イラン政府はアメリカ政府に対し、戦争を終結させる条件を明確に示している。ホルムズ海峡の通行をイランが管理、イランの同盟勢力(ヒズボラやハマス)に対する軍事行動を停止、西アジア地域からアメリカ軍は撤退し、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定を策定、イランが被った損害を全額補償、すべての制裁および国際決議を撤廃、凍結されたイラン資産を返還、そしてこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認することだ。
アメリカ政府が主張している「草案」は彼らの願望にすぎない。イラン政府がその願望を呑むとは思えず、合意の成立が近づいているとは言えないのだ。
アメリカ政府は相手から譲歩を引き出しながら自分たちは約束を果たさないということを続けてきたが、イラン政府に対しても同じことをすれば外交交渉の枠組みは崩壊する。イスラエルによるパレスチナやレバノンに対する攻撃が続いているが、これもイランを刺激している。イスラエルがイランに対するいかなる義務からも免除されるという話を流している大手メディアも存在するが、そうした事実はない。
ドナルド・トランプ大統領は問題解決に向かって前進しているかのような発言を続けている。イランに負けたにも関わらず、トランプ大統領はイランに降伏を要求しているわけで、アメリカとイスラエルがイランを奇襲攻撃して始めたイランとの戦争が終結する見通しは立たず、世界経済の混乱が短期間で治ると期待することはできない。
2月28日にアメリカとイスラエルから奇襲攻撃されて最高指導者らを殺害されたイランは即座にミサイルやドローンで反撃を開始、イスラエルの テルアビブやハイファといった都市を破壊し、ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲブ原子力研究センター(ディモナ原子炉)に近い場所も攻撃した。
西アジアにあるアメリカ軍の基地も攻撃された。 カタールのアル・ウデイド空軍基地、クウェートのアル・サレム基地、アラブ首長国連邦(UAE)のアル・ダフラ空軍基地、バーレーンのアメリカ軍第5艦隊基地、サウジアラビアのリヤドにあるプリンス・スルタン空軍基地なども破壊された。 CNNが5月1日に伝えたところによると、イラン軍攻撃で被害を受けたアメリカ軍基地は少なくとも16か所 。その大半は使用不能だと言われている。
3月27日にはサウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地に駐機していたAWACS(早期警戒管制機)のE-3と2機のEC-130H電子戦機をイラン軍は破壊、さらにKC-135空中給油機7機、F-15E戦闘機4機、F-35戦闘機1機、A-10サンダーボルトII攻撃機1機、MC-130JコマンドーII特殊作戦機2機、HH-60W戦闘ヘリコプター1機、そして無人機のMQ-9リーパー24機とMQ-4C1機も機能不全になったという。
イラン軍との撃ち合いでアメリカ軍とイスラエル軍はドローンやミサイルが枯渇、戦闘を継続することが困難になった。停戦期間中に補充しているだろうが、イランも次の戦闘の準備を進め、おそらくロシアや中国からも支援物資が届いている。
アメリカ軍はイラクの砂漠地帯に秘密基地を建設したとウォール・ストリート・ジャーナル紙は5月9日に伝えた 。この基地はイスラエルの特殊部隊と空軍の兵站拠点で、2月28日にアメリカとイスラエルがイランを奇襲攻撃する直前に建設されたというが、アメリカ軍やイスラエル軍が陸上部隊を投入した場合、全滅する可能性もある。これまで以上の大惨事になるということだ。
トランプ大統領はアメリカ議会が戦争の継続に反対してくれることを願っていると言われている。それを口実にして彼はイラン政府の要求通りにアメリカ軍を西アジアから撤退させられるからだ。人びとの目を逸らさせるためにキューバを用意しているのかもしれないが、政府幹部の買収に成功していたと言われるベネズエラと同じような展開になるとは限らない。
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【 Sakurai’s Substack 】
【 櫻井ジャーナル(note) 】