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アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行した。その時に手先として使ったのはネオ・ナチ。その時のため、彼らはNATOの軍事訓練を受けている。そのクーデターを東部や南部の住民は拒否、南部のクリミアはロシアと一体化し、東部のドンバスでは内戦が始まった。 クーデターの目的は、2010年の大統領選挙で当選したビクトル・ヤヌコビッチを排除すること。西側の私的権力はウクライナを植民地化、ドイツとロシアを分断し、NATO軍を入れてロシアへ軍事侵攻できる態勢を整えようとしていた。これは1991年12月のソ連が消滅した直後からネオコンが目論んできたことだ。 2010年の大統領選挙でヤヌコビッチと争ったユリア・ティモシェンコは2005年1月から9月まで、そして07年12月から10年3月までウクライナの首相を務めた人物。その当時の大統領は西側が支援していたビクトル・ユシチェンコだ。ユシチェンコを大統領にするため、アメリカの支配層は「オレンジ革命」を実行、ヤヌコビッチを引き摺り下ろした。 しかし、ユシチェンコ政権が実行した新自由主義的政策によって大多数の国民は貧困化、一部の腐敗勢力が巨万と富を築いてオリガルヒと呼ばれるようになる。ティモシェンコもそうしたオリガルヒのひとりだ。2008年に彼女はジョージ・ソロスからのアドバイスに基づく政策を実行すると発言している。 ユシチェンコ時代に新自由主義の実態を知ったウクライナの有権者は2010年の選挙でヤヌコビッチを選んだのだが、投票行動は地域によって大きな違いがある。東部と南部は圧倒的にヤヌコビッチであり、西部はティモシェンコ。西側の私的権力や有力メディアが大統領に据えようとしたティモシェンコが負けたため、オバマ政権はクーデターを実行したわけだ。 アメリカ/NATOやティモシェンコたちはクーデターでウクライナ全土を制圧するつもりだったのだろうが、ソ連時代から自分たちをロシア人だと考えていた東部や南部の住民は抵抗、全土制圧はできず、ティモシェンコは怒る。その怒りを彼女は電話で爆発させた。その電話による会話は2014年3月18日に行われたと言われている。 その会話を録音、3月24日にインターネットで公開した人物がいる。会話の相手は国家安全保障国防評議会のネストル・シュフリチ元次官。その中でティモシェンコはウラジミル・プーチンだけでなく、ウクライナに住む800万人のロシア人を核兵器で殺すべきだと語っている。ティモシェンコはツイッターで電話が本物であることを認めたが、編集されていると弁明している。 クーデター後、ネオ・ナチのグループは街を威圧して歩き、暴力的に脅し回っている。そうした中には議会や検察事務所も含まれていた。そうした中、「選挙」が実施されるが、その直前の5月24日、マデリーン・オルブライト元国務長官がティモシェンコと会談している。それだけアメリカの支配層には好かれているティモシェンコだが、その悪事が広く知られていることもあり、西部地域でも嫌われていたようで、選挙では惨敗した。 しかし、その後もウクライナにおけるネオ・ナチの影響力は弱まらないまま現在に至っている。国民の意思には関係なく、アメリカ/NATOを後ろ盾とするウクライナの権力者はティモシェンコと同じ精神構造をしているようだ。
2023.06.30
ワグナー・グループを率いるエフゲニー・プリゴジンが引き起こした「反乱」は短時間のうちに沈静化、アメリカではウラジミル・プーチン政権の崩壊を妄想して興奮していたロシア憎悪の政府高官や「専門家」は落胆することになった。この「反乱」の真相は不明だが、プーチン大統領は「内乱」を阻止することに全力を尽くしたという。 今回の「反乱」について語る際、プーチン大統領は1917年2月にペトログラード(現在のサンクトペテルブルグで起こったストライキから始まる内乱を引き合いに出している。 この出来事は第1次世界大戦の最中に引き起こされた。ヨーロッパでは1914年7月28日にオーストリア-ハンガリー帝国がセルビアに宣戦布告して大戦が勃発していたのだ。 その当時、帝政ロシアではドイツとの戦争に積極的な産業資本家と消極的な大地主が対立している。産業資本家側には有力貴族のフェリックス・ユスポフが、また大地主側には修道士のグレゴリー・ラスプーチンがついていた。ラスプーチンの背後には皇帝アレキサンドロビッチ・ニコライ2世と皇后アレクサンドラがついていた。ドイツとロシアを戦わせようとしていたイギリスにとってラスプーチンは邪魔な存在だ。 戦争を望んでいなかった皇后は7月13日にラスプーチンへ電報を打って相談、ラスプーチンは戦争が国の崩壊を招くと警告しているが、その内容を盗み見た治安当局は議会などにリーク、ラスプーチンは腹部を女性に刺されて入院することになった。入院中にロシアは総動員を命令、ドイツは動員を解除するよう要求。それをロシアが断ったため、ドイツは8月1日に宣戦布告している。ラスプーチンが退院したのは8月17日のことだ。 すでにドイツと戦争を始めていたロシアだが、ラスプーチンが復帰したことでいつ戦争から離脱するかわからない状況。それを懸念したイギリス外務省は1916年にサミュエル・ホーアー中佐を責任者とする情報機関のチームをペトログラードへ派遣。チームにはスティーブン・アリーとオズワルド・レイナーが含まれていた。(Joseph T. Fuhrmann, “Rasputin,” John Wiley & Son, 2013) アリーの父親はユスポフ家に雇われた家庭教師のひとりで、アリー自身はユスポフの宮殿で生まれている。またレイナーはオックスフォード大学の学生だった時代からユスポフの親友で、流暢なロシア語を話した。(前掲書) ペトログラードにおけるイギリスのお抱え運転手だったウィリアム・コンプトンの日記によると、彼はレイナーをユスポフの宮殿へ1916年の10月後半から11月半ばにかけて6度運んだという。ユスポフは1916年12月19日にレイナーと会ったと書き残している。(前掲書) ラスプーチンは1916年12月30日に暗殺された。殺したのはユスポフだと言われているが、暗殺に使用された455ウェブリー弾はイギリスの軍用拳銃で使われていたもので、殺害現場にいた人の中でその銃弾を発射できる銃をもっていたのはレイナーだけだったという。 ユスポフは上流社会の堕落に憤り、犯行に至ったとされているが、世界の上流社会は堕落している。そのようなことで憤る人物が上流社会で生きることはできない。このハリウッド映画風の説明に説得力はないのだ。事実を直視すれば、ドイツとロシアの戦争をイギリスが継続させたかったのだという結論に達する。ドイツとロシアの共倒れを狙っていたということだろう。 二月革命で成立した臨時革命政府は戦争を継続する。そこでドイツは即時停戦を主張していたボルシェビキに目をつけたが、ボルシェビキの指導者は国外に亡命しているか刑務所に入れられていた。 そこでドイツはボルシェビキの幹部32名を「封印列車」でロシアへ運ぶ。ウラジミル・レーニンは1917年4月に帰国、7月にボルシェビキは武装デモを行うものの、鎮圧されてしまう。レーニンはフィンランドへの亡命を余儀なくされた。この時、臨時革命政府軍の最高総司令官になったのがラーブル・コルニーロフ将軍。労働者や兵士を味方につける必要性を感じたのか、臨時政府は7月にエス・エルのアレキサンドル・ケレンスキーを首相に就任させた。 ところが、コルニーロフが8月にクーデターを企てる。この武装蜂起にケレンスキー政府は対応できず、ボルシェビキに頼ることになった。そして十月革命につながり、革命政権はドイツの思惑通りに即時停戦を宣言、無併合無賠償、民族自決、秘密外交の廃止も打ち出した。 レーニンの命令でボルシェビキ政権はドイツとの戦争を停止するものの、アメリカが参戦、兵員を送り込んだほか、イギリスやフランスに物資を供給してたこともあり、ドイツは戦争に負けた。 しかし、そうした経緯があるため、大戦後、ドイツとソ連の関係は良好だった。両国の関係が悪化するのはドイツでナチスが実権を握ってからだ。ナチスはイギリスやアメリカの金融資本から資金的な支援を受けていたことがわかっている。 帝政ロシアの崩壊はラスプーチン暗殺が山場であり、その背後にはイギリス政府が存在していたと言えるだろう。その手先がユスポフだ。
2023.06.29
それでも遺伝子操作薬の接種を進める厚労省 厚生労働省は5月8日から6回目の接種を開始したが、推進側の思惑通りには進んでいない。半ば強制的に接種させられる施設などでは進むだろうが、一般的には危険性を知る人が増えているためだろう。 厚生労働省の省議室で「第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会」が開催された2日後、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」と称する遺伝子操作薬を「すべての小児に接種を推奨する」と日本小児科学会は発表した。 2021年の段階で「COVID-19ワクチン」が病気の予防に役立たず、しかも危険だということが明確になり、22年から世界的に接種は行われなくなっている。そうした中、日本だけが接種を推進している。WHO(世界保健機関)でさえ接種に消極的な「生後6か月から17歳の健康な小児」へ遺伝子操作薬を注射しようというのだ。 この遺伝子操作薬は人間の細胞に侵入、そこでスパイク・タンパク質を製造するのだが、そのスパイク・タンパク質こそが病気の原因だという事実をカリフォルニア州にあるソーク研究所が2021年3月に発表している。解説記事も出された。 そこで人間の免疫システムは病気の原因を作り出す人間の細胞を攻撃するようになり、炎症を引き起こす。自己免疫疾患だ。そこで免疫力を弱める力が働き、免疫不全の状態になる。つまりAIDS的な状態。病気に感染しやすく、癌になりやすくなる。 しかも、mRNAを細胞の内部へ運ぶために使われているLNP(脂質ナノ粒子)は人体に有害で、卵巣を含むあらゆる臓器に蓄積する。生殖システムが破壊される可能性が指摘されている。 また、スペインのパブロ・カンプラ教授は2021年6月、「COVID-19ワクチン」の中に「酸化グラフェン」があることを電子顕微鏡などで発見したと発表、11月には周波数の分析で酸化グラフェンが「ワクチン」に含まれていることを確認したと発表している。 その論文を読んだドイツの化学者、アンドレアス・ノアックは酸化グラフェンでなく水酸化グラフェンだろうと解説しているが、酸化グラフェンは人体に入ると水素と結合するとも言われているので、そのためかもしれない。 このグラフェン誘導体は一種の半導体だが、厚さが0.1ナノメートルの小さな「カミソリの刃」とも言え、そのカミソリの刃が体の中を動き回ることになる。この物質がなぜ混入したのか、また人体にどのような影響を及ぼすのかは明確でない。COVID-19とAIDS アメリカでは裁判所の命令でCOVID-19に関係した資料の公開が進んでいる。当初、医薬品メーカーやFDA(食品医薬品局)は「COVID-19ワクチン」に関する文書の公開を75年後まで引き伸ばそうとしていたのだが、裁判所はその要請を拒否したのだ。 医薬品業界で研究開発に関わってきたサーシャ・ラティポワの分析によると、接種計画はオバマ政権の時代にアメリカの国防総省が始めていることが判明したという。軍事的なプロジェクトだというのだ。 文書の分析から医薬品会社や監督官庁は薬の危険性を理解した上で、つまり死亡者や深刻な副作用、例えば血栓、自己免疫疾患、サイトカインストームなどが現れることを承知で接種を強行したことがわかってきた。医薬品などを投与したとき、血中に炎症性のサイトカインが放出され、悪寒、倦怠感、発熱、血圧変化などの症状を起こすことがあるという。 また、ロシア軍は昨年2月24日から巡航ミサイルなどでウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設などを攻撃した際に機密文書を回収しているが、その中に生物化学兵器に関する約2000文書が含まれていた。分析の結果、アメリカはウクライナで「万能生物兵器」を研究していたことが判明したとされている。そのウクライナでもCOVID-19に関する研究をしていた疑いがある。 国防総省は1969年6月の段階で人間の免疫システムが対応できない人工的な因子を5年から10年の間に開発するとしていた。 同省の国防研究技術局で副局長を務めていたドナルド・マッカーサーはアメリカ下院の歳出委員会で「著名な生物学者」の話をしている。人工的に作られた生物学的な因子、自然には存在せず、自然免疫を獲得できない因子を生産することが5年から10年以内に生産できる可能性があると彼は証言しているのだ。AIDS(後天性免疫不全症候群)のような病原体を1979年頃までに作り出せると見通しているとも言える。 1970年代は医薬品業界にとって厳しい時代だった。伝染病による死亡者が世界的に減少していたのだ。そのため、アメリカではNIH(国立衛生研究所)、その下部機関であるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)、CDC(疾病予防管理センター)の存在意義が問われていたという。そうした状況を一変させたのがAIDSだった。1984年11月から昨年12月までNIAID所長として伝染病対策を指揮した人物がアンソニー・ファウチだ。 AIDSはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)によって引き起こされるとされているが、このウイルスを発見し、2008年にノーベル生理学医学賞を受賞したのはフランスのリュック・モンタニエだ。 1983年に彼のチームが患者の血液からレトロウイルスを発見、LAVと名付けたのだが、その1年後、NIAIDのロバート・ギャロもAIDSの原因を特定したと発表、それをHTLV-IIIと名付けた。ギャロのウイルスはモンタニエから送られたLAVのサンプルから分離したものだったとされている。ギャロの上司がファウチにほかならない。 AIDSへの感染もPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査で判定していたのだが、この技術を開発したキャリー・マリスもPCRはこれをウイルスの検査に使ってはならないと語り、分析の技術であるPCRをAIDS感染の診断に使うべきでないというわけだ。AIDSで死亡したとされる人の大半は「治療薬」によって死んだとも言われている。 マリスは2019年8月に肺炎で急死、その年の12月にCOVID-19騒動が始まる。そこでファウチたち医療利権はPCRを持ち出してきた。この技術を診断に使うことができないとCDCが認めたのは2021年7月21日のことだ。人口問題 深刻な副作用を引き起こし、障害者を生み出すだけでなく少なからぬ人を死に至らしめた「COVID-19ワクチン」を日本政府はさらに接種させようとしている。世界的に接種がほぼ止まった理由のひとつは政治家や官僚が責任を問われることを恐れてのことだろうが、無責任国家日本では接種し続けている。 COVID-19プロジェクトの中心にアメリカの国防総省が存在しているということは軍事的な意味があるのだろう。その目的はまだ明確でないが、推進派はヒントを口にしてきた。例えばCNNを創設したテッド•ターナーやマイクロソフトを創業したビル・ゲーツは人口削減を訴えてきた。 WEF(世界経済フォーラム)を創設したクラウス・シュワブの顧問を務めるユバル・ノア・ハラリはAI(人工知能)によって不必要な人間が生み出されるとしている。アルゴリズムが炭素で表現されようがシリコンで表現されようが関係なく、仕事、特に専門化された仕事で人間はAIに勝てないというわけだ。そこで人間は余る。 ハラリが引用したオックスフォード大学の研究によると、2033年までにさまざまな職業がAIに乗っ取られる可能性が高いそうだ。スポーツの審判は98%の確率で、レジ係は97%、シェフは96%、ウェイターは94%、法律事務員は94%、ツアーガイドは91%、パン職人は89%、バスの運転手は89%、建設労働者は88%、獣医助手は86%、警備員は84%、船員は83%、バーテンダーは77%、記録係は76%、大工は72%、監視員は67%などだ。 人間がアルゴリズムよりも優れている仕事につけなければ、失業するだけでなく雇用される可能性がなくなる。雇用されても変化についていくことは難しく、身につけた能力が役に立たなくなる可能性が高い。テクノロジーの進歩によって、人口の大部分を必要としなくなるというわけだ。「ベーシック・インカム」という餌を与えるだけで人びとの不満を抑えることはできないだろう。 西側巨大資本の広報活動をしているWEF(世界経済フォーラム)を創設したクラウス・シュワブは2016年1月、スイスのテレビ番組マイクロチップ化されたデジタルIDについて話している。最終的にはコンピュータ・システムと人間を連結、つまり人間をコンピュータの端末にするというのだが、不必要になった人間は処分されるのだろう。 かつてイギリスではエンクロージャーによって共有地などが私有化され、土地を追われた農民は浮浪者や賃金労働者になった。労働者の置かれた劣悪な状況はフリードリヒ・エンゲルスの報告『イギリスにおける労働者階級の状態』やチャールズ・ディケンズの小説『オリバー・ツイスト』などでもわかる。 ロンドンのイースト・エンドで労働者の集会に参加したセシル・ローズは「パンを!パンを!」という声を聞く。その状態を放置すれば内乱になると懸念、植民地を建設して移住させなければならないと考えたようだ。つまり、社会問題を解決する最善の方法は帝国主義だというわけである。 では、AIによって街にあふれる人びとを現在の支配層はどのようにしようとしているのだろうか? 移住させるためには移住先の人びとを殺すという方法もあるが、彼らが不必要だと考える人の数は少なくない。「COVID-19ワクチン」は一気に人口を減らす手段として有効だと彼らが考えたとしても不思議ではない。
2023.06.28
エフゲニー・プリゴジンは6月23日、ワーグナー・グループの部隊を率いてロストフ・オン・ドンへ入り、ロストフ・オン・ドンからモスクワへ向かうように命令したとされている。 あまり現実的でない話だが、ワシントンの「専門家」はウラジミル・プーチン政権の崩壊を妄想し、大騒ぎだったという。元駐露大使のマイケル・マクフォール、あるいはネオコンのアン・アップルバウムなどは特に興奮していたようである。 マクフォールは2012年1月に大使としてロシアに赴任したが、その年の3月には赴任先で大統領選挙が予定されていた。結局、選挙ではプーチンが勝利しているが、マクフォールは反プーチン派に接触、選挙工作を進めていた。 この当時のアメリカ大統領はバラク・オバマ。同政権にマクフォールは2009年から上級顧問として参加、中東から北アフリカにかけての地域で実行された体制転覆工作にも加わっている。 スタンフォード大学時代、1983年と85年にマクフォールはソ連の大学で短期間学び、91年にはローズ奨学生としてオックスフォード大学に留学している。 アップルバウムの夫はポーランドで国防大臣や外務大臣を務めたラデク・シコルスキー。ロシアとドイツがバルト海に建設した2本のパイプライン「ノードストリーム」と「ノードストリーム2」が2022年9月に爆破された直後、「ありがとう、アメリカ」と書き込んだ人物だ。 1983年からシコルスキーはオックスフォード大学で学ぶが、その際に学生結社「ブリングドン・クラブ」へ入っている。メンバーの多くはイートン校の出身、つまり富豪の子どもたちで、素行が悪いことで知られている。シコルスキーと同じ1980年代のメンバーにはボリス・ジョンソン、デイビッド・キャメロン、ジョージ・オズボーン、トニー・ブレアといった後の政治家、そして金融界に君臨しているナット・ロスチャイルドも含まれている。帝政ロシアの有力貴族で、ドイツとの戦争を推進し、グレゴリー・ラスプーチン暗殺に関わったフェリックス・ユスポフもクラブのメンバーだった。 アメリカの有力メディアも内戦と殺戮を期待していたようだが、4日の午後にはロシアにおけるワグナー・グループの行動を中止することでベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領とプリゴジンが合意し、ロシア政府はワーグナー・グループの幹部に対する訴追を取り下げると発表した。プリゴジンはベラルーシに「追放」される。 マクフォールは23日、ウラジミル・プーチンがワグナー・グループを攻撃するように命じ、自分はモスクワから逃げ出したと主張、内戦になるとも語っていた。勿論、そうした展開にはならなかった。 CNNやニューヨーク・タイムズ紙はアメリカと西側の情報機関が以前から「クーデター」の動きに気づいていたと伝えた。第三者として気づいていたと言うなら、ロシアの情報機関も気づいていたはずで、失敗すると考えていたはずだ。 そうすると、情報機関から情報を入手できそうな人びとが興奮していたのは不自然だ。プリゴジンはアメリカなどの情報機関と連絡を取り合い、その情報を聞いていた「専門家」が舞い上がったのかもしれない。 本ブログでも書いたが、ワグナー・グループの行動は「マスキロフカ」、つまり欺瞞作戦だった可能性がある。ワグナー・グループはロシアの情報機関によって創設され、ロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めているウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将がその背後にいたと言われ、しかも今年5月4日からミハイル・ミジンチェフ上級大将が副司令官を務めている。ワグナー・グループの将校はひとりも「反乱」に加わっていないという。料理人のプリゴジンが独断で部隊を動かしたというのは不自然である。 ひとつの可能性として、西側からプリゴジンに何らかのアプローチがあり、誘いに乗ったふりをしたということも考えられる。ワグナー・グループを動かし、西側がロシア国内に作ったネットワークを動かして実態を調べようとしたのかもしれない。 真相は不明だが、ともかくジョー・バイデン大統領や彼の周辺にいる好戦派はウクライナで彼らが勝利するという妄想を抱き続けている。 ウクライナ軍が6月4日に「反転攻勢」を始めるとバイデン米大統領は祝福、デビッド・ペトレイアス元CIA長官はロシア軍が蹴散らされると語っていたようだ。 5日には攻勢が失敗に終わることが見えてくるが、6日にはノヴァ・カホウカ・ダムが爆破され、ヘルソンのロシアが支配している地域は洪水で水浸しになった。 ウクライナ軍の侵攻を防ぐために作られた地雷原は今回の洪水で押し流され、水が引いて土地が乾燥した後、攻め込むことが容易になると考える人がいる。破壊されたダムはクリミアの水源であると同時に電力の供給源であり、ザポリージャ原子力発電所もダムの水力発電所から電力の供給を受けている。 ワシントン・ポスト紙は昨年12月にウクライナ軍のアンドリー・コバルチュク少将をインタビュー、ドニエプル川を氾濫させるという構想を聞いている。同少将はヘルソン地区におけるウクライナ軍を指揮している軍人だ。その構想に基づき、昨年8月にウクライナ軍はHIMARSでノヴァ・カホウカ・ダムを攻撃、3カ所に穴を開けたとコバルチュク語っている。テストは成功したものの、最後の手段として取っておくとしていた。 25カ国から最大1万人が参加、派遣される航空機は220機に達するという軍事演習「エア・ディフェンダー23」をNATO軍は6月12日から23日にかけて実施する予定だった。これは演習を装った実戦ではないかと疑う人もいたが、米英の好戦派がそう考えたとしても、NATO内には同調しない国が少なくなかっただろう。
2023.06.27
