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「火の森」(1970) Le Regine製作 アレッサンドロ・ヤコボニ監督 アントニオ・チェルヴィ脚本 アントニオ・チェルヴィ撮影 セルジオ・ドフィツィ音楽 アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノ 主題歌 レイモンド・ラヴロック出演 レイモンド・ラヴロック、ハイディ・ポリトフ シルヴィア・モンティ、イブリン・スチュアート、グイド・アルベルティ 本編82分 カラー ビスタサイズ 画像は1970年日本公開の「ガラスの部屋」のものです。当時、この映画の主題歌が大ヒットしました。主演のレイモンド・ラヴロックも女の子たちの人気を得て、フランスのルノー・ヴェルレーと人気を二分したくらいです。来日して、森永製菓 チョコフレークのテレビCMに出たりもしました。「ガラスの部屋」の主題歌も大ヒットしましたが、現在、この曲を聴くと、良い曲ですが「ヒロシです」を連想して笑ってしまうのが困ったところ。 で、そのレイモンド・ラヴロックが「ガラスの部屋」につづいて主演した「火の森」(1971年6月日本公開)をレンタルDVDで鑑賞しました。 主人公の青年デヴィッド(レイモンド・ラヴロック)がどこへ向かうともなく、スズキのバイクで気ままな旅をしている。夜道で、路肩に止まった高級車がいて、身なりの良い紳士に助けを求められ、パンクしたタイヤを交換してあげることになる。 ところがこの中年紳士、助けてもらいながらも「浮浪者みたいな長髪がだらしがない」とか「最近の若い者は平和だとか自由だとか甘いことばかり言っている」とか嫌味ばかり。タイヤ交換が終わり、去ってゆく車を見送って、「親切にしてやったのに、なんだい、あのオヤジ」と、さあ俺も行くか、とバイクを走らそうとすると前輪タイヤに大きな釘を突き刺してあるではないか。「くそ、あのオヤジめ」と頭にきたデヴィッドはタイヤを修理して後を追い、車にバイクを寄せて「どういうつもりなんだ!」と怒鳴ると、車が道路わきの木立に激突して、運転していた紳士が死んでしまいます。 こんな所に長居は無用と、その現場を走り去ったデヴィッドは、前方にパトカーの青いライトが見えたので、脇道にそれて、森の中へとバイクを走らせてゆく。 深い森の中に一軒家があり、疲れたので、その家の納屋で眠ることにする。 翌朝、目覚めると目の前に少女がいて「早く出てったほうがいいわよ」と云われて、バイクを出そうとすると、少女リブの姉、ビビアナとサマンタが現れて、「朝食を食べてらっしゃいよ」と誘われる。 こうして主人公デヴィッドは、すぐに立ち去るはずだったのに、美しい三姉妹の誘いにのって、その家に滞在してしまうことになります。 至れり尽くせりの歓待だが、この三姉妹には不思議な雰囲気があり、突然に表れたかと思うと、ふいに消えたりする。瞬間移動なのか? そもそもなんでこんな辺鄙な森の中に住んでいるのか? 森の中の一軒家に住む妖艶な三姉妹に誘惑された主人公がその家に滞在し、何が何だかわからない不思議な体験をし、その果てには惨劇が、という話です。 この1970年当時の世相は、若者たちの長髪とヒッピーが世界的に流行した時代であり、反体制、既存の制度や法律に束縛された生活を嫌って、自由奔放な生活を理想とした。 結婚制度はナンセンス、好きなときにだれとでもセックスする。定職につかず、定住せず、束縛されないで、自由気ままに生きるのが理想で、それを目的に生きてゆくのだと。 で、そういう反体制な思想が台頭するのをなんとしても防がないとならない、とする「闇の勢力?の結社」が存在して、主人公デヴィッドは、その罠にはまって抹殺されてしまうという映画です。 まあ、こんな罠をしかけて何人かを抹殺するなどしないでも、良識派に毛嫌いされた、そんなヒッピー文化など当時だけの流行で終わってしまったわけで、この映画を見ても、当時を知らなければ、よく理解できないかもしれない。 その意味では、この「火の森」は1970年という時代限定の作品ということか。 魔女?三姉妹の三女を演じるのはハイディ・ポリトフです。「エデ・ポリトフ」と表記されたのを見ますが、「Haydee」だから、ハイディとすべきでしょう。1968年公開の「若い狼たち」で注目された女優さんです。
2020年09月01日
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「タランチュラ」(1971)イタリア映画 La tarantola dal ventre nero監督 パオロ・カヴァラ製作 マルチェロ・ダノン脚本 ルシール・ラークス撮影 マルチェロ・ガッティ音楽 エンニオ・モリコーネ出演 ジャンカルロ・ジャンニーニ、バーバラ・ブーシェ ステファニア・サンドレッリ、クロディーヌ・オージェ シルヴァーノ・トランキニ、バーバラ・バック 本編94分 カラー DVDはスタンダードサイズ 日本公開は1972年9月。金沢では香林坊にあった金沢プラザ劇場での上映です。公開時に見て以来で、今一度見たいと思っていた作品。レンタルDVDでの鑑賞ですが、内容を憶えていなかったので、こんな映画だったっけ?といった感じ。 金髪美女マリア(バーバラ・ブーシェ)が首を治療用の針で刺されて麻痺したところを鋭利なナイフで腹を裂かれて殺されるという残酷な事件が起こる。 捜査にあたったテリーニ警視(ジャンカルロ・ジャンニーニ)は実業家である夫のパオロ(シルヴァーノ・トランキニ)を疑う。妻の浮気のために夫婦関係が破綻していたパオロは潔白を主張するが信じてもらえず、真犯人をさがすと言い残して身を隠します。妻の浮気相手の男(写真家)を探偵を雇ってさがし出したパオロが追跡中に高層ビルの屋上から足を滑らせて転落死。浮気相手の写真家もテリーニ警視の眼前で車にはねられて殺されてしまう。 パオロの妻マリアが殺されたのを発端に、ブティックの女主人、パオロ、写真家が次々と死んだことで、捜査に自信を失ったテリーニ警視は妻アンナ(ステファニア・サンドレッリ)の愛情にやすらぎを覚えます。 高級エステサロンの客の有閑マダムたちの浮気を写真に撮っての脅迫と、そのエステサロンを隠れ蓑にした犯人による連続殺人事件。 高級エステの関係者の女性が殺されるサスペンス映画ですが、約半世紀ぶりに鑑賞して、なんか拍子抜けしました。もっと面白かったような記憶があったので。 ただ出演している女優さんたちが豪華です。冒頭で殺される黄色いネグリジェ姿のバーバラ・ブーシェさんがエロチックだし、警視の奥さん役のステファニア・サンドレッリさんもとても良い。 インポ(性的不能)の男が女に嘲笑されたことで女性全体を憎み、連続殺人をおかすという、この手の映画ではよくある話です。結局のところ、ストーリーなどどうでもよく、1970年頃のきれいなヨーロッパの映画女優さんを見るだけの映画といったところか? 音楽は大御所のエンニオ・モリコーネです。当時、サントラ盤レコードを買って何度も聴いていました。
2020年08月31日
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「課外教授」(1971) PRETTY MAIDS ALL IN A ROW監督 ロジェ・ヴァディム 製作 ジーン・ロッデンベリー 原作 フランシス・ポリーニ 脚本 ジーン・ロッデンベリー 撮影 チャールズ・ロッシャー・Jr 音楽 ラロ・シフリン出演 ロック・ハドソン、アンジー・ディキンソン ジョン・デヴィッド・カーソン、テリー・サヴァラス エイミー・エックルズ、キーナン・ウィン、ロディ・マクドウォール 本編92分 総天然色 ビスタサイズ 今月はシネフィルWOWOW(シネフィル・イマジカ→イマジカBS→シネフィルWOWOWに改称された)で、珍しい作品の「課外教授」と「サンタマリア特命隊」の2本が放送されます。「課外教授」は1971年アメリカ映画で、劇場公開時(金沢ロキシー劇場 同時上映「黒いジャガー アフリカ作戦」)に見て以来、これまで見る機会のなかった作品です。 アメリカ西海岸の、ロサンゼルスあたりか?のオーシャンフロント高校で女生徒が殺される事件が起きる。主人公のポンス少年(ジョン・デヴィッド・カーソン)は周囲が女生徒だらけで、さらに美人女教師まで加わった教室に居たたまれずにトイレに駆け込んだ、その男子トイレで女生徒が殺されているのを発見する。 捜査にあたった州警察のサーチャー警部(テリー・サヴァラス)はフットボール部コーチのタイガー(ロック・ハドソン)が怪しいと目を付ける。タイガーは生徒にも父兄にも人気があるヒーロー的存在だった。 ポンス君の周囲の女子はみんなミニスカのお尻フリフリで、そのお色気に圧倒される高校生活を送っているが、彼は性的コンプレックスを抱いていた。その悩みをタイガーに打ち明けると親身に相談に乗ってくれて、タイガーは教師のスミス先生(アンジー・ディキンソン)にポンスを助けてほしいと依頼する。 スミス先生はポンス君に「勉強をみてあげる」といって自宅に招待する。年上の女性から優しくリードされたポンスは自信を持てるようになり、彼の悩みは解決する。 その一方ではタイガーは次々と女生徒との関係をもち、さらに女生徒が殺される連続殺人事件が続いてゆく。 アメリカの高校を舞台にした、女生徒連続殺人事件を描いた学園ミステリ物というわけでもなく、少年期の性の悩みの解決を描いた青春(性春?)物でもなく、どっちつかずの中途半端な作品です。 イタリア映画の「課外授業」(1975年キャロル・ベイカー主演)とまぎらわしい邦題です。 けっして他人様におススメできる映画ではないけれど、当時のスター共演がこんな小品でおこなわれているという点で珍しいのではないだろうか? ロック・ハドソンは、かつて大根俳優とかいわれたらしいが、ジョン・ウェインと共演した「大いなる男たち」(69)あたりから見直されました。「要塞」(70)「暁の出撃」(70)での存在感ある演技は評価されてもいいだろうし、テレビの「署長マクミラン」(1971年にNHK総合で毎週土曜8時に放送)も記憶に新しい(新しくないって)ところ。 この「課外教授」でポンス少年をやさしくリードする、まいっちんぐマチコ先生みたいなアンジー・ディキンソンさんは西部劇「リオ・ブラボー」と「殺しのドレス」が代表作かと思うけれど、テレビの「女刑事ペパー」も記憶に新しい(これも新しくないって)ところ。 事件捜査にあたる警部役のテリー・サヴァラスさんも、この1970年前後は最も活躍した時期といえるでしょう。「女王陛下の007」「マッケンナの黄金」(69)「狼の挽歌」「戦略大作戦」(70)。そしてテレビの「刑事コジャック」(73~)でお茶の間でも知られた存在に。
