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川口の住民は、自分たちのことを「ほぼ都民」と称しているようです。無論川口市民のすべてがそんなことを言っている訳じゃないことは分かっているけれど、こういうのを聞くとなんだか情けなくなってくるのです。そうした言葉を発する大部分は、あえて自虐的なそういう発言をしているのだと思いたいけれど(恐らくこの地で生まれ育った人たちはそんな言葉は吐かないと思うのだ)、特に他所から濾してきた若い世帯の人たちはかなり本気でそう述べているんじゃないかと思ってしまうのです。気持ちは分からぬではないと言いたいところだけれど、実際にはちっとも分からないのだ。確かに川口っていうのは足立区と一部は陸続きで接しているし(川口って飛び地が多いみたいなのだ)、北区や板橋区とは荒川を隔てて隣接してもいます。それを言ったら和光市も板橋区と接しているはずです。でも和光市の住民が「ほぼ都民」と語っているとは聞いたことがありません。いや単にぼくが知らないだけで実施にはそう主張する人もいたりするのかもしれませんが……。ちなみに距離感覚として参考までに調べてみたら川口駅-赤羽駅間が京浜東北線で3分2.6km、川口元郷駅-赤羽岩淵駅が埼玉高速鉄道で3分2.4km、和光市駅―成増駅が2分2.1kmとやはり若干ではあるけれど、和光市の方が先の主張を述べるのに適当だと思うのだ。そもそもの話にはなるけれど、都内在住であると言い張ることにそれほどのメリットはあるんだろうか。大学に入学して地方から引っ越してきて、たまたま川口に住んだとして、地元の仲間に今どこに住んでるのとか聞かれて、東京だよと答えるのはバレた時に余計恥ずかしくないだろうかなどと思ってしまうのです。 ちなみにぼくは正真正銘の東京に住んでいるのでありますが、別に自慢に感じることなどないなあ。なんてことを書くともしかすると逆に自慢していると思われるかもしれないが実際にそうなのです。ぼくのような地方出身者にはむしろ埼玉とか千葉の町で呑む方がずっと落ち着くのであります。でも自宅が都内にある以上、毎晩訪れるのは難儀だからやむなく都内の外れのような町で呑むしかないのが実情です。だから「ほぼ埼玉」を標榜する川口で呑むのはさほど心地良いものでは実はないのかもしれません。たんに川口なら都内からそう遠くないし、和光市よりは呑み屋も多いから訪れることになるのです。さて、川口であれば赤羽ほどではないにせよ昼間から呑む酒場に事欠くことはなかろうと訪れたのは、この日はたまたま昼間に仕事から解放されたので昼夜の通し営業を当て込んで川口を目指したわけです。最初に向かったのは、「珍来 川口店」です。以前、同じような時間に営業していたという記憶があったからですが、やっていませんでした。これは当てが外れたなあとウロウロしますが、ここぞという店がありません。もしかすると川口は案外昼呑みには不自由な町だったんだろうか。困ったからといってファミレスやチェーン系居酒屋は遠慮したいところであります。営業している店もあるにはあるのだけれど、たまには本場のドギツイ中華を食べたいと思い、全く中国っぽくない「王道麻辣鴨脖(オウドウピリカラカモニク)」なるお店にお邪魔することにしたのでした。1階はテイクアウトの受け渡しがメインのスペースで2階に案外広めの飲食スペースがあります。案の定、他にお客はいません。ここで料理を頼み過ぎると夜まではまだたっぷり時間があるのにすぐに満腹でグロッキーになってしまうから注意が必要です。ネギ油餅、マーラー牛肉を注文します。もう少し奇を衒った料理にしても良かったなと思うけれど、まあ酒の肴としてはこれで可なのです。時間がもっと日が暮れてくるともう少しは食欲も出るんだけどなあ。しばらくビールやサワーをチビチビやっているとその内店の従業員が遅い昼食を自ら運んできました。これがまあとても一人で食べるとは思えないようなボリュームでそれを目にするだけで、途端に満腹感を感じるのでした。にしても健啖なのって羨ましいことだなあ。
2024/11/25
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一見するとなんでもなさそうな住宅街の居酒屋にふらりと立ち寄る。住宅の灯りはどこか余所余所しいのに、居酒屋が放つ灯りが強い誘因力を孕んでいるのは、単にこれまでの経験が作用しているというだけではなさそうです。経験だけというのであれば、こういうなんでもないけれど、繁華街からは外れた場所にある酒場の場合、自分の家みたいなどと言うつもりなど毛頭ありはしないのですが、とにかくやたら居心地が良かったりするということが結構ある一方で、余所者を徹底して排除しようとする店も少なくないものです。酒吞みなんていうのは、身勝手なものだからそこが例え同じ店であっても気に入る場合もあれば、まったく受け付けられなかったりすることもあるのです。だからある酒場について、語るのであれば少なくとも2度は訪れてから評価を下すべきであるだろうし、1度目が気に入っていても2度目がダメだったらもう一度訪れるべきなんじゃないだろうか。なんてことを述べてみてはいるけれど、一目惚れした場合やどうにも選択肢がない場合以外の理由で2度、3度と同じ店に行くことは滅多にないのが現実なのです。映画についても同じようなことが言われますが、やはり傑作に遭遇した場合、所見の衝撃に勝るものはないように思えます。いや、もしかすると衝撃に評価の価値を置き過ぎなのかもしれません。そのうちもしかすると衝撃とは異なるエモーショナルな要素を実感できるようになるかもしれません。 町屋のいかにも町屋らしい居酒屋「小料理 いづも」を訪れたのはこれが二度目だったようです。少しも思い出せなかったけれど、メモにあるから恐らく間違いありません。こういった場合、これは初訪と見做すべきなのかやはり事実を尊重して二度目にするべきなのか、判断に迷うところです。それはともかくメモを見てもなお覚えがないということであるから初訪時にはほとんど印象の残らない酒場であったらしいことは推察されるところです。記憶に残る店というのは、偶然に出会った人々との語らいがもたらすことが多いようです。美味しい肴や酒も重要なことがあるのでしょうが、味覚の記憶というのは嚥下した途端に消え去ってしまうもののようです。でなければ、何度も同じような料理を食べたくなるとは思えないし、一食分の料理を食べ切ることすら困難に思えるんじゃないだろうか。脱線してしまいました。今回はこちらのお店にはかつての映画マニア3名でお邪魔したのですが、忘れられない夜になりました。というのも時折店を訪れるというとある初老の方がかつての映画関係者でありまして、その方が語る様々な映画を巡る逸話なんかがぼくたちの興奮させるのでした。尽きることのない話題に当然ながら酒量も比例するのであって、ついつい呑み過ぎてしまうのでした。ここでは肴を悠長に摘まんでいる暇などなく、ひたすら映画を巡る会話に酒を促されるのでした。この日同席した1名はその後、その時の興奮が忘れられなかったようで、一人電車を乗り継いで訪れたけれど、お休みだったと残念そうに語ったのでした。
2024/11/24
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ここ数年、旅行に対する意欲がガクンと衰えているのを感じます。その気になりさえすれば行けなくもないし、行ったら行ったでそれなりに楽しめるであろうことは分かっているのです。でも旅に出たいって気持ちよりは、もっと時間を掛けたいと思えることがあって、そちらに時間を回したいと思ってしまうからどうしても旅に出るのに二の足を踏んでしまうのです。だからまあ、旅行といっても純粋な旅ってのはなかなかする暇がなくて、何かのついでにちょっと旅行気分を味わおうってことになるのです。今回はその理由がかなり不純でありまして、年老いていく両親の顔を見に行くという全くもって興趣に欠ける目的で何とか旅へのモチベーションを高めた次第なのです。すでに身バレしているので書いちゃいますが、両親は今、仙台に住んでいるので思い出したように仙台に行っているのですが、今の仙台はぼくの知っていた頃の仙台とはすっかり様変わりしてちっとも面白味のない町になってしまいました。久し振りに訪れた仙台は、特に仙台駅がとんでもない変貌を遂げていたりして、驚きはあったもののその驚きは必ずしも歓迎すべき驚きではなかったのです(ちなみに野暮用で多賀城にも行ったのですが、駅に併設した図書館がこちらもまた驚愕の変化を見せてくれ、こちらは地元の方が羨ましいと感じさせるものでありました)。それはともかくとして老夫婦が暮らす実家に行っても退屈極まりないので、どこかで落ち合うことにしようとなりました。しかしねえ、仙台付近で興味のある場所など限られています。そこで思い付いたのが、国の登録有形文化財にも指定される温泉宿だったのです。 訪れたのは、白石の鎌先温泉にある「時音の宿 湯主 一條」です。宿名は取ってつけたようでどうも気に食わないのでありますが(「湯主 一條」もしくは「一條」で充分ではないか)、木造3階建てという風情ある構えが非常に魅力的だったのです。急遽決まったことなので、値段も詳細もお構いなしに取り急ぎ予約を入れて(珍しく太っ腹!)、福島までの高速バスを確保(ここら辺はいかにもケチ臭い!)して、車中の人となったのでした。福島駅で昼食がてらの一杯という目論見は東北本線の乗り継ぎの都合でもろくも崩れ去ったけれど、宿での飲食には金銭に糸目を掛けぬこととしたのです。白石駅で両親と落ち合い、邂逅はそこそこに宿の迎車に乗り込むと一路マイクロバスは宿へと向かうのでした。にしてもこちらの温泉街は街としての体裁まではなしていないようです。他に現役の宿が二軒、カフェが一軒といった非常にこぢんまりとした陣容なのです。でも最近はこういった宿でまったりと過ごすというのも悪くないものだと思っています。一応は近隣を散策してみますが、どうゆっくり歩いても5分と持たぬ程度です。それで構わないのだ。何といってもここは温泉宿だから温泉を満喫すればいいだけのこと。って実はぼくは温泉に限らず風呂が苦手なのです。いや、38℃くらいのぬるい湯であれば1時間だって入っていられるのですが、それ以上に熱い湯だと5分どころか3分だってキツい位なのです。しかも風呂上がりの汗っていうのが大嫌いなもんだからこちらの2つの風呂、3つの浴槽をひと通り味見しても30分とは掛からなかったし、湯船に浸かっている時間より湯冷まししている時間の方がよほど長かったのです。でもまあ部屋に戻ってゴロリと寝そべりながらうつらうつらしているうちに早くもメインイベントの夕食の時間です。飲食するのが先から書いている木造3階建てなのです。居室のある新館から渡り廊下を通って本館に向かいます。この道中がたまらなく雰囲気がいいんですね。この廊下で一杯遣りたい位です。本館に入っても手入れが素晴らしく行き届いていてきれいでありつつも往時の面影を農耕に留める内装に思わず興奮してしまうのです。我々には立派な一室が用意されていて室内はどうということもないのですが、窓越しに表の風景を視界に含めてみると実に風情があるのでした。さらにさらに出てくる料理のどれもが綺麗なだけではなく美味しくて大いに満足しました。うっかり呑み過ぎてしまって、新館にあるバーに立ち寄る気力も湧かず、部屋に戻った途端にバタンキューとなったのです。お陰様で翌朝は体調も珍しく快調、これまた立派な朝食を猛然と食べたのでした。こういう旅なら今すぐにでも行きたいものだなあ。といったことで興味のある方は以下の公式HPをご覧ください。https://www.ichijoh.co.jp/
2024/11/18
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以下は大分前に書き掛けのままに放置されていた文章に加筆・修正を施したものであります。-- 文学に登場する玉ねぎには、ブロンテイ著/十一谷義三郎訳『ジエィン・エア』があります。--アボットが熱くなつて叫んだ。「可愛いゝお孃さん! 長い捲毛、青い眼、顏の色艷のいゝこと、まるで描いたやうだわ。ベシーさん。あたしは、夕飯にはウェルス・ラビットを食べたいわね。」「さう、私もよ……熱い玉ねぎつきでね、さあ、行きませうよ。」彼等は去つた。-- ウェルス・ラビットは以下のことですね。以前、このブログでも試したことがあります。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia) 「ウェルシュ・ラビット」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%88 シャーロット・ブロンテは1816年4月21日 - 1855年3月31日 「熱い玉ねぎ」かあ。熱いってことはやはりこれまた揚げ玉ねぎなんだろうか。「イギリス」と「揚げ玉ねぎ」を調べても検索に引っ掛からない。やはり翻訳で調べるのは無理があるのだろうか。ということで原典に当たってみた。‘So could I—with a roast onion. Come, we’ll go down.’ T hey went. なるほど“roast onion”なんですね。ってことは玉ねぎをオーブンで焼いた料理のことを指すのだろうなあ。例えばこんな感じ。https://oliveoillife.jp/recipe/5710/ 確かにまあ「熱い玉ねぎ」ではありますけどねえ。-- といった元の文章の理解不能な部分をちょっと補足したり、調べを原典に当たってみると随分誤った解釈をしていたことが判明しました。実は間違った解釈の方が面白みがあるのですが、さすがにミスを知ってしまってそれを公表するのは憚られるのでした。にしても外国小説の料理に関する誤訳って厄介ではありますが、結構、想像力を掻き立てられて調べてみると面白いかもしれないですね。帰れ、鶏肉へ!(ピョートル・ワイリ/アレクサンドル・ゲニス著『新装版 亡命ロシア料理』)[ロシア]【材料】鶏肉 400g/玉ねぎ 2個/バター・ローリエ・胡椒・塩 適宜【作り方】1. 鍋にバターを熱して鶏肉、玉ねぎ、ローリエ、胡椒、塩を加えて弱火で1時間煮る。 ネットで話題になっていた料理です。意味不明で間の抜けた料理名ながらこんなシンプルな食材でもちゃんと美味しくなるのでした。新玉ねぎの丸ごと漬けステーキ(相場マナブ)【材料】新玉ねぎ(電子レンジで600W3分30秒加熱/バター 適宜/【調味料】に漬ける/輪切り) 2個/【調味料(混ぜる)】めんつゆ(3倍濃縮) 170ml/みりん 80ml/鰹節 2g【作り方】1. フライパンにバターを熱して新玉ねぎを両面焼く。 玉ねぎの丸ごとなんとかって色んなレシピがあるけど、どれも大体似たような仕上がりに思えるのです。今ではいっそシンプル過ぎる位の方が美味しいんじゃないかと思っています。新玉ねぎの丸ごと漬けそば(相場マナブ)【材料】そば(茹でる/冷水で洗う) 1人前/つゆ】新玉ねぎの丸ごと漬け(粗みじん切り)・新玉ねぎの丸ごと漬け(漬け汁)・水・新玉ねぎ(みじん切り) 適宜【作り方】1. 皿にそばを盛って【そばつゆ】を添える。 そばと玉ねぎは相性がよくないのかもなあ。そういやカレーそばって好きなんですけど、玉ねぎと一緒に口に入れるとちょっと違和感があるような気がします。新玉ねぎの丸ごと漬けスパゲッティ【材料】スパゲッティ(茹でる) 80g/オリーブ油・ベーコン(1cm幅)・にんにく・塩・胡椒・新玉ねぎの丸ごと漬け(粗みじん切り)・新玉ねぎの丸ごと漬け(漬け汁)・水・新玉ねぎ(みじん切り) 適宜【作り方】1. フライパンにオリーブ油を熱してベーコン、にんにくを炒める。残りの材料を加える。皿に盛って胡椒を散らす。 これも丸ごと漬けステーキの援用でしたね。まあいっか。これは分かり易く美味しいのですがこんな面倒なことをせずに単に玉ねぎをスライスして放り込んだって十分に美味しいんじゃないかなんて思ってしまうのです。ちなみにぼくは大のナポリタン好きなんですが、かつてダイエットしていた際にどうしてもナポリタンを食べたくなった時には、パスタはごく控えめにその代わり大量の玉ねぎを入れたパスタ入りの玉ねぎナポリタンを愛用していました。でこれは今でも大好きなのです。
2024/11/23
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里芋ってずっと好きな食材でしたが、調理の手間が掛かると思い込んでいてどうしても敬遠しがちでした。何が面倒って泥を落として皮を剥く作業がかったるいと思っていたのです。だから時折、国産の里芋で皮を剥いてあるのが見切りで販売されていたりすると嬉々として購入していました。無論、正月料理のために皮付きを買って手間が掛かるなあと思いながら調理することもあるにはありましたが、非常に稀なことでした。しかし料理に限らず大抵のことに言えることではありますが、慣れてしまうとこれまで億劫と思っていたものが、どうしてそこまで敬遠していたのだろうと後になってから振り返ってみて怪訝に感じるものなのです。確かにぬるぬるしてときおり、皮を剥いていると滑ってピョコンと飛び跳ねたりもするけれど、手を洗いながらであればさしたる不都合もありません。もしかすると若かりし頃は食欲旺盛だったから、一時に処理する分量が以前よりずっと少なくなったというのも気軽に手を出せるようになった理由なんじゃないかと思ったりするのです。しかも他のイモ類に比べるとカロリーも低くてヘルシーらしい(菊芋なんかはもっとずっとヘルシーではありますが)から積極的に料理に活用し、レシピも増やしたいと思うのです。その一方で、素朴な食材は素朴に食べるのが一番ではないかと思ったりもするのだ。塩もしくはごま塩をまぶしただけでも美味しいし、煮付けにしてもいい、せいぜい芋煮やのっぺいで食べる位のレシピがあればそれで十分だと思ってみたりもします。そうそう、そういえばすっかり忘れていたけれど、豚汁などの味噌汁に入れて食べるのが一番かもしれません。実際に食べている描写がある訳でもないのに以下のように描写されているだけでもすぐに食卓にのせたくなったりするのでした。林芙美子著『新版 放浪記』 東京で吸う赤い味噌汁はなつかしい。里芋のコロコロしたのを薄く切って、小松菜を一緒にたいた味噌汁はいいものだ。新巻き鮭の一片一片を身をはがして食べるのも甘味い。壺井榮著『風』足のついたまな板をちゃぶ台にして、きゃっきゃっと笑いながらふたりはむかいあって最初の夕餉をとった。田舎そだちの茂緒の手なれたところで里芋の味噌汁に、高野豆腐と油あげと、きり干大根の煮つけ、黄色いたくあんで、祝いの小さな鯛は一匹だった。修造は鯛よりも高野豆腐ときり干をよろこび、母を思いだすといい、久しぶりだといった。里芋のアヒージョ【材料】里芋(茹でる/皮を剥く/一口大)・しらす・にんにく・赤唐辛子・オリーブ油・塩・胡椒 適宜【作り方】1. 鍋に全ての材料を入れて加熱する。 思い付きで作ってみました。里芋を揚げて食べるのも旨いんですよね。そのまま塩でもいいんですけど、今回はもう少し凝った酒の肴に仕立てました。こんがりホクホク里芋【材料】里芋(電子レンジで600W5分30秒加熱/皮を剥く/5mm厚) 200g/サラダ油 大さじ1/バター 5g/めんつゆ(4倍濃縮) 大さじ1/2【作り方】1. フライパンにサラダ油を熱して里芋を焼く。バター、めんつゆを加える。 てぬキッチンのレシピ。バター焼きも間違いないだろうと思って作ったけれど、う~ん、味を足すならもう少し足した方がいいかなあ。ずぼいも(小さいさといも)【材料】里芋(茹でる/皮を剥く) 500g/醤油 適宜/ねぎ 2本/鰹節 30g【作り方】1. 全ての材料を和える。 これまたびっくりするほどにシンプルな食べ方。塩の代わりに醤油って言われてみると当たり前ですけど。これはいいなあ。酢ずいき 里芋のごま酢あえ【材料】里芋(皮を剥く/拍子木切り/茹でる[酢入り]) 130g/水 1L/酢 大さじ3/白ごま(炒る/擦る) 大さじ1/砂糖 大さじ1/酢 小さじ2/醤油 小さじ1【作り方】1. 全ての材料を和える。【備考】レシピサイト ぷちぐるhttps://oisiso.com/ これもいいですねえ。単なるごま味噌だともったりしてしまうところを酢を効かせることでもたつかないで頂けました。何だかんだと色んな食べ方でたのしめそうですね。
2024/11/16
