本の森で呑んだくれ、活字の海で酔っ払い

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2019.03.08
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カテゴリ: 社会派小説
●大学は卒業した者の就活に失敗して正職になれず、派遣会社から文房具会社に就職した女性が主人公。3年たっても約束の正職にはなれずに失業、失業保険をもらえるうちはまだ何とかなったが、あれよあれよという間に転落!アパートの家賃も払えなくなって満喫暮らしのホームレスになってしまう・・・という貧困女子のリアル小説。とは言ってもそんな貧困女子が身近にいるわけでもないし出会ったこともないのでリアルかどうか本当は分からないのだけど(職業柄、貧困老人はけっこう知ってますけど、あり得るだろうなあとやはりリアルに感じる)。実は著者の体験も踏まえて書かれているらしいし。それがどの部分がかは知らないけど。



●失業保険が切れてからは、正職の採用は得られずに日雇い登録で派遣の仕事でその日暮らし。満喫で知り合った同じような境遇のマユからの誘いで出会い喫茶に行くようになり男からお金をもらう生活に、「ワリキリ」だけはしたくないと思っていたのについには・・・あっというまの転落は、一歩間違えば現実になりそうなリアル感あり。早く抜け出そうと思う気持ち、理想と手っ取り早くお金を稼いでから抜け出せばいいじゃんという気持ちの葛藤もリアルな感じ。

●満喫や出会い喫茶に関わる世界で知り合った仲間たち、仲間意識はあるけど心の奥には連帯感ではなく妬みや優越感、不安感があり、大卒の彼女と違って抜け出そうと思っても抜け出せない人たちがいる。そこには成育歴や無知が大きく影響している。

●話変わって、何度も書いたエピソードだけど、何度でも書こう。友人の弁護士が弁護したいわゆる「鬼母」、子供を虐待死させた親の裁判を傍聴した経験を思い出す。「鬼母」に弁護の余地はないだろうという気持ちで傍聴席に座って弁護を聴きだしたのだけど、なるべくして「鬼母」になった彼女や彼(父親)に援助の手を差し伸べる必要があったのではないかと問いかけた友人の弁護は、全く自分にとっては目からウロコだった!いやホントです。たぶん、医師として人の人生に関わるときの基本的な考え方として、今もその影響を受けていると思う。充分実践しているかと言われると自信がないけど、常に忘れてはいけない見方だと思っている。

貧困というのは、お金がないということではない。頼れる人がいないことだ。私には頼れる人がいない ●医療関係者としては、そんな人たちにとって頼れる人になることはもちろん、頼れる人がいなくて困ってる人をキャッチするアンテナを持つことが求められているのだろうなと考える。病気にならなければまず医療機関にこないし、病気になっても受診してくれなければ接点がもてない!本書の感想からは離れちゃってますけど、いろいろ発想が広がっていく。

〇鰺フライにはソースだ●待望のワンコインランチにありついたのに、テーブルにソースがなかった。店員に声をかけるなりなんなりすればいいのにできなかったというエピソードで始まる。けっこうこれが主人公の人生を象徴していたのかもしれないと思った。
〇「いい人のフリなんかしないで、文句言ったりしろよ」「我慢して、いい人ぶっても、便利に使われるだけだからな」〇「そうやって遠慮するのがおかしいだろ?」
●中盤までのドロドロで行き場がないようで読むのが辛くなる感じから、終盤、雨宮と彼の上司(彼女でもある)千鶴さんが出てから思いっきりすっきりと展望が開けて救われる結末は確かに後味も良くて嬉しかったのだけど、読み終わってからはやり過ぎだろ!とも感じてしまった。とはいえ、自分を無視した両親への逆襲も天晴れだったが、義母兄弟の弟の「高校を卒業後には東京に出る・・・何かあれば頼ってほしい」には思わず泣きそうになったが、「勇気が私に頼って」と返した愛を誇らしく感じたのだった。人としてのプライドを取り戻したんだなと感じたからだ。

●あと、リアルでは福祉課にいい人はそんなにはいないだろう(余裕もないだろうし)-コミック「健康で文化的な最低限の生活」を参照(そんないい人が主人公だけど)と思った。





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Last updated  2020.04.04 10:20:52
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