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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2023.12.02
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カテゴリ: 文芸
李奈の『十六夜月』 の5週連続1位を阻止した丹賀笠都は、
 極端かつ急進的差別主義で、多数の熱狂的支持者を得ているベストセラー作家。
 一方、その父・源太郎は、古き良き本物の文豪と呼ばれるベテラン作家で、
 李奈の友人である作家・曽埜田璋も通う丹賀文学塾を主宰していました。

 その丹賀文学塾閉塾の宴に、李奈は、現役弁護士で作家の佐間野秀司、
 元検事の作家・樋桁元博、元刑事の作家・鴨原重憲と共に招かれます。
 18歳の女優・樫宮美玲、同じ事務所の小山帆夏、マネージャー・舛岡も同席しますが、
 そこで、岡本綺堂著『怪談一夜草子』に擬えた事件が勃発、李奈は解決に向け奔走することに。



今回は、3つの異なる世界が層をなす構成となっています。
まず最初は、皆さんが暮らす現実の世界。
次に、松岡さんが描く『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論 』の世界。
そしてさらに、その作品の中で白濱瑠璃が描く『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論 』の世界。

例えば、

  小説で得た知識が李奈の身体を突き動かした。
  李奈はすばやく上体をひねり、蛭井はわずかにのけぞったものの、
  致命傷はあたえられていない。(中略)
  だが李奈は冷静に間合いを見切り、猛然と旋風脚、
  すなわち中国拳法の回し蹴りを浴びせた。
  踵が蛭井の顔面に命中すると、巨体は木の葉のごとく高々と宙を舞った……(p.275)


この直後、この部分は白濱瑠璃による創作シーンであることが明かされます。

  押し合いへし合いのなかで李奈は涙ぐんだ。
  小説の主人公ならたちどころに解決するだろうが、
  現実には荒くれ男の群れに肝を潰すばかりだ。
  もうやだ。助けて 優莉結衣

これは、李奈が事件の解決に向けて、刑事たちと共に時津風出版に乗り込んだシーン。
読み進めていた際は、ちょっとした違和感を感じはしたたものの、
いつもの李奈の世界の出来事としてとらえ、読み飛ばしていました。
しかし、後から考えると、これも白濱瑠璃による創作部分と考えた方が良さそうです。

  櫻木沙友理から助言を得ていた。
  映像化に関し原作者のとるべき行動は、
  契約書に署名捺印するかしないか、その二択しかないと。
  いったん契約を交わしてしまったら、邦画にありがちな安っぽく陳腐な演出になろうとも、
  薄幸の主人公を演じる女優が宣伝のためテレビに出演してはしゃごうとも、
  映画に似つかわしくないハードロックのテーマ曲をあてがわれようとも、
  いっさい文句は言えない。
  すべてを許せる神のような心境にならないかぎり、
  映像化の要請に応じてはならない。(p.77)

これは、『十六夜月』が映画化・テレビドラマ化されるとの情報を得た舛岡が、
樫宮美玲のキャスティングをプッシュしようと接近してきた際に、李奈が言った言葉。
一見すると、李奈の世界に生きる櫻木沙友理の考えが述べられているように思えますが、
ひょっとすると、これもまた白濱瑠璃が書き表したものなのかもしれません。
ただ、いずれにせよ、これまで多数の作品が映像化されてきた松岡さんの思いが、
強く滲み出ているような気はします。

  『十六夜月』が売れて以降、読者が趣味でない人からもサインを求められるようになった。
  差しだされた『十六夜月』にブックオフの値札が貼ってあることもめずらしくない。
  ほかにもにっこり笑いながら、図書館で順番まちなのでまだ読んでません、
  そんなふうにいってくる人もいる。
  いずれも著者がどう思うか、想像がつかない相手の心理に、むしろびっくりさせられる。
  断固として買わない気ですかと心のなかで突っ込みたくなる。(p.165)

これは、ようやくヒット作を生み出した李奈の現在の思いが書き記された部分。
この『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論』シリーズでは、
同じような内容のことが、これまでにも何度か書かれていたように思います。
やはり書き手である、松岡さんの思いが強く滲み出ていると感じました。

  「世間が村上春樹をどうとらえてるか知ってます?
   なんか知的で崇高な本だと思いこんでる。
『ノルウェイの森』 とか 『1Q84』 とかも、
   大ベストセラーではあっても国民全体からすれば、読んだ人はごく一部で、
   みんなが知っているのは題名だけ。
   じつは露骨な性描写だらけなのに」(p.24)

これは、李奈の最も親交が深い同世代の作家・那覇優佳子の言葉。
李奈が生きる世界のなかでの言葉ですが、松岡さんもこのように受け止めている?

  「松岡某ってのはいないんだよ。
   東映の八手三郎と同じく共同ペンネームみたいなもんでね。
   でなきゃ毎月だせるはずがない」
  瑠璃が鼻を鳴らした。
  「『八月十五日に吹く風』と 『万能鑑定士Q』 がおんなじ作者のはずがないよね。
   Qシリーズは莉子さんの旦那さんの著書でしょ」(p.279)

これは、李奈とやりとりするKADOKAWAの編集者・菊池と瑠璃の言葉。
もう、このあたりになると、何が何だか訳が分からなくなってきました。
「でなきゃ毎月だせるはずがない」は、全くその通りだと思うし……
取り敢えず、これまで未読だった『八月十五日に吹く風』は、読んでみようと思います。





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Last updated  2023.12.02 10:06:28 コメントを書く


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