マデリーン・オルブライトは1996年5月12日に放送されたCBSの番組「60ミニッツ」の中で、レスリー・スタールからアメリカの「制裁」でイラクの子ども50万人が死亡したことを問われ、「その代償に見合う価値がある」と答えている。目的のためなら大量殺戮を厭わないということだ。 その翌年の1月にオルブライトは国務長官に就任、1998年秋にはユーゴスラビアに対する空爆を支持すると表明した。1999年3月から6月にかけてNATO軍はユーゴスラビアへの空爆を実施している。 人権擁護を看板に掲げるアムネスティ・インターナショナル(AI)は2012年5月、「アフガン女性の権利に関する陰のサミット」を開催した。その際、街頭に張られたAIのポスターには、「NATO:前進し続けろ」と書かれていた。その催しのパネル・ディスカッションにオルブライトは呼ばれている。「アフガン女性の権利」という名目で女性を含むアフガニスタンの人びとをNATO軍は虐殺するわけだ。 オルブライトはコロンビア大学でズビグネフ・ブレジンスキーから学んでいる。ブレジンスキーは1979年4月、NSC(国家安全保障会議)でアフガニスタンの「未熟な抵抗グループ」に対する「同情」を訴え、CIAはゲリラへの支援プログラムを開始する。ブレジンスキーはCIAと緊密な関係にあった。 ブレジンスキーは1977年1月にジミー・カーター大統領の国家安全保障補佐官に就任しているが、その年にパキスタンでは軍事クーデターがあり、ベナジル・ブットの父親であるズルフィカル・アリ・ブットの政権が倒され、陸軍参謀長だったムハンマド・ジア・ウル・ハクが実権を握った。ハクはアメリカのノースカロライナ州にあるフォート・ブラグで訓練を受けた軍人で、ムスリム同胞団系の団体に所属していた。(Thierry Meyssan, “Before Our Very Eyes,” Pregressivepress, 2019) ベナジル・ブット首相の特別補佐官を務めていたナシルラー・ババールによると、アメリカは1973年からアフガニスタンの反体制派へ資金援助しはじめている。反体制派の選定はパキスタンの情報機関ISIのアドバイスに従った。(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005) アフガニスタンにおける工作ではソ連との戦闘を想定、武装集団を編成している。イギリスの外務大臣を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックが2005年7月に明かしたように、「アル・カイダ」はCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リスト。アラビア語でアル・カイダはベースを意味、データベースの訳語としても使われる。このリストを利用して武装集団は組織されてきた。 オルブライトはバラク・オバマ政権で国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務めたスーザン・ライスを子どもの頃から知っていた。スーザンの母親、ロイスはブルッキングス研究所の研究員で、自宅にオルブライトも訪れるほど親しくしていたのだ。オルブライトはビクトリア・ヌランドやヒラリー・クリントンと親しい。 1980年にオルブライトはスミソニアン博物館のウッドロー・ウィルソン国際学術センターで研究を始める。そこでポーランドの「連帯」運動をテーマにし、ポーランドを訪問、グダニスク、ワルシャワ、クラクフで反体制派にインタビューしている。 1982年に彼女はジョージタウン大学で教え始める。その年に河野太郎が同大学へ入学、オルブライトのゼミに参加している。1984年に河野はポーランドの中央計画統計大学へ留学、反体制派の神学生と一緒に連帯書記長のレフ・ワレサの自宅を訪問、ポーランド警察に逮捕され、留置所に連行されたという。当時、すでに連帯とCIAとの関係は知られていた。 1982年6月7日にはロナルド・レーガン大統領が教皇ヨハネ・パウロ2世とローマ教皇庁の図書館で50分にわたり、密談している。同じ時、別の場所でアレキサンダー・ヘイグ国務長官とウィリアム・クラーク国家安全保障補佐官が教皇庁の要人と会っていた。カール・バーンスタインによると、レーガンと教皇は大半の時間をソ連の東ヨーロッパ支配の問題に費やされ、ソ連を早急に解体するための秘密工作を実行することで合意したという。(Carl Bernstein, “The Holy Alliance,” TIME, Feb. 24, 1992) 1991年12月にソ連は消滅、アメリカが「唯一の超大国」になったと認識したネオコンが92年2月に世界制覇プランを作成、アメリカ国内を収容所化、国外で侵略戦争を本格化させていく。その手始めがユーゴスラビアへの軍事侵略だった。
2023.06.26
ワグナー・グループのエフゲニー・プリゴジンはベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領との交渉を経て、自分の部隊に対し、移動の停止とロストフ・オン・ドンの明け渡しを命じた。それにともない、ロシア政府はワーグナー・グループの幹部に対する訴追を取り下げると発表している。 ロストフ・オン・ドンのワシリー・ゴルベフ州知事はワグナー・グループの戦闘員がロストフを離れたと述べた。部隊のメンバーはソレダルやアルチョモフスク(バフムート)の近くにあるキャンプへ戻り、武装解除されると見られている。蜂起に参加しなかった隊員はロシア国防省と新たな契約を結ぶことができ、プリゴジンはベラルーシに行くという。ロシア国内の高速道路に課されたすべての制限が解除されたと伝えられている。 この騒動は何だったのか? ひとつの可能性はロシア国防省が契約更新を拒否したことにプリゴジンが怒ったというもの。第2はプリゴジンがアメリカ/NATOに内通していて、両者が連携して軍事作戦を予定していたが、梯子を外されてしまった可能性。そしで第3は「マスキロフカ」、つまり欺瞞作戦だったというもの。 第1のシナリオは可能性が小さいだろう。第2のシナリオは、例えばNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」を利用した軍事作戦があり、それと連動して蜂起する予定だったが、その作戦が取りやめになったというようなもの。ジョー・バイデン大統領やその取り巻きの好戦派ならやりそうだが、すでに少なからぬNATO加盟国は米英主導の対ロシア戦争に乗り気ではない。そもそも、自国の武器庫は空だ。 そして第3のシナリオ。これは元CIA分析官のラリー・ジョンソンが提示しているもの。まずジョンソンはワグナー・グループがロシアの情報機関によって創設されたと指摘する。ロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めているウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将が背後にいたと言われ、しかも今年5月4日からミハイル・ミジンチェフ上級大将が副司令官を務めている。軍事的素人のプリゴジンが独断で動かせるような武装集団ではないということだ。 また、サンクトペテルブルクのワグナー・グループ本部へ警官隊や軍隊を派遣するまでロシア政府が約12時間待ったという不自然さを指摘する。プリゴジンはワグナー部隊に対し、ロストフ・オン・ドンからモスクワへ向かうように命令したというが、その距離は1200キロメートル近い。燃料を補給しながらその距離を20時間以内に移動できるのかともジョンソンは指摘している。 第3のシナリオが正しいなら、騒動の間にロシア軍の新たな作戦の布石を打った可能性がある。プリゴジン騒動で作られた状況を利用し、すでに潜入しているはずのアメリカ/NATO/ウクライナの破壊工作部隊を摘発しようとしているかもしれない。
2023.06.25
ベラルーシでの報道によると、同国のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領と6月24日に話し合ったエフゲニー・プリゴジンはロシアにおけるワグナー・グループの行動を中止することに同意したという。ロシア軍は軍事蜂起した部隊に対し、手遅れになる前に降伏するよう呼びかけていた。 ワグナー・グループ創設の背後にはロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めているウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将がいると言われ、今年5月4日からミハイル・ミジンチェフ上級大将がワグナー・グループの副司令官を務めている。ミジンチェフの副司令官就任は同グループ内に不穏な動きがあったからかもしれない。 プリゴジンに従った兵士は限られているだろうが、それだけでなくロシア国内で彼らに同調する人がほとんどいない。つまり孤立無縁の状態で、ロシア軍の治安部隊が作戦を開始すれば短時間で制圧される可能性が高い。NATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」を利用した何らかの作戦があったのかもしれない。 その一方、プリゴジンの蜂起はロシア国外に逃れているオリガルヒは支援を表明している。その代表格がミハイル・ホドルコフスキー。ソ連時代、彼はコムソモール(全ソ連邦レーニン共産主義青年同盟)の指導者だった。 1989年にはロシアの「モデル」をニューヨークへ送るビジネスを始めたリチャード・ヒューズなる人物のため、ホドルコフスキーは出国ビザを手に入れている。彼にはKGB人脈があった。(Michael Gross “From Russia with Sex”, New York, August 10, 1998)その年に彼は銀行設立のライセンスを取得、メナテプ銀行を設立。後にCIAから「世界で最も腐敗した銀行のひとつ」と言われている。(The Village Voice, September 7, 1998) 1995年には石油会社のユーコスを買収、中小の石油会社を呑み込んでいく。同時にモスクワ・タイムズやサンクトペテルブルグ・タイムズを出している会社の大株主になった。また西側の広告会社からアドバイスを受け、彼はジョージ・ソロスの「オープン・ソサエティ基金」をモデルにした「オープン・ロシア基金」を2002年9月にアメリカで創設、ヘンリー・キッシンジャーやジェイコブ・ロスチャイルド卿を雇い入れている。 ユーコスは西側の銀行から数億ドルの融資を受けていたが、それ以外に強大な投資会社カーライル・グループからも資金を得ていたことが知られている。 ホドルコフスキーが裏で手を握っていた相手はリチャード・チェイニーを含むアメリカの支配層で、ユーコスの発行済み株式のうち25から40%をアメリカの巨大石油会社であるエクソン・モービルとシェブロンへ売り渡そうとした。つまり、ロシアのエネルギー資源をアメリカが支配する仕組みを作り上げようとしていたのだ。(Natylie Baldwin & Kermit Heartsong, “Ukraine,“ Next Revelation Press, 2015) それに対し、ウラジミル・プーチンはオリガルヒに対し、クレムリンに従うように命令、その要求を飲めない富豪はロンドンやイスラエルなどへ脱出した。ロシアに残ったオリガルヒはロシア政府に従うことを承諾したわけだが、ホドルコフスキーは例外で、国内にとどまりながらクレムリンと対決した。そして2003年10月、ロシアの石油資源をアメリカの会社に売り渡す直前、彼は逮捕された。恩赦で釈放され、国外へ脱出したのは2013年12月のことだ。
2023.06.25
NATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」が終了した6月23日、ロシアの連邦保安庁(FSB)は傭兵会社ワグナー・グループを率いるエフゲニー・プリゴジンの捜査を開始した。武装反乱の呼びかけ容疑だ。「私たち全員が死ぬ準備ができている。25,000人全員、そしてさらに25,000人だ」と語ったと言われている。ロシア軍がワグナー・グループの「後方野営地」を攻撃したという話も流れたが、ロシア国防省は否定している。 ワグナー・グループの役割はロシア軍の支援を受け、都市を攻略する作戦に従事してきた。岩塩の採掘場を利用してアメリカ/NATOが築いた地下要塞のあるソレダルを今年1月に制圧した後、アルチョモフスク(バフムート)へ向かう。5月上旬にはその80から90%を制圧、ワーグナー・グループの任務も終わりに近づいた。 そうした5月5日、プリゴジンは自分が率いる部隊を5月10日にバフムート(アルチョモフスク)から撤退させると宣言。十分な弾薬が供給されず、部隊に多くの死傷者が出ているとしてセルゲイ・ショイグ国防大臣を批判している。チェチェン人部隊を率いているラムザン・カディロフも同じことを主張していた。そうした批判があった時期にショイグと司令官たちが武器の供給について話し合った。 それから間もなくしてワーグナー・グループはバフムートで勝利、プリゴジンは5月20日、アルチョモフスクの「解放」を宣言、25日から部隊を撤退させると発表した。その際、セルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。 スロビキンは昨年10月からドンバス、ヘルソン、ザポリージャの先頭を指揮している軍人。ミジンチェフはマリウポリを解放した作戦の指揮官だった。今年5月4日からミジンチェフはワグナー・グループの「副司令官」を務めているが、料理人のプリゴジンではなくミジンチェフが本当の司令官だと考える人もいた。 マリウポリを占領、拠点化していたのはネオ・ナチを主力とするアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊やアゾフ連隊とも言われる)。内務省に所属する親衛隊の中核で、ロシア軍が攻撃を始めると住民は人質として使っていた。 ジョー・バイデン政権はウクライナでロシア軍が「ジェノサイド」を行っていると主張、それを西側の有力メディアは宣伝しているが、解放されたマリウポリ市民は異口同音に親衛隊の残虐行為を告発していた。その様子を撮影した映像がインターネット上に流れている。 ロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めているウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将も注目されている。多くの秘密作戦の計画に参加、彼を通じてさまざまな民間の警備会社や軍事会社が国防省と契約している。ワグナー・グループ創設の背後にもアレクセーエフがいたとも言われているのだ。 プリゴジンには犯罪歴があり、暴力犯罪で2度刑務所に入っているようなので、性格に問題があると言えそうだが、彼の周辺には有名な軍人がいる。プリゴジンやワグナーの何者がウクライナ軍へロシア軍に関する情報を提供しているという「噂」があるそうだが、ならば早い段階から捜査は始まっていた可能性が高く、身の危険をプリゴジンは感じていたかもしれない。 今回の騒動は彼の性格に起因するのか、彼が外国の工作員なのか、ロシア軍が計画している何らかの作戦の布石なのか、何が正しいのか不明だ。エア・ディフェンダー23を利用してNATO軍がロシアを攻撃、それに合わせてロシア国内で武装蜂起を計画していた可能性もあるだろう。プリゴジンの背後には米英金融資本と結びついた反プーチン派のオリガルヒがいるという見方もある。
2023.06.25
ブラックロックは「闇の銀行」のひとつだ。「闇の銀行」とは銀行のような規制は受けない巨大金融機関で、メディアやシリコンバレーのハイテク企業を含むアメリカの主要500社の9割近くを支配している。 ブラックロックを率いるラリー・フィンクはウクライナとのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とも関係が深い。ウクライナは兵器のほか「復興資金」を西側政府から提供されているが、その資金の使い道に関してアドバイスしているのがブラックロックだという。そのブラックロックで採用担当者だというセルジュ・バーレーとの話をジェームズ・オキーフのチームは隠し撮りし、その映像を公開した。 汚職まみれのゼレンスキー大統領だが、今年1月、ブラックロックのほか、JPモルガンやゴールドマン・サックスと協力関係にあることを明らかにしている。アメリカの実業家に対し、軍事だけでなく建設、通信、農業、輸送、IT、金融、そして医療の分野でウクライナと手を組むすべての人が大儲けできると訴えている。 ウクライナでの内戦は2013年11月から14年2月にかけてアメリカのバラク・オバマ政権が実行したクーデターから始まる。2010年の大統領選挙で当選したビクトル・ヤヌコビッチをネオコンは排除したかったのだ。ウクライナに反ロシア体制を築いてドイツとロシアを分断、両国を弱体化しようとしたのだ。 ヤヌコビッチが支持基盤にしていた東部と南部はソ連時代にロシアからウクライナへ割譲されたこともあり、住民の7割以上がロシア語を話し、東方正教会の文化圏に属す。1991年12月にソ連が消滅した直後から住民の大半はロシアへ戻ることを望んでいた。ウクライナ語を話し、カトリック文化圏の西部とは別だと考えた方が良いだろう。 キエフにおけるクーデターでヤヌコビッチを排除することに成功したアメリカ政府だが、資源地帯である東部や軍事的に重要なクリミアの制圧には失敗した。そこで2014年以降、アメリカ/NATOはクーデター体制の戦力を増強、ドンバス周辺に要塞線を建設、攻撃するチャンスを待っていた。昨年春、そのチャンスが到来したとアメリカ/NATOは考えたが、その直前、ロシア軍はウクライナ軍に対するミサイル攻撃を始めている。 こうした戦略を利用し、西側の大企業は大儲けしてきた。兵器の製造メーカーが儲かることは言うまでもないが、ブラックロックのような金融機関にとってもビジネス・チャンスだ。兵器メーカーに投資しているというだけでなく、穀物をはじめとする商品の相場が大きく動くため大儲けすることができる。不安定な状況はビジネスにとって良いことだとセルジュ・バーレーは語っている。 オキーフはプロジェクト・ベリタスを創設、有力メディアが触れない権力の闇に切り込んでいたが、ファイザーの研究開発ディレクターだというジョーダン・ウォーカーとの会話を隠し撮りして公表した後にベリタスの幹部と衝突、組織から離れた。幹部は「有給休暇」だとしていたが、オキーフは幹部に辞任を求め、それを受け入れないならば自分が辞めると宣言、辞めた。 ブラックロックのような巨大資本は戦争がカネになると考えているわけだが、ウクライナではジョー・バイデン政権の思惑が外れ、ロシアが圧倒的に有利な戦況だ。 勿論、バイデン政権はこうした展開になると予想していなかったはずだ。ロシア軍が攻撃を始めた直後、アメリカの好戦派はロシアが罠にかかったと信じ、喝采していたようだ。西側のメディアはアメリカの好戦派が事前に作成したシナリオに従って「報道」したのだろうが、彼らの作戦通りにロシア軍は動かなかった。 アメリカ/NATOは2014年から8年かけてドンバスを要塞線で囲んでいたと言われ、その中へロシア軍を誘い込むためにドンバスで住民を虐殺する計画を立てていたことを示す文書がある。要塞線の中にロシア軍を閉じ込め、クリミアを攻撃するという手順だった可能性がある。 しかし、ロシア政府の動きは早く、ウラジミル・プーチン大統領がドンバス(ドネツクやルガンスク)の独立を承認した直後にドンバス周辺に集結していたウクライナ軍や外国の部隊をミサイルで攻撃、壊滅させた。しかもロシア軍の地上部隊はドンバスへ入らない。戦ったのは現地部隊、チェチェン部隊、そしてワグナー・グループだ。 こうした窮地から脱出するひとつの手段として、アメリカ/NATOがF-16を利用した核攻撃、あるいは「汚い爆弾」でウクライナやロシアを放射能まみれにする可能性を指摘する人は少なくない。 そこで、6月12日から23日まで実施されたNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」を利用、そのままNATO軍がロシアを攻撃するのではないかと懸念する人もいた。そうした事態になればバイデンの敗北しそうな来年の大統領選挙は消えてしまう可能性がある。 それに対し、ロシアは局地的な核戦争はありえないと警告、行動でも示してきた。ロシアは新しいフリゲート艦に極超音速ミサイルを搭載、また戦略ミサイル部隊の約半数がヤースミサイル・システムを装備し、極超音速弾頭アバンガルドを搭載した最新のミサイルシステムによる再武装が進んでいるとウラジミル・プーチン大統領は6月21日に述べた。アメリカ/NATOはこうしたミサイルのターゲットになるというわけだろう。 それだけでなく、ここにきてチェチェンの指導者ラムザン・カディロフは歩兵機動車ティグルを中国から受け取ったと語ったようだ。この車両の乗員は2名で、完全装備の歩兵9名を乗せることがでる。この供与は戦力的に大きな意味はないが、ロシアと中国が軍事同盟を結んでいることを示している。アメリカ/NATOはロシアと中国、どちらかだけと戦争することは不可能ということであり、単なる相場の材料だと考えるべきでもない。
2023.06.24
厚生労働省は6月23日、4月分の「人口動態統計速報」を発表した。それによると死亡者数は12万3040人だ。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の接種が始まる前に比べるて大幅に増えている状況に変化はない。 増加率は高まっていないようだが、これは昨年12月後半から年明け後にかけて接種者が大きく減少した影響かもしれない。5月8日には6回目の接種を厚生労働省は開始、マスコミも接種キャンペーンを展開し、最初は接種数が増えたものの、すぐ減少に転じた。6月の死亡者数は8月に発表される。
2023.06.24
アントニー・ブリンケン国務長官は6月19日に北京で中国の習近平と会談、アメリカは台湾の独立を支持しないと語った。ウクライナでロシアに敗北し、ドル体制を支えてきたサウジアラビアが離反するなどアメリカの置かれた状況は厳しくなっている。 昨年4月30日にウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めたナンシー・ペロシ米下院議長(当時)は8月2日に台湾を訪問、蔡英文総統と会うことで「ひとつの中国」を否定した。中国は反発、東アジアの軍事的な緊張は強まる。 アメリカ政府は中華人民共和国を中国における唯一の合法政府であると1978年の米中共同声明で承認、その政策を続けてきた。この政策への門を開いたのは1972年のリチャード・ニクソン大統領による中国訪問。アメリカは1979年に中国と国交を樹立、台湾と断交した。その政策をペロシの台湾訪問は壊す行為だ。 ブリンケンは今回の訪問で台湾の独立を支持しないと明言、アメリカと中国の関係を安定させたいと語った。「ひとつの中国」政策を継続するという意思表明だ。 1980年代に中国を自分たちの影響下に置いたとアメリカの支配層は認識していたが、バラク・オバマ政権がウクライナでクーデターを実行し、香港で反中国運動を仕掛けた2014年以降、ロシアと中国は急速に接近し、同盟関係を結ぶ。これはアメリカの戦略を揺るがす展開だ。 しかむウクライナのクーデター体制は事実上、崩壊した。アメリカ/NATOの支援で何とか生き延びている、いわば「ゾンビ」状態だ。そこで東アジアへ「転進」しようと目論んだ勢力がいるようだが、製造を中国に依存してきたアメリカは中国との関係を断ち切るわけにはいかないはずで、ブリンケンが中国で「唯一の中国」を確認したのはそのためだろう。 しかし、ブリンケンの発言をジョー・バイデン大統領は6月20日に覆してしまう。カリフォルニアで開かれたイベントでバイデンは習近平を「独裁者」と呼び、「Quad」の話をしている。 Quadはアメリカ、オーストラリア、インド、そして日本で構成される「反中国」の軍事同盟だ。アメリカとオーストラリアはイギリスを加えた3カ国で「AUKUS」という軍事同盟も組織、オーストラリアはアメリカとイギリスの技術で原子力潜水艦を建造すると報道された。ロシア国家安全保障会議のニコライ・パトロシェフ議長はAUKUSが中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘している。 すでにロシアはアメリカと問題を外交的に解決することができないと認識しているが、バイデン発言によって中国も同じように考える可能性が高い。 昨年、アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書には、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画が記載されている。RANDによると、そうしたミサイルを配備できそうな国は日本だけだ。 しかし、その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力するという形にした。ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。 実際、自衛隊は南西諸島にミサイル発射基地を建設してきた。2016年には与那国島、19年には宮古島と奄美大島、今年3月には石垣島で駐屯地が建設されている。 日本は軍事拠点を作るだけでなく、高性能兵器の開発にも乗り出していると伝えられている。例えばアメリカと共同で音速の5倍以上で侵入してくるHGV(極超音速滑空体)を迎撃するミサイル技術の研究開発を考え、昨年7月24日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で迎撃ミサイルに必要な速度に到達することが可能だとされるエンジンの飛行試験を初めて実施した。 極超音速で飛行するミサイル自体も研究だと言われ、HGVではなくエンジンによって推進力を得る極超音速巡航ミサイル(HCM)の開発を目指しているという。2026年には九州や北海道の島々へ配備したいようだ。 政府は国産で陸上自衛隊に配備されている「12式地対艦誘導弾」の射程を現在の百数十キロメートルから1000キロメートル程度に伸ばし、艦艇や戦闘機からも発射できるよう改良を進めていると昨年8月に伝えられているが、その背景にアメリカのGBIRM計画があった。 日本は射程距離が3000キロメートル程度のミサイルを開発し、2030年代の半ばまでに北海道へ配備する計画だとも伝えられている。それが実現するとカムチャツカ半島も射程圏内だ。 こうした当初の計画では準備が間に合わない事情がアメリカに生じ、トマホークを購入することにしたのだろう。 NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。2024年中に連絡事務所をNATOは連絡事務所を東京に設置するという また、オーストラリアは2021年9月、イギリスやアメリカとAUKUSなる軍事同盟を創設したと発表、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。バイデン大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると語っている。 アメリカはこうした流れの中に今もいることをバイデン発言は示している、少なくとも中国はそのように考えるだろう。
