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山富浩司氏のお話です。ハーバード大学が2250人を対象に行った「マインドワンダリング(心の迷走)に関する大規模な行動心理調査」によると、私たちが「目の前のこと以外のことを考えている」状態は、実に日常の生活時間の47%にものぼるそうです。つまり「目の前のこと」に意識がある時間は、53%に過ぎないわけです。目の前のこと以外のなにを考えているかといえば、過去に起こった出来事や、また起こってもいない未来のことです。要するに、「心ここにあらず」の状態が頻繁に起きているのです。心がフラフラとさまよっているという意味で、心理学ではこの状態を「マインドワンダリング(心の迷走)と呼んでいます。これは森田でいう雑念のことだと思います。雑念は自然現象なので人間の意志の自由はありません。しかし本来の目的を忘れて、雑念に振り回されてしまうのは問題です。雑念に振り回されてもよいのですが、最終的には本来の目的に戻ることが肝心です。森田では「どんなに忙しくても、今できることは一つしかない」と言います。これを心がけて生活すると心の迷走は軽減できます。これに対して本来なすべき目的があるにもかかわらず、別のことを考えながら手掛けていると問題が発生しやすくなります。二つのことを同時進行で行う行為をマルチタスクといいます。二つ以上の課題に同時に取り組むことです。マルチタスクは、脳に大きなストレスを与えることが分かっています。スタンフォード大学の研究では、マルチタスク傾向の強い人は関連する情報の取捨選択が苦手なうえ、タスクの切り替えもうまくいかなくなります。脳内では情報を記憶する場所に異変が起きています。記憶情報は海馬に送られます。ここで短期記憶と長期記憶に分けられます。長期記憶は大脳皮質へと送られます。マルチタスク傾向の強い人の情報は、線条体に送られることが分かってきました。ここに送られた情報は、後から思い出そうとしても思い出しにくくなります。つまり記憶力や学習能力の低下を招いてしまうことになります。たとえば玄関の戸締りをするとき、他のことを考えながら施錠をすると、しばらくしてからきちんと施錠したのかどうか不安になるようなことが起きます。マルチタスク傾向の強い人、絶えず過去のことを後悔し、将来のことに取り越し苦労している人は、線条体が過剰に活動して損傷を受けやすくなります。その結果様々な障害が起きてきます。神経症との関係では、強迫観念、強迫行為、依存症の発生原因となります。森田の「今できることは一つしかない」をスローガンにして、「今、ここ」に注意や意識を向ける習慣を作りあげたいものです。「二兎を追うものは、一兎も得ず」は真実だと思います。(願望実現脳は1分でつくれる 世界一かんたんなマインドフルネス法 山富浩司 大和出版参照)バナナのたたき売りに参加しました。13本100円でゲットしました。最初から我先に手を挙げる人は高値で入札していました。しばらく様子を見ているとそのうちドンドン値下げをしてくる。頃合いを見て中央付近に陣取りニコニコしていると売ってくれる。それにしてもこういう時の女性はたくましい。落札者のほとんどは女性でした。ちなみに世界一のバナナの産地はインドだそうです。
2024.09.09
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樺沢紫苑氏のお話です。朝起きてからの2~3時間は「脳のゴールデンタイム」と呼ばれています。脳が最も活き活きと活躍してくれる時間帯なのです。その時間帯に何をするかで、1日のこなせる仕事、さらには仕事の質が決定されます。樺沢氏はこの「ゴールデンタイム」を原稿の執筆にあてている。夕方とか夜に執筆しようとしたこともありますが、いざ机に向かっても一向に筆が進みません。しかし、脳のゴールデンタイムを使うと、その間に原稿用紙10~20枚を書くことは、そう難しいことではないのです。単に量をこなせるだけでなく、文章のクオリティも高いものが書けます。あくまでも私の実感ではありますが、脳のゴールデンタイムを活用する場合としない場合とで比較すると、仕事の効率が3倍くらい違う。そのカギとなるのは脳内物質の「セロトニン」です。セロトニンが分泌されると、「今日も1日がんばるぞ」という気持ちになります。身体にも力がみなぎり、ハツラツとした気分となります。頭もスッキリとしていますから、すぐに仕事をスタートできる状態になるのです。またセロトニンの合成と分泌は、日の出とともに盛んになり、午後から夜にかけて低下します。セロトニンは夜になるとメラトニンに変わり睡眠を促進します。セロトニンは、「睡眠」と「覚醒」をコントロールする脳内物質なのです。セロトニン神経系の鍛え方は2022年2月13日に10項目ほど紹介しています。関心のある方はご覧ください。
2024.09.07
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樺沢紫苑氏のお話です。自己啓発書を読むと、「成功者は感謝の気持ちを忘れない」「感謝の心を持つことこそ、最高の成功法則」といったことが書かれています。「楽に生きている人は感謝が多い。イヤなことにも感謝する。もちろん、よかったことにも感謝する」これは斎藤一人さんの言葉ですが、感謝の大切さを端的に表現しています。私も感謝の大切さを実感して、常に感謝の心を忘れないように実践しているところです。なぜ「感謝の心」を持てる人が成功するのか?その理由は、人に感謝するとエンドルフィンが分泌されるからです。人に感謝するときも、人から感謝されるときも、人間は幸福感を抱くのです。NIH(アメリカ国立衛生研究所)の研究グループは、ボランティア活動をしている人の脳は「報酬」を受けたときの脳と同じ活性パターンを示すことを明らかにしました。確かにボランティア活動する人は、ボランティア活動をしない人に比べ、モチベーションが高く、活動的で、達成感や幸福感を強く感じています。さらに心臓疾患の罹患率が低く、平均寿命が長いのです。その理由は、ボランティア活動によってエンドルフィンが分泌されるためであるという研究があります。感謝されるというのは、人からほめられるのと同様に、精神的な報酬のドーパミンも一緒に分泌されます。人に感謝する。人から感謝される。あるいは、人の役に立つ。人に貢献する。そういう瞬間に「報酬系」の扁桃体が刺激され、ドーパミンやエンドルフィンを分泌させるように働くのです。(脳内物質仕事術 樺沢紫苑 マガジンハウス 315ページ)感謝する習慣は、観念中心の生活から事実中心の生活に転換する方法の一つとなります。そのためには、日記を書く時に感謝の言葉を最低一つは書ようにする。仏壇のある人はご祖先の顔を思い浮かべて感謝の言葉を口にする。「ありがとうございます」「助かります」「おかげさまです」という言葉を意識して使う。人の為に何かをするとき、その人を感動させたいという目的を明確にして取り組む。すると相手から感謝されて、自分も幸せな気持ちになれます。
2024.07.28
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今日は「ダニング・クルーガー効果」を取り上げました。これは、1999年にこの効果を定義したコーネル大学のディヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが提唱した認知バイアスのことです。「能力の高い人は、自分の能力を過少評価する。逆に能力が低い人は、自分の能力を過大評価しやすい」たとえば、平均点50点のテストがあったとします。普通、平均点以上の人は、みんな自己評価が高いはずだと思います。特に高得点をとった人はうれしいはずです。反対に平均点以下の人は、意気消沈します。自己評価は当然低いはずだと考えやすい。この認識は逆だというのです。現実を見るとそれがよく分かるというのです。平均点以上の人は、「自分はまだまだだ。こんなものではない」と思ってさらに努力精進を重ねる。さらなる成功体験で自信をつけて、もっと点数を伸ばしたくなる。次の新たな目標を再設定して、そこに到達しようと努力を開始する。つまり緊張の糸が途切れていない。大脳でいうと報酬系神経回路のスイッチがオンになっている。ドパミンやβエンドルフィンがA10神経系を走り回っているという状態です。やる気と緊張感が好循環している。平均点以下の人は、「自分はこんなものだ。これが限界だ。これ以上は無理だ」と思ってそれ以上努力しなくなる。平均点以下の人は、不十分な結果に発奮するというよりも、あきらめに近い心境になる。物足りない成績ですから、やらなくてはと思って自分を叱咤激励しても全くやる気が出てこない。大脳ではドパミン主導の報酬系神経回路の活動が停止されているので無理もありません。大脳がノルアドレナリン主導の防衛系神経回路に切り替わって駆け回っているのです。緊張感が弛緩状態に変わり、行動は抑制的に作用している。いくら自分を鼓舞して、「努力しなければ」と思っても、本音の部分が逃げ腰になっているのです。成績の悪かった人は、やる気が萎えてしまったということです。やる気が出ないのは本人のせいにしてしまうのはかわいそうです。脳の働きが抑制的に働いているだけなのです。脳の仕組みが理解できたら、報酬系神経回路を活性化することを考える必要があります。そのためにどうするか。神経質者はマイナス思考、ネガティブ思考が習慣化していますので、行動から変えていくことをお勧めします。森田理論の「生の欲望」を刺激していくことです。規則正しい生活と凡事徹底に取り組むことをお勧めいたします。ルーティンワークを確立して、同じ時間に同じことをしているという習慣を作るようにするということです。まずは起床時間と就寝時間を一定にする。特に起床時間を例えば6時と決めたら必ず守るようにする。そのためには、朝起きてやるべきことを決めておく必要があります。そうしないと3日坊主で終わってしまう可能性が高くなります。最初はしんどいと思いますが3か月すると自然に起床できるようになります。しんどいことはパスしたいといって妥協してしまうと、すぐに緊張の糸が切れて、弛緩状態に陥り、味気ない人生に転落してしまうということを肝に銘じて生活したいものです。
2024.06.10
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皆さん、こんな経験はありませんか。ドライブしている時にCDを流しているとします。それがお気に入りのCDで何回も繰り返して聴いている場合、ある曲が終わったときに次の曲を口ずさんでいることがあります。意識していないにもかかわらず、間違いなく次の曲を正確に予測しているのです。脳のどこにそのような仕組みが備わっているのか気になります。楽器の演奏の場合も同じことです。私はアルトサックスの演奏をすることがありますが、同じ曲を何百回も繰り返していると、楽譜は必要なくなります。手先が自動的に正確にリズムを刻んでくれます。余計なことを考えないで無心の状態の時が正確に演奏ができるのです。少しでも頭に不安がよぎってくるといけません。無意識の行動は脳の運動野、側頭葉に蓄えられた記憶から直接指示が出されていると聞きました。無意識というこの脳の働きは、自覚はできませんが大変重要な役割を果してくれています。ここで肝心なことは前頭前野から指示命令が出されているわけではないということです。前頭前野は不安や心配があるときに、それを解消する時に盛んに活動します。そして過去の経験などと照らし合わせて、最善の対策を提示する役割を持っています。迷っているとき、不安な時、原因が分からない時に前頭前野がフル回転してくれることはとても大切なことです。しかしいざ本番に入っているときに、前頭前野で余計なことを考えていると、練習で身に着けたパフェ―マンスが発揮できなくなってしまいます。人前で恥をかきたくない、称賛を浴びたいなどという不安があるとき前頭前野が出てきます。規則正しい生活、ルーティン作業を確立した人は無意識の脳がフル回転していると思われます。習慣化された行動が流れ作業のようによどみなく次々と続いていきます。その時は前頭前野は休んでいるのでしょうか。完全に休んでいるわけではありません。例えば会社に行くとき、戸締り、ガス、電気のスイッチなどの確認は誰でもしています。つまり不安が湧き上がってくると、いったんそこに注意や意識を向けています。安全が確認できれば、その注意や意識はすぐに離れていきます。基本的生活は無意識的行動によって淡々と流れているのです。そこに気になることが発生すると、適度に前頭前野が働いて処理している。安心安全が確認されると、また無意識的行動に移っている。車の運転をする人はよくお分かりだろうと思いますが、交差点で右折する時は歩行者や対向車の動きに細心の注意を払っています。無事に交差点を通過して、直線道路に戻るとほぼ無意識運転に戻っています。私たちの生活は規則正しい無意識的なルーティンワークを確立することがとても大切だと思います。この次に何をしようかなどと考えながら生活している人は、絶えず前頭前野を使って生活していることになります。小説家の帚木蓬生氏は5分以上考えると脳が傷むといわれています。ですから悩みや心配は、5分以上頭の中でひねくり回してはいけない。お勧めしたいのは陶芸家の河井寛次郎氏が実践されている「手考足考」です。(生きる力 森田正馬の15の提言 帚木蓬生 朝日新聞出版 34、45、61ページ)
2023.12.21
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予期不安で行動する意欲が急に萎んでしまうことがあります。今日はそれを回避するための提案です。マイナスのひとりごとが出てきたら、それはひとまず横に置きます。そしてプラスのひとりごとをつぶやくようにするのです。私はプラスのひとりごとの忘備録を作っています。靴がそろうと心がそろうといいます。すぐにプラスの気持ちになれなくても、とにかく形から入ることが肝心です。その気にならなくても、繰り返してプラスの言葉を口ずさんでいると、肯定的な気持ちに切り替わっていくようです。プラスのひとりごととはおもしろい、愉快だ、ワクワクする、いいぞ、大丈夫、やってみたい、ツイている、絶対うまくいく、運が向いてくる、うれしい、大好きだ、ありがたい、心は日本晴れだしかし、今まで、「イヤだ、ダメだ、うまくいくわけがない」などの否定語を連発している人が、急に切り替えることは困難です。でも安心してください。別の手があります。そういう時は、否定語を口走ったあとで、「今のは取り消し」「今のはなし」と言って肯定語に置き換えてしまうことはできます。そんな子供だましのようなことをして、何の効果があるのかと疑心暗鬼になる人が多いかと思います。ところがどっこい、これが意外にも効果があるのです。私の体験で検証済みです。これは西田文郎氏の本で知ったのですが、脳は最後にインプットしたことを記憶するという特徴があるそうです。また、そういう行動は何度も繰り返していると習慣となり定着してきます。その結果、否定的、ネガティブ、憂うつな状態から抜け出ることができるようになります。次に、士気を高めるために、自分なりのガッツボーズを用意しておく。身体を動かすと、プラスの言葉、肯定語を強める働きがあります。ヒットを打った高校球児のように、拳を作って天を突く動作をとる。私の場合は、背筋を伸ばして肘を曲げて腕を大きく広げる。その時、ゆっくりと腹式呼吸を3回ほど行う。自然に「よーし、やってやる」という気持ちになります。さらにブラスの暗示をかける。例えば老人ホームの慰問のときに、円陣を組んで、次の言葉をみんなで唱和する。①お年寄りを笑顔の渦に巻き込むぞ。②お年寄りを元気にするぞ。③感動させて拍手喝さいを受けるぞ。アンコールの催促を受けるぞ。④次のオファが舞い込むぞ。⑤打ち上げでみんなで大いに盛り上がるぞ。これをやると、メンバー全員が不思議と団結するのが不思議です。生きがい療法の中でイメージトレーニングというのがあります。ガンになった人が、ガンを捕食する魚などの絵を描く。そのイメージを絶えず脳に送り込んでやるというものです。よいイメージを脳に送り込んでやることで、ガンに打ち勝つエネルギーが生み出されるようです。私たちは頭で納得できないものは、信用しないという特徴があります。多くの先達が経験で確かめて公開しているものは、かなり信頼度は高いように思います。(NO.1 メンタルトレーニング 西田文郎 現代書林参照)
2023.08.23
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西田文郎氏のお話です。今まで一度も勝った経験のない相手と戦うアスリートの脳は、過去の記憶データと照らし合わせて、自動的に「勝てないかも」「負けるかも」を予感してしまう。その予感は意志や願望よりも強い説得力を持つので、脳は心身の最適戦闘状態を維持できなくなり、ものの見事に予感を実現してしまう。テストで「100点取れるかも」と自動的に予感できるのは、過去に何度か100点を取った記憶のある脳であり、過去に50点の記憶しかない脳は「50点しか取れないかも」「50点取れればいいかも」と自動的に予感してしまう。潜在能力が努力を放棄する。その結果、これまでと同じ50点分の勉強しかしなくなり、予感通り50点の答案が返ってくる。人間の脳は過去に経験したのと同じリスクを避ける仕組みとして、痛みや苦しみ、恐怖感のデータのほうがより強くインプットされることになっています。つまり成功よりも、失敗や挫折、不成功の記憶データのほうがずっと多くのインパクトを持っているのです。(かもの法則 西田文郎 現代書林 194ページ)人間の脳の扁桃核は「快の感情」「不快な感情」を分別しています。「快」に分別された感情は、腹側被蓋野に回り報酬系神経回路が作動します。報酬系神経回路が作動すると、ドーパミンによって意欲的になり、積極的、創造的な行動が増えてきます。一方不快の感情は青斑核に送られて、防衛系神経回路が作動します。防衛的神経回路が作動すると、ノルアドレナリンにより消極的になり、回避的、現状維持的な行動が増えてきます。この二つを比較すると、天と地ほどの違いがあります。はっきりと明暗が分かれます。ではどのようにして報酬系神経回路を活性化させていけばよいのでしょうか。一つは小さな成功体験を積み重ねることです。幼い時から取り組んでいくことが大切です。大人になっても凡事徹底のなかで小さな成功体験を積み重ねていくことです。成功体験は喜びや感動とともに、自信や自己信頼感を育てます。もう一つは脳は最後に感じたことを重視するという特徴があります。最初にダメだ、できない、ムリだと感じでも、最終的に「いや、違う、もしかしたらできるかも」「いや、違う、もしかしたらうまくいくかも」という情報をおくってやればよいのです。これを意識して活用することです。ネガティブな言葉が出てきたら、「今のは取り消し」と言ってポジティブな言葉に置き換えるのです。そう思えなくても、常に形を整えていくようにすればよいのです。その情報によって、「どうしたらできるだろうか」「きっと打開策はあるはずだ」という報酬系神経回路に切り替わっていくのです。線路のポイントの切り替えと一緒です。
2023.08.14
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杉山崇氏のお話です。実は眼は脳の一部です。眼を意識的に動かすと、脳に刺激を与えて脳の状態を切り替えることができます。不快な感情、怒りの感情、本能的な欲望が暴走している時、眼は「遠くの一点を見つめて、ほとんどまばたきをしない」など特有な動きをします。これはネガティブな感情や欲望に心を奪われて、脳が意識を切り替えられなくなっている状態を示しています。逆に考えられれば、感情に心を奪われそうなときは、眼の動きを変えて脳に刺激を与えることで感情をクールダウンさせることができます。そこで次のようなエクササイズをすると効果があります。①顔の向きを固定したまま、眼だけを左右に動かす。②見えているものが変わるので、その変化に注目する。③眼を2~3往復させたら一息つく。たったこれだけです。たったこれだけなのですが、やる前とは気分や意識が変わっているのを実感できないでしょうか。眼は脳の一部であるため、これだけのことで脳に「気持ちを切り替えろ」という合図を出すことができるのです。ただし、このエクササイズを行うのは、ネガティブな気持ちにとらわれているときだけにしておきましょう。あまりやりすぎると、脳が疲れてしまうこともあるからです。マイナス感情、ネガティブ感情に振り回されそうになった時に、検証してみてください。(なんだかうまくいきそうに変わる本 杉山崇 永岡書店 160ページ参照)
2023.06.21
