(天声人語)小平奈緒と李相花
スピードスケート
の
小平奈緒
がレースを終え、リンクをゆっくりと回る。
客席から大きな歓声があがる。
小平は指を立てて口にあてた。
「静かに。次のレースがあるから」と言うかのように。
その瞬間の写真が韓国の新聞「
朝鮮日報
」の記事に添えられていた
▼
次に控えていた韓国の
李相花
(イサンファ)は、
五輪での3連覇が期待されていた。
小平のしぐさは李への気配りのように見えた、と記事にある。
結果は小平が李にまさった。
泣き崩れそうになった李を小平が抱擁したことも韓国メディアは手厚く伝えた
▼ 国際大会で何度も戦うライバルは、やがて友人になった。
李は語っている。
「彼女が韓国の家に遊びに来たことがあった。
私が日本に行けば、いつも面倒をみてくれる。特別な友達だ。」
2 人はいっしょに走ってきた、とも
▼
ライバルの語源はラテン語の「川」にあり
「対岸に住み同じ川を利用する 2
人」を指した。
水をめぐる争いがあるためという。
しかし 2
人の選手を見ていると、同じ川の流れのなかでで生きる人、
と読み替えたくなる。
▼ 頂点での勝負について回るのが、美しい気持ちばかりとは思えない。
敵愾心も嫉妬心もあろう。
国際大会となれば、国対国の色も帯びる。
だからこそ選手と選手のつながりに心が動く。
先日は羽生結弦がスペインのライバルと抱き合う場面もあった。
同じコーチのもとで練習した仲だという
▼ 競い合い、励まし合い、尊敬し合える友達がいる。
そうありたいと願うのは、もちろん競技の世界に限らない。
小平と李の友情、日韓関係もこうなら … 韓国ネット反応
2018/02/19 17:57 朝日新聞
18日のスピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した
小平奈緒(相沢病院)と、地元で五輪3連覇をめざしながら銀メダルに
終わった李相花(イサンファ)(韓)。
その友情を肯定的にとらえるほか、日韓関係と対比させる反応が韓国で出ている。
9人のガールズグループTWICEなどが所属する芸能事務所のCEOで歌手の
パク・ジニョンさんは「勝負より偉大なものがある。人種、国籍より偉大なものがある。
尊敬、友情、愛 ……
、2選手に感謝」とインスタグラムに書いた。
男性有名歌手のユン・ジョンシンさんはフェイスブックで
「すべてが終わった瞬間、ライバルというよりは伴走者のようだった」と書き込んだ。
また、小平が李を韓国語でねぎらった一方、李が小平に世話になった逸話を語ったことを
報じたハフィントンポスト韓国版のフェイスブックには、
「人と人の関係はこんなに美しいのに、政治関係がこうならないのが残念だ」
といった書き込みがあった。
そのほか、「2人がそれぞれの国旗を持って滑る姿は、
そうはならない現実を見た時に残念さが募る場面だ」
「両国の関係が良くないからと、個人同士の関係まで悪くみてはいけないと思った」
などの書き込みも相次いだ。(中小路徹)
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