《櫻井ジャーナル》

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2012.07.25
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 リビアからシリアへと続く体制転覆工作に絡み、戦略面では「サイクス・ピコ協定(小アジア協定)」、戦術面では「コントラ工作」が話題になっている。

 サイクス・ピコ協定とは1916年5月、秘密裏にイギリスとフランスが中東を分け合う目的で結んだもので、帝政ロシアも協定に同意している。リビアやシリアの体制転覆工作を連想させると感じている人が少なくないようだ。当時と違い、今のロシアはイギリスやフランスに同調していないが。

 協定が結ばれた当時、中東はオスマン帝国に支配されていた。そのオスマン帝国を乗っ取るというような話だ。話し合いを担当したフランスのフランソワ・ジョルジュ・ピコとイギリスのマーク・サイクスの名前をとり、サイクス・ピコ協定と一般に呼ばれている。

 大雑把に言って、この協定ではヨルダン、イラク南部、クウェートなどペルシャ湾西岸の石油地帯をイギリスが支配、フランスはトルコ東南部、イラク北部、シリア、レバノンを支配下に置くことになっていた。協定が結ばれた翌月、「アラブの反乱」が始まるのだが、反乱の背後にサイクス・ピコ協定があると考えるのは自然だろう。

 「アラブの反乱」で中心的な役割を果たしたのは、デイビッド・ホガースを局長とするイギリス外務省のアラブ局。そこにはマーク・サイクスやトーマス・ローレンスもいた。一般に「アラビアのロレンス」とも呼ばれている、あのローレンスだ。

 イギリスは第1次世界大戦の際、ウィリアム・シェークスピアというエージェントを後のサウジアラビア国王、イブン・サウドに接触させている。このエージェントは1915年1月に戦死、ジョン・フィルビーが引き継ぐ。この頃、イギリスはイブン・サウドとライバル関係にあったフセイン・イブン・アリを重要視するようになり、ローレンスもイブン・アリを支援する。

 このイブン・アリは1915年7月から16年1月にかけて、イギリスのエジプト駐在高等弁務官だったヘンリー・マクマホンと書簡をやりとりしている。その中で、イギリスはアラブ人居住地の独立を支持すると約束した。いわゆる「フセイン・マクマホン協定」だが、この協定はあくまでもイギリスが選んだ人物との私的な約束にすぎない。

 フセイン・イブン・アリは1916年、アラビア半島西岸にヒジャーズ王国を建国、24年にカリフ(イスラム共同体を統合する指導者)を名乗るが、イスラム世界から反発を受けてしまい、イブン・サウドに追い出される一因になる。ヒジャーズは1931年にナジェドと連合、32年にはサウジアラビアと呼ばれるようになった。現在、イギリスなどと手を組み、リビアに続いてシリアの体制転覆を目指している。

 その一方、1917年にはイギリスのアーサー・バルフォア外相がロスチャイルド卿宛ての書簡で、「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と約束している。この書簡を実際に書いたのはアルフレッド・ミルナーだということを本ブログでも書いたことがある。



 ステッドはジャーナリストだが、心霊主義の信者として有名。ブレッドはビクトリア女王の相談相手で、エドワード七世やジョージ五世の顧問を務めることになる人物。ローズの後継者がミルナーだ。

 イギリス政府が「ユダヤ人の復興」を考え始めたのは遅くとも1840年。この年、タイムズ紙がそのように報じている。帝政ロシアでポグロムと呼ばれるユダヤ教徒の虐殺が引き起こされ、セオドール・ヘルツルが『ユダヤ人国家』という本を出版する半世紀近く前の話だ。

 サイクス・ピコ協定にしろ、フセイン・マクマホン協定にしろ、あるいはバルフォア宣言にしろ、問題は当事者であるアラブの民衆が無視されていることにある。イブン・アリにしたところで、私的な権力を求めているだけであり、それは後にはっきりする。

 要するに、「アラブの反乱」とは、アラブ民族が抱いていたオスマン帝国への不満を利用してイギリスやフランスなどが中東/北アフリカを支配する仕掛けだった。「アラブの春」の原型とも言える。昨年から続く「アラブの春」は、イギリスが19世紀の前半に考え出した中東/北アフリカ支配戦略の流れにあるようにも見える。

 これは戦略的な話だが、次に戦術的な面について考えてみることにする。





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最終更新日  2012.07.25 20:52:23


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