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西田文郎氏のお話です。あなたは独り言をよく言うほうですか?独り言には、プラスの独り言とマイナスの独り言があります。マイナスの言葉が多ければ、マイナスの思考にとらわれています。脳は同じことを何度も入力することでその情報が記憶として蓄積され、何度も行動することで学習してしまうのです。マイナスの独り言は大敵です。自分のマイナスの独り言に気付いたら、それをプラスの独り言にチェンジしてください。何でも構いません。最初はそう思えなくてもいいのです。脳は何度も繰り返しているうちに、そうかもしれないと「錯覚」してしまう特徴を持っているのです。(その気の法則 西田文郎 ダイヤモンド社)私の場合はマイナスの独り言が非常に多いです。ダメだ、イヤだ、ムリだ、つらい、しんどい、面倒だ、憂うつだ、恥ずかしい、くそったれ、運が悪い、後悔ばかりだ、失敗だらけだ、親の教育が悪かったなどです。これらのマイナスの独り言が自分を苦しめていることが分かりました。今後はマイナスの独り言は封印することにしました。そして意識してプラスの独り言に置き換える決意を固めました。そのための忘備録を作りました。いいぞ、その調子だ、おもしろい、楽しい、ワクワクするよかった、ありがたい、ツキがある、運が向いてきた。大丈夫、君ならできる。君には、自分という強力な味方がついている。エジソンは5000回の失敗の後で電球を発明した。失敗や恥ずかしい経験は自分という器を大きくする。貴重な経験に感謝。貴重な経験は宝物だ。貴重な経験は財産だ。後悔の経験を持たない人はいない。後悔の経験はブログのネタになるぞ。今がどん底だ。これからきっとよくなる。逆転人生って実にかっこいい。末広がりの人生に市民栄誉賞。クソッたれの人生に乾杯!錦帯橋 山の上に岩国城 ロープウェイで行けます
2023.06.17
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遺伝子研究の第一人者、村上和雄先生のお話です。ひとりの人間が持つ遺伝子は、22000個程度あるようです。遺伝子というのは高層ビルを建設する時の設計図のようなものです。設計図に基づいてビルは建てられています。これらの遺伝子は、常にすべてが活動しているわけではありません。22000個の電灯があると考えてみましょう。それぞれに、電球を灯すスイッチがあります。人は一生の間で、その都度必要な役割を持つ遺伝子のスイッチを入れたり、必要のないスイッチを切ったりしながら、生きているのです。一人一人の違いは、このスイッチを入れる順序やタイミング、パターンなどの違いによって生まれているのです。それでは遺伝子のスイッチは、何に影響されて入ったり、切れたりするのでしょうか。答えは「環境」だと考えられています。ここでいう環境とは、人体に対する外部からの刺激や変化の総称だと考えてください。たとえば、運動すると筋肉の量が増えます。これは、圧力や張力などの刺激を外から加えることによって、筋肉の生成に関わるタンパク質をつくる遺伝子のスイッチがオンになったためです。このような物理的な刺激に限らず、体内に取り入れた食物からの刺激、ショックや感動のような精神的な刺激などがきっかけとなって、遺伝子のスイッチのオン・オフが切り替えられているのです。(子どもの遺伝子 スイッチ・オン! 村上和雄 新学社 12ページ参照)これは驚くべき真実だと思います。このことが理解できると生き方が変わってきます。村上和雄先生によると、がんになる遺伝子、糖尿病になる遺伝子は誰でも持っているといわれている。それがスイッチオンになれば発病して甚大な影響が出てきます。しかし、刺激を与えないで、スイッチオフのままにしておけば病気にはなりません。神経症的な不安についても、不安をつつきまわしていると、遺伝子のスイッチがオンになり症状となって苦しむことになります。不安があっても、かかわりを最小限にとどめれば、スイッチオフとなって葛藤や苦悩に発展しません。そして、不安の裏側にある生の欲望を刺激していけば、スイッチオンとなり、味わいのある人生を送ることができるようになります。同じ神経質性格を持っていても、神経症になる人もいれば、神経質の特徴を活かして素晴らしい業績を上げる人もいます。スイッチの切り替えは人間の意思の自由があります。まず人間を窮地に追いやる遺伝子をオフにしておくことを心がける。次に人間に生きがいや潤いをもたらす遺伝子は積極的にオンにしていく。そのために普段心がけることをいろいろと提案されています。これについては、明日の投稿課題とします。
2023.02.08
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筑波大学の征矢英明先生と有田秀穂先生の対談です。征矢先生は、ある実業団のランニング選手のコミッショニングに携わって5年くらいになります。選手の中に、駅伝の中心選手で、精神的に強く、パーフォーマンスがもっともよかった女子マラソン選手がいました。ところが、ある試合をきっかけにして、走れなくなったそうです。うつ状態になり、最終的にはうつ病になりました。ジョギングさえもできなくなって、内科、外科的な治療をやりましたけれども、まったく効果がなかったです。その後、この選手は幸いにも、三環系抗うつ病薬がよく効いて治りました。非常にパラドキシカルですけれども、トレーニングがうまくいっていたときはセロトニンによって頑張れたわけですね。しかし、その後なぜだか分からないうちに、元気がなくなり、競技成績もガクッと落ちてきたのです。これは専門的にオーバートレーニング症候群と呼んでいます。そのために回復するのに何年もかかったりします。どうしてそのようなことが起きるのか。不思議な気がします。一般的には、セロトニン神経系を活性化させることは良いことだといわれています。この常識を覆すことになるのではないか。良かれと思って取り組んでることが裏目に出てくるのですから納得できません。この問題について有田秀穂先生は、次のように説明しておられます。オーバートレーニング状態は、まず乳酸が蓄積されていることが考えられます。乳酸に加えて、その他ストレス関連物質、そういうものがセロトニン神経の本来持っていた役割を落としてしまうわけですね。それと、もう一つ考えられるのは、セロトニン神経の特徴として、自己調整機能があるのですね。セロトニンが過剰になると、オートレセプターに回収されてしまうのです。セロトニンが不足しているのではないのです。そういう仕組みが発動するために、不足している時と同じようなことが起きるのです。リズム性のトレーニングを始めた人や坐禅の呼吸法を始めた人たちが、「トレーニングを始めてしばらくすると、逆にうつ状態になってしまう」と言われることがあります。ここで慌ててしまうのですが、この状態を通り過ぎると、普通は以前よりも良くなるのです。そういうメカニズムが働いていることは留意しておくべきでしょう。(セロトニン呼吸法 有田秀穂 高橋玄朴 地湧社)脳科学を学習すると、セロトニン神経系を鍛えることが大事なことがよく分かりました。しかしこれも程度問題で、やりすぎると、再吸収が促進されてしまい、逆にセロトニン不足を招いてしまうという仕組みがあるようです。この状態はセロトニン神経が枯渇している人と同じ結果になりますので、右往左往することになります。セロトニン神経系は、報酬系神経系や防衛系神経系の暴走を抑制していることが分かっています。それ以外にも大切な役割を果しています。このブログでは、セロトニン神経を鍛える方法をいろいろと紹介してきました。しかし、セロトニンのこの特徴を考えてみたとき、過度にのめり込むことは禁物です。例えば、ウォーキングがよいといって、毎日一万歩以上をノルマにして歩く。長時間太陽の光を浴びるといったようなことです。やりすぎは弊害が出ることを、肝に銘じて、ムリなくゆっくりと、継続的に取り組むようにしたいものです。ここでもほどほどにやることが肝心だということです。そうすれば、問題が解消して、体も心も元気になると思います。セロトニン神経の鍛え方については、2022年2月13日の記事をご参照ください。
2023.01.21
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有田秀穂医師のお話です。セロトニン神経を一本の樹木に喩えるならば、リズム性運動によってセロトニン神経を鍛えることは、木の根に十分に滋養を与えて、しっかりとした根幹を作ることを意味します。一方、SSRIは、末梢の枝葉に作用する薬です。セロトニン神経の末端で再吸収ポンプの働きを阻害することによって、セロトニン神経が実際には弱っていても、あたかもセロトニンがシナプスに十分に分泌しているかのように見せかける働きをしています。セロトニンという木において、枝が萎え、葉が黄ばんできたときに、葉の色艶をよくする効果を発揮するもので、決して根や根幹に滋養を与えるものではありません。SSRIを使いつづけている限り、確かに一見セロトニン神経が元気を回復したかのような印象を与えるかもしれません。しかし、薬を長く続けているうちに、いつの間にかセロトニン神経の根が腐り、幹が朽ちていくのを見過ごしてしまう危険があります。どうしてもというときだけ薬を使って、普段は根気よくリズム性運動を続けて、セロトニン神経を根本から鍛えることをお勧めします。(セロトニン呼吸法 有田秀穂 高橋玄朴 地湧社 78ページ)私は有田先生に学び、毎日セロトニン神経系を鍛えています。1、朝日が昇ってくるのを待って太陽の光を体いっぱいに浴びます。2、毎日一万歩のウォーキングを行っています。マンションの管理人なので管理棟内をよく歩きます。スマホの万歩計で計測しています。別にウォーキングでなくても、リズム運動なら何でもよいそうです。ジョギング、水泳、自転車、腹式呼吸、ガムを噛むなど・・・。この本には丹田呼吸法がくわしく紹介してありました。瞑想や呼吸法に興味がある人はぜひ参考にしてください。注意点としては、リズム運動をするときは意識を集中することが大切です。負荷をかけないでだらだらと行っても効果はないそうです。時間は20分から30分くらいだそうです。3、セロトニンの原料は必須アミノ酸であるトリプトファンです。これはバナナ、納豆などの大豆食品、チーズなどの乳製品に豊富含まれているそうです。また脳内にトリプトファンが取り込まれるためには炭水化物が必要になります。セロトニン神経は昼間は常時出続けているものだそうです。セロトニン神経系の役割は、ノルアドレナリン神経系やドパミン神経系の暴走を抑える役割があります。不安にとらわれやすい神経質性格者にとっては、セロトニン神経系を鍛えることがプラスに作用します。疲労物質の乳酸が体内で増えると、自己抑制装置が作動して、再利用に備えて回収される仕組みになっているそうです。太陽の光を1時間から2時間浴び続けると、自己抑制が現れ、逆に元気がなくなりますので、長く浴びることは逆効果となります。その結果一時的にセロトニン不足に陥ります。リズム運動の強度が強すぎることややりすぎは禁物です。セロトニン神経は悪しき生活習慣で弱まることを忘れないでください。最終的には、リズム運動を自分の生活習慣として定着させることが大切です。最低でも3年間は継続してください。継続こそ力なりということです。
2022.10.17
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私たちの脳細胞は、毎日10万個ずつ死滅していると聞いたことがあります。それが正しいとすれば認知症になるかもしれないと心配になります。この問題に対して、久恒辰博先生は次のように説明されています。人生を100年として、毎日10万個ずつ脳細胞が死滅しても、その数は36億個程度です。しかし脳細胞は100億個から1000億個もあるのですから、全体から見ると3~30%という計算になります。また、脳科学の世界では長い間「脳の神経細胞は、大人になってからは減る一方で、決して再生することはない」と考えられてきました。しかし現代ではこの俗説は覆されています。記憶の中枢と言われる海馬では、新たな神経細胞が作り出されていることが確かめられています。とはいえ、年配者になると「物忘れ」や「やる気の減退」、「素早い判断力や柔軟な思考力の低下」などが起きます。さらに性ホルモンやドパミンなどの脳内物質のように、目に見えて減っていくものがあるのもたしかです。久恒辰博先生は、あなたの脳年齢を「記憶力」「発想力」「集中力」「抗ストレス力」「恋愛力」「やる気」という6つの視点から判定できると言われています。この6つの点数が高い人は、脳年齢が若いということになります。「大人の脳の鍛え方」(kkベストセラーズ)という本の中で、それら6項目について、それぞれ10個ずつのyes no問題を出しておられます。早速挑戦してみました。1項目10点満点です。「記憶力」8点、「発想力」8点、「集中力」8点、「抗ストレス力」5点、「恋愛力」3点、「やる気」6点でした。「記憶力」「発想力」「集中力」「やる気」の点数はまあまあだったと思います。これは毎日本を読み、このブログの原稿を作っていることが脳を活性化しているのではないかと感じました。その他、以前に紹介したセロトニンを活性化するための運動や習慣が好影響していると思っています。その内容は次のようなものでした。1、天気のよい日は毎日朝日を浴びる。2、ウォーキングを30分は行う。3、ストレッチ体操をおこなう。4、感動する音楽や動画をみる。5、トリプトファンを含む食事を心掛ける。6、規則正しい生活をして、睡眠をしっかりととる。それに対して「抗ストレス力」「恋愛力」は大いに問題があるようです。神経質性格は、小さな不安をことさら大きくしてとらわれてしまいます。森田理論ではとらわれることは自然現象ですから仕方ないと学びました。その場合、現実的な不安は問題の解決に向かって早めに対策を立てて取り組むようにする。神経症的な不安は欲望の裏返しとして発生しているので、不安には手を付けないで、生の欲望に向かって努力精進していくのが得策と学びました。一つの不安にかかわりすぎないようにして、つぎからつぎに発生する不安に飛び乗っていく態度が大事になります。これが不安やストレスに振り回されないコツになります。あとは実践により検証し体得することが肝心です。私の場合、「恋愛力」は昔から苦手です。女性と会話するのは、集談会と職場くらいです。用事があるときや仕事の時は支障はありませんが、雑談が苦手です。妹や娘とも他人行儀な会話になります。できたらカラオケなどで交流できればと思っています。その方が楽しいことは分かっていますが、いつもパスしています。どうも女性とは縁がないようです。でも若いころから比べると少しはましになりました。
2022.09.03
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1990年代は「キレる17歳」という言葉がありました。凶悪事件が立て続けに起きたのです。現在はその年代が上がり、キレる大人が増えてきたそうです。高速道路のサービスステーションで駐車位置を注意されたことを逆恨みし、後を追いかけ回して痛ましい死亡事故を引き起こした事件がありました。本人は後悔するどころか無罪を主張して裁判で争っているという。会社でも気に入らないことがあると、いきなりキレて暴力事件を起こすこともあります。そして本人は退職に追い込まれる。こういう例を何回か見てきました。最近は「暴走中年」「暴走老人」などと言われることもあります。幼児がキレて駄々をこねて暴れまわるのは、まだ抑制力が発達していないので仕方がない面があります。しかし大人がキレて見境もない言動をとることはどういうことなのでしょうか。本人もあとで冷静になって考えれば、分かっているのですが、その場ではどうすることもできない。また、社会的に許されない本能的な欲望が暴発して、人様に迷惑行動をとることもあります。この場合は、逮捕されていくら後悔しても後の祭りです。本人の破滅だけではなく、家族や親戚や会社に迷惑が掛かります。人間には感情の暴発、迷惑行為の抑止力はどうなっているのでしょうか。それはもともと機能として備わっているものなのです。その機能が弱まっていると理解すべきだと思います。大脳の腹外側前頭前野は「気持ちを切り替える脳」と言われています。この部分が正常に機能すると、イライラするようなことが起きても、なんとか持ちこたえることができるそうです。気に入らないことや本能的な欲望を我慢することが可能になるのです。この部分が機能しなくなると大変なことになります。一つのことにいつまでもとらわれて、なんとかその場でケリをつけようとするのです。嫌な感情や本能的な欲望を解放しないと自分が破滅してしまうような気持になるのです。大脳の腹外側前頭前野(気持ちを切り替える脳)を活性化しているのはセロトニン神経です。セロトニン神経が枯渇した状態では、感情が暴発してしまいやすいということになります。セロトニン神経は、不安、恐怖、不快感が増悪しないように弱める機能も果たしています。セロトニン神経の働きが悪くなると、うつ状態、うつ病にかかりやすくなります。さらに重要なことは、大脳に内側前頭前野と言われる部位あります。受容や共感や許容を司っている部分です。包容力や相手を思いやる気持ちはこの部分が活性化することが欠かせません。この部分を活性化しているのもセロトニン神経と言われています。つまりセロトニン神経が活性化していると、他者に対する共感力が高まり、感情の暴発を未然に防ぐことに繋がります。セロトニン神経を鍛える方法は、2022年2月13日に投稿しました。簡単なことばかりですから、是非取り組んでみてください。(「心のバネ」を強くする 有田秀穂 ぱる出版 64ページ参照)
2022.06.07
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人間の体は不安やストレスにさらされた場合、すぐにスクランブル発進するようになっています。スクランブル発進は当面の危険回避ですから長時間にわたることは想定していません。今日はその仕組みを見てゆきたいと思います。次の3つがあります。1、扁桃体がストレス、不快を感じると、ただちに自分の命を守るために闘うか逃げるかの決断を下します。その情報はノルアドレナリンという神経伝達物質によって青斑核に送られます。青斑核は危機管理センターの役割を果しています。そこからただちに防衛態勢をとるように指令が下されています。不快の原因はあらかじめ分かっていますので、そこに注意や意識を集中して対応します。緊急事態に入るとドパミン主導の報酬系神経回路は一時的にストップされます。時間的には1時間くらいで元の状態に戻ることを想定してこの仕組みは稼働しています。神経症に陥ると、ノルアドレナリン主導による防衛系神経回路だけが何日にもわたって作動していることになります。それが慢性化すると、うつ病などの精神疾患につながります。その結果、やる気や意欲がほとんど湧き上がってこなくなるのです。日常生活や仕事を回避することばかり考えて、積極的に行動できなくなります。抑うつ状態で精神的に不安定になり、イライラして苦しい。生きていても楽しいことが何もないという悪循環に陥ります。それらを振り払うために、瞬間的、刹那的、享楽的な依存対象を見つけて、無理やりドパミン主導の報酬系回路を作動させてバランスを取ろうとする。カンフル剤のような依存対象は、ほんの一時的に効果があっても、最後には心身ともに破滅の方向に向かいます。2、過度な不安やストレスに長時間さらされると交感神経の異常を招きます。アドレナリンの過剰反応が起きます。一つには血管を収縮させて血行障害や虚血状態を起こします。組織に老廃物がたまり、痛み、発がん物質、炎症を招きます。白血球に作用して顆粒球を増加させ、炎症性サイトカインの放出を促します。その結果、炎症による組織破壊を引き起こします。活性酸素が増加して組織の老化が進みます。短期的に交感神経が活性化して、緊張感を高めて、問題解決にあたることは自然で必要なことです。しかし長期に及ぶと自分の身体と精神を破壊するものに変化するのです。3、副腎皮質からはストレスホルモンと言われるコルチゾールが放出されます。コルチゾールは心拍数を高めて、タンパク質から闘うエネルギーを作り出しています。短期の危機管理に対応しているのです。また、炎症性サイトカインの過剰放出を抑制しているのもコルチゾールです。コルチゾールは最終的に海馬によってコントロールされていますが、長期に渡り不安やストレスにさらされると、海馬は萎縮し機能は失われてしまいます。海馬は脳の中でも新しい神経細胞を作り出していますがその機能が失われます。コルチゾールが過剰に放出されると、炎症性サイトカインは無制限に出続けることになります。これがガン、胃潰瘍、血管障害、慢性疼痛、うつ病、老化などの病気に繋がってきます。短期的な不安やストレスは、危機意識を高めて安全を確保するために欠かせないものです。ところがそれが長期に及ぶことは弊害ばかりになる。最初は味方だったものが次第に自分に刃を向けるようになるのです。森田は不安やストレスを慢性化させないことが肝心だと言います。球磨川や天竜川の川下りでは、船頭さんが遊覧船が岩にぶつからないように、竿で常に動きを調整しています。私たちも、不安とストレスを上手にコントロールする船頭を目指していきたいものです。私はそのコツを森田理論学習によって学びました。
2022.06.05
