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取り柄と言えるのはきれいな空気、夕方六時には「グリーンスリーブス」のメロディ。そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺害事件。犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女たちに投げつけられた激情の言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わせることになる─これで約束は、果たせたことになるのでしょうか?衝撃のベストセラー『告白』の著者が、悲劇の連鎖の中で「罪」と「贖罪」の意味を問う、迫真の連作ミステリ。本屋大賞受賞後第一作。 <感想> ★★★★★本書は『告白』で大ブレイクした湊かなえさんの三作目にあたる作品です。 装丁がちょっと可愛らしいんだけど中身は相変わらずのブラック路線です。 『告白』が爆発的に売れた背景はいくつかあると思いますが、作品を読んだ範囲で言えるのは本格ミステリーの面白さに加えて、小説が本来持っている「読み応え」という要素がしっかり備わっていたからだと思います。 中でも告白体で書かれた第一章は巧みで、個人的には中盤からラストにかけてのドンデン返しなんてどうでもいいよ・・・などと思ってしまいました。さて、『告白』では主人公に自らが抱える心の闇を語らせていますが、本書はその手法のみで構成されています。 15年前に起きた幼女殺人事件の現場に居合わせた被害者の友達と、その母親、4人の告白体です。 この点に関しては『告白』の二番煎じだという声もありますが「あれ」をもっと読みたいと思っていた読者の期待には充分こたえています。 特に、内面に抱える邪悪な部分をまったく自覚せずに平然と語るある人物のくだりは、これ以上やると読者はヒクというギリギリまで書いています。このあたりは見極めがうまいというか、ちょっと挑戦的だなとも感じました。一方で、グリーンスリーブスが流れる田舎の風景や、そこに住む人たちもよく描かれています。欲を言うならキリがないし、取ってつけた感じのするオチは不要な感じもしますが、新進のベストセラー作家という肩書きを持(つ)たされている湊かなえさんは、予想以上の実力をお持ちなのではないか?そんなことを感じた一冊でした。
2009.10.31
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「私」はアパートの一室でモツを串に刺し続けた。向いの部屋に住む女の背中一面には、迦陵頻伽の刺青があった。ある日、女は私の部屋の戸を開けた。「うちを連れて逃げてッ」―。圧倒的な小説作りの巧みさと見事な文章で、底辺に住む人々の情念を描き切る。直木賞受賞で文壇を騒然とさせた話題作。 <感想> ★★★★★車谷長吉キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!ってな感じの作品でした。 あまりにも暗すぎて滅入ってしまう・・と思いつつ、独特の文章表現にハマって2冊読みました。 直木賞受賞作なので、もしかしたら・・という思いはありましたが、私小説とエンターテイメントのハイブリットとも言える本書は、小説を読む楽しみを改めて感じさせてくれた一冊になりました。冒頭で独特の文章と書きましたが、ひとことで言うなら湿度と匂いを感じることの出来る文章です。 時に嫌悪感さえ覚えますが、この点は秀逸としかいいようがありません。 さらにつけ加えるなら車谷さんは相当ハードな人生を送ってきたようで、その人生観が端々にうかがえます。 現代文学の作家さん達はすごく器用で、小説とエッセイをきっちり書き分けて読者サービス(顧客確保)をするわけですが、私小説にこだわる車谷さんはそんな姿勢を微塵も見せません。 作家というよりは文士という言葉がしっくりくる稀有な存在です。さて、本書の舞台は兵庫県の尼崎。 職業を転々としながら辿りついた「私」は冷暖房もテレビもないアパートの部屋でモツを串に刺す仕事にありつきます。 周囲を取り巻くのはアンダーグラウンドに片足を突っ込んだ人ばかりで、良くも悪くも昭和を感じさせます。 前半ではそこに渦巻く情念のようなものを他所者である「私」の視点で描いていきます。 とにかく暗いんだけど、それぞれのキャラクターの繰り出す言葉は生き生きとしています。「・・男の腐れ金玉が勝手に歌歌いだすほどの器量良しやわな。・・・」これには唸ってしまいました。(笑) 不穏な空気が漂ってくる後半では、その情念が激しく動き始めます。 そのあたりから一気に加速していくわけですが、私はこの点をエンターテイメントとして捉えました。 読後感の良し悪しも読者によって異なると思います。 それを踏まえるなら万人向けとはいえません。 ただ、宮本輝さんの初期作品がお好きな方なら間違いなくハマると思います。
