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2022.08.06
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カテゴリ: 観照 & 探訪

太子山から仏光寺通に戻り、仏光寺通を東に入ると 「木賊山」 が山建て中 でした。
半ばまでは組み上がっています。お陰で躯体(胴組)の様子が良く分かります。
ここは 通りの両側が ​「木賊山町」​ です。

かつては、山は担がれて巡行しましたので、担ぎ棒が5本並んでいます。
担ぎ棒の箇所は藁縄ではなくロープで縛ってあります。
小さな車輪が取り付けてあります ので、直線道路では担ぎ手ではなくて曳き手により曳かれて行きます。四つ辻での方向転換の折に、曳き手が担ぎ手になって、くるりと方向転換するのです。
四つ辻のその場で、数回山をクルクルと360度見物客に見える様に担いで回すというパフォーマンスをしてくれます。

櫓の床隅では、桁と斜めの補強材はホゾに木栓を打ち込み固定し、藁縄で縛ってあります。
柱と斜めの補強材もまたホゾに木栓を打ち込み固定して、藁縄で縛ってあります。
藁縄での縛りは同じ形です。

桁と斜めの補強材を荒縄で縛っています。柱の下部も同様です。
車輪には木製の車止めがかませてあります。

櫓の柱を貫く横板がホゾに差し込んだ木栓で固定され、それと担ぎ棒がロープで緊縛されています。
かつては、これが櫓の底部部分となったのでしょう。
洛中洛外図屏風に描かれた祇園祭巡行場面と併せてイメージした私の推測ですが・・・・・。
 町家の軒下に、覆屋のパーツが準備されています。


​「木賊 (とくさ) 山」は謡曲「木賊」に由来する山です。​
(駒札より) という場面を表現しているそうです。

山建てを少し撮ったあと、仏光寺通を西胴院通まで歩み、 西洞院通を北上 します。
四条通を横断し北に入れば、通りの両側が 蟷螂山町」 です。

「蟷螂山」 もまた、山建ての最終段階に入っていました。既に御所車が櫓の上に載っています。埒と覆屋を組見立てる作業がこれからなので、例年よりも御所車全体を間近に見上げることができました。


「蟷螂山」の 蟷螂とはカマキリのこと です。 御所車の屋根に大きな蟷螂が 乗っています。
ここに由来するのでしょう。蟷螂には透明のカバーシートが被せてあり残念でした。
これはカラクリ人形 になっています。巡行中に要所要所で蟷螂の羽根や脚を動かすパフォーマンスが演じられます。

御所車は正面が南に向いています。正面の東側で目にとまりました。この 龍頭
まともに見たことがありませんでした。ラッキー!

櫓の上に置かれた 御所車の東面 です。

丸彫りの降り龍 が御所車の側面(袖の部分)を飾っています。
車輪の輻 (や) が細身です。支える重量を考えれば、それで十分なのでしょうね。

御所車の車輪 は、鉾や曳山の車輪とは少し異なる​ ことがお解りいただけるでしょう。
車輪の輪の部分の形状とそのパーツの組み方に違いがあるようです 。この飾り用の御所車では輪にパーツを線描きしているだけですが。鉾の車輪とパーツを見比べて下さい。
黒漆塗りの欄縁 には、 三つ巴紋 を中央に唐草文様の錺金具と 五葉木瓜紋 の錺金具が使われています。これら 二つを併せて八坂神社の神紋 です。

欄縁の角の錺金具 、その下には 隅房掛の錺金具 が取り付けてあります。房飾りがこれにかけられます。
 蟷螂山は 車輪 が見える形です。
車止めの道具が木賊山とは違うやり方 です。止め具の上に車輪を乗せる形式です。
埒があると見づらいところがよく見えます。
裾幕 には、「蟷」という漢字が上部一列に印字されています。
南側(正面)
北側
透明のカバーシートを被せて、 見送 が既に取り付けてあります。
残念ながら見送自体の絵を十分には楽しめませんでした。

北の錦小路通を西に入り、 新町通で右折して 南にある 「放下鉾」を目指します
そこは 「小結棚町」 です。
放下鉾の北面
鉾の後部です。 囃子方の人々が鉾に乗っています
西面
囃子方 ​鉦 (かね) を叩く役割の人々( 鉦方 )​ が鉾の屋台の左右に揃うと、バチ(鉦スリ)の動きに連れてゆれ動く 下げ緒 (と呼ぶのかどうか不明です・・・・)が垂らし始められました。
南西側から
「放下鉾」 は真木の中ほどに設けられた 天王座に放下僧の像を祀ることにその名が由来 するそうです。
放下僧について 、次のような説明があります。
「中世の芸能者で、輪鼓や玉・刀・などを放下する芸、つまり手玉に取る曲芸を演じたことからの称であり、田楽法師の流れを汲む者とされる。・・・・・放下僧は半僧半俗的なもので、出自を禅家に求め、禅法を口にすることを好んだというが、近世以後は仏教色が希薄になり、大道芸を売物にする全くの芸能民と化したようである。」 (『仏教辞典』岩波書店)