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林成之先生のお話です。プロ野球のバッターは、時速150キロものスピードで向かってくる豪速球を打ち返しています。これは、少し考えてみれば神業ともいえるすごいことで、脳の高度な働きなくしては不可能な運動なのです。ピッチャープレートとホームベースの間の距離は18.44mです。ピッチャーが時速150キロ以上のボールを投げたとき、ホームベースに到達するまでの時間は単純計算で0.45秒を切ることになります。一方で、プロのバッターがバットをスイングするのにかかる時間はおよそ0.2秒といわれています。また、脳が体に命令を下してから実際に体が動くまでの神経反応には、約0.3秒弱を要します。すると、脳がボールを見て「打て」と体に命令してから、実際にスイングを完了するまでには合計で0.5秒弱の時間が必要ということになります。つまり、ほんの少しだけボールが到着する時間のほうが短いため、理論的にはバッターが150キロのボールを打つことはできないのです。しかし実際にはプロの選手は150キロ以上のボールでもホームランにしてみせることがしばしばです。これはいったいなぜなのでしょう?「イメージ記憶」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、物事をありのまま記憶するのではなく、その物事についてのイメージを自分の頭の中で作り上げ、それを記憶することを言います。バッターは、ピッチャーが投球動作をしている段階から、ボールが手元にくるまでの軌道のイメージ記憶をもとに予測して、バットを振るのです。経験を積めば積むほど、ボールの軌道の記憶はたくさん蓄積されていきます。バッティングの達人とは、過去に成功したときのイメージ記憶を膨大に蓄え、それをあらゆるボールに対して当てはめることができる人です。記憶中枢は海馬と言われています。しかし海馬の記憶は短期記憶です。短期記憶は、すぐに忘れ去られてしまいます。短期記憶をバッターが脳内で再構成して「イメージ記憶」としていかにたくさん蓄積しているかどうかが肝心ということになります。(勝負脳の鍛え方 林成之 講談社現代新書参照)この話は、森田理論学習をしている私たちにも大変興味深いものです。私たちが行動する時には、過去の「イメージ記憶」を引っ張り出して思案しています。「イメージ記憶」にはプラスとマイナスがあります。小さな成功体験を積み重ねている人は、プラスの「イメージ記憶」が積み重なっています。それが下支えとなって、「大丈夫、今度もきっとうまくいくはず」と勝手に思ってしまいます。すると、その情報は腹側被蓋野に送られて、ドパミン主導の報酬系神経回路を駆け巡ります。側坐核や前頭前野が強力にバックアップしてくれますので、今度もまた成功の確率が高くなります。ミスや失敗の体験が積み重なっている人は、マイナスの「イメージ記憶」が積み重なっています。それらの情報は青斑核に送られて、ノルアドレナリン主導の防衛系神経回路を駆け巡ります。脳全体が専守防衛態勢を敷いてきますので、仮に手を出したとしても、また失敗を積み重ねることが多くなります。この理屈が分かれば、いかに小さな成功体験を積み重ねることが大切かが分かります。その体験をプラスのイメージ記憶として整理して蓄積していく。日常生活の中で小さな成功体験を積み重ねて、日記などに書いていくという習慣が大切になります。
2022.05.12
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昔の失敗や後悔が夢の中に出てきてうなされることはありませんか。最新の脳科学では、これを減らす方法があると言われています。今日はそれを取り上げてみました。人間の記憶には、「認知的な記憶」と「認知的ではない記憶」の2つがあります。「認知的記憶」とは、意識して覚える記憶のことです。学校で英単語や歴史の年号を覚えたりするのは認知的記憶です。「認知的でない記憶」とは、無意識のうちに記憶してしまうものです。脳は記憶しようとしたわけではないのに、残っている記憶があります。記憶しようと意識していないことが記憶として収納されている。こんなことがはたして本当にあるのかと不思議に思います。しかし現実には、失敗したことや恥ずかしい思いをした情動や感情などは、きちんと記憶しているのです。脳には次々に記憶の情報が送り込まれています。そのほとんどは捨て去られ、また新たな情報が入ってきます。ところが、インパクトの強い不快・嫌な情報が入ってくると、意識しなくても、脳のなかに一定期間とどまっています。その記憶は一晩寝ると固定化されるのですがそれを自分では認知していません。認知していないにもかかわらず、勝手に記憶され、きっかけがあるとそれがふっと思い出されるのです。これが後悔を伴う悪夢となってでてくるのです。次々に送り込まれてくる記憶の情報を捨て去るように作用している神経伝達物質があります。それがセロトニンです。情動が絡んだ記憶を含めて、セロトニンは記憶を抑制し、捨て去るように作用していることが最新の脳科学の研究で分かっています。ところがこのセロトニン神経が作動しなくなることがあります。注意や意識が次々に移り変わらないで停滞すると、セロトニン神経が働かなくなります。こうなりますと、そのときの情動記憶は消去されずに残ってしまいます。しかも認知していないために、自分の意志ではどうしようもない、忘れたくても忘れることができないという記憶になってしまうのです。この問題について有田秀穂医師は次のように説明されています。日常的に、しかも非常に高いレベルでセロトニン神経系を活性化していると「ハッ!」とするような状況になっても、ほとんどの場合その時の感情や出来事を受け流せるようになります。怒りや欲望などの感情をコントロールできて、いろいろな情動に振り回されなくなる状況を作ることができるのです。すると、情動が絡んだ記憶(急激な感情を伴った情報)も順調に捨てられていき、記憶のコントロールがある程度できるようになります。過去のイヤな記憶がフラッシュバックしたり、悪夢となってうなされたりすることもあまりなくなるはずです。(「心のバネ」を強くする 有田秀穂 ぱる出版 66~69ページ要旨引用)この指摘がどの程度効果があるのか、経験で確かめたいと考えております。セロトニン神経系は、欲望が暴走しないように、また不安に過度にとらわれないように制御力を発揮してバランスを取ろうとしている説を信じたいと思います。私はすでに心身の安定を保つために、日頃からセロトニン神経系を鍛えています。有田先生の指摘されているように、習慣化させるために、最初は3ヶ月。きちんと定着させるために3年という期間をみております。
2022.05.04
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昨日の続きです。報酬系神経回路や防衛系神経回路が暴走を始めたとき、自助努力ではその暴走を止めることはできません。その結果報酬系神経回路では依存症、統合失調症、迷惑行為、闘争行為にまで発展します。防衛系神経回路の暴走は、意欲がなくなり、内省的になり、心身に大きな負担をかけてしまいます。神経症は防衛系神経回路の暴走ととらえることもできます。しかし心配はいりません。人間の神経系にはその暴走を抑制するためにセロトニン神経系が装備されています。セロトニンは脳幹の「縫線核」が出発点となっています。特徴としては、セロトニンは常に一定量が出続けていることです。ドパミンやノルアドレナリンは状況に応じて分泌されています。セロトニンが何か仕事をしているわけではありません。ドパミンやノルアドレナリンの偏りを監視して、その働きを抑制しているのです。セロトニンの働きは次のようなものです。・朝大脳を目覚めさせて活動できる状態にしています。・不安やストレス、欲望の暴走を軽減させる働きがあります。・交感神経と副交感神経のバランスをとるという役割があります。・心身の痛みや苦しみを軽減する役割を果しています。・抗重力筋につながる運動神経に刺激を与えてよい姿勢を維持しています。その他、森田的な観点からぜひ理解してほしいことが2点あります。①セロトニンは前頭前野の「腹内側」に働きかけています。前頭前野のど真ん中にあります。ここは「共感脳、直感脳」と言われています。森田理論学習の中で、傾聴、共感、受容、許容、礼節、承認、肯定、利他の気持が大切さだと言われます。脳科学の面からは、セロトニンを活性化し「腹内側」を刺激しないと、思いやりの気持ちは湧き上がってこないことになります。社会性、協調性、人間関係を良好に保つためにセロトニン神経系を鍛える必要があります。つぎに森田では「純な心」を大切にしています。直感、素直な感情、第一に感じる感情、初一念などと言われます。「純な心」の反対は、観念優先の「かくあるべし」です。セロトニン神経系は「共感脳」とともに「直観脳」を鍛えています。②セロトニンは前頭前野の「腹外側」にも働きかけています。こめかみのあたりにあります。ここは「きりかえ脳」と言われています。神経症に陥ると一つの不安にとらわれて、精神交互作用でどんどん増悪させています。時には不平や不満を爆発させてみんなに迷惑をかけることもあります。人間は誰でも不安やストレスを受けながら生活しています。しかし普通の人はどうすることもできない不安やストレスを抱えたまま、仕方なく気持ちを切り替えて、目の前の仕事や日常生活に取り組んでいるのです。がまんする、耐える、あきらめる、心機一転、出直す、変化の波に合わせながら前進しているのです。一つのことにとらわれ続けないで、次々にとらわれる対象に飛び乗りながら生活をしています。神経症に落ち込んでいく人は、うまく気持ちの切り替えができない人です。脳科学では、切り替えることができなくて、一つのことにとらわれ続ける人は、セロトニン神経系が停滞しているとみているのです。私は神経症に陥った人が森田理論の学習と実践に救いを求めるのでしたら、その前にセロトニン神経の活性化にも取り組んでほしいと思います。具体的には2月13日に投稿していますのでご参照ください。内容としては誰でも無理なくできることばかりです。
2022.05.01
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私は森田理論を学習するにあたり最新の脳科学も付け加えるべきであるという考えです。意欲的な行動をしている時、また反対に不安やストレスで苦しんでいる時、脳はどのような活動を行っているのか。基本的なところを抑えておくと、森田理論学習に大いに役立ちます。脳には様々な神経系がありますが、精神活動に大きな影響を与えているのは3つあります。1、積極的、意欲的、活動的な気持ちにさせてくれる神経系があります。2、不安やストレスが襲ってきたとき、心身のダメージを防止している神経系があります。3、1と2が暴走したときに、中和してくれている神経系があります。森田理論に当てはめてみると、1は生の欲望に邁進している時に活動している神経系です。2は不安にとらわれて、神経症として固着する過程で活動する神経系です。3は潤滑油的な役割を果しています。バランスをとっている神経系があるのです。ではもう少し詳しく見てゆきましょう。辛抱してお付き合いいただければ幸いです。1、扁桃核で快、好きと選別された情動は「腹側被蓋野」に送られます。ここからドパミンという神経伝達物質を使ってA10神経系を駆け巡ります。A10神経系というのは、ドパミンを分泌する神経系はA8からA16までありますが、その10番目ということです。ドパミンが最も広く多く分布しているところです。ドパミンは心地よさや快楽をもたらすものです。A10神経の中に「側坐核」がありますが、さらにやる気を高めています。そして内側前頭前野(目の上の部分)に送られて、ますます活性化します。この回路は「快楽神経系、報酬神経系」と言われています。目標や課題もって一心不乱に努力している時はこの回路がフル回転しています。神経症に陥ると不安の対応に追われて、この神経系が停滞しています。2、扁桃核で不快、嫌いと選別された情動は「青斑核」に送られます。ここからノルアドレナリンという神経伝達物質を使ってA6神経系を駆け巡ります。A6神経系というのは、ノルアドレナリンを分泌する神経系はA1からA7までありますが、その6番目ということです。ノルアドレナリンが最も広く多く分布しているところです。ここから脳の中を駆け巡り、最後に「左右外側前頭前野」に到達します。専守防衛が基本ですから、「防衛神経系、回避神経系」と言われています。ノルアドレナリンは不安やストレスに対して防衛態勢を敷くように呼びかけます。ノルアドレナリンは危険やリスクを回避するように働くのです。行動は消極的、抑制的、逃避的、内省的に働きます。いくら自分を鼓舞しても、脳の機能が後ろ向きですから、意欲は湧いてきません。しかし防衛神経系は私たちの生活にとても役に立っている側面があります。不安やストレスに対しては神経を集中させて全力を挙げて問題解決に向かいます。神経症に陥った人は注意や意識を自分の気になる症状に一点集中しています。つまりこの回路は「集中力」を高めるという側面があるのです。仕事や車の運転などの時は注意力が散漫になると思わぬ事故を招きます。肝心な時には一心不乱になって集中して取り組むことが欠かせません。さて不安やストレスに対しては、これとは別の生体反応が起きています。まず「自律神経の交感神経」が興奮します。交感神経が活性化されると、主にアドレナリン放出され、身体を覚醒させます。アドレナリンは腎臓の上にある副腎の髄質から血液中に放出されます。たとえば、心臓に働きかけて血圧や心拍数を高めています。血糖値も高めます。さらにサイトカインが免疫細胞に緊急警報を発しています。これにより平時では休眠状態の免疫細胞が活性化するのです。サイトカインは炎症反応を起こします。それ以外に「CRH回路」と呼ばれている反応があります。ストレスホルモンの「コルチゾール」を出しているのです。視床下部は数秒以内にホルモン(CRH)を放出し、すぐ下にある下垂体を刺激します。刺激を受けた下垂体は別のホルモン(ACTH)を15秒以内に放出し、今度は副腎の皮質を刺激し、数分以内にコルチゾールを放出させます。コルチゾールは一時的に、血糖値を高め、炎症を抑え、気力を高める効果があります。コルチゾールは血流にのって全身を駆け巡り、「闘争」か「逃走」のためのエネルギーを供給する一方、炎症性サイトカインの放出を抑え、活性化した免疫反応を速やかに平常時に戻します。免疫反応が過剰になることによって、身体に悪影響が出ることを抑えるためです。コルチゾールは、最後に記憶中枢の「海馬」に到達します。海馬は視床下部に対してこれ以上のコルチゾールを出さないように指令を出します。この流れで、短期の不安やストレス反応を速やかに収束するように作用します。不安やストレスに対する脳の反応は、もともと短時間のうちに発生して、短時間のうちに収束するような仕組みになっています。不安を感じてストレス反応が起きる状態が、長時間に渡って続く場合は問題が起きます。現代人はさまざまな不安やストレスに長時間さらされています。これが心身に大きな負担をかけています。コルチゾールに長時間さらされると、海馬自体のニューロンがダメージを受けて機能不全に陥ってしまいます。その結果、コルチゾールは24時間放出され続けるようになるのです。海馬が萎縮してくるとうつ病を発症するリスクが高まります。コルチゾールが過剰に出続けると、炎症性サイトカインの抑制も効かなくなります。その結果、炎症性サイトカインが暴れまくり、全身の血管や臓器に慢性的な炎症が起こります。心臓病、脳卒中、糖尿病、胃潰瘍、ガンなどにかかりやすくなります。不安やストレスが短期間で収束する場合は大きな問題にはなりません。それが長期になると心身に大きな負担をかけることになります。3はセロトニン神経系の話になります。これは明日の投稿課題とさせていただきます。
2022.04.30
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東北大学の川島隆太教授のよい習慣が作る脳の活性化についてご紹介します。参考図書は「読書がたくましい脳をつくる」(くもん出版)です。仙台の小中学校で詳細な調査を行われている。それによると、読書する習慣を持つ子供は平均点以上の成績をとっている。自宅で1時間以上勉強し、6時間以上睡眠をとっていることが条件です。読書をする習慣のない子供は、自宅で2時間以上勉強して、6時間以上睡眠をとることで平均点以上になっているといわれる。睡眠は疲れをとるだけでなく、レム睡眠(夢を見るような浅い睡眠)のときに、前日の学習や経験の内容を復習して記憶として収納している。レム睡眠は、睡眠時に4回から5回程度現れます。睡眠不足になるとエネルギーを作り出す回路がうまく作動しない。大半のエネルギーは細胞内のミトコンドリアが酸素とブドウ糖などを利用して作っている。その回路が停滞すると言われている。読書する習慣をすると脳のどの部分が活性化するか。各回・・・書かれた文字を理解する。側頭極(前頭前野にある)・・・覚えたものを思い出す時に働いている。ブローカ野(前頭前野にある)・・・言葉を作り出している。ウェルニッケ野(側頭葉にある)・・・誰かがしゃべっている言葉の意味を理解する。これらの部分が神経線維でつながっているのですが、その線維の軸索が太くなる。これは脳のミエリン化と言います。これにより国道が高速道路に格上げされた状態になる。高速で情報伝達するようになるので、優れた機能を発揮するようになる。パソコンやスマホに頼りすぎると、脳が廃用性萎縮現象を起こすようになる。どういうことかというと、本来人間がやるべきことを肩代わりしている。パソコンやスマホには学習機能があります。たとえば、「あ」と打つと「ありがとうございました」などと言う言葉が候補として出てくる。分からない漢字を調べたり、文章を作ったり、まとめたりする仕事を肩代わりしています。便利さと引き換えに脳の機能がだんだんと衰えてくるということです。私は本を読む時は、付箋をつけて読んでいます。あとでその部分を書き出すようにしています。そして自分の考えを付け加えて試行錯誤をくり返してまとめています。読みっぱなしというのはほとんど何も残りません。書き出して自分の考えをまとめ上げるという作業はとても大切になると思います。この作業を毎日繰り返していると認知症とは無縁ではないかと考えています。なお本は図書館を利用しています。市立と町営図書館です。それぞれ10冊まで借りることが出来ます。この中から2~5冊を精読しています。
2022.04.24
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人間は過去の自分の過ちや恥ずかしかった体験が夢の中に出てくる。そして、後悔の念で一杯になる。不快な悪夢はなんとかならないものでしょうか。本日はこの問題を取り上げてみました。まず夢を見るということはどういうことなのでしょうか。人間が眠るときは、レム睡眠とノンレム睡眠をくり返している。レム睡眠は浅い眠りです。ノンレム睡眠は深い眠りです。レム睡眠が約20分、ノンレム睡眠が90分くらい続くようです。これを1サイクルとして、一晩に3回から4回繰り返されている。ノンレム睡眠時には脳が完全に休んでいる。レム睡眠時は、脳波でいうと覚醒時と同じβ波がでてくる。覚醒時と違うのは、筋肉活動が抑制されているので、金縛り状態です。ただし脳は活動している。まぶたの裏で眼球が動いている。レム睡眠というのは、この急速眼球運動のことを言う。ノンレム睡眠時には、この急速眼球運動は起きない。レム睡眠時に、人によっては悪夢でうなされる。一晩のうちに3~4回は悪夢を見ているということです。覚醒時に体験した情動(不安、恐怖、喜び、驚きなど)は海馬などに一時記憶として残っています。レム睡眠時に、この一時記憶が扁桃体や帯状回を興奮させ、無意識下でも情動体験が誘発されるようになっています。夢の内容は、覚醒時の体験の中で、強い情動が誘発された海馬の一時記憶にあるのです。また海馬は強烈な一時記憶を、長期記憶として固定する役割を果している。過去の恥ずかしい体験や後悔の体験は長期記憶として収納されています。それらが連鎖的に取りだされて悪夢として再現されてしまうということになります。悪夢はアルコールや精神安定剤を使用しても消し去ることはできません。悪夢の再現はどうすることもできないと観念するしかない。ここで救いがあるのは、情動体験はネガティブなものだけではないということだ。ポジティブな情動体験もそれなりにあるのです。楽しい、うれしい、快適、好き、おいしかった、すがすがしい、すっきりした、安心、面白い、褒められた、評価された、尊敬されている、保護された、助かった、運がよかった、望みがある、満足だ、天にも昇るような気持になった、優越感で一杯になった、達成できた、成功した、目標がかなった、自分のミスや失敗をカバーしてくれた、仲間に信頼されている、元気いっぱいだ、意欲がある、やる気が出てきたなどというポジティブな情動も湧き上がってくるということだ。人間は誰でも、これらの体験が一つもないことはありえない。もし感じられないとすれば、それらを無視・軽視しているのかもしれない。あるいは不安、恐怖、違和感、不快感に敏感に反応する体質に変わっているのかもしれない。ネガティブな情動を取り除こうとしている時は、小さなことに喜びを感じることはできないことが多い。そういう時に見る夢は、ほとんど悪夢に片寄ることになる。反対に小さなことで感動し、それを増幅して大きな喜びに変えることが出来る人は、悪夢だけではなく楽しい夢の世界に遊ぶこともできるのです。(脳を活性化する 有田秀穂 日本武道館 79ページ~86ページを参照)
2022.04.15
