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2006年2月24日 今日のポイント 地下資源こそロシアで最も重要な投資対象である資源セクターの復興がダイナミックな投資環境を演出しているロシアはBRICs各国中最も大胆に資本主義への移行を推進しているひとたび大きな経済混乱を経験したことで、心機一転ロシアの株式市場はマルチプル・エクスパンションの真っ只中にある法制度、民主主義の定着などの面で脆弱さを残す目先主義が蔓延デモグラフィー(人口動態)面での不安地下経済の弊害腐敗の進行やアルコール中毒などの社会的コストが憂慮されるロシアの良い点今日からロシアについて見てゆくことにします。ロシアに投資する際に最も重要なポイントは同国経済が地下資源に大きく依存している点でしょう。実際、ロシアの石油ならびに天然ガスの産業は同国の外貨収入の実に50%を稼ぎ出しています。また、税収に占めるこれらエネルギー産業の比重も40%にのぼります。ロシアに石油や天然ガスがどれだけあるか?という問題ですが、BPのスタティスティカル・レビューによると2004年時点での石油の埋蔵量は723億バレルで世界第7位(埋蔵量シェアで世界の6.1%)、一方、天然ガスの埋蔵量は48兆立方メートルで世界第1位(埋蔵量シェアは26.7%)です。(*) ロシアの資源産業は80年代に急激な生産性の低下を招きました。この原因として:最新技術の導入が遅れたこと生産に際して数量目標の達成ばかりが重視され、油田を傷めたこと新しい大規模な油田開発に必要な資本へのアクセスが限られていたことなど、複合的な理由が考えられます。こうした状況はソ連邦崩壊後、西側の技術や資本に対するアクセスが可能になった為、急改善しています。投資家の立場から見てロシアのストーリーがエキサイティングな理由は、これまでいい加減な運営のされ方をしてきた資産が一連の改革でどんどん新しいポテンシャルを見出しているところにあります。 さらにロシアの投資対象としての魅力はその変化のスピードが速い点でしょう。一般にロシア人は粘り強い性格である一方で保守的であるとされています。ところが、強力なリーダーを得ると、時としてたいへん積極的に変化を受け入れる時期があります。これは18世紀にピョートル大帝が造船技術をはじめとする、ありとあらゆる西欧文化をどしどし取り入れてロシアの近代化に貢献して以来、同国の伝統になっています。言うまでも無く現在のロシアはプーチン大統領という優れたリーダーを持っていますから、これが大いにプラスに働いているわけです。 現在のロシアの状況は、日本で言えばちょうど文明開化の時に似ています。従って、外国のビジネス習慣や価値観や制度を積極的に受け入れるムードになっているわけです。中国の場合、中華思想というのがありますし、インドも安易に外国のものを受け入れないぞという抵抗が感じられます。その点、ロシアの場合、屈託がありません。いきなり欧米の資本主義のゲームに飛び込んで、欧米の資本市場以上に過激な投資利潤の追求に走る、、、この「エクストリーム・キャピタリズム(極限的資本主義)」の風潮がロシアの経済を今、大きく変えている原動力なのです。 ロシア経済はソ連邦の崩壊後、所謂、「ショック療法」と呼ばれる乱暴なやり方で無理やり市場経済に移行しました。新体制導入直後はたいへんな経済の混乱、国民の困窮化を招いています。改革に伴う痛みをいっぺんに背負い込んだことで、「もうこれ以上、悪くなれない」というくらい、堕ちるところまで堕ちました。逆説的な言い方ですが、株式投資の立場から言えばそういう風に徹底的に悪材料が出ると「アク抜け」と言って、心機一転、新しいスタートをきりやすいものです。事実、1998年のルーブル危機を経験したロシアの最近の財政政策はどこかの国も爪の垢を煎じて飲ませた方が良いくらい健全で手堅い政策になっています。 ロシアの株式市場について見ると、ガスプロムの持ち株構造改革に代表されるように政界と財界が一丸となった大胆な市場改革が大きな成果を生み始めています。ロシアの株式市場は長年、割安に放置されてきたのですが、そういう一連の改革が評価されて現在は強烈なマルチプル・エクスパンション(株価評価の底上げ)が起こっています。 ロシアの悪い点さて、ロシアの悪い点ですが、先ず私有財産の保護、少数株主権の尊重、地下資源法やその他の企業活動を巡る法律、さらに税法の解釈など、ビジネスを行なう上でのルール全般に恣意性の余地が大きく、かつ不透明である点でしょう。 