2023.06.23
82年前の6月22日にドイツはソ連に対する軍事侵攻を始めた。「バルバロッサ作戦」である。 EUではエリート層がアメリカ支配層に従属し、ウクライナを舞台にしたロシアとの戦争に参加する一方、庶民はその戦争に反対し始めている。フランスではエマニュエル・マクロン政権への批判が高まる一方、マリーヌ・ル・ペンが率いる「国民連合」を支持する人が増え、マクロンからル・ペンへの政権交代を望む人が41%に及ぶという。 ドイツでもロシアとの戦争に反対する人は多いのだが、ロシアを敵視しない者は弾圧され、犯罪者として扱われている。今年1月にはハインリヒ・ビュッカーが公然とウクライナにおけるドイツの戦争政策に反対したとして有罪になった。この人物は反ファシスト協会(VVN-BdA)や左翼党のメンバーだ。 こうした政府による反戦活動取締りの中、多くの人は慎重に発言していたが、今年1月25日にオラフ・ショルツ首相はドイツの「レオパルト2」戦車をウクライナに送ると決定した。その決定を後押しするため、イギリスは自国の主力戦車である「チャレンジャー2」と劣化ウラン弾の提供を決め、アメリカも主力戦車「M1エイブラムズ」を渡すと決めている。 西側には「無敵の戦車」が投入されると喜んだ人もいるらしいが、現在の戦闘では航空兵力の支援なしに戦車を戦場に投入すれば無惨なことになる。昨年春の段階でウクライナ軍には航空兵力はないに等しく、そうした状態でロシア軍に向かわせれば壊滅的な結果が待つ。日本軍の「海上特攻」と同じだ。 実際、今月に入って始められた「反転攻勢」ではそうした展開になった。この作戦で戦死したウクライナ兵は15万人から25万人だとも推測されている。航空兵力の支援を受けられない「戦艦大和」で戦況を一変させることはできない。すぐにでも10万人程度を兵士として集めなければならないとする人もいる。 新たな部隊を前線へ送らなければならない状況のため、ジョー・バイデン政権は6月12日から23日まで実施されているNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」を利用するのではないかと懸念されていたが、バイデン政権のためにロシアと戦争する覚悟ができているNATO加盟国は多くないようだ。 ロシアからドイツへ天然ガスを運んでいたノード・ストリーム1やノードストリーム2の破壊、クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)の爆破、ノヴァ・カホウカ・ダムの破壊などのような破壊工作と同じように何らかの破壊工作を実施、「ロシアがやった」とメディアに宣伝させることも考えられる。原子力発電所を破壊し、アメリカ/NATO軍を前面に出してくるというシナリオもある。バイデン政権が抱えるスキャンダルや来年の大統領選挙を消し去るためには思い切ったことを行うしかない。例えば2001年9月11日の攻撃のような出来事だ。 NATOの初代事務総長でウィンストン・チャーチルの側近だったヘイスティング・ライオネル・イスメイはNATOを創設した目的について、ソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえ込むことのあると公言していた。ソ連が消滅した現在、締め出す対象はロシアだ。 米英を支配する私的権力はドイツを押さえ込む仕掛けをドイツ国内にも作った。アメリカは各国の情報機関、治安機関、軍、メディア、労働組合、アカデミーなどへネットワークを広げていく。これは日本でも当てはまる。 ドイツの場合、ナチスはウォール街やシティ、つまり米英金融資本をスポンサーにしていた。したがってウォール街の弁護士だったアレン・ダレスはナチスの幹部ともつながっている。 ドイツは1941年6月22日に対ソ連戦を始めた。いわゆる「バルバロッサ作戦」だ。アドルフ・ヒトラーの命令でこの作戦に戦力の4分の3を投入した。西から攻めてこないことを知っていたかのようだ。 ソ連はドイツとの戦争で2000万人とも3000万人とも言われる国民が殺され、工業地帯の3分の2を含む全国土の3分の1が破壊され、惨憺たる状態で、西ヨーロッパに攻め込む余力があったとは思えない。 ドイツ軍は7月にレニングラードを包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点に到達した。10月の段階でドイツだけでなくイギリスもモスクワの陥落は近いと考えていたが、年明け直後にドイツ軍はモスクワで敗北してしまう。ドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入するものの、ここでもソ連軍に敗北。そして1943年1月に降伏した。この段階でドイツの敗北は決定的だった。このバルバロッサ作戦にフィンランドはドイツ側について戦っている。 この段階でSS(ナチ親衛隊)はアメリカとの単独講和への道を探りはじめ、実業家のマックス・エゴン・フォン・ホヘンローヘをスイスにいたOSS(戦略事務局)のアレン・ダレスの下へ派遣。1944になるとOSSのフランク・ウィズナーを介してダレスのグループがドイツ軍の情報将校、ラインハルト・ゲーレン准将(ドイツ陸軍参謀本部第12課の課長)と接触した。ウィズナーもダレスと同じようにウォール街の弁護士。 ダレスたちが接触した相手にはSA(突撃隊)を組織、後にヒトラーの第一後継者に指名されたヘルマン・ゲーリングも含まれる。ウォール街人脈はゲーリングを戦犯リストから外そうとしたのだが、ニュルンベルク裁判で検察官を務めたロバート・ジャクソンに拒否された。ゲーリングはニュルンベルクの国際軍事裁判で絞首刑が言い渡されたが、処刑の前夜、何者かに渡された青酸カリウムを飲んで自殺している。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) バルバロッサ作戦の1年前、1940年5月下旬から6月上旬にかけてイギリス軍とフランス軍34万人がフランスの港町ダンケルクから撤退しているが、その際、アドルフ・ヒトラーは追撃していたドイツ機甲部隊に進撃を停止するように命じている。そのまま進めばドイツ軍が英仏軍より早くダンケルクへ到達することは明らかだった。この停止命令はゲーリングのアドバイスによるとも言われている。 ドイツ軍は1940年9月7日から41年5月11日にかけてロンドンを空襲したが、この攻撃は東への侵攻作戦を隠し、ソ連側の警戒を緩和させることにあったとする見方もある。空爆が終わる前日、つまり5月10日、ヒトラーの忠実な部下だったルドルフ・ヘスは単身飛行機でスコットランドへ飛び、パラシュートで降りたとされている。無線通信を避けなければならない重要な情報を伝えるためだったという推測もあるが、真相は不明だ。 チャーチルの思惑とは違い、ドイツはスターリングラードでソ連に負けた。慌てたイギリスはアメリカと上陸作戦を実行、レジスタンス対策のゲリラ戦部隊ジェドバラも創設する。ニューディール派のフランクリン・ルーズベルト米大統領はチャーチルにとって邪魔な存在だったが、1945年4月12日に急死、帝国主義者のハリー・トルーマン副大統領が昇格した。 その翌月にドイツは降伏、それを受けてチャーチルはソ連に対する奇襲攻撃プランの作成を命令。作成された作戦は、1945年7月1日にアメリカ軍64師団、イギリス連邦軍35師団、ポーランド軍4師団、そしてドイツ軍10師団で「第3次世界大戦」を始めることになっていた。これが実行されなかったのはイギリスの参謀本部は拒否したからだという。 一方、ゲーレンはドイツが降伏した直後、アメリカ陸軍のCIC(対敵諜報部隊)に投降、携えていたマイクロフィルムには東方外国軍課に保管されていたソ連関連の資料が収められていた。 尋問したCICのジョン・ボコー大尉はゲーレンたちを保護するが、その後ろ盾はアメリカ第12軍のG2(情報担当)部長だったエドウィン・サイバート准将と連合国軍総司令部で参謀長を務めていたウォルター・ベデル・スミス中将だ。サイバートとスミスはドイツに新たな情報機関創設を1946年7月に決めた。 ゲーレンの機関は1949年7月からCIAの監督下に入り、資金の提供を受け流ようになる。1954年に作成された秘密メモによると、ゲーレン機関の少なくとも13パーセントは筋金入りのナチスだった。この機関は1956年4月から西ドイツの国家機関、BND(連邦情報局)になる。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) 日本の天皇制官僚体制と同じように、ナチスは米英金融資本を後ろ盾にしていた。大戦後にアメリカの支配層がナチスの幹部を助けたのは必然だ。 ジェドバラの人脈は大戦後、極秘の破壊工作機関OPCや特殊部隊の基盤になった。OPCは1951年にCIAへ入り込み、破壊工作部門の中核になる。 ヨーロッパでもジェドバラの人脈が秘密部隊を組織、NATOが創設されるとその中へ潜り込んだ。その秘密部隊は全てのNATO加盟国に設置され、1951年からCPC(秘密計画委員会)が指揮するようになる。その下部機関として1957年に創設されたのがACC(連合軍秘密委員会)だ。各国の秘密部隊には固有の名称が付けられているが、中でも有名なものは1960年代から80年代にかけ、イタリアで極左を装った爆弾テロを繰り返し、クーデターも試みたグラディオだ。 この問題を研究しているダニエレ・ガンサーによると、NATOへ加盟するためには、秘密の反共議定書にも署名する必要があり、NATOの元情報将校によると、「右翼過激派を守る」ことが秘密の議定書によって義務づけられている。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005) こうした仕組みでヨーロッパはアメリカやイギリスの情報機関に支配されてきた。ショルツ首相がアメリカ政府に従っているだけにしか見えない理由はそこにあるのだろう。 ドイツにはシュルツよりアメリカへの従属度が高い閣僚がいる。緑の党のアンナレーナ・バーボック・ドイツ外相。国際会議でEUは「ロシアと戦争をしている」と口にした人物だ。バイデン政権に従属することで自分がドイツの支配者だと勘違いしたのかもしれないが、彼女の発言はドイツ人を刺激した。アメリカや緑の党デモがドイツ全土に広がり、2月25日には約5万人がベルリンの「平和のための蜂起」に集まったという。 ウクライナの内戦は2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権がネオ・ナチを利用して実行したクーデターから始まる。クーデター政権と反クーデター派住民の戦いだ。当初、反クーデター派が優勢だったため、ドイツとフランスはミンスク合意で時間稼ぎした。 このクーデターの目的はドイツとロシアを分断することにある。ドイツから安いエネルギー資源の供給源を断ち、ロシアからマーケットを奪うということだ。「経済制裁」のターゲットもドイツを含むEUとロシアだったが、ロシアは準備していたことからダメージは少なかった。それに対し、ドイツなどEUは深刻なダメージを受け、経済的苦境に陥っている。 すでにウラジミル・プーチン露大統領はアメリカ/NATOが約束を守らないと悟り、話し合いで問題を解決できないと腹を括ったようだ。つまり「脅せば屈する」というネオコンの信仰は崩れた。そこで中国に近づき、「ひとつの中国」を支持するとアントニー・ブリンケン国務長官は中国側に語ったようだ。 アメリカと中国の関係を悪化させ、東アジアの軍事的な緊張を高める切っ掛けになったナンシー・ペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問が軍事的な挑発をブリンケンはどのように釈明するつもりなのだろうか。アメリカに従属することで台湾独立を実現しようとしてきた蔡英文総統の立つ瀬がない。
2023.06.22
日本政府は「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」というタグのついた遺伝子操作薬の接種を推進し続けている。5月8日には6回目の接種を厚生労働省は開始した。マスコミも接種キャンペーンを展開、NHKの番組「ニュースウオッチ9」の場合、「COVID-19ワクチン」接種後に家族が死亡したと訴える遺族の発言を「コロナ感染」で亡くなった人の遺族のように取り上げるということもしている。 しかし、昨年末から週刊誌が危険性を伝えたこともあり、推進側の思惑通りには進んでいない。当初、接種数の伸びは速かった。半ば強制的に接種させることができる施設が力を入れたのかもしれない。 遺伝子操作薬の接種は2020年12月下旬から接種が本格化する。先行したのはイスラエルだが、そのイスラエルで2021年4月に十代の若者を含む人びとの間で心筋炎や心膜炎が増え、問題になった。 そうした情報をアメリカのCDC(疾病予防管理センター)も無視できなくなり、6月23日には同センターのACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)が「mRNAワクチン」と「穏やかな」心筋炎との間に関連がありそうだと認めた。 その2日後にはFDA(食品医薬品局)がmRNA技術を使ったファイザー製とモデルナ製の「COVID-19ワクチン」が若者や子どもに心筋炎や心膜炎を引き起こすリスクを高める可能性があると発表している。心筋炎や心膜炎の問題を否定できなくなったのである。2022年に入るとイスラエルを含む大半の国で接種する人が大幅に減った。 早い段階から帯状疱疹や⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、あるいはギラン・バレー症候群による末梢神経の障害が報告され、ADE(抗体依存性感染増強)なども起こっていると考えられた。 mRNAを利用したタイプにしろ、アデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)に利用したタイプにしろ、いずれもコロナウイルスのスパイク・タンパク質を人間の細胞に製造させ、それによって抗体を作って免疫を高めるのだが、このスパイク・タンパク質こそが病気の原因だということも明らかになった。この事実を最初に報告したのはカリフォルニア州サンディエゴ郊外にあるソーク研究所。2021年3月のことで、解説記事も出された。 遺伝子操作薬に侵入された人間の細胞はスパイク・タンパク質が製造するようになり、人間の免疫システムは病気の原因になっている細胞を攻撃し始める。自己免疫疾患だ。そこで免疫力を弱める力が働き、免疫不全の状態になる。つまりAIDS的な状態。病気に感染しやすく、癌になりやすくなる。 こうしたことが知られるようになったこともあり、2022年に各国は「COVID-19ワクチン」の接種を止めるが、そこから接種を推進しているのが日本だ。 2022年5月に来日したジョー・バイデン大統領は首脳会談後の共同記者会見でCDCの日本事務所を新設する考えを表明した。それと連携することが想定できる機関を日本政府は創設する。そして今年3月7日、NIIDとNCGM)を統合して「国立健康危機管理研究機構」を作るための法案を閣議決定した。内閣官房に設置する「内閣感染症危機管理統括庁」の求めに応じて動くことになるようだ。5月31日には法案が参院本会議で可決、成立している。 岸田文雄内閣は昨年10月13日、「マイナンバーカード」と健康保険証を一体化させる計画の概要を発表した。それにともない、現在使われている健康保険証を2024年の秋に廃止するという。 マイナンバーカードで遺伝子操作薬の接種歴、そしてその後の治療歴もわかるはずだ。遺伝子操作薬のロット番号も調べられるだろう。日本は世界に類がない「ワクチン」接種国であり、今回の騒動を仕掛けたとされるアメリカの国防総省は日本人のデータが欲しいことだろう。
2023.06.21
アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクでウラジーミル・プーチン大統領と6月17日に会談、キエフとモスクワ間の紛争を終わらせるために策定された10項目の和平ロードマップを提示した。その前日、代表団はウクライナでウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会っている。 代表団のメンバーは南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領、セネガルのマッキー・サル大統領、コモロのオスマン・ガザリ大統領、ザンビアのハカインデ・ヒチレマ大統領、エジプトのモスタファ・マドブリー首相、コンゴ共和国とウガンダ共和国の高官。会談の中でプーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示した。その文書にはウクライナ代表団の署名があるのだが、それをウクライナは破棄したという。 その草案は2022年3月にイスタンブールで作成されたものだが、本ブログでは繰り返し書いているように、イスラエルの首相だったナフタリ・ベネットもロシアとウクライナの停戦交渉を仲介していた。ロシア軍の第1撃で自国軍が壊滅的な打撃を受けたウクライナ政府は停戦を望んだのだ。 ベネットが仲介した交渉でロシアとウクライナはほぼ合意に達する。3月5日にベネットはモスクワでプーチンと数時間にわたって会談、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけ、その足でドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会っている。 ウクライナの治安機関SBU(事実上CIAの下部機関)のメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺したのはその3月5日だ。キリーエフを殺害することでアメリカ政府は停戦を許さないという姿勢を示したと言えるだろう。 3月7日にはゴストメル市長だったのユーリ・プライリプコの死体が発見され、そのほか11名の市長が行方不明だとも言われた。SBUのチームによる「国賊狩り」も宣伝された。 アメリカ/NATOはアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリ、あるいは岩塩の採掘場があるソレダルを中心に要塞線が作られた。ウクライナの軍や親衛隊をドンバスへ軍事侵攻させ、住民を虐殺してロシア軍を要塞線の内側へ誘い込み、そこで足止めさせている間にクリミアを別の部隊に攻撃させようとしていたと推測する人もいる。ロシア軍がキエフへ部隊を向かわせたのはそうした作戦を阻止するためだったというのだ。 停戦交渉の進展でロシア軍はウクライナ政府との約束通りにキエフ周辺から撤退を開始、3月30日にはブチャから撤退を完了した。31日にはブチャのアナトリー・フェドルク市長がフェイスブックで喜びを伝えているが、虐殺の話は出ていない。 ニューヨーク・タイムズ紙によると、4月2日にはネオ・ナチを主体に編成された親衛隊の大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)がブチャに入っているが、アゾフと同じネオ・ナチでライバル関係にあるというボッツマンのチームも4月2日には現場へウクライナ警察の特殊部隊と入っているという。ボッツマンのチームはウクライナ軍を示す青い腕章をつけいない人物の射殺を許可されていたとされている。3日にはブチャで住民が虐殺されたと報道され始め、ゼレンスキー政権はロシア軍によるものだと宣伝した。 4月2日、ウクライナ国家警察は自分たちが行った掃討作戦の様子をインターネット上に公開している。そこには大破した自動車の中に死体が映っていたものの、そのほかに死体は見当たらない。そこで、国家警察は死体を隠したのではないかと疑う人もいる。国家警察はブチャで親衛隊と行動をともにしていたので何が起こったかを知っていたが、その死体を親衛隊が何に使うつもりかを知らなかった可能性がある。 つまり、ブチャでの住民虐殺はロシア軍と友好的に接した住民を親衛隊が殺した可能性が高いのだが、ベネットによると、その事件によってロシア政府とウクライナ政府の停戦交渉は壊れた。 4月9日にボリス・ジョンソン英首相はキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令、4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。 4月21日にはウクライナの南部にあるミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組に登場、「全ての裏切り者を処刑する」と語った。そうした処刑を実行するための秘密部隊を編成、すでに作戦を遂行しているとしていた。
2023.06.20
ウクライナでの戦闘はジョー・バイデン政権の事情で政治的に続けられていると考える人がいる。軍事的にはロシア軍が昨年春の段階で勝利したのだが、米英の政治的な事情で続けられているのだ。そのためにウクライナは破壊され、ウクライナ人は殺されることになる。 すでにウクライナ軍の戦死者数は数十万人、ロシア軍はその1割と見られ、しかもアメリカ/NATOはウクライナへ供給する武器弾薬が枯渇している。5月に韓国がアメリカ経由でウクライナへ砲弾を提供したと伝えられてるが、ここにきてアメリカ政府は日本政府と155mm榴弾のウクライナへの供給することで話し合ったという。この報道が正しいなら、日本に声をかけねばならないほど戦況はアメリカ/NATOにとって悪いということだ。 ウクライナの内戦は2014年2月にアメリカ/NATOがネオ・ナチを利用してクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権が倒されてから始まる。ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民がクーデターを拒否したのだ。 OSCE(欧州安全保障協力機構)によると、2022年2月17日にウクライナ側からドンバスへの攻撃が激しくなり、18日、19日とエスカレートしていた。その段階でドンバス周辺には親衛隊のほかアメリカやイギリスの特殊部隊やアメリカの傭兵も集結、攻撃態勢が整いつつあることは知られていた。 2月19日にはウクライナの議員として議会でクーデター計画の存在を指摘したことで知られているオレグ・ツァロフが緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出している。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始すると警鐘を鳴らしたのだ。 ツァロフによると、キエフ軍の作戦はロシア語系住民を狙った「民族浄化」を実行、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を虐殺しようとしていると主張している。またSBU(ウクライナ保安庁)がネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行するともしていた。 アメリカ/NATOは2014年から8年かけてドンバスを要塞線で囲んでいたと言われている。そこには内務省親衛隊の中核だったアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリ、あるいは岩塩の採掘場があるソレダルも含まれている。 ドンバスで住民浄化を実行、救援に入ってくるロシア軍を要塞線の中へ誘い込み、そこで身動きが取れない状態にした上でクリミアを別の部隊に攻撃させ、制圧するという計画だったのではないかという見方もある。 軍事的な緊張が高まる中、ロシア政府の動きは速かった。ツァロフがアピールを出した3日後にロシアのウラジミル・プーチン大統領がドンバス(ドネツクやルガンスク)の独立を承認、2月24日にロシア軍はウクライナを巡航ミサイル「カリブル」などで攻撃を開始、航空基地を破壊されたと言われている。同時にウクライナの生物兵器研究開発施設も狙われた。 ロシア軍はターゲットを破壊しただけでなく、部隊を派遣して重要文書を回収している。そうした文書の中には、ゼレンスキーが2022年1月18日に出した指示に基づいて親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日に攻撃の指令書へ署名、ドンバスを攻撃する準備が始まっていたことを示すものが含まれていた。2月中に準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたとしている。 ロシア軍のミサイル攻撃でドンバス周辺に集結していたウクライナ側の部隊が壊滅的な打撃を受け、戦いの勝敗は決した。勿論、ロシア軍の勝利である。それ以降、アメリカ/NATOとロシアの戦いという様相を強めた。 ロシア軍の第1撃で自国軍が壊滅的な打撃を受けたウクライナ政府は停戦を模索する。イスラエルのナフタリ・ベネットが仲介役になった。その交渉で両国は条件面でほぼ合意している。3月5日にベネットはモスクワでプーチンと数時間にわたって会談、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた。その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会っている。 