下水引は栂尾高山寺の国宝「華厳宗祖師絵伝」を下絵にした綴織 が、平成6年(1994)から使われています。絵伝に描かれた場面の中から、この下水引に一つのストーリーを構成する4場面が使われているようです。
鉾正面は 祖師が唐での修行を終えて 船に乗り帰国する場面 と思います。


再び 鉾の側面 にもどります。 下げ緒はこんな感じ・・・ ・。
前懸・胴懸 には 花文様のインドやペルシャの絨毯 が使われています。
下水引の下の 三番水引 は、 ​駒井源琦の下絵による 「青海波におしどり図」 綴織​ ですが、現在はその 復元品 が用いられているそうです。


胴懸の下、こちらは 白黒縦縞の裾幕 が使われています。
躯体の土台部分を縛っている 藁縄の最後の仕上げ方 はまた少し異なっています
船鉾の場合との違いを見比べてみて下さい。

私が放下鉾を訪れたタイミングは、 曳き初め の少し前 でした。
計画していた訳ではなく、ふらりと出かけて、長刀鉾を見た後に山鉾巡りを思いつきルートで巡っていった結果での出会いでした。



鉾の正面に立つ 音頭取りの合図で曳き初めが始まります
鉾建てされた場所から、新町通を四条通への入口まで、わすかの距離ですが、巡行本番の前に、鉾の試運転が行われるのです。

西側の下水引は、龍が描かれています 。祖師の乗船した船を追いかける場面だったと思います。

鉾の四隅 には、 隅房掛の錺金具に房飾り がかけてあります。 飾り結びが3箇所 中央が八坂結び だそうですが、上下の結び方は確認できず・・・・残念。


曳き初めが始まりました 。ゴトゴトと3年ぶりの車輪の音を響かせます。(たぶん、そうだろうと・・・)
囃子方もうれしいことでしょうね。

鉾の後部(北面)の下水引は有名な場面です。祖師帰国の航海の無事を祈り、 ある女性が海に投身 しました。その女性とは、 義湘に恋心を打ち明けた善妙 です。
「出航したあとにそれを知った善妙は、義湘のために取り揃えていた仏具 (ぶつぐ) などを持って港に行きますが、船は遠くにかすんでいます。善妙は、仏具の箱を船に向かって投げ入れ、そして自分も海に飛び込みます。すると、善妙の心の深さのために、その身が龍に変わり、義湘の航海を守ることになるのです。」 (資料2)

鉾の正面(南面)は帰国の航海に出た義湘の乗る船。西面は善妙が龍となり船を追いかける姿です。


会所の2階と放下鉾を繋ぐ階段 です。
こんな写真を撮ったのは全く初めてでした。


ゆっくりと放下鉾が戻って来る態勢に。

今度は北面が先頭になって鉾が戻ってきます。車輪は前後方向に回転するだけですので、曳き初めの時だけは、背面を先頭にして元の定位置に戻る必要があります。
本番の巡行日には、四条通まで出て、四条通新町の交差点で、辻回しをして四条通を東に進める態勢に入り、巡行に加わることになります。
今年のくじ取りでは、放下鉾は第21番目、最後から3番目です。今までご紹介してきた範囲で言いますと、芦刈山-伯牙山-太子山-放下鉾-岩戸山-船鉾という順番で、今年の巡行の後尾が締められたことになります。






この辺りで、放下鉾を離れ、次に移動します。
この時、同時並行で船鉾と岩戸山が四条通の南で曳き初めを行っていたのです。



つづく

参照資料
*​ 山鉾について ​ :「祇園祭」(祇園祭山鉾連合会)
1) ​ 祇園祭と八坂紋結び ​  :「茶香房ひより diary」
2) ​ 華厳宗祖師絵伝 ​  :「京都国立博物館」

補遺
木賊 とくさ ​:「謡蹟めぐり 謡曲初心者の方のためのガイド」
木賊 (とくさ)
華厳宗祖師絵伝 ​  :「コトバンク」
祇園囃子 ​  :「祇園祭2022」
祇園祭 放下鉾の名宝 ​  :「京都文化博物館」
飾り結びについて ​  :「Pinterest」

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Last updated  2022.08.10 18:27:12コメント(0) | コメントを書く


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