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2025年04月14日
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カテゴリ: 山岳
名久井岳(なくいだけ)



●概要

 青森県の南部地域において霊峰と呼ばれる山岳の1つで、南部町と三戸町の境界に屹立しています。南部小富士とも呼ばれるほど形の整った山で、特に八戸から南部町に向かう国道104号~国道4号から見た姿は何とも神々しく、四季折々様々な様相を見せてくれます。
 複数の峰からなり、主だったものは主峰の名久井岳(615m)、月山(542m)、前岳(474m)の3つです。三戸側から見ると、月山の手前にもう1つ小峰があり、俗に薬師岳と呼ばれ、頂点には薬師如来を祀る小祠が建てられています。

 名久井岳の頂上からは、南北八甲田の山々・十和田三山・階上岳・久慈平岳など、糠部地域の名山達を見渡せる他、天気がいいと岩手山まで眺望が利きます。遥か遠くまで広がる雄大な太平洋の姿も楽しめました。


●各峰に祀られる神格

1. 名久井岳
  • 名久井岳大権現・名久井岳天神?


 名久井岳頂上に権現頭と石祠が置かれており、各々名久井岳大権現・名久井岳天神と刻まれていました。泉山月山神社の社殿に懸けられた地図には、名久井岳ではなく天神岳と載っており、古くはそのように呼ばれていたんではないでしょうか。

2. 月山
  • 月読命
山頂の祠(泉山月山神社 奥之院)


御神体


 月山頂上には泉山月山神社の奥之院が置かれています。祠の中には石の権現頭や狩衣姿の木像、地蔵尊風の石像などが収めてあり、名前からしても仏教色が強めです。麓の泉山月山神社の扁額も”月山神社”ではなく、”月山社”と刻まれていることから、もとは修験の御堂で月山権現を祀っていたんではないかと思っています(推測ですが・・・)。神仏分離によって月読命を祀る社になったんでしょうか。

3. 前岳
  • 不明
 前岳には登山道が整備されておらず、薮をこいで進まなくてはいけません。YAMAPにて、他の方の登頂報告を見てみましたが、現在は祠などはないようです。山岳と言うと三山形式で祀るケースが多いと思うので、昔は前岳にも何かしら祀られていた可能性があります。ただ、現在そうした痕跡は見られません。


●登山ルート

1. 名久井岳登山口
 長谷観音堂の脇辺りにあります。少し進んだ熊野権現の石祠の所で、月山経由の縦走コースと天狗杉・木落しコースとに分岐します。
  • 天狗杉・木落しコース

2. 名久井岳かもしか遊歩道入口


3. 名久井岳かもしかライン登山口
 林道脇から登頂を目指すコースです。後に1. の天狗杉・木落しコースに合流します。ストリートビューで確認しましたが、一応駐車スペースはあるみたいです。

4. 名久井岳樹海ライン登山口
 名久井岳南麓を走る樹海ライン脇から、登頂を目指すコースです。後に2. と合流します。この登山道入り口にも駐車場があるみたいです。


●山中の祠や名所など

1. 名久井岳登山口脇の3社
  • 右:熊野権現、中:文殊菩薩、左:千手観音

  • 近くの河童石


2. コース分岐の石祠
  • 熊野権現


3. 月山経由縦走コースで見られる祠や名所
  • 荒澤不動明王堂と周辺の祠4社
鳥居


鳥居脇の祠:羽黒権現


羽黒権現:御神体


羽黒権現後ろの祠:祭神不明


龍の置物がある事から、水神を祀っている可能性がある。


鳥居をくぐると不動堂が見えます。


荒澤不動明王堂


内陣。子供の着物を着た地蔵尊が置かれていました。他には神鏡の前に3つの幣が祀ってあります。


荒澤不動明王の御影の写真も飾ってあります。火焔の表現が見事です。



深山神社・新山神社などは、もともと仏を祀っていた御堂が、明治の神仏分離によって神社化したものとされます。多くは鈴の代わりに鰐口が懸けられ、仏閣の名残りを感じられます。


直ぐ側に稲荷社:稲荷大神(詳細な祭神は不明)


内陣。石祠と白狐。

  • 崩れた御堂:地図から推測するに勢至菩薩

  • 薬師岳山頂手前:地図から推測するに大日如来

  • 参道脇の巨岩

  • 薬師岳山頂の祠:薬師如来

  • 月山~名久井岳間にある石祠:大山祇神


4. 天狗杉・木落しコースで見られる祠や名所
  • 天狗杉

  • 天狗杉手前の祠:祭神不明

  • 船石

  • 木落し

  • 名久井岳山頂付近の石祠:道開大明神(猿田彦神か?)