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感動映画を見て涙を流すことは誰でも経験されていると思います。これはストレスを軽減させて、前頭前野の腹内側部を刺激する効果があります。これは1週間に1回くらいでよい影響があるそうです。今日は私が癒し効果があると思っている映画をとり上げてみました。母べえ・・・吉永小百合主演。1937年ある日の朝、「父べえ」は特高警察に逮捕され巣鴨刑務所に収監される。迫害視されている父を信じて母と娘二人が懸命に生きる姿を見ると、自然に感動の涙があふれ出てくる。その他、「東京家族」(小津安二郎作品と山田洋二作品がある)広島県に住む老夫婦が東京で生活している子供に会いに行く。子供たちはみんな忙しくて十分な世話ができない。期待していただけにつらい気持ちになる。どちらの作品も味わい深い。「幸せの黄色いハンカチ」・・・高倉健主演、北海道夕張を舞台にしている。奥さんが黄色いハンカチを庭一杯に吊るして主人を待っていたシーンが涙を誘う。「私は貝になりたい」・・・あるBC級戦犯の叫び。これほど悲しいことはない。アニメ「この世界の片隅に」・・・戦時中軍港広島県呉市に嫁いだ女性の物語。空襲で片手を失いながらも懸命に生きていた姿が瞼に残っている。「あん」・・・樹木希林主演 主人公は施設に入っている人ですが、絶品の「あんこ」を作る技術を持っている。テレビ番組を録画したものフルスィング・・・プロ野球コーチから高校教師に転身した高畠導宏氏の物語。「甲子園への遺言」(伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯)という本も感動する。高畠コーチは甲子園出場を目指していたが夢半ばでガンで亡くなられました。プロジェクトXから「瀬戸大橋現場監督・・・杉田秀夫」杉田秀夫さんは、奥さんをガンで亡くされ、5000人の部下を束ねながら3人の娘さんを立派に育て上げた。しかし瀬戸大橋開通記念式典の華々しい場所に杉田さんの姿はなかったという。「男が惚れる男の中の男」・・・それが杉田秀夫さんの語り草となっています。一仕事なし遂げて、これからというときに奥さんのもとに旅立たれました。クラッシックでいえば、神経症のどん底でよく聞いていたのは、マーラーの「巨人」でした。25分くらいのところに差し掛かると、つい涙ぐんでしまいました。これらの作品で感動させてもらった私は幸せ者でした。
2022.04.14
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不眠で悩む人に森田ではどんなアドバイスをしているのか。「眠り」を期待すればすぐに眠れなくなりますから、意識はただ「休養する」ことに専念することが肝心だといいます。特に「眠りやすい楽な態勢」探して、身体を左右に動かすことはよくない。人間は6時間程度身体を横にして休養すれば、意識的な眠・不眠に関係なく、疲れが取れて体力が回復し、起きて支障なく活動できるようになる。眠れなければそれでもかまわないという気持ちで眠りにつくことが肝心です。その方が自然に眠ることができるようになります。最近の脳科学では、眠くなるのは松果体で作られるメラトニンが関係している。このメラトニンは夜0時から2時の時間帯が最も盛んに分泌されている。ですから昼夜逆転の生活が習慣化している人は、メラトニンの分泌が少ない。メラトニンは、昼間はほとんど分泌されていません。昼間盛んに分泌されているのは、セロトニンです。実はメラトニンはセロトニンを原料として作られていることが分かっている。メラトニンは、睡眠導入剤としての役割と昼間にできた活性酸素を除去してくれる役割があります。活性酸素を除去しないと、老化や生活習慣病が促進されます。これらの脳科学から分かることは、夜寝ている時にメラトニンをたくさん分泌させること。メラトニンの原料であるセロトニンを昼間のうちにたくさん作りだしておくことが大切になるということです。そのためには①太陽が昇ってきたら朝日を体いっぱいに浴びる。②自分で決めたストレッチ体操をする。③毎日5000歩以上は歩く。④リズム運動を行う。ダンス、自転車こぎ、ガムを噛むなど。⑤家族や友人たちと会って楽しい会話を心掛ける。孤独は避けましょう。⑥昼間30分以上の昼寝はしない。⑦腹式呼吸を心掛ける。吸う息短く、吐く息長く、腹が膨らむ呼吸です。⑧寝る前に電磁波の出るパソコンやスマホを近くに置かない。操作をしない。⑨寝る前にコーヒーや紅茶などカフェインの多いものをとらない。⑩お風呂に入り、少なくとも12時には寝る習慣を作る。⑪セロトニンの原料となるトリプトファンを含む食品をとる。⑫セロトニンを合成するビタミンB6、炭水化物を摂取する。これらは意識しないとなかなか習慣化しません。最低でも3か月続けることが肝心です。最初はなかなか効果が実感できないそうですが、継続こそ力なりです。セロトニンは作り置きはできません。また、不安やストレスにさらされると減少してきます。このことを頭の中に入れておくことが肝心です。森田理論学習に取り組む準備段階として、ぜひ取り組んでみましょう。(参考文献 セロトニン睡眠法 有田秀穂 青春出版)
2022.04.12
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セロトニンの果たしている役割をまとめてみました。1、すっきりと爽快な意識を作り出す。大脳をすっきりと目覚めさせる。セロトニンが一定の濃度に保たれると、人間の脳にとって理想的な覚醒状態をもたらし、すっきり爽快になるのです。朝起きて太陽の光を浴びるようにするとさらに効果があります。2、平常心を維持する。私たちはつらいことや悲しいことがあると気分が落ち込みます。神経質者の場合は不安にとらわれて、精神交互作用により神経症になります。また、楽しいことやうれしいことがあると時間を無視してのめりこむこともあります。それが、依存症にまで発展することがあります。セロトニンは、そういう感情の振れ幅が極端にならないようにコントロールしているのです。神経症に陥る人や依存症を抱えている人は、セロトニンが不足している可能性が高いのです。森田理論学習に取り組むと同時に、セロトニンの活性化にも取り組んでいきましょう。3、自律神経のバランスをとって、よい状態にしています。私たちの体は、交感神経と副交感神経という「自律神経」の働きで支えられています。自律神経とは、生命活動である心臓の機能、呼吸、発汗、体温調整、消化などを維持する活動を支えている神経です。この自律神経には、「切り替える₌スイッチング」のポイントあります。セロトニン神経の規則的な刺激が、その2つの神経のスイッチングを促しています。スムーズにスイッチングが行われないと自律神経失調症になってしまうことがあります。4、セロトニンは脳の中で「痛みを軽減」しています。通常、人間は痛みを体ではなくて脳で感じています。セロトニン神経が活性化されると、痛みの伝わり方が抑制されて、それほどつらく感じなくなるのです。痛みの伝導が抑えられるために、痛みが軽減できて、ストレスに強い体質になるのです。5、アンチエイジングの役割を果しています。セロトニン神経は、抗重力筋につながる運動神経に直接刺激を与えています。抗重力筋とは、姿勢を維持するために重要な役割を果しています。首の筋肉、背骨周りを鍛える筋肉、まぶたや顔の筋肉、下肢の筋肉などです。歳をとると、背中が前かがみになり、顔の表情に締まりがなくなります。まぶたが落ちてきて、口に締まりがなくなります。これは地球の重力に筋肉が引っ張られているから起きているのです。参考文献を上げておきます。ストレスに強い脳、弱い脳 青春出版 43ページ脳からストレス消す技術 サンマーク出版 95ページ育脳の技術 主婦と生活社 60ページ著者はいづれも有田秀穂先生です。
2022.04.11
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今までの投稿でセロトニン系神経回路の活性化は、神経症の克服のカギを握っていることがお分かりいただけたと思います。本日は、セロトニンの特徴や仕組みを見ていきたいと思います。セロトニンは、作りおきができないという特徴があります。つまり毎日意識して作り出さないと不足してしまうことになります。1日のうちでも、夕方になれば朝よりも減っています。一旦セロトニン慢性的な不足状態に陥ると、元に戻すのに3か月くらいかかります。さらに習慣化して、セロトニンの流れが整うのに3年という学者の人もいます。それだけにセロトニン神経を活性化するためには、相当な自助努力が求められるということになります。セロトニンには自己受容体があります。セロトニンの軸索は何本にも枝分かれして、他の複数の神経細胞に接続しているのですが、その中の1本がぐるりと自分自身の神経細胞に戻っているのです。セロトニンが多くなると、量を調整するために、すぐに元の神経に収納されてしまうのです。そういう仕組みが出来上がっているのです。(ストレスに強い脳、弱い脳 有田秀穂 青春出版 47ページ)さらに、扁桃核が不安やストレスと判断すると、その情報は視床下部・室傍核に情報として伝えられます。ここから、副腎皮質に作用して、コルチゾールを分泌させて緊急事態に備えます。コルチゾールが長時間にわたり出続けると心身に悪影響をもたらします。そして不安やストレスが慢性化すると、セロトニンの分泌が止まってしまいます。それを補うために窮余の策としてSSRIが処方されるのです。これは新たにセロトニンを作り出しているのではなく、元の神経細胞に取り込まれないように阻害しているだけなのです。セロトニンは腸で作られた前駆体が脳に運ばれて、最終的には脳幹の「縫線核」という部位で合成されます。それが脳全体に運ばれているのです。ですから「縫線核」が正常に機能することが大切になります。この機能が棄損されてしまうと、十分なセロトニンが分泌されないということになります。その結果ドパミン主導の報酬系神経回路やノルアドレナリン主導の防衛系神経回路が暴走を始めます。その結果、さまざまな脳障害や依存症、神経症をおびき寄せてしまうことになります。からくりが分からないと、右往左往するばかりになります。(育脳の技術 有田秀穂 主婦と生活社 156ページ参照)セロトニンを作り出す生活習慣はすでによく知られています。これは何度も紹介していますが、大切なところですので再度投稿します。ごく簡単に紹介すれば、・太陽の光を毎日5分から30分浴びる。・ストレッチ、ウォーキング、丹田呼吸法などのリズム運動を行う。・絶えず家族や仲間とスキンシップを心掛ける。・大豆、バナナなどのトリプトファンを含む食品を毎日とる。セロトニンを作るときに必要なビタミンB6、炭水化物も欠かさないようにする。これらは森田理論学習に取り組む以前の問題としてとらえて、日々実行することが大切になります。そうしないと、せっかくの森田理論学習の効果が十分に得られないことになります。逆にいえば、セロトニン神経系を活性化することで、神経症的な不安やストレスにある程度対応できるようになると考えられます。
2022.04.10
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認知症には、記憶障害を引き起こす「中核症状」と、徘徊や抑うつ、妄想などを引き起こす「周辺症状」があります。中核症状は、神経伝達物質のアセチルコリンの生産が減ることで起こります。アセチルコリン系の神経は一度減ってしまうと回復しません。したがって、「中核症状」は改善することはありません。一方、周辺症状はドパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質の異変が主な原因です。こちらの方は、脳を活性化させることで、症状を軽減できます。ドパミン神経系の働きが過剰になると幻覚や妄想を引き起こします。アルコール依存、ギャンブル依存、ネットゲーム依存、買い物依存などにもかかわっています。ノルアドレナリン神経系が暴走すると、不安やストレスでイライラするようになります。そして徘徊や暴言、暴行を引き起こします。人様に迷惑行為を繰り返すようになります。その2つの神経系の暴走を抑制することが大切になります。ところがこれらの暴走を直接抑え込むことは大変難しいのです。この2つの神経系を上手に調整しているセロトニン神経系があります。セロトニンを増やし、正常に働くようになると、周辺症状は改善できます。セロトニン神経系をできるだけ活性化させることが、「周辺症状」を改善するポイントになります。・朝太陽が昇ってきたら、5分くらい朝日をいっぱいに浴びる。・毎日ストレッチ体操をする。・5分~30分以内のリズム運動を行う。ウォーキングなど。・10回くらい腹式呼吸を行う。・人との会話を心掛け、触れ合うことを意識する。・身だしなみをきちんと整える。・必須アミノ酸のトリプトファンを含む食事を心掛ける。・セロトニンを合成するビタミンB6と炭水化物をとる。・テレビ、パソコン、スマホとは適度に付き合う。これらを生活習慣にして、毎日実践する。自分でやりやすいバリエーションを工夫する。やりすぎはいけません。むしろセロトニンが減ってくるそうです。少しずつ長くを心掛ける。3ヶ月続けるとセロトニンが増えて安定するようになります。あとはどれだけ長く続けられるかです。その他、・感動の涙が出てくるような映画を用意しておく。これを週一回見る。以上は、「育脳の技術」(有田秀穂 主婦と生活社)に詳しく紹介してあります。
2022.04.08
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みなさんの周りにこんな人はいませんか。・平気で車から空き缶やゴミを道路に投げ捨てる。・行楽地で出したごみを持ち帰らない。・山や谷にテレビや冷蔵庫やクーラーを捨てる。・平気で飲酒運転をする。同じような交通違反を繰り返す。・仲間と徒党を組んで迷惑行為を繰り返す。・会社などで怒りを暴発させて暴言を吐く。暴行事件を起こす。・気分本位になって仕事をさぼる。他人との約束を破る。ドタキャンする。・アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症、風俗依存症、ネットゲーム依存症、買い物依存症、スマホ依存症、タバコ依存症で苦しんでいる。これらは他人に迷惑をかけて、不愉快な気持ちにさせます。自分も後悔で苦しむことになります。誰でも、このような本能的な欲望が湧き上がってきます。それは自然現象ですから仕方ありません。問題は抑制力が働かない場合です。自動車でいえばブレーキが故障しているようなものです。ブレーキの壊れた車は極めて危険です。自分もみじめになるし、社会から制裁されることになります。このような本能的な欲望の暴発を抑制することはできないものでしょうか。最近の脳科学ではその役割を果たしている部所が解明されています。それは前頭前野にあります。こめかめの奥のあたりにあります。これは前頭前野腹外側部(ふくがいそくぶ)と呼ばれています。ちなみにその近くには、共感・直観を司る前頭前野内側部もあります。これらの部分が正常にその機能を発揮することが極めて大事になります。有田秀穂氏によると、前頭前野腹外側部を活性化するためには、セロトニンの分泌が必要だと言われています。不安や悲しいことが持続する場合や慢性的なストレスがあると、セロトニン欠乏脳になっているといわれる。セロトニン欠乏脳になると衝動的な欲望や腹立たしさが抑えられなくなります。例えば、セロトニン神経を壊したラットとマウスを一緒に入れる動物実験があります。ラットが大きくてマウスは小さいのですが、普通はラットがマウスにちょっかいをかける程度です。しかし、セロトニン神経系を壊されたラットは、恐ろしいことにマウスを攻撃して食べてしまうところまで行くのです。餌は十分に入れてあるので、食べる必要がないにもかかわらず、そこまで暴力的になってしまうのです。人間の場合も、セロトニン神経が弱まると、突然キレて歯止めがかからなくなってしまうのです。マナー違反を注意されたただけで、怒りの感情が暴走して暴力事件にまで発展してしまう例が増えています。本来は、そんなに暴力的な人ではないのに、セロトニン欠乏脳に陥るととんでもない事件へと発展することもあるのです。有田秀穂氏は、セロトニン神経を活性化する簡単な方法は、朝太陽を浴びながら、30分程度ウォーキングをすることを勧めておられます。これを3ヶ月続けると、少しずつ気分が切り替えられるような脳が出来上がるといわれる。その他にも、ストレッチ、丹田呼吸法、瞑想法、食事など取り組むことがいくつかあります。セロトニンを増やす方法はサプリメントやSSRIという薬に頼るよりも、普段の生活の中で無理なく作り出すことが大変重要であると言われています。これらは意識すれば生活習慣にすることができるものばかりですから、ぜひとも実践して身に着けたいものです。ドパミン主導の報酬系神経回路とノルアドレナリン主導の防衛系神経回路の暴走を制御しているのがセロトニン系神経回路と言われています。私は森田理論学習に最新の脳科学の知識を付け加えて学習することが重要なのではないかと考えています。(心も脳も元気になるストレス整理術 有田秀穂 ワック 48~61ページ参照)
2022.04.07
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高良武久先生は「適応不安」ということを言われています。誰でも初めて取り組むことや、あまりやったことがないことに挑戦するときは、不安になります。それを振り切って、挑戦してみると、思っていたほどではなかった。挑戦してよかったと思えるかもしれません。あるいは、考えていていたよりも、案外難しかった。自分の今の力や能力では、目標を達成することは困難だということも分かります。「適応不安」というのは、実践や行動しないで、頭の中で否定的・ネガティブな考えが悪循環しています。観念上の悪循環です。将来への不安がどんどんと高まり取り、そのうち何も手につかなくなります。そうなると、神経症に陥る可能性が高くなります。たとえば、いまの心身の状態では、うまく職場に溶け込めないのではないか。今の自分の状態では、人間関係をうまくこなしていけないのではないか。みんなの前で楽器の演奏をする時、間違えてしまうのではないか。大勢の人の前で発表するとき、あがってしまって、頭が真っ白になるのではないか。こうした予期不安があると、頭で考えていた最悪の結果をおびき寄せてしまいます。そしてやはり考えていた通りのことが起きたと自分を納得させてしまう。楽器の演奏では、手が金縛りにあったようになり、練習では難なくできていたことが本番で急にできなくなります。失敗して恥をかきます。これだけは絶対に回避したいと思っていたことが、実際に目の前で起きてしまうのです。そういうマイナスの経験をすると、次からは手も足も出なくなってしまいます。逃げ回るばかりになります。そして益々観念的になります。そして、自信が持てなくなり、自己否定感で苦しむことになります。さらに他人の思惑に振り回されるようになります。まさに悪循環の始まりです。これを脳科学で説明すると、ノルアドレナリン主導の防衛系神経回路が活性化している状態です。ドパミン主導の報酬系神経回路は休眠状態になります。この状態でいくら自分を奮い立たせようとしても、笛吹けど踊らず現象が起きます。本音は専守防衛です。逃げたい気持ちが強いのでどうすることもできません。これを改善する方法があります。報酬系神経回路の活性化に手をつけることです。どうすれば切り替えることができるのか。扁桃核で快、好き、楽しそうと選別した感情は腹側被蓋野に送られてドパミン神経を作動させます。次々と快楽神経、A10神経系、報酬系神経回路を動かします。目の前の出来事を、好奇心・興味・関心を持ってみることができるようになると、報酬系神経回路が作動するようになるのです。具体的には次のような流れになります。森田でいうと、対象をよく観察することで気づきや発見が生まれます。このとき、先入観、決めつけ、早合点は慎むことが肝心です。「かくあるべし」という観念優先の態度も慎むことです。それでも正確に事実を掴むことはできないかもしれませんが、事実によく深く近づくことはできます。事実が分かると、いよいよ快の感情が動き出します。ここがポイントです。好奇心が刺激され、興味や関心が深まります。心がうきうきしてきます。次々と改善点、工夫、アイデアを思いつくようになります。それを実際に試してみたくなります。行動したくなるのです。つまり気持ちが高まり、やる気や情熱に火がついてくるのです。こうなりますと、腹側被蓋野から側坐核などのA10神経回路が活性化されます。最終的に生産的、建設的、創造的な活動を演出する前頭前野が総力を挙げて応援してくれるようになります。防衛系神経回路も大切な役割を果していますが、神経症に陥る人は報酬系神経回路がほぼ閉店休業状態にあることが問題です。脳の仕組みを学習して、報酬系神経回路を活性化させるように心がけてみませんか。
2022.03.20
