TVドラマの制作現場でトラブルがあったとする週刊誌の記事に少なからぬ人の関心が集まり、高市早苗政権が断行している日本を破滅へと導く政策を忘れてしまった人もいるようだ。「火事と喧嘩は江戸の花」と言われてきたが、確かに喧嘩は好きなのだろう。
高市政権は「右翼」を演出してきたようだが、その政策はアメリカの軍事と外交を動かしてきたネオコンの計画に基づく。アメリカ大統領に抱きつくような人物が「右翼」を装うのは滑稽であり、その演出を喜ぶ人の気がしれない。
1991年12月にソ連が消滅した直後、ネオコンはアメリカが冷戦に勝利、唯一の超大国になったと認識し、誰に気兼ねすることなく侵略戦争を実行できる時代が到来したと考えた。その考えに基づき、国防次官を務めていたネオコンのポール・ウォルフォウィッツが中心になり、国防総省のDPG(国防計画指針)草案が 1992年2月に作成された。


本ブログでは繰り返し書いてきたように、日本がそのネオコンのプロジェクトを受け入れたのは1995年のこと。2001年4月に発足した小泉純一郎政権以降、日本は戦争へ向かって爆進している。その流れを止めようとした鳩山由紀夫政権を大手メディアと検察によって粉砕された。
アメリカではビル・クリントン政権が1999年3月にユーゴスラビアを空爆、2000年に ネオコンのシンクタンクであるPNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)はDPGに基づいて「アメリカ国防の再構築」というタイトルの報告書を作成した。(PNAC, “Rebuilding America’s Defenses,” PNAC, September 2000)
ジョージ・W・ブッシュ(H・Wの息子)政権はその報告書に従って政策を進めるが、2001年9月11日にこの報告書を始動させる出来事が引き起こされる。ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたのだ。いわゆる9/11だ。
ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(NATO作戦連合軍)最高司令官によると、9/11から10日ほど後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、イラン、スーダンを攻撃対象国リストに載せていたという( 3月 、 10月 )。
2001年10月にアフガニスタンを攻撃、03年3月にアメリカ主導軍はリストに載っていたイラクを先制攻撃したが、計画通りには進まない。そこで2009年1月からアメリカ大統領を務めたバラク・オバマは自国軍ではなくムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とするジハード傭兵、いわゆるアル・カイダを使うことにする。そして始まったのが「アラブの春」であり、2011年春にはリビアに続いてシリアへの侵略戦争が始まる。
イギリスの外相を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックは2005年7月、「アル・カイダ」はCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リストを意味すると書いている 。そのムジャヒディンの供給源はムスリム同胞団やサラフィ主義者にほかならない。このシステムを作り上げたのはオバマの師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーだ。
2011年10月に リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が倒されるとアメリカなど侵略勢力は傭兵と兵器をシリアに集中させた。この段階でNATOとアル・カイダ系武装集団が連携していることが発覚している。
そうしたオバマ政権の政策を危険だと判断、2012年8月にそれを警告する報告書を政府へ提出したのがアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局) 。当時、そのDIAを指揮していたのがマイケル・フリンだった。
DIAの報告書によると、外部勢力が編成した反シリア政府軍の主力はAQI(イラクのアル・カイダ)であり、その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告している。
この警告通り2014年には新たな武装集団ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)が登場する。この武装集団はこの年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧。その際にトヨタ製の真新しい小型トラック、ハイラックスを連ねてパレードし、その後、首を切り落とすなど残虐さをアピールし、NATO軍の介入を誘った。
こうした戦闘集団を率いていた人物が現在、シリアを支配しているのだが、そのメンバーの大半は非シリア人。その占領勢力を指揮しているアーメド・フセイン・アル-シャラー(アブ・モハメド・アル-ジュラニ)はダーイッシュ(ISIS、ISIL、IS、イスラム国などとも表記)を創設したアブ・バクル・アル-バグダディの副官を務めていた人物で、アル-バグダディの命令でシリアへ入り、アル-ヌスラ戦線を結成している。アル-ヌスラの前身はAQI(イラクのアル・カイダ)だ。現在、シリア人は虐殺の対象になっている。
ネオコンはシオニストの一派だが、シオニズムはエリザベス1世の時代(1593年から1603年)にイングランドで現れた「ブリティッシュ・イスラエル主義」。アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だと彼らは信じ、人類が死滅する最後の数日間にすべてを包括する大英帝国が世界を支配すると予言されているという妄想が広まったのだ。
その妄想が19世紀に具体化する。侵略戦争を指揮したのは反ロシアで有名なヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)。ロシアだけでなく中国(清)も侵略のターゲットになった。ビクトリア女王にアヘン戦争を指示したのもパーマストン卿だ。
イギリス首相だったベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収し、1917年11月、アーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ書簡を出してイスラエル建国への道を切り開く。いわゆる「バルフォア宣言」だ。シオニズムと帝国主義によってイギリスは世界を侵略していく。
小説家でもあったディズレーリは『コニングスビー』という作品を書いている。その中に、「(ジョン・)ハムデン(オリバー・クロムウェルの従兄弟)による最初の運動から1688年の最後の最も成功した運動(名誉革命)に至るまで、イングランドにおけるホイッグ党指導者たちの最大の目的はベネチア共和国をモデルとした高貴な貴族制の共和国をイングランドに樹立することであり、当時のあらゆる思索的な政治家がそれを研究し称賛することだった。」
「ベネチア共和国をモデルとした高貴な貴族制の共和国」とは寡頭制にほかならず、現在のイギリスはそのプランに従って築かれた。王室も政府も飾りにすぎず、実際に支配しているのは国境の拘束されていないオリガーキー。その支配者が拠点にしているのがシティであり、そこからスピンオフした場所がウォール街だ。その下にEUはある。
つまり、ロシアやイランは欧米と話し合いで問題を解決できない。いうまでもなく、中国も同じだ。西側のオリガーキーは世界をアメリカやオーストラリアのように先住民を殲滅し、「移民」によって自分たちが所有しようとしている。
ドナルド・トランプ大統領はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と共同でイランの体制を転覆させようとしている。アメリカ政府は 昨年12月28日にイランの通貨リアルを暴落させて経済を混乱させ、その混乱を利用して反政府デモを誘発させ、2月28日にアメリカ軍とイスラエル軍がイランを奇襲攻撃したが、
そこで停戦合意だが、言うまでもなく、これはイランを再攻撃するための時間稼ぎだ。そのことを熟知しているイランはアメリカの思惑通りには動かない。騙されないと言うことだ。戦争の再開は不可避だと多くの人が考えているだろう。
ロシア国民の大多数はアメリカの欺瞞を認識、決着は戦場でつけざるをえないと考えているが、クレムリンの経済部門には今でも西側から離れられない人たちがいるようだ。そうした姿勢を批判する声は高まっている。
すでにロシア軍はウクライナの地下司令部を破壊することでNATO軍の将校を殺害するようになった。このところ、死傷者を運ぶ航空機がウクライナからポーランドへ盛んに飛んでいるとも言われている。早晩、ロシア政府はNATO加盟国への攻撃を決断せざるをえなくなると見られている。
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【 Sakurai’s Substack 】
【 櫻井ジャーナル(note) 】