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これといった確信があった訳ではないのですが、日本におけるセロリの受容ってせいぜい戦後のことだと思っていました。気になったのでWikipediaで調べてみます。すると以下の記載がありました。--日本には16世紀の終わりごろに、中国から朝鮮半島を経て伝わった。加藤清正が文禄・慶長の役の際にニンジンの種と騙され日本に持ち帰り、「清正ニンジン」と呼ばれたという説がある。そして西洋では、食用に栽培されるようになったのは17世紀に入ってからでヨーロッパ南部で始まった。18世紀の江戸時代に入り、完全な食用種としてのセロリが日本に輸入したが、独特の強い香りのために普及しなかった。日本で普及したのは昭和30年代のことで食生活が洋風化してからのことである。現在、日本に広まっているセロリは、後に入った西洋種であるコーネル種の系統である。-- なるほどねえ。16世紀には伝わってはいたんですね。江戸時代には食用として輸入されてもいたんですね。ぼくの想像していたのは、食用としてのセロリが普及し始めた時代のことだったんですね。その当時はどうやって食べられていたんだろうなあ。気になったので、またも青空文庫で調べてみます。やっぱりなあ、古川緑波著『古川ロッパ昭和日記』に少なからぬ頻度で「セロリ」が登場しています。食べた日付けと食べ方のみ引用します。昭和十一年十月三日(土曜) セロリの生昭和十二年三月二十九日(月曜) セロリスープ昭和十三年十一月二十三日(水曜) ハムとセロリのトーストに乗ったの昭和三十三年八月三十一日(日曜) セロリ・ポタージュ同年十月七日(火曜) セロリー(とのみ記載のため食べ方は不明。生か?)同年十二月十九日(金曜) ポタージュは、セロリ この記述を読むと少なくとも富裕層のグルメたちには昭和十年にはセロリが普及しているように思われます。昭和十三年から三十三年までの空白期間が気にはなりますが、生で食べるもしくはポタージュで食べるっていうのが定番だったみたいです。日本の一般家庭では、今だってこれと変わらないような気がするなあ。案外、セロリって食べ方にヴァリエーションがないものなのかもしれないなあ。なんてことを改めて思うのでした。でも、トーストにセロリってのは一風変わっていますね。と他人事のように書きましたが、実は先般とあるセロリトーストのレシピを試してみたのですが、悪くなかったのです。セロリのサラダ(オルランド)【材料】セロリ(7cm長細切り) 3本/レモン(氷水で冷やす) 1/4個/にんにく 1/2個/アンチョビ 2.5枚/イタリアンパセリ(粗みじん切り)・塩 適宜/オリーブ油 大さじ1【作り方】1. ボウル(内側)ににんにく(断面)をこすり付ける。アンチョビを加えて潰す。塩、オリーブ油を加える。セロリ、イタリアンパセリ、レモン汁を加える。皿に盛ってレモンを添える。【備考】ELLE GOURMET 人気の料理レシピ 「「オルランド」のセロリのサラダ」https://www.elle.com/jp/gourmet/gourmet-recipes/a42184023/orlando/ 非常にシンプルなサラダです。マヨネーズやフレンチドレッシングが定番ですが、このイタリアンな食べ方も随分以前から目にします。昔から定番なだけあって安定の美味しさ。セロリとカブ、生ハムのマリネ【材料】セロリ(斜め切り) 1本/カブ(2等分/薄切り) 1個/生ハム(1cm幅) 4枚/【マリネ液(混ぜる)】オリーブ油・白ワインビネガー・ 大さじ1/粒マスタード・はちみつ・塩 小さじ1/2/胡椒 適宜【作り方】1. 全ての材料を和えて胡椒を散らす。これは定番の生で食べるタイプ。ちょっとだけ御馳走感のあるサラダで、セロリ好きなら美味しいと思います。セロリとカブ、イカのアンチョビバター炒め【材料】セロリ(斜め切り) 1本/カブ(半月切り) 1個/イカ 50g/生姜・にんにく・赤唐辛子(砕く)・アンチョビ(刻む)・オリーブ油・白ワイン・バター・塩・胡椒・レモン汁 適宜【作り方】1. フライパンにオリーブ油を熱して生姜、にんにく、赤唐辛子、アンチョビを炒める。セロリ、カブ、イカを加える。白ワインを加える。バター、塩、胡椒を加える。レモン汁を加える。 セロリの炒め料理は中華料理で見掛けますが、これはイタリアン寄り。炒めると香りはマイルドになりますが、食感は良いままなのでセロリが苦手な人でも食べられるかな。セロリのキーマカレー【材料】玉ねぎ(粗みじん切り) 1/2個/にんにく・生姜 1片/セロリ(みじん切り) 1本/トマト水煮 1缶/豚ひき肉 150g/カレー粉 大さじ2/鶏がらスープの素 小さじ1/水 100ml/塩 適宜/クミンシード 小さじ1/2/カルダモン 4個/クローブ 6個【作り方】1.鍋にサラダ油を熱してクミンシード、カルダモン、クローブを炒める。にんにく、生姜を加える。玉ねぎ、塩を加える。セロリを加える。トマト水煮を加える。火を止めてカレー粉を加える。豚ひき肉、鶏がらスープの素、水を加えて煮る。塩を加える。 セロリを煮込んだ料理も色々あって好きなんですが、同じ煮込みでもカレーにしちゃうというのは案外変わっているかも。だしの一部みたいにこっそり忍び込ませるんじゃなく主役扱いにするのも実はとても美味しいのです。
2024/11/22
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もう結構ないい歳にも拘わらず、ぼくは一流ではないことは当然として、一流と呼ばれる何ものかと接点を持つこともほぼないままに過ごしてきてしまいました。つまりぼくは一流とは、とんと縁がないのであります。スノッブな生き方は嫌悪すべきものと強がってみせてはきたけれど、本音を言えば一流の人と呼ばれるような生き方もしてみたかったのであります。いや、自らが一流というのはそれはそれでしんどそうだからそれは求めないまでも、たまには一流の人と親しく接してみたり、一流の環境だったり、一流の食事や飲酒を体験してみたいと願っているのでした。何事につけ経験してみるべきだ、などというお試し体験的なのではなく、もう少し積極的に、具体的には年に何度かは一流と呼ばれる場所に身を置いて一流の料理と酒を堪能したいのだ。贅沢は言わぬ、年に数回だけでいいのだ。普段は安酒場で充分満足だし、家では自ら下手なりに料理に励むから、だからお願いだから年に数度、いや一度だけでもいいから、優雅に一流を満喫させてもらいたいのです。そんな願いが届いたって訳ではないけれど、現在の日本で料理が一流だって呼び声高いホテルディナーを喫する機会を得たのであります, といった次第でやって来たのが大手町にある一流ホテル、パレスホテル東京であります。自画自賛を含めた評価を適宜抜粋すると「『フォーブス・トラベルガイド』のホテル部門で日系ホテル初の5つ星を獲得、「最上質の日本」が体験できるホテル、ナンバーワンよりもオンリーワンのホテルでありつづける、などなどご立派でいらっしゃる。どんだけすごいのか館内に入ってみたけれど、宴会場のあるフロアーは閑散としているし、あまり飾りっ気もなくてこんなもんなのかねえなどと思ってしまうのでした。まあ,宴会場のあるフロアーはこういうものと割り切ることにするのだ。何といってもこの夜のお楽しみは「ミシュランガイド東京2024」で一つ星レストランに認定されたフランス料理「エステール」の料理にあるのです。会場入りする前にホテル直結のブーランジェリー&パティスリーでいくつかのパンを買い求めるのでありました。それと同じパンがコースの開始と同時に配されるのでありますが、これが驚くばかりに美味しかったのです。ぼくはパンマニアというほどではないけれど、催事を含めて各地のパンが売られていたら、案外なことに値段に(あまり)糸目をつけずに買い求めてしまう程度にはパン好きなのでありますが、ここのはここ数年のヒットであった軽井沢や神楽坂、築地なんかの有名店のものを遥かに凌駕するホームラン級の当たりだと思えたのでした。コースの料理のあれもこれもどれもが美味しかったけれど、このパンこそがぼくに最大の感銘をもたらしたのであります。この集まりからすでに数カ月が経過し、パン熱に拍車が掛かってあちこちで買い求めては食べ比べてみているけれど、今時点でここを上回るものには出会えていない。すでに何度か買い求めているけれど、しばらくはもう他所にお金を落とさずにここのパンを食べ続けるのがいいかもしれないなんて思い始めているのであります。そう考えるとパンだけは一流のものを食べられているのかなあなんて思ってみることにしましょうかね。
2024/11/17
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近頃はあまり語らなくなったけれど、ぼくは青井の酒場に何度も驚かされてきました。「居酒屋 あおい」「もつ焼 りき」「居酒屋 たむら」「もつ焼 五月(さつき)」「虎の子」「もつやきの店 富ふじ」「なかむらや(ナカムラ)」「やまびこ」。これは手持ちのメモだけを頼りにして列記したもので、正直なところ半分は記憶に残っていない酒場なのでありますが、○印が付してあるところからも気に入ったことは間違いありません。一応お断りしておくとぼくが○印を付すことはよほどのことがない限りないほどに珍しい事でありまして、それだけをとっても青井の酒場をいかに愛しているかお察しいただけるものと思うのです。その筆頭に挙げるべきが「もつ焼き みやま」でありまして、ここは本当に大好きで、引っ越してきたいと思うほどでした。こちらの店の方のご家族の方から書き込みをいただいたことをよく覚えています。ところが、憎らしいことにこの近所に住んでいるという羨むべき男が身近に存在したのであります。そしたらその彼の家の近くにぼくのいかにも好きそうな酒場があると教えてくれるのですね。でもぼくの趣味をホントに理解しているか不安だったので、調べてみることにしたのです。これまで渋い酒場が好きといって、実際に渋かった試しなどついぞなかったから疑い深くもなっているのです。そしたらそれなりに情報がありました。でも大概は最低限の情報があるだけであまり参考になりませんでしたが、以下のサイトでははっきりと店の様子を見て取ることができたのです。https://saka-navi.com/archives/38976 しかし、クリックして画面を開いた時点で見るのをやめました。その理由は分かる人には分かるはず。それはともあれ、知人から店の概要は聞いてしまったので、これはもう行かない理由など存在しません。 ということで訪れたのは、「とん平」であります。かつてはつくばエクスプレスの沿線上に道路はなかったらしいのですが、今は2車線の通りが我が物顔で通っています。地元の人は便利になったのでしょうが、味気ないことは否めません。A氏と一緒に酒場を目指して歩いていると当の知人と遭遇。彼は家族と所用があるようで、ご家族とあいさつをしただけで別れたのですが、この息子もそこを気に入ったとのこと。楽しみだなあ。やがて五反野駅に繋がる商店街―五反野ふれあい通り商店街なる看板が出ています―が見えてくるので通りを進むとすぐに脇の路地に赤提灯が見えます。これはまた本格的な渋さでありますねえ。これはもうこの雰囲気だけで好きになってしまいます。じっくり記憶に刻み込みたいところですが、寒さに追い立てられるように店に入ります。カウンター10席、小上がり2卓と奥にも小さな座敷があります。先客は2名のみ。A氏は戸の閉め方が半端でオヤジに叱られました。うんうん、いいねえ。カウンター奥の席にお邪魔しました。厨房ではご高齢の女性が一人で奮闘中。ちょっと注文に気を遣うのだけれど、あまり躊躇てるのも変なので頼んだけれど反応なし。耳が遠いのかなあ、でも聞こえて内容でオーダーが通っている場合もあるのですね。じゃあツンデレなのかというとそういう訳でもなくて単に忙しいのだと思うことにしよう。鮪刺身はそこらの海鮮居酒屋なんかよりよほど立派だったし、ソーセージやイカフライはすごいボリューム、お隣の頼んでいた鮪山かけもすごい。そして250円のチューハイがしっかり濃い目なのも嬉しい事です。ここは聞きしに勝るすばらしい酒場であることを確信しました。「もつ焼き みやま」にも匹敵しうるかもしれないなあ。ということで両店をハシゴすることを推奨しようかとも思ったけれど、両店ともに青井駅から700mの位置にあって、それぞれが近ければいいけれど、「とん平」と「みやま」までの距離は1kmあってちょっと不便かもしれないなあ。こうなると青井にはまだまだ余所者の手の届かないすごい酒場が眠っているようで探索気分がふつふつと湧き上がるのでした。
2023/02/15
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若い時分には折に触れては東急多摩川線に揺られ、鵜の木駅に降り立ったものです。以前も書いたのでもったいぶらず、さらには引っ張りもしないつもりですが、ここにも映画館がありました。鵜の木安楽座といったか、通ったと書いたくせにそれすら曖昧なのだから情けない。当時はお金もなく月刊の『シティロード』をやり繰りして購入、週間の『ぴあ』には手が出ず、月の後半の未定なスケジュールを補完するためめっきり図書館の世話になったものです。その情報誌を握りしめて初めてこの町を訪れたときの事をつい昨日のことのように鮮明に記憶しているかといえばやはりそんな事はなく、費やしたお金と時間も虚しく肝心の映画すら何を見たかを含め記憶の彼方にフェードアウトしてしまっているのです。しかし、その映画館の場所は思い出せぬけれど、窮屈で小便臭いその空気というか気配を思い出そうとすると今でも皮膚や嗅覚がざわめくのです。 なんて戯言など語っている場合ではない。と書くとこれから知られざる名店へと話が広がりそうであるけれど、そんなことは消してなく駅前の古いことが取り柄の酒場が待ち受けているだけなのであります。駅を出て北側に進むと「山陽」たいういかにも古い中華料理店があります。こんな店なら若い頃に来ていてもちっとも不思議じゃないのだけれど、先に書いたのは誇張でもなんでもなくて本当に貧しかったのです。こう書くと実家がよほどビンボーだったと誤解されかねぬので言い訳しておきますが、そこまで貧しくはなかったのです。単に映画だったり、旅費だったり、書籍の購入にその多くを投資していただけであります。店内に入ると嬉しいことに呑んでるおぢさんがいます。誰も呑む人のない中で狭い店内で呑むのは、やはり少しばかり抵抗があるものです。カウンター席で呑むその方は一時同士なのです。だけれどもぼくのように安易に連帯感を構築するような者とは違いそのお方は孤高の道を押し通すようです。横手やきそばが何故かあるので頼みます。ラーメンで飲むのも消して嫌いではないが散々語ってきたように貧乏なぼくは汁まで飲み切りたくなるのです。だからぼくは懸命にも焼きそばを選択するのです。こればかりは親に感謝すべきですが、痛風や糖尿病に対して恐れはないけれど警戒はしている。今のところそうした症状を経験せずにおれぬのだから、こればかりは親が頑丈に産んでくれたおかげと感謝せざるを得ないのです。ともあれ、ここはどこにでもあるけれどやはり何処とも違う素敵な店でした。
2017/11/17
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この夜は知人の親類が亡くなったため,新松戸駅といより流山電鉄流山線の小金城趾駅に近い斎場に向かいました。小金城趾駅という駅名どころか流山電鉄にしろ流山線にしてみたところで鉄道マニアか近隣の人くらいしか聞いたことすらないかもしれません。せっかくなので帰りに小金城趾駅の周辺で呑むつもりでした。ところが予想外に立派なお通夜でそのお清めも充実していたので,億劫になってしまい(というか同行者たちが新松戸駅に出てから呑もうと強く望んでいたため)新松戸に出ることにしました。6名連れなので入れる店があるでしょうか。なんて杞憂は全く不要でした。 最初に入ったのは駅前からすぐの地下にある「ととや」です。店内は地下にある店にしてはかなり広くて,長いまっすぐなカウンターを越えるとテーブル席と小上がりがあります。ちょうどメスフラスコみたいな形状です。古い飲食ビルのお店らしく内装は汚いわけではありませんが,薄暗い感じで,ここで一人で飲んだらけっこう侘しさを感じるんだろうななんて思います。一行はそこそこ飲んでいて酔っ払った勢いもあってものすごい量の焼鳥がオーダーされています。大皿2皿のすごい量の焼鳥ですが,みるみるうちに串だけになってしまいました。品書:ビール中:450,サワー:350~,酒2合:550,骨付き唐揚:500,牛すじ煮込:400,やきとり(ととやセット)5本:700,つくね:100,砂肝:150,軟骨/ももねぎま:180,手羽先:200),鳥わさ:500,鳥みそ:300,牛すじ煮込:400 4名は新松戸駅の改札をくぐってしまい,残された2名でもう一軒訪れることにしました。流山電鉄の幸谷駅を越え,さらに進み以前一度入ったことのある駐車場のはじっこでビニール張りのバラックで営業を続ける焼鳥屋が魅力的だったのですが,そこは後にとっておいて,向かい側の「かめや」という焼鳥屋さんにお邪魔することにしました。「ととや」同様に細長いお店で奥がぽっこりと膨らんだ造り,ただしこちらは一軒家のお店です。外見はちょっと気の利いたお店のようですが,店内の造りは「ととや」とそっくり。さんざん焼鳥は食べてきたのにここでもまた焼鳥をオーダーしてしまいます。さすがにこちらでは注文は控えめにしておきましたけど。品書:ビール大:510,チューハイ:300,酒1合:330,串焼2本:320~,たこぶつ:500,ゴーヤチャンプル:560,フライドポテト:350 それでもまだ物足りずひとりビニール張りのバラック焼鳥に向かいます。ところが店の老夫婦がちょうど閉店準備中。一杯だけとおねだりしますが断られ,店の名前だけでも聞き出そうと,伺ってみますが,「見てのとおりの名前だよ」とはぐらかされてしまいました。
2012/12/24
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またまた青井駅の酒場に行って来ました。青井駅のさらに向こうにあるもつ焼の名店です。いつもの事ですが運賃の高いつくばエクスプレスは利用せず、常磐線各駅停車の綾瀬駅にて下車し、そこからひたすらトボトボ歩いて向かうのです。さも遠い道程を歩いているかのような書きっぷりですが、足速に歩けば20分は掛からずに青井駅に到着できるでしょう。でも向かっているのはそこからさらに10分位歩かないと辿り着くことができません。 向かったのは、「もつ焼き みやま」です。こここそがこうして気に入った酒場を再訪する事を今年の目標ー酒場巡りを目標に据えるのもどうかと思うがーとする事を決しさせた数軒のうちの一軒なのであります。でも如何せん場所が場所なだけにそうそう行けるわけではありません。いや、実際歩いてみると思いの他近いことが分かるのですが、心理的な距離感が都内においては群を抜いて遠い立地なのです。呑んだらそんなこと気にならなくなるのですが、帰りのことを考えるとどうしても怯んでしまって足を伸ばすのを躊躇してしまうのでした。久びさに訪れて見の前に立つとああ、やっぱりいい感じだなあとすっかり上機嫌になるのです。前回は塞がっていたカウンター席がこの夜は嬉しいことに空いています。前回は独りで4人卓と気兼ねしてしまいました。さて、早速もつ焼を焼いて頂く事にしましょう。カシラ、タン、ハツなどと注文を口にすると5本ずつたけどいいの、と言われそう言えばこちらは縛りがあるのだとようやく思い当たります。だから誰かと連れ立って来ることにしようと思ったことを思い出しますが後の祭りです。種類こそ頂けませんでしたが、ても代わりというわけではないのですが、店のご夫婦と親しく会話させていただきました。前回はおっかないご夫婦と感じたのは大間違い、愉快でお喋り好きな方たちです。38年前に店を始め、30年前にこの店舗に移られたとか、もっと古くからやっていそうな濃厚飴色の空間がとても素晴らしい。ここには遠方からタクシーで来られる方も多いとかで、家族連れの多いことからもオトクさが知れるというものです。近いうちに人数集めて再々訪決定です。
2016/02/13
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とある休日の朝、無性に知らぬ町に出掛けてみたくなることがあります。いつものことですが予算はいつも同様にカツカツであります。さて、都内では忘れてしまうくらいに印象の薄い町はあるけれど、知らぬ町など望めません。と言ってあまり遠くまで出掛ける時間も資力もなし。ふと思い付いたのが東武野田線です。そう決めたら事は早い。本当なら時間とお金があれば端から片っ端に下車してみたいところですが、それでは運賃が嵩み過ぎます。なるたけ手頃に旅情を感じようなどという前提なのです。こういう時に目指す駅の指標となるのが、喫茶店のある町です。風光明媚な自然に溢れた土地や逆に住宅街が好きな方というのもおられるみたいですが、ぼくが好きなのは喫茶店が数軒あるようなごく普通のでも再開発なんかで次々に過去のものとありつつあるようなささやかな町です。そんな町が野田線にあるのだろうが、慌ててネットで調べると候補として挙がってきたのが川間という聞き慣れぬ駅です。川の間とは如何なるところなのか、カフェのような店名も多いのですが何軒かは、古い喫茶店もありそうです。そうと決まれば行動は早い。埼京線に揺られて大宮駅に向かい東武野田線に乗り換えるのでした。 東武野田線に乗り換えると多少なりともローカル感が出るかと思いましたがそれは甘い期待だったようです。これまで何度かこの路線を乗り通しているし、主要な駅くらいならさすがに下車していますが、これではせっかくの川間駅への期待も萎れてしまいます。まずは検索で引っかかった中では良さそうに思えた「ポトス」にお邪魔しました。この手の外観の店は当たり外れが読みにくく、結論としては外れとは言えぬまでも期待外れでありました。ランプシェードや電話ボックスにそれなりの年季を感じてみても全般にもの足りぬことは否めない。あまり長々書くと悪評っぽくなるので、最後にこういう喫茶店がある川間はわるくはないと記しておきます。 他にも「ポピー」、「インデン」などの喫茶店がありましたが果たしてやっているものやら。駅に直結の「サンエトワール」だけが賑わっていました。 電車賃を気にする旅ではありますが、このまま引き上げるのは如何にも悔しいこと。なのでしばらくぶりに江戸川台に下車してみることにしました。野田線を使うのが稀なようなことを書いてきましたが、この江戸川台にはしばしは訪れたことがあります。かつての友人が江戸川台に住んでいて、その友人宅に泊まりがてらで呑みに通ったものです。過去形で書かざるを得ないのは残念なことにその年長で面倒見のすこぶる良かった友人は数年前に亡くなったのです。ここでその友人のことについて語るのは適当ではないでしょう。ただかつてしばしば訪れたこの町は、やはり以前とさほど代わり映えなく寂れ果てていて、その駅前商店街を歩くと寂寥感を越えた孤独を一身に受け止めることになるのです。 そんな駅前の商店の密集した裏通りに「ボア」があります。表から見ると真新しいカフェのようですが、店内は紛うことなき喫茶スナックです。緩やかにクランクしたカウンターに、長いソファは如何にも夜はカラオケ営業向けの造り。サイドボードの丸枠と並ぶサントリー角と黒霧島も整然と並ぶと味があります。クリーム色のソファやスツールは駅前でありながら場末という郊外の店の典型として、これもまた味わい深くはあります。しかし、それでも初めは一人だけだった店に次々に訪れる客がいつしかカウンターいっぱいになってみると、それが全て高齢の爺さんたちであり、その話題が下ネタに競馬と近隣のスナックのことばかりなので、ぼんやり聞いているうちに脳みそが軽くしびれるのでした。ここは女性一人なら午前中にしたほうが良さそうです。 駅の西口には、なかなかに豪奢なスナック風の「牧歌」とチモトコーヒーの看板と派手なテントが印象的な「小さい虹」がありましたが、いずれもカラオケが鳴り響いています。前者には思い切って入ろうとしたのですが、自動ドアはぴくりともしないのでした。郊外の喫茶店はどんどんスナック化していて、それは致し方ないのですが、昼日中からカラオケ店と化していくのは残念なことです。せめて午前中だけは静かにコーヒーを飲ませていただきたいものです。
2016/05/01