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セロトニンのような働きをしているオキシトシンというホルモンがあります。オキシトシンの知識は、森田的な実践をするために役立ちます。オキシトシンは、他者と触れ合う、交流を図る、寄り添う、世話をする、スキンシップを図るなどによって精神的な安心感、安定感、幸福感、癒し効果をもたらします。セロトニンよりもさらに強力な効果があります。これは脳下垂体から分泌されています。赤ちゃんを産んだ母親は自分のことよりも、寝食を忘れて赤ちゃんの世話をしますので、オキシトシンが多量に分泌されています。多幸感に満ちて安定しています。親子関係、夫婦関係、友人関係、仲間の絆、コミュニティへの参加、ペットの世話、観葉植物の世話、野菜つくりなどによってオキシトシンは増えてきます。意識して取り組むことでオキシトシンは増えてくるのです。広くて薄い人間関係を広範囲に広げるという気持ちがあれば、たくさんのふれあいの機会が増えますのでオキシトシンが増えてきます。それに犬や猫、鳥や金魚を飼う。ベランダを花でいっぱいにする。自家菜園に力を入れる。生活の楽しみが増えてオキシトシンが増えてくるので一石二鳥です。オキシトシンの健康効果をまとめてみました。1、愛情ホルモンと言われています。「愛され感」「癒され感」「やすらぎ」「協調性」「共感や受容」「許容性」をもたらします。2、身体の健康にします。リラックス効果により、血圧や脈拍を下げます。免疫力、細胞修復力、自然治癒力が高まります。痛みが緩和されます。心臓疾患のリスクが低減されます。3、心の健康を増進します。ストレスホルモンのコルチゾールを下げます。扁桃体の興奮を抑制します。不安を弱めます。副交感神経の活動を高めてリラックス効果をもたらします。セロトニン神経系を刺激します。4、脳を活性化します。記憶力、学習能力を高めます。好奇心を刺激します。(3つの幸福 樺沢紫苑 飛鳥新社 87ページ参照)なお関連記事の投稿が、2015年10月6日、2017年3月8日にあります。特に3月8日の記事は男性によく出るバソプレシンというホルモンについても説明しています。子育てするうえで大切なホルモンです。関心のある方はご参照ください。検索方法は、新着記事(全○○○○件)を押すと「月別記事」ボタンがあります。日付順に並んでいます。ここからお入りください。
2022.03.17
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2月13日にセロトニン神経を活性化する方法をご紹介しました。今日は私が実際に取り組んでいる方法をご紹介します。1、私は1年を通して朝6時20分に起床しています。すぐにカーテンを開けて太陽の光を浴びます。最近は晴れているとすぐに光が差し込んできます。東向きのマンションでよかったと思っています。2、すぐにブログに取り掛かります。今日アップされたブログを外付けハードディスクに保存します。そのときに誤字脱字が分かりますので修正します。次に明日投稿予定の記事を読んで問題があれば修正ないしは別の投稿に切り替えます。1ヶ月くらい寝かせておくと客観的な判断ができます。そして昨日決めたテーマに沿って投稿記事を作成します。時間は7時50分までです。未完成の場合は夕食後に完成させます。3、それから高知のしば天踊り、安来のどじょう掬いの稽古をします。さらに、8つの種類のストレッチ体操をします。これは固い筋肉をほぐす効果があります。とても気持ちがよい。4、朝食は石焼き芋かバナナを1本食べます。ニンジンリンゴジュースとヨーグルトは欠かせません。ご飯やパンは食べません。これは問題だとアドバイスされています。これからの検討課題です。5、仕事場には自転車で駅まで行きます。そこからウォーキングです。いずれも12~13分くらいです。往復でその日の運動量をこなしています。その時腹話術の口上の練習をします。その後キシリトールガムを噛んでいます。噛むことで、セロトニンが活性化されるそうです。6、仕事はマンションの管理人です。エレベータは極力使わないで、階段を利用するようにしています。一段飛ばしはよい運動になります。巡回の時は自分の持ち歌を練習しています。「お岩木山、祝い船、南部蝉しぐれ、君が好きだよ、四万十川、あやめ雨情、千代田の女よ、栄冠は君に輝く」の8曲です。歌詞は1番だけはすべて覚えています。自由時間は図書館で借りた本を読んでいます。常時10冊ぐらいはストックしています。昼食の時ニュースをチェックしています。その後、30分くらい仮眠をとっています。7、仕事から帰ってくると、皿回しとけん玉の稽古をしています。それから、観葉植物の手入れをします。食事前にはアルトサックスの練習を2日に1回行います。時間は20分程度です。練習する曲は30曲くらいあります。すべて老人ホームの慰問で使うチンドンミュージックです。8、夕食時は必ず晩酌をします。ただし量は少ないです。焼酎、清酒、ワイン、ウィスキー、梅酒とそれぞれお好みの酒がそろっています。トリプトファンを含むチーズがつまみです。その他納豆や豆腐の大豆食品、ビタミンの豊富な野菜、炭水化物、肉や魚など片寄らない食事を心掛けています。9、テレビはニュース番組程度です。you tubeプレミアムで広告なしの音楽を楽しんでいます。朝やり残したブログの作成や本を読んでいます。疲れて1時間くらい仮眠をとることもあります。10、お風呂では腹式呼吸を心掛けています。「鼻から吸う息は短く、吐く息はできるだけ長く」を心掛けています。マインドフルネスの正座瞑想を学びましたので、それを応用しています。就寝時間は12時ころです。メラトニンは2時ころ盛んに分泌されるようです。以上が1日の流れです。せわしないと思われるかもしれませんがすべて習慣化しています。何も考えなくても体が自然に反応しています。これで無理なくセロトニン神経を活性化しています。土日は別メニューです。金曜日のうちに土日にやるべきことをリストアップしています。日頃からやるべきことをストックしていると10個くらいはあります。定番のウォーキング、アルトサックス、カラオケの練習は欠かせません。冬場を除くといずれか1日は田舎に帰り野菜の手入れ、草刈りがあります。神経症のことを考える隙がないような感じの生活です。
2022.03.08
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脳の神経系は、ドパミン系、ノルアドレナリン系、セロトニン系の3つがあると言われています。それぞれの神経系がどのような作用を及ぼしているのかを見てみたいと思います。ドパミン系・・・これが活性化すると、やる気が出てきて、行動が積極的になる。快楽神経系、報酬系神経回路と言われています。我々神経質者は、ともするとドパミン神経系の活動が停滞する傾向がある。ノルアドレナリン系・・・不快、嫌いという感情が湧き上がった時作動している。リスクを回避して、不安やストレスから心身を守っている。行動は防衛的、消極的、回避的、自己内省的となる。ただ精神が緊張して集中力が出てくるのもこの神経系のおかげである。気になる1点に焦点を絞るので、集中力が出てくるのです。集中力は仕事、車の運転、スポーツ、楽器の演奏には欠かせないものだ。ただ、神経質者は、この回路が強大で、葛藤や苦悩を抱えている状態である。一般的に防衛系神経回路と言われている。ドパミン系が主導で、ノルアドレナリン系が制御機能を果たすとバランスがとれる。その他、神経系にはセロトニン系が大きな役割を果たしている。特に次の2点に注目したい。①大脳に人の気持ちを思いやるという機能がある。共感力、受容力、包容力、許容力をもたらしているという。決して自己中心ばかりではないのだ。これは前頭前野の「腹内側部」にあると言われている。②神経症的な不安や恐怖が湧き上がった時、また意図したことが予想外の展開を見せたとき、いつまでもそれらにとらわれないようにスパッと切り替える役割を果たしている部所がある。切り替え脳の仕組みが前頭前野に備わっているのである。一つのことにとらわれ続けるよりも、刻々と変化する状況に次々と対応し、そちらに飛び乗るという機能が人間には備わっているのだ。そうしないと心身が病気で蝕まれて神経症になるからだ。これは前頭前野の「腹外側部」に存在している。さて、本日注目したいのは、セロトニン系のこの2つの働きです。共感力、受容力、包容力、許容力は人間関係を良好に保つために必要です。でも現実は、いつも自己中心的な面が前面に出てきてしまう。他人に役に立つことよりも、自分をよく見せようとし、自分の都合を優先してしまう。森田理論との関係でいえば、理想や完全欲が強く、観念優先で「かくあるべし」を自分、他人、自然に押し付けてしまう。その結果、自業自得で自ら生きづらさを抱えて苦しんでいる。また神経症的な不安にいつまでもとらわれて、精神交互作用で神経症として固着させている。不安を抱えたまま、目の前の仕事や課題に取り組みなさいと言われても、どうしても不安やストレスを目の敵にして格闘してしまう。せっかく人間の大脳に「共感力、受容力、包容力、許容力」や「切り替え脳」の機能が搭載されているにもかかわらず、残念なことに宝の持ち腐れとなっている。大脳の機能はほんの数パーセントしか活用されていないというから、その通りなのかもしれない、これは今まで、セロトニンが優れた役割を果しているという知識もなければ、学習することもなかった。その結果、元々脳の機能としては備わっていたにもかかわらず、活用することができなかったのではないか。でも、最近の脳科学がその疑問を解決してくれました。今では森田理論の学習に、最新の脳科学を取り入れることが可能な時代に入ってきました。これらを融合して神経質者の人生観の確立を目指していきたいと考えています。その中心はセロトニン神経系をいかに活性化させるかということになります。(ストレスに強い脳、弱い脳 有田秀穂 青春出版)
2022.02.23
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私は最新の脳科学を森田理論に応用して活用する時期に来ているのではないかと考えています。2月11日に投稿したように人間の神経系は、ドパミン系、ノルアドレナリン系、セロトニン系の3つがあります。ドパミン系は、森田理論でいうと、「生の欲望の発揮」のことだと思います。ノルアドレナリン系は、不安や恐怖、違和感、不快感にとらわれている状態だと思います。セロトニン系は、ドパミン系とノルアドレナリン系の調整役です。自動車でいうと、ドパミン系はアクセルです。ノルアドレナリン系はブレーキです。自動車を動かすためにはアクセスを踏み込まないと前には進んでくれません。森田理論でいうと「生の欲望」に向かって、生活を前進させることが大切です。神経症に陥っている方は、症状に振り回されて、「生の欲望の発揮」は眼中にありません。無理もありませんが、これは何とかしないといけませんね。次に、自動車がいったん動き出したら、ブレーキを活用することを忘れてはなりません。交差点やカーブや坂道に差し掛かるとブレーキを作動させないと事故につながります。状況に応じてアクセルとブレーキを使い分けることが大切です。神経症で格闘しているときは、アクセルを踏み込みながら、ブレーキをこれでもかというほど踏み込んでいる状態ではないのでしょうか。こんなことをすれば、タフな自動車でも壊れてしまいます。ドパミン系とノルアドレナリン系は時と状況に応じて適切に使い分けることが肝心です。そうすれば自動車は目的地を目指して安全に走行できます。ではセロトニン系の役割は何でしょうか。自動車でいうと、ウィンカー、室内温度を調整しているクーラー、ナビゲーションシステム、フロントカメラやバックカメラ、ワイパー、ガラスの開閉装置、フロントやバックガラスのくもり取りなどにあたるものだと思います。それらがなくても、理屈上自動車は動きます。しかし駆動力と制御機能だけの車は、もはや自動車とは言えません。暴走して危険この上ない凶器となってしまいます。そんな車に乗ると、ストレスだらけになり、心身の不調を招きます。実際にはまったく役に立ちません。セロトニン系は、潤滑油的な重要な役割を果たしています。まずドパミン系が暴走しないように抑制機能を発揮しています。さらにノルアドレナリン系の暴走による不安やストレスの緩衝材の役割を果たしてくれています。この点を調査して再評価する必要があります。今まで森田理論学習では、生の欲望をいかにして賦活していくか。不安、恐怖、違和感、不快感にどう対処していくか。つまり症状を抱えたまま、なすべきことに目を向けて行動していけば、神経症を克服することができるという考え方をしてきました。私は脳の仕組みからいうと、セロトニン系をいかに活性化するかが、神経症の回復に大きくかかわっているのではないかと考えるようになりました。今まで森田療法誕生から100年以上わたって森田先生を始め、多くの先輩方によって積み上げられてきた森田理論があります。その上に、最新の科学を融合してさらに発展させていくべきではないか考えています。セロトニン系の活性化はここ何回かにわたりご紹介してきました。簡単なことばかりでした。ストレッチ、ウォーキング、リズム体操、丹田呼吸法、瞑想法、セロトニンを作り出している必須アミノ酸を含む食事などでした。これらを無理なく生活の中に取り入れて、セロトニンを活性化させドパミン系とノルアドレナリン系がスムーズに作動するように心がける。今まではほとんどこの方面には注意や意識が向いていなかったのではないでしょうか。森田理論と最新の脳科学の融合は今後の森田理論の展開を大きく左右するのではないかと考えているのです。
2022.02.19
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不安やストレスが脳の中でどのように生み出されるのか。そしてどのように解消されるようになっているのか。これらは森田理論学習の中では学習することはありません。しかしある程度の知識があると、今後の対応方法に活かせるかもしれません。早速調べてみました。3つの動きがあることが分かりました。1、五感を通じた情報は扁桃核にダイレクトに入っていきます。前頭前野に到達してフィールドバックされているわけではありません。扁桃核は自分に都合の悪い情報と判断すると、ノルアドレナリンを使い青斑核に送ります。青斑核は防衛系神経回路の中枢です。ここから脳全体に不安やストレスに備えて防衛網を敷くように指示しています。自分の生命を守るための行動をとるように仕向けています。脳が全力をあげて非常時対応をとっているのです。行動は必然的に消極的、回避的、自己内省的になります。この場合には、生産的、建設的、創造的な行動は抑制されます。これは「最新の脳科学」のカテゴリーの中で説明してきたとおりです。実は不安やストレスへの脳の対応は、これ以外に2つの経路があります。交感神経系とHPA軸の2つです。2、まず交感神経系について説明します。交感神経は視床下部にあります。生存脳と言われるところです。交感神経が活性化されると、アドレナリンとノルアドレナリンが放出され、身体を覚醒させます。アドレナリンは腎臓の上にある副腎の髄質から血液中に放出されます。血液中に放出されるものはホルモンと呼ばれています。ノルアドレナリンは全身の交感神経線維の末端から放出されます。そして交感神経が支配している臓器の活動を促しています。たとえば、心臓に働きかけて血圧や心拍数を高めています。まさに不安やストレスを受けたときに戦闘態勢をとっているのです。次にアドレナリンとノルアドレナリンは白血球に作用してサイトカインの放出を促します。サイトカインは発熱に関わっています。炎症性サイトカインと呼ばれています。炎症という現象は、今まさに不安やストレスと闘っている証拠です。炎症性サイトカインは、視床下部に作用してコルチゾールの分泌を高める働きもあります。3、HPA軸の活性化を見ていきましょう。視床下部は数秒以内にホルモン(CRH)を放出し、すぐ下にある下垂体を刺激します。刺激を受けた下垂体は別のホルモン(ACTH)を15秒以内に放出し、今度は副腎の皮質を刺激し、数分以内にコルチゾールを放出させます。コルチゾールは一時的に、血糖値を高め、炎症を抑え、気力を高める効果があります。コルチゾールは血流にのって全身を駆け巡り、「闘争」か「逃走」のためのエネルギーを供給する一方、炎症性サイトカインの放出を抑え、活性化した免疫反応を速やかに平常時に戻します。免疫反応が過剰になることによって、身体に悪影響が出ることを抑えるためです。コルチゾールは最後に記憶中枢の海馬に到達します。海馬は視床下部に対してこれ以上のコルチゾールを出さないように指令を出します。海馬が不安やストレスのやり過ぎを抑制しているのです。この流れで、不安やストレス反応が収束するようになっています。人類の進化の過程で、生命が危険にさらされることは、通常1時間も続かなかったはずです。ですから、不安やストレスに対する脳の反応は、もともと短時間のうちに発生して、短時間のうちに収束するような仕組みになっています。問題になるのは、不安を感じてストレス反応が起きる状態が、長時間にわたって続く場合です。現代人はさまざまな不安やストレスにさらされています。こうなると、脳の機能に支障が出てきます。まず海馬の視床下部に対する指令がきちんと実行されなくなる。つまりコルチゾール濃度が高いままに放置されることになります。コルチゾールに長時間さらされると、様々な問題が出てきます。その一つは海馬自体のニューロンがダメージを受けて機能不全に陥ってしまうことです。その結果、コルチゾールは24時間放出され続けるようになるのです。海馬が萎縮してくるとうつ病を発症するリスクが高まります。2つ目に、コルチゾールが過剰に出続けると、炎症性サイトカインの抑制が効かなくなります。その結果、炎症性サイトカインが暴れまくり、全身の血管や臓器に慢性的な炎症が起こります。心臓病、脳卒中、糖尿病、ガンなどにかかりやすくなります。不安やストレスは、生きている限り必ず発生するものです。避けることはできません。とらわれるときはとらわれるしかないのです。その危機を乗り越えるための仕組みが脳に備わっています。しかしこれは短期的に役立つものですが、不安やストレスが長期化してしまうと逆に害になって私たちの心身を痛めつけることになるのです。森田理論は、神経症的な不安はいつまでもとらわれるのではなく、どんどん流していくことをお勧めしています。上手に流すことがコツです。そのための方法としては、目の前のことに視線を移して、今現在に集中して生活していくことです。凡事徹底をスローガンにして、とらわれている不安がどんどん移り変わっていくようになれば、脳の仕組みからいうと万事うまくいくようになっているのです。以上の参考文献は、『「不安」は悪いことじゃない』 伊藤浩志 イースト・プレス 50ページから58ページより要旨引用および、「図解雑学 ストレス」 渡辺由貴子・渡辺覚 ナツメ社です。
2022.02.16
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医師の春山茂雄さんは人間の寿命は125歳だといわれる。そこまでは無理としても、100歳ぐらいまでなら現実味があります。そのために心掛けるべきことを「脳内革命」(サンマーク出版)から調べてみた。これはセロトニンを鍛えて精神的に安定することにも通じます。1、運動をして筋肉をつける。そのためにストレッチ体操を紹介されている。ストレッチ体操は、激しい運動ではありません。30歳を過ぎて激しい運動をすると、大量の活性酸素や疲労物質(乳酸)を生じさせ、かえって老化を促進します。ストレッチ体操はふだん使わない筋肉を引っ張って刺激を与えることで、筋肉の衰えを見事に防いでくれるそうです。ストレッチは、誰でも自宅で手軽にでき、15分もあれば済んでしまいます。春山さんは、この本の200ページから205ページで紹介されています。①から⑧まであります。簡単なものばかりです。たとえば①では、両手の指を組み合わせ、グーッと背伸びする感じで思い切り頭の上へ伸ばします。自分が天井の中に吸い込まれるようなイメージを持ってください。こうするとすべての筋肉が上へ引っ張られるかたちになり、全身の筋肉が伸びます。心はあくまでゆったり、しかしそのままの体の緊張を保ちながら、意識を上へ上へと上昇させると、両脇腹や胸に軽い痛みのようなものが感じられます。それが効いてきた証拠です。あまり痛くならないていどでやめます。次にお勧めなのはウォーキングです。ウォーキングの主な目的は、筋肉をつけ脂肪を燃やすことです。その他、「血管の目詰まりを防ぐ」ことにもなります。早歩きで1日最低5000歩は歩きたいものです。仕事で勤め先に行くとき、買い物や用事で外出する時は極力歩くようにしましょう。コツとしては、途中で止まってはいけません。どうしても立ち止まらざるを得ないときは足踏みしましょう。そうしないと、効率よく脂肪が燃えてくれません。歩き方は歩幅を大きく、ひざは曲げずに競歩のようなピノキオ歩きをする。つま先で蹴り、踏み出した足はかかとから着地する。私は、小出義雄さんの理論を取り入れて、3分早歩きをして3分緩めて歩くことを意識してウォーキングに取り組んでいます。多少の負荷をかけることで、効果が高まります。2、イメージによるリラックス法として「自律訓練法」を勧めておられます。そのさわりを次のように紹介されています。まずリラックスした姿勢をとって「手が温かくなる、手が温かくなる」と自分に言い聞かせるのです。そうすると本当に手が温かくなる。「呼吸が楽だ、呼吸が楽だ」といいきかせると、本当に息がととのってくる。これはほんの一例です。この方法を手直ししたものを、患者さんにやってもらっているそうです。副交感神経優位の状態を、覚醒中にやってしまうのが瞑想であり、自律訓練法はその入り口として位置づけておられるようです。自律訓練法はコツがありますので専門家に教えてもらう方がよいそうです。自己流は間違いのものになりますのでご注意願います。この本では184ページから191ページに注意点とともに紹介されています。もう一つは、腹式呼吸です。腹式呼吸というのは、横隔膜を上下させる呼吸法です。腹が膨らみます。これに対して胸式呼吸があります。この場合は胸が膨らみ、腹は逆に引っ込みます。腹式呼吸をするとプロスタグランディンという物質が出てきます。この物質は活性酸素を消去して、血管を広げる働きがあります。やり方としては、息は鼻から吸って、ゆっくりと口から出す。下っ腹を膨らませたり、へこませたり、この手順を繰り返す。私は喉のあたりに意識を持って息を吸い込むと腹式呼吸になります。ゆっくりとやることがコツです。特に吐く息をゆっくりと行う。息を吸ったら、できるだけ止めたままにして、苦しくなったらすこしずつ時間をかけて吐き出す。腹式呼吸をしている時は、アルファ波が出るそうです。精神が安定してすっきりしている時に出る脳波です。これは友人たちとカラオケを楽しんでいるときは腹式呼吸を意識しています。またアルトサックスの演奏時は自然に腹式呼吸になっています。腹式呼吸にしないと息が続かなくなるからです。3、植物性のタンパク質をとる。大豆タンパク質にはチロシンという脳内モルヒネの中心になる材料物質が含まれているので、1日1食は必ず大豆食品を食べることです。もちろん肉も大切です。春山さんは脳内モルヒネの中でもβエンドルフィンが最強だと言われています。私はセロトニンも大切だと思っております。昨日紹介したセロトニンも必須アミノ酸であるトリプトファンから作られるそうですから、タンパク質を摂取することが欠かせないということでしょう。さらに春山さんは、春夏秋冬にわたり、事細かに食事を紹介されています。219ページから224ページにわたり朝昼晩の食事内容が記載されています。食事は偏ることなく、自分で工夫して作ることが肝心だと思います。以上ごく簡単に心身ともに長生きする方法をこの本から紹介しました。無理なく足腰を鍛えて筋肉をつけて維持すること。脳の活動を安定させることが大切なようです。長生きしても廃用性萎縮現象で、認知症や寝たきりになることは何としても避けたいものです。ここでは興味を持っていただくために、さわりの部分だけを紹介しました。関心のある方は、脳内革命(春山茂雄 サンマーク出版)の132ページから233ページで詳しく説明されています。特にストレッチのやり方がイラストでていねいに紹介してあります。役に立ちます。ぜひご一読ください。