ウクライナの治安機関SBU(事実上CIAの下部機関)のメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺したのはその3月5日だ。キリーエフを殺害することでアメリカ政府は停戦を許さないという姿勢を示したと言えるだろう。 ベネットによると、恐怖から掩蔽壕に隠れていたゼレンスキーはロシア政府がゼレンスキーを殺害しないと保証したことを確認した2時間後にゼレンスキーはオフィスで「私は恐れない」と宣言したという。 今年5月3日にクレムリンを2機のドローン(無人機)が攻撃したものの、撃墜されて大きな被害はなかったようだ。その日、ゼレンスキー大統領はフィンランドを訪問し、フィンランドのほかスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランドの首相と会談した。ロシアの報復を恐れて逃げ出したと言う人もいる。 ロシアのトリー・ペスコフ大統領報道官は5月4日、攻撃目標を決めたのはアメリカ政府であり、ウクライナ政府は命令を実行しただけだと語り、アナトリー・アントノフ駐米露大使は「もしドローン(無人機)がホワイトハウス、議会、あるいは国防総省に突入した場合、アメリカ人はどのように反応するだろうか?」と問いかけ、「罰は厳しく、避けられない。」と語っている。適切と思われる場所と時期に報復する権利を留保するとペスコフは宣言した。 ウクライナのキリーロ・ブダノフGUR(国防省情報総局)局長は「この世界のどこにいてもロシア人を狙い殺し続ける」と語ったと5月6日に伝えられた。5月28日からロシア軍はキエフに対する大規模な攻撃を実施、GUR本部も破壊されたが、29日からブダノフ局長が姿を見せていない。 その前からウクライナ軍のバレリー・ザルジニー総司令官やオレクサンドル・シルスキー陸軍司令官に関する情報も途絶え、負傷した、あるいは死亡したという噂も流れている。 ウクライナではゼレンスキー大統領が掩蔽壕に隠れたり国外へ逃げ、バレリー・ザルジニー総司令官、オレクサンドル・シルスキー陸軍司令官、キリーロ・ブダノフGUR局長は姿を消した。29日に2機のヘリコプターがキエフからポーランドへ向かい、ポーランドからドイツへ第86航空医療後送中隊のC-21Aが重傷者を乗せて飛んだという。この重傷者がブダノフだとも言われている。 5月3日に行われたクレムリンに対するドローン攻撃後、アメリカ/NATOはウラジミル・プーチン露大統領が姿を消したと宣伝していたのだが、実際はすぐに姿を現わしている。 最近では6月13日にさまざまな分野の記者と約3時間にわたって会談し、15日にはアルジェリアのアブデルマジド・テブン大統領と会談、16日にはSPIEF(サンクトペテルブルク国際経済フォーラム)で基調講演を行っている。 そうした状況であるにもかかわらず、6月17日にイギリスの「ジャーナリスト」オーウェン・マシューズはスペクテーター誌に「プーチン大統領はどこにいるのか?ロシアのリーダーはコントロールを失いつつある」というタイトルの記事を書いた。この人物、取材していないどころか「マトリクス」の中に入り込んでいるようだ。元CIA分析官のラリー・ジョンソンも指摘しているように、この記事は現実と乖離しすぎている。 マシューズは傭兵会社だとされているワグナー・グループを妄想の中心に据えている。この戦闘集団を率いているとされる人物は料理人のエフゲニー・プリゴジン。この人物はセルゲイ・ショイグ国防大臣や2022年7月までロシア国営の宇宙開発会社「ロスコスモス」でCEOを務めていたドミトリー・ロゴージンを批判していたが、軍事組織としては不自然だという見方もある。 ロシア軍は昨年5月、ウクライナ北東部のハリコフ州から撤退したのだが、これは戦力不足が原因だとされ、西側の有力メディアは「反転攻勢」だと喜んでいた。 しかし、この地域はステップ(大草原)で、隠れることが困難。ロシア軍は制空権を握り、高性能ミサイルも保有しているため、ウクライナ軍は壊滅的な打撃を受けた。ロシア軍の撤退はトラップだった可能性が高い。ロシア軍はウクライナ軍が地下要塞を築いていたソレダルへ兵力を集中させていた。 ソレダルやバフムート(アルチョモフスク)で戦ったロシア軍の地上部隊はワグナー・グループが中心。プリゴジンは3月29日、彼らはバフムートを事実上、制圧したと語っているが、5月5日には部隊を5月10日にバフムートから撤退させると宣言した。十分な弾薬が供給されず、多くの死傷者が出ているとしているのだが、すでにロシア軍はその80から90%を制圧したと推測され、ワーグナー・グループの任務は終わろうとしていた。 そして5月20日にプリゴジンはバフムートの「解放」を宣言、25日から部隊を撤退させると発表した。その際、彼はセルゲイ・スロビキン上級大将とミハイル・ミジンチェフ上級大将に謝意を表している。 スロビキンは昨年10月、ドンバス、ヘルソン、ザポリージャの統合司令官に任命された軍人であり、ミジンチェフはネオ・ナチのアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊やアゾフ連隊とも言われる)が占領していたマリウポリの解放作戦を指揮していた。 ミジンチェフは反クーデター派の住民を人質にし、暴行を働き、虐殺していたネオ・ナチを支持してきた人びとに嫌われている。5月4日からワグナー・グループの副司令官に就任しているが、実際の司令官はミジンチェフだったのではないかという見方もある。 プリゴジンの発言はアメリカ/NATOを混乱させることが目的だった可能性が高く、それをアメリカ/NATOの政治的な宣伝に利用しているのがマシューズだと言えそうだ。
2023.06.20
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は6月18日に中国を訪れた。中央外事工作委員会の王毅弁公室主任と19日に会談する予定だというが、何らかの進展があると期待する人は多くない。ブリンケンは6月14日に中国の秦剛外相と電話で会談、その際に中国側から内政干渉や安全保障を脅かすような行為をやめるよう警告されている。 その直前、5月25日から6月15日にかけてアメリカ軍と韓国軍は非武装地帯から40キロメートル南にある訓練場で軍事演習を実施、朝鮮を挑発した。演習ではステルス戦闘機、攻撃ヘリコプター、多連装ロケット発射システムも使われたようだ。朝鮮側の対抗手段が限られている。 アメリカの下院議長だったナンシー・ペロシが昨年8月2日に突如台湾を訪問したところから東アジアの軍事的な緊張は一気に高まった。アメリカでは大統領が何らかの理由で職務を執行できなくなった場合の継承順位が決められている。第1位は副大統領(上院議長)だが、第2位は下院議長。その下院議長が「ひとつの中国」を否定、中国は怒った。その後、アメリカは台湾海峡に軍艦を入れるなど挑発を続ける。 中国と戦争する準備を日本は1995年から本格化させていた。アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」は2022年に発表した報告書の中で、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する案を示している。 しかし、RANDによると、そのミサイルを配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたとされている。この計画に合わせ、2016年に与那国島、19年に宮古島と奄美大島、そして23年には石垣島に自衛隊の施設が建設された。これらの施設にはアメリカ軍の計画に基づいてミサイルが配備されるはずだ。 アメリカはウクライナでロシアと戦っている。バラク・オバマ政権は2014年2月、ネオ・ナチを利用してウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒し、ネオ・ナチが大きな影響力を持つ傀儡政権を作った。ジョー・バイデン現大統領は当時、副大統領としてクーデターを指揮していた。その下にいたのがビクトリア・ヌランド国務次官補と副大統領の国家安全保障補佐官を務めていたジェイク・サリバン。このトリオにブリンケン国務長官を加えたチームが戦争政策を推進してきた。 アメリカは交渉を時間稼ぎに使う。そこでウクライナの停戦交渉は当初イスラエル、次にドイツとフランスが仲介した。 仲介の当事者だったイスラエルのナフタリ・ベネット前首相よると、ロシアとウクライナはいずれも妥協に応じ、停戦は実現しそうだったという。3月5日にベネットはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた。 その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会談したのだが、その3月5日にゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフをウクライナの治安機関SBUのメンバーが射殺してしまう。クーデター直後からSBUはCIAの下部機関化しているので、アメリカ政府が殺したと言えるだろう。 ミンスク合意ではアメリアが排除されたが、これも失敗に終わる。ドイツやフランスが仲介したのだが、アンゲラ・メルケル元独首相は昨年12月7日にツァイトのインタビューでミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認め、その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が合意を守らなかったのは、合意がインチキだということを知っていたからだろう。アメリカ政府は少なくとも容認している。 つまり、アメリカと話し合いで問題を解決することはできない。最終的には軍事的に破壊しようとするのがアメリカ流だ。国際情勢を調べている西側の人間ならアメリカと問題を外交的に解決することはできないことをわかっていたが、ロシアや中国のエリートには米英に留学した欧米信奉者が少なくないため、国の存続を危うくした。 すでに中国やロシアもそうしたことを理解しただろう。ロシアはすでに話し合いで解決するという希望を捨てたように見える。中国も厳しい姿勢だが、その中国へブリンケンが訪問した理由はロシアとの仲介を頼みに行ったと推測する人もいる。 アメリカに従う日本のような国々に対しても厳しい姿勢で臨んでくる可能性が高い。実際、韓国は揺さぶられ、動揺している。ヨーロッパでは自分たちの置かれた状況を理解し、軌道修正を図る国も見られるが、成功するかどうかは不明だ。 アメリカの暴走、そして敗北を見て、かつての「友好国」もアメリカから離れている。その典型例がサウジアラビア。昨年10月5日の原産合意に対し、バイデン大統領は制裁を匂わせたが、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は個人的にアメリカ政府を脅したという。アメリカが石油削減に報復すれば数十年来の米国とサウジの関係を根本的に変え、米国に多大な経済的犠牲を強いるというのだ。 ブリンケン国務長官が6月6日にサウジアラビアを訪問、ビン・サルマン皇太子と会談したが、その際に撮影された写真が話題になっている。ブリンケンの後ろにアメリカの国旗が飾られていないのだ。アメリカが侮辱されたと考えられている。 アメリカと同盟国の連携による対中包囲網が効果を上げ、インド・太平洋地域でアメリカなどに戦略的な追い風が吹いているとラーム・エマニュエル駐日米大使は主張したようだが、戯言だ。
2023.06.19
1971年に国防総省の機密文書、「ベトナムにおける政策決定の歴史、1945年-1968年(ペンタゴン・ペーパーズ)」を有力メディアへ渡した内部告発者のダニエル・エルズバーグが6月16日に死亡した。エルズバーグは1973年1月に「1917年スパイ法」などで起訴されたが、同年5月にウィリアム・マシュー・バーン・ジュニア判事はすべての告訴を棄却している。 1964年8月に国防総省へ入ったエルズバーグはベトナムで2年間働いた後、1967年から68年にかけてベトナム戦争に関する機密報告書の執筆に加わった。その文書を1969年に写真撮影、何人かに渡している。そのひとりがニューヨーク・タイムズ紙の特派員ニール・シーハンだ。1971年6月13日に同紙は最初の部分を掲載した。 ベトナム時代、エルズバーグはエドワード・ランズデールの部下だったが、ランズデールは第2次世界大戦中、OSSに所属し、戦後はCIAの秘密工作に参加している。日本軍がフィリピンに隠した財宝の捜索を指揮し、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺にも名前が出てくる。エルズバーグはCIAの秘密工作を知っていたはずだ。 エルズバーグが機密文書の執筆に参加し始めた1967年にベトナム戦争は泥沼化、CIAは軍の特殊部隊と共同で住民皆殺し作戦のフェニックス・プログラムを始動させている。ランズデールはこの秘密作戦にも参加していた。1968年から71年までフェニックス・プログラムを指揮していたのはウィリアム・コルビーだ。 コルビーはフランク・チャーチ上院議員が委員長を務める「情報活動に関する政府による作戦を調査する特別委員会」でCIAの秘密工作について証言、かつての仲間を慌てさせた。議会の公聴会では「1968年8月から1971年5月までの間にフェニックス・プログラムで2万0587名のベトナム人が殺され、そのほかに2万8978名が投獄された」とも証言している。(Tom O’Neill, “Chaos,” William Heinemann, 2019) 1968年3月にミ・ライ(ソンミ村)で村民が虐殺される事件が引き起こされているが、これもフェニックス・プログラムの一環だった。(Douglas Valentine, "The Phoenix Program," William Morrow, 1990)この年の7月に少佐だったコリン・パウエルがベトナムへ入り、第23歩兵師団に配属されている。彼自身、事件後に現場を訪れて衝撃を受けたと2004年5月4日に放送されたCNNのラリー・キング・ライブで語っている。ジョージ・W・ブッシュ政権で国務長官に就任したあのパウエルだ。 こうした大量殺戮作戦だけでなく、CIAは「黄金の三角地帯」で製造されるヘロインをアメリカの犯罪組織にさばかせ、資金を稼いでいた。そのために作られた銀行のひとつがナガン・ハンド銀行。そのほかバハマ諸島ナッソーのキャッスル銀行、ユダヤ系ギャングのメイヤー・ランスキーが違法資金のロンダリングに使っていたことでも知られているマイアミ・ナショナル銀行、あるいはペリーン銀行、BWC(世界商業銀行)、アフガン工作のBCCIなどだ。 こうした秘密作戦には触れなかったが、エルズバーグの報告書はリンドン・ジョンソン政権が議会や国民に対し、ベトナム戦争について嘘を言い続けていたことを明らかにした。今のウクライナ戦争と同じように「勝っている」と宣伝していたのだが、今は議会と有力メディアが共犯者だ。 ジョージ・W・ブッシュ政権は自分たちが始めたイラク戦争について嘘をついていた。イラク戦争においてアメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターが2007年7月、ロイターの特派員2名を含む非武装の一団を銃撃して十数名を殺害する場面を撮影した映像をWikiLeaksが公開している。 WikiLeaksの象徴的な存在であるジュリアン・アッサンジは2019年4月11日、イギリスのエクアドル大使館内でロンドン警視庁の捜査官に逮捕された。イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所に収監されている。アメリカの当局はアッサンジをハッキングのほか「1917年スパイ法」で起訴している。本ブログでは繰り返し書いてきたが、ハッキング容疑はでっち上げだ。アッサンジがアメリカへ引き渡された場合、懲役175年が言い渡される可能性がある。 1973年より今のアメリカは言論統制が厳しくなっている。
2023.06.18
ウェンディ・シャーマン国務副長官が6月末に退任する予定だ。その後任としてビクトリア・ヌランド国務次官が昇格するのではないかと言われている。シャーマンだけでなくNSC(国家安全保障会議)で中国担当シニアディレクターを務めてきたローラ・ローゼンバーガー、そして国務副次官補として中国と台湾の問題を担当するリック・ウォーターズも退任すると言われ、ジョー・バイデン政権の好戦的な色彩は強まると可能性が高い。 ヌランドは父方の祖父母がウクライナからの移民で、夫はネオコンの重鎮であるロバート・ケーガン、義理の弟はフレデリック・ケーガン、フレデリックの妻はISW(戦争研究所)を設立したキンベリー・ケーガン。ヒラリー・クリントンは友人のひとりだという。アメリカ中央軍、ISAF(国際治安支援部隊)司令官、そしてCIA長官を務めたデイビッド・ペトレイアスとキンバリーは親しい。 2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使ってウクライナでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。このクーデターで中心的な役割を果たしたのはジョー・バイデン副大統領、ビクトリア・ヌランド国務次官補、副大統領の国家安全保障補佐官を務めていたジェイク・サリバンだ。 現在バイデンは大統領、ヌランドは国務次官、サリバンは国家安全保障問題担当の大統領補佐官。この3人にアントニー・ブリンケン国務長官が好戦的な政策を推進している。そうした中、シャーマンが排除されてヌランドが昇格した場合、その好戦性は強まる。 シャーマンはビル・クリントン政権時代、1993年5月から96年3月までウォレン・クリストファー国務長官の下で国務次官補を務めていた。1997年1月に国務長官がクリストファーからマデリーン・オルブライトに交代するとクリントン政権はユーゴスラビアへ軍事侵攻する方向へ舵を切った。1997年8月、シャーマンは参事官として国務省へ復帰している。 オルブライトは1998年秋にユーゴスラビア空爆を支持すると表明、99年3月から6月にかけてNATO軍はユーゴスラビアへの空爆を実施した。4月にはスロボダン・ミロシェビッチの自宅が、また5月には中国大使館も爆撃されている。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、03年3月にジョージ・W・ブッシュ政権はイラクを先制攻撃するが、泥沼化。そこでバラク・オバマ米大統領は2010年8月にPSD-11を承認してムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を使った体制転覆作戦を始動させ、「アラブの春」が始まる。 しかし、シリアやリビアに対してはズビグネフ・ブレジンスキーが作り上げた「アル・カイダ」の仕組みが使われる。2011年春に両国に対する攻撃が始まり、同年10月にはムアンマル・アル・カダフィ体制が倒された。カダフィ本人はその際に惨殺されている。 そこで戦力をシリアへ集中させるのだが、バシャール・アル・アサド政権は倒れない。そこで軍事支援を強化、登場してきた戦闘集団がダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)。2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルが制圧される。ダーイッシュは残虐さを演出、アメリカに軍事介入させる道を作ろうとしていると考える人もいた。 その当時、オバマ政権には戦争に消極的な人物がいた。例えばチャック・ヘーゲル国防長官やマーチン・デンプシー統合参謀本部議長は上院軍事委員会で直接的な軍事介入に慎重な姿勢を示し、ヒラリー・クリントン国務長官らと対立している。 オバマ大統領が主張する穏健派は存在しないとする報告を出したDIAの局長、マイケル・フリンは2014年8月に退役を強いられていたが、それだけでなくヘーゲルは2015年2月に解任、デンプシーは同年9月に再任を拒否されている。オバマ大統領は戦争体制を整えた。 デンプシーが退役した直後の2015年9月30日にロシアはシリア政府の要請で軍事介入、ダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団を敗走させる。 そこでアメリカはクルドと手を組むのだが、これによってアメリカとトルコの関係が悪化する。現在、アメリカ軍はシリア領内に900名程度の部隊を侵攻させ、10カ所とも20カ所とも言われる数の軍事基地をシリアに建設、不法占領を続けている。 そして今、バイデン政権はまたホワイトハウスを好戦的な布陣にしようとしている可能性がある。簡単に勝てるという思い込みで始めたロシアや中国に対する戦争だが、ネオコンの思惑は外れた。窮地に陥ったバイデン政権は暴走し始めた。6月12日から23日まで実施されるNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」が注目されたのはそのためだ。 ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は6月13日、ロシアから戦術核兵器をすでに受け取っていると語った。自国が攻撃にさらされれば躊躇なく核兵器を使用するとしている。ルカシェンコの要請に基づくとされているが、少なくともロシアは同意している。ネオコンが攻撃してくれば受けて立つという意思表示だろう。 そうした国際環境の中、日本は夢遊病者のように戦争へと向かっている。すでにアメリカ/NATOはウクライナへ供給する武器弾薬が枯渇、5月には韓国がアメリカ経由でウクライナへ砲弾を提供したと伝えられてるが、ここにきてアメリカ政府は日本政府と155mm榴弾のウクライナへの供給することで話し合ったという。数少なくなったアメリカ支援国として日本に対する要求は強まってくるだろう。
2023.06.17