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松戸との因縁は当分断ち切れそうもありませんが、やはり未だに上手く付き合えていない気がします。それは町が日ごとに都心への通勤客のためのベッドタウン化され、それが加速化されているように感じられることもあります。ちょうど町の商店や飲食店を担ってきた世代が引退を迫られるタイミングと一致した事もあるのかもしれない。後継者もおらず、実際のところ後継に店を託したところで苦労を押し付けることにしかならぬと考えられているのかもしれない。そんな不幸の連鎖が町をただ帰って寝るだけの住宅街化させるのだろうけど、それを妨げる力など持っていやしないし、それ以前にそうするだけの大義もありはしないのです。だから松戸が誇る数少ない酒場の一軒だったーと過去形で語ることの何たる無力感である事よー「開進」が閉店していたのを遅まきながら知ったとしても嘆く資格すらぼくには残されていない気がする。そんなに大事に思っていたのならもっと頻繁に顔を出すべきではないかと言われてしまえばそれまでなのです。 虚しさなどわがままごとと気を取り直して町を徘徊します。徘徊している時点でどこか呆けてしまっていたのでしょう。これまでもそうだったかもしれないけれど、今後数限りなく繰り返さ、さらに加速を増すに違いない古い酒場との決別に慣れることなどできるはずもないのだろうなあ。大層なことは願いはしないから、どうぞぼくが死を迎えるその日までは一軒だけでもいいから通える範囲内にそんな酒場があってもらいたいのであります。西口の馬橋寄り、松戸としては飲食店の集まるビルの2階に見慣れぬけれど見知ったもつ焼店を見つけました。見慣れぬというのはその店を目にしたのが初めてという意味で、見知ったというのは東葛地区いや松戸駅の東口にも店舗があるお店が出店していました。いつの間にできたのか「生つくね元屋 松戸2号店」は、最後の一軒とするには大いに役不足でありますが、それでも近頃のチェーン系居酒屋では気に入っている方です。東口はカウンター席がメインの造りですが、こちらは建屋の形状や広さ、それとも水回りの構造が要請するのか判断しかねるところですが、とにかくテーブル席がメインです。用途に応じて東西の店舗を使い分けるという選択肢もあるかもしれない。たまたまこの日のことだけだったのかもしれませんが空席が目立ちます。というか他にお客さんがいない。東口の店舗はいつもそれなりにお客さんがいたと思うのだけれど。まだまだこちらは認知されていないのか。いや東西でお客の引き合いをして相乗的に客が減ったのでは元も子もない出店計画だったのかも。なんて適当なことを思いながら呑みだします。こちらはお手頃で肴もそれなりに健闘していると思うのです。いやまあだからと言って何事かを語ろうかと思うほどに飛び抜けた何かがあるわけじゃないのであって、そうなると途端に語ることがなくなるのであります。そうそうハイボールを頼んだんだったっけかな、可愛いお嬢さん従業員からジャンケンを挑まれるのであります。近頃、驚くべき勢いで勢力を拡大するー余りの急激さで近い将来が危ぶまれもする、ホントは少しも危ぶんでなんてないのだけれどー串カツの何とかいうお店なんかでも似たようなことしてるけど、あれって店にとってなんかメリットあるのかしら。販促として国産ウイスキーメーカーから委託されているのかなあ。ともかくとして、勝負を挑んでくるのがいつも決まって可愛い女のコなものだから、さほど好きでもないハイボールを賭けての勝負となるのであります。ぼくは女性のことは大事にすることにしているので、当然負けが込んでしまうのです。それにしてもジャンケンなんて何年いや何十年ぶりにしたことか。下らぬけれどこれはこれで話題にはなるのでありとしよう。
2017/05/17
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この記事がアップされるのは8月下旬頃となる予定ですが、実際にこれを欠いているのはその一カ月前の時点であります。コロナ感染者数の爆発的な休増状況はどうなっているのでしょう。その以前にぼくはすっかり夏バテ気味で、呑み歩こうなんて気力はすっかり減退しています。さて、今晩も面倒だからいつもの立ち呑み屋でお決まりのチューハイをいつもと同じだけ呑んで帰ることにしようかと職場を出ようとしていました。そんなほぼ定時勤務に達したばかりですが、職場から極力早く逃れたいぼくは早々に玄関から表に出ようとしていたのです。そこに親しくしてもらっている同学年の同僚と会ってしまったからここは図々しくもどこか最寄りの交通機関の駅まで送り届けてもらおうと交渉を持ちかけたのでした。案外あっさりとその願いは受け入れられたけれど、さてどこまで送ってもらおうか。柴又や矢切方面を通るようだけれど、帰りがちょっと面倒な割に立ち寄持ちり酒場の候補がほとんどつ思いかないのでありました。う~ん困ったなあと思っていたらいつしか車は見覚えのある通りを通過していたのです。和洋女子大学や国府台高校が見えたのです。これは松戸駅と市川駅を結ぶ京成バスろせんだからきっと京成線の市川真間駅もしくは国府台駅からそう遠くはないはずです。だったらここいらで下ろしてもらうことにしよう。この界隈には以前目的していた町中華の良さそうな店もあったから、いざとなればそこを目指せばいいじゃないか。といった次第で知人に声を掛けてこの辺で車を停めめやすいところがあったらそこで下ろして欲しいと頼みます。女子大生たちがぞろぞろ歩いているからこれに着いて行けばいずれかの駅に辿り着けるはず。でも真っ直ぐ駅に向かってもつまらぬから時折路地を折れてみたりしつつじわじわと駅に接近する作戦です。おお、洋風居酒屋の「バロン」なんて店がありますね。店舗は地下にあるようです。カラオケののぼりも出ていますね。これはなんとも入りにくそうな店だ。かなりハイレベルの酒場関門でありますね。どうにも気になる酒場が見つからなければ戻ってみることにしよう。しばらくすると駅が見えてきました。思ったより歩いた気がします。今のところは洋風居酒屋以外に収穫はなし。駅は国府台駅だったようです。町中華は市川真間駅との中間だから結構引き返すことになります。やはり国府台駅周辺で酒場探しは無謀だったか。と思い掛けた時にやき鳥とおにぎりと記されたの案外目立つ黄色の看板が視界に飛び込んできました。 江戸川の堤防に接するように「やき鳥 おにぎり 菊乃家」はありました。以前、国府台駅で呑もうと思ってGoogle Mapで下調べしたことがありますが、この酒場の存在は確認できなかったはずです。っていうか今調べても一切表示されないじゃないか。こういう取りこぼしがあるところがこの地図サイトの欠点でもあり逆に長所でもあるのです。だってねえ、全てがネット上で調べられたら町を彷徨う楽しみなど全てなくなってしまいます。それにしてもこんな駅側にこれほどに味のある酒場があったとは。ネット上でも数件がヒットするのみでこうして思い付きで下ろしてもらわなければ遭遇することはなかったはずです。こういう事があるからやはり酒場探しはやめられないのです。店に入ると母子のお二人が出迎えてくれます。カウンターは狭いので奥の卓席を勧められます。4人掛け2卓をつなげていてそれが2列ありますので、カウンター席を含めるとギュウギュウに詰め込めば20人程度収まりそうです。しかし先客は1名のみ。翌日に迎える大レースに備えて競馬新聞を片手に研究中です。ぼくは巨大なテレビ前のある意味特等席です。チューハイをお願いし、手羽先とカシラを注文します。種類は鶏、豚交えて10種程度で2本もしくは3本で一皿となっています。お通しはたっぷりの枝豆です。今年は不作なのかあまり口にする機会がないから嬉しいですね。後から訪れた常連は枝豆、かぼちゃ、マグロがあるけどどうするか尋ねられ、マグロにして、ああかぼちゃも出してって頼んでましたね。それもいいなあ。でも焼鳥もとてもジューシーで熱々で美味しかったなあ。それにしてもこんな駅から至近なのに地元の方たちに知られるだけで、世の酒場マニア(ぼくもそうなのか)らにほとんど知られることなくやってこれたのは驚きです。ぼくなどが偉そうに申し上げることでもありませんが、もしこちらを訪れる方がおられるならぜひこの雰囲気を荒らすようなことのないことを願いたいです。
2022/08/24
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なんら目星もなく酒場を目指すと外れがほとんどで,まれに当たりの店を引くと実際以上に高く評価しちゃったりすることがあります。それでもそんな偶然の選択をしたときには,さすがにそれなりの場数を踏んだだけのことはあるなあと己の嗅覚の確かさに過大な自信を抱いたりしてしまいます。逆につまんない店や驚くほどの請求をされたりした場合(こちらのほうが圧倒的多数)には自らの未熟さを責めることはせずに近頃の飲み屋のオヤジたちはまったくなってないなあと店側の責任に転化してしまいます。この夜もやはりどちらかというと後者を選ぶことになってしまったのでした。なお,この夜は毒舌かつ思ったことすべてが口をついてほとばしり出てしまう性癖の持ち主であるわが上司のT氏を伴っての大塚酒場巡りなのでした。 最初に伺ったのが「ぐいのみ 大」,ネット情報によるとこの銘酒酒場は,「串駒 江古田店」からの流れのようです。「串駒」といえばご存知,数ある大塚の銘酒酒場でもトップクラスの知名度を誇るお店ですがどうした因縁からなのか,同じ大塚で店を出されたようです。カウンターとちょっと広めの座敷がありますが,居酒屋情緒はまるで感じられず,なんだかちょっとがっかり。内装で客を楽しませるという考えはあまりないようです。カウンターに着くやメニューを開いたT氏の口からは早速値段の高いことへの不満が噴出します。この方の不満の垂れ方というのが豪快というか恥ずかしいというかあまりにも露骨かつ直接的かつボリュームが高いため,同席していて冷や汗が滲むほどです。ビールの次は本日のおまかせ利き酒セット3種というのに移行します。故郷の新潟に思い入れの強い方なので新潟の酒がないことに非常に憤りを覚えるようでさらにご機嫌は悪くなります。この店への怒りがピークに達したのが小ぶりなピザを目にしての一言を発した時のように思われます。「ちっちぇえなあ,ねえおねえさんこのピザちっちゃいねえ」と女性従業員にまで話し掛けます。ぼくも内心では思いはするものの口に出すのは憚られます。まあそれが普通なんでしょうけど。ピザを口に運ぶと「うまい」と言って,ものすごい速さで平らげていきます。楽しみにとっておいた一切れさえも奪われてしまいました。ともあれ,ぼくの財布事情ではとても通えそうにはありませんが,アベック客が多い中,ひとり客などもおり広範な支持を獲得しているようです。品書:ビール中:600,本日のおまかせ利き酒セット3種:980,酒(亀泉)1/2合:430~,おつまみジャコ:280,しらすおろし/本ししゃも:480,にんじんシリシリ:450,無農薬季節の農園やさいいろいろ盛:880~ 予定を上回る出費に御機嫌を悪くしたT氏は次はお前のおごりななんて無体なことをいうのでしからばと向かったのが「立飲みコーナー 大つか」です。随分と行っていないのでちょっと楽しみ。すると店内どころか外にまで人がはみ出ています。こりゃ困ったなあと思ってよくよく見ると屋外のテーブルはお隣のお店のもののようです。「スタンディングバー いとっこく」というお店だったでしょうか。スタンディングバーですが椅子があって,こちらはお隣と違ってお客はひとりだけ。値段はお隣に引けを取らない程度には安かったと思うのですが,二軒の入りは歴然と差があります。確かに呑んでいてどうしてだかあまり楽しくならないのでした。
2013/10/23
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東浦和駅は、JR武蔵野線の駅で都心からは多少アクセスが良くなかったりもするけれど、今では宅地化が進み、都心に通う勤め人のベッドタウンとして定着しています。ぼくなんか、いくら住居費や地価などが都心に比べて圧倒的に安くても住みたいとまでは思っていなかったけれど、今となれば少しばかり職場が遠くともアフター5になれば毎夜とまでは言わぬまでもたびたび都心の周縁にいそいそと出向くわけだから、転勤などを命じられるたびに各地を転居して回るのも悪くはなかったと後悔しつつあります。それを言い出したら元々がほくの仕事というのは転勤がそう多くもないし、さらにはそれを理由に今の勤め先に決めたのだから全ては身から出た錆に過ぎぬのです。しかし、行き先が武蔵野線の沿線となるとわざわざ安くもない運賃を支払ってまで手掛けるのは馬鹿らしく思えもするのは、けしてこの沿線が冴えないからなどという暴言を吐くつもりはサラサラないのであって、それこそ通勤で利用していた頃があったからに過ぎぬのでした。 さて、それでも東浦和にはほとんど縁なく過ごしてきました。数ヶ月前にキムタクの出演した連ドラでロケ地となったらしい喫茶店を訪れた際に見掛けた一軒の酒場が気になったから再訪する気にもなったのでした。普通の感性であれば見過ごすのが当たり前なのかもしれぬけれど、その点ぼくは只者ではないらしいのだ。駅からトボトボと退屈な住宅街を進んで行くとやがて「やきとり みちのく家庭料理 あづまや」という看板が見えてきました。置き看板は真新しく眩く灯っているけれど、以前目にした日中にはこんな目立つ、さして現役であることをあからさまにする様な根拠になるものは皆無であったから、さてここがやっていないとなると万が一の時には押さえの酒場など想定していない。なのにそれでも人を誘ってしまったのだから何という大胆というか無謀さだろう。お誘いした方は既にリタイアした久しく時間は持て余すほどあるなどと、ぼくをして猛烈な嫉妬心を煽り立てるのでありました。しかしそれでもいくらでも時間があるとはいえ、ぼくなんぞに付き合ってくれるとはありがたい事です。しかもわざわざ自宅から遥かに離れた東浦和まで足を伸ばしてくれる、そんな稀有な人物はそうはいはしまい。それはともかくとして、おお、やってるじゃないの。お隣りは「あづまや酒店」なので、酒屋さんが副業として呑み屋さんを併設したのでしょうか。そう思うとこの呑み屋店舗の方は酒屋の備蓄用倉庫だったのではなかろうかなんて風にも思えてくるのです。看板には山形の料理が記されているから、こちらの女将さんは山形のご出身か。店内に早速入ってみるとカウンター席のみで十席足らずです。席は半分程埋まっています。壁の品書にも山形の味覚がいくつも記されています。大定番のいも煮に始まり、玉こんにゃくやもってのほか―これは菊花の酢の物だったか―、山菜も色々ありますが、この日はまだ入荷前だったようです。残念だけれど季節物だから仕方ないねえ。他にも数は少ないけれど酒に合いそうな肴が取り揃えられているからまず支障はなかろう。でもやはり玉こんにゃくは外せないですね。ここのは串に指したものではなくて、丸いのが皿の上で落ち着きなくコロコロするのを串で捕まえて頂くスタイルです。本場では出汁をスルメで取るようですが、ここのもそうなのだろうか。よく味が染みていて大変美味しい。なんでこんな質素なものにシミジミと旨味を感じられるのかいつも不思議に思うのです。初めは常連ばかりに構っておられた女将さんですが、リタイアさんとぼくの山形旅行の話を聞き付けたらしく、色々とお話させたいただきましたが、結局ここまで書いた疑問を投げかける機会は逸してしまったのでした。次回こそ伺いたいところだけれど、ちょっと遠いしその機会はあるのかなあ。 さて、もう一軒。まだまだ面白い酒場が住宅街の片隅にでも潜んでいそうですが、手近な「居酒屋 河水」にしました。見掛けは郊外型のゆったりした造りの食事処といった雰囲気で先におられた2グループが帰られるとパッタリと客足は途絶えてしまい、我々だけのためにこの広いお店を開けて頂いているようで凝縮してしまうのですが、ここ、見掛けはどうということもないけれど、料理がなかなかの物なのであります。なかなかの物って何だかよく分からぬ出鱈目な物言いですが、里芋のコロッケはトロトロでクリームコロッケのような優しさ。しかも芋本来のトロトロだからヘルシーで大変結構です。もとより里芋はカロリーが低いから尚更です。芋づくしですがジャガイモのピザという品は想像通りの見栄えですがこれが家庭ではこうはいかぬのが摩訶不思議。こんなありきたりの料理なのにどういう技を用いて成し遂げたのかしれぬけれど、どうもぼくの調理技術ではこうはならぬと白旗を上げることになったのでした。その技を知るためにもまた出向きたいところですが、いささか遠いのであると繰り返すしかないのでした。
2018/05/14
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先日呑みに向かったのは巣鴨。巣鴨はもともと居酒屋の少ないところで,おばあちゃんの原宿ともてはやされている地蔵通り商店街もアンパンで有名な個性パン創造の店を標榜する「アルル」や「ときわ食堂 巣鴨店」,ちょっと路地に入ると巣鴨に数少ない立飲み屋「立飲み天国 いいかげん」や真っ黒でカチンコチンの鉄玉子が名物の「台湾」といったユニークな店もあるので時折散歩しますが,実はあまり覗きたくなるような店がなくてけっこう退屈な商店街だと感じています。 居酒屋も北口側のロータリー周辺と南口側の風俗街周辺に多少ありますが,これまで随分と回っていますが,さすがに行きたい店はほとんどなくなってきました。そんなわけで今回は行きたくなかった店にあえて行ってみることにしました。南口方面に数軒思い当たる店があるのでまずはそちらに向かいます。 山手線からも見える「やきそばー HIT」と軒を連ねるようにして数軒のお店があります。その中で一番渋い感じの「居酒屋 やまじ」で飲むことにしました。カウンター10席と奥にテーブルも2卓あるようです。緑色の壁紙だったと思いますが,どことなくスナック風。居抜きで入ったか,業種を変更したんでしょうか。お客さんは常連らしき2名だけ。女将さんひとりでやっています。瓶ビールと焼鳥を数本焼いてもらいます。このタイプのお店でお通しがないのは珍しいですね。常連さんの一人は弁当だか夜食だかを作ってもらってましたね。案外家族的なお店なのかもしれません。とは言うものの3名の間で会話は注文以外はほとんど交わされることもなくなんともうら寂しい。ひたすらテレビ画面を眺めてすごします。値段設定は全般に高めですが,お通しなしだったので案外お勘定はお安く済みました。品書:ビール大:590,ハイボール/サワー/酒:370,焼鳥:120~,ジャーマンポテト/チーズ:380,ウインナーエッグ/ピーマンの玉子とじ:450 続いて表通りを歩いて「寿楽」に入店。町には当たり前にあるありきたりの中華料理店に入ります。鶏の唐揚とウーロンハイをもらいました。カウンターが店の奥深くまで続いています。お客さんはちらほら入っているだけで、店員さんも閑そうです。細長いグラスに入れられたウーロンハイは案外濃くて量も見た目以上にあります。鶏の唐揚は塩・黒コショーにうまみ調味料らしき物質がまざっています。ぼくは唐揚はこの食べ方が一番です。これにラーメン屋に置かれているあまり辛味のないさらあらの白コショーをさらに大量に付けて食べるのです。唐揚は5個もあってすっかりお腹が一杯になりました。ビール中:530,酒/サワー:350,瓶入り紹興酒:400,餃子/鶏の唐揚/揚げワンタン:300,めんま/冷やっこ/ザーサイ:200,ラーメン:530 腹はくちくなりましたが若干飲み足りないのでまたもや「やきそばー HIT」のお隣の「とんちんかん」にお邪魔しました。ところが,突然の記憶喪失に見舞われてしまい,すっかり記憶が欠落してしまっているのでした。なのでこちらの感想はまたの機会ということにさせていただきます。
2012/07/05
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江戸川橋は近頃お気に入りのエリアです。まあそれも大体一段落着いたから次に訪れるのはしばらく先の事になるかもしれぬけれど、まだいくらかの未練を残しているので前言を翻して今晩にでも行ってしまうかもしれぬ。とまあそんな具合に一度やってきた程度では回り切れぬ程度には魅力のあるお店があるのです。その何軒かについてはすでに酒場報告でもその片鱗を明らかにしてきましたが、実は喫茶にも打ち捨てる訳には置かれぬユニークな店舗にようやく入店できたりできなかったりしたので忘れぬうちに記録に留めることにします。 この「珈琲専門 JOY」の存在は、随分以前から認識していたしのだけれど、なぜだか知らぬけれど見て見ぬふりしてやり過ごしてきたのは、大いなる判断の誤りだった事を知ることになったのですが、損判断ミスをもたらすのがこのお店の外観に原因の一端があったように思うのです。何と言ってもこの愛想の欠片すらない素っ気なさは喫茶巡りをする者の気持ちを萎えさせるに十分に思えるのです。しかしまあ都内近郊にはもはやそれほどに未踏の喫茶が残されていない以上は行っておいても損はなさそうです。そして改めて店に向かって路地の奥に踏み入って行くとそのアプローチ感が都会的な無機質なムードで悪くないように思えるのです。そして店の扉を開けると、外観を裏切る思わず溜息すら漏らしたくもなる橙色の暖色に包まれながらもモダンでクールな空間が潜んでいたのでした。どこかしら北欧家具のモデルルームのような印象を覚えました。奥は団体様向けにも使えるよう仕切られているけれど、これがさり気ない仕切り加減で却って空間に広がりを持たせているようです。一転カウンターの構えは正統的で実に見応えがあります。そこで珈琲を淹れてくれるマダムはなかなかに癖のある方で、ぼくなどは好意的に迎えてもらえましたが、次のに訪れたサラリーマン二人組には冷淡さをあからさまにするのでした。どうやら値段の事をとやかくいう客はお嫌いらしいのですが、まあサービスの珈琲が600円となるといくらか怯むのも分からぬではない。第一、壁には片手に余る程度のアレンジコーヒーの品書きが出されていて、これが千数百円となるとやはり怯えてしまうのです。しかし、マダムが自ら泡立てた生クリームを頼めばサービスしたくれたり、さすがの風格を感じるのでした。 飯田橋方面にしばらく歩いていくと商店街と呼ぶには余りにも貧弱な感じの通りがあります。そこに「COFFEE 未知」はありますが、ここは何度訪れてもやってなかったのです。もう入店は諦めてしまおうと放棄しかかっていましたが、先日今しがたまで営業をしていた状況下に訪れる事ができ、扉の向こうを記憶に刻み付けることができました。内装はいささかくたびれて映りましたが、鉄製アームのモダンなチェアが整然と並べられており、都会の喫茶店らしさを束の間感じられました。初老というのも失礼なくらいのお年頃のご夫婦がおられたので、まだまだ現役かと思われますので、気になる方はぜひ。ぼくはもう満足ですけど。 またも折り返して、今度は護国寺方面に歩いていくと大きな通りに面してひっそりと「とちの木」がありました。スナック風の出で立ちでちょっと入りがたいムードがムンムンとしていますが、殊更気にしないようにリラックスした気分で入店することにしました。入ってみるとカウンターコーナーと談話室風のスペースが仕切られていて案外寛げそうなムードです。先の店にもどこかしら似たようなクールで実用的な雰囲気ですが、こちらは店の形状に合わせて複雑に席を配置しているためか変化があって飽きさせません。どうということもないと言えばそれまでですが、ぼくはこうした何気ない内装のお店に愛着があります。ほとんど経験したことのない都心のサラリーマンたちの溜まり場という感じが新鮮に感じられるのです。好みの差は当然あるでしょうが、ぼくにはこういう喫茶こそ、東京の喫茶らしいと思えるのです。