2018年10月11日
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「パリは霧にぬれて」(1971) LA MAISON SOUS LES ARBRES監督 ルネ・クレマン製作 ロベール・ドルフマン原作 アーサー・カヴァノー脚本 シドニー・バックマン、エレノア・ベリー脚色 ルネ・クレマン、ダニエル・ブーランジェ撮影 アンドレア・ヴァンタン音楽 ジルベール・ベコー出演 フェイ・ダナウェイ、フランク・ランジェラ バーバラ・パーキンス、モーリス・ロネ、カレン・ブランゲルノン 本編97分 総天然色 ビスタサイズ ひさしぶりにDVDソフトを買った。 5月25日に発売された「雨の訪問者」「夜の訪問者」「パリは霧にぬれて」で、各927円。3枚で2781円。 チャールズ・ブロンソンが最も魅力的だった時期のフランス映画「雨の訪問者」と「夜の訪問者」は既発売のものを持っていますが、今回のソフトは「雨の訪問者」が2層、「夜の訪問者」はこれまで英語版しかなかったのが、フランス語音声(日本語吹替は入っていない)になっている。 そして「パリは霧にぬれて」は、これまで見る機会がなかった作品で、公開時(1971年12月)に北国シネラマ会館だったか隣の北国第一劇場だったか記憶が定かではないけれども、劇場で見ていらいずっともう一度見たいと思っていた映画です。 パリのアパートに住むアメリカ人夫婦フィリップ(フランク・ランジェラ)とジル(フェイ・ダナウェイ)にはキャシー8歳とパトリック4歳の二人の子供がいる。 ジルは精神が不安定で、数学者の夫フィリップとは愛し合っているが、夫婦関係はぎくしゃくとしている。ジルは階下に住むアメリカ人女性シンシア(バーバラ・パーキンス)と親しくなるが、彼女からたびたび記憶の間違いや物忘れを指摘される。 ある日、「組織」がフィリップに接触してくる。数学者のフィリップはアメリカにいた時期、産業スパイに協力させられていた。組織から逃げてパリへやってきたはずだったが、その組織がふたたび協力を強要してくる。彼はきっぱりと断るが、組織の脅迫は彼らの子供にのびて、二人の子供が誘拐されてしまう。 ジルは、子供たちの失踪は自分の精神不安定が原因だと思い、自分を責める。警察は彼女が子供を道連れに自殺をはかろうとして自分だけが死ねなかったと疑う。ますます精神がおかしくなってくるジル。 パリに移った夫婦に組織の魔手が伸びて、幼い子供が失踪する話で、産業スパイ組織の暗躍と、自分の精神が異常なのではないかと悩み続けるヒロインを描いたサスペンス映画です。ヒロインの不安感と絶望感、上の娘がときおり見せる寂しげな、悲しげな表情が印象に残ります。 映画が始まって45分あたりでようやく子供が失踪する事件が起きる。それまでは少々たいくつな展開だったのが、そのあとはラストまで一気に進みます。肝心のサスペンス部分がもたついたりして、上質なサスペンス映画とはいえないかもしれないけれども、そのいかにもフランス映画らしい雰囲気はとても魅力的です。 オープニングの、フェイ・ダナウェイが下の男の子(4歳)をつれてセーヌ川をさかのぼる貨物運搬の艀(はしけ)に乗せてもらう。セーヌ川から運河に入って上流へとさかのぼっていく、霧にけむる川沿いの風景と、主人公が心にかかえる不安が感じられ、その描写がすばらしい。背景に流れる甘美で流麗なテーマ曲のなんと効果的なことか(このサウンドトラック盤レコードを持っていた)。 フェイ・ダナウェイさんはアメリカ映画のスター女優で、当時は「俺たちに明日はない」「小さな巨人」「華麗なる賭け」などがあります。けっして美人女優とはいえないが、この「パリは霧にぬれて」の、はかなげな彼女は、その出演作のなかでは最高なのではないか。女優を美しく撮ってくれる監督はいいなあ、と感じる一作です。 バーバラ・パーキンスという女優もなつかしい。 運河を上流に向かう艀。川下の水門を閉めて水位をあげ、川上の水門を開けて進む。こういう風景が映画で見られるのも珍しいです。
2018年06月04日
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「ヒッチハイク」(1976) HITCH-HIKE監督 パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ製作 マリオ・モンタナリ、ブルーノ・タルチェット原作 ピーター・ケイン原案 アルド・クルード脚本 オッタヴィオ・ジェンマ、アルド・クルード パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ撮影 フランコ・ディ・ジャコモ ジュゼッペ・ルッツォリーニ音楽 エンニオ・モリコーネ出演 フランコ・ネロ、コリンヌ・クレリー デヴィッド・ヘス、ジョン・スタイナー、ジョシュア・シンクレア ペドロ・サンチェス 本編109分 カラー ビスタサイズ シネフィルWOWOWで放送された映画「ヒッチハイク」を録画して鑑賞しました。 1976年のイタリア映画で、日本公開は1978年11月。 キャンピングカーでアメリカ旅行中のイタリア人夫婦が、親切心でひとりの男を乗せたことで暴力にみまわれるサスペンス映画。 イタリアの記者ウォルター(フランコ・ネロ)は、妻イブ(コリンヌ・クレリー)とアメリカを旅していた。ネバタからロスへ戻る途中、ヒッチハイクの若い男アダムを乗せる。ところが彼は200万ドルを盗んで逃走中の強盗殺人犯だった。本性をあらわしたアダムは、途中で出会った白バイ警官を射殺し、ウォルターの手足を縛って、その眼前でイブを暴行する。 善良な夫婦が事件にまきこまれて、という話ではなくて、この夫婦の関係は愛情のない冷め切ったものです。夫は酒浸りで、車の運転は妻にまかせっきり。しかもその妻に暴言を吐いて侮辱する。このクソ男が主人公では、彼が強盗殺人犯にどうされようが観客は同情も心配もしないだろう。 妻は社長令嬢だったらしく、そんな女性を嫁にしたが、他人からは金目当ての結婚と思われて、義父の社長からも馬鹿にされて冷たくされているのだろう(映画の中での説明はない)、その劣等感から鬱屈しているのか?、仕事もせずに威張った態度で妻に暴言をはいているか、飲んだくれているしか能のない、口だけのクソ男です。 そんなクソ男の旦那が最後に見せた行動は・・・・。 すべてのシーンがロケーションで、B級映画(低予算の意味)の典型的作品。 トラックに執拗に追われる、スピルバーグ監督の「激突!」(71)を思わせるシーンがあるけれど、あのようなオールロケーション映画を真似したかったのかもしれない。 奥さん役のコリンヌ・クレリーさんは、「O嬢の物語」(75)と「007ムーンレイカー」(79)で知られる女優ですが、本作でもなかなかエロティックで美しい。画質がとてもきれいな放送なので、その美しさがとくに際立っているようです。 親切心で車に乗せた男は強盗殺人犯のイカレた奴だったが、それ以上に被害者側の夫がクソ野郎なので、映画を見ている側は、これでは感情移入のしようもない。この映画はいったい何を云いたいのか? すべての人間は悪心を持つ存在だということか。正直と善人をよそおっても、それは偽善にすぎず、その心中には悪心が根付いているということか。 結末も後味がわるいし、こんな映画をお金を出して見る価値があるだろうか。こんなきれいなHD放送があるのに、高い金をだしてソフトを買うなど愚の骨頂だ。 1978年の劇場公開は映画誌に紹介記事が載っていたのを知っているけれど、今まで未見だった作品です。
2018年03月16日