2022.02.14
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セロトニン神経系の鍛え方を見てゆきましょう。参考文献は「セロトニン欠乏脳」(有田秀穂 NHK出版)です。優れた本ですから、興味のある方は読んでみてください。1、セロトニン神経はリズム運動で活性化されます。リズム運動ならなんでもOKです。ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車、腹式呼吸、ガムを噛むなど。2、セロトニン神経の活性化は5分くらいから起こり、20~30分でピークを迎えます。ですからリズム運動の継続時間はそれくらいが適当です。3、リズム運動に意識を集中させることが大切です。負荷が弱く、だらだらと行っては効果がありません。4、セロトニン神経が活性化されると脳にアルファ波が現れます。爽快ですっきりした感じになります。それが感じられない場合は、リズム運動の種類、継続時間、意識の集中、負荷の程度などを再検討してください。5、セロトニン神経は疲労物質(乳酸)で弱められます。強度が強すぎたりやりすぎは禁物です。6、セロトニン神経の活動レベルが恒常的に上がってくるまでに100日かかります。無理なく3か月間継続することが肝心です。7、セロトニン神経が高いレベルになると、心身が元気になります。朝の寝起きがよく、やるぞという意欲が自然に湧いてきます。姿勢がよくなり、はつらつとしてくるはずです。雑念が消え、痛みをコントロールできるなど、普段の生活の中で自覚できることがあります。それらに関心を向けてください。8、セロトニン神経は、悪しき生活習慣で弱まることも忘れないでください。最終的には、リズム運動を自分の生活習慣として定着させることが大切です。最低でも3年間は継続してください。石の上にも3年ということです。9、セロトニン神経は太陽の光で活性化される性質があります。朝日を浴びながらのウォーキングなどは二重にセロトニン神経が活性化します。ただし、太陽の光を1~2時間以上浴びると、セロトニン神経の自己抑制が現れ、逆に、元気がなくなりますから、長く浴びるのは逆効果となります。30分くらいが適当です。10、セロトニンの原料は必須アミノ酸であるトリプトファンです。それはバナナ、大豆製品(納豆など)、チーズなどの乳製品に豊富に含まれています。トリプトファンが脳内に取り込まれやすくなるのには、炭水化物中心の食事がよいとされています。なお、サプリメントとしてセロトニン前駆物質あるいは関連物質を摂取することは間違いです。必ず副作用が出ます。間違ってもやらないでください。「セロトニン欠乏脳」という本を読むと、セロトニン神経系が、ドパミン神経系やノルアドレナリン神経系をスムーズに動かすための縁の下の力持ちとしての役割を果たしていることがよく分かります。セロトニン神経系の働きを軽視する生活は、ザルで水を掬うようなもので、精神を不安定にさせるということを肝に銘じて生活したいと思います。不安に過度に振り回されないためにも、また生の欲望を暴走させないためにも、セロトニン神経系を鍛えることを忘れないようにしたいものです。
2022.02.13
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昨日の続きです。人間には3つの神経系が作動していることが分かりました。これらを単独で取り上げても、不毛な議論に陥ると思います。今日はこの3つの神経系のバランスのとり方について考えてみたいと思います。これからはメルヘンの世界にお連れしてご説明します。ドパミン神経は、快の情動、ポジティブな気持ち、性や食への欲求などを演出し、色でいうと赤に相当します。ノルアドレナリン神経は、不安、ネガティブな感情、ストレス反応などを演出し、色で例えると、青に相当します。セロトニン神経は、これら2つの神経を抑制して、舞い上がりもさせず、不安にもさせずに、平常心を演出するもので、色に例えると、緑に相当します。これら3つの神経系が相互に影響しあって、心の色が形成されると考えられます。さあ、これらの3原色を使ってマラソンの心象風景を描いてみましょう。マラソンが始まる前は、選手たちは誰でも緊張感があります。よい成績を上げて完走したいという「やる気」と、アクシデントや脱水症状で無残な成績で終わるのではないかという「不安」が湧き上がってきます。心の色は赤(意欲のドパミン神経)と青(不安のノルアドレナリン神経)との混合、紫色になるでしょう。緊張と不安の混合色です。スタートの合図で走り始めると、リズム運動によって、セロトニン神経が一気に活性化されます。心の色はセロトニンの緑一色に変わるでしょう。セロトニン神経は、ドパミン神経とノルアドレナリン神経を抑制する働きがありますから、走る前にあった不安も薄れ、また、はやる気持ちも落ち着いてきます。ただひたすらに、淡々と平常心で走り続けられるようになります。しかし、緑一色で快調に飛ばしていても、人間、いずれ疲労が出てきます。疲労物質である乳酸はセロトニン神経の働きを弱めます。それだけではなく、活性化されていたセロトニン神経は、1時間ぐらいすると、本来の機能から自己抑制に転じてくると予想されます。緑一色の状態から、しだいに心の色が紅葉化してきます。それまで抑えられていたドパミン神経とノルアドレナリン神経の働きが少しずつ前面に滲み出てくることになります。赤色が広がるか、青色が滲んでくるかは、レースの展開しだいです。たとえば、一緒に走っていた人がスパートをかけて、追い抜かれてしまったとします。すると、意欲が失せ、苦悩やストレス反応が前面に出てきます。ノルアドレナリン神経が心の彩りを支配してしまいます。緑プラス青色で苔のような色に変わります。その心情はわびしさに近いものかもしれません。このときに、走るのをやめてしまえば、気持ちは限りなくブルーに冷え込んでいきます。セロトニン神経とドパミン神経が活動を停止して、ノルアドレナリン神経だけになります。しかしあきらめずに走り続ければ、セロトニン神経とノルアドレナリン神経の混合で安定します。この色は深緑色で、わびしさというより、渋みのある落ち着きとでもいえるかもしれません。逆に、レース展開が好転した場合には、ドパミン神経の赤が、セロトニン神経の緑に重なってきます。心の色は、赤プラス緑で、茶色、赤胴色になります。これは熱せられた鉄を感じさせます。疲れてはいてもたくましさを感じさせます。レースも終盤になりますと、セロトニン神経の方は弱り切ってしまいます。うつ病の時のように、姿勢が悪くなり、力がなくなり、交感神経の緊張も低下して、意識レベルも下がってきます。緑色を維持するのが難しくなります。心の色は土気色に近くなります。このとき、声援があって元気づけられると、だいだい色、黄色と明るくなります。最後にゴールしたとき、いったい、何色に変わるでしょう。セロトニン神経も、ノルアドレナリン神経も、ドパミン神経も、すべて消えて、透明になるのか、あるいは真っ黒の闇になるのでしょうか。三色がちょうどよく混合した色というのは何色なのでしょう。光の混合であれば、無色透明ということになるでしょう。意欲もあり、不安もあり、なおかつ、平常心が持てるという状態になります。全てがバランスよく混ざり合っている状態こそ、「無」の色なのかもしれません。世俗の中で、無色で生きられれば、それが求める心の姿と言えるでしょう。(セロトニン欠乏脳 有田秀穂 NHK出版 202~206ページ要旨引用)明日は縁の下の力持ちであるセロトニンを増やして安定させる方法について投稿します。
2022.02.12
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今日は3つの神経系の話です。まず次の図を見てください。少し見にくい点はご容赦願います。「やめたくてもやめられない脳」(廣中直行 ちくま新書 84ページより転載)人間の脳の神経系は①ドパミン系(右上)、②ノルアドレナリン系(真ん中)、③セロトニン系(右下)の3つがあります。この働きと関係を理解することが、森田理論を深めることに役立ちます。森田理論を学習している方は、最新の脳科学を勉強することを強くお勧めいたします。①ドパミン系は報酬系神経回路と言われています。森田でいうと生の欲望を発揮している時に活動している部所です。イケイケドンドンの神経系です。ポジティブで創造的な神経回路です。この図で見ると案外狭い範囲で動き回っています。この神経回路は、別名A10神経回路と言われています。腹側被蓋野から側坐核、線条体、淡蒼球、帯状回、前頭前野などを駆け巡っています。さらに前頭前野からA10神経回路にフィードバックされて、どんどん活性化されています。らせん階段をグルグル回っているような感じです。ダイナミックコアセンターを形成しているのです。②ノルアドレナリン系は防衛系神経回路と言われています。森田でいうと不安、恐怖、違和感、不快感に振り回されている時に活動している部所です。A6神経系と言われています。危険やリスクを予見して、身を守るための活動を担っています。専守防衛です。この神経系が装備されていたから、人類が生き延びてきた側面を忘れてはいけません。慎重に防衛力を活用したからこそ、人類が生き延びることに成功したのです。ただしこの神経系は、後ろ向きで回避的、対立的、内省的に働くのが特徴です。神経症で苦しんでいる人は、ドパミン系神経回路がお休みして、もっぱらこのノルアドレナリン系神経回路が活動しています。それが様々な問題を生み出しています。神経症もその一つです。この図で見るとドパミン系よりはより広い範囲に及んでいます。この回路は青斑核から出発しています。そして大脳全体に影響を与えています。③セロトニン系は覚醒脳と言われています。朝の目覚めに関わっています。セロトニン神経系は脳幹の縫線核から始まっているそうです。図を見ると、その活動範囲は3つの中で一番広がっています。有田秀穂先生によるとセロトニン神経系の役割を次のように説明されています。その1セロトニン神経系は車のアイドリングに似ている。車のエンジンがスタートすると、低速で規則的なエンジン回転が始まります。この状態は車が動き出す前の準備状態です。この段階でエンストを起こすような車では使い物になりません。しかし、実際に車を走行させている神経系ではありません。アクセルを踏んで加速しているのは、ドパミン神経系です。あるいはブレーキを踏んで減速しているのはノルアドレナリン神経系です。セロトニン神経系は、あくまでも心身がスムーズに活動できる準備状態を作り出す機能を果たしているのです。脳の機能として、ウォーミングアップやストレッチを充分に行ってから本番に臨むようになっているのです。その2セロトニン神経系は、他の2つの神経系に対して抑制的に働きます。ここが最も肝心なところです。注目すべきところです。ドパミン神経系は、そのまま野放しにしていると暴走する危険性があります。問題を起こした後で後悔してもすでに時遅しというということがあります。セロトニン神経系は、日頃からドパミン神経系が暴走しないように、監視して抑制の働きを果たしています。セロトニン系がしっかりと機能していると、欲望の暴走をある程度抑えることができるのです。ドパミン神経系の抑止力として大きな働きをしているのです。現在アルコール依存症、ギャンブル依存症、ネットゲーム依存症にかかっている人はセロトニン神経系を鍛える必要があります。そのほか本能的な欲望が暴走しやすい人、憎悪の感情を抑えきれないで暴走する傾向のある人はセロトニン神経系の働きを見直す必要があります。またノルアドレナリン系が一方的に活性化すると、不安や恐怖、違和感や不快感でパニック状態に陥ります。精神交互作用で神経症の固着に向かうことにもなります。またストレスや生きづらさを抱えてのたうち回るようになります。セロトニン系は不安やストレスを緩和するように働いています。セロトニンが十分に脳内に存在していれば、うつ状態で苦しむことが軽減されます。神経症で苦しんでいる人はセロトニンが不足している人と言えます。そういう意味でセロトニン神経系は、縁の下の力持ち的な働きをしています。しかしこれが正常に機能しないと、ドパミン神経系もノルアドレナリン神経系も十分な効果を発揮しないということです。うつ病などの時SSRIを処方されることがあります。不安を軽減してくれる夢のような薬と言われていますが、副作用もありますし、過信は禁物です。これは一旦放出されて、今だシナプスに留まっているセロトニンが早く回収されないように阻害している薬です。この処方はあくまでも対症療法であり、セロトニンを新たに作り出したり、回復する療法ではありません。根本的には一刻も早くセロトニンを作り出してやることが必要です。その方法がありますので、日を変えてご説明します。この3つの神経系の働きや関係性が理解できれば、次の対応策がみえてきます。これを明日の投稿課題とします。(セロトニン欠乏脳 有田秀穂 NHK出版参照)
2022.02.11
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最近の脳科学の進歩は目を見張るものがあります。森田先生が活躍されていた時代にはなかったことです。現在、不安や恐怖、違和感や不快感で押しつぶされそうなとき、大脳のどの部分が活動しているのかはほぼ解明されています。また、積極的、プラス思考の時の脳の活性部所とその仕組みもほぼ解明されています。私は神経質者が不安にとらわれないために、森田理論学習の中で最新の脳科学を学習する意味は大きいと感じています。その一環として、私が作成している森田理論の学習テキストに、「最新脳科学を応用した不安への対応方法」を付け加えることを考えています。まず、どのような人が最先端の脳科学の説明をされているのか説明します。興味のある方は参考にしてください。・林成行 優れた救命救急医 「望みをかなえる脳」という本が優れています。分かりやすい。脳科学を人生に活かすという視点に共感する。この本が一番のお勧めです。・西田文郎 脳科学と心理学をビジネス、スポーツなどに応用されている。「かもの法則」「No.1メンタルトレーニング」「ツキの大原則」など著書があります。どの本も分かりやすい。実践的ですぐに役に立ちます。・池谷裕二 脳の基礎研究をされている。「海馬」「脳には妙なクセがある」「進化し過ぎた脳」などの著書がある。理論的で内容が深い。・廣中直行 いい気持ちはどこから生まれるのか 「快楽の脳科学」「やめたくてもやめられない脳」という著書がある。少し専門的になっている。良書です。・萩原一平 「ビジネスに活かす脳科学」「脳科学がビジネスを変える」という著書がある。脳科学を仕事に応用するという視点が強い。内容自体は専門的です。ここではごく簡単に大脳の働きを見ておきたい。五感から得た感覚は扁桃核で快か不快に分類される。快に分類されたものは、ドパミンにより報酬系神経回路(A10神経)を通じて大脳全体に拡散される。最終的には創造や分析を司っている前頭前野に送られる。その好循環の輪の中で、加速度がついて意欲的・積極的・建設的な行動が生まれてくる。不快に分類されたものはノルアドレナリンにより青斑核に送られて、防衛系神経回路が作動する。この回路は専守防衛が基本となる。ネガティブでマイナス感情が大脳全体に拡散される。そういう情報が前頭前野に届くと、行動は消極的・逃避的・内省的となる。神経症の場合に問題となる不安や恐怖、違和感や不快感は、この防衛系神経回路が大脳を駆け巡っている状態です。本来は報酬系神経回路の発動がフル回転している方が好ましい。その行き過ぎを抑制するために、防衛系神経回路を適宜活用する。神経症の方の場合は、報酬系神経回路が休眠状態で、防衛系神経回路が大脳全体を覆っている。苦悩が増悪するスパイラルに入っています。これが問題です。この仕組みが分かれば、今度は報酬系神経回路を活性化するためにはどうするか。二つの神経回路のバランスをとるためにはどうするかという問題になります。今までの森田理論学習に、この視点がすっぽりと抜け落ちていたと思います。これらをすっきりさせて分かりやすい理論として提供したいと考えています。しばらくお待ちください。
2022.02.03
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昨日の続きです。5、行動する前に気分本位になることは、誰にもあります。「おっくうだ」「面倒だ」「しんどそうだ」「楽をしたい」「やる気がしない」など。そういう気分に振り回されて行動を回避すると、その一瞬は「快」の気持になりますが、それが過ぎ去った後は、暇を持て余し、自責の念に駆られます。「不快」の気持が脳全体を覆ってきます。「快」が「不快」に変化して、防衛系神経回路が支配的になります。改善点とすれば、最初の小さな「快」は無視することです。注射針を打たれるような一瞬の痛みを我慢して、イヤイヤ仕方なく行動すれば、その次に大きな「快」の感情が待っていることを思い出すことです。最初気が進まなかったことに、取り組んだ結果、思いもかけない喜びを味わうことができたという経験は誰でも持っていると思います。6、一日の3分の1を占めている仕事に対して、苦しくて仕方がない状態は、防衛系神経回路に支配されている状態です。逆に言うと、仕事が楽しい、面白くて仕方がないという人は、報酬系神経回路が作動して、人生が謳歌できています。誰でもそうなりたいと思っているのに、仕事が楽しいとは思えない。解決のヒントは就職したときにあります。誰でも仕事を始めた頃は、必死になって仕事を覚えようとしていたはずです。つまり早く仕事ができるようになりたい。早くみんなに追いつきたいという目標を持っていたということです。その目標に目途がついたころから、仕事が辛いものに変わってしまった。仕事をする中に課題や目標を見失って、あてどなくさ迷っているのです。一心不乱に取り組むことによって、仕事の中に問題点や課題を見つけ出すことが大切になります。誰でも、早急に解決しなければならない問題を見つけた時、苦悩は一時的に棚上げ状態になります。まず仕事の中に課題や目標を見つけ出すことが重要になります。7、つぎに人間関係が対立的になると、「不快」な感情で防衛系神経回路が活性化します。人間関係でいかに多くの「快」の感情を作りだして、報酬系神経回路を作動させていくか。森田では、人間関係の基本は不即不離ということを教えてくれています。必要な時に、必要に応じて、必要なだけの人間関係を築くことです。コップに一杯の人間関係を少しだけというより、コップに少しだけの人間関係を数多く作るという態度をお勧めしています。引っ付きすぎ、離れすぎというのは、「不快」な感情を招きやすいのです。そのバランスをうまく取り、維持していくことが人間関係のコツになります。それから、人間関係で一言付け加えるとすれば、運のある人、ツキのある人を見つけて仲良くすることです。愚痴、不平不満、自己否定、言い訳、責任転嫁、環境、状況のせいにしている人には近づかないことです。百害あって一利なしです。集談会では症状を克服した人、森田理論を深めている人、森田理論を生活に応用している人、森田的な生活を維持している人に近づいていくことです。そのように心掛けていると、自分も感化されて自然に治っていくのです。一人で学習を深めて、自力で治すということは、尊いことですが、時間もかかりますし、実際には難しいと思います。以上7項目にわたって説明してきました。これ以外にも「快」の感情を作りだす方法はたくさんあると思います。要は一つでも自分の生活に取り入れて、「不快」の感情を減らしていくことです。この2日間の投稿で、一つでもそのヒントが見つかりますように。そして積極的に報酬系神経回路を回していこうではありませんか。
2021.12.18
