音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2009年01月02日
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カテゴリ: 映画

結局最近出たDVDを見た感想をひとつ。
「いのちの食べ方」みたいな、ドキュメンタリーかと思ったのですが、「ダーウィンの悪夢」のような先進国の発展途上国からの搾取、いわゆる南北問題がテーマでした。
それほどあからさまに訴えているわけではないのですが、状況証拠を積み上げていくように、その訴えがじわじわと心に沁み渡ってくるような作りで、良かったと思います。
この手のドキュメンタリーにありがちな映像の汚さはなく、とても綺麗な映像で、アフリカの笛や太鼓を使った音楽も上質で、ドキュメンタリーとしての仕上がりは最上級だと思います。
 冒頭、アメリカのスペシャルティ・コーヒー協会(SCAA)の国際カッピング・コンテストの模様が映し出されます。
味を見るのにスプーンで一杯だけすくって「ずずっ」と音を出して飲むところが印象的です。
そこで、「最高のコーヒーに出会った」という話が聞かれます。
それはエチオピア産のハーラー豆でした。

印象的なのはキレンソ・モニコサ農協を訪問したい時の農民たちとの会話です。
メスケラ氏は欧米で飲むコーヒーの値段はいくらかと問いかけます。
農民たちは答えられません。
メスケラ氏はコーヒー1杯が25ブル(4米ドル)で、コーヒー豆1kgで80杯のコーヒーができると続けます。
そうすると、1kgのコーヒー豆は2000ブル(230米ドル)になるわけです。
メスケラ氏は続けて、1kgの豆をいくらで買ってもらっているかと農民たちに問いかけます。
最高でも2ブルだという答えが返ってきます。
この値段の背景には、コーヒーの国際協定が1989年に破綻し、それ以来コーヒー豆の価格が30年前の値段になってしまったことがあります。
何故、生産者の売り値がこんなに安いのかというと、ニューヨークとロンドンの商品取引市場で値段が決まってしまうからです。
この値段によりすべてが決まってしまうところが問題だと映画は主張します。
結局しわ寄せは弱いところに来るため、生産者は流通業者の言い値で売るしかないという実態が明らかにされます。

農民たちはこの窮状に対し、欧米では禁じられているチャットという麻薬を栽培して収入を増やそうとしています。
このチャットは20本くらいで30ブルにはなり、それに年2回の収穫が見込められるそうです。
 世界のコーヒーはクラフト・フーズ(Kraft Foods),ネスレ( Nestle),P&G (Procter & Gamble),サラ・リー(Sara Lee)の4つの多国籍企業に支配され、彼らの利益を守るために新たな参入も阻まれているという構図が出来上がっているのです。
流通業者も決まっているようで、クラフトに卸しているクロカ、ネスレやスターバックスに卸しているボルカフェ、ドイツのダルマイヤーなどの業者が直接買い付けに来ています。
メスケラ氏はこの流通過程を省き、焙煎業者に生産者から直接流通させることにより、コストの6割の削減を目差しているのです。

イタリアの焙煎メーカー イリーカフェ 、イギリスのテイラーズなど、品質の面からニューヨーク市場と結びついてない。
映画ではテイラーズの関係者がはっきりと指摘している。
中米では市場が1ポンド63セントなら生産コストは90セントつまり、生産者は1ポンド売ると30セントの赤字が出るという。
この状況を踏まえて、彼らはエチオピアの農民たちを救いたいと考えている。
2003年メキシコで開かれたWTOの閣僚会議の模様も描かれていました、
先進国はもっとマーケットを広げるべきだという主張をし、途上国は公平な取引をしろと迫る。
相変わらずの風景です。
それに小国は3人程度で、EUは650人も参加し、複数の部会が非公開で同時進行するという展開です。
これで公正な審議が行われるはずはありません。
しかし、悪いことはいつまでも続くはずがありません。
メスケラ氏が直接取引を行っているところを紹介してくれます。
イギリス第4位のスーパー アズダ 、アメリカの ピースコーヒー などです。
 私は今までこのようなことが今もあるとは全く知りませんでした。
何しろ、アフリカの輸出額のシェアは世界のわずか1%で、それが2%になることにより、欧米からの支援額の5倍にもなるというのですから、どちらがいいかは明らかです。
彼らが欲しているのは援助ではなく、公正な貿易です。
 最後のほうで、スターバックスのコーヒー豆を供給しているシダモの地でアメリカからの援助物資を受け取っている人たちのシーンが映し出されています。
エチオピアではこのような人たちが700万人もいるそうです。
しかし、その救援物資の袋に描かれている表示が「USA Wheat」ですから、ブラックユーモア以外の何物でもありません。
 メスケラ氏がロンドンのスーパーでフェアトレードのコーヒーの中からやっと「モカ・シダモ」を見つけるシーンは生産者のことを思うととても悲しいシーンです。
メスケラ氏が仰っているように「消費者はこのコーヒーがどこで生産され、生産者がいかに搾取されているのか」を消費者は知る義務があると思います。
私はコーヒーはあまり飲みませんが、今後、なるべくフェアトレードのコーヒーを買うように努めたいと思います。
 なお、2007年にエチオピア政府は長年争ってきた「ハーラー」「「シダモ」「イリガチェフェ」などのブランドをスターバックスにライセンスすることになったそうで、着実に彼らの努力は実を結びつつあると思います。
 監督はロンドン生まれのマークとニックのフランシス兄弟。
大げさな表現はなく、事実をして語らしめる手法が映画を観終わった後、見る者に心地よい感動を与えてくれます。
それに全編を流れる空気感が、アフリカを描いているにもかかわらず、すこしウエットに感じられるのも悪くないです。
ーまた、アフリカの民族楽器を主体としたアンドレアス・カプサリスの音楽も、大変優れています。

フェアトレード・ラベル・ジャパン



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Last updated  2020年11月15日 19時07分21秒
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