ロシアは後で見るように体裁としては三権分立、二院制の議会政治などのカタチは出来ています。しかし、実際問題としてロシアの政党は大統領の支持母体として「後付け」的にこしらえられた色合いが強く、有権者が政策パッケージを選ぶというところまでには行っていません。さらに大統領の権限が大変強く、大統領の良し悪しが国家運営の巧拙をかなり決定付けてしまいます。プーチン大統領があまりに有能だっただけに、「プーチン後」を考えると不安が残ります。 また、ロシア産業界に特徴的な傾向として「今は良いけれど、いつかまた社会混乱が来る」という悲観的、ないしは運命論的な潜在意識が経営者や国民の中に深く根ざしており、これが「今のうちにせいぜい楽しんでおこう」という目先主義を生んでいます。具体的には長期的視野に立った先行投資などの面でロシア企業はややもすれば手を抜く傾向があるということです。 次にデモグラフィー(人口動態)的に懸念すべきトレンドが見られる点も指摘しておきます。ロシアの平均寿命は男性が57.3歳、女性が71.1歳でこの数字は1990年代前半に急速に悪化しました。特に男性の平均寿命の低さはアフリカなどの低開発国並みです。これは後に述べるアルコール中毒の問題や組織犯罪などの蔓延、医療サービスの質の低下などが原因だとされています。こうした人口動態的トレンドは将来ロシアに大きな消費セクターが出現する可能性を阻む要因として無視できないと思います。 さらにロシアの場合、地下経済の存在がたいへん大きく、これがさまざまな弊害の原因となっています。地下経済の存在自体はマイナス面だけとは言えないと思いますが、国家の歳入ベースの拡充などの面から考えると重要な問題です。 また、最近、ロシア経済は絶好調であるにもかかわらず、腐敗の進行やアルコール中毒の蔓延などの問題は一層、深刻化しています。それらがもたらす社会的コストの大きさは憂慮すべき問題ではないでしょうか? (*)なお、埋蔵量の統計については米国地質調査所(US Geological Survey、略してUSGS)などの調査機関も数字を出しています。ロシアの場合、特に原油の埋蔵量に関してBPの数字とUSGSの数字が2倍も開きがあり、USGSの数字(1295億バレル、2000年)の方が大きいです。株式市場の投資家の殆どはBPの資料を先ず参考にすると思いますのでここではBPの資料を紹介しました。
2006年02月28日
2006年2月21日インドの製薬業界(3) 今日のポイント インドでは国民の3.5%しか健康保険に加入していない。 政府が独断で薬価を統制する余地が残っている。 インドの薬品株は一般に割高である。 医療費の負担についてさて、インドの薬品市場のポテンシャルを考える場合、考慮しないといけない点のひとつは誰が費用を負担するか?という問題です。インドの場合、国民の3.5%しか健康保険に加入していません。今、インド政府の財政事情を考えると政府が医療予算を大幅に増やすというシナリオはあまり期待が持てません。現在、インドの一人当たりの年間の薬代は5.6ドル程度です。これは将来の潜在成長余地を示しているともとれますが、逆の見方をすれば欧米の大手製薬会社のように大型新薬の発売でガッポリ儲けて、その金を研究開発に再投入するということがインドでは通用しないことを意味します。実際、インドにはDPCOと呼ばれる薬価統制に関する法律があり、政府の独断で薬価を決めてしまう余地を残しています。現在、このDPCOにより統制価格となっている品目は74点のみですが、アメリカのように製薬会社が値段を自由に設定できるというのとはちょっと事情が違うことがお分かりいただけると思います。 *DPCO: Drugs Price Control Order インドの薬品株インドの製薬会社各社(*)の2006年のEPS予想に基づいたPERと時価総額を示すと: 会社名PER時価総額(10億米ドル) シプラ30倍3.6ランバクシー29倍3.7ニコラス・ピラマル29倍1.1サン・ファーマ25倍3.1ドクター・レディーズ45倍2.2出典:コンテクスチュアル・インベストメンツLLC*)この表ではインドで営業している外資系製薬会社(MNC)は除外しています。インドの薬品株は平均すると2006年度のEPSに基づいて約32倍のPERで取引されています。セクター全体のPEGレシオ(PER÷EPS成長率)は1.15倍程度です。