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昨日まで数日間にわたって、脳の仕組みについて説明してきました。扁桃核で「快」「好き」に選別された感情は、ドパミンにより、やる気の脳と言われる側坐核、快楽神経の腹側被蓋野(A10神経)などに送られます。その後、報酬系神経回路のネットワークを通して脳全体に波及します。その結果、やる気が高まり、意欲的に行動するようになります。他から行動を強制されなくても、自主的、積極的な行動に繋がっていきます。さらに行動にはずみがついてどんどん好循環が生まれてきます。自分の課題や目標に対して脳が全面的にバックアップ態勢を敷きます。建前と本音が一致してくるのです。一方扁桃核が「不快」「嫌い」に選別した場合は、青斑核が司令塔となって、防衛系神経回路のネットワークが作動し脳全体に拡散してしまうということでした。脳が防衛態勢を敷いてきて、積極的な行動はできなくなります。観念で、「もっとやる気を出せ」と言っても、報酬系神経回路がお休みしています。建前と本音が乖離しており、笛吹けど踊らず状態になります。その結果、「できない」「むずかしい」「ダメ」「苦しい」「イヤ」「グチ」が多くなります。「言い訳」「ごまかし」「責任転嫁」「自信喪失」「非難や否定」「叱責」が多くなります。この脳の仕組みを理解できたことは今後の生き方に関わってきます。なんとかして報酬系神経回路を活性化する方法を見つけ出して、今後の生の欲望の活性化につなげていきたいと考えるようになりました。ここでのポイントは、いかにして「快」「好き」の感情を作りだして扁桃核に送り込んでいくかになります。この方法を考えていきたいと思います。1、感謝の言葉を書いて寝る前にそれを読む習慣を作る。あるいは「今日の感謝」と題して、日記に書いていく。感謝の気持ちは、「快」「好き」の感情を作りだします。感謝する内容は12月11日の投稿原稿を参考にしてください。2、否定語は使わないで、肯定語を使うようにする。自分の会話を録音して聞いてみると、「ダメだ」「無理だ」「できない」「イヤだ」「苦しい」「イライラする」「不安だ」「恐ろしい」「恥だ」「みじめだ」「ヘトヘトだ」などの否定語が口癖になっている場合があります。これを意識して封印しましょう。最初のうちは難しいと思います。否定語を言ったあとは、肯定語に置き換えましょう。そしてできだけ意識してたくさんの肯定語を使うようにしましょう。「好き」「うれしい」「楽しい」「愉快だ」「ウキウキする」「ワクワクする」「気持ちがいい」「幸せだ」「満足だ」「できた」「成功した」「達成した」などです。これは意識的に取り組むとかなり改善できます。3、普段の生活の中で小さな成功体験を積み重ねていく。そういう快の体験は、報酬系神経回路を刺激します。脳は、何か新しいことを始める時、過去の成功体験や失敗体験を引っ張り出してきて、成功確率を審査しているのです。人間の長期記憶は失敗やミス、後悔や恥をかいた記憶の方が圧倒的に多いそうです。成功したこと、目標を達成したこと、称賛されたこと、運がよかったこと、ツキがあったことは命に支障がないために軽視されています。その結果、扁桃核は「不快」「嫌い」と判断して、その情報を青斑核に送り込んでいるのです。自分の過去の成功体験をまとめてみるというのも有効です。4、自分の弱点や欠点、ミスや失敗は、おもしろいユーモア小話に仕立て上げて公開していく。普通は、隠す、ごまかすことが多いと思います。これらは脳が「不快」「嫌い」と判断して、その情報を青斑核に送ります。そして、防衛系神経回路が悪循環するようになるのです。公開していくという姿勢は、弱点や欠点、ミスや失敗を自分の強みとして活かしていくことになります。そういう人の周りに人は近づきます。その他取り組むべきことは明日投稿していきます。
2021.12.17
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最近のMRI(核磁気共鳴画像診断)は電磁波を使って1ミリ単位で脳の働きをとらえることができるそうです。プラス思考の時は脳のどの部分が活性化し、マイナス思考の時はどの部分が変化しているかを突き止めることが可能になっています。これを利用して脳の報酬系回路と防衛系回路の流れを見てみましょう。まず報酬系神経回路の流れです。イケイケどんどんの積極的、快楽系神経回路の流れです。神経伝達物質としてはドーパミンが絡んでいます。主にドーパミンが情報伝達を担っているのです。その他アドレナリンやβエンドルフィンも絡んできます。報酬系神経回路は、別名A10神経系(快感をもたらす神経)と言われています。依存症というのはこの回路が活性化し過ぎているのです。ドーパミンはA10神経で生み出されています。A10神経系は脳幹から出発しています。脳幹は呼吸、体温調整、血液循環、消化など最も基本的な生命活動を調整しています。無意識的に調整しますが、その時の心の状態に影響を受けています。心身が穏やかな時は正常に問題なく働いています。つぎに視床下部に入ります。ここは性欲、食欲、睡眠、排泄など人間の基本的欲求をコントロールしています。ここから先は枝分かれします。1番目は、記憶の脳である海馬に進みます。記憶の脳は短期記憶と長期記憶に分けています。短期記憶はすぐに消去されますが、安全や生存に関わるような重大な記憶、反復された記憶は長期記憶として別の場所に格納されます。成功体験が数多く収納されていると、新たな挑戦をするときに、その記憶を呼び出してきます。挑戦意欲が高まり今度もまた成功確率が高くなるのです。2番目に、感情の脳(扁桃核)を通り、学習・記憶・言語の脳と言われる側頭葉に達しています。扁桃核は好き、快、できるという感情をこのA10神経系に送り込みます。つまり、やる気を起こさせる脳である側坐核や腹側被蓋野などに向かいます。この部分は私たちの意欲や行動力に大きな影響力を及ぼしています。そこが司令塔となり、報酬系神経組織に属する脳全体を駆け巡ります。最終的には、人間だけに大きく発達している前頭前野に達します。この部分が活性化することで、生産的、建設的、創造的な活動に繋がっています。この流れに乗ると前途の視界が明るくなります。一方人間には防衛系神経回路も標準装備されています。攻撃だけでは思わぬ落とし穴にはまってしまいます。攻守あいまってバランスをとっているのです。防衛系神経回路はノルアドレナリンが絡んでいます。その後コルチゾールなども絡んできます。こちらはA6神経系回路と言われています。不安や恐怖、不快感などにさらされると、脳幹が動きます。呼吸、体温調整、血液循環、消化などに微妙な影響が出てきます。心の危機に体の方が即座に対応してくるのです。つぎに視床下部に入ります。防衛系神経回路に支配されると性欲や食欲がなくなり、不眠、胃腸などが不調になります。つぎに、記憶の脳である海馬に進みます。記憶の脳は短期記憶と長期記憶に分けています。安全や生存に関わるような記憶は長期記憶として別の場所に格納されます。ミスや失敗、恥ずかしい思い、悲しい感情、後悔した体験などは、今後の危険回避のために、どんどん蓄積されていきます。普通は成功体験よりも失敗体験の方が数多く蓄積されています。今度また同じようなことに取り組む時、その記憶を引っ張り出してきて、「ダメだ、また失敗するだろう」などと決めつけてしまうのです。行動の足かせとなります。扁桃体で嫌い、不快、できないと判定された感情は、青斑核(A6神経)に運ばれます。この部分は防衛系神経回路の司令塔的役割を担っています。小さな神経組織ですが、数十億という防衛系神経組織に影響を与えています。生産的、建設的、創造的な行動を抑制して、心身の安全確保に専念するように指示しています。基本的には危険回避の方向に向かいます。黄色信号や赤信号を点灯させて、総力を挙げて防衛態勢を取らせているのです。そのために精神活動は内向きになります。無気力で覇気がなくなります。この2つの神経系の関係は、普段は報酬系神経回路が前面に出て大いに作動し、その行き過ぎを防衛系回路が制御するというのが望ましいと思われます。しかし分別がついてくると、危険回避の考え方が主導権を取り、報酬系回路が抑制的になる人が多いようです。努力することを回避して逃避的になり、生きがいを無くしていきます。現代人は、報酬系回路の賦活が緊急課題となっていると思います。人間は対象に働きかけて、課題や問題点の解消のために精進するという宿命を持った生き物です。それに沿った生き方をするためには報酬系神経回路を活性化することが大切になります。そのためには、達成可能な大きな目標を持つ。目標をしっかりイメージする。先入観を排除して正しく現状分析を行う。かくあるべしを排除して、今現在の事実に素直に従う。現実を踏まえて、大きな目標に向かう道筋をつける。つまり、短期で達成可能な小目標をいくつも設けて成功体験を積み重ねる。その途中で失敗をしても、軌道修正を繰り返しながら目標に向かう。立ちはだかる壁や失敗は成功のための糧にしていく。目標達成できるまで粘り続ける。この路線にのって生活している人は、生きがいを持った人生を送ることができるのではないでしょうか。この点については明日詳しく見ていきます。
2021.12.13
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今日は「できるかも」「やれるかも」「うまくいくかも」「成功するかも」などとポジティブに考えることができる人のエピソードを紹介します。・北京オリンピックに出場した日本代表の女子代表の女子ソフトボールチームは、いつも強豪アメリカチームに負けてばかりでした。アメリカはそれまで世界選手権6連覇中で、通算116試合戦って106勝10敗。オリンピックでも3大会連続金メダルと「世界一」の座を譲ったことがありませんでした。オリンピック前の予想でも、「日本はアメリカに勝てっこない」という評価でした。日本チーム内部でもそんな気持ちが支配していたのです。日本チームは、猛練習をしながら相手チームの戦力分析を徹底しました。その上で「勝てるかも」というメンタルトレーニングを取り入れました。まず勝てるというイメージトレーニング。そしてネガティブな気持ちをポジティブな言葉で上書きする。「今度は絶対に勝てるはず」「日本にはツキがある」「守りが鉄壁だ」「チームワークは最高だ」「今までのリベンジのチャンスがやってきた」「日本中に感動を届けたい」選手全員が「イケイケどんどん」の報酬系神経回路を作動させたのです。そしてまさかの世界一。日本中が歓喜に包まれたのです。・伊丹仁朗先生の生きがい療法では、ガンになっても積極的な生き方が時としてガンを克服するといわれる。ガンを受けいれて、自分が主治医のつもりでガンとたかっていく。その日その日を大切に生きる。人の為に役に立つことをする。大きな目標を持って生きる。その一つとしてガン患者とともにヨーロッパ最高峰モンブランに登頂された。会合では、ユーモア療法、絵画療法、イメージトレーニングを取り入れている。これらの取り組みが、脳の中でドパミンを出して、側坐核、腹側被蓋野(A10神経)の活性化による報酬系神経回路の活性化を促進する。私が知っている方は、スキルス胃がんになられて内臓の摘出手術をされ、5年生存率は大変厳しいものだった。にもかかわらず、手術後フルマラソンに挑戦された。何度も完走された。そして5年を乗り越え、主治医からはもう診察に来なくても大丈夫と太鼓判を押されたという。現在は闘病体験を伝える活動に熱心に取り組まれている。・トイレ掃除神話を生み出したイエローハットの創業者の鍵山秀三郎が、毎朝率先してトイレ掃除を始めた当初、自分の会社の社長が掃除することを従業員たちは快く思っていなかったそうです。しかし、鍵山氏は自らトイレ掃除をすることにこだわりました。トイレ掃除は、臭い、汚い、誰もが嫌がる仕事です。汚いと脳の中では不快な気持ちでいっぱいになります。しかしその気持ちを持ちながら、ゴシゴシトイレを磨き、ピカピカになったころには脳の中に変化が起きます。不快な気分がどこかに飛び去り、すがすがしい快の感情が生まれてくるのです。快の感情は報酬系神経回路を作動させて好循環を作り出します。快の感情は、仕事面でも次々に快の感情を生み出して、好影響を与えるようになるのです。・良寛さんは三条地方を巨大地震が襲った時、友人に出した手紙の中に「災難に逢う時節には災難に逢うがよきに候」と書いたそうです。普通は家を失って、身内の人がなくなったりしている時に何という不謹慎なことを言うのかと怒りを覚えるのではないでしょうか。良寛さんは、神様を恨み、運の悪さを嘆くことはされていない。災害を粛々と淡々と受けいれて、後片付けや家の建て替え、これからの生活の建て直しのことに心を砕いておられる。事実を素直に受け入れることができる人は、不快の感情にとらわれることがない。防衛系神経回路が悪循環することを避けることができるのではないでしょか。それだけでも運命を呪い、意気消沈することを避けて、立ち直ることができるのではないでしょうか。いったん不快の感情が湧き上がっても、それを快の感情に置き換えることができる人は、報酬系神経回路が活性化して、前向きに気持ちになることができます。
2021.12.10
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一昨日と昨日は、「できるかも」「やれるかも」「うまくいくかも」「成功するかも」と予感することができれば、脳の中で報酬系の回路が作動して、生の欲望に向かって行動できる仕組みを説明しました。その中でも、普段から小さな成功体験を積み重ねることが有効という説明をしました。今日はそれ以外の、方法についてみていきたいと思っています。1、一緒に取り組んでくれる協力者がいる。仲間を作る。2、経済的・資金的な余裕がある。生活が安定している。3、失敗したことを成功のための糧にしている。4、観察や研究、正確な情報収集により将来に明るい見通しが立つ。5、最悪の事態を想定して、それを受けいれることができる。6、原因追及、責任転嫁、言い訳をやめて、事態打開のために「どうすればうまくいくか」「どこに突破口があるか」とプラス思考ができる。7、普段から練習や訓練を続けて、いざというときにできるようにしておく。これらが複合的に働くようになると、肯定的、ポジティブ、希望的な気持ちが湧いてくる可能性が高まるのではないでしょうか。1についてですが、飛び込み営業をしていた時に感じたことですが、仲間と協力しながら仕事をしていると、気分本位の態度がなくなり、「なんとかくじけないで仕事ができるかも」という気持ちになりました。協力者や支援者いると、「できるかも」という「かも」が舞い降りてきます。3についてですが、飛び込み営業では大数の法則が働いています。乗用車の飛び込み営業をしている人の話を聞くと、100件のアタックで1件の見込み客が見つかる。99件の失敗を我慢して受けいれることができれば、確率的には1件の注文を獲得できる。99件を失敗と受け取るのか、成功のための避けて通れないステップと受け取るのか、その後の展開はまるっきり違ってきます。森田理論では、「かくあるべし」という観念を押し出して、事実を否定すると神経症に陥るといいます。思想の矛盾に陥り、エネルギーの無駄遣いになります。反対に、不都合な事実を受けいれると、そこが出発点となります。エネルギーの無駄遣いが無くなり、生の欲望に向かって有効利用できる可能性がでてきます。一歩目線を上げて、問題点や課題、目標や夢に向かうことは人間本来の生き方になります。森田理論の活用で「かくあるべし」を減少させて、事実本位の態度を身につけることができると、「肯定的なかも」をより多く飛ばすことが可能になります。7についてですが、消防訓練や地震を想定した避難訓練をした人は、最悪の事態を免れる確率が高くなるといわれています。それは「逃げられるかも」という気持ちが出てくるからです。スポーツや楽器の演奏でも、猛練習を続けて練習段階では120%の出来にしておくことが大切です。本番で必ずしも成功するとは限りませんが、練習が不十分な人と比べると、精神状態は雲泥の差がつきます。少々緊張しても練習の通りのことができれば大丈夫だと思えます。できる限りの練習が「できるかも」という「かも」を連れてくるのです。「できるかも」という「肯定的なかも」をより多く飛ばすことができる人は、大脳の報酬系回路が活性化して、楽しくて幸福な人生が両手を広げて待ってくれているのです。
2021.11.28
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昨日、扁桃核によって「肯定的かも」と「否定的かも」に選別された「かも」の行き着く先は全く異なることを説明しました。2つの「かも」の特徴は、同時に作動させることはできないということです。「肯定的なかも」による「報酬系回路」が作動しているか、「否定的なかも」による「防御系回路」が作動しているかのどちらかです。また「報酬系回路」が作動していても、待ち構えた障害物のために、「防御系回路」に切り替わってしまうことが起きます。ただ「防御系回路」は危険やリスク回避のために大切な役割を果たしています。しかしこれ一辺倒では行動は抑制的、気持ちは悲観的になります。回避、防御が支配的になりますので、生の欲望の発揮に向かいません。「防衛系回路」は何ら努力をしなくても、自然発生的に生起されるものです。ですから人間としては、「肯定的なかも」を思案する習慣を身につけていくことがより重要になります。「肯定的なかも」を身に着けるための方法はいくつもあります。その中に、小さな成功体験を積み重ねるというのがあります。今日はこれを取り上げてみたいと思います。ソフトバンクの孫正義さんがこんな話をしていました。「20数年前、私は、この福岡の雑餉隈でソフトバンクを始めました。当時は私一人と、アルバイトの社員の二人でありました。私はみかん箱の上に乗って、その二人の社員に言いました。このソフトバンクを立派な会社に育てて、いつの日か、売り上げを1兆円、2兆円と数えられるような規模にしてみせる。何が何でも世界一の会社にしてみせるんだということを語りました」二人の社員はあまりの誇大妄想的発言に、「危ない社長だ」と感じてすぐに退社して行ったそうです。しかし実際には実現可能な発言だったのです。孫さんはそれまでに多くの成功体験を積み重ねていました。17歳で九州でも超難関の高校をあっさりと中退して渡米しました。カリフォルニア大学バークレー校在学中に自動翻訳機を開発して、それをシャープに1億円で売り込みました。その1億円を資本にアメリカでソフトウェア開発会社を設立しました。日本から輸入した使い古しのインベーダーゲームを売って大儲けしています。それが22歳の時です。孫さんの脳には、こういう成功体験の記憶データが詰まっていたからこそ、「売り上げを1兆円、2兆円と数えられるような規模にしてみせる」「何が何でも世界一の会社にするんだ」というとんでもないような夢に、確信が持てたのです。(かもの法則 西田文郎 現代書林 123ページより引用)私はこんな体験があります。当時勤めていた会社で、宅地建物取引主任者の資格取得者が必要なので誰がとってくれないかといわれました。何人か挑戦しましたが私だけが運よく合格しました。この小さな成功体験は実に大きな喜びと自信をもたらしました。それがきっかけとなり、社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー(CFP)などの試験に挑戦することになりました。「合格できるかも」という「かも」を飛ばすことができるようになったのです。好循環が生まれて、全て当初の目的を達成することができました。集談会活動では、入会後6か月目から世話活動や幹事会活動に取り組みました。そこでたくさんの小さな成功体験を積み重ねることができました。特に、集談会の運営、忘年会などの企画、野外学習会、1泊学習会、1泊2日の支部研修会、集談会単独の「心の健康セミナー」の企画や準備、実施という成功体験は大きな自信になりました。こうした活動を35年間続けてきたのです。人間として一回り大きな人間になれたように実感しました。特に心の健康セミナーでは、1年間準備して約100名の申込みがありました。この成功体験は、責任者として指名された会社の業務改善、大きなイベントなどの職責を果たすうえでの大きな後ろ盾となりました。「肯定的なかも」を飛ばして報酬系回路を動かすためには、日々の生活の中で小さな成功体験を数多く積み重ねることが極めて大切になってくると考えています。小さな成功体験の積み重ねは、自信がついて、自己肯定感が出てきます。さらにまた大きな「肯定的なかも」を目指して努力することになります。しだいに人生が好回転し始めます。反対に小さな成功体験が積みあがっていないと、「また失敗してしまうかも」「まただめかも」と考えてしまうのです。「否定的なかも」はそういうことです。「否定的なかも」が飛び回るようになると、将来に希望が持てなくなります。残念で悔いの多い人生で幕引きとなります。これは何としても阻止したいと思っています。
2021.11.27