2009.10.29
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聖者なのか、偽善者か?「悼む人」は誰ですか。七年の歳月を費やした著者の最高到達点!善と悪、生と死が交錯する至高の愛の物語。 <感想> ★★★★☆本書は昨年下半期の直木賞受賞作です。 タイトルだけ見ると宗教観を前面に押し出した作品をイメージしてしまいがちですが、どちらかというと哲学的な側面を併せ持った作品です。 ベストセラーになった『永遠の仔』はミステリー仕立てでしたが本書ではその要素を排しています。 すなわちそれはエンターテイメント性を極力抑えたということです。 天童さんは7年掛けて書き上げたそうですが、その気迫は充分感じることができました。さて、全国の事件や事故の起きた現場を訪れ、そこで亡くなった人を悼む若い男性が本書の主人公です。 彼に関心を持つジャーナリスト、夫を殺した女性。 そして彼の母親。 この三人の視点で「悼む人」の人物像を浮き上がらせるという構成です。 それなりに起伏のあるストーリーは読者を飽きさせないし、好みもあると思いますがコクのある文章も秀逸です。ただ、問題はキャラクターの特殊性です。 私は主人公に感情移入できるようになるまでかなりの頁数を必要としました。 脇役である三人がそれなりに魅力的なので、そちらに感情移入したまま読み終えるというのもアリですが、「悼む人」の内面に触れないと著者のメッセージは心に響いてきません。世の中的には「泣ける本」として流通しているようなので、そのような読み方を否定するつもりはありません。 ただ、価格以上の見返りを求めるのであれば、ある程度時間を掛けて丁寧に読んでみることをおすすめします。費やした時間が無駄になることはありません。
2009.10.27
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小学校を卒業した春休み、私は弟のテツと川原に放置されたバスで眠った―。大人たちのトラブル、自分もまた子供から大人に変わってゆくことへの戸惑いの中で、トモミは少しずつまだ見ぬ世界に足を踏み出してゆく。ガラクタ、野良猫たち、雷の音…ばらばらだったすべてが、いつかひとつでも欠けてはならないものになっていた。少女の揺れ動く季節を瑞々しく描いた珠玉の物語。 <感想> ★★★★★子供から大人になる過程でいくつかの節目があります。 その中でも最も印象に残っているのはと問われれば中学入学時です。 制服を着て学校に行く。 英語が授業に加わる。 部活動がある。 公共交通料金が「おとな」になる。 本書の主人公はその場所に身を置いている少女です。さて、湯本作品を読むのは四作目ですが一貫しているのは祖父母(年寄り)のいる世界です。 その世界観の中で、湯本さんはさまざまな物語を紡いでいくわけですが、そのメインテーマは「死」です。 生まれてくるものがあれば死に行くものがあるのは当然の摂理で、主人公の少年少女と祖父母はその関係にあります。 本書の主人公も祖母の死に際に感じたあることがきっかけで悪夢を見るようになります。 周囲は最悪のコンディションで大人の扉の前に立たされた少女の内面を理解しようとはしないし、彼女もそれを理解してもらおうと思っていません。 湯本さんはそのあたりをドラマチックに描くのではなく、あくまで淡々と描いていきます。 それを退屈と感じるかリアルと感じるかで、この作品の評価は分かれるのではないかと思いますが、丁寧に読んでいくとあの頃の自分と出会うことができます。 余談ですが、文庫の解説は角田光代さんです。先日のニュースで、角田光代さん、11歳年下ロックバンドドラマーと結婚とあったんですが・・・結婚してたんじゃないのか????新刊が出ないなぁ~と思ってたんだけどイロイロお忙しかったんですね。これを肥やしとして一層のご活躍を期待します。(汗)
2009.10.26