2018/05/06
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若者に人気の居住エリアに安定してランキングされるのが中央線の沿線各駅でありますが、三鷹の人気がいかほどのものかはさして興味もないことなので知りはしませんが、少なくともその先にある数駅は上位にランクインすることはなさそうです。メディアへの露出もほとんどなく、在京者以外にまず縁のない、いや中央線利用者でもまず利用することはなさそうな武蔵小金井にやって来ました。ここへは所用でここ数年に限っても何度か訪れており、でも日が暮れてから自由になれる機会を逸していて、呑んだのは指折り程度です。実はこの駅界隈には小規模ながら味わいのある呑み屋街が残されていて、何軒か入らねばならぬと悲願していた酒場があります。早速向かうことにします。 まず、向かったのが「百薬の長」です。よもや武蔵小金井にこれほどまでに理想的な酒場があるとは思いもよりませんでした。粗末な造りの店舗は早い時間なのに結構な客が入っています。待ちあわせていたT氏とかろうじて空席を見つけると、いそいそと腰を下ろします。差し向かいになった二本のカウンターだけのシンプルな店内で、都内ではあまり見られぬスタイルです。これだけても目に楽しい。店は女性二人で取り仕切っていて、壁に味のある字体で記された店名由来やもつ焼の部位の説明書きなど眺めているだけで飽きさせません。もつ焼以外の品書も低価格帯で多種用意されていて、その分量も控えめですがそれがむしろ独り呑みには有難い。客目線に立った素晴らしいサービスです。注意が必要なのが酒のオーダーの仕方、氷代が掛かったり一癖あるのですが、酒場慣れした方であれば容易にマスターできるはず、ぼくも次回はオーダーの仕方を覚えたので、必ずやさらにお得に呑みに来ることにしましょ。 呑み屋街の突き当りには、怪し気な飲食店ビルがあってぐるりと一巡りしたのですが、やはりかなりうらびれた酒場が入っていて、ほとんどはスナックらしいのですが異国の料理店や居酒屋らしい店舗もあって気になるところですが、ほとんど開いていません。そのビルの向かいに「鳥ひろ」がありました。通りでも際立って古ぼけたお店で、でもちゃんと酒場以外の何ものでもないと判別できるのが不思議です。時折廃屋なのか商店の抜け殻なんだか判然しない酒場もありますが、こちらは見た瞬間に酒場であることが認識できます。単に屋号が目に入っただけかもしれませんが、とにかくボロくて味があってひと目で入ることを決めたのでした。「百薬の長」には、すっかりT氏も参っていましたがこちらには今ひとつ気乗りしないようです。それというのも外に置かれた品書きに記されたその金額が高かったからという理由があったからで、でもなかなかここまで来る機会はないと何とか口説き倒して入りました。カウンターだけの雑然としたお店で雰囲気はかなり好みです。オヤジの無愛想なのもご愛嬌ですが、他に客は一人もいません。 独りで入っていたら結構気づまりに思えたのでしょうが、無愛想に見えたオヤジもぽつりぽつりではありますが口を開いてくれて案外気の良い方のようです。これっていう酒があるわけでもないし、旨い肴も期待しないほうが良さそうですが、これぞ酒場というお店でした。
2015/09/10
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先般、常磐線では千葉県最後の駅となる天王台駅で初めて呑みました。その際受けた印象はけして芳しいものではなく、むしろ再びこの駅で下車する機会は当分なかろうと思ったものです。と言うのは実は嘘なのであって、あの夜もう一軒立ち寄っていてそしてその酒場はなかなかに素晴らしかったのでありました。この酒場、常磐線の利用者で取手など下り列車を普段から利用している方で車窓を眺める機会があるならきっとご存知なはずです。線路沿いにあるのはもちろんのこと、駅からはちょっと離れた町あかりの届かぬ場所にポツネンとあるので、儚げでありながらもしっかり目立っている。教室の片隅で独り読書する薄幸そうな美少女のようなものです。 なんせ店名が「酒処 富士山」というのだから、佇まいがいくら枯れていても目立たぬ訳にはいかないはずです。こうした酒場を目の前にすると幾度となく古い酒場を訪れても過剰な期待感と興奮を抑えがたいものです。さすがに緊張感は失いつつありますが、本来緊張などというのは酒場巡りには不要な感情です。早速店内に足を踏み入れます。まあ入ってみたら特に変わったところのないありふれたお店なのはまあしょうがないことです。カウンター5席に10数人程度は入れそうな小上がりがあります。カウンターは真ん中の席が空いているだけでちょっと窮屈ですが、両脇の二人組のおっさんたちに詰めていただきます。小上がりにはかつて地元のワルだったようなおっちゃんたちがいます。何年ぶりかの邂逅らしく、近況を簡単に語り合うとすぐに思い出話に至ります。そうなると喋りっぷりが往時の力関係や親密さの程度があからさまにされるのが面白い。つい暇なので聞き入ってしまいます。さて、品書は豊富ですが一応看板商品らしい焼鳥と焼とんを織り交ぜて注文します。初老の夫婦が物静かに黙々と仕事をしているのが、好ましい。やたらと客におべんちゃらを振りまくような人がいますが、そういう人はどこかで手を抜いているように思われます。やはりこういう実直そうな方の焼物はどういうものか大変おいしいのです。よくよく聞き耳をたてていると両脇の二組も幼馴染らしく、この酒場には若い頃から通われていたのか伺いたくなりますが、間に入って邪魔をしては申し訳ないので遠慮しました。ぼくもこういう昔なじみの酒場を持ちたいものですし、いつか訪ね歩くためにも健康に留意して、喧嘩はしないようにしようなどとぼんやり物思いに耽るのです。
2016/06/02
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今回のお題となっている『トラック野郎』は、1975年から1979年に10作が製作された東映東京撮影所の人気映画シリーズ作品です。お題を見た瞬間にぼくと近い世代の方などは容易にこの先で綴られる内容について、察しが付くだろうと思うのですが、あえて書き留める事に決めたのであります。というのも、ぼくにとってこのシリーズは、映画好きとなる素養を培うという意味でもそうですが、それ以上に特異な飲食店への嗜好を決定付けることになったからなのです。まあ、タイトルだけでも想像できるのだけれど、特異な飲食店とはドライブインなのであります。現代では絶滅危惧種と化しており、宿題などと悠長なことをほざいてのんびり構えているべきじゃないという飲食店としては特異な業態となりつつあるドライブインという場所の魅力を存分に堪能させてくれる映画としてやはりこの一連の作品は知らぬふりを通すわけにはいかないのです。 さて、もしかするとこのシリーズを知らぬ方がおられるかもしれぬから概要をお話ししておくと、菅原文太演じる星(一番星)桃次郎がトラック野郎を演じてまして、毎度ヒロインに惚れちまうわけですが、最後には振られつつもトラックを駆使して彼女のピンチを救うというお話となるのです。旅のお伴は愛川欽也が演じるやもめのジョナサン(松下金造)でありまして、このコンビが、珍道中を繰り広げるというわけです。お決まりのWikipedia情報によると「『トラック野郎』誕生のきっかけは、ジョナサン役の愛川欽也が吹き替えを担当していたアメリカCBSテレビのテレビドラマ『ルート66』の様なロードムービーを作りたいという構想を抱き、自ら東映に企画を持ち込んだ」ということのようで、ぼくは全くの思い違いをしていたことに気付かされたのでした。やはりある程度は調べておかないといけないなあ。その思い違いについては、いずれまた。 さて、シリーズの第1作は、『トラック野郎 御意見無用』であります。川崎のトルコ風呂「ふるさと」やトルコ嬢のテル美を演じる叶優子(途中から亜湖にバトンタッチ)など時代を感じさせる見所も多いわけですが、そちらは現物に当たっていただくことにして、肝心なのはドライブインであります。盛岡の地粉手打うどんと書かれた看板を掲げる「くるまや」が登場します。コカ・コーラの看板もそれっぽいですね。店内の品書きを見るとこんにゃくや山菜料理も扱っているようですが、客たちの食べるのはカレーライスやざるそばなんかが多いみたい。酒はビール以外にも焼酎が一升瓶でキープできるようです。ちなみに現在に限らず当時もドライブインで酒を呑むのはご法度でしょうが、当時はドライブインの駐車場で夜を過ごすトラック野郎が多かったのでしょう。さて、このシリーズには必ずライバル役の役者が登場し、本作でのライバルは関門のドラゴンを称する佐藤允であります。そう、先般、大林宣彦が亡くなった際に『転校生』で旨そうにビールを呑む役者として挙げたあの人でありまして、ここでもジョッキのビールをニヒルで不敵な笑顔を浮かべて、豪快に呑み干すのでした(結構な量をこぼしていますが)。と久々に見たけどやっぱり滅茶苦茶やってて面白いなあ。ちなみにこの映画では焼鳥屋台や喫茶店(仙台)も登場するのでお見逃しなく。 トラック野郎 御意見無用(期間限定) [DVD] 第2作は、『トラック野郎 爆走一番星』であります。当然ながらこちらもドライブインが登場します。姫路の「播磨路名物 おふくろ」です。名物とあるのはおふくろまんじゅうのことのようですが、まんじゅうの中身は不明。風呂や理髪も備えたトラック野郎たちの社交場で、ここで結婚式までやってしまうのでありました。お店の前には当然、コカ・コーラとHI-Cの自販機も設置されています(コカ・コーラ工場も登場)。ジョナサン一家の春川まるみが用意する鍋を囲むシーンやヒロインのあべ静江が作った鍋など、むしろ家呑みの印象が強い作品となっています。ちなみに博多ではラーメン屋台に加えてビニ本屋台(笑福亭鶴光が屋台主)まで登場しまして、見所は多いのです。ライバル役は田中邦衛(ボルサリーノ2)で、まだまだアクの強い演技で楽しませてくれますし、ラビット関根も若かりし頃の姿を見せてくれます。トラック野郎 爆走一番星【動画配信】
2020/06/06
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船橋には最近ちょこちょこと足を伸ばすようになって、それと言うのも仲良くしてくれる人がいるからで、そういう理由でもないとやはりぼくにとっては行くのがちょっとばかり難儀な町です。やはり人との縁はこういう意味でも自分の世界を広げるのに一役かっているようです。船橋の知られた酒場はおおよそ一通りは巡ったことだし、今回はできることなら全くのいきあたりばったりで彷徨って、驚くような酒場に出逢いたいものです。 待ち合わせの時間調整のためにJRの船橋駅の南側、狭いエリアにごちゃごちゃと呑み屋が密集する辺りにはもう何度となく来ていて、それなりに多くの酒場に入っているのでさすがに目新しさを感じることはありません。都合良く「ちょっと昔の立飲み処 立ち肴処 よこよこ」という立ち呑みがあるので、ここで時間を潰すことにしましょう。とさも初めて入ったかのような物言いでありますし、実際初めてだと思ったのだから、それはもう初めてと言ってもさほど間違ってはいないのかもしれませんが、数年前に訪れていたようです。そんなことは大した問題ではありませんけど。店内は賑わっていて結構な人気店のようです。確かに立ち呑みらしい安価であるのに加えて、品数も豊富で、何より活気があるのが愉快な気分にさせてくれます。店のお兄さんたちも元気が良くて気分の良い応対をしてくれます。それがいつでも嬉しいかというと話は別ですが、この夜の気分には嵌っていました。 南口を西の方にダラダラ歩いていくとなんだかいかがわしいムード漂う一角に行き着きます。このガード下近辺に、妙に広くて怪しげな雰囲気であることを隠そうともしない喫茶店があったはずですが、この日は見当たりませでした。その脇にもう少し小体なスナックなんかが密集していたらなかなかのミステリアスな風景になったのですが、ちょっと残念です。タイトルで大げさなことを書きましたがここがこの夜呑んだ呑み屋のある通りなのでした。「お酒 ときた」という渋い屋号を持つ酒場に入ることにしました。わずかにカーブした奇妙な形状のカウンターがありその内側にはおでん鍋が据えられています。その光景を目にした瞬間にこの酒場のことが好きになってしまいました。おでん鍋の横に席があってそこにも何故か客が腰を下ろしています。本来ならば女将さんの席なのでしょうか。狭いながらもカウンターの埋まった店内は常連が多く賑やかで、しかも一見を差別せずにこやかに語りかけてくれます。おでんはまあ美味しかったとは思いますが、ここはとにかく楽しく気分よく呑めるというのが最大の魅力でそれだけでも通いたくなるだけの素敵な店でした。
2015/10/28
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年も明けておそまきながら明けましておめでとうございます。大晦日から正月過ぎまで居酒屋に行くチャンスがなくて家飲みの日々が続いたので仕事を終えるといそいそと電車に乗り込みますが,どこに向かうかはまだこの時点では決まっていませんでした。移動中読んでいた田中小実昌著の「バスに乗って」に三ノ輪の「中ざと」が頻繁に出てきたので三ノ輪に向かうことに決定。三ノ輪駅を下車してすぐに「中ざと」に向かってもいいのですが,歩き回りたい気分なので吉原方面を久々に散策することにします。 吉原のソープ街の1本裏手の通りにある「大衆料理 はやせ」が目に留まります。「もつ焼 たけ」や「丸八」なんかが今でもやってるのか気になりましたが,そこまで歩く気分じゃないのでとりあえず入ってみることにしました。なかなかきれいでちゃんとしたお店でちょっとした小料理屋さんのようです。若い御夫婦でやっているお店でご主人は金髪ながらも非常に感じがいい方。お客さんはひとりのおじさんと熟年カップル。場所柄熟年カップルを見るとどうしても邪な想像をしてしまいます。納豆オムレツ350円也を頼んでみました。これがボリュームたっぷりで,ケチャップ味の納豆ってどんなもんだろうと恐る恐る口に入れるとこれがなかなかおいしい。サワーが進みます。お通しの切干大根煮など正月料理に飽き飽きしていたので,よりおいしく感じられました。品書:ビール大:580,酒2合:720,サワー:300~,ポテトフライ:400,メンチカツ:290,やきとり3串:450,納豆オムレツ:350 串焼きのお店があって次はそこに入るつもりでしたが店の主人によると開店は7時になるらしいのでまだちょっと時間があります。付近をうろちょろしていると「中国料理 寶亭(宝亭)」というお店があるので入ることにします。とりたてて特徴のない町場のありふれた中華屋さんです。清潔感のある店内なのでリラックスできます。帰り間際にお客さんが1名来ただけで,ずっとひとりきりだったのはなんだかちょっといたたまれなくはあります。幸いにもテレビが付いていて,こうしたときのテレビって親しく思えます。ラオハイ:300円というのがあります。想像通りのラオチューのソーダ割り。焼餃子:300円は大降りの餃子が3つです。サービスでメンマときゅうりのキューちゃん,中華料理店で飲むと,こうしたちょっとしたアテをサービスしてくれるのがうれしいですね。普段気が向いて買ったはいいものの冷蔵庫にいつまでも残ってしまうような家庭内ではもてあましものの漬物なんかがこうしてちょっぴり出されるとおいしく感じられてしまう。なのでまたまた過ちと知りつつも冷蔵庫の肥やしを増やしてしまうことになります。 まったりしているうちにもつ焼店の開店時間になっていました。次の店に異動することにします。
2013/01/16
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上板橋の魅力に久方振りに触れたせいかまたもややって来てしまいました。今回は南口の建物の隙間を縫うようにくねりながら伸びている冒険心をくすぐられる商店街はオアズケにしておくことにして、北側に出ることにしたのでした。駅を出ると池袋方面に進もうか、それとも成増方面にしとこうか、ちょっと迷ってまたもや無謀にも7時30分には店を閉めてしまう「おふくろ」に再チャレンジしたのですがやはりまたもや門前払いを食らわされました。まあ覚悟してたからいいんですけど。だってお隣にもちょいとばかり良い風情の焼鳥店があるんだから。というわけで早速入ってみることにします。 町外れの焼鳥屋というとふと思い浮かべてしまう、ちょうど今のシチュエーションそのまんまの呑兵衛心を激しく揺さぶる外観の「鳥かつ」にちょいとお邪魔してみることにしましょう。店内は飾り気のないそしてさほど古い感じもしないまあ至って穏当なのでお店だったのですが、それはまずは置いておくことにします。先客は一人だけ。いやカウンターの隣の席にはテイクアウトするための大量の焼鳥が焼き上がるのを待つおぢさんが瓶ビールを舐めるように呑んでいます。ぼくもご相伴のつもりで瓶ビールをもらうことにしましょう。そろそろビールを一瓶呑み干すのが辛くなる季節になりますが、まだ今のところは大丈夫。チビチビと夏の名残を楽しみながら焼鳥の届くのを待つのは心躍るものです。近頃、焼鳥にしたって焼とんにしたってつまみの到着を心待ちにするのは久しくなかったことです。それだけひっそりとした店の雰囲気が心地よかったからでしょう。そして到来した焼鳥のなんと旨いことか。余程のことがなければ賛辞など述べぬぼくではありますが、ここの焼鳥は手頃な価格帯の焼鳥としては相当なハイレベルです。毎晩のように串を手繰るぼくは正直焼物にはうんざりしているはずですが、ここのは相当な旨さです。これは大量に持ち帰りたくなるのも納得です。また、「おふくろ」ひフラレても隣のこの店来ればいいな。 さて、もう一軒と店を出ると踏切の少し向こうに何やら芳しい酒場らしき灯りが見えてくるではないですか。どうぞ酒場でありますようにと、思わず口を突いて声に出してしまいそうな勢いで店の前に立つとサッシ戸の安普請な造りが紛うことなき酒場そのものであったことの嬉しさよ。「みこし」という店名の記された赤提灯を愛おしく眺めながら店内へ。外観とは違って中は案外新しいのですが、それはまあほっておくことにします。お通しがとんとんと並べられます。味はまあこんなものかな。一応書いてみたけど味なんかはそんなに気にするまでもないのです。普通の肴が食べれればそれで十分。枝豆なんて最高の肴であることを久々に実感します。奥のカウンター席には常連のおっちゃんとおばちゃん、若い男がいて、家族かなと思うけれどどうやらおばちゃんは常連繋がりでしかないらしい。二人は親子らしいが、どうもおっちゃんはここの馴染みであるようだ。成人記念に息子を連れてきたということでもなさそうだし、一体何なのだ。などと一人軽く酩酊した頭で物思いに沈みながらも、女将さんの問い掛けに如才なく反応したりして、こういう町外れの店はやっぱり堪らなくたのしいのであります。
2016/10/15
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好印象の焼鳥店を出ると、目と鼻の先に以前通った時に雰囲気がいいなあと感じたホルモン焼店が目と鼻の先にありました。普段であればここを目当てにするには独りでは肉を持て余すと思って敬遠していたところですが、ほろ酔いとなったこともあり、それが早くも効果を表し始めたらしく、入ることを決めるのに少しの躊躇もなかったのでした。 「長興屋」です。足立区の江北を中心とした界隈には数多くの焼肉の名店があって、日暮里・舎人ライナーの運行が始まる以前から多くの客が不便さなど意に介さず訪れたようです。ただ、それが真実であるという根拠の持ち合わせなどあるわけでもないのですが、そうした客たちは酒などないものと考えてひたすら肉の誘惑に身を投じるばかりと考えて、酒場としての魅力はないものだと思い込んでいました。この店は、酒場に紛うことのないその雰囲気で、ぼくの思い違いを容易に粉砕してくれたのでした。入った瞬間にまさに酒場然とした佇まいに惚れ込んでしまいました。開店したばかりなのか客もおらず店を貸し切りにしてもらったような贅沢な気分にしばし浸ります。酎ハイとホルモンを注文、ゆっくり店の雰囲気に浸る間もなく店主がお喋りの渦に引き込んでくれます。正直滑舌が悪いのか聞き取れないことも多いのですがとにかく陽気で話題も尽きることがない。テレビの画面を見てはこのドラマ見てる、コリやダメだよねとかとにかくひっきりなしに語り掛けてくれるのでした。この主人若くはなさそうですが、今でもしょっちゅうステーキを食べに行かれるそう、焼肉はうちのが一番だからね、とのこと。広い土間にカウンターと小上がりがある店内は、殺風景と言えなくもありませんが、ぼくには枯れた情緒あるお店に感じられます。まだお客もなく静かなこの時間が絶好のタイミングだったのかも。席が埋まってもうもうたる煙に満たされた店内も味わい深いでしょうが何と言ってもあまり匂いがつくのも嫌ですし。一見したところどうという事もないホルモンですが手間暇かけて下処理してるのでしょう、ついつい休む間もなく箸と口を動かしてしまいます。酎ハイもでかいジョッキに下町風の黄金色のもので、肉の油も重くなく流してくれるようです。奥には座敷があるようでおばちゃんグループが一人また一人と訪れて、その度に別にあるらしい入口に案内されています。そろそろ忙しくなるようです。今のうちにお暇することにします。 最大のお目当ての酒場に向かう途中「coffee snack JUN」というのを見かけますがここもお休み。今日はとことん喫茶店と縁がないようです。 やがて、先般の日暮里・舎人ライナー沿線散歩の際に見掛けて必ず近いうちに訪れると胸に秘めていた酒場にたどり着くことごできました。喫茶店には祟られますが、酒場とは巡り合わせがいいようです。見るからに想像力を掻き立てられる枯れた魅力に満ち満ちたお店です。昼間に眺めただけでも溜まらない雰囲気ですが、赤提灯に灯が入るとより趣深く感じられます。「大衆酒場 精ちゃん」です。期待に打ち震えるような思いで引き戸を開けると、店内の造りは思ったよりも平凡です。5席程度のカウンターにちょっと広めのカウンターという定番の造りです。それでもやはり想像以上に古びていて、カウンターにそっと腰を下ろしてみると何やら懐かしさのようなものがこみ上げてくるのを抑えるのは困難です。店主夫婦はうっかりするとエラソーに思えるほどで、初めこそちょっとおっかなびっくりとしながら言葉を交わしますが、常連の禿頭のオジサンが間に入って取り持ってくれることでいつしか一見のぼくも馴染のような愉快さでついつい長居してしまいます。肴として頂いたアジフライは肉厚でサクサク、食べごたえがあって大層満足感が高い逸品ーは言いすぎかなーで、近所にあったら足繁く通いたいところですが、あまりにも地の利が悪いのでそういうわけにはいかなさそうです。