●関連する神社・寺院

1. 白華山 法光寺
 名久井岳の東麓に鎮座する古刹。平安時代の創建ともされ、南部地域にいくつもの末寺を持つ、当地域の仏教文化中心地とも言える寺院です。

本堂





白華山 法光寺

曹洞宗
開山:玉峰捐城和尚
開基:鎌倉五代執権 北条時頼公
創建:建長年中(1249~1256年)とされる
本尊:釈迦如来
※因みに廃寺となった前身の宗岳量山 観音寺は天台宗寺院だったとされる。

由緒(白華山法光寺縁起より引用)
 法光寺は、今から1130余年前(平安朝時代)に創立されたもので、それより400年程経て鎌倉執権最明寺時頼公がひそかに奥州行脚の折に名久井岳に登られ、夕日をあびて無量山観音寺と称する寺に一夜の宿を乞うたが山主は応じてくれなく、やむなく山に登って一草庵をたづねて宿を乞うたところ、庵主大いに喜んで迎え、出来合であったが饗応して一夜を過した。
 時頼公は、庵主の歓待に深く感謝し、翌朝目がさめ、あたりを見たが庵主が見当たらなかった。時頼公は携えて来た扇面に「目通り壱千石、右永代可令知行也、最明寺時頼(花押)名久井山主玉峰捐城和尚殿」とかき、別面には「水結ぶ名久井が岳を眺むれば海よりいでて山に入る月」の一首を残して、名残り惜しげに庵を立ち、山を下る途中で庵主に逢った。庵主の云うには「恥ずかしながら今朝飯糧がなかったので、お客人の目覚めぬうちに托鉢に出てこのように喜捨をうけて帰ったので再び庵に戻られるように」とねんごろに勧めた。
 時頼公は、このことに深く感激して、鎌倉に帰られた。最明寺時頼公と、庵主の逢われた処が「出逢坂」と称してあり、またこの庵を夢想軒と称して、今なお「古寺」としてその面影がある。

 時頼公が鎌倉に帰られるとすぐ、宮野玄蕃、板垣監物の雨人を普請奉行として、大工・左官・鍛冶・木梚に至る迄は遺して、観音寺は命令をもって廃止し、その跡に七堂伽藍を建立して、白華山法光寺と号して、開山に捐城和尚を請す。公自ら開基となられ、曹洞宗の道場を開設なされたものと伝えられている。


2. 長谷観音堂
 蓮台山 長谷寺の跡地に鎮座する観音堂で、隣接する宝珠山 恵光院によって管理されています。観音堂の直ぐ後ろには奥之院と言う白い御堂が置かれ、長谷寺の本尊であった十一面観音像が収められています。秘仏ですが、年一回8月20日だけは御開帳されるようです。平安時代末期に造像された県内最古級の仏像で、南部氏入部以前に造られ、貴重なことから県重宝に指定されています。
 長谷寺は三戸南部氏の盛岡遷座に付き従い、寺宝を残してこの地を後にしています。

境内入り口の鳥居


長谷観音堂


奥之院


蓮台山 長谷寺

真言宗
開基:明尊(後亀山天皇)
創建:建徳元年(1370年)
本尊:十一面観音

由緒(奥州南部観音霊場巡り 糠部三十三札所 滝尻善英著 より引用)
・・・。さらに、長慶天皇の弟の明尊(後の後亀山天皇)は、この地が大和国(奈良県)長谷寺の景観によく似ていたことから、建長元年(1370年)に「長谷寺」と称する寺院を開基したという。・・・。

文化財
 奥之院には県重宝の十一面観音木像以外にも、木造女神座像という仏像も収められており、こちらも県重宝。一説には、名久井岳の神格を表現したものとされ、十一面観音と本地垂迹の関係にあったものと思われます。
 他には県有形民俗文化財として、笈と巡礼札が収められています。巡礼札は、永正9(1512年)に観光上人が奥州南部糠部三十三観音霊場の巡礼の際奉納したもので、青森県最古の巡礼札とされています。