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フランス映画「さらば友よ」(68)はCS放送などでたまに放送されますが、英語音声ばかりです。 現在発売されているDVDソフトはフランス語ですが、ブルーレイソフトは英語のようで、HD画質のものはなぜか英語音声版しかないようです。 冒頭の場面で、イザベル・モロー(オルガ・ジョルジュ・ピコ)にアラン・ドロンが「モーツァルトって人を知らない?あなたと同じ軍医の」と声をかけられるのですが、これが英語だとなにか奇妙な感じがする。アラン・ドロンやチャールズ・ブロンソンは英語でもいいが、女性はやはりフランス語の方が雰囲気があってしっくり来ます。「罪深い女たちと素晴らしい男たち」を描いた「さらば友よ」。 自分たちの悪だくみに男をだまして利用する2人の女をオルガ・ジョルジュ・ピコとブリジット・フォッセーが扮しています。 ブリジット・フォッセーは「禁じられた遊び」(52)の子役で有名ですが、あの映画は女性が生まれながらに持っている男を操る魔性を描いた作品であり、反戦映画、戦争で犠牲になる子供が可哀相な、とか決してそのような甘っちょろいテーマではないのではないか?、と私は思っています。あのポ-レットという幼い少女が孤児となって田舎のミシェルという男の子の家に養われる。そこで墓地から十字架を持ってきたり、教会の十字架を欲しがって男の子にあれが欲しいのとねだる。幼い時から男に甘えれば願いをかなえてくれることを知っている、というしたたかさを持っている。男の子の家を出て孤児院に送られても、その後、自分の可愛らしさを使ってしたたかに生きていくだろう。 その少女ポーレットとは関係がない「さらば友よ」ですが、あの少女が成長して大人になった姿を、この映画のブリジット・フォッセー演じるドミニク・アウステルリッツ(ワーテルロー)に見てしまうのです。 オルガ・ジョルジュ・ピコは英仏合作映画「ジャッカルの日」(73)でもお顔を拝見しましたが、アメリカ映画の女優にはない、ヨーロッパ映画特有の、言葉では表現できないけれど、魅力があります。そしてブリジット・フォッセーさんも、あの「禁じられた遊び」の子役がこんなに美しい女性になった。 この「さらば友よ」はアラン・ドロンがチャールズ・ブロンソンに食われてしまったとかいわれるけれど、そんなことはない。確かにブロンソンの個性は最高に光っているけれど、アラン・ドロンの素晴らしさもある。女性に、たとえ関係を持った相手だとしてもけっして気を許さない冷たさ。それに対してブロンソンの方は女性になんて優しいんだろう。人形愛好癖のある変態ジジイから金をまきあげる相棒となった娼婦カトリーヌ(マリアンナ・ファルク)と愛人の看護婦に対する優しさ。私がブロンソンさんの大ファンである所以です。
2017年02月02日
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「さらば友よ」(1968)ADIEU L'AMI 英題 FAREWELL, FRIEND監督 ジャン・エルマン製作 セルジュ・シルベルマン原作 セバスチャン・ジャプリゾ脚本 セバスチャン・ジャプリゾ ジャン・エルマン撮影 ジャン=ジャック・タルベ音楽 フランソワ・ド・ルーベ出演 アラン・ドロン、チャールズ・ブロンソン オルガ・ジョルジュ・ピコ、ブリジット・フォッセー ベルナール・フレッソン 本編115分 総天然色 ヨーロピアン・ビスタ アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンが共演したフランス映画、「レッド・サン」(71)もそうですが、「男の約束」がテーマです。「レッド・サン」で三船敏郎の黒田重兵衛がアラン・ドロンのゴーシュを背後から斬ろうとします。これを卑怯でサムライらしくないと批難する意見をよく見かけますが、それは間違った見方です。 この場面で三船さんは一瞬のためらいを見せ、そのために気づいたゴーシュに撃たれてしまう。この三船さんがせっかくのチャンスだったのに斬るのをためらったのはリンク(チャールズ・ブロンソン)との約束、「隠した金のありかを聞き出す前にけっして殺さない」と約束したのを思い出したからです。この重要な点を見逃したら、この映画を見たことにはならないだろう。 そして同じくアラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンが共演した「さらば友よ」(68)も「男の約束」を大きなテーマにしています。 マルセイユの港にアルジェリア戦争から大勢の兵隊たちが帰還して来る。その中に軍医中尉ディノ・バラン(アラン・ドロン)とアメリカ人傭兵のフランツ・プロップ(チャールズ・ブロンソン)の姿がある。 バランはイザベル・モローという女(オルガ・ジョルジュ・ピコ)に「モーツァルトって人を知らない?あなたと同じ軍医の」と声をかけられ、「そんな男は知らない」と答える。 バランはそのモローという女に横領した債券を会社の金庫に戻したいので、彼女が勤める広告会社の地下金庫を開けてほしいと頼まれます。クリスマス休暇の間に地下室へ潜入し、定期的に見まわりに来る警備員に見つからないように金庫室の金庫を開け、中に債券を戻すのだと。金庫に入っている現金には決して手を付けてはならないと。社員の定期健康診断をおこなう医者として広告会社に入り込んだバラン。そこへまったく関係の無いフランツ・ブロップが金の匂いを嗅ぎつけバランにまとわりついて来た。 金庫に2億フランの現金があると知っていがみ合い反発し合う二人だったが、苦心の末に開いた金庫はからっぽで、二人は金庫室に閉じ込められてしまう。 夜を徹して金庫室からやっと脱出できたが、彼らの目の前には警備員の射殺体が転がっていた。 ビルから脱出した朝、ドロンとブロンソンがカフェで云う。「俺たちは赤の他人で、もう二度と会わない。お前は俺を知らない。約束をしろ」とドロン。ブロンソンは「イヤだ。オレの勝手だ」と答えるが、ドロンの鋭い眼差しにうなずいて「さらば、友よ」と手のコップを上げる。 けっきょく、二人は警察に目を付けられて、フランツ・プロップは女を餌に金持ちの好色ジジイから金を巻き上げた別件で逮捕され、バランといっしょに地下金庫にいたことを白状しろと尋問されます。 共謀となると罪が重くなる。二人はお互いにこんな奴は知らない、会ったことも見たこともない、知らんねと、そらっとぼける。 ラストの名シーン。連行されるブロンソンのタバコに黙ってドロンが火を着けてやる。タバコの火をはさんで二人の熱い心が描かれ、この二人が嘘をついているのがお見通しの警部(ベルナール・フレッソン)は、その関係をうらやましいと思う。この警部がなかなか良い味を出しています。 そして軍医中尉ディノ・バランが女が持ちかけてきた胡散臭い話に手を貸したのも戦地でかわした男の約束だった。あなたと同じ軍医のモーツァルトって男を知らないかしら? 彼は知っている。しかも司令部が敵に襲われた時に誤って撃ち殺してしまった相手がそのモーツァルトで、彼らはいつも一緒につるんで遊んでいた悪友だった。バランは彼から金庫破りの話を聞いていた。その仕事を引き受けたのは贖罪の意味だったのだろう。ブロンソンのプロップが「甘いな。敵も味方も似たようなもので、間違って撃ってしまうのは戦地ではよくあることだ」と笑うが、バランはそれでは気が済まない。 ドロンに金庫破りの話を持ちかけるオルガ・ジョルジュ・ピコや、会社の医務室でアルバイトをする女子大生ブリジット・フォッセイ、ブロンソンが好色ジジイたちから金を巻き上げるときの相棒になる娼婦マリアンナ・ファルク、ブロンソンの愛人の看護婦など、この女性たちがたいへん魅力的です。 今では見られなくなったフランス映画の懐かしいサスペンス傑作です。日本公開は1968年10月。私が見たのは1972年11月のリバイバル上映(金沢ロキシー劇場)ですが、このような映画を劇場で見ることができた私たちの世代は幸せなのだろう。
2017年02月01日
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「扉の影に誰かいる」(1970)SOMEONE BEHIND THE DOOR監督 ニコラス・ジェスネール原作 ジャック・ロベール脚本 マルク・ベーム ニコラス・ジェスネール、ジャック・ロベール 撮影 ピエール・ロム音楽 ジョルジュ・ガルヴァランツ出演 チャールズ・ブロンソン、アンソニー・パーキンス ジル・アイアランド、アンリ・ガルサン 本編90分 総天然色 ヨーロピアンビスタ 日本公開は1971年8月。チャールズ・ブロンソンとアンソニー・パーキンス共演のフランス映画。40年くらい前にテレビで見ていらい、もう一度見たいと思っていた作品で、今回はDVDでの鑑賞です。 脳外科医ローレンス(アンソニー・パーキンス)が勤めている病院に、海岸をさまよっていた記憶障害の男(チャールズ・ブロンソン)が保護されて来る。 ローレンスはその男を自宅へ連れ帰って、治療だと男に思わせながら偽りの記憶を植え込んでいきます。 ローレンスの妻フランシス(ジル・アイアランド)が不貞をはたらいていて、ロンドンへ行くと云いながらフランスへ渡ってジャーナリストのポールという男(アンリ・ガルサン)とたびたび会っている。 妻の浮気に気づいて嫉妬にかられたローレンスは、記憶障害の男にフランシスを彼の妻と信じるように誘導し、浮気相手のポールを殺させようと計画。思惑通りにフランシスを自分の妻と信じ込んだ男はフランシスとポールに憎しみを抱くようになる。 ポールを自宅へおびき出したローレンスは男に応対させて自分は扉の影にかくれて見守る。計画は成功するかに見えたが。