アメリカは自国で行われている野球のリーグ戦における優勝決定戦を「ワールド・シリーズ」と称している。また自国の略称を「US」とも表記する。アメリカ人にとって「世界」とはアメリカであり、アメリカは「我々」だということなのだろう。 その傲慢なアメリカだが、1970年代から「衰退」が言われるようになった。その衰退を誤魔化すために始められたのが新自由主義、つまり金融マジックだ。 1970年代にCIAはアフガニスタンでソ連をトラップにかける計画が始まる。その中心がズビグネフ・ブレジンスキー。ジミー・カーター大統領がブレジンスキーの考えた秘密工作を承認したのは1979年7月だが、その月の2日から5日にかけてエルサレムでアメリカとイスラエルの情報機関に関係する人びとが「国際テロリズム」に関する会議を開いた。 イスラエルからは軍の情報機関で長官を務めた4名を含む多くの軍や情報機関の関係者が参加、アメリカからもジョージ・H・W・ブッシュ元CIA長官(後の大統領)やレイ・クライン元CIA副長官など情報機関の関係者が参加していた。そこから「テロの黒幕はソ連」というプロパガンダが始まる。 カール・バーンスタインによると、1982年6月7日にロナルド・レーガン米大統領とローマ教皇のヨハネ・パウロ2世はバチカンで50分間にわたって会談、ソ連圏の解体を早めるための秘密工作を実行することで合意した。バチカンを舞台にしたポーランド工作にはポーランド出身のズビグネフ・ブレジンスキーが重要な役割を果たしたとされている。(Carl Bernstein, “The Holy Alliance,” TIME, Feb. 24, 1992) この会談の3週間ほど前、レーガン大統領はNSDD 32を出し、ソ連を「無力化」するために経済的、外交的、そして秘密工作を使うことを承認している。(Robert Parry, “Secrecy & Privilege”, The Media Consortium, 2004) ポーランドでは1980年9月に反体制労組の「連帯」が創設された。この組織はアメリカの情報機関CIAの支援を受けていたが、その事実を労組側も隠していなかった。 NEDなどを経由してCIAの資金が流れ込んでいたほか、当時のポーランドでは入手が困難だったファクシミリのほか、印刷機械、送信機、電話、短波ラジオ、ビデオ・カメラ、コピー機、テレックス、コンピュータ、ワープロなどが数トン、ポーランドへアメリカ側から密輸されたという。(Carl Bernstein, “The Holy Alliance,” TIME, Feb. 24, 1992) 連帯の指導者だったレフ・ワレサも自伝の中で、戒厳令布告後に「書籍・新聞の自立出版所のネットワークが一気に拡大」したと認めている。(レフ・ワレサ著、筑紫哲也、水谷驍訳『ワレサ自伝』社会思想社、1988年) 工作資金を送る重要なルートとして、イタリアの大手金融機関であるアンブロシアーノ銀行、そしてバチカン銀行(IOR/宗教活動協会)も知られている。送金にはローマ教皇庁や西側の労働組合が持つ銀行口座も利用されていた。 しかし、こうした不正融資の実態が発覚、アンブロシアーノ銀行は倒産し、ロベルト・カルビ頭取は1980年5月に逮捕され、翌年の6月にロンドンのブラックフライアーズ橋で変死体として発見された。 バチカン銀行の不正融資で中心的な役割を果たしたのはシカゴ出身のポール・マルチンクス頭取。ローマ教皇パウロ6世(ジョバンニ・バティスタ・モンティニ)の側近として知られている。 パウロ6世はモンティニ時代からCIAと緊密な関係にあった。CIAでパウロ6世/モンティニと最も強く結びついていた人物はジェームズ・アングルトン。この人物は父親の代からアレン・ダレスの側近だ。 そのパウロ6世は1978年8月に死亡、アルビーノ・ルチャーニが新教皇に選ばれ、ヨハネ・パウロ1世を名乗った。若い頃から社会的な弱者に目を向けていた人物で、CIAとの関係はなかったと見られているが、1978年9月、つまり在位1カ月余りで急死してしまう。 そして登場してくるのがポーランド出身のカロル・ユゼフ・ボイティワだった。1978年10月に次の教皇となり、ヨハネ・パウロ2世と呼ばれるようになる。そしてポーランド工作に深く関与していく。 このヨハネ・パウロ2世は1981年5月に銃撃されている。引き金を引いたモハメト・アリ・アジャはトルコの右翼団体「灰色の狼」に所属していたが、この団体はトルコにおける「NATOの秘密部隊」の一部と言われている。この事件では3名のブルガリアが起訴されたが、1986年3月に無罪の判決が言い渡された。 1989年1月にはジョージ・H・W・ブッシュがアメリカ大統領に就任し、91年12月にソ連は消滅する。ブッシュたちはソ連を崩壊させるために「ハンマー作戦」を実行したと言われている。 1991年12月にソ連が消滅するとネオコンはアメリカが「唯一の超外国」になったと認識、92年2月にDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成。その時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。DPG草案はウォルフォウィッツが中心になって書き上げられた。そこでこの世界制覇計画は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 目的のひとつは新たなライバルの出現を防ぐことにあり、警戒する地域には旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアが含まれる。ドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れ、「民主的な平和地域」を創設するともしている。 ネオコンは1992年2月に国防総省のDPG草案という形で世界制覇プラン、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」が作成する。他国や庶民を無視して行動できると思い込んだのである。日本をこのドクトリンに従わせ、アメリカの戦争マシーンに組み込むため、ジョセイフ・ナイは1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表した。 このドクトリンをベースにしてネオコン系シンクタンクPNACは2000年に「アメリカ国防の再構築」を発表、それに基づき、ジョージ・W・ブッシュ政権は軍事政策を作成している。 その政策が現実になるのは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてからだ。 CIAは2002年に対イラク工作を始めているが、その年の11月に中東全域のCIA支局長がロンドンのアメリカ大使館に集められ、IOG(イラク作戦グループ)から対イラク戦争は決定済みであり、嫌なら辞めろと脅されたという。そして2003年3月にアメリカ主導軍がイラクを先制攻撃した。(James Risen, “State of War,” Free Press, 2006) イラク戦争はネオコンの思惑通りに進まず、泥沼化するが、まだアメリカが「唯一の超大国」だと信じていた。フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載された論文はそうした心情を表していると言えるだろう。この雑誌は外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物で、記事には支配層内部の雰囲気が影響している。 キアー・リーバーとダリル・プレスはその論文の中で、アメリカが近いうちにロシアと中国の長距離核兵器を先制第1撃で破壊する能力を持てるとしている。ロシアと中国は取るに足りない存在だと信じていたわけだ。 その後、アメリカは侵略戦争を続ける。リビア、ウクライナの体制も軍事的に倒されたが、シリアは倒されていない。ウクライナでは東部や南部の反クーデター派が抵抗、ロシア軍の支援を受けてキエフのクーデター体制やアメリカ/NATOを窮地に追い込んでいる。 COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動を利用、「ワクチン」というタグの付けられた遺伝子操作薬で人類を改造、さらに管理する計画が進められていると考える人もいる。 これもアメリカ/NATOが簡単にロシアや中国を倒せるという前提で成り立っているが、その前提が崩れている。アメリカ/NATOの権力者が今後も世界を支配できるなら自分たちが行ってきた犯罪的な行為を封印できるだろう。支配者の座から陥落した場合、資産や地位を失うだけでなく責任を問われることになる可能性が高い。
2023.06.16
国立感染症研究所(NIID)と国立国際医療研究センター(NCGM)を統合し、「国立健康危機管理研究機構」を設置する「改正」法が5月31日の参院本会議で可決、成立した。アメリカの疾病対策センター(CDC)を参考にするという。 この新組織は日本製薬工業協会の要請に沿うもの。同協会は2020年6月、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)の治療薬やワクチンに関する提言を発表、政府主導で平時から感染症領域の研究開発や安定供給体制を整備するよう求めていた。その司令塔的な機能を持つ「日本版CDC」の設置を訴えていたのだ。アメリカのCDCは医療利権の代弁者的な存在であり、そうした組織を日本にも作れば「便利だ」ということだろう。 CDCと同じように医療利権の手先として機能しているWHO(世界保健機関)は2020年3月11日、パンデミックを宣言した。世界的な感染爆発とは言えない状態で、死亡者が続出しているわけでもなかったが、強引に宣言したのだ。その3カ月後に日本製薬工業協会は「日本版CDC」の設置を訴えたわけで、迅速な動きだと言える。 この宣言を受け、アメリカのジョー・バイデン政権は「ワクチン」の開発を非常識な速さで進める「ワープ・スピード作戦」を開始、医薬品メーカーは「ワクチン」と称する遺伝子操作薬を持ち出してきた。 その安全性を確認していない遺伝子操作薬は2020年12月から接種され始める。最も迅速に動いた国はイスラエルで、2020年12月から21年3月にかけて一気に接種するが、4月から十代の若者を含む人びとの間で心筋炎や心膜炎が増えていることが問題になりはじめた。 当初、CDCは「COVID-19ワクチン」と心臓の炎症に関連性はないと主張するが、5月になると「ワクチン」のデータを見直すと言わざるをえなくなり、緊急会議を開催することになる。CDCのACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)は6月23日、「mRNAワクチン」と「穏やかな」心筋炎との間に関連がありそうだと言わざるをえなくなった。 そして6月25日、FDA(食品医薬品局)はmRNA(メッセンジャーRNA)技術を使ったファイザー製とモデルナ製の「COVID-19ワクチン」が若者や子どもに心筋炎や心膜炎を引き起こすリスクを高める可能性があると発表せざるをえなくなる。その後、「COVID-19ワクチン」が心筋炎、心膜炎、横紋筋融解を引き起こしていることも解剖で確認された。 心筋炎や心膜炎だけでなく、帯状疱疹、⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、ギラン・バレー症候群による末梢神経の障害、ADE(抗体依存性感染増強)などが報告された。 mRNAを利用したタイプにしろ、アデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)に利用したタイプにしろ、いずれもコロナウイルスのスパイク・タンパク質を人間の細胞に製造させ、それによって抗体を作って免疫を高めることになっている。 ところが、このスパイク・タンパク質こそが病気の原因だという事実をカリフォルニア州サンディエゴ郊外にあるソーク研究所が2021年3月に発表している。解説記事も出された。その後、この指摘が正しいことが確認されている。 遺伝子操作薬に侵入された人間の細胞はスパイク・タンパク質が製造するようになり、人間の免疫システムは病気の原因になっている細胞を攻撃し始める。自己免疫疾患だ。そこで免疫力を弱める力が働き、免疫不全の状態になる。つまりAIDS的な状態。病気に感染しやすく、癌になりやすくなる。 こうしたことが知られるようになり、2022年に各国は「COVID-19ワクチン」の接種を止めるが、そこから接種を推進しているのが日本。スタートは遅れたが、ブレーキがかからない。危険性が明らかになる前に接種を推進しなかった日本政府は医療利権の怒りを買ったことだろう。 日本だけが遺伝子操作薬の接種を推進していた2022年5月にジョー・バイデン大統領が来日、首脳会談後の共同記者会見でCDCの日本事務所を新設する考えを表明した。それと連携することが想定できる機関を日本政府は創設する。 そして今年3月7日、NIIDとNCGMを統合して「国立健康危機管理研究機構」を作るための法案を閣議決定する。内閣官房に設置する「内閣感染症危機管理統括庁」の求めに応じて動くことになるようだ。 現在、アメリカのCDCは「COVID-19スキャンダル」の中心的な存在だ。深刻な副作用を引き起こし、少なからぬ人が死ぬと予想される新薬を国民全体に接種させようとしたわけで、司法に幾許かの正義が残っているならば、CDCを含む関係者は処罰されるはずだ。 医療利権への批判が強まる中、今年5月5日にロシェル・ワレンスキーCDC所長は辞表を提出した。逃げようとしていると言われている。アメリカではCDCを犯罪組織のように考える人が少なくない。
2023.06.15
ウクライナ軍が6月4日に始めた作戦は戦艦大和を含む艦隊を沖縄へ向かわせた「海上特攻」と似ているように見えるが、そうした状況にウクライナを追い込んだのはアメリカやイギリスをはじめとする西側だ。 昨年2月24日にロシア軍はミサイルでウクライナに対する攻撃を始めた。3月にウクライナ軍が大規模な攻撃を計画、ドンバスの周辺に部隊を集結させていたと言われている。その部隊はロシア軍の攻撃で大きなダメージを受けた。その時点でウォロディミル・ゼレンスキー大統領はウラジミル・プーチン大統領と停戦交渉を始めている。仲介役はイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットだった。 ベネットによると、双方は妥協に応じ、停戦は実現しそうだったという。3月5日にベネットはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけ、その足でベネットはドイツへ向かう。オラフ・シュルツ首相と会談したのだが、その3月5日にゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフをウクライナの治安機関SBUのメンバーが射殺してしまう。クーデター直後からSBUはCIAの下部機関化しているので、アメリカ政府が殺したと言えるだろう。 それから1年以上を経た現在、ロシア政府は話し合いでの解決を断念したようだ。ドニエプル川の東岸地域やオデッサをロシア領とし、クーデターの際にオデッサで反クーデター派の住民を虐殺したネオ・ナチの引き渡すようにロシア政府は求めると推測する人がいる。さらにポーランドやルーマニアからイージス・システムを撤去し、ウクライナと国境を接する国へアメリカ/NATO軍の部隊が駐留することも禁止するとも考えられている。こうした要求をバイデン政権が呑まなければ戦争は終わらない可能性が高いと見られているが、選挙前にバイデンがそうした要求を呑むとも思えない。
2023.06.14
ウクライナ軍は6月4日、航空兵力の支援を受けられない状態でドンバスへの攻撃を始めたという。この戦闘で「勝利」のイメージを欲しがっているのは大統領選を控えたジョー・バイデン政権にほかならない。 1945年4月に日本軍は航空機の支援を受けられない状態で戦艦大和を含む艦隊を沖縄へ向かわせた。いわゆる「海上特攻」だが、似たようなことを行ったわけだ。結果も似たようなことになっている。攻撃が始まってから2日後にノヴァ・カホウカ・ダムは爆破され、ヘルソンのロシアが支配している地域は洪水で水浸しになった。 2014年のクーデターでビクトル・ヤヌコビッチを倒したバラク・オバマ政権はネオ・ナチ体制を作り上げた。クーデターを指揮していたのはジョー・バイデン副大統領、ビクトリア・ヌランド国務次官補、副大統領の国家安全保障補佐官を務めていたジェイク・サリバン。現在バイデンは大統領、ヌランドは国務次官、サリバンは国家安全保障問題担当の大統領補佐官だ。バイデン政権で戦争を推進しているのは、この3人とアントニー・ブリンケン国務長官だ。 ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部では住民がクーデターを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは内戦が始まる。そこでの戦闘でクーデター軍は勝てないと判断した西側は軍事力を増強するための時間稼ぎを始めた。アンゲラ・メルケル元独首相は昨年12月7日にツァイトのインタビューで、ミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認めた。その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。 その間、アメリカ/NATOはキエフ政権に兵器を供与、兵士を訓練、そしてドンバスの周辺に要塞を築いた。ネオ・ナチを中心に編成された内務省親衛隊の中核だったアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリ、あるいは岩塩の採掘場があるソレダルを中心に要塞線が作られたようだが、それはすでに突破された。 イギリスは長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドー」や「チャレンジャー2」戦車、そして劣化ウラン弾を新たに供給。ドイツは「レオパルト2」戦車、アメリカは「ブラッドリー」装甲戦闘車両に続き、「M1エイブラムス」戦車を送った。すでに戦場ではレオパルト2やブラッドリーの残骸を撮影した写真が明らかにされている。 日本のマスコミは一貫してウクライナが勝っているというイメージを広めようとしてきた。「勝った、勝った」、ついで「反転攻勢」と叫んできたのだが、事実はそうした「宣伝」を破壊している。そもそも勝っている軍隊が反転攻勢するという話がおかしい。 アメリカの軍事や外交をコントロールしているネオコンは国防総省の「DPG草案」という形で1992年2月に世界制覇プランを作成した。その直前、1991年12月にソ連が消滅し、アメリカが「唯一の超大国」になったと考えたからだ。 ソ連を消滅へ導いたのはニコライ・ブハーリンを「別の選択肢」と考えていたミハイル・ゴルバチョフと西側のエージェントだったボリス・エリツィンだと言えるだろう。当時のソ連は体制が崩壊するような状況にはなく、準備ができていなかった。 ネオコンが手始めに狙ったのはユーゴスラビア。その直後、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、人びとがショックで茫然自失になっている間にジョージ・W・ブッシュ政権は国内の収容所化を進め、国外で侵略戦争を本格化させる。そして2003年3月にイラクを戦争攻撃し、サダム・フセイン体制を倒した。ネオコンはフセイン体制を倒して新イスラエル体制を築き、シリアとイランを分断して個別撃破する予定だった。 結局、イラクへの侵略戦争は失敗、21世紀に入ってロシアが再独立に成功したことでネオコンの世界制覇プランは破綻したのだが、その妄想を捨てられない彼らはロシアを再び屈服させようとする。そうした工作の手先として想定されていたのが西側と手を組んだ「ビジネス」で巨万の富を築いていたオリガルヒ、あるいはアカデミーやメディアの人間たちだ。 こうした工作のため、イギリスは留学を利用してきた。崩壊直前の帝政ロシアを支えていたのは大地主と産業資本家。ドイツとロシアを戦争させたいイギリスはロシアの支配層にネットワークを作っていた。その中心人物が有力貴族のフェリックス・ユスポフ。 ユスポフ家が雇っていた家庭教師の中にはイギリス人もいた。その宮殿で教師の子ども、スティーブン・アリーが1876年2月に誕生しているが、のちにMI6のオフィサーになった。フェリックスが生まれたのは、その11年後だ。 フェリックスは1909年から13年にかけてオックスフォード大学で学んだ。クラスメートのオズワルド・レイナーと親しくなるが、この人物は後にイギリスの情報機関SIS(秘密情報局、通称MI6)のオフィサーになる。また在学中、フェリックスはブリングドン・クラブに入っている。 クラブのメンバーは多くがイートン校の出身、つまり富豪の子どもたちで、素行が悪いことで知られている。1980年代のメンバーにはボリス・ジョンソン、デイビッド・キャメロン、ジョージ・オズボーン、トニー・ブレアといった後の政治家、そしてナット・ロスチャイルドも含まれている。 こうした仕掛けのほか政略結婚もあり、ロシアのエリート層にはヨーロッパへの憧れを抱く人が少なくなかった。フェリックスたちはドイツとの戦争に向かうが、それに反対したのがグレゴリー・ラスプーチン。ロシアとドイツを戦争させるためにはラスプーチンを排除しなければならない。そこで1916年12月30日にラスプーチンは暗殺される。フェリックスが殺したとされているが、使われた銃弾の口径からMI6のレイナーが真犯人だと推測する人もいる。 ロシア革命当時から最近までロシアのエリート内には「親ヨーロッパ派」とまでは言えなくとも、欧米を信じている人は少なくなかったが、状況に変化が見られる。ロシア連邦院議長を務めるワレンチナ・マトヴィエンコの発言から判断すると、欧米幻想からロシア人は抜け出しそうだ。
2023.06.14
岸田文雄内閣は昨年10月13日、「マイナンバーカード」と健康保険証を一体化させる計画の概要を発表した。それにともない、現在使われている健康保険証を2024年の秋に廃止する。言うまでもなく、「カード取得の実質義務化」だ。 発表時、河野太郎デジタル大臣は「デジタル社会を新しく作っていくための、マイナンバーカードはいわばパスポートのような役割を果たすことになる」と述べ、「日本は国民皆保険制度であり、保険証と一体化するということは、ほぼすべての国民にマイナンバーカードが行き渡るということで、格段に普及が進む。」と寺田稔総務大臣は主張した。「語るに落ちる」とはこのこと。 この姿勢は一貫していて、岸田首相は6月12日、衆院決算行政監視委員会で、予定通り来年秋の健康保険証の廃止に向けて取り組んでいく考えを示したという。目的はマイナンバーカードを保有させ、デジタル管理社会を築くということであり、健康保険証廃止を強行すれば混乱が生じることを政府は気にしていないだろう。 2015年9月に国連で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示された「SDGs(持続可能な開発目標)」を実現するため、個人を特定するためのシステムに記録されていない人びとを管理する必要があるとされ、デジタルIDの導入が進められることになった。その決定に基づいて日本政府はマイナンバーカードを推進しているはずである。 マイナンバーカードはデジタルIDの一種だが、デジタルIDとワクチンは不可分。マイナンバーカードもワクチンの強制接種に使われる可能性がある。どのようにデジタルIDの導入を進めるかが2016年5月には国連本部で話し合われ、ID2020というNGOが設立された。このNGOにはマイクロソフトも関係している。 こうした計画の実施に最も積極的なのはEUの執行機関である欧州委員会。2019年に同委員会が公表した指針の中には、EU市民向けの「ワクチン・カード/パスポート」を2022年に導入する計画が示されている。 WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長と欧州委員会のステラ・キリアキデスは2022年12月に「世界的な健康問題に関する戦略的協力を強化する」協定に署名した。 そしてWHOと欧州委員会は6月5日、GDHCN(グローバルデジタルヘルス認証ネットワーク)を実現するために「画期的なデジタル・ヘルス・イニシアティブ」を開始。世界的な相互運用可能なデジタル・ワクチン・パスポートを推進するのだというが、これは2022年12月に署名された協定の一部だという。 ノルウェー、ドイツ、日本、EU、イギリスなどの国々のほか、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、WEF(世界経済フォーラム)、ウェルカム・トラストなどが共同で創設したCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)は「将来の『疾病X』の発生は避けられない」と予測し、将来のウイルス侵入に対する永遠の警戒を呼びかけている。なお、ウェルカム・トラストの理事長を務めていたジェレミー・ファラーはWHOの主任科学者になる。 ウェルカム・トラストは2020年5月にウェルカム・リープを創設、アメリカの国防総省で新技術を研究開発しているDARPA(国防高等研究計画局)の長官を務めていたレジーナ・デューガンを雇い、CEOに据えた。ここでもアメリカの国防総省と結びつく。 WHO(世界保健機関)は2021年3月に「パンデミック条約」が必要だとする宣伝を開始、2022年5月にはスイスのジュネーブで「第75回世界保健総会(WHA)」を開催、その条約について話し合った。パンデミックなど危機的な状況下ではWHOが全ての加盟国にロックダウンやワクチンの強制接種などの政策を強制できるようにしようというのだ。 WHOがパンデミックを宣言すると、その条約はTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)と同じように主権国の主権や人権が剥奪することになる。その仕組みを動かす上で重要な情報を集約する「ハブ」をWHOはロックフェラー財団と作るともされている。 デジタルIDはチップ化され、体内にインプラントする計画がある。例えば、WEFのクラウス・シュワブは2016年1月にスイスのテレビ番組に出演し、そこでマイクロチップ化されたデジタル・パスポートについて話している。チップを服に取り付けるところから始め、次に皮膚や脳へ埋め込み、最終的にはコンピュータ・システムと人間を融合、人間を端末化しようと考えているようだ。 米英金融資本の植民地と化している日本でもこうした計画が実行に移されようとしている。「マイナンバーカード」もそのために導入が強硬されようとしている。日本の存続を危うくしかねない「COVID-19ワクチン」の接種推進と同様、日本政府の判断で行われているのではないだろう。
2023.06.13