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部落とは、在日とは、なぜ差別は続くのか?誰も語れなかった人間の暗部。差別への無理解と、差別が差別を生む構造。<感想> ★★★★☆本書は日本社会の中ではマイノリティーである野中広務さんと辛淑玉さんとの対談本です。 基本的にはインタビュアの辛さんが野中さんに斬りこんでいくという体裁です。 ちょっと辛さんしゃべりすぎだなぁという印象もありますが、それゆえに野中さんのホンネを巧みに引き出しています。 しかし、いま振り返ってみて、じゃあ俺に返ってきたものは何なんだと。 結局自分が有名になればなるほど、僕の出自がマスコミを通じてわかるようになってしまった。 次第にうちの家族は、親戚やいろんなところから冷たい眼差しを向けられるようになってしまった。(野中)自民党の豪腕幹事長。 小泉内閣では悪役を演じ跳梁跋扈。 マスコミが作り上げた野中さんのイメージはそのようなものだと思いますが、この本を読むとそんなイメージが一変します。 ダーティーなハト野中広務はなぜダーティーなのか?言い方を変える権力の中枢にいながらもなぜ終始ハトだったのか?街では非正規雇用の人たちが餓死寸前になっているのにそういうところ(軍備拡大)には気前よく税金を投入する。 政治家の目はどこを向いているのかと言いたくなる。弱者や虐げられた人に対する政治家の「鈍さ」は、差別と根っこでつながっていると思うのだ。(野中)(注( )内は引用者)
2009.10.25
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三年ほど前に激突されてしまった私ですが、またもや激突されてしまいました。先週の金曜日のことです。左折しよう交差店内に進入したところ、左側に止まっていた軽自動車の後退灯(バックランプ)が点いて、業務用きたあかり号(軽自動車)に向けてバックしてきます。なんなんだ!(0.0SEC)この車は何なんだ!(0.5SEC) 運転していたと思われる人が必死に乗り込もうとしてるし・・(1.5SEC) もしかして無人!!(2.5SEC) 回避しようにも前にも後ろにも車が・・・(3.5SEC)ぎゃ~(4.0SEC) 軽い衝撃があって、助手席側のドアがベコリとへこんでしまいました。相手の方はちょっとだけ降りようと思って、ギアをPにいれたつもりだったんだけどRに入ってしまったと言ってました。おのれ、どこの誰にぶつけとるんじゃ~~ とか、首が・・・・ などと言ってみたいものですが、車は会社のもので、しかも派遣社員なんですと、うな垂れながら事情を語るオッサンを責める気になれませんでした。というわけではありませんが、のびのびになっていた夏休みをやっととることができました。 愛知にある明治村に行きたいなぁ~などと考えておりますが・・
2009.10.25
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吉祥天のような貌と、獰猛酷薄を併せ持つ祖母は、闇の高利貸しだった。陰気な癇癪持ちで、没落した家を背負わされた父は、発狂した。銀の匙を堅く銜えた塩壷を、執拗に打砕いていた叔父は、首を縊った。そして私は、所詮叛逆でしかないと知りつつ、私小説という名の悪事を生きようと思った。―反時代的毒虫が二十余年にわたり書き継いだ、生前の遺稿6篇。第6回三島由紀夫文学賞。芸術選奨文部大臣新人賞。 <感想> ★★★★☆以前、どこかで「文学で身を持ち崩す」という言葉を目にしました。本はあくまで娯楽と割り切っているいる私ですが、おそらくこんな小説ばかり読んでいるとそうなるんだろうな・・と思います。だったら読まないようにすればいいじゃないか!!って話なんだけど車谷作品とは波長が合ってしまったようで困ってます。ある外国人が日本家屋の中にある独特の暗さが日本文化の魅力だと言ってましたが、まさしくそんな感じの一冊でした。 なんか、ぜんぜん感想になっていないんだけど、もう一冊買っちゃったんだよね。 どうしませう・・・・。
2009.10.24