「さらば友よ」 1968年 フランス映画「戦うパンチョ・ビラ」1968年 アメリカ映画「ウエスタン」1968年 イタリア映画「雨の訪問者」 1970年 フランス映画「狼の挽歌」 1970年 イタリア映画「夜の訪問者」 1970年 フランス映画「扉の影に誰かいる」1970年 フランス映画「レッド・サン」1971年 フランス映画 まだまだフランスやイタリア映画での活躍が中心だった頃のチャールズ・ブロンソン主演作です。「サイコ」(60)でノーマン・ベイツ役を印象づけてしまったようなアンソニー・パーキンスとの共演が話題になったサスペンス作品。 ブロンソンさんは女性にやさしい男の役、とくに「さらば友よ」と「雨の訪問者」のフェミニストぶりは女性ファンの心をキュンとさせて人気度アップしたと思うのですが、今回の、この「扉の影に誰かいる」の役はいかがなものか? 記憶を失った男が操られて殺人をおかす。脳外科医が不倫している妻とその相手の男を殺そうと計画し、その操り人形にさせられる。しかも記憶障害の、その男の正体が精神病院を脱けだした女性暴行殺人魔だったとは。フェミニストで、頼りになる男の中の男ブロンソンさんにはまるで似合わない、困ったような戸惑い顔の自分を見失った男の役です。そんな作品に愛妻ジル・アイアランドといっしょに出るとはねぇ(しかも襲いかかる)。 アンソニー・パーキンスさんが演じる脳外科医。新聞に妻殺しの男の記事が出ていたのを読んで、自分のようなインテリはそんなことはしない、自分で殺すなど愚の骨頂であると。彼は他人を操って妻殺しをさせる計画を立てる。けっきょくはこの男もイカレているようです。精神の異常などは程度の差であり、誰もがある程度はそうなのか?と思わせるものがあります。 イングランドのケント州とおもわれる、静かな海辺の町。ほとんどが脳外科医ローレンスの自宅内で話が展開し、舞台劇のような趣です。 ドヴォルザークの「家路」をアレンジしたテーマ音楽が背景に流れて、淡々とした描写で話がすすむので、見る人によっては退屈だと感じるかもしれません。構成としては中だるみすることもなく流れが良く、ブロンソンさんのファンなら見ておくべきかと思うけれども、やはりブロンソンさんには似合わない作品です。
2017年01月01日
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「サムライ」(1967) LE SAMOURAI監督 ジャン・ピエール・メルヴィル製作 ジョルジュ・カサディ原作 アゴアン・マクレオ脚本 ジャン・ピエール・メルヴィル撮影 アンリ・ドカエ ジャン・シャルヴァン音楽 フランソワ・ド・ルーベ出演 アラン・ドロン、フランソワ・ペリエ カティ・ロジェ、ナタリー・ドロン、カトリーヌ・ジュールダン ミシェル・ボワロン、マルセル・ボズフィ 本編111分 総天然色 ビスタサイズ イマジカBSで放送された「サムライ」(最高画質版)を録画しての鑑賞です。 1967年フランス映画。日本公開は1968年3月。「RONIN」という1998年のアメリカ映画(日本公開1999年5月)をご存じのかたは多い?かと思いますが、ジョン・フランケンハイマー監督の硬派なアクション・サスペンス・スパイ映画です。この作品はアメリカ映画なのに、なぜかヨーロッパ映画の、それも、かつてのフランス映画のような雰囲気を感じて私の大好きな一作です。 私にとっての「かつてのフランス映画の」というのが、この「サムライ」を始めとするアラン・ドロン主演映画の数々なんだな、と改めて感じました。「さらば友よ」「ジェフ」「仁義」「シシリアン」「リスボン特急」「フリック・ストーリー」。 アラン・ドロン主演ではないけれども、「牝猫と現金」「オー!」「華麗なる大泥棒」「恐怖に襲われた街」「刑事キャレラ10+1の追撃」などなど。 そのような、現在ではまったく見られなくなったフランス映画の魅力が、アメリカ映画「RONIN」に濃厚に感じるわけで、だから惹かれるのではないかと。 一匹狼の殺し屋ジェフ・コステロ(アラン・ドロン)。夕暮れが迫るパリの薄暗いアパートの一室。飼っている小鳥が籠でピーピー鳴き、窓の外は雨が降っている。 ジェフはトレンチコートにソフト帽を被り、外へ出ると、通りに駐車してあるシトロエンを盗み、鍵束から合うキーを探し出して車を発進させる。 郊外のガレージでナンバープレートを換えてもらい、コールガールをしている愛人ジャーヌ(ナタリー・ドロン)を訪ね、彼女に午前2時までいたことにしてくれ、とアリバイを頼む。 場末のホテルの一室で顔見知りの男達が朝までポーカーをしているのを確認する。 ジェフが依頼された「仕事」は、ナイトクラブのオーナーであるマルテという男を殺すこと。 マルテの部屋に入り、無表情に拳銃を向けて射殺。 仕事は難なく済ませたが、部屋から出た廊下で出会ったピアニストのヴァレリー(カティ・ロジェ)に顔を見られてしまう。 すぐにその場を去ったジェフだが、何人かの客と、バーテンなどクラブの関係者がその姿を目撃する。 警察の一斉検挙がおこなわれて、ホテルの一室でポーカーをしている男達のなかに紛れ込んでいたジェフも署に連行される。 目撃者の面通しがおこなわれるが「彼だ」と証言したのはわずか一人で、あとは「彼ではない」「自信がない」と云う。 特に、ハッキリと顔をみたはずの女性ピアニスト ヴァレリーはなぜかきっぱりと否定する。 ジャーヌのアリバイ証言があり、目撃者ヴァレリーが「彼ではない」と明言するが、捜査主任の警部(フランソワ・ペリエ)は納得がいかず、釈放されたジェフを尾行するように部下に指示を出す。 ジャン・ピエール・メルヴィル監督のフレンチ・フィルムノワールの代表作です。 依頼を受けて仕事をおこなった主人公の殺し屋が警察に目を付けられ、依頼主が口封じのために彼を消そうとする。 邦題は「サムライ」で、原題も「サムライ」。「孤独」と「寡黙」はフランス人が抱いている日本の武士のイメージなのだろうか? 昔、「男は黙って」という三船さんのテレビCMがあったけれど、真の男、サムライは寡黙なものなのだろうか。無駄口を叩かず、女みたいにしゃべるな、と。 映画は台詞で説明するものではなく、映像のみで語るものだとは、よく云われることですが、この作品がまさにそれですね。 サムライというよりローニンといった感じの主人公ジェフ・コステロだけれど、彼の厳しく律した沈黙の生活。自分の動作・行動を厳しく律して、こだわりを持って生きている。 言葉は重要ではなく、雨に濡れたパリの街の描写と、アラン・ドロンの哀愁と沈黙の眼差し。 殺し屋の孤独と沈黙。そしてやがて「死」を迎える(向かってゆく)までの折り目正しい生活が描かれています。 現代のアトラクション化した映画しか知らない人が見れば、退屈な作品かもしれません。
2016年06月08日
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「キー・ラーゴ」(1948) KEY LARGO監督 ジョン・ヒューストン製作 ジェリー・ウォルド原作 マックスウェル・アンダーソン脚本 リチャード・ブルックス ジョン・ヒューストン撮影 カール・フロイント音楽 マックス・スタイナー出演 ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール クレア・トレヴァー、エドワード・G・ロビンソン ライオネル・バリモア、モンテ・ブルー 本編101分 モノクロ スタンダードサイズ「キー・ラーゴ」とはフロリダ半島の南端にある橋で数珠状につながれた珊瑚礁列島の、本土よりにある大きな島のことです。 その島の小さなホテルを訪ねるためにバスを降り立った主人公。 戦争が終わってすぐの頃で、復員将校フランク・マクラウド(ハンフリー・ボガート)は、戦死した部下の遺族に会いにやってきた。死んだ部下の父親(ライオネル・バリモア)と、その嫁で未亡人となったノーラ(ローレン・バコール)は細々と小さなホテルを経営している。しかし、そのホテルにはギャングの親分ロッコ(エドワード・G・ロビンソン)とその一味らが密輸の相手を待つために居座っていた。 やがて島にハリケーンが接近し、暴風に苛立つギャングたちは怪しんだ保安官助手を射殺するが、戦争の後遺症で虚無感に陥っているフランクはそれを見ても反応も示さず、ノーラはその無抵抗の腑甲斐なさを歯がゆく思う。 ハリケーンが去り、密輸の取引相手が到着。ロッコ一味がキューバから持ち込んだ多額の偽札の取引が終わり、ロッコはフランクを銃で脅してホテルの釣りボートを運転させて逃走をはかろうとする。 占拠型サスペンス映画です。家を占拠した悪漢どもに脅される主人公、クライマックスは主人公がボートを操縦し逃走の手助けをさせられる、という話です。 ハンフリー・ボガートとローレン・バコールが共演した作品で、ずっと見たいと思っていた一本。 ミュージカル映画、西部劇とギャング映画はハリウッド映画の歴史でもあり、そのギャング映画で大きな人気を得たハンフリー・ボガート。女優マリリン・モンローと男優ハンフリー・ボガートはアメリカ映画俳優の典型であり代表的大スター。二人とも早くに亡くなったことで伝説化されている。 映画ファンだったら絶対に知っておかないとならない俳優であるハンフリー・ボガート。彼の代表作は見ておくべきだろう、ということで、ずっと見たいと思っていたのが、この「キー・ラーゴ」と「三つ数えろ」で、今回、初めて見ることができたしだいです。 昨日の「三つ数えろ」は何がなにやらよくわからん映画でしたが、こちらは単純明快な話。 いい加減な面もあるけれど、ボガートとローレン・バコールの魅力で最後まで引っ張ってゆく。 戦争で死んだ息子の上官だった少佐が訪ねて来た。歓迎する老いた父親を演じるライオネル・バリモアがとても良い。未亡人となった嫁が彼といっしょになって、このあとは3人の穏やかな生活が始まるのだろう。
