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2021.02.10

脱炭素社会と原子力発電

テーマ：気になる技術動向(1282)

カテゴリ： Technology

日本政府は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロ、即ち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。
その骨子は次の通りの様なのです！
1、再エネ　　　最大限導入。系統整備、コスト低減、周辺環境との調和、蓄電池活用
　洋上風力・蓄電池産業を成長分野
2．水素発電　選択肢として最大限追求。供給・需要の拡大、インフラ整備、コスト低減
　水素産業を創出
3．火力＋CO2回収最大限追求。技術確立、適地開発、コスト低減
　火力は必要最小限、使わざるを得ない（特にアジア）
　カーボンリサイクル・燃料アンモニア産業の創出
4．原子力　　確立した技術。安全性向上、再稼働、次世代炉
　可能な限り依存度は低減しつつも、引き続き最大限活用
　安全性に優れた次世代炉の開発

脱炭素社会では、化石燃料からの脱皮が必須で、3項の「火力＋CO2回収」は遠からず消えて行くものと考え、1項の「再エネ」が30%、2項の「水素発電」が50%、4項の「原子力」が10%、上記に無い「水力」が10%、でエネルギーバランスを実施して行くのが妥当と考えています。
「再エネ」は不安定な電源ですので、ベースロード電源に依存せざるを得ませんし、原子力はその第2候補として考えますと、脱原発の意向が強い昨今ですがミサイル攻撃からの安全性を強化しつつ、カーボンニュートラルに向けて10%程度の電源を保持する必要がありそうなのです。

東日本大震災以降、再生可能エネルギーか、原子力発電か、と言う二項対立的議論が延々と繰り返され、再エネ推進派は原発事故などによる原子力発電の危険性を訴え、原発推進派は安定性に欠ける再エネをベースロード電源にするのは危険と言う。
有効な処方箋を示せず、福島第一原発事故から10年が虚しく流れた。事故の後遺症は深刻で、民心は原子力から益々離れていき、大学で原子力工学を専攻する学生も減って、折角60年以上の歳月をかけて営々と築き上げてきた、世界屈指の日本の原子力技術も、継承者が無いまま、朽ち果てていく可能性すらある。

ヨーロッパ諸国の対応も様々で、ドイツのように福島第一原発事故をきっかけに脱原発政策を決め、再エネに軸足を置きつつある国もあれば、フランスなどのように、発電時にCO2を排出しない原子力を重視し、それによって70%前後の電気を確保している国もある。

他方、世界第2位のエネルギー消費国である米国では、現在も約100基弱の原発が稼働しており、しかも大半が運転寿命を60年まで延長、一部では80年延長が許可されている。バイデン民主党政権の登場で、ある程度の政策変更があろうが、基本的には米国の原子力は将来も安定していると見る。

世界最大のエネルギー消費国である中国でも、原発重視の立場がはっきりしており、大規模な新増設が着々と進んでいる。中国は、原発輸出にも異常なほど力を入れており、今後世界中で新設される原子炉の大部分が中国製という時代が来るのは確実と思われる。

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