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今日は「かもの法則」について説明します。聞きなれない言葉です。これは脳の仕組みの話ですが、これからの人生に大いに役立ちます。参考図書は、西田文郎さんの「かもの法則」(現代書林)です。その他西焼津クリニックの林隆博先生の論文を参照しています。私たちの感情はまず大脳の扁桃核に入ります。好きか嫌いか、快か不快か、良いか悪いかなどの感情です。扁桃核はこの感情の選別を行います。肯定的でポジティブな感情(1)と否定的でネガティブな感情(2)の選別です。1、好き、快、良い、やりがいがある、楽しい、うれしいといった感情。2、嫌い、不快、悪い、イヤ、不安、怖い、苦手といった感情です。扁桃核で区分けされた感情は神経伝達物質によって他部署に送られます。1の感情は、ドーパミンいう神経伝達物質によって、側坐核、腹側被蓋野(A10神経)などに送られます。側坐核はやる気を鼓舞する役割を果たしています。腹側被蓋野(A10神経)は快楽・報酬神経系に属しています。ここが司令塔となり、報酬系神経のネットワークや前頭前野などの部位を刺激しているのです。前頭前野が活性化すると、生産的、建設的、創造的な行動へとつながっていくようになっています。これを報酬系回路の賦活と言います。関連する部署が一斉に活性化します。「できるかも」「やれるかも」「うまくいくかも」「成功するかも」と肯定的に思案することは、この報酬系回路を活性化することになります。「肯定的なかも」というのは、将来の予測をしているだけですが、頭の中では報酬系回路が連鎖的に作動しており、さらに目標を達成すべく前頭前野がフル回転しているのです。分析力や創造性を担っている前頭前野が動き出すことが大きいのです。一方、2の感情は、ノルアドレナリンという神経伝達物質によって青斑核(A6神経)に送られます。青斑核は、防御系回路に属する神経組織にその情報を伝えます。視床下部、扁桃体、海馬、中隔、前頭前野などに送られて、不安や恐怖や危機感の情動反応を起こして、コルチゾールの血中濃度を高めます。これにより、血管を収縮させて血圧上昇、血糖値上昇、抗炎症反応が増進されます。青斑核は12000個から25000個と数は少ない部位ですが、数10億の防衛的神経組織に影響を与えています。つまりネガティブで否定的な考えが大脳を駆け回っているということになります。青斑核は脳全体に防御態勢、戦闘態勢を敷くように指示しているのです。大脳が防衛系回路に支配されるようになると、専守防衛が基本的対応となります。逃避、回避、抑制、防御中心で、積極的で生産的・建設的な行動は抑制されています。今はそこにエネルギーを投入すべき時ではないと脳が判断しているのです。このときやる気の脳と言われる側坐核やそれにつながる報酬系神経組織はお休みしています。だから無気力・無関心・無感動になってしまうのです。防衛系システムが稼働しているときは、悲観的、否定的、ネガティブ、弱気、原因探し、無気力で覇気がなくなります。やる気がないという人は、その人の人間性に問題があるわけではありません。「このままではうまくやっていけないかも」「失敗してしまうかも」「仲間外れにされてしまうかも」「自分の人生は苦しいだけかも」という否定的な「かも」が、大脳の防衛系回路を賦活して、生産的、建設的、創造的な活動を抑制するような状態になっているのです。ここでいう「否定的なかも」は高良武久先生が言われる「適応不安」のことです。この防衛回路が作動している人に、もっとやる気を出して仕事や勉強しろと叱咤激励しても、ほとんど効果がないということになります。本音の部分が停滞して拒否しているからです。建前の部分で無理やり行動しても苦しいばかりです。長続きしません。むしろそれがストレスとなり心身の異常を招きます。しかしこの防衛系回路は、人類の生存には欠かすことができないものなのです。人間が防衛系回路を兼ね備えていることは敵の攻撃を回避して生き延びるために必要不可欠だったのです。危険に対して警戒心を無くした人間は、簡単に相手の餌食にされてしまいます。しかし現代社会では報酬系回路とのバランスが崩れていることが大きな問題です。「できるかも」と「できないかも」は、たいした違いはないように思いがちですが、大脳の活性部位が全く違うということに思いを馳せる時、これは見過ごすことができない問題になります。森田理論学習で人生観を確立したいと思っている人にとっては、とても大切なところになります。私たちはこの違いを理解して、なんとしても日常生活の中に「できるかも」という「かも」を育てていくことが大切になります。ではどうやって「できるかも」という「かも」を育てていくのか。これについては明日の投稿で説明します。
2021.11.26
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毎日が憂うつである。気分が落ち込みふさぎ込むことが多い。行動したいという意欲が湧いてこない。無気力で暇を持て余している。うつ状態が長期間にわたって続いている人を、脳の生化学から見てみましょう。1、血糖値が乱高下している。2、バランスのとれた食事が崩れて栄養不足に陥っている。3、神経伝達物質のセロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリンが不足している。この3つの改善を心掛けることは心の健康を維持するうえでとても大切になります。今日はこれを解説していきます。1の血糖値ですが、健常人の場合、血糖値が上がったら、すい臓から適切な量のインスリンが放出され、血糖値は元の正常な状態(血液100ミリリットル中に約100ミリグラム、これを血糖値100という)にもどる。しかし白砂糖などの甘い食品を大量にとり続けている人は、血糖値が急激に上がるために、すい臓は絶えず大量のインスリンを放出せざるを得なくなる。この場合、インスリンは脳の栄養であるブドウ糖を高速で血液中から取り除いている。このスピードは、正常範囲を超えて過剰に反応して、低血糖状態に陥ってしまうのです。この乱高下が問題です。つまり生体バランスが絶えず崩されてしまうのです。脳が低血糖状態に陥ると、正常な働きができなくなる。その結果として、頭痛、不安、イライラ、疲労、めまい、心の混乱、健忘、集中力の欠如、うつなどが発生している。白砂糖や高度に精製されたデンプンの大量摂取は、血糖値を乱高下させて心の問題を引き起こしているのです。3、伝達物質のセロトニンは不安、憂うつ感、気分の落ち込みなどを緩和させている。同じくノルアドレナリン・アドレナリンは、無気力状態を軽減させている。現在、不安の軽減のために、薬物療法としてSSRIが使われている。ルボックス、パキシル、ゾロフト、プロザックなどである。これらは、神経細胞から放出されたセロトニンが再取り込みされるのを防げることによって、セロトニンレベルを上げている。セロトニンを実際に作り出しているわけではない。ノルアドレナリンレベルを上げるためにNARIが使われる。アトモキセチンやレポキセチンなどである。その他サフラジンというモノアミン酸化酵素阻害剤は、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンレベルを上げる。イミプラミンやアミトリプチリンなどの三環系抗うつ剤は、セロトニンの利用効率を上げている。セロトニンはトリプトファンという必須アミノ酸から作られている。しかしこれを食品から取ることは難しく不足しがちとなる。ちなみに、多く含まれている食品としては、魚介類、鶏卵、豆腐、ピーナツ、バナナ、アーモンド、牛乳、チーズなどがある。食事のバランスを意識することが重要になる。トリプトファンは直接セロトニンに変換されるのではなく、いったん5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)に置き換えられる。これは「グリフォニア・シンプリアォリア」という種から抽出された天然物質に含まれているという。5-HTPは安価である。その上副作用は抗うつ剤にくらべて非常に少ない。しかし安価であるがゆえに、効果があっても無視されている。トリプトファンからセロトニン作り出す化学反応は大変複雑である。いくつものステップがあるが、体内でこの化学反応を進めているのが、生体触媒の酵素である。だが酵素と言えども、ビタミンやミネラルといった協力者がいないと実力を発揮できない。酵素を助けるビタミンB群、ビタミンC、亜鉛、葉酸、マグネシウムなどが欠かせない。これらの微量要素を補給するには、肉、魚、野菜、果物など万遍なく摂取することが大切である。食事の片寄は避ける必要がある。慢性的な不安や無気力状態を改善するためには、脳の生体反応の学習が有効です。参考図書をあげておきます。「食べ物を変えれば脳が変わる」 生田哲 PHP新書
2021.11.24
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ニューロンは軸索という突起が伸びて、他のニューロンとつながっています。このネットワークのことをシナプスといいます。このネットワークは、生後3年目で1億5000万個になるそうです。これは誰でも共通しています。その後はどうなるか。3歳から15歳の間で、使うネットワークと使わないネットワークの選別を始めるのです。そして、半分ぐらいのネットワークを廃棄するという作業を始めるそうです。生きていくにはシナプスが多すぎて、かえって不都合が起きるのだと思われます。このことを「シナプスの刈込現象」といいます。これも誰にでも起こる現象です。16歳の時点で半分くらいになり、刈込作業は終了します。このようにして、人生の早い段階で、一人一人独自の脳のネットワークが作られて、私たちはこの脳とともにその後の人生を過ごしていくことになります。この過程で大事なことは、3歳から15歳のネットワークの選別と廃棄をどのように行うかということです。これには日常生活をどのように送るかが影響します。この時期にテレビゲームや英才教育を施して過ごさせることはもったいないと思います。親心で子供の意思に関係なく、早くから能力開発を行うやり方も問題です。最近、発達障害、自閉症、統合失調症、うつ状態などが問題になっていますが、その発生原因の一つに関わっているのかもしれません。刈込時期は、特に五感を鍛える必要があります。見る、聞く、触る、味わう、匂うなどの感覚を鍛える経験をどんどん積ませることです。家になかで、じっとした生活するだけでは不十分です。またテレビをつけっぱなしにして、冷暖房を効かせて、清涼飲料水やおやつの食べ放題というのはこの刈込作業がうまくいかなくなるのです。自然の中で、泥んこになって遊ぶ。砂遊び、水遊び、遊戯遊び。魚釣り、キャンプなどなど。犬や猫、昆虫などいろいろな動植物と触れ合う。親や兄弟、友達などとの触れ合う時間をたくさん作る。手を使い、足をつかい、どんどん動き回る。ミスや失敗を含めて、雑多な数多くの経験を積むことが有効なのです。これは感覚的経験を積ませるということです。好奇心の強い子供、興味や関心を持てる子供、粘り強い子供、分析力のある子供、体力のある子供、対人関係の持ち方、打たれ強い子供などはこの時期の過ごし方によって決まるのです。こうした感覚的な経験がないと、この手のネットワークは形成されません。無気力、無関心、無感動な人間になります。神経症の原因となるものです。廃用性委縮現象が起きて、この期間を超えてしまうと、すでに手遅れとなるのです。子育て中の親や祖父母の方は、ぜひとも留意していただきたいと思います。
2020.09.29
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2014年4月1日に脳細胞のミエリン化について投稿しました。よく読まれている投稿です。ミエリン化とは、今まで有線だった脳細胞の軸索が、光ファイバーに置き換えられるようなものです。情報の伝達が4Gから5G、6Gへとグレードアップされるようなものです。これで動画を大容量で、ストレスなく長時間見られるようになります。情報、教育、医療、生産、物流、交通などの仕組みがガラッと変わるようになります。例えば自動運転で眠っているうちに目的地についてしまう。臨場感のある動画映像が家にいながら楽しめるようになります。脳細胞のミエリン化は、神経と神経をつなぐ軸索に、オリゴデントロサイトが巻き付いて太くなるそうです。太くなると頭の回転が早くなる。1を聞いて2を知るというような状態になります。そうでない人と比べると、一目瞭然です。あの人は生まれつき頭がよいので、逆立ちしても勝てないと思っていることは、実は認識の間違いということです。日常茶飯事、好奇心、興味や関心を持ったことに、一心不乱に取り組んでいるうちに、脳細胞のミエリン化は誰でも可能になるのです。小さいころから楽器の演奏などをしていると、ミエリン化が起きるといわれています。これは以前の投稿でご紹介しました。つまり必要に応じで、脳細胞は作り変えられるものであることを認識した方がよい。必要を感じなければ、脳細胞が成長することはない。廃用性委縮が口を開けて待っているということになります。大学入試の時、全国模擬テストというのがありました。ここで全国1位になった人がいます。ほとんどの科目で100点満点に近い成績を出しています。東大医学部にもトップの成績で合格できるそうです。この人の脳細胞では、ミエリン化が間違いなく起きていたのだろうと思います。その方が脳の鍛え方を紹介してくれていました。これが大変興味をそそりました。徒然草を音読しなからすべて暗記したというのです。徒然草は全部で243段まであります。序段では、「つれづれなるままに、日くらし、硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものくるほしけれ」で始まります。歌の歌詞を読むようでテンポがよいのです。仁和寺の法師の話は53段にでてまいります。ちなみに意味は分からなくても、どんどん音読して、暗記することが大切です。全部を暗記して、スラスラと口から出てくるようになることが最終目標です。思っただけでも楽しそうです。するとどんなことが起きたのか。自分でもびっくりするくらい、頭の回転が良くなったそうです。知らず知らずのうちに、脳のミエリン化が起きていたのです。数学でも、物理でも、化学でも簡単に理解できるようになってきた。応用問題も次々と解けるようになった。簡単に理解できるから、ますます興味や関心が広がって深まっていく。つまり古文だけではなく、あらゆる方面の学習のスビートが上がってきたのだそうです。だから暗記することを、ガリ勉だなどといって、馬鹿にしてはいけないのです。暗記する力は、脳細胞そのものを変えてしまうのです。徒然草の代わりに古事記でもよいそうです。古事記は森田先生も推奨されていましたね。神話の話で、非科学的な話のようですが、音読して覚えてしまうことは、脳を成長させるということです。森田先生は小さいころ、父親から、漢詩を覚えさせられていましたね。その時は反発されていたようですが、脳細胞が鍛えられて、後々役に立っていたのではないでしょうか。今現在子育てをされている方は、応用されてみたらいかがでしょうか。その際、子どもに押し付けるのではなく、親が率先して取り組むことです。子どもは親の後姿を見て反発しながらも、同じような行動をとりながら成長していくのです。年配者はボケ防止のために、取り組んでみたらいかがでしょうか。私はカラオケが好きなので、歌の歌詞を覚えることが多いです。いっぺんに覚えられなくても、森田理論で教わった連想法を活用すると、いつの間にか覚えてしまいます。すると普段の生活の中で、自然に歌を口ずさむようになります。記憶する努力は、脳細胞を鍛えて、認知症を遠ざけることにつながります。こんなにうれしいことはありませんね。
2020.09.24
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ドーパミンという神経伝達物質がある。これは神経を興奮させて、快感と陶酔感を与える。また、攻撃性、創造性、運動機能などを調整させる働きがある。この他、情動や認知機能に大切な働きをしているという。ドーパミンの働きが弱いと、沈みがちになり、意欲がなくなり、活動性が失われていく。気づき、発見、アイデア、工夫などとは無縁になる。ですからドーパミンをある程度賦活させることはとても大切なのである。猿を使った次のような実験がある。1回目は、目の前に特定の色が表示されて、レバーを引くと必ず報酬がもらえる。2回目は、別の色が示され、レバーを引いても報酬はもらえない。3回目は、また別の色が示されて、猿がレバーを引くと、報酬は2回に一回だけ与えられる。それもランダムに与えられるようになっている。1回目の実験ではドーパミンレベルは最初は上がった。しかしその後は上がらなかった。レバーを引けば必ず報酬がもらえるので、何も考える必要がないからである。2回目の実験では、ドーパミンレベルは激しく上がった。ある色では報酬がもらえるのに、別の色では報酬がもらえないというストレスを抱えたためだと思われる。3回目の実験が面白い。報酬がもらえる色でレバーを引いてもその確率は50%しかない。猿はどうして報酬がもらえるときともらえないときがあるのだろうと不思議に思うのだろう。この時報酬がもらえるとドーパミンレベルは激しく上昇した。ところが驚くことに、報酬をもらえないときでも、ドーパミンレベルは上昇していたのである。猿の頭では、ランダムなエサの与え方について、頭の中でいろいろとそのからくりを理解しようともがいていたということだと思う。人間の場合も全く同じです。目の前の自然現象や人間関係などで、今の自分の頭では理解不能、パターンが読めないという状況に出くわすと、自分が納得できる理屈を追求していくという特徴があるのです。その結果として、ドーパミンレベルが上昇して、感性が鋭くなる。気づき、アイデア、工夫、発見などが次々と生まれて、意欲が高まり、行動的となるのである。ですから目の前に解決すべき問題や課題が存在することは、とても大切なのです。不安や恐怖、違和感、不快感などは、それ自体はとても嫌なものです。ところが逆に考えると、それらは自分が人間らしく生きるための食べ物のようなものなのです。神経症に生まれた私たちは、感受性が鋭く、理智的で分析力が強いといわれています。それらを自分を苦しめる厄介者として取り扱うのではなく、自分を成長させて、生きがいをもたらすものとして認識していくことが大切です。それらを乗り越えて、これから先の生き方を考え直してみなさいという課題を与えられたということなのですから。そのために森田理論の学習という強力なツールがあるのです。自分一人では途中で挫折してしまうかもしれません。でも私たちは、自助グループを持っています。みんなで助けあいながら、前進していけば、達成できる課題となるのです。
2019.09.22
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心の病気になる人は、脳内のセロトニンの量が減退しています。セロトニンとは「幸せ物質」と呼ばれている神経伝達物質です。主な働きは歓喜や快楽を伝えることです。セロトニンが不足するとイライラしてキレやすくなります。精神的に不安定になり、無気力、無関心、無感動にもなります。セロトニンは脳で作られるのではありません。すべて腸で作られるものだということを知っておいたほうがよいと思います。最近SSRIというあたかもセロトニンを増やすかのようなようなイメージを与えている薬があります。決してセロトニンを新たに作りだしている薬ではない、少ないセロトニンが再吸収されてしまわないように再吸収を阻害するだけの薬なのだ。これが夢のような薬だと宣伝するのは何か違和感がある。人体のセロトニンの量は全体で約10mgあります。セロトニンの前駆体は腸で作られます。そのうち9割はセロトニンとなって腸内にとどまります。残り1割が脳や他の臓器へと送り出されます。脳にあるセロトニンは、全体量のわずか2%にすぎません。この2%のセロトニンが脳内で働き、人間の精神活動に大きく関与しているのです。うつ病を治すには、脳内のセロトニンの量を回復させ、精神を安定させる必要があります。そこで、うつ病になると「乳製品や玉子。肉、魚、大豆製品を多く食べましょう」と食事指導されます。セロトニンはタンパク質に含まれるトリプトファンという必須アミノ酸(人間の体内では作りだすことのできないアミノ酸で9種類ある)を原料にして作られるからです。しかし、実際にはそれらを食べるだけでは脳内のセロトニン量は上昇しません。タンパク質がトリプトファンに分解され、そこからセロトニンの前駆体が合成されるまでには、ビタミンCや葉酸、ナイアシン、ビタミンB6などのビタミン類が必要だからです。ところが人間の腸自体はビタミン類を合成する能力を持っていません。このビタミン類を合成しているのが実は腸内細菌です。問題なのはその中身です。腸内の日和見菌、悪玉菌、善玉菌のバランスが良好に保たれていなければ、腸内のビタミン合成能力は著しく低下するという悪循環を招いているのです。うつ病の人の食事を調査すると、加工食品、ファーストフード、コンビニ弁当、スナック菓子、甘いケーキなどで手軽でかたよった食事を好む傾向が見られます。好きなもの、手軽なものばかりを食べていると腸内環境のバランスが乱れて、悪玉菌優勢の腸になるために、セロトニンの合成力が衰えます。これによって精神が安定せず、うつ状態が引き起こされることになるのです。精神障害の原因は脳にあると思いがちですが、よく考えてみると腸にあります。さらに詳しく見てみると、2万種類、1000兆個あるという腸内細菌の働きにあります。その腸内細菌のバランスが人間の精神生活に大きな影響を及ぼしているのです。(人の命は腸が9割 藤田絋一郎 ワニブック 106ページより要旨引用)
2019.07.28
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