2015年12月30日
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「チェイサー」(1978) MORT D'UN POURRI監督 ジョルジュ・ロートネル製作 ノルベール・サーダ原作 ラフ・ヴァレ脚本 ジョルジュ・ロートネル ミシェル・オーディアール撮影 アンリ・ドカエ音楽 フィリップ・サルド出演 アラン・ドロン、モーリス・ロネ オルネラ・ムーティ、ステファーヌ・オードラン ミレーユ・ダルク、クラウス・キンスキー 本編124分 総天然色 ビスタサイズ 早朝5時のパリ。ベッドで寝ているグザヴィエ(アラン・ドロン)に女(ミレーユ・ダルク)が「私のこと愛してると言ってくれないの?」と問う。黙っていると、「私のこと嫌いになった? ねえ、愛してないの?」としつこい。「寝ろよ」と男はうるさそうに言う。 その時、ピンポ~ンとチャイムがなって誰かが来た。「誰だ?こんなに朝早く」 訪ねて来たのは親友のフィリップ(モーリス・ロネ)。彼は国会議員で、昨夜、先輩議員のセラノを鈍器で殴り殺したと言う。 なんだとおー?、 彼は汚職をしていて、それを知ったセラノ議員に責められて、カッとなって殺してしまったと言う。 そこで、昨夜はその時間に君といっしょに食事をしていたことにしてしてくれないか、とアリバイ作りを頼まれます。 親友フィリップのためにグザヴィエはアリバイの偽証を承諾し、本人の代理として犯行現場に向う。現場にはモロ警部(ミシェル・オーモン)とペルネ警部がいて、殺されたセラノ議員が持っていた書類がなくなっているという。その「セラノ文書」には彼が調べ上げた政治家たちの汚職の実態がしるされ、政財界をゆるがすような証拠となる事実が書かれている。 グザヴィエは帰ってフィリップを問い質すと、セラノを殺してその文書を奪ったことを認め、愛人のヴァレリー(オルネラ・ムーティ)のアパートにあずけてあると言う。 ヴァレリーのアパートを訪れたグザヴィエは何者かに見張られ尾行されていることに気づき、文書をヴァレリーに託して、翌日モンパルナス駅で落ち合うことにする。 さらにフィリップの事務所を訪れると、フィリップは無惨にも殺されていた。 フィリップの妻(ステファーヌ・オードラン)もマンションから転落死をよそおって殺され、友人にヴァレリーをかくまってもらったグザヴィエの身辺にも危険が迫る。 1978年のアラン・ドロン主演作品です。 昨日の「フリック・ストーリー」(75)同様、本作も公開時には見ていなくて、今回が初鑑賞。 あれだけ好きだったアラン・ドロン映画なのに、この頃には関心がなくなったのか、新作が来ても見に行かなくなっていました。 私だけではなく、この頃にはアラン・ドロン人気も下火になっていたようです。「チェイサー」という邦題は「追跡者」の意味でしょうか。 国会議員の汚職を追跡する。親友を殺した真犯人を追跡する。「セラノ文書」をめぐっての脅迫にも屈せず勇敢に悪に立ち向かってゆく主人公をアラン・ドロンが演じています。 しかし、アラン・ドロンの、かつてのようなアウトローではない主人公ですが、ファンにとってこれが望んでいる役柄かといえば微妙なところ。 自分的には「フリック・ストーリー」は良かったけれど、こちらはイマイチな感じがします。 オルネラ・ムーティさんが美しく、この懐かしい女優さんに出会えたのが収穫かと。「太陽がいっぱい」(1960)いらい、何度か共演しているアラン・ドロンとモーリス・ロネです。「太陽がいっぱい」と「太陽が知っている」(68)ではドロンに殺されるモーリス・ロネ。
2015年11月10日
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「フリック・ストーリー」(1975) FLIC STORY監督 ジャック・ドレー製作 アラン・ドロン レイモン・ダノン原作 ロジェ・ボルニッシュ脚本 アルフォンス・ブーダール ジャック・ドレー撮影 ジャン・ジャック・タルベス音楽 クロード・ボラン出演 アラン・ドロン、ジャン・ルイ・トランティニャン クロディーヌ・オージェ、マリオ・ダヴィッド、レナート・サルヴァトーリ ポール・クローシュ 本編115分 総天然色 ビスタサイズ アラン・ドロンとジャン・ルイ・トランティニャン共演の刑事映画です。 1975年11月末に日本公開されたようですが、記憶がないのは当時はアラン・ドロンに関心が薄くなっていたのかもしれません。 アラン・ドロンは大好きな俳優で、当時は新作が来ると欠かさずに見ていたのに、72年の「ショック療法」「高校教師」、「暗黒街のふたり」(73)「個人生活」(74)「ボルサリーノ2」(74)「アラン・ドロンのゾロ」(74)と不作がつづき、75年頃になると、もうどうでもいいと思うようになっていたのかも? そんなわけで洋画専門チャンネル イマジカBSでの放送を録画しての鑑賞です。 初めて見る作品であり、予備知識なしだったので、これは最後まで面白く見られました。 アラン・ドロン演じる国家警察の敏腕刑事ロジェ・ボルニッシュ。 1947年の3月頃、冷酷なギャングのエミール・ビュイッソン(ジャン・ルイ・トランティニャン)が脱獄したとのことで、追跡して逮捕せよとの命令が彼にくだる。 ビュイッソンは脱獄早々にかつて自分を密告した男を射殺。さらに仲間たちと共に高級レストランを襲って、客の身につけていた宝石や現金を強奪し、車で逃げるさいに追ってきたオートバイ警官をも射殺する凶悪さ。 ボルニッシュはたれ込み情報を得て、一味の潜伏している家を突き止め仲間を逮捕するが、主犯のビュイッソンを取り逃がしてしまう。 かつて「サムライ」(67)「太陽が知っている」(68)「ジェフ」(69)「シシリアン」(69)「仁義」(70)と犯罪者役を演じてきて、西部劇「レッド・サン」(71)でさえも悪役を演じたアラン・ドロン。 マルコヴィッチ殺人容疑という自分のスキャンダルを逆手にとって、悪のイメージで売り出した。私もその悪の魅力にまいったほうですが、いつまでも悪人役ではいけないと思ったのでしょうか? 1970年代に入ると「栗色のマッドレー」(70)「もういちど愛して」(71)あたりからか、先にあげた「ショック療法」以下の新境地ともいえる作品の数々。私には成功したとは思えないイメージチェンジ作品ばかりでした。 そんな成功したとは思えない作品が続くなかで、「リスボン特急」(72)では初めての刑事役を演じて、それが大変に良かったわけで、アラン・ドロンさんはこの路線だと思ったのかどうか?、私のかってな想像です。 犯罪者役、悪人役ではない、新たな自分の方向として、刑事役ならイケルと思ったのではないかと。 性格俳優の大スター ジャン・ルイ・トランティニャンを迎えての刑事映画(製作はアラン・ドロン自身)。 トタンティニャンが相手では演技ではかなわないはずで、ヘタをすれば食われてしまうところですが、けっしてそうはならずにドロンさんは凶悪犯を追う刑事の執念をみごとに演じきっています。 アメリカ映画「ゴッドファーザー」(72)の影響があるのか?、クラシカルなムードが濃厚で、静かに流れる音楽とジャン・ジャック・タルベスの撮影が素晴らしい。パリの裏町、石畳の道路と家並み、壁に貼られたポスター、レストランやバー、地下鉄。連れ込みホテル、郊外の林と雪景色。 手動でギコギコと汲み上げるガソリン・スタンドは、こんなのは初めて見ました。 郊外にある食堂兼ガソリンスタンドで、ドロンの刑事たち一行が変装してビュイッソン逮捕をしようとするクライマックス。ドロンの恋人役でクロディーヌ・オージェさんが出ていて、彼女がピアノを弾いてビュイッソンを油断させる緊迫感あるサスペンス。 近頃では見られなくなったフランス映画です。こういう落ち着いた画調の映画は良いもんだと改めて感じました。良い映画を見ました。
2015年11月09日
