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08:00 朝食:カレーライス。
12:30 昼食:チャーハン。
夕刻、散歩がてら近所に買い物に出る。長時間のPCや読書のせいか、視力がかなり落ちてしまっている。顔見知りと擦れ違い様に気付いて慌てて挨拶。
19:30 夕飯:ポテトサラダ、赤魚の粕漬けにて日本酒。
22:00頃、 就寝。
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武田泰淳「F花園十九号」のレジュメ2。
<生と死の並立状態>
いずれにせよこれが終戦後、丘のベッドに忍びよって来た女の身体であり、その血だらけの屍の傍に彼が立っていることだけは疑いようがない。
<特殊な状況設定の意図するもの>
不可解な殺人事件が発生しても、犯人を捜査する機関も人員も日本側には全く持ち合わせがなかった。中国側の警察も(中略)抗戦地帯からの優秀な警察官はまだ到着していなかった。そのような司法権の届かぬ場所(それは到るところにある)では、誰が犯人かを問ういとますらない。人々は殺し、殺され、誰も永久にそれを裁くことはできない。
<発見直後の心理描写>
謝の屍にからまるその疑念と不安は(中略)さらに重苦しく丘をしめつけた。いまいましいことに、生きている間はいつ忘れてもよいとたかをくくっていた広東女は、屍となってから急になれなれしく丘の全身に密着してくるのだ。(中略)女は屍と化すことによって、かえってこの十九号いっぱいに生きはじめている。
<冬子来訪時の心理描写>
女(冬子)が十九号に入った瞬間から、三階の回転椅子に置かれたままの屍がいつのまにか二つの天井を通して、一階まで圧力を加えはじめた気がするのである。
<丘と冬子の意思のズレ>
夫が武昌からもどらぬ前に、どこかへ二人で隠れてしまおう、その相談で女は何回も男の家を訪ねている。「彼が上海にもどったら、正式に打ち明けて」という男の意見を、女は不誠意と認めた。「あなたという人は、いつも柵をかまえていて、中がつかめない」そう批判してもどかしがった。
<謝が語った恋愛観>
「戦争と革命の時代には、恋愛はすべて死につきまとわれます。血の匂い、屍の匂いに包まれて、男と女は相抱くのです。ああ、今こそ新の恋愛の世紀がはじまっているのですわ。卑怯者にはもはや恋愛は許されない。死や殺人をおそれぬ者だけが恋愛をする権利を持っているんだわ」
<謝が問う冬子への丘の気持>
「冬子さんのことは? あのひとはあなたと心中でもする覚悟らしいですね」
冬子に夫があることを、謝はアマから聴き知っているにちがいなかった。「あなたもその決心じゃないの」
「とんでもない」と丘が笑うのにつれて女も低く笑ったが、互いの笑いの意味はひどくかけ離れて聞こえた。
<恋愛や人間の死について語りたいという丘に冬子は>
「あなたにそんな深刻な問題を語る資格なんかないわ、ねえ呉さん」
「だってあなたには愛情というものがどんなものだかわかってないらしいもの」
<謝殺害を告白した呉は丘に>
「責任は全部わたしにある。自分の感情で、自分の方針の下に、自分の力で自分の恋人を殺したんです。その当人のわたしの現在の気持ちといえば、やっぱり一種の悲しみですよ。悲哀ですね。(中略)正当の理由があり、必要にせまられてやったことです。おや、あなたは顔をしかめましたね。怒りと苦しみがありありとあなたの表情にあらわれました」
「失礼だが恐怖、それに憎しみと嫌悪の念、それもまじっていますね。(中略)自分では冷酷とも無残とも思っていませんね。ただわたしは仕事の関係上、ひどく事務的なだけなんです。ことによったらあなたの方が冷酷な人間かもしれませんよ。内心わたしはそう判定しますがね。もっともその場に立ちいたらなければ、自分がどんな性格かわからずじまいに終わるもんですがね」
「(中略)わたしだちとは謝さんとわたしだよ。わたしだちは一心同体だからね」
「一心同体? それは何のことかね」
「たとえ片方は死んでも、二人の愛情は永久に残るということだよ」
「………」
「わたしは謝さんを愛していたし、今でも愛しているからね」
<謝殺害の真相を知った冬子の反応>
三階の屍を人一倍意識しておびえ切っているはずの彼女が、かえって活気づいているのは、すきま風にゆらぎねじれて消える寸前の蠟燭の如くはかないあでやかさであろう。それにしてもその変貌の原因は? それは呉が何くわぬ面持ちで応接間にすべり込んでくる、その姿を認めたときの彼女の全身が吸い寄せられるように発火した、その好ましからぬ生理現象にある、と丘は感じた。
………
以降、明日記載の予定。