これらの数字はインドの他のセクターから見てもかなり割高だと言わざるを得ません。ましてインドの製薬業界は現在大きな変革期に来ているので、これまでのような安定成長というのは望み薄です。なお、インドの薬品株の中でADRがあるのはドクター・レディーズ(RDY)1社のみです。 これまでに言及しなかったリスクについてさて、これまで書いてきたインドの製薬業界が抱える様々な課題に加えて、以下のリスクがあることを指摘しておきます。APIの価格はライバル企業の参入によって時として急落する場合があること。新薬開発の過程は米国FDAなどの厳しい監督下に置かれており、規則違反があった場合、申請の遅延などの生ずる可能性があること。薬品製造工場の衛生管理などに関してもFDAは厳しい基準を設けており、工場が基準に満たないと断定された場合、操業停止などの措置を受ける可能性があること。現在米国でのジェネリック薬の製造、販売のビジネスを可能にしている「ワックスマン・ハッチ法(1984年)」が改正された場合、同社のビジネスに影響が出る可能性があること。
2006年02月22日
2006年2月10日インドの製薬業界(2)今日のポイントインドの旧パテント法でジェネリック商法が開花したWTO加盟でそれができなくなった。インドの製薬会社の研究開発費は急増している。研究開発の成果が出るのはまだまだ先の話。欧米市場におけるジェネリック薬のビジネスはこれまで通り。不確実性の増大でインドの製薬会社の株価評価は段々難しくなっている。恒久的な問題についてインドの製薬業界を巡る恒久的問題とはWTO加盟に伴うパテント法の改正(2005年1月1日から施行)です。インドが1970年に制定したパテント法ではパテントが製品(Product)に付与されるのではなく、製法(Process)に付与されてきました。これによりインド企業は外国企業が外国でパテント取得した新薬をリバース・エンジニアリングして成分をつきとめ、それを製造方法だけ変えてやってジェネリック薬としてインド国内で売り出す商法を始めました。これは実はインド政府が狙っていた効果であり、欧米の高価な薬がインドの国民の手に届かないことを憂慮した方便と言えるでしょう。一説にはこれにより欧米の製薬会社は合計で年間5億ドルにも上る売り上げをコピー薬に奪われたと言われています。 WTO加盟さて、1995年にインドがWTOに加盟することになったのでインドは10年の猶予、つまり2005年までに欧米並み(これを難しい表現ではTRIPS=通商関連知的所有権と呼びます)にパテント法をアップグレードすることが義務付けられました。今回、インドのパテント法が改正になったのはそのためです。なお、新しいパテント法は今後出てくる新製品についてのみ適用され、既に出回っている商品に遡及的に適用されることはありません。従って、これまでインドの製薬会社が売ってきたジェネリック薬が明日から売れなくなるというわけではありません。 インドの製薬業界の対応さて、インドの製薬業界はこれを潮時としてこれまでの安上がり商法を改め、欧米並みにちゃんと自前の研究開発による創薬を目指し始めています。それに呼応して、これまで売上高に占める割合が2%程度だった研究開発費も大幅に増強され、場合によっては8%を超える企業も出てきました。投資家は気が早いのでそういう研究開発活動を何とか株価に織り込もうとする気運が高いのです。しかし、未だ結実していない研究開発活動を評価するのは大変、困難な作業ではないでしょうか?普通、欧米の企業が新しい化学物質の申請(NCE)をしてから、それが新薬として認可されるまでには15年から20年もかかります。つまり息の長いレースなわけです。しかも欧米の場合、往々にしてその間に投入される研究開発費は8億ドルにものぼるケースがあります。そういう欧米の懐の深いライバルと競争してゆくのは並大抵ではないと思います。 欧米市場におけるジェネリック薬の販売今回のインド国内のパテント法の改正に直接影響を受けないビジネスもあります。それは欧米市場におけるジェネリック薬の開発、販売のビジネスです。インドの製薬会社の幾つかはアメリカ市場などでパテントの切れ掛かった薬のジェネリック薬を開発し、FDAからジェネリック薬の認定を受けてそれらの国で販売するという業務を行なっています。この場合の承認プロセスはANDA(簡略新薬申請)と呼ばれ、通常の新薬開発より開発・承認に要する費用や時間は遥かに短くなります。