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「ガス燈」(1944) GASLIGHT監督 ジョージ・キューカー製作 アーサー・ホーンブロウ・Jr原作 パトリック・ハミルトン脚本 ジョン・ヴァン・ドルーテン ウォルター・ライシュ、ジョン・L・ボルダーストン撮影 ジョセフ・ルッテンバーグ音楽 ブロニスラウ・ケイパー出演 シャルル・ボワイエ、イングリッド・バーグマン ジョセフ・コットン、メイ・ウィッティ、アンジェラ・ランズベリー テリー・ムーア 本編114分 モノクロ スタンダードサイズ ロンドンのソーントン街のとある家で有名女性歌手が殺害される。事件は未解決のまま迷宮入りとなって10年。 殺された歌手の姪ポーラ(イングリッド・バーグマン)は傷心を忘れるためイタリアに声楽の勉強に留学し、そこで作曲家グレゴリー(シャルル・ボワイエ)と愛し合って結婚。 2人はグレゴリーの希望でロンドンへ帰国し、殺された叔母の家に住むことになる。 ポーラには忌まわしい記憶のある家だが、夫とともに新生活を始める。 しかし、ある時、ポーラが楽譜にはさまれていた叔母あての手紙を見つけていらい、夫の彼女への態度が豹変し、彼女の物忘れと盗癖が目立つようになったと指摘して責めるようになる。 夜になると部屋のガス燈が暗くなり、屋根裏の物置部屋で足音が聞こえ、それはポーラの幻覚と幻聴なのか、妄想なのか、ポーラは夫に言われるように自分の精神状態に自信が持てなくなってゆく。夫はことあるごとに彼女の頭がおかしいと言い、彼女を外出させまいとする。 ある日、夫とともに宝石の展示を見に出かけたロンドン塔ですれちがった男に会釈され、思わず挨拶を返すポーラ。しかし彼が誰なのか知らない彼女だが、その男はロンドン警視庁のキャメロン警部(ジョゼフ・コットン)で、死んだポーラの叔母の大ファンだった人物で、2人の様子に不審を覚えた彼は迷宮入りした叔母の事件の再調査を始める。 ジョゼフ・コットンさんが出ているということで、ずいぶん前に買った格安DVD「ガス燈」(宝島社の「誰が為に鐘は鳴る」と「ガス燈」の2枚入って500円)を鑑賞しました。買って以来ずっと見てなかったもので、古い映画なのに画質はクッキリとした良質。 スリラー映画の古典的傑作とされる作品です。 確かにイングリッド・バーグマンさんは熱演しているし、ジョゼフ・コットンさんも好男子ぶりでヒロインを助ける役で良い感じなのですが、シャルル・ボワイエの役のために気分が悪くなるイヤな作品でした。 シャルル・ボワイエが扮するヒロイン ポーラの夫グレゴリーという人物が、虫ずが走るような悪党です。 殺人犯でも強盗団のボスでも何でも、悪役を映画で見ていてもなんともないのですが、妻を精神的虐待(ドメスティックバイオレンス)するような男は許せないし、見ていて気分が悪くなる。 映画はファンタジーだと思っている私としては、このような現実的な汚らわしい男は生理的に受けつけない。台詞のしゃべり方、顔つきを見るだけでも嫌悪感があり、それだけ名優の名演なのかもしれないけれども、これは二度と見たくないなと思ってしまいます。 イングリッド・バーグマンさんは当時28才くらい、シャルル・ボワイエは47才くらい。ジョゼフ・コットンさんは38才くらい。 ラストで、ジョゼフ・コットンさんの刑事によって夫の悪賢いたくらみが暴かれるのですが、現代の映画だったら、ヒロインが男の顔面にパンチを食らわせるのではないか? 思いっきり殴りつけたくなるような男です。 妻を精神異常だと責め苛むが、本当の精神異常者は陰険な夫のほうだったという話です。 ジョゼフ・コットンさんは優しくて良い男でした。死んだ有名歌手の大ファンで、手袋の片方をもらったのが10年前の彼だったんですね。 メイドの役で「ジェシカおばさんの事件簿」のアンジェラ・ランズベリーさんが出ています。 ガス燈は街灯だけでなく、家庭内の照明にも使われていたのは知りませんでした。
2015年11月08日
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「鏡の国の戦争」(1968) THE LOOKING GLASS WAR監督 フランク・ピアソン 製作 ジョン・ボックス 原作 ジョン・ル・カレ 脚本 フランク・ピアソン 撮影 オースチン・センプスター 音楽 ウォーリー・ストット出演 クリストファー・ジョーンズ、ピア・デゲルマルク アンソニー・ホプキンス、ラルフ・リチャードソン ポール・ロジャース、スーザン・ジョージ 本編107分 総天然色 シネマスコープサイズ ジョン・ル・カレのスパイ小説の映画化です。高校生の時に「寒い国から帰ってきたスパイ」を読んだきりなので、この小説については何も知りません。 原題は「THE LOOKING GLASS WAR」ですが、ルッキング・グラスとミラーの違いはなにでしょうか?、どのように使い分けるのでしょうか? 私のかってな推測ですが、ルッキング・グラスとは「ガラスに限定した鏡」であり、それをのぞくことは恐ろしい深淵をのぞくこと。鏡の世界はすべて現実とは裏返しになった世界で、常識外れの世界ではないか。 このスパイ小説のタイトルが「鏡の国の戦争」であり、東西冷戦時代の東ベルリンを舞台としたものです。 英国情報部は東ベルリンにソ連製のミサイルが配備されたのではないかとの疑惑を持ちます。 それを確かめるためにスパイを送り込む必要があるのですが、そのスパイに選ばれた青年が主人公。 スパイの世界は非情で、必要がないと判断されたら見殺しにされる。一般常識では考えられない裏切りと生命の保証のない非常識な世界である、というのが「鏡の国」の意味だろうか? 英国情報部はポーランドから英国に不法入国したライザー(クリストファー・ジョーンズ)という青年を捕らえ、市民権を餌にして半強制的にスパイに仕立てる。簡単な訓練をほどこして、無線通信機とナイフを与えたのみで東ドイツの国境を破って潜入させます。 彼は有刺鉄線をなんとか無事に越えるのですが、森の中で歩哨に見つかって、その若い兵隊をナイフで刺殺してしまう。彼は東ドイツの警備隊に追われることになります。 彼はトラックに乗せてもらうのですが、兵隊殺害で追われていることを運転手に知られ、その運転手を殺します。トラックを奪った彼は、途中で出会った美しい少女(ピア・デゲルマルク)の協力を得るのですが、警備隊の検問にあい、逮捕されるはずが、警備隊は彼を捕らえないで釈放し、泳がせて目的を突き止めようとする。 泳がされた彼は、目的地に着き、ミサイルを目撃。無線機で情報を送るのを傍受されて警備隊に踏み込まれて射殺される。 英国情報部は最初から失敗を見越していて、知らぬ存ぜず、東ドイツ側のねつ造だと反論できるようにしている。 この事件が国際問題になることはなく、英国情報部のお偉方たちにとっては、ミサイルの存在などさほど関心がなく、スパイ合戦というただのゲームを楽しんだだけに過ぎない。 東西陣営のしてやったり、してやられたりのスパイ・ゲーム。映画は、そのスリルあるゲームの駒として利用された青年の悲劇を描いています。 日本公開は1970年5月。当時、この映画のことは映画誌「スクリーン」を読んで知っていたのですが、映画館へ見に行くことはなく、今回のDVD鑑賞が初です。 結局、正体がよくわからない美少女役のピア・デゲルマルクさん。スウェーデンの女優で、「スクリーン」の1970年の何月号だったか?表紙になったこともあり、グラビアに載ったこともあり、当時の話題になりましたが、その出演作を見たのは今が初めてです。
2015年10月16日
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「激突!」(1971) DUEL監督 スティーヴン・スピルバーグ製作 ジョージ・エクスタイン原作 リチャード・マシスン脚本 リチャード・マシスン撮影 ジャック・A・マータ美術 ロバート・S・スミス編集 フランク・モリス音楽 ビリー・ゴールデンバーグ出演 デニス・ウィーヴァー、エディ・ファイアストーン ルー・フリッゼル、ルシル・ベンソン、ジャクリーン・スコット アレクサンダー・ロックウッド 本編89分 総天然色 スタンダードサイズ この作品はテレビ映画として製作されたものです。 原作はリチャード・マシスンで、「PLAYBOY」誌に掲載された短編小説。そのテレビ映画用脚本があるのを知ったスピルバーグさんが監督をしたいと申し出たそうです。 プロデューサーに「ならば自作サンプルを持って会いに来るように」と言われ、その時に提出したのが自信作「刑事コロンボ 構想の死角」だったとか。 それを見たプロデューサーから「激突!」の脚本を送られてきて監督をさせてもらうことになったそうです。「激突!」原題は「DUEL」。アメリカでテレビ放送されたのは1971年11月。スティーヴン・スピルバーグさんは当時23才です。 田舎のハイウェイを商用で先を急いでいたサラリーマン(デニス・ウィーヴァー)が前をディーゼルの真っ黒な排気ガスを出しながらノロノロ運転するタンクローリーを追い越した。 するとそのタンクローリーから執拗な悪意ある嫌がらせを受け、命の危険にさらされ、追い詰められてゆくという単純な物語。 野放しにされたキチガイ運転手に目を付けられた主人公が殺されそうになる恐怖を描いていて、平凡な日常生活のなかで突如降って湧いた、誰にでも起こりうる恐怖映画です。 いつものように家を車で出た主人公。カーラジオでは国勢調査の相談をやっている。いま調査票を書いているところだが、世帯主をどう書けばいいのか?と。うちは女房が働いていて私が家事をしている。その場合は女房を世帯主にすればいいのでしょうか?。もし近所に知られたら恥ずかしい、と。相談員は他に知られることはありませんから大丈夫です、思ったとおりに書いてください、と言っている。 そんな話をラジオで聴きながら車は田舎のハイウェイを走り、前をノロノロ走る排気ガスが臭いタンクローリーを追い越したら、それがとんでもない災厄になってしまう。 劇場公開時以来、何十年ぶりかのDVDでの再鑑賞ですが、いままで見落としていたことがあって、それはたまたま起こった事件ではなく、このタンクローリーの運転手は常習的に獲物を見つけて事故に追い込んでいた殺人者だということです。 このイカレ運転手はタンクローリーの前部に何枚かの州が異なるナンバープレートを付けていて、それをこれまでの戦勝記念品として誇示している。事故車のプレートではなく、自分がその州で付けていたナンバープレートのようです。 本編89分。スピルバーグ監督が語るにはテレビ放送時は70数分の作品だったのを、劇場公開用として新しく撮ったシーン(踏切で止まっていると後ろから押されるシーンなど)を付け加えたそうです。 日本では1973年1月に劇場公開されました(金沢は数ヶ月後に北国第一劇場で)。 見ている間じゅう、圧迫感があるような感じで、ドキドキさせられてしまう映画です。 放送日までに余裕がなく、スピルバーグ監督はオールロケーションで13日間の日数で撮影を終えたそうで、低予算映画のお手本のような作品ですね。