2015/03/06
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先日,中山の酒場放浪記紹介店を訪問したばかりですが,まだまだ隠れた良店がありそう,というか前回の帰りに下総中山駅南口前をうろついていると奥まった路地に呑み屋街があるのを目撃していたのでした。本当なら入店せぬまでも,散策するくらいのことはしているはずでしたが,急いで帰らねばならない事情が生じたため,泣く泣く素通りしたのでした。 駅南口を出て,中国物産店や床屋さん,青果店などが並ぶ庶民的な―というか都心からも列車で30分程度のJR幹線の駅前風景というよりは地方交通線の駅といった風情でしょうか―駅前通りの路地に呑み屋街があります。夥しいまでの呑み屋が密集しているさまが見られるものと,前回は次回の楽しみにとっておいたのですが,実際は5,6軒ほどの酒場が軒を連ねるだけの小規模な呑み屋長屋といった程度でした。 さて,最初にお邪魔したのが激安の立ち飲み店として名高い(というほどでもないか)「立飲み屋 づめかん」です。株式会社SHIMATOの島さんやらいう方が2010年に下総中山店をオープン,ここを振り出しに市川大野店,門前仲町店,原木中山店,行徳店,本八幡店,そして浦安店が開店準備中のようです(もう開店したかも)。驚くべき繁殖力です。門前仲町店にだけお邪魔していますが,新興店にも関わらず,不思議と町にしっくりと溶け込んで店のうら寂しい雰囲気も客層のオヤジっぷりもなかなか堂に入っているように感じられました。今回は満を持してというわけでもないのですが,発祥の地である下総中山店に伺うことができました。門前仲町では多くの客たちが厨房のある前方に向かって立っていてどこか教室や映画館のような独特の立ち位置のあり様が奇妙に感じられましたが,こちらはいたってノーマルでちょっと安心。値段はさすがの激安価格。カウンター付近では明らかに常連ということが見て取れる常連の背広のおっさんたちが,外ではまったくよその人なんでしょうけどえらく大盛り上がりです。店を出て,独りっきりになったときの態度の変化ぶりを観察してみたいものです。品書:チューハイ:150,ホッピー:300(中:50),ビール大:450,串焼:3本250 おっさんたちの変貌ぶりは容易に察しが付くので,店を出るとすぐさまお次の店へと急ぎます。といってもそのお店は2軒ほど隣にある「大衆酒場 盛満」です。まず大衆酒場という白く染め抜かれた紺暖簾に惹かれます。赤提灯もいい雰囲気です。そしてなにより「盛満」というなんとも悩ましい店名にも誘われ暖簾をくぐることにしました。冊子の引き戸を開くと店名が予想させるどこかしら猥雑な雰囲気とは程遠く,カウンターが主体ながらもテーブル席も充実した店内でした。もしかすると最近になって改装されたのかもしれません。装飾は古い酒場であることをアピールするかのようなキリンビールのレトロ系ポスターなどが貼られ,普通ならそういうわざとらしさが鼻についてうんざりさせられるのですが,ここでは不思議としっくり店に調和しています。店名を冠した盛満焼というのをお願いすると小さめのお好み焼きが2個と食べ始めて感じるのですがなかなかのボリュームです。酎ハイもジョッキにたっぷりとあって,数回お替りするとすっかりいい気分になっていたのでした。なかなかよい酒場でありました。品書:焼酎ハイボール:300,ビール大:600,酒:350,盛満焼/めかぶポン酢/オクラバター:250,穴子天ぷら:500,豚バラニンニクソース:450
2013/11/22
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雑司が谷と書くと今では副都心線の雑司が谷駅を思い浮かべられることと思います。しかしこの夜は都電に揺られています。突然ですが池袋方面に縁のない方たちにとっては、雑司が谷って案外知られていないらしくて、霊園や鬼子母神のそばだと説明してもンと来ない人も多いのには意外の念を感じます。知ってるだけで行ったことのない人は、雑司が谷というと古い下町という印象があるようですが、実際に散策してみると雑司が谷界隈は、酒場とは縁薄い寂しい住宅街に過ぎません。 ともあれ荒川線の鬼子母神電停にて下車。目指すべきお店は決まっていますが、踏切待ちをしていると見覚えのない店ができていました。よくよく眺めると立ち呑みとあります。これは見逃すわけには行きません。「武蔵」というお店のようです。引き戸を開けると期待したわけではありませんが、真新しくてどうという事もない造りです。手前の小さなテーブルこそ椅子が用意されていますが、カウンターはちゃんと立ち呑みを貫いているのが立派な心がけです。どうやらここは日中は立ち食いそばをやっていて夜はその二毛作で立ち呑みをしているようです。最近この手のスタイルが多くなってきたのは歓迎すべきことです。入ってすぐの食券機で酒と肴ともに350円のチケットを購入します。うっかりミスして飲み物を二枚買ってしまったので覚悟を決めておつまみ券を買い足します。立ち呑みにしてはちょっと高いので一杯一品にすると、瞬時に判断したわけですが、指先は瞬間的な思考についていけなかったようです。先客は三名、すでに出来上がっていて陽気にお喋りしています。8時すぎになるとこの通りはほとんど人通りがなくなるのでここで客が入っていたのにはちょっと驚きました。ハイボールはギネス用のタンブラーみたいにムックリ膨れていて、やはりワンパイントほどあるんでしょうか、そこそこ呑みがいがあります。肴はカキフライ、やや油が重いものの身はふっくらジューシーでとてもうまかったです。夜に店のないこの辺りにとって貴重な酒場ですが若い店主がちょっと暗い雰囲気なのが気になりました。 さて、本当は鬼子母神そばのお気に入りに行きたいところですが、この時間ではあの絶品もつ焼も品切が多いでしょうから止めておくことにしました。それで何となく歩いていると池袋駅近くまで来ていました。それならもう何年も行っていない「大衆酒蔵 バッカス」にでも行ってみることにしようかな。ここは月曜と金曜には酒がお得なはずです。地下へ続く階段を降り、入った店内は記憶通り、以前とちっとも変わりありません。テーブル席が効率よく設定されている店の様子はいかにも大衆的で嫌いではありませんが、独りだとカウンター席がないのがやや残念なところ。お通しの春雨サラダはこれぞ定番という感じで、昔はこれを見るとウンザリした気分になったものですが、今では案外おいしいと感じられるのでした。雰囲気通りの客層でほぼサラリーマンのみですが入りがあまり良くないのがちょっと心配です。特にどうこう言うような店ではありませんが、こういうサラリーマンたちが毎夜上司の愚痴を語ってみたり、年長者が偉そうに説教や訓示を垂れているのを聞けるような環境がずっと残ってほしいものですー実はオヤジたちの説教臭いのを突っ込み入れつつ聞くのが案外好きなのでしたー。
2015/01/23
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久し振りに町屋に行ってみることにしました。町屋って良い呑み屋が数多あると喧伝されているようですが、何度となく通ってみて思ったのですがそれほどいい酒場があるとは思えぬのです。それでも町屋では片手に余ると考えている酒場―いや、厳密には食堂なのですが―である「ときわ食堂」が、最近閉まっているとの報を書き込んで頂いてから、呑みに行く度にホントは町屋に向かうべきではないかとのちよつとした痛みが心を刺していたのでした。そんなことでいきなり確認に向かうのは無粋なのでひとまずは、一杯呑んでから見に行くことにしました。 いつもの店ではつまらぬので散々さまよった挙句に入ったのは、路地裏を散策していてすぐに見つけていた「鳥膳 町屋本店」でありました。これぞ焼鳥店というような典型的なお店です。こうしたありふれた外観のお店、かつてはどこの町にでも必ずと言っていいくらいあったものですが、今となっては貴重な存在となりつつあります。焼鳥屋の赤い看板は赤提灯同様に強烈な色彩で呑兵衛心をくすぐるものですが、この色遣いには何か謂れがあるのでしょうか。本店とあるのは近所に支店とかあったんですかね。店内も安心定番のうざったくない程度の民芸調となっています。表からはカウンターだけの狭いお店を想像しましたがテーブル席もある案外広いお店です。表から眺めて店内の様子を思い浮かべそのギャップが予想より良かったりすると小気味よい驚きで気分が高揚します。先客は3名で一見の客にとっては丁度よい入りです。入りが良すぎて喧しいのは辛いし、逆に自分独りだと店主と会話が始まって店を出るきっかけを見つけるのに難渋することになりそうです。そうこちらの店主は一見したところは頑固そうですが、案外お喋りがお好きなようです。さて、焼鳥は普通においしく、全般に値段もお手頃でもつ焼に飽きたらたまに立ち寄る選択肢の一軒になりそうです。 勢いでもう一軒、古い一軒家に侘びしさを際立てるサッシの引き戸がそそられる「小料理 いづも」にお邪魔します。この風体で小料理というのが気にならぬではないのてすが、ちょっとだけ町屋の印象が良くなったので、たから単純にも誘惑に打ち勝てないのであります。店内に入ると至って代わり映えしない店だったのでありますが、それもまあ普通なりの良さがあります。多少なりともある緊張の糸はここで切れてしまい、平凡の良さを楽しむのです。先客の二人はまさにこの酒場の屋台骨となっているようです。タイプは全く異なるものの一見を面倒くさく思うほどに手厚くもてなしてくれて嬉しいようなうざったいような。でもこれこそが典型的な酒場だと思うと一杯や二杯呑み過ぎたところで大した問題ではない。まあこの酒とは別な気分の良さが幾度の失敗をもたらしたか知らぬわけではないけれど…もはや手遅れなのであります。 それでも何とか「ときわ食堂」の存亡について確認が取れました。やはりどこかに移転してしまうらしい。再生後の「ときわ食堂」の復活を楽しみに待ちます。
2016/04/19
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川越にはとんとご無沙汰してしまいました。東武東上線が副都心線を経由して東急東横線と相互乗り入れしたりして横浜からの客足も増えたということで、もとより混み合って歩きにくい川越の町並みが以前にも増したと考えるとそれだけでゲンナリとしてしまいつい足を向けにくくなってしまうのです。それでも古い酒場の少ないこの町にもそれなりに歴史のある酒場が残っていて酒場放浪記でも放映されたと聞くと、つい気になるのがミーハーな酒呑み人情というもの。川越というのが浦和やら船橋なんかもそうですが、複数の路線が入り組んでいてしかも似たような名称の駅が多いのですが、ここ川越はそのいずれもが分散してトライアングルを成していて、どうも町の印象が散漫になってしまいます。最初に向かうつもりの酒場は恐らくはJRの川越駅が便利だったと思うのですが、詳しくは調べられてから行かれることをお勧めします。 遠目には薄べったい古びた味のある一軒家の酒場に見えましたが、店内は改装されて狭いことと窮屈なくらいに無理矢理席を押し込んだことが特徴といえば特徴の「中村屋」に伺いました。お客さんもそこそこ入っていたため、われわれーそうそうA氏も一緒でしたーはカウンターのヘリのような窮屈な上にも肩身の狭い末席に腰を下ろしたのでした。品数は焼鳥屋としては豊富で、老舗としては若々しいアレンジ料理なども用意があり、食い気旺盛な客の需要も満たせそうです。実際に鳥のハムやレバーのパテはやや淡白な味わいながら自家製であるのは好ましく、オヤジさんの新メニューへの意欲はアッパレだと感心します。常連はそれこそ数十年通い詰めておられるようで、数年ぶりに尋ねてきたという女性の一人客もすぐに昔の足繁く通っていた頃に回帰して寛がれていました。店の造りは新しくなっても人の繋がりは生きてさえいればそうそう安やすとは途切れぬものではないなと、微笑ましい一幕も目にしました。そう言えばそれこそ毎晩でも来てそうなおぢさんなどは、店の若女将に買い忘れした豆腐の買い出しも頼まれてましたね。こういうのも嫌いな人は許せないんでしょうけど、この店の雰囲気なら許せてしまえそうでした。 続いてはしばらく歩いて東武東上線の川越市駅ーアレッ、本川越駅だったかしらーの駅の向こう側、オフィス街風のビルの谷間にある「居酒屋 やじろ兵衛」にハシゴしました。先ほどの店が主人と客が一体となった家族的雰囲気だとすれば、こちらは逆に一人客も団体もてんでんばらばらに勝手気ままな酒を楽しむ大衆居酒屋そのものといった風情です。ぼくはどちらかと言えば前者が好みですが、旅先では後者も捨てたものではない。地方の独特な単語やイントネーションを推理しながら盗み聞くのは愉快なことだし、その土地の呑みの流儀なんかを垣間見れるのも興味深いものです。これが前者だと話の半分も理解できぬままにうっかりとした答えで相手をしらけさせるなんて経験もあったりします。店の中は大盛況です。あわや入れぬものと諦め気分になるのですがここが偉いところで、上手く席を詰めるなどしてちゃんと入れてくれるのでした。カウンターには一人か二人をとにかく隙間なく埋めていくという流儀がきっちり守られているから客も席をずらすことになっても素直に従うのです。酒も肴もごく普通、値段もまあまあなので格別どうこう言うような居酒屋ではないものの、こうした普通の店が日本中のどこにでもあって欲しいのてす。それにしてもすごい客の入りだ、ここに来て万が一入れなかった人たちは果たしてどこに向かうのか気になるところです。
2016/07/28
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駒込にはビストロを標榜する多くのお店があって、日頃はそうした店を通り過ぎても滅多に視線を送ることはありません。興味がないという訳ではありません。ご存知のようにフランス料理というかビストロ料理、本格的なフランス料理程の複雑な手順や規範に縛られてはおらぬし、あとはぼくのような素人料理人でもその気になればどうということも作れるフランス家庭料理でもないけれど、ビストロ料理はその中間のような位置にあるのです。だけれど、すっげー洗練されたプロ中のプロが拵える逸品ととファミリーシェフの作る料理の折衷かというと全く違っているわけでありまして、もはやビストロ料理はフランス料理とは別個もしくは派生した何物かのような料理なのではなかろうかと思うのです。とまあ、たまにはお手軽にビストロ気分を味わいたいということで、夜の駒込にやって来たのでした。夜の駒込にはしょっちゅう呑みに来ているし、駒込に多くのフレンチ系の料理屋があることも知ってはいたけれど、それを目的に足を向けたのは初めてかも。 しかもそのお店のシェフが女性と聞いていたから、興味はぐっと増すのであります。駒込のビストロも女性シェフのお店に来るのも初めてです。何事にも始めてはついて回ることだし、殊更に女性とか語っているとフェミニストたちにお叱りを受けそうだからその点にはあまり頓着せぬことにします。「ビストロ オララ(BISTRO O LALA!)」は、駒込駅を出て本郷通りを白山方面にずっと進んだところにあります。ちょうど六義園にへばりつくようにして立地しています。見た目にはビストロ的な要素は希薄で、むしろカジュアルなワインバーという雰囲気です。プレフィックスのメニューもあるけれど、アラカルトも豊富で他の2グループの方たちはアラカルトでよりカジュアルに利用されていました。が、せっかくなので気分を高めるためにわれわれはプレフィックスメニューで前菜、メイン等をセレクトすることになります。ここでわれわれと書いたけれどさしたる意味を持たぬので、ぼくと読み替えていただいて何ら支障はありません。さて、ぼくのような慎ましい人生を送る者にとっては、アラカルトであれこれ食べるのは居酒屋気分に陥りがちでちょっとした特別感、祝祭感を求めるならやはりプレフィックスのメニューが嬉しいと思えるのだから、これはぜひ他店もアラカルトメニューを用意すべきだと思うのです。きっとぼく以外にもプレフィックスとかをキーワードにしてググっている方も少なくなかろうと思うのです。単品だと一皿がこんなお値段なのかと引いてしまいそうになるところが、コースメニューになると財布のひもが緩む気がするからこれはぜひとも参考にしていただきたいのであります。さて、肝心の料理でありますが、うむむ悪くないのだけれど、風味がいささかに軽い気がする。軽い料理を求めての女性シェフではあったけれど―再度使用して済まぬことです―、いかにも軽すぎる気がするのです。それなりに美味しいし食後感もきつくなくてそれはいいのですが、フレンチ系料理の満足感というのが適当だろうか、それが希薄に過ぎるのです。アラカルトで頼むのにちょうど塩梅がいいというのが分かる気がするのです。それで何が困るかというと。。。 東池袋に移動して「BAR Too」に立ち寄ってしまうのですね。満足度が足りぬディナーを取った後には、ついいつもバーで杯を重ねてしまうのです。ここに通って10数年以上になるけれど、魔性のバーテンダーさん、ああここでも女性バーテンダーと紹介してしまうのだけれど、彼女の魅惑のカクテルについもう一杯となってしまうのです。彼女の味見の際のペロリがまたいいのですね。そんな感想を直接述べたとしても、クールな視線であっさりと交わされてしまうのがまたいいのです。近頃またぐんと毒舌の度合いが増しているのがまた楽しい。軽めのフレンチ後はここに来れると思うとそれもまた良しかな。
2019/04/19
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場末っぽい町で呑むのが年齢とともに益々好きになっています。好きになっているというよりは、非常に落ち着くといった方が適当でしょうか。繁華街の雑踏の穴場の目立たない酒場ってのも魅力ではありますが、そこに至るまでの雑踏を思うと二の足を踏んでしまうのでした。だからハナから場末っぽい町であれば人混みに辟易するまでもなく目的の酒場へと至れるから、どうしてもそうした町を目当てに向かうことになります。ネット上では、酒場巡りをテーマ(テーマなんていうとさも崇高なことについて語らねばならないようで気が引けるのですが、どうも適当な言葉が浮かんできません。話題という語が少しは近いかな)に据えた記事(記事ってのも新聞記者かお前はと突っ込まれそうな高邁な言い方に思えてその使用を躊躇ってしまいます。といって雑感なんてのも作家ぽくてカッコつけすぎかな)では、町と酒場との結び付きについてあまり配慮していない内容が多いように思えます。一部、陸の孤島(という呼び方をぼくは非常に嫌悪しているのですが)へ至る道中をやけに大袈裟に描写してみせるものなども合ったりする訳ですが、それは町と酒場の関係を見つめようという気持ちとはかけ離れた内容であることが多いようです。むしろいくつかある酒場巡り番組の日中の散歩だったりに可能性を見出せるように思えるのです。片っぽは自身の趣味的欲求を満たすため、一方は単なる尺稼ぎのためにも思えますが、まあ酒場のみひたすら撮影した番組作りよりは好意的な印象を抱かせてくれます。となると今回訪れた北松戸が場末っぽい町かってことになりそうですが、ぼくにとっては北松戸はちっとも場末っぽい町ではなくて、単に工場団地と競輪場と住宅街を従えただけの発展し損なった残念な町でしかないのです。 そんな残念な町にもしっかり町に根付いた酒場があります。チェーン系の酒場はこの町にも数軒はあるけれど、独立した個人店でそこそこのオオバコとして確固たる存在となっている「た古八」は、大いに気に入っているとまではいかずとも好感が持ててたまには訪れたくなる酒場なのです。ぼくは大概のそこそこ通っている酒場に決まって頼む肴があります。ここでもそれは同じことで、大概決まったばかりの肴を頼んでしまうのです。ここだとネギちくわ、マカロニサラダはその日の200円のサービス品になっていたらまず間違いなく頼むし、この店の一番人気の品らしい焼鳥4種盛合せもほぼ3回に2回程度の割合で頼んでしまうのです。呑みも終盤になってもう1杯、いや2杯ってタイミングになるとフレンチポテトはほとんどマストオーダー品となっています。それは酒の種類が変わったとて揺るがないのです。熱燗の松竹梅豪快にフレンチポテトはおかしいと言われようともそこは曲げられないし、今回のように初オーダーの鶏の唐揚げを食べた後であってもきっちり頼んでしまうのです。特段、この店でしか食べられない品ではないのだからさぞ好きなんだろうねって思われたら、そうではないと声を高くして言いたい。単なるコスパを考慮しただけのことなのです。以前頼んで失敗したなと思ったものは二度と頼まない。今となってはその失敗が冷静な判断に基づいた結果であるとは判じかねるけれど、そう思いこんでしまったら頑ななのです。ならばその他数ある注文をしたことのない品々はどうなのだ。そうした未経験の品で頼まないのは単なる先入観でしかないのです。だから他人と訪れるとこちらがまず頼まない品を頼んでしまって、勝手なことをするんじゃないと思ったりするけれど、それが実は当たりッてなこともあったりして、だから日増しに狭くなる視野を広げるためにも他者との交流はやっぱり必要なんだなあ。
2024/01/12