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今、「バスジャック」がブームである―。バスジャックが娯楽として認知されて、様式美を備えるようになった不条理な社会を描く表題作。回覧板で知らされた謎の設備「二階扉」を設置しようと奮闘する男を描く「二階扉をつけてください」、大切な存在との別れを抒情豊かに描く「送りの夏」など、著者の才能を証明する七つの物語。<感想> ★★★★★小説を評する際に珠玉の・・などという言葉が使われますが、本書はまさにそのお手本のような作品集です。さて、三崎亜紀さんの作品を全部読んでいないのではっきり言えませんがシュールな作品が多いように思えます。 デビュー作の『となり町戦争』を読んだときに文体が村上春樹さんに似ているなぁ~という印象でしたが、私は最も大切な人物を忘れていました。 星新一です。 最近では間瀬元朗さんの『イキガミ』との関係が云々などと話題になりましたが、私たちの世代では圧倒的な存在感のあった作家で「世にも奇妙な物語」というテレビシリーズも初期の頃は彼の作品を数多く映像化していました。 7作中6作まではそんな星新一ティストを味わうことが出来ます。 最後の中編もシュールといえばシュールですが、ウルウル系な仕上がりになってています。 断片的な部分を繋ぎ合わせると小川洋子さんの作風に近いかなぁ~とも思います。 ここまで4人の作家の名前を出しましたが、それでは三崎亜紀さんのオリジナリティーがないのか?と問われれば否です。 4人の作家との最大の違いは着地点がしっかり確保されているという点です。 読者を異界に放り投げたままで終わるというスタイルは余韻を残すものの若干の消化不良を起こしがちです。 もちろん好みによるわけですが、この作品集の結末はあらゆる読者の溜飲をさげるようなカタチになっています。 個人的には『送りの夏』と『動物園』が秀逸だと感じましたが、一作目の『二階扉をつけてください』もインパクトがありました。 ところで、あなた回覧板はちゃんと読んでますか?
2009.10.17
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プロフェッサー鈴木が消えたら、トイレを探せ。そんなうわさが関係者の間に流れるほど、いつの間にかトイレの研究にはまってしまった寄生虫博士。馬桶は、「おまる」の原型か、糞便を豚や魚の餌に使うためのトイレの工夫。戸もなければ仕切りもないトイレにびっくりしながらも、絶対に許されない男女共用トイレに、中国文化の一面を知る。また、グルメには見逃せない中国の寄生虫の話題も一杯。<感想> ★★★☆☆中国のトイレ事情について初めて知ったのは相原コージさんの『コージ苑』でした。 なぜ、そんなコトを記憶しているかといえばその事実に驚愕したからです。 だって、トイレの個室にドアがないんですぜ!!さて、著者は寄生虫学の学者です。 この手の本は、古今東西の資料を集めて検証するモノ。 有り余る知識をさりげなく自慢するモノなどがあったりするわけですが、本書は純然たるトイレヲタク本です。 顔つきも似ているし、同じ文字(漢字)を用いる文化まで共有しながらトイレに対する考えだけはどうしてこんなに違うのか?が本書のテーマです。 しかし、とにかく俺はトイレが好きでタマラナインダヨという著者の一途な想いが全編を通じて語られているせいかメインテーマも翳みがちです。 だが、そこがいい!!(笑)
2009.10.16
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昭和初期を舞台にした、仰天“女中小説”連作。 【目次】ヒモの手紙/すみの話/文士のはなし <感想> ★★★★☆本書は中島京子さんの最新刊です。中島京子さんと言えば田山花袋の『蒲団』をトリビュートした『FUTON』が代表作です。 本書はその第三弾で林芙美子『女中の手紙』。 吉屋信子『たまの話』。 永井荷風『女中の話』。 この三作を秋葉原のメイドカフェに通うおばあさんの回想というフィルターを通して連作に仕上げています。 さて、基になった作品をひとつも読んでないのでたしかなことはいえませんが、林芙美子『女中の手紙』をトリビュートした『ヒモの手紙』はTHAT'S林芙美子(笑)という内容で、各々代表作ではないものの作家の個性を色濃く反映した作品をチョイスして、それほど手は加えていないのではないか?という印象を受けました。近代文学や通俗小説を検証するなどという堅い考えではなく、自立を目指していた女性が当時どのような生き方をしていたのか?的な読み方の出来る作品です。吉屋信子の作品はたびたび昼ドラ化されているもののその名前を知る人はそれほど多くないと思います。 林芙美子に関してもいまだに文庫が残っているのはひとえに森光子さんの功績によるものが大きいと思います。 どちらにしても消滅危惧作家なので、ちょっと興味があるという方は本書をきっかけにしてみるのもいいかもしれません。
2009.10.10