2015年09月25日
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「劣等感」 自分が他人より劣っていると思う感情。反対語は優越感。「自尊心」 自らを尊び、その人格を重んじて、品位を傷つけまいとする気持ち。プライド。 「広辞林 第六版」三省堂 映画「わらの犬」(1971)を見ていると、登場人物たちの「劣等感」を感じます。 主人公はアメリカ人のインテリで、学者デビッド(ダスティン・ホフマン)と、若妻エミー(スーザン・ジョージ)。彼らが越してきた村はエミーの出身地で、彼女は6年ぶりに村に戻ったらしい。 デビッドは数学者か天文物理学者かよくわからないけれども、数学が得意で、たいへん頭が良いらしい。しかし彼の取り柄はそれだけで、根は小心者であり、腕力はおろか口論でも相手を言い負かせることができないようです。臆病だというのは自覚しているようで、それがデビッドの劣等感でもあり、各所で描写されています。 生活品を買い出しに村の中心部へ出かけても村人たちとは関わろうとせず、パブに入ってもタバコ(アメリカの)を買うだけで、村人の仲間に入ってビール一杯飲もうともしない。 妻のエミーはこの村の若者たちとは顔見知りであり、その中の一人チャーリー(デル・ヘンリー)とはかつて深い仲にあったようです。 デビッドと結婚したのは、おそらくは彼の知性に惹かれたのだろうか? 彼女は読み書きもやっとなくらいの学力しかないのか、それが夫に対しての劣等感になっている。 そして村人たちがアメリカから来たデビッドに劣等感を持っている。都会から来た者に対する劣等感と、自分たちが粗野で無教養なことの劣等感。村の若者たちにはその劣等感に加えて、村でも代表の美人だったろうエミーを嫁にした余所者に対する反発心と憎しみがある。デビッドに対する劣等感と嫉妬と憎しみと、そしていつかエミーをモノにしてやろうと狙っているようです。 そしてエミーは夫デビッドに満足していない。セーターの下にブラを着けないで外出して村の若者たちの視線を浴びているのは、夫を困らせようというのか、欲求不満なのだろうか。 デビッドは彼女に「君は幼稚だ」と言う。精神年齢は14歳くらいか、それとも8歳くらいか?僕にはそのほうが良いだとか、馬鹿なことを言う男です。 デビッドは妻を満足させていないことを悟っているのか、だから妻が幼稚だったら自分が偉くふるまえるとでも思っているのだろうか。二人はベッドに入ってもシーツに潜り込んで子供のようにじゃれ合う。この2人は何なんだ?ママゴト遊びの夫婦ごっこか。 エミーが猫がいなくなったといって捜していると、デビッドが「書斎にいたら殺してやる!」と言う。 自分に懐かないといって、猫にトマトやグレープフルーツを投げつけて虐待。あたりまえだ、こんな奴に猫が懐くものか。猫は人間を見る目を持っているから。 猫にトマトをぶつける、この場面だけで、このデビッドという主人公が嫌いになってしまいます。 映画「わらの犬」。デビッドとエミー、主人公の2人がこれだけイヤな奴らだというのは、映画では珍しいことです。主人公たちに感情移入しようがないので、クライマックスの暴力が爆発するシーンが始まるまで退屈ともいえる展開。 エミーが夫を誘い出されている間にチャーリーともう一人の若者に暴行されるのも、いわば挑発した結果ともいえる自業自得。彼女は夫の村人たちとの争いに被害者であろうとし、傍観者であろうとする。夫の戦いに協力しない妻、足手まといの妻です。ラストで、夫の危機を助けないとならないのにショットガンを撃つのをためらうのは、あくまで被害者、傍観者であろうとしていたからですね。 クライマックスの侵入者たちの襲撃に対する攻防戦は、それまでの小心、臆病から平和主義を装い、事なかれ主義を貫いてきた、それが通用しなくなった時であり、他人の暴力にあって自分の命が危険になったことで、やっと暴力で自分を守ろうとすることに目覚めた、その暴力で守るべく対象は妻や家庭ではなく、自分の自尊心だったんですね。 昨日載せた写真は私が持っている「わらの犬」のDVDソフトです。数年前にヤマダ電機さんで買ったもので、現在は廃盤。プレミアがついているようですが、けっして気分のいい映画ではありません。
2015年04月18日
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一昨日、1972年のキネマ旬報外国映画ベストテンを書きましたが、以下は「ロードショー」の同年読者投票ベスト10です。1位「ゴッドファーザー」2位「ロミオとジュリエット」3位「風と共に去りぬ」4位「屋根の上のバイオリン弾き」5位「時計じかけのオレンジ」6位「ダーティハリー」7位「死刑台のメロディ」8位「わらの犬」9位「フレンチ・コネクション」10位「さらば友よ」 この1972年3月21日に月刊映画誌「ロードショー」5月創刊号(集英社)が発売されました。 当時は「キネマ旬報」と「スクリーン」(近代映画社)を購読していて、さらにこの「ロードショー」も加わることに。創刊号の表紙はカトリーヌ・ドヌーヴさんでしたね。 このファン投票ベスト10作品ですが、投票にルールがなかったのか?、ムチャクチャな感じがする。普通ならベスト作品投票にはリバイバル上映は含まないのに、「ロミオとジュリエット」「風と共に去りぬ」「さらば友よ」が入っていて、そのために3作分の新作が選外になってしまいます。「時計じかけのオレンジ」と「わらの犬」、この2本の「暴力をテーマにした映画」が、評論家が選ぶならばともかく映画ファンが選ぶ作品としてふさわしいのだろうか?どう考えても読者から広く支持を得る人気作とは思えないのですが。「ゴッドファーザー」も「暴力」だとすれば、「ダーティハリー」も含めて、この1972年(1970年代前半?)は「暴力映画」がブームだったものと思われます。「わらの犬」(1971)STRAW DOGS製作 ダニエル・メルニック原作 ゴードン・M・ウィリアムズ脚本 サム・ペキンパー デヴィッド・Z・グッドマン撮影 ジョン・コキロン音楽 ジェリー・フィールディング出演 ダスティン・ホフマン、スーザン・ジョージ ピーター・ヴォーン、ピーター・アーン、T・P・マッケンナ デヴィッド・ワーナー、クロエ・フランクス、ジム・ノートン 本編117分 総天然色 ビスタサイズ(DVDはノンスクイーズ) アメリカ人の数学者だか天文学者だかよくわからないデビッド(ダスティン・ホフマン)が若妻エミー(スーザン・ジョージ)をつれて英国のコーンウォール地方の片田舎に越してくる。妻の故郷とのことで、静かな環境で天文学の本を書くのだと。 しかしその閉鎖的な村の人々はデビッドを快く思わない。 納屋の修理に村の若者たちを雇うのですが、平和主義というか事なかれ主義というのか争いを好まないデビッドは、若者たちが仕事を怠けても妻に色目を向けても気がつかないふりをする。 よそ者に対して閉鎖的な村で、住人たちから嫌がらせをうけるデビッドだが、事なかれ主義の彼は怒らず、そんな夫にエミーも不満を持つ。 若者たちがデビッドを鳥撃ちの狩猟に誘って、彼を森に置き去りにする。その隙に1人で家にいたエミーは若者たちに暴行されてしまいます。 察しがわるいデビッドはそんな妻の様子にも気づかない鈍感さ。 ある日、村の娘が行方不明になる事件が起きて、それに関係するとみられる精神薄弱者ヘンリー(デビッド・ワーナー)をデビッドがかくまったため、娘の乱暴者の親父が村の若者たちと家に押し掛けてくる。 エミーはヘンリーを引き渡そうというが、ディッドは彼らに渡せばリンチされるのが明かだからと頑なに拒否。 仲裁に入った町の有力者が男たちに射殺されたことで、事態は抜き差しならぬことに。 殺人を目撃されたこともあり、凶暴化した男たちはドアや窓を壊して侵入を図ります。「僕の家だ。絶対に奴らを入れない」「奴らを入れたら殺される」 これまで何をされても受け入れてきた事なかれ主義の男が断固とした抵抗を決意する。 孤軍奮闘するデビッド。1対5の攻防戦が繰り広げられることになります。 長くなるので、つづく。
2015年04月17日