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どうやらぼくは日常生活を送るのに非常に厄介な問題を抱えているようなのです。幸いなことに現在まで多くのトラベルに見舞われはしてきたものの、それが原因で大きな事故に遭うというような最悪の事態は回避できたようです。しかし、それもこれまでは運よく躱せてこれたまでで、今後もそううまくいくとは限らないのだ。何を言わんとしているのか。何が厄介と言うのか。ひと言で述べるとぼくは空間認識もしくは認識した結果を記憶する能力に欠落が生じている鵜養なのです。つまりは、地図を呼んで覚えたとしても実際に町に出ると地図を辿ることが下手なのです。二次元で表現された情報を三次元的に展開して二次元情報と比較・照合する才能に恵まれなかったようなのです。何だか分かったような間違っているような、だからちっとも賢くないことを書き連ねていますが、要するに方向音痴ということが言いたいだけなのです。方向音痴っていっても東西南北の方角認識に劣っているのはもちろんのこと、目印の立て方が自身の趣味性に依存し過ぎていること(酒場はもちろんのこと、ボロ物件など目印としての寿命が短い場合が多いことは分かっているのです)もあって何度も通った酒場でもご無沙汰してしまうと誤った筋を曲がってしまったりしてすんなりと辿り着くことができなかったりするのです。今回降り立った西日暮里でありますが、この界隈は特に近頃しばしば訪れているにも関わらずやはり目当ての酒場には何度か行ったり来たりする羽目になったのでした。「やきとり 小鳥」もやはり何度か訪れているにも関わらずやはり迷ってしまったんですね。ネットの地図なんかを見てもこんな分かり易そうな場所で迷うってのは、人間として大事な機能のどこかが欠落しているとしか思えないのです。分かり易いはずだから地図を持ち歩くこともしないのだけれど、仮に印刷した地図を持っていたとしてもきっと間違ったんじゃないだろうか。そう思ってしまうのです。なにせ過去数回訪れた際もそうだったんだから間違いない。今度こそは大丈夫だろうと思ったけれど、やはりダメだったからもう今後も間違い続けるものと諦めているのです。確かにこちらにお邪魔するのは数年ぶりだったけれど、それでも何度も他所の店に呑みに行く際に通り過ぎているんだけどなあ。ぼくの知人たちは、ぼくのことを地図を読めない男と認識しているんだと思うのだけれど、どうしたものか決まってぼくがナビゲート役を買って出る、いや買って出ることを要求してくるのです。そんなに文句をぬかす位ならそんな連中と行動を共にしなければいいだけのことだという指摘は至極ごもっともであるけれど、そうした場面以外で特段カチンとくることもないのだから縁を切るということには至らない。加えてこちらが行きたいと思った店はどこだってさほど異論を唱えることなく付き合ってくれるから重宝なのだ(一人でいけばいいというご指摘もあろうけれど、一人だと肴を持て余してしまうようなお店もあるし、逆にあれこれ摘まめたりもするし、また、約束することで不退転の覚悟ができるので出不精なぼくには助けになるのだ)。とまあこの「小鳥」という可愛い名のお店であればそんな後押しなくても来れるんですけどね。にしても焼鳥屋でこの店名はやはり違和感があるのだ。カウンターにはご隠居さんが一人ビールの杯を重ね、奥の座敷では古馴染みがじっくりと腰を据えて呑むといった感じであり、やはりのんびりとしてちょっと好きなお店でありました。
2024/10/06
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以前も書いたことがありますが、ぼくは自身の感性をとある身近にいる人物にある不愉快な言葉で総括されたことがあります。そのひと言とは「感傷的」でした。ぼくは他人に対して感情を素直に表現するのを回避したいという気持ちが強く、例えば好きな映画について語る場合でも対外向けの作品選定や評価をもってするなんてことがある訳で、それは嘘ではないけれどあくまでも好きの一面のみを開示しているに過ぎないのです。だからといって先の一面が表面で、後は裏面しかないってことではなくて、いくつもの側面を併せ持っているのですが、そんな面の一つに「感傷的」な側面があることにも自覚的なのです。分かってはいるんだけど、自分でそれを語るのならともかく他人から指摘されるというのは全く別なのだ。普段自分では押し殺せていると思っていたのに実はバレバレであったこと、そしてそれを見透かされいないだろうと思い込んでいたことへの恥じらいに憤るのです。また、そうした憤りを隠しておきたいという気持ちを汲むべきだろうという八つ当たりになるのだ。感傷的な人っていうのは大体において自身について何かしら劣等感を抱いているのだと思います。そうした劣等感を武器にして屈折した感傷を綴った作家に太宰治がいます。例えば、以下の文章の見苦しさを読むとぼくなどは、みっともないと思いつつも共感を覚えるのであります。太宰治著『惜別』(……)東京よ、さらば。選ばれた秀才たちよ、さらば。いよいよお別れとなると、さすがに淋さびしかった。汽車で上野を出発して、日暮里という駅を通過し、その「日暮里」という字が、自分のその時の憂愁にぴったり合って、もう少しで落涙しそうになった。(……) 太宰の感じる憂愁というのは今や名所扱いされている夕焼けだんだんで夕暮れ時に眺める風景が物悲しさやノスタルジーを喚起するのとそう遠くない感情だと思うのだけれど、ぼくの理解する「日の暮れる里」は、この里は日が暮れてからが本領であるという風に理解されます。表向きの感傷とは無縁の表情をこの町は持ち合わせているんじゃないか。実際、以前は余り露骨でなかった客引きや立ちん坊のおねえさんたちが町に溢れかえっていて、憂愁に浸る暇などありはしないのでした。 といった今日の日暮里の風景を形成する重要なファクターとして中国をはじめとしたアジア系を中心とした外国人の存在があるようです。かつてはかなりきわどい商売をしていた店もあって危なっかしい思いをしたこともありますが、近頃は良心的で気軽な店も増えてきました。こちら「紅吉坊 日暮里」もそうしたファーストフードっぽい気楽なお店の一軒です。こちらは写真にもあるように麻婆豆腐がお勧めのお店で、食べてみるとなかなかに美味しいのです。ぼくが自作するものに引けを取らないと書くと語弊があるかもしれませんが、町中華で時折遭遇する酷いシロモノに比するのは失礼な位に本場感がきっちり感じられ、酒が進むいい程度の刺激もあります。多くの客が麻婆豆腐とごはんを食べていますが、案外良かったのが餃子です。こうした本場風のお店の餃子って特に焼きの場合は外れが結構あるものですが、こちらのものは身詰まりが良くて、でもうんざりせずに食べ進めることができるなかなかの仕上がりに思えます。ぼくは餃子が好物って訳ではない割にはよく食べる方だと思うのですが、本当に美味しいと思えるのは10回に一辺程度と思っているので、それで美味しいということはかなりの高評価であるとご理解頂きたい。早速の総括ではありますが、吞みをじっくり楽しむには若干不向きではありますが、待ち合わせに使ったり、ハシゴの途中に立ち寄ったりするには十分なお店であると思えました。
2024/10/13
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先日,久しぶりの津田沼に出向いた際に,「ギュートン軒」というお気に入りに出逢えましたが,実はひとつ心残りがあったのでした。「酒処 神月」という太田和彦氏の著作や「吉田類の酒場放浪記」などで定評のある居酒屋さんに入りそびれたことです。居酒屋好きであればまず知っているであろう酒場を巡ることにはさほどの熱意はないのですが,恥ずかしながら俗なものに惹かれる消極的ながらも冷めた好奇心はあるのでした。嫌な言い方をするとそちら方面を巡ることにはどこかしらノルマを果たしているかのような義務的な側面がありますが,それでも行かずにはおられないのはやはり貧乏性のなさせるもののようです。 というわけで,津田沼駅に到着すると足早に線路沿いを進み,目的のお店に到着したのですが,この夜もやはりすでに出遅れてしまったようです。しばらく時間を潰してから出直すことにしました。高架橋を越えて呑み屋街を歩きますがこれといった酒場もなく,すごすごと駅に引き返すと改札に続く階段のすぐそばに立食いそば屋のような狭小の店舗がありました。どうやらもつ焼のお店のようです。「もつ焼 坊っちゃん 津田沼店」です。ちょっとした小料理屋さんのような格子の引き戸越しに店内の様子が窺えて,10席ほどあるカウンター席は満席のようです。幸いにも端っこの席の客が席を立つようです。タイミングよく席を確保することができました。この好機を逃すわけにはいきません。きっと運が向いてきたのだろうと勇んで席に着きました。若い2名が狭いスペースを休む間もなく動き回りてきぱきと客の注文をさばいていくのが見ていて気持ち良いのでした。串焼は130円とけして安くはありませんが,染み出す肉汁はちょっとびっくりするほどで,その新鮮さを考えると高くはありません。店内は男性のサラリーマン客ばかりでしたが,近いうちに女性客もどんどん増えることは間違いなさそうです。ところで,津田沼店とあるので,系列店がどこかにあるのでしょうが,品書:生中:500,チュウハイ:300串焼:130,もつ煮込:300,ガツ刺:400 さて,再び「酒処 神月」前にやって来ました。どうやら今夜はツキがあるようなので,今度こそ入れそうな予感がします。扉を開けるとやはりまた満席。これはダメかと思ったら,ちょうどテーブル席の客が勘定中らしく,カウンター席の客たちが移ることになっていたようです。空いたカウンター席でほっとひと息つけました。お通しはスモークタンに何やら魚の煮付けです。カウンターにラップもかけずに放置されていたのが気になるもののやはり気になるのは南蛮漬け。3種類ほどの魚をけちけちせずにたっぷりと盛り付けてくれて,独りだとこれを食べるだけでも精一杯。確かに評判に違わず良心的なお店のようです。お隣に新規で来た客たちは白子やアンキモなどを独りひとつづつ注文してバクバク食べています。その健啖振りに圧倒されつつも,ちょっと健康に留意した方がいいんじゃないのなんて皮肉を交えて眺めていたのですが,会話を聞くとどうやら医療従事者のようでした。このお店の使い方は数名のグループで,豊富な肴から独り2品ほどを見繕って分け合うのがよさそうです。他店に立ち寄らずしっかりお腹を空かせてくることもお忘れなく。品書:ビール中:500,酒:大:500,サワー/ハイボール:350,酢もつ:450,おまかせ刺盛:1,000,あんこう肝/あじ南蛮漬:450
2014/02/06
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新京成線は松戸駅と京成津田沼駅間を走行する新京成電鉄の電車です。松戸駅から今回の目的地である元山駅までの8駅はすべて松戸市の駅で,いつも松戸には酒場がないと呟いていますが,実は新京成線沿線ではまだ呑んだことのない駅も残っているのでした。元山駅には何度か呑みに来ていますし,ユニークな喫茶店(「コロンビア」は外観からは予想できぬほど美しい窓,「ロンシャン洋菓子店」)もあります。とりわけ「ひょうたん」は低価格で驚くほど高品質な肴を出してもらえました。「昭和酒場 おでん物語」もなんだか情けない店名ですが,新しいお店ながら思い切った低価格で勝負していて,元気で明るいママさんも魅力でした。陸上自衛隊松戸駐屯地がすぐそばなのでむくつけき大男なんかが現れそうですが,幸か不幸かまだ出会っていません。 今回またもや元山を訪れたのはこれまでずっと空振り続きの酒場「もつ焼 おくやま」を訪れるため,電車がホームに到着すると一目散に店に向かいます。シャッターは閉ざされ,そこにちんまりと張り紙が。4月中旬まで休ませてもらいますだって。まあ閉店でないのは救いですが,またもや休みとはとことん縁がないようです。 やむをえず向かったのはお向かいにある「鳥孝 元山店」です。名古屋にも「鳥孝」というお店が数店ありますし,調べてみると神戸にもあるようですがさすがに関連はなさそうです。ありきたりな店名ですからかぶっても不思議ではありません。柏本店,松戸店,稔台店,流山店は近距離圏内にあるのでまず間違いなく系列店なのでしょうが,実は駒込にも「鳥孝」があってこれは遠隔でありながらも関係があるように思われます。松戸店と駒込店にしか行ったことがありませんが,どちらも飛び抜けていいというわけではないのですが,価格も味も安心して楽しめる庶民派の焼鳥店です。稔台店はまだ入ったことはありませんが,外観はもっともくたびれていて惹かれる店です。早速元山店に。座敷がメインなのは松戸店と同様。こちらは座敷というよりは小上がりというほうが適当かもしれません。奥にわずか3席ほどのカウンターがあって,両端にオヤジがいて窮屈そうですが,ひとりだし,店のおねえさんもカウンターにどうぞと言うので従います。オヤジが真ん中のイスに荷物を置いてぼくが立っても知らん振り。無礼なオヤジなのでこちらも無礼な態度を決め込んでイスを引くとなんだよ面倒くせえなあと抜かしやがる。ついついこちらも「おくやま」に入れなかった苛立ちが表面化する刹那にようやく店の方が座敷にどうぞと促すのでコブシを収めることになりましたが,こうした我が物顔で店を荒らす常連は排除してもらいたいものですがそうもいかない事情があるのでしょう。すっかりオヤジにも腹立たしいのですが,店の人の対応にも不快を感じます。しらけきったのでチューハイの後は日本酒に切り替えます。その間もオヤジはさっきのことなどすっかり忘れて大騒ぎ,うっとおしくなった店を出たのでした。品書:チューハイ:330,酒小:260,ビール大:560,焼鳥2本:300,刺身の三点盛:980,チキンボール:380,若鶏の唐揚:400,ざく切りキャベツ:250,びっくりチキンカツ:550 次に向かったのは,「居酒屋 小樽」。何やらありえないような値段の品書きが店の全面にずらり貼り出されています。店からは人気が感じられないのでやや不安を覚えつつも店内に。広いテーブル席が数卓にありがたいことにカウンターもそこそこあります。ところがこの値段なのに客は若くてちょっと悪そうな二人組だけ。かすかに嫌な予感が。カウンターに置かれたネタケースにも何も並んでいません。この広い店に店の人は若い主人だけ。ますます不安になります。ウーロンハイをお願いします。カウンターから離れた食料保存庫らしきところからウーロン茶らしきものを運んできて,ウーロンハイを作り始めます。動線が悪いったらないです。目の前にはなんだか松前漬や枝豆,キムチ味の貝柱の三点盛り。気を取り直してウーロンハイを口に含むと,うううっ,なんとも評しがたいどろりとした濃厚な風味が広がります。主人にこのウーロンハイすごいことになってるよと声を掛けると,すいません,出し汁で割ってしまいましたとのこと,出し汁をほぼ原液で飲むとあれほどまで凶暴な味になるとは露知らなんだ。100円のまぐろぶつだけでとっとと店を出ようと頼んでみるとこれが値段には相応しくないくらいちゃんとしている。思わず手造り腸詰なるものをオーダー。勝手に中華風の腸詰をイメージしていたら,何本にしますかとのことなのでつい2本ちょうだいと。これがまたフランクフルトみたいなごっついのが出されて,味もけっこう悪くない。これだけですっかりお腹一杯になってしまったのでした。そうこうしている間にいつの間にやらネタケースにはずらりとうまそうな素材が並んでいたのでした。品書:HH:生ビール:320[17-21],サワー:350,串焼5本盛/刺身三点盛:350,串焼5本盛:250,まぐろぶつ:100,手造り腸詰:150
2013/04/20
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新検見川駅で下車したのは、2ヶ月ほど前が初めてでした。その初訪時の経験がぼくの探究心に火を付けたかというとそんなことはちっともなくて、むしろこの先余程のことがなければ再び下車する機会は無さそうだなんて、感想を抱いてしまったのです。駅の南側の線路沿いちっちゃくて古びた商店街は可愛らしくて好ましいし、北口の跨線橋だったかトンネルだかのそばにある一階が飲食店向けとなったテナントビルにもちょっと良さそうな食堂が営業をしているようです。と書いてるとなんだかまた訪れてみたくなるのですが、今回の目当てはそのいずれでもないのでした。北口を出てすぐのあっという間に途切れる商店の並びを抜けて、左折するとよさそうな酒場があるのでした。ここが今回のお目当ての店です。たまたま時間は遅くなってしまいましたが、近くまで来たのでこれが最後の新検見川駅での下車になるだろうといういい加減な確信でその酒場を目指すのでした。 古いテナントビルの一階にある「鳥しげ」は店の前にある電柱が邪魔をしてどうもうまくフレームに収まらぬ、というか実はこの段階でそれなりに酒が入っていたものだから、こうして書き始めた以上は放り捨てるのももったいなく思われて、ちゃっかりと書ききってしまおうという魂胆なのであります。カウンターの奥の席に案内されました。近所の方ならまだまだこれからという時間帯なのに、客の入りはあまり良くはありません。すぐさま目を向けた品書は非常に充実しているばかりでなく、値段もいいなあ、とても手頃です。焼鳥を摘んだことは覚えているのですが3本300円だったかな。似たような値段で他にもいろいろ旨そうなものがあるのだから、どうしてもうちょっと気の利いた注文をしないのだろうと我ながら思うのですが、酔っ払ってからの焼鳥というのは刷り込みとなっているようです。他にもなんか摘まんだ気がしますし、へろへろになりながらも結構呑んだような覚えがありますが、それも定かではありません。ただ、このお店のことが気に入ったことはどうやら間違いのないことのようです。 こうなったら仕方がない、いずれまた新検見川で途中下車でもして、この好ましい酒場で呑むことにしようか。そして、折角だからその折には京成線の検見川駅のそばで見掛けたあの酒場にもハシゴしてみようかと、やはり冒頭の憎まれ口はどこへやら気持ちはすっかり検見川に向いているのでした。
2016/12/07
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北千住駅西口の飲み屋街は,過大に喧伝されているように常々感じていました。その思いは再び歩いた今でも変わってはいませんが,長いこと(といっても数ヶ月)遠ざかっている間になんらかの変化が見られることを期待して,それから「大升」の現況を確認したいこともあって雨降るある日に下車することにしました。―これまでも何度か書いていますが,北千住はかつての猥雑さを随分薄めてしまっており,今ではあまり魅力的な町とは思えなくなっているのでした。北千住好きの方にはお断りしておきます。― ところでこの通りには愛称とかはあるんでしょうか。飲兵衛横丁とかありふれた言い方で称されることもあるようですが、もしないようであれば愛称を付けたらいま少し愛着も湧きそうなものです。 そんな飲み屋街の外れ、かつての名喫茶「みゆき」があった地下鉄出口から北千住駅東口のペデストリアンデッキ方面にまっすぐに通りを進むと「のみくい処 一歩」なる店があることに気づきます。間口の狭い引き戸はこの辺りではけして珍しいものではありませんが、これまで何度となく行き来したこの通りにこの酒場があったことにはじめて気づかされました。とまあ初めて見掛けた酒場とあってはすんなりと避けて通るわけにはいかないのが,貧乏性たる性格のなせるところ。いそいそと暖簾をくぐることにしました。カウンターが10席ちょっとのシンプルな店構えで,入口付近の席では常連さんがボトルキープの焼酎で水割りを作りながら店主とお喋りしています。さり気ない店ながら肴はちゃんと手を掛けられているのがわかりおいしいし,値段もお値ごろ感があります。一見でもふらりと立ち寄ってきっちり気分よく呑めるまずまずよいお店でありました。 雨の中ぶらりと駅前方向に進みます。ほどなく「大升」に辿り着きますが,やはり店は閉じています。kyakosanさんからいただいたコメントでは代替わりされていたということですが,今回は確認できませんでした。またの機会に立ち寄りたいと思います。 向かい側にこれまた未訪のお店「極上焼鳥 極上もつ焼き 雑賀 北千住駅前店」があったのでお邪魔してみることにしました。どっかで見たことのあるようながちゃがちゃとした看板です。調べてみるとお花茶屋にも店があるようです。どうりで見覚えがあったわけです。ともあれ早速に入店,5人掛け程度のカウンター席に1席空きがあるので少々狭苦しい気もしますが腰掛けます。奥にはテーブル席もあって,2階もあるようです。客の入りは上々でほとんど空席もないくらいに繁盛しているようです。60歳前後のオヤジさんにホールはちょっとキツメな言葉遣いのおねえさんだけではちょっと大変そうです。隣のオヤジは病み上がりでしかも入れ歯を作っている最中でまるで歯がないにも関わらず最初はチゲ鍋みたいな柔らかいものから食べ始め,ウイスキーの濃い水割りをカポンカポンと口に運び,〆にご飯ものらしきものを頼んでいます。しかもさらに物足りなかったようでレバーかなんかの串物を4本ばかりペロリと平らげたのでした。見ているぼくまで食べている気分になり,すっかりその迫力に魅入られてしまいうっかり呑みすぎてしまいました。値段はそこそこですが,肴は値段以上の価値はありそうでした。品書:ビール中:500,チューハイ:380,ホッピー:400,豚レバ刺:400,やきとん:120~,ポテトサラダ:340
2013/07/06
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森下は今でこそ下町らしさを湛えた風情ある町として知られていますが、かつてはドヤ街のある町でした。日雇い労働者が多く闊歩し、かなりの荒っぽい町であったことが想像されます。そんな名残は現在でも形を変えて生き延びており、明治30(1897)年創業の「桜鍋 みの家 本店」や大正13(1924)年創業「深川飯本家 割烹 みや古」などは、今ではちょっとした贅沢気分で訪れる老舗の名店扱いされていますが、かつては日雇い労働者が安く活力を得るために食べに行く庶民以下の生活水準の人たちがもっぱら利用していたのではないでしょうか。やたらと持ち上げられることの多い、これまた大正13年創業という老舗の有名居酒屋「山利喜」も今でこそ取り澄ました小奇麗さでどこかしらけさせられもするわけですが、かつてはそれこそ労働者のための酒場だったことでしょう。その点、「はやふね食堂」や昭和42年に立飲み屋として創業したという「みたかや酒場」には今でも往時の猥雑とした雰囲気を偲ばせる荒々しい気配が漂っており、森下で呑んでいるという気分にさせられたものです。 今回はよく知られた酒場で「吉田類の酒場放浪記」でも紹介されたことのある昭和56年創業の「三徳」にお邪魔してみることにしました。都営の新宿線と大江戸線が交錯する、新大橋通りと清澄通りの交差点にある森下駅を出て、清澄通りを南下、深川芭蕉通りなる愚かしいような通りを進み、住宅街に足を踏み入れたかと思われるほどに暗く静かな道を進むと「もつ焼、煮込み 三徳」という明るい袖看板が出迎えてくれます。濃紺のテントのひさしに赤提灯、ガラス戸には縄のれんが下げられており、まさに典型的な酒場の趣です。もっとも好みのタイプの店よりはいくぶん上等な構えではあります。店内はカウンターに7,8席、テーブルが3卓に小上がりにも4卓ほどのテーブルが置かれていたでしょうか。カウンター用の丸椅子や板張りの壁、短冊の品書きなど気分は盛り上がります。当然もつ焼と煮込がうまいという評判ですが、他にも純レバやにこ玉なる肴もよさそうで迷いに迷った末にやはりここはシンプルにもつ焼きをいただくことにしました。これが一番違いがわかるはずです。でやっぱりこれがなかなかの味です。身勝手をひとつ言わせてもらうとお客さんの顔ぶれがサラリーマンやOLがメインであるのが気に入らない、ここはやはり肉体労働者のおっさんたちが大騒ぎしたり、リタイヤ組のじいさんたちが背を丸めながらちびりちびりやっている様子が様になると思われました。品書:ビール大:550.,下町ハイボール:330,酒:580~,もつ焼ミックス:5本550,純レバ:500,にこ玉:580,レバフライのタルタルソース3本:550.もつ煮込:480 道を挟んですぐに「株式会社 田口屋」という切妻造りの立派な風格ある酒屋さんがありました。大きな「多門」の木製扁額が掲げられています。調べてみると創業が明治20年という「みの家」さえまだ存在しなかったころから営業し続けていたそうです。1階店舗の天井部分にはぐるりと数多くの赤提灯が下げられています。その店頭で若い男性お二人がジョッキで生ビールを呑まれています。角打ちなのでしょうか。お兄さんに伺うとすぐに奥さんに声を掛けてくれました。にこやかなその奥さんはどうぞどうぞ呑んでってくださいと応じてくれます。お兄さんたちも気が良くて、ぼくの分まで器用にジョッキに生ビールを注いでくれます。角打ちと呼んでいいものかも自信がありませんが、古くて風情ある建物で気分の良い人たちと言葉を交わしながらのんびり生ビールを呑むのは格別でした。
