ボクの音盤武者修行

ボクの音盤武者修行

2008年01月11日
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カテゴリ: 小澤征爾
 最新録音は2000年9月8日-10日、小澤さん65歳の誕生日直後です。BSO録音から20年近く経って、遂にと言うかやっとと言うか、交響曲全集の録音を実行しました。もうすでに世界の巨匠(マエストロ)のひとりであり、押しも押されぬ大指揮者となった小澤さんが、恩師斎藤秀雄から学んだベートーヴェンを同じ釜の飯を食った斎藤門下のメンバーと演奏し、世界に問うという壮大な試みです。その意気やよし!

 この録音はサイトウキネンフェスティバルの余勢を駆ったもので、なんと以前の録音よりも演奏時間が短い!第1楽章はCSO、BSOともに7分19秒に対し、SKOは6分54秒と25秒も速い。

 さて、前回と同じポイントをチェックしてみます。

 a)前回BSOの録音より切迫感があります。「ソソソミーファファファレー」の「ミー」は2秒半、「レー」は3秒半。「レー」が短くなりしかもすーっと音を小さくします。ここは古楽奏法の影響を感じました。
 松本のホールはあまり響かないのと、百戦錬磨の奏者が集うサイトウキネンの面々にこの大名曲を飽きさせずに最後まで弾かせるために途轍もない驀進力を求める必要があったのかもしれません。
 b)ここははっきりと違いを聞かせます。BSOメンバで最も小澤の理解者であるエヴァレット・ファースのテインパニーとトランペットが最後のアクセルを踏み込むようにしかも品位を保って大音量で応えています。こういう演奏を聴きたかった!満足しました。

 例の部分はもちろんファゴット。オーボエのカデンツは宮本さんの透明な音色で、オーケストラの中からすーっと立ち上がり、実に美しい歌を披露しています。この演奏で初めてこのオーボエの歌が254小節目から始まっていたことを知りました。振り返るとBSOの演奏もそうしていますが、気付かせてくれたのは宮本ソロが最初です。彼の、オケの中でも一際よく通る音があってこそ可能な表現でしょう。

 気合を感じる部分としては、21小節目の第1ヴァイオリンだけが「ソー」とフェルマータで伸ばすところ。CSOもBSOも単純に音を伸ばしているだけなのに対し、「ソーーーオッ」とちょっとクレッシエンド気味にして次の「ラララファー」の全奏につないでいます。この辺りは気心知れた仲間との感興なのかな。

 時々古楽奏法を取り入れた響きがする(流行を取り入れたのか)ものの、全体としては極めてオーソドックスな大オーケストラによるベートヴェン演奏と言ってよういでしょう。古楽演奏の流行により、軽くて見晴らしのいい響き(どの楽器も聞える)と刺激的な解釈(時にアイデア倒れ)の演奏が多い中、これだけのオーソドックスな演奏を堂々と張れることこそ、小澤さんのキャリアの賜物だと思います。



 かつてカラヤン、ミュンシュ、バーンスタインから学んだ日本人指揮者が彼らの響きを体内に消化しつつ、卓越した指揮の技術と数多い演奏経験、挫折と栄光の狭間で繰り返される人生経験、様々な人(演奏家だけでなく)との出会いを通じて演奏家として人間として成長し、このような厳しくも輝かしい響きと伸びやかな歌でストレートに聴く者の胸を打つベートーヴェン像を作り出したことに改めて感動を覚えずにはいられません。
 まさに小澤さんでしか作りえないベートヴェンだと思いました。


【送料無料選択可!】ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」 / 小澤征爾
気迫のこもった「運命」をお聞きください。





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最終更新日  2008年01月12日 02時32分51秒
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