PR
Keyword Search
Freepage List
Calendar
Comments
人類と酒の関わりは、確たる証拠はないが、たぶん旧石器時代に遡る。俗にサル酒と呼ばれるものがあるように、木の洞などに貯蔵しておいた果実が雨水と天然酵母の作用で発酵し、それをたまたま口にしたことで、アルコールの存在に気づいたと思われる。
◎人類史最古のビール醸造所は1.1万年前
ただ人類最古の「酒作り」の遺構となると、ずっと下って旧石器時代最末期のトルコのギョベックリ・テペの石の遺構である(同遺跡については、15年2月21日付日記:「神を敬った狩猟採集民が建造した世界最古の石造神殿ギョベックリ・テペに畏敬・下=考古学」、15年2月19日付日記:「神を敬った狩猟採集民が建造した世界最古の石造神殿遺跡ギョベックリ・テペ=中;考古学」、15年2月17日付日記:「神を敬った狩猟採集民が建造した世界最古の石造神殿遺跡ギョベックリ・テペ=上;考古学」を参照)。 ドイツの考古学者オリヴァー・ディートリッヒの2012年論文での報告で、台所のような部屋に巨大な桶とモルトか大麦とおぼしき残留物があるのを発見し、ビール醸造の跡ではないか、と報告した。年代は約1万1000年前、新石器革命が指呼の間に迫っていた。
◎ワインの発見
ビールは、穀物を使う。野生穀物を使えれば製造は可能だが(野生穀物を食料に豊富に取り入れられたのは、中東のナトゥーフ文化が最初である=20年9月13日付日記:「ホモ・ルーデンス(「遊ぶヒト」)を忘れた2020年の世界;ナトゥーフ文化との比較」を参照)、やはり豊富に穀物が得られないとビール醸造にまでは回らないだろうし、それには余剰穀物がある程度出来る新石器時代農耕が始まらないと難しい。
それよりも遅れるが、ブドウを用いたワインは、新石器時代には盛んに作られるようになる。ワインの発見は、たまたま採集したブドウを放置し、天然酵母の作用で発酵し、良質な飲み物になることを知ったことによるのだろう。
野生ブドウがどこにでも生え、また栽培化も始まった温暖な中東が起源地だろう。
◎レバノンの紀元7世紀の大規模なワイン工房
さてイギリスの考古学誌『Antiquity』9月15日号に、レバノン南部のシドン近郊のテル・エル・ブラク遺跡で、紀元前7世紀頃に使われていたと推測される最古のワイン圧搾装置を見つけたと報告された( 写真
と 想像図
)。

ワイン圧搾装置は泥レンガで出来た住居4棟とともに発掘された。テル・エル・ブラクは紀元前8〜6世紀に存在したフェニキア人コミュニティーの一部で、輸出用ワインの醸造が行われていた、と研究チームは推測している。
ワインは、当時の東地中海を支配し、広くヨーロッパ西端、北アフリカまで交易網を広げた海洋交易王国フェニキアの主要輸出商品だった。フェニキアは、「ワイン文化」をヨーロッパに広めたのである。
◎アンフォーラに入れて地中海全域に輸出される
ちなみに僕はワインを基本的に飲まない。以前、ひどい二日酔いをした苦い思い出があり、以来、やむをえない場合以外は飲まないことにしている。
遺構の写真と復元図から、平たい石敷きの上でブドウを踏み潰し、下の窪みで絞り液を受けていたと思われる。窪みの孔は、ここにアンフォーラを突き刺して、口でブドウ汁を受けていたのだ。
アンフォーラは、ワイン保存の他、交易にも使われ、地中海の紀元前後の沈没船で大量に見つかる( 写真
)。
アンフォーラの実物は、以前、スペインに行った時にマドリードの考古学博物館で展示されていたものを観たことがある。スペインはローマ帝国の西の端にあり、当時は地中海は強大なローマ帝国の覇権のもとにあり、フェニキアはもう滅んでいた。
昨年の今日の日記
1700年前のマヤ王墓と宝を発見、伝説… 2026.05.22
1700年前のマヤ王墓と宝を発見、伝説… 2026.05.21
「辺境」スラウェシ島で見つかった6万7… 2026.04.24