の由来です。現在は複製品が使われています。
真木のなかほどに「 天王座 」があり、そこには 和泉小次郎親衡の人形 が祀られています。

南西側から長刀鉾の姿を眺めた景色 です。
四条通の北側を使って鉾が建てられていますので、自動車の往来が絶えません。

烏丸通を横断し、再び四条通の北側歩道を西に少し歩むと、
「函谷鉾」 が見えます。 
北東側から
雨除けの透明カバーシートがかぶせてあると、こんな感じです。写真を撮るには不適ですね。
天候不順だと仕方が無いのですが、興が削がれます。

鉾の天井 を見上げると、 が描かれています。
北西側から
屋根の上には、覆屋根がかけてあります。勿論巡行当日は撤去されますが。
屋根裏の部分図
今尾景年 (1845~1924)筆「 金地彩色鶏鴉 (けいあ) 」が描かれています。
西側から
中国の戦国時代、斎の国に孟嘗君という知略に長けた宰相がいました。彼は「函谷関」を鶏の声を真似させることにより、関所の門を開かせることができ、窮地から脱出できたのです。 「鶏鳴狗盗 (けいめいくとう) 」の故事 と言われます。「函谷鉾」はこの故事に因んで名付けられました。



鉾頭の月と山型は山中の闇を表している そうです。真木のなかほどの 「天王座」には孟嘗君 その下に雌雄の鶏 をそえているとか。

四条通の南歩道に移動し、 函谷鉾の全景 を撮りました。
シートが懸けてあると、懸装品がぼやけて見えて残念です。




室町通を南に 入りますと、通りの西側に 「鶏鉾」 が見えます。
池坊短期大学の学舎の傍に位置します。

この鉾も透明カバーシートがかぶせてありました。

北面の屋根裏と天水引 は見やすいです。
この天水引は四条派画家の一人 下河辺玉鉉の下絵 によるものです。
南西側から
函谷鉾と同様に、鶏鉾も覆屋根が設けてあります。覆屋根の意匠が異なります。

南面の天水引 には五彩雲の中に瑞鳥が描かれています。
南側から
鶏鉾もその名は中国の史話に由来 します。「昔、唐堯の時代に天下がよく治まり、訴訟用の太鼓(諌鼓)も用がなく苔が生え鶏が宿ったという故事によって、その心をうつしたものという」 (駒札より)

鉾頭 がぎりぎりに写っています。 形は三角形の中に円形。この円形は鶏卵が諌鼓の中にあるという意味 で、 鶏鉾の名の象徴 となっているそうですが、詳細は不明とか。
こちらの 「天王座」には航海の神である住吉明神 が祀られているそうです。

室町通を南に下ります。
綾小路通りを横切ると、 白楽天町 です。
「白楽天山」 が見えます。
山は建ち上がっていますが、懸装品等一式は会所に展示されていました。

山の躯体は藁縄で締められています。 この仕上がった藁縄の形が美しい
山鉾それぞれに、縛り方締め方の特徴があるようです。こういう伝承も毎年継続していかないとその技術の維持伝承が困難になることでしょうね。囃子方が沢山乗る鉾の場合も同様に構造体の木組みが荒縄で縛り、締め付けているわけですので、これもまた高度な手技と言えます。

山の担ぎ棒の先端には 錺金具 が取り付けてあります。 「白」という文字 を陽刻した錺金具です。


白楽天山の会所 には、正面中央に、山ニ乗る 御神体の人形 が祀ってあります。
その左上には、 「御山四番」の木札 が掲げてあります。くじ引きの結果、山鉾巡行での山の順番が今年は四番を引いたということです。
長刀鉾はくじ取らずの鉾で先頭を切ります。今年の鉾の一番は函谷鉾です。その結果、
長刀鉾-孟宗山-保昌山-郭巨山-函谷鉾-白楽天山-四条傘鉾・・・・・という順番が決まっています。船鉾もまたくじ取らずでいつも最後尾を締めています。
白楽天
白楽天は、唐織白地狩衣の衣裳に唐冠をかぶり、笏を持つという姿。
道林禅師
道林禅師は、緞子地の紫衣を着て、藍色羅紗 (らしゃ) の帽子をかぶり、手に数珠と払子 (ほっす) を持っています。今は立ち姿ですが、二人が対面した時、道林禅師は松の枝の上に座していたと言います。

白楽天山は、唐の官吏であり著名な白楽天(白居易)が道林禅師に仏法の大意を質問したという場面を表しています。
向かって左側
向かって右側

余談です。白楽天は、松の木の上で坐禅をしているのは危険ではないかと道林禅師に問いかけたそうです。すると、あなたの方が危険に見えるよという返答。当然、白楽天は何の危険があるのかと質問します。道林禅師は心の穢れ、煩悩の燃え上がる火のことを指摘したとか。その後、白楽天は仏教の真髄とは何かを尋ねます。道林禅師は「諸悪莫作 諸行奉行 自浄其意 是諸仏教」と答えたそうです。『発句経』にも載る七仏通誡偈です。 (資料1)


見送 (みおくり) 山鹿清華作「北京万寿山図」 (毛綴錦) 昭和28年より使用

前懸 (まえかけ) :文化5年(1808)に新調された ​紺地雲龍文様刺繍裂と​ 万延元年(1860)蟷螂山より買い受けた ​毛綴との三点継​ (つなぎ) 。毛綴は「ギリシア神話を題材とした柄で、トロイ城陥落の時、アイネイアスが父を救出する場面を描いた優品」 (駒札より)



欄縁 「金鍍 (めっき) ​四  野田嘉一郎製作 昭和51年(1976)新調

水引
胴懸
水引と胴懸は、昭和53年(1978)にフランスから直接買い付けしたものだそうです。
17世紀製作の毛綴。ベルギーフランドル地方産とのこと。


前懸の錺金具

山の隅飾り用の錺金具と飾り紐

序でに、次の山鉾に移動する前に目に止まった石標が2つあります。
 1つは 「京都市立成徳尋常小学校跡」 ​という石標​ です。
室町通綾小路下る東側に立っています。
「明治2(1869)年,新町通四条下る西側に開校した下京第九番組小学校は,同9年この地に移転し,成徳尋常小学校となった。昭和6(1931)年に下京区高辻通室町西入に移転し,同22年新学制のもと中学校となる。」 (資料2)
 2つ目は 「松本宗悟邸址」の石標 です。
室町通仏光寺上る東側に立っています。
「松本宗悟(生没年未詳)は,茶人村田珠光(1502~55)の門人で,十四屋宗伍として知られる。天文年間(1532~55)頃活躍し,歌人としても有名。」だそうです。 (資料2)


山鉾のロケーション (祇園祭案内チラシより) ​​ ​​

つづく

参照資料
*各山鉾での駒札 京都市 
1) ​ 鳥窠禅師と白居易の問答 ​  :「薬師寺」
2) ​ いしぶみデータベース ​   :「フィールド・ミュージアム京都

補遺
万寿山 ​  :「コトバンク」
HT 白楽天と道林禅師 ​ :「真宗出雲路派 八王子山 了慶寺」
四君子 ​  :「コトバンク」
【着物の柄と種類】吉祥文様 ”四君子”について ​  :「和音」

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Last updated  2022.08.10 18:23:40
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