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私のブログに訪問してくれてありがとうございます。なかなか続きがかけなくてすみません。 これからも頑張って書いていきますのでよろしくお願いいたします。 青春の戸惑い (三十四ページ) ヒロシ達が居るあいだは、一人のお客も入って来なかった。二人は誰にも邪魔されることなく、久しぶりの再会に、時折交える冗談に頬を緩めていた。 ヒロシは二人の会話に入ることも出来ず、かといってビールを飲むわけにもいかず、ちょびっとづつコーラを口に運び、二人の会話を眺めているしかなかった。 店長が腕時計に眼をやり立ち上がった。「それじゃ、行くからな」 店長の言葉に、女の娘の横顔にフッと淋しい影が浮かんだ。縋りつく視線を感じながら、二人は店を後にした。 通りを右に折れる所で、車の窓越しに店の方に眼をやると、女の娘が、おぼろげな看板の明かりの中で蒼白く佇んでいた。「お前、遠藤が帰ってくるまで、時々店に行ってやれ」 店長が、ヘットライトの明かりを見つめたまま言った。 一週間ほどして、ヒロシは店が終わると車を飛ばし、川口のスナックへと向かった。急いできたつもりだったが、スナックに着いた時には、既に時計の針は一時半を回っていた。 店に入ると、カウンターに一人の客が座っている。五分刈りにした頭に白髪が目立つ、中年の男だ。ヒロシは客のフリをしてビールを注文した。 男は、カウンター越しに女の娘と話をしていたが、ヒロシの顔を見るなり話しかけてきた。「兄ちゃん、歳幾つだい」「二十歳です」「若いなー、俺もその歳に戻りてぇよ」 酒に酔っているせいか、男はやけに神妙だった。「俺は頭は悪かったから、その年の頃はイキガってばかりいたよ。煽てられれば直ぐその気になって喧嘩したり、酒呑んで暴れたり、それが格好いいと思っていたんだ。バカだったなー。今じゃ、逆立ちしたって後戻りできねえよ。これを見てみな」 男は、着ているジャンパーのチャックを開け、セーターをクビの所まで捲り上げた。見ると、胸全体に、丸にチという文字が、青く滲んだ色で太く刺青されていた。 男は、セーターを下ろしながら、「こうなったらおしまいよ」 と情けない顔で言った。「こんな看板しょちょったら、消すにも消せねえよ。兄ちゃん、こんなバカな真似はすんなよ。格好悪くて銭湯にも行けやしねぇや。ちったぁーましな刺青なら恥ずかしくもねぇけど、これじゃーどうにもなんねよ」 まあー、刺青なんかするもんじゃねぇな。若いうちは体も張りがあって綺麗だが、歳をとったら見るかげもねぇや。 俺の親分も七十になるけどよ。たまに一緒に風呂に入って背中を流してやるけど、刺青が薄くぼやけちゃって、おまけに皺だらけだから何が書いてあるんだか、さっぱり分からねぇ。汚ねえだけだよ。こんなこと親分の前では言えねぇけどな」 男は、一頻り愚痴をこぼすと、コップに残っていた冷や酒を呷るように飲み干し、ふらつく足取りで帰って行った。後ろ姿に、後戻りできない過去を悔やむ、情けない寂しさが漂っていた。「もうお店閉めるから、ヒロシさん今日は泊まっていって。今、ラーメンでも作るから」 続く
2007.03.31
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私のブログに訪問してくれてありがとうございます。 大人はどうして二つの顔を使い分けているのだろう。そんな疑問からこの小説を書き始めました。大人への階段を、戸惑いながら歩いている青年ヒロシの苦悩を通じて。 青春の戸惑い (三十三ページ) 顔の傷を負った学生は、あの時遠藤を殴った学生に違いない。学生達は某大学の応援団に所属していた。店の中でも、先輩に挨拶する時は、直立不動の姿勢で、「オスッ」と最敬礼していた。 きっと学生達は、遠藤がこの前抵抗しなかったので、図に乗って絡んだのだろう。遠藤は普段は物静かだが、怒ると躊躇うことをしない、度胸の据わった男だ。憲二のようにrチャラチャラして、女を口説くタイプではない。 店が閉店に近づいた頃、ヒロシは店長に呼ばれた。店が終わったら出かけるので車の運転をしてくれとのことだ。 店の前に車を横付けして待っていると、店長が忙しく助手席に乗り込んできた。「何処に行くんですか?」 ヒロシが店長に尋ねると、「今から遠藤の女がやっている店に行くんだ!」 店長は機嫌が悪いのか、憮然とした顔で言った。 店長はキツネのような尖った顔付きで、鼻が高く、切れ長の大きな眼をしている。やさおとこで、口を尖らせて喋るのが癖で、何処か挑戦的な話しの仕方をする。ちょっとでも言い返したら何倍にもなって返ってくる。プライドが高く、神経質な性格だった。 知らなかったのだが、遠藤は女と一緒にスナックをやっているらしい。スナックは女に任せて、自分はキャバレーで働いていたのだ。