音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽
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クリスチャン・サンズ(1989-)というアメリカの技巧派ピアニストの新作を聴く。全くアンテナに引っかからなかったのだが、Reach(2017)以来、このアルバムを含めて5つのアルバムをリリースしているようだ。本当はDelux盤が出るのを待っていたのだ、追加されたのは3曲のボーナストラックだけだったので、安いロスレスを購入した。彼はクリスチャン・マクブライドのバンドに在籍しており、「Out Here」(2013)と「Live at the Village Vanguard」(2015)の2枚に参加していた。特に「Out Here」は、サンズが脚光を浴びるきっかけになった作品だという。筆者は2枚とも聴いていたが、このピアニストは印象に残っていなかった。演奏は彼を含むBetween Then and Now Trioというグループで、デンマーク出身のベース奏者フォネスベックと、スウェーデン出身のドラマー、ラスムス・キールベリという編成。この録音だけでなく、グループとしての活動を継続するようだ。なお、サンズとフォネスベックは以前、同じレーベルからリリースされた「Take One – Live at Jazzhus Montmartre」(2015)で共演していた。(未聴)コルトレーンとジョゼフ・コスマの「枯葉」が融合したような「A Giant Leaves」の新鮮な解釈が気に入ったことが、このアルバムを購入するきっかけとなった。サンズの高速アドリブが聴ける、なかなかスリリングな演奏だった。「A Giant Leaves」のエンディング・フレーズを繰り返しながら、ドラムスがソロを取るという構成もなかなか気が利いている。このトラックは良いのだが、他のトラックはそれほど魅力を感じなかった。その中では自作のバラード「Where the Light Settles」が印象的だった。その澄み切った抒情は聴き手の心に染み渡り、キース・ジャレットのバラードの世界を思い出させるような、自然な呼吸を持った感動的な演奏だった。ベースソロから始まるサンズの「Searching in Sahara」はタイトル通りサハラを疾走しているような推進力のある演奏で、僅かに感じられるアーシーなテイストも悪くない。時折繰り出される高速のアルペジオには、これでもかというほどの凄味が感じられ、エンディングの高揚もなかなかのもの。サンズのテクニックを楽しむならこの曲だろう。フォネスベックの「Where Children Still Play」も、変拍子を用いた洒落た曲で楽しめる。気になったのは「黒いオルフェ」。速いテンポなのは良いのだが、変拍子のコミカルな解釈がやや恣意的で、原曲の持ち味を損なっているように感じられる。例えていえば、エロール・ガーナーのスタンダード解釈に近いスタイルだろう。違いは、ガーナーほど徹底した個性には至っていない点か。「So Tired」は原曲より幾分遅めのテンポで、アーシーなテイストが強調されている。最後のジミー・ジュフリーによるクール・ジャズ的なナンバー「The Cop Out」では、持ち前のテクニックが見事にはまり、圧倒的な演奏を繰り広げている。アルバム全体としては、北欧のメンバーとの共演にもかかわらず、相乗効果はそれほど感じられず、サンズの独走ぶりが目立つ。ベース、ドラムスともにあまり前面へ出てこないのは、その独走ぶりに合わせているためなのかもしれない。俗にいう「才気ばしっている」という表現が適切かは分からないが、サンズは30代半ばを過ぎており、もう少し落ち着いた演奏を期待したい。付け加えるとフレージングが稚拙とは言わないが、練度が足りないところが見受けられた。現在は、テクニックに恵まれたミュージシャンにありがちな「できることは何でも見せる」という方向性が強い。今後の課題は、いかに引き算の演奏ができるかという点にあるだろう。Christian Sands:Between Then and Now(Storyville 1018546)16bit 44.1kHz Flac1.Otto Mortensen : Til Ungdommen / To the Youth (Solo Bass)2.Thomas Fonnesbæk : Hvor børn stadig leger / Where Children Still Play3.Christian Sands : Searching in Sahara4.Luiz Bonfá : Manhã de Carneval5.Otto Mortensen : Til Ungdommen (To the Youth)6.Bobby Timmons : So Tired7.John Coltrane;Joseph Kosma : A Giant Leaves (for Alex)8.Christian Sands : Where the Light Settles9.Jimmy Giuffre : The Cop OutNorth Meets West Trio:Christian Sands(p)Thomas Fonnesbæk(b)Rasmus Kihlberg(ds)Recorded:2025,Copenhagen, Denmark
2026年08月01日
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