中国軍とロシア軍は6月6日に日本海と東シナ海で共同航空哨戒を実施、ロシア軍機4機と中国軍機4機が朝鮮半島南部と東部の防空圏に進入、自衛隊(日本軍)と韓国軍が戦闘機を緊急発進させたという。中露による共同航空哨戒は2019年から6回目になる。 中国とロシアが接近、同盟関係を結んだのはアメリカがウクライナでクーデターを実施、アメリカとイギリスが香港で反中国運動を仕掛けた2014年以降のことだ。ウクライナでアメリカ/NATOはロシアとEUを結びつけていた天然ガスのパイプラインを断ち切って両者を分断、ロシアとEUを制圧しようと目論み、香港での工作は中国の体制を揺さぶろうとしたのだろう。 中国もロシアも国内にはアメリカやヨーロッパと結びつきたいと考える人びとがいる。そうした人が多いのはビジネス界やアカデミーの世界だと言われているが、政治の世界への影響力は強くない。ロシアでは軍や情報機関の相当部分がアメリカに従属していなかった。ウラジミル・プーチンがロシアを再独立させることができたのは、そのためだろう。 ネオコンが2014年に行なったロシアや中国に対する揺さぶりは裏目に出た。中国とロシアを接近させ、今ではこの両国を中心に世界は動き始めている。 アメリカが世界制覇戦略を露骨に見せ始めたのは1991年12月12月にソ連が消滅した直後だ。ネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと認識、国防総省の「DPG草案」という形で世界制覇プランが作成されたのである。作成の中心がポール・ウォルフォウィッツ次官だったことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれてきた。 その後、アメリカの国際戦略はこのドクトリンに基づいて動くことになった。中心的な目的には新たなライバルの出現を防ぐことにある。警戒する地域には旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアが含まれる。ドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れるともしている。ドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込もうということだろう。 戦争マシーンに組み込まれることを嫌がっていた日本に進むべき道筋を示したのが1995年2月にジョセイフ・ナイが発表した「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」だが、当時の日本にはそうした道を歩こうとしない政治家もいたようだ。 そうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)た。その10日後には警察庁の國松孝次長官が狙撃されている。8月には日本航空123便の墜落に自衛隊が関与していることを示唆する大きな記事がアメリカ軍の準機関紙とみなされているスターズ・アンド・ストライプ紙に掲載された。 結局、日本は戦争への道を歩み始め、自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島にも作った。2023年には石垣島でも完成させている。 アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が昨年に発表した報告書によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。 日本は軍事拠点を作るだけでなく、高性能兵器の開発にも乗り出していると伝えられている。例えばアメリカと共同で音速の5倍以上で侵入してくるHGV(極超音速滑空体)を迎撃するミサイル技術の研究開発を考え、昨年7月24日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で迎撃ミサイルに必要な速度に到達することが可能だとされるエンジンの飛行試験を初めて実施した。 極超音速で飛行するミサイル自体も研究だと言われ、HGVではなくエンジンによって推進力を得る極超音速巡航ミサイル(HCM)の開発を目指しているという。2026年には九州や北海道の島々へ配備したいようだ。 政府は国産で陸上自衛隊に配備されている「12式地対艦誘導弾」の射程を現在の百数十キロメートルから1000キロメートル程度に伸ばし、艦艇や戦闘機からも発射できるよう改良を進めていると昨年8月に伝えられているが、その背景にアメリカのGBIRM計画があった。 日本は射程距離が3000キロメートル程度のミサイルを開発し、2030年代の半ばまでに北海道へ配備する計画だとも伝えられている。それが実現するとカムチャツカ半島も射程圏内だ。 こうした当初の計画では準備が間に合わない事情がアメリカに生じ、トマホークを購入することにしたのだろう。 NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。2024年中に連絡事務所をNATOは連絡事務所を東京に設置するという また、オーストラリアは2021年9月、イギリスやアメリカとAUKUSなる軍事同盟を創設したと発表、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。ジョー・バイデン米大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると語っている。 その潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明した。 岸田文雄政権は昨年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。その決定を「手土産」にしてアメリカを訪問、ジョー・バイデン大統領と1月13日に会談している。 NATOでも好戦的なアメリカやイギリスから離れる動きが見られ、東アジアでも命令に従う国が少ないためにアングロ・サクソン系の国を前面に押し出してきた。台湾や韓国の政府をアメリカはコントロールしているが、国民はそうの政策に反対している。アングロ・サクソン系の軍事同盟に嬉々として参加しようとしている国は日本くらいだ。 日本は中国やロシアにとって警戒すべき国になった。
2023.06.12
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が6月6日にサウジアラビアを訪問、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談した際に撮影された写真が話題になっている。ブリンケンの後ろにアメリカの国旗が飾られていないのだ。 サウジアラビアはアメリカの支配体制にとって重要な国だった。石油支配のパートナーであり、ドル体制を維持する仕組みの重要な役割を果たしてきたのだ。そのサウジアラビアがアメリカから離れ、ロシア、中国、イラン、シリアなどとの関係を強めていることはアメリカの支配システムを揺るがす事態だ。いや、アメリカの支配システムが揺らいでいるのでサウジアラビアはアメリカから離れ始めたのだろう。 1991年12月にソ連が消滅するとアメリカの支配層、特にネオコンのような好戦派は冷戦に勝ったアメリカは「唯一の超大国」になったと考え、他国を配慮することなく自らの都合だけで好き勝手に行動できる時代が来たと浮かれた。そして1992年2月には国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇プランが作成された。 ネオコンは1990年代からこのプランに基づいて動き始めるが、まだ国内に抵抗はあった。そうした抵抗を一掃したのが2001年9月11日の出来事だ。その出来事を利用してネオコンは国内を収容所化、国外で侵略戦争を始める。手始めに行われたのがイラクへの侵略戦争だった。 しかし、その一方で世界は多極化へ向かい始める。本性を表したアメリカに愛想をつかしたのかもしれないが、アメリカの衰退を世界が認識したこともあるだろう。 イスラエルやアメリカの軍事的な支援を受けていたジョージアが2008年8月に南オセチアを奇襲攻撃するが、ロシア軍の反撃で惨敗している。この軍事衝突でロシア軍の強さを世界は知った。 その翌月には大手投資会社リーマン・ブラザーズ・ホールディングズが連邦倒産法の適用を申請、世界を震撼させた。いわゆる「リーマン・ショック」だが、破綻していたのはこの会社だけでなく、金融システム全体だった。つまり米英金融資本の時代が終焉を迎えようとしていることを隠しきれなくなった。 それ以上にアメリカ帝国の衰退を世界に印象付けたのはシリアでの戦闘だろう。アメリカはイスラエルやサウジアラビアという同盟国のほかにイギリスとフランスのサイクス・ピコ協定コンビ、さらにカタールやトルコと手を組み、2011年3月から軍事侵攻を始めたのだ。 その手先に使われたのがムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とする戦闘員。その戦闘員の登録リストがアル・カイダであり、そのリストを利用して部隊が編成された。この作戦が行き詰まると、サダム・フセイン政権の軍人を合流させて新たの武装集団ダーイッシュ(ISIS、ISIL、IS、イスラム国などとも表記)を作っている。 バラク・オバマ政権はダーイッシュを売り出すと同時にアメリカ/NATO軍の介入を目論む。そのため、好戦的な政策に反対していた人びとが排除される。オバマ政権のアル・カイダ支援を批判したマイケル・フリンDIA局長を2014年8月に追い出し、戦争に慎重な姿勢を見せていたチャック・ヘーゲル国防長官やマーチン・デンプシー統合参謀本部議長も解任している。 デンプシーは2015年9月25日に退役するが、その5日後の30日にロシア軍がシリア政府の要請で介入、ダーイッシュを敗走させた。その結果、ロシア軍の強さとロシア製兵器の優秀さを世界は見ることになる。 2017年4月にドナルド・トランプ政権は地中海に配備されていたアメリカ海軍の2隻の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したものの、6割が無力化されてしまう。2018年4月にアメリカはイギリスやフランスを巻き込み、100機以上の巡航ミサイルをシリアに対して発射したが、今度は7割が無力化されてしまう。ロシア軍を脅すつもりだったのだろうが、裏目に出た。 サウジアラビアのサルマン国王は2017年10月5日にロシアを訪問、ロシア製防空システムS-400を含む兵器/武器の供給をサウジアラビアは購入する意向だと伝えられたが、アメリカの圧力で実現しなかった。当然、サウジアラビアはアメリカによるミサイル攻撃に対し、ロシアの防空システムが有効だという事実を見ている。 その後、サウジアラビアはイランとイラクを介し、秘密裏に接触しはじめる。イラン側のメッセンジャーがガーセム・ソレイマーニー。イスラム革命防衛隊の特殊部隊とも言われるコッズ軍を指揮していた人物だが、2020年1月3日、バグダッド国際空港でアメリカ軍によって暗殺されてしまう。イスラエルが協力したと言われている。イラクの首相だったアディル・アブドゥル-マフディによると、その時、緊張緩和に関するサウジアラビアからのメッセージに対するイランの返書を携えていた。 アメリカの恫喝だが、それでもサウジアラビアはイランとの国交修復をやめない。ロシア、中国、イランといった国々だけでなく、サウジアラビアも脅しに屈しなかった。 ところが、日本は政治家も官僚も学者も記者もアメリカが掲げる旗を必死に追いかけている。大多数の国民も同じだ。そうした日本のアングロ・サクソンへの従属は明治維新から始まる。 明治維新は中国を侵略したいイギリスの私的権力が仕掛けた。明治政権はイギリスやアメリカの外交官に焚き付けられて琉球、台湾、朝鮮半島、そして中国へと攻め込む。1904年2月に日本軍は仁川沖と旅順港を奇襲攻撃して日露戦争が始まるが、日本に戦費を用立てたのはロスチャイルド系のクーン・ローブを経営していたジェイコブ・シッフ。関東大震災の後はアメリカの巨大金融機関JPモルガンが日本の政治経済に大きな影響力を持つようになるが、この金融機関はロスチャイルドの銀行からスピンオフしたものだ。 1932年のアメリカ大統領選挙でニューディール派のフランクリン・ルーズベルトが勝利するとウォール街の大物たちはファシズム体制を樹立するためにクーデターを計画した。その中心的な存在がJPモルガンだ。この米英金融資本による日本支配の仕組みが天皇制官僚体制にほかならない。この体制は現在も続いている。この枠組みから日本人は抜け出せないでいる。
2023.06.11
アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は6月2日現在、3万5080名。VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%、あるいは数%にすぎないと言われているので、実数はこの数十倍から100倍程度になるはずだ。 日本政府は今でも「COVID-19ワクチン」の接種を進めているが、4回以上の接種数を視覚的に見えにくくしている。世界のデータを集計している「Our World in Data」の場合、日本における接種数は5月7日までしか表示されていない。「ステルス接種」をはじめたとも言えるだろう。 この「ワクチン」が2020年12月から接種され始めたが、翌年の3月にアメリカのカリフォルニア州サンディエゴ郊外にあるソーク研究所はスパイク・タンパク質自体が病気の原因になっている可能性があるとする論文を発表した。 スパイク・タンパク質が血管へ入り込むことで血管にダメージを与えて血栓や出血の原因になり、脳へウイルスが侵入した形跡がないにもかかわらず、神経系の症状が出るのもそのためだと推測しているのだが、その後、この仮説は正しいことが判明する。 イスラエルでは2021年4月頃から「ワクチン」を接種した若者や子どもが心筋炎や心膜炎になっているとする情報が流れ始める。当初、アメリカのCDCは「ワクチン」が心筋炎や心膜炎の原因にあることはないと主張していたが、6月になるとCDCのACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)は「mRNAワクチン」と心筋炎との間に「穏やかな」関連がありそうだと発表している。 LNP(脂質ナノ粒子)という有害物質の守られる形でmRNAが人間の細胞へ侵入、そこでスパイク・タンパク質を製造し続ける。「ワクチン」の中にグラフェン誘導体が入っていることは指摘されていたが、ここにきてDNAの混入が発覚した。ファイザー製の製品に含まれていたDNAには発癌性ウイルスであるSV(シミアン・ウイルス)40の塩基配列の一部が入っているという。 また、専門家の間では「COVID-19ワクチン」の接種が始まる前からウイルスを免疫細胞へ侵入させて免疫の機能を混乱させる「ADE(抗体依存性感染増強)」が懸念されていた。人間の免疫システムはスパイク・タンパク質を製造する細胞を攻撃、自己免疫疾患を引き起こすのだが、炎症を抑える意味もあり、免疫力は低下してAIDS状態になることも判明している。脳神経や心臓は受けたダメージを修復できない。 こうした「COVID-19ワクチン」の危険性が指摘され始めた後、日本では接種を本格化させた。「知らなかった」という弁明は通用しない。深刻な副作用が引き起こされ、死亡者が増えることが見通せる状態で政府、国会、医療利権、そしれマスコミは接種を推進した。「確信犯」だと言えるだろう。 すでに日本でも「COVID-19ワクチン」の副作用は重大な事態を招いている。「ジャーナリズム」を名乗るならそうした事実を伝えなければならないが、そうしたことにはなっていない。強大な私的権力のプロパガンダ機関に徹している。 NHKの報道番組「ニュースウオッチ9」の場合、「COVID-19ワクチン」接種後に家族が死亡したと訴える遺族の発言を、「コロナ感染」で亡くなった人の遺族のように取り上げたとして遺族側が抗議している。 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は6月9日、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めたというが、COVID-19問題に限らず、西側の有力メディアはこうした「編集」を行なっている。ウクライナの戦乱で侵略国のアメリカを擁護するために同じ手法を使っている。 アメリカの私的権力は1970年代から情報統制を強化している。それまでも統制システムは存在したが、気骨ある記者が活動する余地があった。1980年代に有力メディアの資本集中が進んだのもそうした工作の一環だ。日本でも同じことが行われている。 日本の場合、大きな節目は1971年6月に日米両国政府が署名した沖縄返還協定の密約問題、そして87年5月に引き起こされた朝日新聞阪神支局襲撃だろう。 沖縄返還にともなう密約は復元費用400万ドルを日本政府が肩代わりするというだけの話ではなく、これ以外にも6500万ドルを支払う約束を水面下で取り交わしていた。この数字は西山が入手した文書の中にもあり、日本政府が主張、マスコミが広めた「沖縄返還」のイメージは事実とかけ離れたもので、核兵器持ち込みの問題も深く関係しているようだ。この密約が表に出ると困るのは日本政府だけ。後のアメリカから文書が出てくるのはそのためだろう。 この事件によって日本のマスコミは大きなダメージを受けたことも忘れてはならない。明らかにされた密約の重要性をマスコミは無視、西山記者や毎日新聞を攻撃、そうしたキャンペーンに人びとは操られた。その結果、毎日新聞は1977年に経営破綻している。見せしめだ。 1980年代になると広告会社がマスコミにスポンサーをあてがう仕組みを作り、コストのかかる地道な取材をしなくなる。そこでマスコミの足腰は弱っていくのだが、目先の利益に目の眩んだ経営者はその仕組みに乗った。 そして1987年に起こったのが朝日新聞の阪神支局に対する襲撃だ。この事件にマスコミは恐怖し、無難なテーマを追いかけたり、権力システムの発信する情報を流すだけになっていく。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎への攻撃、2003年3月のイラクに対する軍事侵攻、2011年のリビアやシリアへの侵略戦争、ウクライナでのクーデターから内戦、そしてCOVID-19問題に続く。偽報道は「ニュースウオッチ9」だけの問題ではない。
2023.06.10
OPEC(石油輸出国機構)とロシアをはじめとする非加盟産油国で構成される「OPEC+」は6月4日、2023年末までとしていた減産方針を24年1月1日から12月31日までの期間にも実施することを決めたようだ。 昨年10月5日の減産合意に対し、ジョー・バイデン米大統領は制裁を匂わせていたが、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は個人的にアメリカ政府を脅したという。アメリカが石油削減に報復すれば数十年来の米国とサウジの関係を根本的に変え、米国に多大な経済的犠牲を強いるというのだ。 第2次世界大戦で大きな戦禍を免れ、ドイツや日本が略奪した財宝を手に入れ、ドルを基軸通貨にしたアメリカは支配システムを築いた。ソ連というライバルは存在していたものの、ドイツの軍事侵攻で大きな損害を受け、結局立ち直ることはできなかった。 そのソ連が1991年12月に消滅、ネオコンをはじめとする好戦派はアメリカが「唯一の超大国」になったと信じ、翌年の2月には国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇プランを作成した。国防次官だったポール・ウォルフォウィッツが作成の中心だったことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 自分たちの思い通りに世界を動かせる時代が来たと考え、旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなど潜在的ライバルを潰し、資源国を制圧しようというわけだ。ライバルがいないという認識から軍事力を全面に出してくるのだが、その切っ掛けになったのは2001年9月11日に引き起こされたニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)への攻撃。そして2003年3月にジョージ・W・ブッシュ政権はイラクを先制攻撃する。 この時点ではネオコンだけでなく、ネオコンに従属する勢力も自分たちの天下が来たと有頂天になっていたが、すぐに雲行きが怪しくなる。サダム・フセイン体制を倒し、フセインを殺すことはできたが、新イスラエル体制の樹立には失敗、親イラン政権ができてしまう。戦乱もおさまらない。 そこでバラク・オバマ政権はイスラム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とする戦闘集団を編成、リビアやシリアに対する軍事侵攻を2011年春に始めた。この手法はオバマの師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーが作り上げたものだ。 リビアでは2011年10月にムアンマル・アル・カダフィ体制が倒され、カダフィ本人はその際に惨殺されるのだが、シリア軍は強く、バシャール・アル・アサド政権を倒せない。そこでオバマ政権はアル・カイダ系武装集団への軍事支援を強化、2014年には新たな武装集団としてダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を登場させた。 その頃からアメリカ/NATO軍を介入させようとする動きをオバマ政権は見せ始める。オバマ政権のアル・カイダ系武装集団支援を危険だと警告していたマイケル・フリンDIA局長を2014年8月に追い出し、戦争に慎重な姿勢を見せていたチャック・ヘーゲル国防長官やマーチン・デンプシー統合参謀本部議長も解任された。ダーイッシュが残酷さを演出していたのはアメリカ/NATO軍を介入させる環境作りだったと見られている。 デンプシーは2015年9月25日に退役、5日後の30日にロシア軍がシリア政府の要請で介入、ダーイッシュを敗走させた。そこでアメリカはクルドを新たな手先として使い始めるのだが、これでアメリカとトルコの関係が悪くなる。軍事介入したロシア軍はその強さとロシア製兵器の優秀さを世界に示し、アメリカへの恐怖が世界的に弱まっていく。 オバマ政権は中東でダーイッシュを編成するだけでなく、ウクライナでは2013年11月からネオ・ナチを使ったクーデターを開始、14年2月にビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒してネオ・ナチ体制を築いた。 アメリカやその従属国はクーデター体制をすぐに承認するが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部の住民はクーデターを拒否、内戦が始まる。アメリカ政府はウクライナを制圧することでロシアからEUへ天然ガスを運ぶパイプラインを抑えたが、その目的はロシアから大きな市場を奪い、EUからエネルギー資源の供給源を断つことにあった。 アメリカのCIAとイギリスのMI6は2014年の9月から12月まで香港で反中国の「佔領行動(雨傘運動)」を仕掛けているが、これによって中国政府はアメリカやイギリスが中国を支配しようとしていることを理解する。 天然ガスの新たな市場が必要なロシアはエネルギー資源の供給源を必要とする中国に接近、アメリカという共通の敵が出現したこともあり、強力な同盟ができあがる。そしてロシアと中国を中心とする世界秩序に参加する国が増えているのだ。 そのひとつがサウジアラビアであり、5月19日にサウジアラビアのジッダで開かれたアラブ連盟の首脳会議ではシリアが復帰している。ウクライナもゲストとして参加しているが、相手にされていない。ロシアも中国もアフリカやラテン・アメリカと関係を強めている。 こうした動きに危機感を持ったのか、好戦的な政策の中心にいるジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官が5月7日にサウジアラビアを訪問、6月6日にはアントニー・ブリンケン国務長官も同国を訪れた。ロシア、中国、イラン、シリアなどアメリカ支配層にとって好ましくない国との関係修復にブレーキをかけ、イスラエルとの国交正常化を訴えたが、希望通りの結果は得られなかったようだ。 アメリカ帝国の崩壊は予想以上に早いペースで進んでいる。
2023.06.10
ノヴァ・カホウカ・ダムが6月6日に爆破され、ヘルソンのロシアが支配している地域は洪水で水浸しになっている。ウクライナ軍の侵攻を防ぐために作られた地雷原は今回の洪水で押し流され、水が引いて土地が乾燥した後、攻め込むことが容易になると考える人がいる。アメリカ/NATOはクリミアを占領しようと目論んでいるが、破壊されたダムはクリミアの水源であると同時に電力の供給源だった。ザポリージャ原子力発電所もダムの水力発電所から電力の供給を受けている。 ウクライナ軍がダムの破壊を計画していることは昨年の段階で指摘されていた。アメリカの主要プロパガンダ機関であるワシントン・ポスト紙は12月に同軍のアンドリー・コバルチュク少将をインタビュー、ドニエプル川を氾濫させるという構想を聞いている。同少将はヘルソン地区におけるウクライナ軍を指揮している。 その構想に基づき、ウクライナ軍はHIMARSでノヴァ・カホウカ・ダムを攻撃、3カ所に穴を開けたとコバルチュク語った。これは昨年8月のことだ。テストは成功したが、最後の手段として取っておくとしていた。 昨年11月、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣はセルゲイ・スロビキン司令官からの報告に基づき、ヘルソンからの撤退を部隊に命じた。同時に住民も避難させている。ウクライナ側の計画を知ってのことだろう。 この頃、ロシア側はダムの水位を下げているが、年明け後に急上昇している。ウクライナ軍がドネプロペトロフスクとザポリージャの水門を開いたからだと言われている。 ウクライナ軍は6月4日に「反転攻勢」を始めたものの、5日の段階で失敗に終わった。そこで注目されているのがNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」。6月12日から23日まで実施されるNATO史上最大の空軍展開演習で、25カ国から最大1万人が参加、派遣される航空機は220機に達するという。追い詰められているネオコンはこの演習を利用して軍事侵攻すると懸念する人もいる。そうなるとヨーロッパが壊滅するだけではなく、核戦争に発展する可能性もある。 ウクライナの内戦は2010年の大統領選挙で選ばれたビクトル・ヤヌコビッチ大統領をアメリカのバラク・オバマ政権が2014年2月、ネオ・ナチを使って排除したところから始まる。勿論、このクーデターは憲法違反だ。 クーデターを指揮していたのはジョー・バイデン副大統領、ビクトリア・ヌランド国務次官補、副大統領の国家安全保障補佐官を務めていたジェイク・サリバン。現在バイデンは大統領、ヌランドは国務次官、サリバンは国家安全保障問題担当の大統領補佐官だ。バイデン政権で戦争を推進しているのは、この3人とアントニー・ブリンケン国務長官だ。またサリバンの妻でジョー・リーバーマンやジョン・マケインの顧問を務めた海軍情報局の退役将校マーガレット・グッドランダーも注目されている。 アメリカは世界支配のために買収、恫喝、暗殺、クーデター、軍事侵略などあらゆる手段を使ってきた。その国の政府は「法の支配」や「紛争の平和的解決」といった用語を使いたがる。その従属国も真似をしたがる。 しかし、「万国公法」が帝国主義国の植民地政策を正当化するルールにすぎなかったように、こうした用語は買収、恫喝、暗殺、クーデター、軍事侵略に歯向かうことを許さないという宣言にすぎない。 昨年秋にも大きな破壊活動があった。ロシアとドイツがバルト海に建設した2本のパイプライン「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」が2022年9月26日から27日にかけての間に破壊され、天然ガスが流出したのだ。 ドナルド・トランプ政権下の2020年7月には国務長官のマイク・ポンペオがNS2を止めるためにあらゆることを実行すると主張。2021年1月に大統領がジョー・バイデンに交代しても状況に変化はなく、22年1月27日にビクトリア・ヌランド国務次官はロシアがウクライナを侵略したらNS2を止めると発言、2月7日にはジョー・バイデン大統領がNS2を終わらせると主張し、アメリカはそうしたことができると記者に請け合っていた。 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはアメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを破壊したとする記事を発表した。彼によると、ジョー・バイデン米大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成し、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合い、2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。 西側の政府や有力メディアが宣伝していた「ロシア犯行説」は説得力にかけ、疑惑の目はアメリカに向けられた。そうした中、有力メディアは「ウクライナ犯行説」を打ち出してきたのだ。ここにきてワシントン・ポスト紙は「CIAはウクライナの破壊工作を知っていた」とする話を流しているが、要するに「アメリカ政府は無実だ」という印象を広めたいのだろう。