今まで遠藤は、そんな話しを一度もヒロシにしたことがなかった。 遠藤の店は、渋谷から車を走らせ、一時間近くかかる埼玉の川口にあった。 大通りを左に折れ車を進めると、古い社宅の様な家が建ち並び、その奥に二階建てのアパートが建っている。 一階の角部屋の扉の上で、夕子と書かれたブルーの看板が、ポツンと寂しげな蒼白い光を放っている。周りに飲み屋らしきものは見当たらず、砂利道の奥で、鉄工所らしき建物が薄暗い闇の中に黒い大きな口を開けていた。 店長に続いて店に入ると、客は一人も居らず、カウンターに七つばかりの椅子が並んでいるだけの殺風景な店で、薄暗さが湿ったみたいに陰気臭く、かびた匂いがした。「よぉー、居ないのかー!」 店長が大声で呼びかけると、 カタカタと、階段を下りてくる気乗らない足音が聞こえてきた。暖簾を分けて出てきたのは、頬に大きなガーゼを貼った、二十歳前後の若い女の娘だった。「あっ!店長いらっしゃい」 女の娘は店長の顔を見るなり、弾んだ声で言った。 嬉しさからか、女の娘の瞳は潤いを見せ、艶やかな光を放っている。下膨れの、ふっくらとした頬に包まれた唇は張りのある柔らかさを保ち、瑞々しい若さを誇っていた。 店長とは親しい間柄なのか、直ぐに冷蔵庫からビールを取り出し、コップに注いで勧めた。 店長は、旨そうに一息で飲み干すと、遠藤が起こした事件のことをゆっくりと話し始めた。 女の娘は、黙って店長の話を訊いていたが、「あの人怒るとハンパじゃないから」 と、項垂れた手で店長のコップにビールを注いだ。「そんなに長く掛からないだろうから、一人で大変だろうけど頑張ってな」「うん・・・・・」 女に娘は絡めた指に目を落とし、寂しげに頷いた。 以前、二人は何処かの店で一緒に働いていたような気がする。二人の態度から、慣れ親しんだ雰囲気が伝わってくる。 続く
2007.03.17
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私のブログに訪問してくれてありがとう。 大人はどうして二つの顔を使い分けているのだろう。表と裏の顔を。それも上手に。そんな疑問からこの小説を書き始めました。 大人への階段を歩いている青年ヒロシの苦悩を通じて。 青春の戸惑い (三十二ページ) ヒロシは沙央里を嫌いになったわけではなかった。確かに他の男とホテルに入るのを見た時は腹が立った。だがその時、ヒロシも同じことをしていたのだ。 ただあの時から、沙央里への愛が少しずつ冷めていくのが自分にも分かった。 一度冷めてしまった愛は簡単には戻らない。 沙央里自身がそれを良く知っていた。レストラン、チロルに行った時、ほんの僅かでも愛が残っているだろうかと、沙央里はかすかな期待を持っていた。沙央里は必死に見つけようとした。が、ヒロシの冷めた仕草の中に、何処にも見つけることは出来なかった。もう終わりだなと、その時沙央里は思った。 昴まりが頂点に達したヒロシは、怒張したペニスの先から、白濁した精子の塊を、沙央里の奥深くに一気に吐き出した。張り詰めたヒロシの体から、力が、引き潮のように抜け落ちていった。 沙央里はゆっくり体を起こすと、シャワーも浴びずに着替えを済ませ、ベットに寝ているヒロシに向かって、「さようなら」 と、ひとこと言い残し、部屋から出て行った。 沙央里は、これ以上ヒロシと一緒に居るのが耐えられなかった。部屋から先に出て行くのが、沙央里にとって、自分に対するささやかな慰めだった。 置いていかれるより、置いていった方がいい。 捨てられるより、捨てて行ったほうがいい。 暗い歩道にコツコツと、ハイヒールの堅い靴音が響き、やがて小さくなり、聞こえなくなった。 通りを歩く人の波は、足早に落ち着きのない運びを見せている。歳の瀬が近づくといつもこうだ。皆、何かに追われているみたいに忙しない動きを見せる。 ヒロシは、いつもどおり遅れることもなく店に入ったが、遠藤の顔は見当たらなかった。 ヒロシは、なぜ遠藤が学生と喧嘩をしたのか思い当たるふしがあった。二週間ほど前のことだ。遠藤が二、三人の学生とトイレの前で言い争っているうちに、無理やりトイレに中に連れ込まれてしまった。 入り口を学生が取り囲んで、誰も中に入れようとしなかった。 ヒロシが近づくと、トイレの中から、「バシッ、バシッ!」と顔を殴っている音が聞こえてきた。「遠藤さん、大丈夫ですか?」 ヒロシがトイレの外から遠藤に声をかけたが、「いや、なんでもないよ」と、遠藤は上擦った声で答え、それから直ぐに遠藤はトイレから出てきた。 その顔は赤く腫れあがり、目は潤んでいた。遠藤は学生達を振り切るようにカウンターに戻ると、水道の水でジャブジャブと顔を洗った。遠藤が何も話そうとしないので、ヒロシはその時、あえて訊こうとはしなかった。 続く
2007.03.11
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