森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.03.12
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イスラエルの建国後、キブツと呼ばれる農業共同体で、ある革新的な子育てが試みられた。
子供たちは子供の家で暮らし、専門のスタッフが昼も夜も交代で子供たちの世話をしたのだ。
母親は授乳の時間にだけやってきて、それ以外は職場に戻って働いた。
開墾や農作業などに多くの人手を必要としたため、女性の労働力が子供に奪われないように、子育ては効率化されたのだ。

ところが、この試みは、思ってもみない副作用を生むことになる。
愛着が不安定な子供が急増しただけではなく、大人になってからも同じ傾向が見られたのだ。
愛着が不安定な人では、対人関係の問題を抱えやすく、情緒不安定な傾向や親密な関係を避ける傾向が見られた。
専門の職員が交代で世話をするといった方式は、効率的ではあるが、子どもの側の事情を無視したものだった。子どもに必要なのは特別な存在との関わりだった。必ずしも親でなくてもいい。
特別の存在が、その子が必要とするとき、いつでもそばにいて、その子の求めに愛情を持って答えてくれさえすればよいのだ。


日本でも生活のため、あるいは何らかの理由で母親が働かざるを得なくなって、生まれてすぐに子供を保育園に預けるというケースが増えている。
その結果、子供と一緒にいる時間が少なくなっていく。
このことが子供達のその後の成長過程の中で、神経症を発症させたり、うつなどの神経障害、パーソナリティー障害、発達障害などの問題を生じさせている可能性がある。

ハリー・ハーロウは愛着の形成が子供の成長や発達において、命にかかわるほど重要な問題だということを示した。アカゲザルの子供は、母親がいないとほとんど育たず死んでしまう
しかし、母ザルの人形を作って与えると、子ザルはその人形に抱きついて、どうにか育つことができる。
抱っこしてつかまれる存在が、生存のために栄養と同じくらい必要なのだ。
ハーロウは、柔らかい布でできた人形(ソフトマザー)と、固い針金でできた人形(ハードマザー)を作り、どちらにでもつかまれるようにした。
ハードマザーの方には、ミルクが飲めるように哺乳装置を取り付けた。
にも関わらず、子ザルが圧倒的に長い時間を過ごしたのは、ソフトマザーの方だった。
柔らかい感触を持った、居心地のいいスキンシップを必要としていたのだ。

しかし、母ザルの人形に捕まってどうにか成長しても、母ザルに育てられなかった子ザルは、不安が強く、誰とも交わろうとせず、社会的行動を行うことができなかった。

母親に育てられなかった子ザルは、成長して大人になっても性的な営みでつまずくか、万一子ザルが生まれても、育てようとしない。
母親による養育は、単に心理的にとどまらず、生理的なレベルでも、子どもの発達に関わっており、それが欠けることは社会生活や子育てに必要な能力の発達を不十分なものにしてしまいやすい。
(母親という十字架に苦しんでいる人へ  岡田尊司  ポプラ新書 82ページより引用)

これらは、子供の成長にとって愛着の形成がいかに大事であるかということ示している。
愛着の形成は0歳から1歳6ヶ月の間に形成されるといわれている。

1年も経たないうちに保育園に預けざるを得ないという家庭も増えているのではないか。
そういう子供が青年期、大人になって、他人が信頼できず、情緒不安定で苦しまなければならないとしたら残念なことである。だからせめて子供と一緒の時は、精一杯一緒に過ごすことを心がける必要がある。
しかし不幸にして愛着障害を抱えた人はどうすればよいのか。
これについても岡田尊司氏が上記の本で説明されている。
日を改めてご紹介していきたい。





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Last updated  2017.03.12 06:30:05
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