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死んでも死に切れない―。泣く泣く妻を殺め、女に狂い借金まみれの挙句に自殺した初老の男。若くして自殺したエキセントリックな叔父の後日談。事業失敗で一家心中をはかり、二人の子供を道連れにした夫婦。強×殺人の憂き目にあった高校時代の女友達。救済でもなく逃避でもない、死者に捧ぐ鎮魂の短篇集。 <感想> ★★★★☆インパクトのある装丁で思わずジャケ買いしてしまいました。車谷長吉さんは初読みの作家さんですが、平成九年に直木賞を受賞しています。 いわゆるベストセラーとは一線を隔し、私小説っぽい作品をポツリポツリとお書きになっているようです。さて、あらすじを読むだけでも暗い気持ちになりますが、読むともっと暗い気持ちになります。 登場人物は平成ニッポンの中で追い詰められていく人たちです。 もう少し救いとか癒しがあってもいいんじゃないかと思ったりもするわけですが、一方で年間自殺者数3万という数はそれをまったくの絵空事に変えてしまう現実なのではないかと思います。 しかし、追い詰められて死を選択する人々に寄り添う著者の視線は穏やかで優しささえ感じられます。 それは彼らを一方的に負け組みと定義し、切り捨てている社会に対するアンチテーゼなのではないかと思います。 車谷作品をもう一作読んでみたくなりました。
2009.10.09
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一週間後に自殺しよう。自らに「自由死刑」を執行するのだ。金曜日に男はそう決心した。では、その執行日までどのように過ごすべきか?酒池肉林の享楽か、復讐や救済か、それとも…。しかし、些細な事から男の計画には次次と邪魔が入ることになる。臓器売買、殺し屋、美女との逃避行―。果たして男は無事に死ねるのか。死への欲望と歓喜、そして死ぬ自由の過酷さを描く傑作長編。 <感想> ★★★☆☆名前はよく聞くけど島田雅彦さんは初読みです。なんかムズカシそうだなぁ~という先入観で避けていましたが、あらすじを読んで面白そうなのでとりあえず読んでみることにしました。さて、本書は一週間後に自殺しようと決めた主人公の7日間を描いています。 この作品が島田作品の中でどのような位置づけをされているのかわかりませんが、文章も平易だしエンターテイメントの要素も強いのでとても読みやすい作品でした。著者はどのような着地点を用意しているのか・・・初読みの作家だけにその興味がページをめくる原動力になりました。 Wikipediaによれば、村上春樹を全否定しているとのことですが、この作品に限って言えば文体は異なるものの設定や展開は村上春樹さんに似ているような印象を受けました。しかし、この装丁はいったい・・・・タレント本じゃないんだからさ(汗)
2009.10.04
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明日の私は、誰とごはんを食べるの?人が人と関わる意味って、何?25歳の私が“世界”に触れる、一瞬の奇跡。『人のセックスを笑うな』の著者が贈る文藝賞受賞第一作。<感想> ★★★★☆山崎ナオコーラさんは、いい意味でもそうでない意味でも純文学の作家です。 ストーリーを追うのではなく文章や作品に漂う雰囲気を味わう。 あっさりした文章に、ちょっととぼけた語り口が個人的にはツボですが、あっさりし過ぎていてストーリーに起伏がないという感想もよく目にします。さて、それを踏まえるなら本書は「ちょっとちがうな」という印象をもちました。 主人公は若いOLで、常に他人との距離感を気にしています。 同僚と行くランチより一人のランチを選択する主人公。 そんな主人公の今と中学時代を並行して描いていくわけですが、中学時代の主人公を描く筆が普段のナオコーラさんらしくありません。 キャラクター斬りこんで行くというスタイルです。 角田光代さんが最も得意としている描き方ですが、突き放す角田さんと比較するならナオコーラさんは反発しながらも共感できるところを探すという描き方です。 「あんたのそういうトコあんまり好きじゃないけど、なんとなく判るよ」という視点は読んでいて優しい気持ちになることが出来ます。ランチはいつも一人という方はもちろんですが、ホントは職場の人間の悪口や噂話をしながら同僚とするランチは苦痛なんだよね・・・と感じている方におススメです。
2009.10.03
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