この場合、ターゲットになる薬のパテントが既に切れているか、いないかなどによってANDAの申請はPARA I~IVという四つのカテゴリーに分かれます。この中でジェネリック・メーカーにとって最も旨みのあるカテゴリーはPARA IVと呼ばれるもので、ここでは既存薬のパテントが無効であるか、ないしはジェネリック品がパテントに抵触しないということを立証することが出来た場合、180日間の独占販売期間が与えられるケースです。既存薬をパテントの保護の下に販売している欧米の製薬会社は当然、自分の製品の独占販売期間を守ろうとし、さらにパテント切れ直前にその薬に簡単な改良を加えることでパテントの延命を図るなど、アノ手、コノ手でジェネリック薬からの攻勢を食い止めようとします。訴訟などに発展することも日常茶飯事です。 PARA IVのジェネリック薬のビジネスはこのようにインドの製薬メーカーにとってオイシイ商売であると同時に不確実性も高いですから、われわれ株式投資家としては見極めの難しいビジネスであると言えるでしょう。
2006年02月15日
2006年2月3日インドの製薬業界(1)今日のポイント インドの製薬業界はフラグメント(細分)化されている インドの製薬業界は未曾有の試練に晒されている インドの製薬業界の概観インドの製薬業界は大変フラグメント化されています。業界全体の売り上げ規模は50億ドル程度ですが、それを数百社にのぼる企業が分け合っているという構図です。過去5年間の平均年率成長率は9%程度でした。但し、2005年度の業界売り上げ高はこの平均を大幅に下回っています。(この原因については後に説明します。)上位10社の売上高に占める割合は全体の約3分の1程度です。売上高の多い企業から列挙すると: シプラ グラクソ・スミスクライン ランバクシー ニコラス・ピラマル サン・ファーマ ファイザー ドクター・レディーズ ザイダス・ケイディーラ サノフィ・アヴェンティス アリスト となります。このうち、2.、6.、9.は外資系の会社で、これらはインドではMNC(マルチ・ナショナル・カンパニー)と呼ばれています。このようにインドの製薬業界はこれまで順調に成長してきましたし、業界の規模としてもそれなりの存在感があります。しかし、インドの製薬業界は今、試練に直面しています。去年はインドの株式市場は40%近く上昇したのですが、薬品セクターはBSEヘルスケア指数でたったの+2%というパフォーマンスに甘んじました。一過性の試練、恒久的な試練さて、インドの製薬業界が直面している問題は幾つかあるのですけど、それらは一過性のものと、今後もずっと続く恒久的なものに二分されると思います。一過性の問題とは: 付加価値税(VAT)の導入(2005年4月1日より) 最高小売価格(MRP)に基づいた消費税の導入(現在、税率を下げるべく微調整中)などです。一方、恒久的な問題とは:WTO加盟に伴うパテント法の改正問題一過性の問題 その1.付加価値税(VAT)まず付加価値税の導入について説明します。インドはこれまで徴税基盤が狭すぎ、思うように国家予算が組めませんでした。これを改めるために行なわれた改革が付加価値税の導入なのです。付加価値税導入は製薬業界だけでなく広くインドのあらゆる業界に影響を与えました。薬品に課せられる付加価値税は4%です。付加価値税は業者が商品を仕入れた値段と、それを販売した値段の差額、つまりマーク・アップ部分のみに関して課せられます。今回の付加価値税の導入に際しては導入前後の不透明感から卸業者などが在庫を圧縮するなどの措置を取りました。これが去年、薬品業界の売り上げ低迷の原因のひとつになったわけです。一過性の問題 その2.最高小売価格(MRP)による消費税導入次に政府が薬品に対する消費税の計算をこれまでの工場出荷価格を基準に計算するのではなく、最高小売価格(MRP)に基づいて算出すると発表しました。これについては業界からの反発も大きかったので2006年度の全国薬事政策(NPC)で消費税をこれまでの半額の8%に減額することを検討中です。しかし、最高小売価格に基づく消費税の算出が発表された時点で、業者にはマージン圧迫懸念が走りました。これらのことから、インドの製薬業界の売上高成長率は2005年度は僅か+4.2%にスローダウンしました。
2006年02月15日
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