2013/08/12
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あまり縁のない方にとって,巣鴨はせいぜいとげぬき地蔵がある場所という認識がある程度なのではないでしょうか。実際,駅の南側にはこれといった見るべきところもなく,白山通りに沿って商店が並ぶ程度ですし,北側には地蔵通りと豊島市場と裏手に染井霊園があるくらいで居酒屋はあまり見受けられません。それでも丹念に路地をチェックして歩くとなかなか年季を感じさせてくれる居酒屋があるものです。 巣鴨駅を出るとすぐの白山通りを越えていつもはついつい賑やかな地蔵通り商店街を歩きますが,なんとなく気が変わって暗い裏通りを散策します。大塚に本店のある「大提灯」など何軒かの見知った店を通り過ぎ,さらに彷徨うと「富庄」なる居酒屋がありました。迂闊にもこれまで見過ごしていたようです。昔はどこにでもあった「庄や」なんかに近いいまではすっかりオールドファッションとなってしまった和風居酒屋のようです。ぼくが呑み始めたころはこうした居酒屋が主流でどこかしら郷愁する感じさせられます。店内もテーブル席も窮屈そうな造りで昔の人の体のサイズに合わせて作られているように思われます。カウンターは厨房を取り囲む形になっていて店の方との距離も近く感じられます。気のいい初老の夫婦で旦那はお喋り好きみたいで,常連さんとおしゃべりに興じながらも手際よく仕事をこなしています。肴のお値段がややお高めということもあったのでお得な豆腐ステーキを頼んだところこれが驚くほどのボリュームで,これだけですっかりお腹がいっぱいに膨れました。常連さんも注文しているのをみるとこれはちょっとした名物料理なのかもしれません。残念だったのがお会計が不自然に高かったこと。計算ミスであることを期待します。 駅を越え,白山通りを千石駅方面にしばらく進み,これといって変哲もない通りを右折すると外見だけではこれといった特徴のないこぢんまりとした構えの居酒屋があります。「陣馬」というお店でした。中に入るとすぐがカウンター席で,けっこうな年季を感じさせてくれます。これはなかなかよさそうだとなぜか日頃頼むことのないマッコリなんかをもらったりしてみました。こちらも初老のご夫婦で切り盛りされているようで,無口な方たちである印象を受けました。日によってはお喋りを楽しみながら呑みたいこともありますが,ひとり黙々と呑む時間を邪魔されたくないときにはよさそうです。いつものことなのかこの夜が特別なのかはわかりませんが,奥の小上りも含めて客は入っておりませんでした。正統派の居酒屋さんとしてちょっと気が利いていて使いやすいお店でした。巣鴨にもきっとまだまだいい居酒屋さんがあることを期待させてくれるお店だと思います。
2013/10/24
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入曽という駅があることをいい加減な鉄道好きでしかなかったぼくなどは今回訪れてみて初めて知ったわけですが、もったいぶるまでもなくその正体を明かしてしまうと、西武新宿線の3駅先にある都心からは三十分もあれば行けてしまう程度の、精々がベッドタウンと言ってよいほどに近い町なのですが、この認知度の低さはどうしたものでしょう。試みに職場の人たちに調査を試みたところ10名ほどに聞いてみて、なんとなく聞いたことがあると埼玉の町であると答えたのが1名だけ、それも路線は全く的はずれなのだから、ほとんど知られぬ町であると言ってもあながち誤りではなさそうです。そんな町に行ってみる気になったのは、そんな秘境めいた町が好きってこと以外には理由などあろうはずもないのでした。 駅前に降り立つとまさに期待を裏切らぬほどの場末っぷりをていしていました。かほど都心から近いにもかかわらずこの裏ぶれっぷりとは、これまで訪れていなかったことにひとしきりの後悔を感じずにはおられません。なにせひと頃は、所沢に通っていた頃があったのですから、ほんの数分と百何十円だかを出せば、この町に来れていたのですから。人気もまばらな駅前をざっと眺めるだけですでに興奮してしまうのですが、おいしい所は後回しにして、まちを一巡りしてみることにしました。ところが駅前の詫びしげな商店街と、線路沿いに立ち並ぶ商店以外にはさほど興趣をそそられるでもなかったので、とりあえずは目に付いた喫茶店を訪ねることにしました。 「純喫茶 コールドンブルー」は、駅の真正面にある低層ビルの二階にあって外見からもよく目立っています。レーザーカラオケの文句に恐る恐る階段を上がり、入り口を見ますがどうもやってなさそう。 線路沿いに進むと「コーヒーショップ スウィング」というこれといった目立つ装飾はないものの、これこそまさにコーヒーショップの原点と言っても良さそうな庶民的でカウンターメインのお店で、女店主と女性客がかしましく歓談する忙しい朝にさっと一息つきたくなるようなお店でした。 すぐそばの「コーヒーハウス メープル」は、一転してぐっと本格派の喫茶店です。広く薄暗い店内にはよく見るペンダントライトが飾られ、椅子は木製のお馴染みのもの。定番でありながらもゆとりある座席配置が独特な開放感をもたらすのに成功しています。店内には隔離された特別室もあって、そこがとてもいい雰囲気です。 駅前の車止め用のスペースの隅っこの三角地に安普請の掘っ立て小屋の酒場がありました。立ち呑み用のエリアと椅子付きのスペースが不思議な隔たりをしていて、2つのお店を繋げたのか、増築を重ねたのか、面白い造りとなっています。「蕾」というお店で、三角の頂点は焼き場となっています。もつ焼の店なのかと思うと実はそれだけでなく中華料理が充実していて悪くないのでした。そう店の方は中国人のご夫婦らしく、座席で呑む目つきと酒癖の悪そうなジイサンがなんだかはっきりとは聞き取れないものの店に余計な因縁を付けるのを旦那はひょうひょうと受け流しています。一方で奥さんは線が細そうですが懸命に接客から調理もこなして立派。帰り際にドキリとするような一言を頂きましたがどういうわけだか失念。なんと言ってくれるのかは実地にてご確認ください。ちなみにこちらは14時の開店です。 15時ちょっと前にお隣の立ち呑みが開店したかと覗きに行くと薄暗がりにオジサンが一人ポツンと腰掛けています。まだですかと伺うと、どうぞ入ってくださいと入れていただけました。開店前の一憩を取られていたようです。「もつ家」というお店です。話が脱線しますが、迂闊なこと帰宅してからこの店をHPで調べるまでまったく知らなかったのですが「もつ家」は、秋津総本店、霞ヶ関駅前店、朝霞東口店、東村山西口店、狭山台店、ひばりヶ丘店、久米川店、狭山ヶ丘店、入間川店、所沢西口店、新所沢店、東久留米店と主に西武線沿線に多くの支店を持つ立呑みチェーンだったのですね。秋津駅前にある(JR武蔵野線の新秋津駅じゃないところが西武線へのこだわりか)店舗には以前お邪魔したことがありましたが、その際は、ひばりヶ丘店がオープンとかいう貼り紙があったような記憶があります。それが何年前のことか記憶に定かではありませんが、そう何年も前のことではないはずなので、ここ数年で一挙に拡張路線に転じたようです。そんなこともあって、入曽駅が最寄りのこの「もつ家」は、同チェーンのHPにある入間川店かと思ったら、どうもそうではないようです。地図を見るとその店舗は入曽駅から歩いて、10分じゃきかないほどの距離があるようですが今回お邪魔した「もつ家」は駅から徒歩1分という至極便利な場所にありますし、第一立呑み屋じゃないのですね(よく目立つ黄色いテント看板には立ち飲みの記載あり)。そんなこんなで、席に付き目の前に飾られた目指しなどを注文します。カウンターにはどうやら店主らしき人物のCDジャケットが貼られ、ここでライブをしたりもしているようです。壁にはこっそりといった控えめな感じに酒場放浪記のステッカーも貼られていて、どうやらこの店主、当人も酒場好きのようです。物腰も柔らかく、丁寧でいてちょっとせっかちな気のいい店主のいるこのお店、ちょっと好きになりました。
2014/10/14
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ビストロなんてものは本来が大衆のための食事処なのだろうから、このタイトルは矛盾しているのかもしれぬけれど、実際、日本のビストロで仮にプレフィックスのコースを食べて、例えば三千円のコースだったとすると、これで週2回通って食事だけという訳にもいかぬからワインをボトルでもらったりすればあっという間にエンゲル係数が跳ね上がるのだから、やはりとても大衆とは呼べぬことが多いのであります。だからここでは大衆フレンチとは呼ばず素直にビストロと呼ぶ事にします。そして、ぼくのようなセコい人間は、例えば高級フレンチ店なんかで食事をする機会に恵まれるとそのサービスのゆったり感にも促され、酒に掛かる費用が食事を簡単に上回るから要注意なのです。そんなぼくでも時にはビストロ料理が食べたくなったりするのです。さすがにビストロで高級店のクオリティは望むべくもないけれど、日常生活におけるプチ贅沢としては充分なのです。 この夜、訪れたのは早稲田の「モンテ(montee)」であります。早稲田通りの路地を入ってすぐの立地で学生街からは少し距離があるから騒がしくもなくいい感じです。こちらは、手頃な価格でフレンチ気分を楽しんでもらおうと伊川順二氏という方が曙橋「オー・ムートン・ブラン」にオープン、四ツ谷「パサパ」へと店を移っても良質でカジュアルなそして低価格で気張らない雰囲気もお店をやってくれたのは、ぼくのようなたまには旨いものを食いたいけれど、根がケチなものだからあまり大金は払いたくないという吝嗇家でも通えるお店を生み出した功績は素晴らしいものであります。今は無き目白台の「パ・マル レストラン(Pas Mal RESTAURANT)」、千石の「プルミエ」、高田馬場の「ラディネット」を始め、荒木町「スクレ サレ」は新宿御苑に移転されたようですね。今でも高田馬場「ラミティエ(L'AMITIE)」、神楽坂「ブラッスリー・グー(Brasserie Gus)」、護国寺「ル・モガドー」「ル・マルカッサン(Le Marcassin)」、市ケ谷「ラベイユ(L'Abeille)」、落合南長崎「エシャロット」といった志を継ぐ店があり、その料理の質や店の雰囲気、サービスのレベルには開きがあるけれど、それでも他の追従を許さぬ魅力を維持するのはシェフたちスタッフのあくなきサービス精神と研鑽の賜物と考えるのであります。なんて何処かから拾ってきた情報を切り貼りして何ともみっともなく辿々しい文章になってしまったけれど、こうした月に一度のお楽しみというようなお店が増えるのは大いに歓迎したいところです。 さて、この早稲田の新しいお店は、左記に書いた「ブラッスリー・グー(Brasserie Gus)」で修行したシェフが独立して始めたお店だそうな。彼の姿は店を出る際のお見送り時に拝顔したけれど、はじめは修行僧のような厳しい表情だったのが瞬時に心からと思える笑顔に切り替わってすっかり好きになったのでした。ここでは前菜で鶏レバーのパテ、メインに鴨のコンフィ、デザートにガトーショコラと大定番を頂きましたが、何れも満足感はしっかりあるのに嫌な胃もたれを残さぬサッパリとした仕上がりで胃腸の衰えを日々自覚させられるぼくにはとても美味しいばかりでなく、食後感も爽やかでした。もう一つ重要なのが、ワインがデキャンタにて手頃な価格で頼めるのが嬉しい。ボトルを開けてもう少しとなり、ボトルを開けてしまい、グラスの残りもあとわずかというのに料理がまだ結構な量残っているということがしばしば生じます。そういう時、グラスワインでは結局2杯、3杯と歯止めが掛からなくなり、ボトルだと呑み切ろうと躍起になりオーバードリンクとなってしまう。こんな時に大変ありがたいのであります。これから齢を重ねてボトル1本呑み切れなくなってしまう時が来ると考えると姉妹店の皆さんにもぜひ取り入れていただきたいと願うのでした。
2019/01/01
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近頃になってまたも足立区の酒場巡りを再開したい気持ちが盛り上がってきました。一度ハマると集中的にその町に通うことがあってもそのうち熱が冷めると当分気がのらなくなる。それでも巡り巡って結局はかつて訪れた町に戻ってくる。それは酒場巡りに限ったことでもないぼくの性癖、いやもっと切実な持って生まれた本能に近いもののような気がしています。回遊魚が一定周期で各地を転々しながらもやがては生まれた場所に帰ってくるのにどことなく似ている感じもしますが、回遊魚には元いた場所に戻って散乱した後生命を終えてしまう種類もいたりするので、そういう一生に一度というのとは明らかに異なっています。むしろ渡り鳥に近いのかも。高級役人だったり政治家を渡り鳥なんて評することがあるけれど、それはさすがに本物の渡り鳥には申し訳ないのだ。彼らは予めお膳立てされたレールだったり、単に欲得に促されるままに移動するだけなのだかから比較するのが失礼なほどであります。それはともかく久し振りの町というのはどこだってそれなりには以前と違って見えるもので、今回改めて歩いた梅島は案外面白く思えたのです。なので、きっと近いうちにまた参上することになります。 ということで、今回訪れたのは駅前の横断歩道を渡ってすぐの「もつ焼き専門店 もつよし」であります。こりゃ便利な場所にありますねえ。しかも都心部とは異なり駅前といってもそうは賑やかな訳でもないから人混みにまみれてくたびれてしまうようなことはありません。しかもこちらネットの情報では15時に開店し,しかも金土日は24時間営業とのこと。立地と営業時間に関しては合格というよりも「優」を進呈してもおかしくはないのだ。にしては、店内は閑散としています。というかたった一人お客さんがいるばかりなのです(この方は店の方とも近くてオーダーの通りやすいばかりでなく、吊り下げ式のテレビの真正面という独り客にとっての最上席を把握しておられるようです)。中央にコの字のカウンターが設けられていますが、周囲には卓席も多くここが満席になることがあれば相当に賑やかになるはずです。さて、もつ焼き専門店とある割には今時の酒場にありそうな定番からちょっとしたアレンジ料理まで幅広く揃っていますが、優柔不断なぼくには珍しく迷うこともなくオーダー完了。お値段もそれなりにお手頃で価格にムラがないのも選びやすい理由ではあります。大抵の居酒屋では肴ごとの値段設定にムラがあるもので、それなりに食材の底値を知っているぼくとしてはどうにも納得のいきがたい品が混じっているものですが、こちらはそんなことはないのです。にしてもこれだけのキャパのお店をこれだけ多様な肴を用意しながら切り回すのはいくら空いているとはいえ大変なことだと思うのですが、店主らしき方は全くの平静な表情を浮かべたままなのだから確かにすごい。逆の意味ではこれだけ空いているからワンオペ体制に切り替わったのかもしれません。何にせよ特別どうということのない店ですが、マイナスよりもプラスの要因が上回ってはいるように思えるのでもう少し繁盛していてもおかしくはないと思うのですが、なかなかうまくはいかないのでしょうかねえ。
2024/01/24
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いつもいつも場末っぽい飲み屋ばかり目指していますが,通いなれた町の多くはもはやこれ以上開拓できそうにありません。池袋などはその最たる町です。北口をずっと進んでトキワ通りと並行して伸びる三業地界隈には怪しげな店がまだ残っているのは知っていますが,この日はあまり歩き回るのも億劫なので,まだ行ってないお店として記憶していた2軒をはしごすることにしました。 まずは東口のジュンク堂書店脇に延びる東通りを進んですぐの地下にある「連家 池袋店」にお邪魔することにしました。昔三軒茶屋で同じ屋号のお店に入った記憶がありますが,その系列の店でしょうか。帰り際にもらったショップカードによると池袋には系列店として「ふくろ酒場」というのがあるようです。ここも行ってません。地下への階段をくだり,扉を開くととてもにぎやか。宴会が催されているようです。小奇麗で見ようによってはちょっとしゃれた造りのカウンターに着きます。ひとり客はぼくだけ。やはりひとり呑みの店ではなさそうです。こじゃれた印象からすると思ったより値段は全般にお安め。それでも生中が294円ともっともコストパフォーマンスが良さそうなのでオーダー。お刺身も2品以上という縛りはあるもののお得な値段でちゃんとした量を出してくれるので思ったより使えるかも。店のフロアー係のおねえさんも感じがよかったし,店探しに窮したら行ってもいいかな。品書:生中:294,酒小:336,本日の刺身:294,もつ鍋:714 ついつい勢いに乗ってしまいもう一軒。ヤマダ電機の裏手の飲み屋街の一軒,「清龍 本店」の脇にある「東尋坊」です。かねてから気がかりなお店だったのですが,折悪しくせっかく行ったときには早々に早仕舞いしていたりして,これまで縁のない店だったのですが,この日は無事入店がかないました。テーブル席メインのお店かと思いきやむしろ厨房を取り囲むカウンター席が充実して感じられます。お客の出入りを見たことがなかったので閑散としているかと思いきやなんのなんのかなりの入りです。値段はやや高めですが,丁寧に仕上げられた肴もだしてくれるちょっと大人の普段使いの居酒屋という趣で楽しめました。品書:ビール中:600,サワー:400,〆サバ:300,焼鳥2本:300~,いわしたたき:450
2013/02/27
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前夜の青井駅界隈が思った以上に楽しかったので,次の夜もふらりと綾瀬駅を下車してしまいました。当初は青井駅方面に向かうことも考えましたが,足腰が妙にだるく感じられたので五反野駅方面に向かうことにしました。前夜同様に綾瀬川を橋で渡ります。綾瀬駅そばに「ときわ食堂」がありますが,綾瀬駅と五反野駅の中間地点にも別店舗があるようなので行ってみることにしました。ところがざっと探したのですが,見つからぬためさっさと観念して五反野駅を目指すことにしました。 目に留まったのが「居酒屋・定食 磯吉 五反野店」です。店頭の張り紙によるとハッピーアワーがあってなんとチューハイが150円とのこと。迷わず飛び込みます。五反野店ということは他にも店舗があるはずですが,ほとんど見掛けたことがありません。「居酒屋 磯吉 南千住店」は行っていますが,雰囲気がぜんぜん違いますね。カウンター8席にテーブル3卓,小上がりにテーブル5卓(うち2卓は掘り炬燵式)とけっこうな広さ。入口はアルミサッシで安っぽい引き戸ですが,店内はけっこうきれいで明るめです。この店の魅力は張り紙にあるとおりとにかく安さ。しかも安いだけではなくて,肴はかなりハイレベルかつボリューミー。お通しも品書きに200円と明記されているのは安心です。エノキ,もやし,カニカマなんかを合えたもので味もいいです。チューハイが甘いのは残念ですが,150円では文句はありません。レバカツや串焼(特につくねは秀逸)もおいしくて満足しました。常連さんと若い女将さんの会話を聞くと,やはり常連のおひとりは1軒目にこの店に立ち寄り,続いて他店に顔を出す。しばらくするとまた舞い戻ってきて,またまた一杯引っ掛ける。といったようなことを一晩に何度か繰り返す人がいるそうです。ぼくもはしご好きなのでこの人の気持ちよく分かるなあ。品書:HH(生中:300,チューハイ:150)[17-19],ビール中:450,ホッピー:400(中:200),チューハイ:250,磯吉刺身3点盛/レバテキ(火-金),厚切りタン塩:600,串焼:100,レバカツ:200,もつ煮/牛すじ煮(500,ハーフ:300),厚切りチャーシュー:500 商店街の通りと1本隔てた道に建っているためか,人通りもなくわびしい感じです。そんなマンションビルの1階にあるお店が「多留万」。もともと寿司屋だったこの店を居抜きで入って6年目ということですが店内はガラガラ。はっきり言うと店主にやる気があまり感じられません。多留万サワーは炭酸の効きが弱い単なるチューハイ。焼鳥はまずくはありませんが,やきとんは横着しているのか出していないようです。お通しのちっちゃな冷奴はピリ辛でやはりまずくはありませんが,家庭料理の粋を出ないでしょう。品書:ビール中:550,ホッピー:450(中:200),多留万サワー:250,酒1合:350,串焼:100or120,もつ煮込:300,フライドポテト:250,多留万ギョーザ:380
2012/07/16