・青森県南部町 県指定文化財



 長谷観音堂の別当寺院。もともとは↑の蓮台山 長谷寺の塔頭で、三戸南部氏の盛岡遷座に際して、長谷寺の境内に留まり寺宝などの管理を任されたと言われています。現在でも山門には蓮台山の扁額が掲げられており、往時の姿を偲ばせます。

山門


本堂


本尊:十一面観音


斜めから


宝珠山 恵光院

真言宗豊山派 蓮台山長谷寺(後裔不明)末寺
本尊:十一面観音

由緒
 長谷寺の境内寺院(塔頭)として開創され、長谷寺が盛岡に移る際、当地に残り境内や寺宝の管理を任された。現在でも、長谷寺の名残りとも言える長谷観音堂の別当として、名久井岳西麓に鎮座している。
 本尊の十一面観音は、錫杖を持った独特の姿をしており、俗に言う長谷十一面観音の形態と同じである。


4. 泉山月山神社
 名久井岳西麓の集落、泉山地区の鎮守社です。青森県神社庁三八支部のサイトにも詳しい由緒は載っていませんが、祭神は月読命、祭日は7月25日(旧暦6月12日)です。例大祭の日に行われる”泉山七歳児初参り”は国重要無形民俗文化財に指定されています。

鳥居


拝殿


扁額と鰐口


斜めから



5. 長谷山神社
 長谷観音堂からまっすぐに里の方に下ると、大向の集落の中に見つけることができます。かつては宝珠山 恵光院のすぐ近くに鎮座していましたが、20世紀初頭に個人の管理となり、その後現在地に移転、現在に至ります。当初は四八末社の1つ 新山権現を祀っていましたが、現在は全ての末社が合祀されているようです。

鳥居


御神木


社殿




●名久井岳と関連する習俗

1. 長谷四十八末社
 長谷寺創建後、当時は深い山林の間を通り峰づたいに頂上まで建立され、修験者が修行祈願されたといわれる。
 その後近世になり、地元の人々が旧暦9月29日、大向・泉山・赤石の諸社を合わせ四十八末社として頂上まで参拝する風習が続いている。
​境内説明書き より引用

長谷観音堂手前に、山中の祠が書かれた地図がありますが、現在はこの地図の配置とは異なっています。ここに書かれていない祭神もあり、時代と共に変化している感が有ります。
また、近世になってから大向集落の長谷山神社に全ての末社が合祀されています。



2. 泉山七歳児初参り
 名久井岳の西側にある集落、泉山地区の伝統行事です。泉山月山神社の説明書きによると、以下の様に伝わっています。
国指定文化財  泉山七歳児初参り

種別:無形民俗文化財
指定:平成9年(1997年)12月15日

 「泉山七歳児初参り」は泉山地区に古くから伝わる登拝行事です。毎年7月25日(旧暦6月12日)に、数え年7歳の男児が名久井岳の第二峰「月山」に登り、すこやかな成長を祈願します。
 当日早朝、白装束に身を包んだ子どもたちは月山神社でおはらいを受け出発します。ただし、女人禁制のしきたりにより、登山道入口の泉山神社からは、子どもと男性だけで山頂の月山神社奥殿を目指します。片道約2.5kmの険しい山道を踏破し、行事を終えた子どもたちは一回りたくましく成長します。 
 全国でも極めて珍しい伝統行事として、昭和55年に県無形民俗文化財に指定されました。さらに平成9年には国重要無形民俗文化財に指定され、神社や参道の整備など、地元保存会によって大切に守り続けられています。
2019年 三戸町教育委員会



3. 長谷七観音詣り
 名久井岳を中心として南部町・三戸町・軽米町に置かれた7つの観音堂を周る巡礼です。一番札所を名久井岳麓の長谷観音堂とし、二番札所:野瀬観音堂、三番札所:観音林観音堂、四番札所:矢立観音堂、五番札所:外手洗観音堂、六番札所:法光寺観音堂という風に続き、七番札所:相内観音堂で締めとなります。
 それぞれの札所本尊は製作年代が異なっていますが、”慈覚大師円仁が桂の大木から7つの観音像を作り出し、↑の観音堂にそれぞれ収め祀った”という伝承があります。”滝尻善英著 奥州南部観音霊場巡り 糠部三十三札所”でも言及されている通り、これは霊場の格を上げるためのハク付けだと思われます。
 各札所については、↓のリンクからご覧になれます。

・長谷七観音詣り


以上です。





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最終更新日  2025年08月24日 14時02分24秒
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