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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
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Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2017.11.12
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カテゴリ: 教育・子育て
​ 学校の多忙化について、 『ブラック化する学校 』
 そして 『ブラック部活動 』 と読み進めて、
 今回の本著が、総仕上げという感じです。
 教育開発研究所発行の一冊なので、誰もが手にするというものではないかな。

 それにしても、読み終えた際、久しぶりに付箋だらけの本が出来上がりました。
 それは、本著が学校の様々な内部事情をしっかりと踏まえたうえで、

 てっきり、学校現場の先生が書かれたものだと思っていました。

しかし、実際はそうではありませんでした。
著者は、京大大学院を卒業後、野村総研を経て独立し、
教職員向け研修や学校、行政向けコンサルティングを手掛けている妹尾さんという方。
現場経験のない方が、ここまでのものを書かれたのは本当にスゴイです。

   ***

さて、本著の真骨頂は
「第3章 なぜ忙しいのか、なぜいつまでも改善しないのか」と
「第4章 本気の学校改善-あきらめる前にできる、半径3mからの実践」。
現状把握の的確さと、問題の掘り下げ方の深さは、他書の追随を許しません。

例えば、「多忙化を加速させた直近10年あまりの変化」において、

授業中や休み時間などに、よりきめ細やかな対応が必要となってきていることや、
経済的支援を受ける困窮家庭の割合が増加したために、
学校が、教育機関というよりは福祉機関になりつつあること、
さらには、非正規教員が増加したことで、正規教員の忙しさが増すとともに、
教員間での情報共有、コミュニケーションに困難さが生じていることを指摘しています。


また、次の「学校の長時間労働が改善しない6つの言葉」も秀逸。

  (1)前からやっていることだから(伝統、前例の重み)
  (2)保護者の期待や生徒確保があるから(保護者と生徒獲得のプレッシャー)
  (3)子どもたちのためになるから(学校にあふれる善意)
  (4)教職員はみんな(長時間一生懸命)やっているから
     (グループシンキング、集団思考)
  (5)できる人は限られるから(人材育成の負のスパイラル)
  (6)結局、わたし(個々の教職員)が頑張ればよいから
     (個業化を背景とする学習の狭さ)            (p.94)

中でも、教員にとって最も抗い難いのが「子どものために」という言葉。
そんな言葉にも、著者は果敢に切り込んでいきます。

  「子どものために」という視点、基準ではあらゆることが大事なことに見えてきて、
  スクラップ&ビルトにはほとんど役立たず、むしろビルト&ビルトを助長させます(p.97)

さらには、

  教育社会学者の久富義之名誉教授もこう指摘しています。
  教師世界では、「熱心さ」がどこの国でも価値になっている。
  ……(中略)……「多忙」は「熱心教師」が胸につけた勲章になる。
  教師という仕事はその性格の内側に
  「長時間労働もいとわずとり組むのが美徳」という、
  自分たちを圧迫する面をもともと持っている職業といえるだろう。(p.108)

そんな教師という仕事の特殊性が、
健康社会学者の河合薫氏が紹介する、次のような状況を生み出しています。

  多くのバーンアウト研究から、
  「一人きりで責任を背負うことのない職場」にすることの重要性が示唆されている。
  だが、新人であれ、20代であれ、「先生」は「先生」。
  いったん「先生」になった途端、余人をもって代えがたい状況に追い込まれ、
  ”その先生”が対応しなければならない仕事に四六時中追われ、
  何か問題が起きると、すべて”その先生”の責任にされ……。
  仕事が好きな人ほど、真面目な人ほど、
  「子どものため」にと孤軍奮闘し、追い込まれる。(p.107)

そして、そのような状況に追い込まれる背景には、
次のような事情も絡んでいます。

  教師は弱みを見せづらく、共有しづらい職業であるからです。
  学校では採用1年目の4月から、一人前の教師として教壇に立たないといけません。
  子どもたちはもちろん、保護者等に頼りないと見られるわけにはいきません。
  さらに、同僚、上司に対しても、弱みを共有するのは簡単ではありません。(p.118)

このような特殊性故に、追い込まれていく教師について、
著者は次のように指摘しています。

  学校にかぎらず、メンタルを病んだり、
  最悪の場合、過労死や過労自殺などが起こったりする背景には、
  一人称、自分を大事にできなくなっていることがあります。
  会社や学校のためにこれはやらなくちゃ、
  家族のためにこれはやめられないなどなど、三人称ばかりになると、
  自分が何をしたいとか、何が好きで生きているかが見えづらくなってきます。(p.185)

自分を疎かにすることは、子供を疎かにすることにつながっていく。
そんな当たり前のことが、職員室文化に染まると気付けなくなってしまうのです。
しかし、そんな状況を打ち破るヒントを、著者はちゃんと示してくれています。

  教員自身はよかれと思ってやっていることも多いわけですから、
  養護教諭や事務職員、あるいはスクールカウンセラーなどの
  一般の教諭とは少し違った視点や情報をもつ人から見て
  「ちょっとやり過ぎているのではないか」とか、
  「かけた時間に見合う効果(=時間対効果)は高いと言えるのか」といった
  疑問やモヤモヤを発信、共有していくことが大切です。(p.143)

この後さらに続けて、PTA役員やコミュニティ・スクールの委員など
「学校文化に染まっていない人の目線を入れることも有効なときがある」とも指摘。
さらには、組織として非能率的になっている部分や、見直しが必要な部分についても、
次のように、具体的に示してくれています。

  多忙、多忙と言いながらも、学校にはもったいないこと、
  残念なことが多いのも事実です。(p.164)

  たとえば「同僚との教材のやりとり」については、
  どのグループも月に1回以上は4~5割程度にとどまっています。(p.117)

  広い意味での業務改善、つまり、方法改善にとどまらず、
  必要性の低いものはやめたり、減らしたりすること、
  あるいは関連するものは統合すること(仕訳と精選)が必要です。(p.139)

  学力テスト、授業研究、研究指定などを見直しても、
  多忙が劇的に減るとは限りませんが、多忙感には相当影響します。
  どうせやるなら、楽しいことに時間とみんなの知恵を使おう、
  そんな発想です。(p.166)

そして、部活動についての指摘も、とても納得できるものです。

  教育課程外の位置づけである部活動に、
  あなたの学校の教育は重きを置き過ぎていないだろうか、
  本当にこれほど多くの部で高い競技性や大会入賞をめざすべきだろうか
  (もっとサークル活動的なものでもいいのではないか)、
  部活動が家族と過ごしたり、他の多様なことを行ったりする
  子どもたちの時間を奪っていないだろうか、
  という点を問い直していくべきです。(p.145)

  部活動の効果は理解しながらも、大事なことは部活動以外にもある、
  ということを認める必要があります。(p.147)

本著は、前述したとおり、かなり現場に踏み込んだ内容であり、
それを踏まえて、具体的な指針を提示してくれている一冊です。
それ故、一般の方には少々理解しづらい部分もあるかとは思いますが、
現場の教員はもちろん、学校教育に興味のある方には、お薦めの一冊です。





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Last updated  2017.11.12 23:11:35コメント(0) | コメントを書く
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