2023.06.09
麻薬業者は麻薬中毒患者を増やすことから商売を始める。中毒患者が増えれば営業努力をすることなく「商品」が売れるからだ。イギリスやアメリカの麻薬業者は19世紀に中国(清)でそうしたことを行い、中国政府が麻薬取引を取り締まろうとすると戦争を仕掛け、屈服させた。 医療利権は病人が増えれば稼ぎが多くなる。逆に、人びとが健康になることは彼らの利益にならない。そうした意味で伝染病による死亡者が世界的に減少していた1970年代は医薬品業界にとって好ましくない時代だった。アメリカでは監督官庁のNIH(国立衛生研究所)、その下部機関であるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)、CDC(疾病予防管理センター)は存在意義が問われるような状態になっていた。 そうした中、登場したのがAIDS(後天性免疫不全症候群)。そうした官庁はこの病気よって息を吹き返す。1984年11月から昨年12月までNIAID所長として伝染病対策を指揮した人物がアンソニー・ファウチである。この病気はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)によって引き起こされるとされ、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査で感染しているかどうかを判定していた。 しかし、PCRは特定の配列の遺伝子を増幅する技術であり、しかも調べられるDNAの長さはウイルス全体の数百分の1に過ぎない。増幅サイクル(Ct)を増やしていけば、医学的に意味のないほど微量の遺伝子があるだけでも陽性になってしまい、しかも偽陽性が増える。偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。ちなみに、国立感染症研究所が2020年3月19日に出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だ。 WHO(世界保健機関)は2021年1月、PCRについて「診断の助け」だと表現するようになる。PCRの陽性者と「感染者」を同義語として扱ってはならないということだ。 そして2021年7月、CDCはPCRを使った「2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」を同年12月31日に取り下げると発表した。コロナウイルスとインフルエンザウイルスを区別できないからだというのだが、「旧型コロナウイルス」と「新型コロナウイルス」を区別することもできないだろう。 ニューヨーク・タイムズ紙は2007年1月に掲載した記事で、PCRのような高感度の簡易検査は伝染病が蔓延していると誤って判断させる原因になりうると警鐘を鳴らした。その例として、アメリカのニューハンプシャー州にあるダートマース・ヒッチコック医療センターで2006年4月にあった出来事を紹介している。 この技術を開発して1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスもPCRをウイルスの検査に使ってはならないと繰り返し、PCRでAIDS感染を診断することに疑問を示していた。 このAIDS自体にも疑惑の目が向けられている。1969年9月、国防総省国防研究技術局の副局長だったドナルド・マッカーサーはアメリカ下院の歳出委員会で生物兵器の話をした。彼は「著名な生物学者」の話として、人工的に作られた生物学的な因子、自然には存在せず、自然免疫を獲得できない因子を生産することが5年から10年以内に生産できる可能性があると証言しているのだ。AIDSのような病原体を1979年頃までに作り出せると見通しているのだ。AIDSには医療利権の利益という側面だけでなく、兵器としての側面もある。 HIVを発見し、2008年にノーベル生理学医学賞を受賞したのはフランスのリュック・モンタニエだ。1983年に彼のチームが患者の血液からレトロウイルスを発見、LAVと名付けている。 その1年後、NIAIDのロバート・ギャロもエイズの原因を特定したと発表、それをHTLV-IIIと名付けた。ギャロのウイルスはモンタニエから送られたLAVのサンプルから分離したものだったとされている。ギャロの上司がファウチだ。 COVID-19騒動が始まった後、モンタニエはSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)の中にHIVやマラリア原虫の遺伝子情報の一部が入り込んでいる疑いがあると考えていたようだ。 COVID-19を口実として危険な「ワクチン」が世界規模で接種されてきた。現在接種されている主要な「COVID-19ワクチン」はmRNAを利用したタイプとアデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)に利用したタイプ。 前者はBioNTech/ファイザーやモデルナ、後者はジョンソン・アンド・ジョンソンやオックスフォード/アストラゼネカが製造しているのだが、いずれもコロナウイルスのスパイク・タンパク質を人間の細胞に製造させ、それによって抗体を作って免疫を高める。 ところが、このスパイク・タンパク質こそが病気の原因だという事実をカリフォルニア州サンディエゴ郊外にあるソーク研究所が2021年3月に発表している。解説記事も出された。 当初の宣伝とは違い、細胞がスパイク・タンパク質を作り続ける期間は数カ月に及ぶことがわかってきた。その間、人間の免疫システムは自分の細胞を攻撃、自己免疫疾患を引き起こすのだが、炎症を抑える意味もあり、免疫力は低下する。AIDS状態を作り出すとも言えるだろう。 また、「ワクチン」で使われるLNP(脂質ナノ粒子)は人体に害を及ぼすのだが、存在が明らかになったグラフェン誘導体も有害。ここにきてDNAの混入が発覚、ゲノムの中に入る危険性がある。ファイザー製の製品に含まれていたDNAには発癌性ウイルスであるSV(シミアン・ウイルス)40の塩基配列の一部が入っているという。 こうした「COVID-19ワクチン」の接種計画はアメリカの国防総省が主導したことも明らかになった。医療利権の利益だけで接種が推進されているわけではない。
2023.06.08
ウクライナ軍が6月4日に始めた「反転攻勢」は5日の段階で失敗に終わった。その直後の6日、ノヴァ・カホウカ・ダムが爆破されて洪水が引き起こされたようだ。ノードストリーム(NS1)とノードストリーム2(NS2)が爆破された時と同じようにウォロディミル・ゼレンスキーはロシアが実行したと宣伝しているが、被害を受けるのはロシア側だ。ウクライナ側が事前にドニエプル川上流のダムを満水にしていたことから被害は大きくなったという。 昨年11月、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣はヘルソンからの撤退を部隊に命じた。セルゲイ・スロビキン司令官からの報告に基づくのだが、その理由はアメリカ/NATOの命令で動いているウクライナ軍がカホフカ・ダムに対する砲撃を続け、破壊を目論んでいる可能性があると判断されていたからだ。ウクライナ軍がダムの破壊を目論んでいるとする情報は西側のメディアも伝えていた。 ダムが破壊されると下流のヘルソンも洪水に襲われて少なからぬ犠牲者が出ることが予想され、ドニエプル川西岸にいたロシア軍への補給が厳しくなる。そこで11万5000人以上の住民を避難させた上で部隊も撤退させたわけだ。この撤退をみてウクライナ軍はダムの破壊を中止したのかもしれない。 ダムの破壊でロシア側の地域に対する水の供給に問題が生じるほか、水力発電による電力の供給量が落ちる。ロシア軍がドニエプル川西岸に作った地雷原がダメージを受け、クリミアの防衛力が落ちる可能性があるとも指摘されている。
2023.06.07
武田薬品の「グローバル・ワクチン・ビジネス・ユニット」で「プレジデント」を務めていたラジーブ・ベンカヤが退職、今年3月からアエイウム・セラピューティックのCEOに就任した。 ベンカヤは大学を卒業した後、病院に勤務したり研究員を務めているが、ジョージ・W・ブッシュが大統領だった2002年から03年にかけての時期にホワイトハウス・フェローを務め、さらにバイオ防衛担当ディレクターを経て大統領特別補佐官およびバイオ防衛担当シニアディレクターとして活動、バイオ・テロリズム研究グループを率いていた。ホワイトハウス時代、ベンカヤはフランシス・タウンゼント国土安全保障担当補佐官の直属で、その時、ロックダウンを考え出したという。 ホワイトハウスを離れたベンカヤはビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団でグローバル・ヘルス・プログラムのワクチン・デリバリー・ディレクターを務め、2011年には武田薬品のグローバル・ワクチン・ビジネス・ユニットを率いることになった。その一方、Gavi(ワクチンアライアンス)の理事を務め、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)やIAVI(国際エイズワクチン推進構想)の理事会メンバー。CFR(外交問題評議会)の終身会員でもある。 Gaviはワクチンを推進するため、2000年にWEF(世界経済フォーラム)の年次総会で設立された団体。活動資金はWHO(世界保健機関)、UNICEF(国連児童基金)、世界銀行、ビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団などから得ている。 ウェルカム・トラストは医療利権の団体で、その理事長だったジェレミー・ファラーをWHOは昨年12月、主任科学者に据えることを決めた。ファラーはこのトラストに在籍中、クリス・ウィッティやニール・ファーガソンと共にネイチャー誌で「感染症:エボラ感染を減らすための厳しい選択」というタイトルの記事を発表している。 ウクライナでアメリカ軍が生物化学兵器の研究施設を研究しているとロシアが批判し始めた2013年の12月、アフリカ西部のギニアではエボラ出血熱が広がっている。リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア、さらにアメリカやヨーロッパへ伝染、1万1323名が死亡(致死率:70から71%)、大きな騒動になった。 その際、生物兵器を研究している学者が数年にわたってギニア、リベリア、シエラレオネのあたりで活動していたと指摘されている。その学者が所属していたのは生物化学兵器を研究開発しているアメリカ軍のフォート・デトリック、そしてテュレーン大学だ。 シエラレオネの健康公衆衛生省は2014年7月、テュレーン大学に対してエボラに関する研究を止めるようにという声明を出している。その研究が予防や治療が目的でないと判断したのだろう。9月にバラク・オバマ大統領はナイジェリア、リベリア、シエラレオネへ3000名程度の部隊を派遣すると言い始める。 エボラ出血熱がスーダンやザイールで見つかったのは1978年のことだが、80年代の前半からこの病気を引き起こすウィルスを含む病原体を細菌兵器にしようとする極秘の研究「プロジェクト・コースト」が南アフリカで始まる。その中心にいた研究者がウーター・ベイソンだ。 ウェルカム・トラストは2020年5月、ウェルカム・リープなる会社を創設した。そのCEOに選ばれた人物は、アメリカの国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)で長官を務めていたレジーナ・デューガンだ。 CEPIは「将来の『疾病X』の発生は避けられない」と予測し、将来のウイルス侵入に対する永遠の警戒を呼びかけたことでも知られている。この団体はノルウェー、ドイツ、日本、EU、イギリスなどの国々のほかビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、クラウス・シュワブのWEF、ウェルカム・トラストなどだ。 WHOも『疾病X』の出現を想定、情報を管理する中核「WHOハブ」を作る計画を打ち出した。「パンデミック」を口実にしてロックダウンや「ワクチン接種」などを命令することを目的として「パンデミック条約」をWHOは推進しているが、これと連携している。この構想でWHOはロックフェラー財団と手を組むという。 ロックフェラー財団は2010年5月に出した報告書の中で全人口の20%が感染、7カ月で800万人が死亡するパンデミックを想定、ロックダウンを推奨している。そのほかのパンデミック対策も組み合わせ、主権とプライバシーを放棄させ、全ての人間を管理するために生体IDを導入しようと提案している。 WEFのクラウス・シュワブは2016年1月にスイスのテレビ番組に出演し、そこでマイクロチップ化されたデジタル・パスポートについて話している。チップを服に取り付けるところから始め、次に皮膚や脳へ埋め込み、最終的にはコンピュータ・システムと人間を融合、人間を端末化しようと考えているようだ。 こうした人類の個別管理は2015年9月に国連で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と関係している。「SDGs(持続可能な開発目標)」を実現するため、個人を特定するためのシステムに記録されていない人びとを管理する必要があるとされ、デジタルIDの導入が進められることになった。 2016年5月には国連本部でどのように導入を進めるかが話し合われ、ID2020というNGOが設立される。このNGOにはビル・ゲイツが創設したマイクロソフトも関係している。 ラジーブ・ベンカヤと同じようにビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を経て武田薬品へ入った山田忠孝の父親、山田忠義は渋沢敬三の秘書などを経て1952年に八幡製鉄へ入社している。興味深いのは、戦争中の1940年代の前半、ヨーロッパから日本へ上海経由で逃げてきたユダヤ系の若者、ショール・アイゼンベルグを忠義は世話している。神戸へ着いた時、アイゼンベルグは19歳か20歳だった。 財界の大物たちに守られたユダヤ人難民のアイゼンベルグは大戦後、アメリカ第8軍のロバート・アイケルバーガー司令官に可愛がられる。そのコネクションを活かし、アイゼンベルグはペニシリンの販売で大儲けしたという。 その後、アイゼンベルグは日本から追い出されるが、イスラエルの情報機関モサドの幹部としてさまざまな秘密工作に関わり、イスラエルと中国を結びつけたと言われている。似た境遇にあったジョージ・ソロスと緊密な関係にあったことでも知られている。
2023.06.07
ウクライナ軍が6月4日に大規模な攻撃を始めたと伝えられている。すでにウクライナの軍や親衛隊は壊滅的な状況で、日本にTNT爆薬を供給してほしいと頼み込むほどだ。イギリスから供給された長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドー」はロシアの防空システムで破壊されているとされている。実際、大きな被害は報告されていない。航空兵力による支援もない。日本を含め、西側では「反転攻勢」が宣伝されてきたが、これはウクライナ軍が負けていると言えないために使われている表現なのだろう。 ウクライナの東部にはステップ(大草原)が広がっている。制空権はロシア軍が握っているため、そこへ侵入したウクライナ軍部隊は砲撃だけでなく航空機や高性能ミサイルで攻撃される。 昨年5月にロシア軍はウクライナ北東部のハリコフ州から撤退、西側の有力メディアは「反転攻勢」だと喜んでいたが、侵入したウクライナ軍部隊は壊滅的な打撃を受けた。トラップだった可能性が高い。その時にロシアが兵力を集中させていた場所がソレダル。そこには岩塩の採掘場を利用した全長200キロメートルという「地下要塞」が建設されていた。 キエフ体制を支援するアメリカ/NATOは2014年から兵器を供給して兵士を訓練するだけでなく、ドンバスの周辺を要塞を建設していた。その要塞線はバフムート(アルチョモフスク)の陥落で崩れたと言えるだろう。この戦闘でウクライナ側は大きなダメージを受けているが、アメリカ/NATOはさらなる「反転攻勢」をキエフ政権に命じていた。 ウクライナでの内戦は2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権が実行したクーデターが発端である。その際、現場で指揮していたのがビクトリア・ヌランド国務次官補であり、ホワイトハウスにおける工作の責任者はジョー・バイデン副大統領、その国家安全保障担当の補佐官を務めていた人物がジェイク・サリバンだ。 バイデンが大統領に就任した後、戦争を推進しているグループを率いているのは、この3名とアントニー・ブリンケン国務長官である。そこにイギリスの政治家が加わる。EUの好戦派はこうした米英の好戦派に従っているだけだろう。このグループはウクライナ軍が敗北しているという事実が知られることを恐れている。 1945年4月、日本軍は戦艦大和を含む艦隊を沖縄へ向かわせた。いわゆる「海上特攻」だが、ウクライナの「反転攻勢」を見ていると、その出来事を思い出す。
2023.06.06
学術雑誌の編集者は論文を掲載する際、「査読」を行うという。スペリングのミスや基本的な間違いをチェックすることができるが、検閲という側面もある。利権集団にとって都合の悪い事実が指摘されている場合、表現を変えさせたり、場合によってはボツにすることもできる。 雑誌、新聞、放送などメディアは広告収入で利益を出している。そこで広告主を怒らせるような記事は掲載されないのだが、この収益構造は学術雑誌も同じ。実際「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」に関する論文で編集部と揉めた研究者もいるようだ。 メディアもビジネスである以上、利益を出そうとする。コストを削減し、売上額を増やそうとするのだが、手間ひまかけ、正確で内容のある報道をするより、政府、企業、政府や企業系のシンクタンク、権威などから情報をもらい、垂れ流す方がコストはかからない。それらは広告主でもある。 政府、企業、シンクタンクなどとメディアをつないでいるのが広告会社。広告会社がメディアに対して大きな影響力をもっているのはそのためだ。2008年11月、トヨタ自動車の相談役だった奥田碩は首相官邸で開かれた「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で、「正直言ってマスコミに報復してやろうか。スポンサーでも降りてやろうか」と発言している。これは本音だろう。 これらはメディアに対する「アメ」だが、「ムチ」もある。メディアやメディアで働く個人の弱みを握り、脅すということだ。アメリカでは世界の有力者に未成年の女性を提供、その一方で行為の様子を隠し撮りしておどしの材料に使うというジェフリー・エプスタインの事件が明るみに出た。 エプスタインはイスラエル軍の情報機関のために働いていたが、似た別のシステムがアメリカにはあるだろう。日本にもあるはずだ。警察や検察の不正を追及できない理由のひとつはここにある。 昔から言われているメディアの弱点は金融だ。新聞、放送、出版、いずれも銀行が融資を止めれば即倒産である。銀行を上回る強大な力を持つ私的権力も存在、そうした権力が動けば銀行スキャンダルもありえるが、基本的に金融機関のスキャンダルは暴かれない。
2023.06.06