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今年も早いものでいつの間にやら師走を目前にしてしまってしまいました。あれこれやり残したことの多い一年をそのままに終えることになりそうなのですが、とりわけぐずぐずといつまでもふさがらない傷口のように爪先で弄んては完治を遠ざけるようにすることで、記憶の片隅に仕舞い込まないようにしている一軒の喫茶店があります。その喫茶店があるのは東急の世田谷線沿線の駅、駒沢大学駅から10分ほどの場所にあります。でもとりあえずは、駒沢公園を抜けてこちらもまた何度か空振りしている老舗喫茶を訪れることにしました。 駒沢公園に面するほぼ住宅街の様相を見せる通りに「喫茶 芝生」はあります。一見して古いお店であることが察せられ、駅から近くはない場所にあるため、あまり面白くもない通りを歩くのは憂鬱でもありますが、なんとしてもなかを覗いてみたい、一杯の珈琲を店の歴史を感じつつ味わい尽くしたいという一念のみでひたすら歩を進めます。何度目かトライで到達した当のお店はこの日は無事営業していました。カウンターはどこかしらスナックらしさが感じられるものの、それ以外は紛うことなき純喫茶の佇まいで、それも正統的な純度の高めであることにひとまず大満足します。大きくやけに健康的な人々の溢れる、散歩したくなるような魅力にかけるーあくまで私的な感想ーのそばに、こうした暗くてどこかしら怪しげで不健康な印象すら漂わす喫茶店の存在することに安堵すら感じます。 もう一軒の空振りを続ける喫茶店は同じ通りをひたすら北上することになります。何度目かの同じルートを飽きもせずーウソ、もうウンザリですー、首都高の渋谷線を見上げつつ突っ切り、さらにまだまだ直進します。うっかり回り道をすると袋小路やたんに遠回りになるだけなのは、すでに経験しています。 さてようやく目当ての店が見えてきました。「アポロ(APOLLO)」です。ここのことを書きたいと思ったのはまたもや入ることができなかったからです。こちらのお店は未だ現役なのでしょうか? ご存知の方がおられるなら是非ともお聞かせ願いたいと思ったのです。店内にはそうお年を召したわけでもなさそうな女性の姿もあります。無作法ながら覗き込んだ店内も渋くて味わいがあり、しかし充分現役でも耐えうる輝きが感じられます。すぐ先にはこちらも負けず劣らす古めかしいパン屋さん「Syogetsu Pan」があり、立ち寄りたくなる誘惑に駆られますが、この二軒は是非ともセットで楽しみたいものといつも通り涙を呑んで見送ることにするのでした。 そんな場合に。「カフェ プティ フォンティーヌ」に立ち寄るのもお決まりになってしまいました。上品で可憐なお店で、まさに高級住宅街のカフェにふさわしいお店で、美味しいコーヒーを上品に味わいたいならお勧めします。 せっかくなのでもうちょっと、「LARE(ラルー)」は、洋菓子屋さん併設の喫茶店、装飾は抑え目ですが古びていながらもお客さんのたくさん出入りする明るく賑やかなお店です。 もう少し時間を潰すと呑みにも程よい時間となりました。三軒茶屋に向かうことにしましょうか。のんびり歩いていると環七にぶつかり、そういえば環七に面して、良さそうな喫茶店があるということを思い出しました。しばらく南下するとありますあります。期待通りの古い喫茶店、「カフェ・ド・ラ・メール」です。若干散らかっているのが惜しい気もしますが、紛れもない硬質な印象の純喫茶です。ところがお客さんもいない店内は寂しいくらいで、こうした古い喫茶店て独りぼっちはとっくに慣れっこのつもりでしたが、妙に人恋しくなります。急激に酒を呑みたくなり、しかも誰か愉快に呑める相手が欲しくなり、ふと思い立ち三茶在住の知人と急遽約束を交わしたのでした。
2014/12/07
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巣鴨駅を出ると昔は地蔵通り商店街など知らぬ顔をして、千石の三百人劇場を目指したものです。映画好きーというかぼくの知っていたそういう人たちは映画好きなどと言うには度を越した人たちばかりで、ああいう人たちをシネフィルと呼ぶのでしょうーは、歩くことを厭う人が多くてとにかく公共交通機関が通ってさえいれば多少の早起きなど苦にすることもなく、路線バスに乗り込むのでした。ぼくから見れば横着だなあ、しかも歩けるのに無駄遣いするなあと馬鹿にしたものですが、彼らにとっては、衣食住など二の次で映画にかかる必要経費は、少しも惜しくないかのようでした。好きなものにさえ銭金のことをつい考えるぼくなどは通人を気取るにはまだまだ甘い覚悟でしかないようです。話が脱線してしまいました。巣鴨駅から千石駅に向かう裏通りに風俗街があって、そこに数軒の古い酒場が軒を連ねているのです。その何軒かのことは随分前に報告させていただいていますが、一軒どうしても行きたいのに入れずにいた酒場があることを不意に思い出したのです。 そんな敷居の高い店にいきなり訪れるのは、やはり性急すぎるでしょう。一応周辺の酒場で聞き込みくらいしてみてもいいんじゃないのか。なんて言ってるけどその一軒目が安全かどうかなんて誰が保証するのか! 雪崩をうって人生まで転落することになるのではなかろうかてなことをナイナイなんて思いながらも、手持ちの予算のあまりにも儚いことを嘆いていても埒が明かぬととびこんでしまう思い切りの良さがぼくにはあるのでした。いやいや実際この辺りの酒場は、見た目には庶民的に見えても実体は程遠いことなど嫌なくらいに経験している。だからあえて思いがけず「プチ ポワ(Petits Pois)」なんてオシャレ風なお店に飛びこんでしまったのは果たして正解だったのか、今となっては振り返る気にもならぬのです。すかした雰囲気のカウンターの空き席に腰を下ろし、ワインバーらしいのでお手頃なハウスワインを頼み、件の店に行くつもりだがと告白してみたまではまあよろしい。さほど警戒もされず、よその店のことを尋ねる無礼さもまあなんとなく見逃されたようです。さて、こちらのお店、女性二人でやられてるのですが、とにかく人柄がよろしいのであります。ついついお喋りに絡め取られてうっかりと呑み過ぎて仕舞われぬようご注意頂きたいのであります。この若くて元気な彼女は手習いであるらしいのですが料理上手なのも言い添えておくことにします。カウンター両脇の片方はとにかく極度の自慢しいで鬱陶しいことこの上ない、見たくもない誰それと撮った写真だとか某からワインを貰っただとか聞いてる側にとってはどうでもいいようなことをとにかくしつこく語りかけてくるのです。もう一方の人は年代も近かったこともあり、話題に事欠かなかったのです。何とかそんな人たちを振り切って、ママさんがホントいい人なのという言葉に背中を押されて、件の店に向かうのです。 片側ばかりに呑み屋が軒を連ねる通りの一軒、古い店が多い中でもとりわけ古株に思われる「サントリーバー コバ」の扉を開いたのでした。サントリーバーって高度成長期とかの時代にはそれこそそこら中に見掛けたのでしょうが、今では衰退に歯止めのかけようがないような地方都市でたまに見掛けることがあるくらいで、現役の酒場を見るのはごく稀なことです。御茶ノ水駅の聖橋口からすぐにあった「まいまいつぶろ」もそんなわずかに残された素晴らしいお店でしたが、そこも店を畳んで10年近くなるでしょうか。さて、店内はカウンター席とテーブル席が1卓だけの狭いお店です。でもその内装のレトロなんて安直な言葉で片付けようのない職人の仕事の見事さが集約された造作はため息が出るほどです。先の店で伺ったとおりの陽気で愉快なママさんに店の歴史などあれこれお聞きしましたが、それはここでは控えておきます。残念なのがカラオケを導入していることですがいろいろくちばしを突っ込んでくるものの先の店の客のような嫌味のない常連もありがたい事に歌には興味がなさそうです。お通しにはおやおやナンとカレーなんかも出されて、ちょっと小腹の空いていたところなので嬉しいことです。しょっちゅうは来れそうもないけれどまたママさんの顔と素敵な店を眺めに訪れたいと思います。この辺は巣鴨社交飲食業組合が互助会的に寄り集まって営業しているようなので、今度はよそのお店の話も伺いたいものです。
2016/06/22
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荒川と隅田川に挟まれて地図上から想像するとトンデモなく窮屈で息苦しい気持ちにさせられたりもする新田をご存知であろうか。などとぶきっちょな語りでもっともらしく話を切り出したのは良いけれど、が実際にこの地に行ってみるとすっかり真新しくなった団地街が広がっていたりするのです。橋を渡る手前で一望してみるとこれはわざわざ足を運ぶのも酔狂でしかないとすら思えてくるのです。北千住から何度かに分けてだけれど、一応この中洲になりそこねたような地図上では魅力的な土地をほぼ歩き通したつもりだけれど、実際には川の存在など余り感じられぬ地続きのようにすら感じられるのです。時折渡された橋にのみここが川に寄り添う町だという印象を感じ取ることができるのでした。そもそも島になりそこねたという―というか気になってウイキペディアで少し調べてみたのですが、ここがこのような宙吊りのような土地として形成された所以がどうも判然としないのです―来歴のお粗末さで、先般火災により焼失の危機を経験したノートルダム寺院のあるパリのシテ島のような高級住宅地にはなりえぬといえば無礼がすぎるかもしれません。ともあれ、少しも異形の土地らしからぬ平々凡々たる町並みは、散策に値せぬとは言いませんが、過度な期待は禁物なのです。しかし、ニューファミリーが移り住むキレイな団地のできるずっと前から地元に根付いていたであろう廃れゆく商店のある景色には時折胸が締め付けられるような感情をもたらされるのでした。 そんな寂しい商店街の端の方に「定食居酒屋 あこがれ」はありました。それにしてもあこがれとは何とも思い切った店名にしたものです。しかもあこがれという単語にはどう想像力を逞しくしても結びつけるのが困難な定食居酒屋という冠を乗っけるのだから、相当なぶっ飛んだ完成の持ち主が店主を努めておられるのだろうなあ。店内に入るとまず目に飛び込むのがお客さんなのであります。今さっきまで気にしていた店主など眼中から逸らされて、大いに賑わしい女性グループを奪われるのでした。地元のマダム達にとってここはカフェみたいな存在なのだろうか。他に飲食店が少ない事もあるけれど、夜な夜な定食居酒屋に集うというのもどうかと思わぬではないのです。まあその一方で主婦にだって自由を謳歌する時間があっても構わないと思う程度の寛容さはあるつもりです。ってこういう言い方が傲慢なのは分かっているけれど時々あからさまな有閑マダムを目撃するとイラっとしてしまうのを抑えることができぬのです。さて、こちらのご主人、どうやら沖縄の方らしくて、同行したO氏が近々沖縄に旅行することを告げるとそりゃまあなんともうれしそうに沖縄の事を矢継ぎ早に語って聞かせてくれるのでした。無論料理も沖縄のものが揃っていて、フーイリチーを注文しました。都内の他の沖縄料理店ではフーチャンプルーとか書かれていて、クーブイリチーとかは良く目にしてイリチーとは煮物に近い料理かなと思っていたのですが、ここでは炒め物であってもイリチーとして提供しているようです。まあ大らかな沖縄だからそんなことはどっちでも構わぬのかもしれません。水で戻した麩を軽く絞って卵をくぐらせるのが秘密ならざる秘訣のようです。すごい美味しいし、きっとヘルシーに違いないから今度自宅で試そうと思ったのですが、未だ実現に至っていません。忘れぬようメモしておくことにしよう。お通しの牛スジの煮込みもたっぷりでしかも味がとってもよろしいのです。さっきマダムたちをディスってしまいましたが、彼女たちが通いたくなる訳も分かるというものです。でも、しかし遠路はるばるここまで訪れるかというと、沖縄に行くよりも厄介に思えるのでした。
2019/05/15
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五香は、新京成電鉄の唯一の列車に乗って松戸駅から10分程度で行けてしまえるから、まあ都心の方にとっても30分程度で辿り着ける町であろうと思うのだ。その気持ちは分からぬではない。しかし、あえて新京成電鉄沿線での呑みの楽しみを語ってみたいと思うのだ。上手く接続しさえすれば確かに30分程度で五香に行ける―と思う―から、よくよく考えてみて頂きたい。まずは、この新京成電鉄の沿線は何より田舎臭い。田舎臭いというのは全く持って田舎ということではないので注意が必要なのです。田舎の風景を愛する人たちがいてもおかしくはないと思う。だけれどぼくにはまだその良さは理解しかねるところなのです。地方鉄道の小さな駅のその駅前に残滓を留める商店街や飲食街にこよなく愛着を感じる者にとっては新京成電鉄沿線は、格好の町が残っていると思えるのだ。都心からふらりと行ける町でこの枯れ具合を堪能できる沿線はそうはないはずだと思うのです。これは誉めてるつもりの文章だったのだけれど、こうして振り返って読み直すとどうもおちょくっているように読み取れるけれどそれは本意ではないという事はご承知おき願いたいのです。 さて、駅前の雑居ビル二階に「カフェ フェリース」というのがありましたが、こちらについては、語らずに済ませることにしたい。少なくとも純喫茶を好む方の琴線には触れる余地がなかろうと思うのです。本当の目当ては駅の逆側、北側を東武野田線の六実駅に繋がる道をしばらく行ったところにある「中華料理 栄楽」なのでした。まさしく六実駅に車で送り届けてもらった際に見掛けた中華飯店なのでありますが、ありゃりゃ、戸は開いているし中には人の気配もあるけれど営業を始める様子は認められません。もしかして昼間だけ商売しているのかなあ。 しかし、愚図愚図している時間の余裕はありません。もう一軒、目を付けていた「酒の店 ウタリ」を目指すことにします。看板が酒呑みの気分を高揚させるに十分ですねえ。酒の店というのが何とも硬派でどこか懐かしさすら感じさせてくれます。これが新京成電鉄の魅力なのだよなあ。それからウタリって何なのだろう。仮名の表記から推測するにアイヌ語ではなかろうかと推測するけれど、これは次回主に伺うとしよう。なんて書いたけれど好奇心に打ち勝てずに調べてみると、やはりアイヌ語のようです。同胞、つまりは仲間を意味するようです。同胞だと重苦しいし、仲間だとちょっとお馬鹿っぽくなるけれど、その点、ウタリという響きは少しばかり謎めいている一方で親密な雰囲気が放たれるような気がするのです。さて、それはともかくとして、店のご夫婦もそんな親密さがあって、内装の古めかしくも暖かな雰囲気と相まって実に気分が良いのです。そして、そんな気持ちの良さは振舞いだけでなく肴にも現れています。マグロのブツの見事さはどんなもんだい。一人じゃとても食べ切れぬような、しかもそれが深い味わいの絶品マグロだから驚かされます。切り身もでかくて一口で食べ切るには味覚が濃密過ぎるほどです。そして、なんの気もなく頼んだ鶏皮ギョウザの何たる美味いことよ。こちらもまたたっぷりと盛り付けられていたけれど、それが瞬く間に胃に収まったのでした。特に同行者には大好評で日頃感情をほとんど表に出さぬのに、この夜は喜悦に満ちた表情を浮かべていたのです。この夜、この店で彼とはようやく真にウタリになれたように思うのです。と書くと。いかにもわざとらしいか。 さて、折角だからもう一軒。田舎町らしく「田舎料理 あんあん」にお邪魔するとします。田舎料理というのはよく分からぬし、あんあんなどという艶めかしい店名もどういうつもりかと突っ込みたくはなるのだけれどこの夜は気分がいいから構うことはあるまい。割と広めの店内にはお客はおらず、女将さんが小上りで何やら内職中のようです。こうした店でいつも言われるあらあら若い方が珍しいの言葉を受け流し、席に着きます。肴は適当に冷蔵庫にあるものを出すようであるが、既に美味い肴は充分堪能しました。それにしても煮物っていうのは、同じ材料、同じ調味料を使ってみても出来上がりに極端なほどの差異が生じるのはどうしてなのでしょう。こちらの煮物はどうもぼくの口には合いません。お通しだからやむなく頂きましたが、ちょっときつい。こうした店ではどこで頼んでも変わらない冷奴やこれはサービスといって出されたポテトフライなどが無難なようです。サービスという割にはお勘定書きを見てイラっと来るものだったから、それを嫌うなら寄らぬが得策かもしれません。
2019/08/15
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池袋駅から東武東上線に揺られてわずか一駅目の北池袋駅については、これまでもなにやら呟いたような記憶があります。なんにせよ近頃柄にもなくオシャレタウン化しようとしているご本尊の池袋ではありますが、駅から10分も歩くと突如として本来の田舎っぺ振りが露呈するのであります。そんな田舎っぽさに安堵してしまう自分などはいくら東京での暮らしが人生の半分を越えたところでやはり田舎者の域を突破することはありえないのだろうなと思うのです。北池袋もまさにそんな一駅分の町でありまして、要町、新大塚、椎名町、東池袋や雑司ヶ谷ともまったく違う野暮ったい田舎臭さを体現した町に思われるのです。要町の大通りに分断された住宅街の荒涼感、新大塚のごみごみとしていながら店舗の少ない退屈さ、椎名町の商店街の中途半端さ、歴史的建造物の目立つ雑司ヶ谷、いずれも田舎者の感情をさして揺さぶらない安定的な田舎臭さを多様な形で呈していて心地よいのです。 さて、そんな北池袋でありますが、この日目指したのは「中華料理 萬來軒」だったのです。しかし、なんたることかお休みに行き当たりました。近頃こうしたパターンが多いなあ。でもそのお陰もあって、「八丁目」なる酒場に遭遇することができました。ってか、思い起こすと確かにこのお店、以前見掛けたことがあったはず。当然ですね、何度もこの道は歩いているのだから。なのにこの時まですっかり失念していたとは情けのない話であります。 なかなか開かないけれど、開かずの踏切というほどではない東上線の踏切待ちを待っているのもうとましく地下通路を抜け出ると、蕎麦屋やら呑み屋やらが多くはないけれど、まあそれなりには生き延びています。脇道にある以前お邪魔したような酒場の何軒かはとっくに店を畳んでしまったようです。駅側では2軒の中華飯店がやっていました。その一軒、「中国料理 徳栄」には以前お邪魔していますので、今回は「中国料理 亜細亜」に伺うことにしました。飾り気も趣きもない殺風景の要素としかならぬような店舗には愛情を注ぎたくなるのは、進行甚だしい老眼のせいだとは必ずしも言えないと思うのです。ということで、店に入ると休みの日中ですがそれなりにお客が入っています。大部分は工事関係の作業員の方たちでこうした人たちはきっと方々の食い物屋をご存じなんだろうな。昼呑みの客もいるのは頼もしいなあ。こちらは「キッチンABC」とご縁があるらしく名物のインディアンライスをはじめオリエンタルライスやらアジアライス、それにこれは十条名物と同じものなのだろうか、からし焼定食なんてのもあって非常に目移りしてしまうのでありますが、ビールと同時に注文しないとみっともないなんて見栄を張ってしまい、目に留まったラーメンと黒カレーのセットを注文してしまったのであります。すぐにビールとカレーのみ登場。黒カレーの黒色はきっとイカスミの黒なんだろうな。味は特に変わったところがないけれど、まあ穏便に旨かったです。竜泉の「東嶋屋」や今は亡き深谷の「伊勢屋食堂」の黄色と並べると楽しいだろうなって、いかにも凡庸な想像力ですね。ラーメンも普通に美味しいです。客の多くは揚げ物のセットを食べておりました。ガテンな人たちだからなのか、それともほかの魅力があるのかもしれん。また普通に食べに来たいなあと素直に思えるいいお店でした。店主も超ゴツ顔だけどいい人でした。
2020/03/21
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その1で、このシリーズの起源について勘違いしていたと書きましたが、その勘違いの所以について書き記しておきたいのです。まずは分かり易いところから言えば、愛川ジョナサンが「『男はつらいよ』と常に同時期の公開だったことから、「トラトラ対決」(「トラック野郎」と「寅さん」の対決の意)と呼ばれていた」と語るように松竹の「寅さん」の対抗馬としてぶつけてきたと考えるのが想像しやすいところです。でも以前引用したようにの愛川がテレビドラマ『ルート66』の様なロードムービーの企画を持ち込んだという事実を知ると、前者は後付けの着想であり、やはり発端は持ち込み企画というところに落ち着きそうです。 では、ぼくはどういった誤解を抱き続けてきたかをご説明します。それは、監督である鈴木則文のシリーズ以前に関わったとある作品が発端となるのです。加藤泰の監督による『車夫遊侠伝 喧嘩辰』(1964)です。映画はご存じなくても北島三郎の歌う『喧嘩辰』を知っているという方はおられるのではないでしょうか。そう、この映画の挿入歌として用いられているのです。まあ、歌のことはとりあえずはどうでもよろしいのです。この映画のストーリーは、明治末期の大阪を舞台に車屋(人力車の車夫)の喧嘩と惚れた振られたの物語。と書くと人力車とトラック、明治と昭和の違いこそあれ、物語の骨格はまったく変わっていない、換骨奪胎といったところでしょうか。この映画の脚本が監督の加藤と鈴木則文なのです。この2本の類縁に気付いた時には秘かな興奮を覚えたものですが、Wikipediaの記述を読む限りは思い違いだったようです。いや、鈴木がそれを意識しなかったわけもないから、プロットや主人公の性格付けなんかは過去の作品の好みのモチーフを援用していることには意識的だったのかもしれませんが、それを確認する術はありません。ところで、『男はつらいよ』の第1作で、なんと寅さんが北島三郎の『喧嘩辰』を歌うのです。しかも、歌詞には「御意見無用」と歌われていて、これは既述した『トラック野郎』の第1作のサブタイトルになっているのでありました。 第5作『トラック野郎 度胸一番星』には、近頃ファンを増やしているらしいスナックコーナー、つまりは自販機販売がメインのドライブインも登場します。マックバーガーというハンバーガー自販機などもちらりと見えますが、桃さん、ジョナサンが食べるのはカップうどんでありました。新潟のドライブイン「越後獅子」は流しそうめんが名物でトラック野郎たちも子供のように楽しんでいます。パチンコや理髪店も完備、2階には「Bar ヘッドライト」(内装はドピンク)もあったりして、まさにトラック野郎の楽園のような場所になっています。コカ・コーラに加えて、亀田のあられ・おせんべいの広告もソツなく入れ込んでいます。この映画では、佐渡ヶ島がたっぷり登場し、いつも以上に旅情がそそられます。ライバル役は、千葉真一(ジョーズ)。トラック野郎 度胸一番星(期間限定) [DVD] 第6作は『トラック野郎 男一匹桃次郎』。登場するドライブインは「唐津乙女」。フグ鍋なども提供しているのがご当地らしくて楽しいのです。「やどりき(寄生木)」なんて店も出てきましたが、これはこのシリーズでは珍しい純然たる居酒屋でちょっとうれしくなります。子連れ狼と呼ばれる敵役は言うまでもありませんが若山富三郎であります。トラック野郎 男一匹桃次郎(期間限定) ※再発売 [DVD]
2020/06/20
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