中国では1989年4月15日から6月4日までの期間、新自由主義を支持する学生らが中国政府に対する抗議活動を天安門広場で行っている。この活動を指揮していたのはジーン・シャープで、背後にはジョージ・ソロスもいたとされている。学生たちと結びついていた趙紫陽の後ろ盾は鄧小平だ。 その趙紫陽は1984年にロナルド・レーガン米大統領とホワイトハウスで会談、新自由主義化を推進したのだが、この政策は深刻なインフレを招き、社会は不安定化して胡耀邦や趙紫陽は窮地に陥った。胡耀邦は1987年1月に総書記を辞任せざるをえなくなる。 そうした中、1988年に新自由主義の教祖的な存在であるミルトン・フリードマンは妻を伴って再び中国を訪問、趙紫陽や江沢民と会談しているが、中国政府はその年に「経済改革」を実施した。労働者などからの不満に答えるかたちで軌道修正したと言えるだろう。 こうした軌道修正に学生は反発。そうした中、1989年4月15日に胡耀邦は死亡した。その死を切っ掛けに天安門広場で大規模な抗議活動が始まり、5月に戒厳令が敷かれることになる。 1989年1月にはジョージ・H・W・ブッシュがアメリカ大統領となっている。この出来事も中国で反政府活動が激しくなる大きな要因だ。大統領に就任した直後にブッシュはイギリスのマーガレット・サッチャー首相とソ連を崩壊させることで合意している。 ネオコンが台頭したジェラルド・フォード政権時代の1976年1月から77年1月にかけてブッシュはCIA長官を、また81年1月から89年1月まで副大統領を務めている。副大統領時代にイランやニカラグアに対する秘密工作でも重要な役割を果たしたが、エール大学時代にCIAからリクルートされたと言われている。 エール大学でCIAのリクルート担当はボート部のコーチを務めていたアレン・ウォルツだと言われているが、そのウォルツとブッシュは親しかった。しかもブッシュの父親であるプレスコットは銀行家から上院議員へ転身した人物だ。 ウォール街時代、プレスコットはナチスへ資金を流す役割を負っていたひとりで、ウォール街の弁護士だったアレン・ダレスと親しい。言うまでもなく、ダレスはOSSからCIAまで秘密工作を指揮していた人物である。ジョージ・H・W・ブッシュはカリブ海で活動した後、1974年から75年まで中国駐在特命全権公使(連絡事務所長)を務めている。 大学時代にジョージ・H・W・ブッシュと親しかったジェームズ・リリーは1951年にCIA入りしたと言われているが、そのリリーをブッシュ大統領は中国駐在アメリカ大使に据えた。リリーは中国山東省の青島生まれで中国語は堪能だ。 1980年代にソ連共産党の書記長を務めていたミハイル・ゴルバチョフはニコライ・ブハーリンを研究していたグループに属し、西側の「民主主義」を信じていた人物。そのゴルバチョフをブッシュやサッチャーは1991年7月にロンドンで開催されたG7首脳会談へ呼び出し、そこで新自由主義の導入を求めている。その要求を拒否したところでゴルバチョフの失脚を西側は決めたのだろう。 そして1991年8月にソ連では「クーデター未遂」があり、それが切っ掛けになってゴルバチョフは実権を失う。そして西側支配層の操り人形だったボリス・エリツィンが実権を握り、ソ連を解体へと導くことになるわけだ。エリツィンは12月にベラルーシのベロベーシで勝手にソ連の解体を決めた。 この出来事と並行する形で中国の反政府活動は激しくなった。西側の政府や有力メディアは6月4日に軍隊が学生らに発砲して数百名を殺したと主張している。広場から引き上げる戦車をクローズアップした写真を使い、「広場へ入ろうとする戦車を止める英雄」を作り上げているが、この写真が撮影されたのは6月5日のことだ。 西側では6月4日に軍隊が学生らに発砲して数百名が殺されたとされているのだが、これを裏付ける証拠はなく、逆に広場での虐殺を否定する証言や証拠写真がある。 例えば、当日に天安門広場での抗議活動を取材していたワシントン・ポスト紙のジェイ・マシューズは問題になった日に広場で誰も死んでいないとしている。広場に派遣された治安部隊は学生が平和的に引き上げることを許していたという。(Jay Mathews, “The Myth of Tiananmen And the Price of a Passive Press,” Columbia Journalism Reviews, June 4, 2010) 学生の指導グループに属していた吾爾開希は学生200名が殺されたと主張しているが、マシューズによると、虐殺があったとされる数時間前に吾爾開希らは広場を離れていたことが確認されている。北京ホテルから広場の真ん中で兵士が学生を撃つのを見たと主張するBBCの記者もいたが、記者がいた場所から広場の中心部は見えないことも判明している。(Jay Mathews, “The Myth of Tiananmen And the Price of a Passive Press,” Columbia Journalism Reviews, June 4, 2010) 西側の有力メディアは2017年12月、天安門広場で装甲兵員輸送車の銃撃によって1万人以上の市民が殺されたという話を伝えた。北京駐在のイギリス大使だったアラン・ドナルドが1989年6月5日にロンドンへ送った電信を見たというAFPの話を流したのだ。 しかし、これはドナルド大使自身が目撃したのではなく、「信頼できる情報源」の話の引用。その情報源が誰かは明らかにされていないが、そのほかの虐殺話は学生のリーダーから出ていた。当時、イギリスやアメリカは学生指導者と緊密な関係にあった。ドナルド大使の話も学生指導者から出たことが推測できる。 また、内部告発を支援しているウィキリークスが公表した北京のアメリカ大使館が出した1989年7月12日付けの通信文によると、広場へ入った兵士が手にしていたのは棍棒だけで群集への一斉射撃はなかったとチリの2等書記官だったカルロス・ギャロは話している。銃撃があったのは広場から少し離れた場所だったという。(WikiLeaks, “LATIN AMERICAN DIPLOMAT EYEWITNESS ACCOUNT O JUNE 3-4 EVENTS ON TIANANMEN SQUARE”) イギリスのデイリー・テレグラム紙が2011年6月4日に伝えた記事によると、BBCの北京特派員だったジェームズ・マイルズは2009年に天安門広場で虐殺はなかったと認めている。軍隊が広場へ入ったときに抗議活動の参加者はまだいたが、治安部隊と学生側が話し合った後、広場から立ち去ることが許されたという。マイルズも天安門広場で虐殺はなかったと話している。(The Daily Telegraph, 4 June 2011) 治安部隊とデモ隊が激しく衝突したのは広場から8キロメートル近く離れている木樨地站で、黒焦げになった複数の治安部隊員の死体が撮影されている。このデモ隊は反自由主義を主張していたともいう。 吾爾開希をはじめとする反政府活動の学生指導者たちはイエローバード作戦(黄雀行動)と呼ばれる逃走ルートを使い、香港とフランスを経由してアメリカへ逃れた。このルートを運営していたのは米英の情報機関、つまりCIAとMI6だ。吾爾開希はハーバード大学で学んだ後、台湾へ渡って独立運動に参加、つまり台湾で軍事的な緊張を高める仕事を始めた。 先日、NHKはニュース番組の中でCOVID-19を取り上げた際、「ワクチン」の危険性を訴える遺族の発言を「編集」、「ワクチン」でなくウイルスによって死んだと語っているように伝えていた。 こうした手法はウクライナでの戦闘でロシアを中傷するために使っている方法と基本的に同じだ。こうした偽情報の流布は1990年代から激しくなり、2011年春のシリアやリビアへの軍事侵略以降、事実を探し出すことが困難になったが、「天安門事件」でもそうした偽情報の流布があったわけだ。
2023.06.05
日本が持っている強みのひとつは自力で高等教育を行えることにあった。少なからぬ国は優秀な学生をアメリカやイギリスへ留学させ、そこで学ばせている。留学先で帝国主義流の考え方を植え付けられ、帰国後に帝国主義者の手先としてそれを実践することになるわけだ。 日本のアメリカに対する従属度を高めるためには日本の高等教育を壊す必要があったとも言えるだろう。日本の教育システムは劣化してきたが、これは政策として行われている。 エリート洗脳システムの典型例がローズ奨学制度だ。この制度はセシル・ローズの遺産を利用して1903年に始められたもので、奨学生に選ばれると学費や生活費が提供され、オックスフォード大学の大学院で学ぶことができる。 この制度を利用したひとりがビル・クリントン。彼はジョージタウン大学時代の1968年にローズ奨学生としてイギリスのオックスフォード大学へ留学した。オックスフォード大学でクリントンのルームメートだったのはエール大学出身のストローブ・タルボットだ。 ジョージタウン大学には「CSIS(戦略国際問題研究所)」という付属機関があった。現在はネオコンの巣窟だが、創設にはレイ・クラインというCIAの幹部が関係、その事実が発覚したことから1987年に大学と研究所との関係は解消されたことになっている。 オックスフォード時代にタルボットはニキータ・フルシチョフの回想録を英訳、タイム誌が公表した。誰がその原本を手に入れたかは秘密にされたが、タルボットのルームメートだったクリントンだと言われている。 クリントンはオックスフォード時代の1969年にモスクワを訪問したことから「左翼」や「KGBのスパイ」というタグが付けられたが、実際はCIAの協力者、あるいはエージェントだと言われている。 CIAの幹部だったコード・メイヤーは友人のジャック・ウィーラーに対し、クリントンがオックスフォードで学び始めた最初の週にCIAは彼をリクルートしたと語っている。ジョージタウン大学もでCIAとの関係ができた可能性もあるのだが、それはともかく、モスクワ訪問の目的はフルシチョフの回想録を入手することあったという。(Jeremy Kuzmorov, “There is Absolutely No Reason in the World to Believe That Bill Clinton Is a CIA Asset,” CovertAction Magazine, January 3, 2022) セシル・ローズは1871年にNMロスチャイルド&サンの融資を受け、南部アフリカでダイヤモンド取引に乗り出して大儲けしている。彼はアングロ・サクソンを最も高貴な人種だと考えていたことでも有名だ。帝国主義者であると同時に優生学の信奉者でもあった。1877年に彼が書いた『信仰告白』によると、優秀なアングロ・サクソンが支配地域を広げることは義務だとしている。 彼の周辺にはスポンサーだったネイサン・ロスチャイルドのほかウィリアム・ステッドやレジナルド・ブレットがいた。ロスチャイルドは金融界に君臨する大物であり、ステッドは多くのメディアを支配して情報操作を行っている。ブレッドは心霊主義の信者としても知られているビクトリア女王の相談相手で、後にエドワード7世やジョージ5世の顧問を務めている。その後継者がアルフレッド・ミルナーだ。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013) アメリカの有力大学へ留学させるシステムがあり、成績に問題のある学生を助けるための仕組みも作られている。サマースクールのような仕組みも存在する。 各大学にはCIAとの関係が強い教授もいる。例えばコロンビア大学のズビグネフ・ブレジンスキー。そこでブレジンスキーに学んだマデリーン・オルブライトはジョージタウン大学の教授になっている。ちなみにブレジンスキーはポーランド出身、オルブライトはチェコスロバキアの出身で、反ロシア感情が強い。 アメリカの支配層は各国の学者を籠絡、大学を影響下に置くということもしてきた。例えば中国の北京大学や精華大学はアメリカの影響下にあると言われている。
2023.06.04
アメリカとその従属国は窮地に陥っている。シリアに続いてウクライナでもロシアに敗北、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」と呼ばれる遺伝子操作薬の深刻な副作用が明らかになり、その責任が問われる可能性が出てきた。 遺伝子操作薬の副作用を接種推進派は事前に知っていたことが判明しているが、裁判所の命令で公開されつつある関係文書の分析から接種計画はアメリカの国防総省がバラク・オバマ政権の時代に始めたことも判明している。軍事作戦だということだ。 国防総省を中心に、接種推進派はウクライナで生物化学兵器の研究開発をおこなっていたことも明らかにされ、COVID-19も関係している可能性がある。 ウクライナでアメリカが生物化学兵器の研究開発を行なっていることをロシア政府は遅くとも2013年の段階から批判していた。その実態は昨年昨年2月24日からロシア軍が巡航ミサイルなどでウクライナに対する攻撃をはじめた後、明確になる。 ロシア軍は軍事基地だけでなく生物化学兵器の研究開発施設を攻撃、機密文書を回収したのだ。その中には生物化学兵器に関する約2000文書が含まれていた。その分析を行った結果、アメリカはウクライナで「万能生物兵器」を研究していたことが判明したとしている。 回収文書の分析を指揮してきたロシア軍のイゴール・キリロフ中将によると、ウクライナにはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)が管理する研究施設が約30カ所あり、生物兵器の研究開発を行っていた。ロシア国防省が発表したスライドによると、アメリカの民主党を病原体研究の思想的な支柱とし、その思想を実体化させる役割を負っているのが国防総省やCDCを含むアメリカの政府機関だ。 キリロフも指摘しているように、アメリカはウクライナだけでなく敵国、つまりロシアや中国の周辺にそうした研究施設を建設してきた。ビジネスやアカデミーの世界を中心にアメリカの私的権力に侵食されている中国の場合、国の内部にもそうした施設が存在する。 COVID-19騒動は2020年3月11日にWHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言したところから始まる。欧米を中心に少なからぬ国が収容所化政策を推進、安全性が確認されていない遺伝子操作薬が接種されることになった。 パンデミックを利用した社会システムの改造は、2010年5月にロックフェラー財団とGBN(グローバル・ビジネス・ネットワーク)が公表した「技術の未来と国際的発展のためのシナリオ」に書かれたシナリオに沿うようにして進められた。 そのシナリオによると、2012年に新型インフルエンザのパンデミックが起こり、全人口の20%近くが感染、7カ月で800万人が死亡、その多くは健康な若者だとされている。 このパンデミックで人や物資の国際的な移動が止まり、旅行業のような産業や販売網にダメージを与えるのだが、全ての市民を強制的に隔離した国はダメージが少ないとしている。つまり隔離を推奨している。 さらにマスクの着用、公共施設やマーケットの入り口における体温の測定が強制され、そうした管理、監視体制はパンデミックが去った後も続くとしている。権力の強化を望支配層だけでなく、市民も安全と安定を得るために自らの主権やプライバシーを放棄してしまうと見通す。少なくとも日本ではそうしたことが起こっている。電子技術の基盤が整備されている先進国では、全ての市民に生体認証が義務づけられるとしているが、実際、日本政府もそうした政策を打ち出している。 しかし、世界を見渡すと、COVID-19騒動の本質をパンデミック宣言の直後に理解していた政治家もいた。「先進国」と自称する帝国主義諸国による侵略、殺戮、略奪、そして医薬品の生体実験で酷い目にあってきたアフリカ諸国、インド、ハイチなどだ。 例えば、WHO(世界保健機関)とUNICEF(国連児童基金)が2014年にケニヤで接種した破傷風ワクチンを検査したところ、調べた6つのサンプル全てからHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)抗原が検出されたと現地のカトリック系病院の医師が告発している。集団避妊の実験をしていたのではないかと疑う人もいる。 スーダンでワクチン由来ポリオの感染者が見つかったとWHOが発表したのは2020年9月1日のことだった。アフリカでは2016年以降、野生株のポリオ・ウイルスに感染した人は発見されていないにもかかわらず、ビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団の資金を得ながらWHOはワクチンを接種し続けていた。財団から提供された金額は10年間で40億ドルに達するとされている。ポリオを発症させたワクチンの出所はこの財団だとみられている。 また、2013年12月からアフリカ西部のギニアでエボラ出血熱が広がりはじめ、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア、さらにアメリカやヨーロッパへ伝染、大きな騒動になった。その際にアメリカの研究者が注目されている。 アメリカにおける生物化学兵器開発の拠点、メリーランド州にあるフォート・デトリックの研究者とテュレーン大学の研究者が数年にわたり、ギニア、リベリア、シエラレオネの周辺で活動していたのである。感染が問題になり始めた2014年7月、シエラレオネの健康公衆衛生省はテュレーン大学に対し、エボラに関する研究を止めるようにという声明を出している。そうした声明を出す根拠があったということだろう。 エボラ出血熱は1976年にザイール(後のコンゴ)で発見された。その後、この病気を引き起こすウィルスを含む病原体を細菌兵器にしようとする極秘の研究「プロジェクト・コースト」が1980年代の前半から南アフリカで進められた。その中心にいた科学者がウーター・ベイソンである。 ケニヤやスーダンを含むサハラ砂漠以南の国々ではCOVID-19の「感染者」、そしてこのウイルスによって死亡したとされている人の数は少ない。セネガル、ケニア、ルワンダ、モザンビーク、マリ、ナイジェリア、ニジェール、ウガンダ、タンザニアなども含まれる。 タンザリアの大統領だったジョン・マグフリは山羊、モーター・オイル、パパイア、ウズラ、パラミツをラベルなしのサンプルとしてPCR検査させ、その結果、5つのサンプルのうち4つは陽性になったことを明らかにしている。 ニューヨーク・タイムズ紙は2007年1月に掲載した記事で、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査のような高感度の簡易検査は「偽パンデミック」の原因になる可能性があると警鐘を鳴らしたわけで、マグフリを特別視するべきではない。そのマグフリ大統領は2021年3月17日、62歳で死亡した。 WHO特使の入国を拒否したブルンジのピエール・ンクルンジザ大統領は2020年6月8日に56歳で死亡、同じようにCOVID-19騒動を否定的に見ていたエスワティニのアンブロセ・マンドゥロ・ドラミニ首相は20年12月13日に52歳で死亡、ココートジボワールのハメド・バカヨ首相は21年3月10日に56歳で死亡した。アフリカ以外でもハイチのジョブネル・モイーズ大統領が2021年7月7日に暗殺されている。
2023.06.03
ウクライナのキリーロ・ブダノフGUR(国防省情報総局)局長が5月下旬から姿を見せていない。姿を消す前、ブダノフ局長が「この世界のどこにいてもロシア人を狙い殺し続ける」と語ったとヤフーは5月6日に伝えていた。その前からウクライナ軍のバレリー・ザルジニー総司令官やオレクサンドル・シルスキー陸軍司令官に関する情報も途絶え、負傷した、あるいは死亡したという噂も流れている。 昨年8月20日、モスクワで走行中トヨタ製のランド・クルーザーが遠隔操作で爆破され、乗っていたジャーナリストのダーヤ・ドゥギナが死亡した。爆破犯はウクライナ人のナタリア・ボークだとロシアの治安機関、FSB(連邦保安庁)は発表。ボークがアゾフ特殊作戦分遣隊(通称アゾフ大隊)に所属していることを示す文書が公表されている。 9月26日から27日の間にノード・ストリームとノード・ストリーム2が破壊された。パイプラインは瞬間的に大きな穴が空いたと見られ、1カ所あたりの爆発エネルギーはTNTに換算して100キログラム以上だとされている。パイプの構造から考えて事故でそうしたことが起こる可能性は小さい。ロシアはバルブを締めれば天然ガスを止められるが、緩めれば再稼働できる。ロシアに爆破のメリットはなく、当初からアメリカ/NATOによる爆破工作だと推測されていた。 破壊直後、ポーランドで国防大臣や外務大臣を務めたラデク・シコルスキーは「ありがとう、アメリカ」と書き込み、その後、ノードストリームの破壊はプーチンの策略の余地を狭めるとも書いた。 ロシアのガスプロムがガスの流出による圧力低下をアラームで知った1分後、イギリスのリズ・トラス首相(当時)はiPhoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送っている。 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはアメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを破壊したとする記事を発表した。 ハーシュによると、ジョー・バイデン米大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成し、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合い、2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。 10月8日にはクリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)で爆破事件が引き起こされた。自動車用道路の桁が落下、ディーゼル燃料を運んでいた列車7両に引火している。テロを実行したのはウクライナのSBU(ウクライナ保安庁)だとロシア政府は主張しているが、計画したのはイギリスの対外情報機関MI6(SIS)だという情報も流れている。 アメリカで大統領選挙が行われていた2016年8月、ヒラリー・クリントンの側近だったマイク・モレル元CIA副長官はチャーリー・ローズのインタビューでロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと語り、司会者からロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われると、その通りだと答えている。 実際にロシアの幹部外交官が相次いで死んでいく。例えば、2016年11月にニューヨークのロシア領事館で副領事の死体が発見された。12月にはトルコのアンカラでロシア大使が射殺され、ロシア外務省ラテン・アメリカ局の幹部外交官が射殺され、KGB/FSBの元幹部の死体が自動車の中で発見されている。2017年1月にはギリシャのアパートでロシア領事が死亡、インドでロシア大使が心臓発作で死亡、そして2月にはロシアの国連大使だったビタリー・チュルキンが心臓発作で急死だ。モレル発言の前、2015年11月にはアメリカ政府が目の敵にしてきたRTを創設した人物がワシントンDCのホテルで死亡している。 ウォール街の大物たちは第2次世界大戦が終わった直後、破壊活動を続けるためにOPCを創設、1950年にはCIAの内部に入り込み、秘密工作部門の中核になった。それ以降、暗殺も彼らの仕事であり、そのネットワークはNATOの内部にも伸びている。イタリアのグラディオは有名だ。 ウクライナ軍参謀長の顧問に就任したネオ・ナチのドミトロ・ヤロシュも2007年頃、NATOの秘密部隊に加わったと言われているが、その頃、アメリカのNATO大使を務めていた人物がビクトリア・ヌランドにほかならない。2013年11月から14年2月に実行されたクーデターを指揮したひとりだ。 クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)でトラックを利用した自爆攻撃が2022年10月8日にあり、自動車用道路の桁ふたつが壊された。並行して走る鉄道を走行していたディーゼル燃料を運ぶ列車7両に引火したようだ。ウクライナ大統領府長官の顧問を務めるミハイロ・ポドリャクはこの破壊工作について「始まりだ」と発言、こうした工作を続ける意思を表明した。 OPCは第2次世界大戦中、レジスタンスに対抗するため、イギリスとアメリカの情報機関が創設した破壊工作機関ジェドバラを前身とする。ブダノフのテロ宣言はそうした歴史に立脚している。 そして5月下旬、キエフの市民は大きな「地震」があったと語っているが、GUR本部の地下にあるシェルターがミサイルで破壊されたという情報がある。ウラジミル・プーチン露大統領もGUR本部を5月下旬に攻撃したことを認めた。そのシェルターにはイギリスやアメリカの軍人もいたと言われている。 その頃からGUR本部の近くを通る道路を通行できなくなり、その周辺を撮影することが禁止された。撮影した何人かは逮捕されたようだ。地上へ落下するミサイルも撮影されているが、これはウクライナ側が発射した防空システムのミサイルだと見られている。攻撃があった夜、2機のヘリコプターがキエフからポーランドへ向かい、ポーランドからドイツへ第86航空医療後送中隊のC-21Aが重症者を乗せて飛んだという。
2023.06.02
世界の有力者に未成年の女性を提供、行為の様子を隠し撮りしておどしの材料に使っていたジェフリー・エプスタインの亡霊が今でも徘徊している。名前が出てきた人物には、「COVID-19ワクチン」でも注目されているビル・ゲイツ、バージン・グループを創設したリチャード・ブランソン、JPモルガンのジェイミー・ダイモン、ノルウェーの首相、王族なども含まれている。体制に批判的な学者として知られているノーム・チョムスキーもエプスタインと親しく、イスラエルで首相を務めたエフード・バラクとも会っていたと伝えられている。 バラクは首相に就任する前、イスラエル軍の情報機関AMANの局長を経て参謀総長になっているが、AMANの命令でエプスタインは活動していたという。世界の有力者を脅す材料をイスラエルの情報機関に提供していたということだ。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) エプスタインのパートナーだったギスレイン・マクスウェルの父親はミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェル。ロバートは第2次世界大戦の際、チェコスロバキアからイギリスへ亡命、ミラー・グループなどを買収、言論界に君臨することになる。彼とイスラエルの情報機関との関係は有名だが、ギスレインとエプスタインも1980年代後半からAMANの仕事をしていたと言われている。 イスラエルには「8200部隊」という電子情報機関があり、私企業として企業を創設している。そのひとつである監視システムの会社「カービン」にバラクも出資、同社の会長になった。その会社にエプスタインも出資していた。 このエプスタインは2019年7月6日に逮捕され、翌月の10日に房の中で死亡した。自殺とされているが、他殺だと考える人が少なくない。 エプスタインはその前にも同じ容疑で摘発されたことがある。2005年にひとりの女性がフロリダのパームビーチ警察を訪れ、14歳になる義理の娘がエプスタインの自宅で猥褻な行為をされた訴えたのだ。そこから内偵捜査が始まり、その11カ月後に家宅捜索している。 捜査の過程でエプスタインが有力者へ少女を提供、その行為を秘密裏に録音、撮影して恐喝の材料に使っていたことが浮かび上がる。エプスタインは有罪を認め、懲役18カ月の判決を受けるのだが、州刑務所へは入っていない。 この事件を地方検事として事件を担当したアレキサンダー・アコスタはドナルド・トランプ政権で労働長官に就任するが、彼はその当時、エプスタインについて「情報機関に所属している」ので放っておけと言われたとしている。 2006年の摘発でエプスタインが盗撮していた映像を警察は押収、それを保安官補だったジョン・マーク・ドーガンが保有していた。エプスタインの軽い刑罰が決まった2008年にドーガンは退職を強いられた。FBIは2016年にドーガンの自宅を家宅捜索、コンピュータなどを押収している。 エプスタインの知り合いには大物が少なくない。そのひとりがリン・フォレスター・ド・ロスチャイルドだ。夫はNMロスチャイルド銀行の取り仕切ってきたエベリン・ド・ロスチャイルドである。ふたりは1998年に開かれたビルダーバーグ・グループの会議でヘンリー・キッシンジャーに紹介されて知り合い、2000年に結婚している。 リン・フォレスターはエベリンと結婚する前、マンハッタンにある自分のアパートをギスレイン・マクスウェルに使わせていた。エプスタインが保有していたプライベート・ジェットの搭乗者名簿にはリン・フォレスターの名前も記載されている。
2023.06.01
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