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「シャレード」(1963)CHARADE監督 スタンリー・ドーネン製作 スタンリー・ドーネン原作 ピーター・ストーン、マルク・ベーム脚本 ピーター・ストーン撮影 チャールズ・ラング・Jr音楽 ヘンリー・マンシーニ出演 ケイリー・グラント、オードリー・ヘプバーン ウォルター・マッソー、ジェームズ・コバーン、ジョージ・ケネディ 本編113分 総天然色 ビスタサイズ DVD字幕翻訳:佐藤真紀 今回鑑賞したのは販売元パラマウントジャパンのDVD(デジタル・リマスター版)。同品のブルーレイソフトも発売中ですが、まだ持っていません。「躍る大紐育(ニューヨーク)」(49)や「雨に唄えば」(52)などミュージカル映画で知られるスタンリー・ドーネン監督のロマンチック・サスペンス・コメディの傑作です。 休暇のスキー場で夫との離婚を決意したレジーナ(オードリー・ヘップバーン)がパリへ戻ってくると、アパートメントはもぬけの殻。 驚くレジーナの前に現れたパリ司法警察のグランピエール警部が言うには、彼女の夫チャールズ・ランパートがパリ・ボルドー間の鉄道沿線で死体となって発見されたと。 署に同行したレジーナは警部から彼女の知らない夫の意外な姿を知らされます。 チャールズは殺される前に家財道具いっさいを競売にかけて25万ドルを得たが、その金がどこにも見当たらないこと。彼が5通のパスポートを持っていて、チャールズという名も偽名であること、その国籍もレジーナが思っていたスイスではないこと。レジーナは夫のことを何も知らなかった自分に愕然とします。 寂しい葬儀がおこなわれ、その場に怪しい3人の男が会葬に現れる。 さらにアメリカ大使館のバーソロミュー(ウォルター・マッソー)に呼び出されたレジーナは、死んだチャールズが第二次大戦末期に仲間3人と軍資金25万ドルを横領し隠匿していたことを教えられ、その隠された25万ドルをめぐっての争いが自分の周囲でおこっていることを知ります。 何がなにやら、さっぱりなレジーナの前にスキー場で知り合ったピ-ター・ジョシュアを名乗る男(ケイリー・グラント)が現れて意気投合し、仲良しになるのですが、彼のことも謎だらけで信じられなくなる。 「シャレード」予告編はこちらです。 日本初公開は1963年で、私が見たのは1973年12月のリバイバル上映(北国第一劇場)。 その前にテレビのゴールデン洋画劇場(テレビ初放送)で見ているけれどノーカット版を見たのはこの劇場でのリバイバル時です。 以来、何度も見た「シャレード」ですが、わからない点がひとつ。 ヒロインのレジーナの死んだ夫が家財道具いっさいを競売にかけて得た金が25万ドルだとパリの警部が言う。その金がどこにあるのか奥さんは知りませんか?と。 その25万ドルと、彼らが大戦中に軍資金を横領し隠匿した金25万ドル。カーソン・ダイルなる人物が彼らを次々に殺害し、復讐も含めて25万ドルを我が物にしようとしているのだけれども、家財道具を売り払った25万ドルはどういうこと? それはともかくとして、何度目かを見た「シャレード」ですが、 ヒロインのレジーナ・ランパート(オードリー・ヘップバーン)と恋を語るのはケイリー・グラント(ピ-ター・ジョシュア、以下何度も名が変わる)。 ケイリー・グラントは1904年生まれだから、この映画の時は59歳。 オードリー・ヘップバーンは1929年生まれで、34歳。 2人ともいい年の大人ですね。この時代の、古き良き?時代のハリウッド映画は、いま考えて見ると、いい年の大人たちの恋愛ばかりが描かれていたように思います。中にはジェームズ・ディーンなど若者映画もあるけれどそういうのは特別だったようで、ほとんどがいい年の大人たちの恋愛映画ばかりだったのではないか?と。 まるで、女性を相手に恋をする資格があるのは、経済的に自立した立派な大人であることが条件、そういう時代だったのか?と。恋をするにはお金も地位もある大人でなければならない、それがアメリカ映画だった? 女の子と恋をしたければ早く大人になりたまえ、と。
2014年12月15日
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かつてフジTV系で放送されていた「ゴールデン洋画劇場」の1972年1月から3月の放送作品です(1971年4月2日から放送開始され、この頃は金曜夜9時)。1月7日「遠い喇叭」(1963) 監督ラオール・ウォルシュ、出演トロイ・ドナヒュー1月14日「腰抜け二挺拳銃」(1948) 監督ノーマン・Z・マクロード 出演ボブ・ホープ、ジェーン・ラッセル1月21日「シャレード」(1963) 監督スタンリー・ドーネン、出演ケイリー・グラント、オードリー・ヘップバーン1月28日「裏切りの荒野」(1968) 監督ルイジ・バッツォーニ、出演フランコ・ネロ、ティナ・オーモン2月4日「太鼓の響き」(1954) 監督デルマー・デイヴィス、出演アラン・ラッド2月11日「あしやからの飛行」(1964) 監督マイケル・アンダーソン、出演ユル・ブリンナー、シャーリー・ナイト2月18日「地獄への道」(1939) 監督ヘンリー・キング、出演タイロン・パワー、ヘンリー・フォンダ2月25日「情無用のならず者」(1967) 監督:ヌンツィオ・マラソンマ、出演クレイグ・ヒル3月3日「エル・シド 前編」(1961) 監督アンソニー・マン、出演チャールトン・ヘストン、ソフィア・ローレン3月10日「エル・シド 後編」(1961) 監督アンソニー・マン、出演チャールトン・ヘストン3月17日「アパッチ砦」(1948) 監督ジョン・フォード、出演ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ3月24日「女王陛下の大作戦」(1967) 監督ミケーレ・ルーポ、出演リチャード・ハリソン3月31日「白い羽根」(1955) 監督ロバート・D・ウェッブ、出演ロバート・ワグナー ずいぶん古い作品が並んでいますが、放送当時の1971年ではそんなに古いわけではなく、ほとんどが8、9年前のものです。「女王陛下の大作戦」(67)は5年前の、「裏切りの荒野」(68)は4年前の作品でしかない。 ゴールデン洋画劇場といえば、やはり「シャレード」が印象深く、「ローマの休日」とともにオードリー・ヘップバーン主演で、同番組の定番でもあり、何度か再放送されました。 1963年の外国映画興行成績です。 (金額は配給収入)。 1位 「史上最大の作戦」 8億9586万円 2位 「アラビアのロレンス」 5億9527万 3位 「大脱走」 5億2722万 4位 「クレオパトラ」 4億2678万 5位 「北京の55日」 3億3933万 6位 「地下室のメロディー」 2億4681万 7位 「シャレード」 2億2650万 8位 「隊長ブーリバ」 2億2478万 9位 「鳥」 2億501万 10位 「チコと鮫」 2億187万円 この年はすごいビッグタイトルが並んでいて、「シャレード」はこの年の興行成績第7位。大ヒット作品です。 オードリー・ヘップバーン主演作としては「ローマの休日」とともに代表作にあたる映画です。 現在、映画「シャレード」(1963)は著作権が消滅したとされて、格安DVD(250~500円)が各種発売されていますが、正規メーカー品(ユニバーサル、パラマウント2社から発売)でもDVDなら1000円前後、ブルーレイも1500円くらいで買えるので、画質など品質の点からもどうせ買うなら正規品の方がいいでしょう。 長くなるので、つづきます。
2014年12月14日
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「ハリソン・フォード 逃亡者」(1993) THE FUGITIVE監督 アンドリュー・デイヴィス製作 アーノルド・コペルソン製作総指揮 キース・バリッシュ、ロイ・ハギンズ原案 デヴィッド・トゥーヒー脚本 ジェブ・スチュアート、デヴィッド・トゥーヒー撮影 マイケル・チャップマン音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード出演 ハリソン・フォード、トミー・リー・ジョーンズ ジュリアン・ムーア、ジェローン・クラッベ、ジョー・パントリアーノ アンドレアス・カツーラス、セーラ・ウォード 本編130分 総天然色 ビスタサイズ 現在60歳以上の人で、約50年前にテレビ放送された「逃亡者」を知らない人はいないでしょう(見たことがなくてもタイトルくらい知っているのでは?)。 もしタイトルも知らない、まったく聞いたことも見たこともないという年配の人がいるとすれば、その人はどんな少年時代をおくったのか、疑いを持ってしまいます。それほどに人気があったサスペンス・ドラマですね。 1964年5月から1967年9月まで毎週土曜夜8時に放送され、全120話。 最終話は前後編で放送され、高視聴率を記録したそうです。 主演デビッド・ジャンセン(声は睦五郎さん)。「リチャード・キンブル、職業医師。正しかるべく正義も時として盲うることがある。彼は身に覚えのない妻殺しの罪で死刑を宣告され、護送の途中、列車事故に遭ってからくも脱走した。孤独と絶望の逃亡生活が始まる。髪の色を変え重労働に耐えながら、犯行現場から走り去った片腕の男を捜し求める。彼は逃げる。執拗なジェラード警部の追跡をかわしながら、現在を今夜をそして明日を生きるために」 オープニングの矢島正明さんのナレーションは今でも忘れないです。 何年か前にNHKのBSでも何話か放送されて、「早く逃げないと警察が来る」という場面で、見ていたカミさんが「心臓にわるい」といって見るのをやめたほど、ドキドキハラハラさせられました。 その大人気だったTVドラマ「逃亡者」をリメイク映画化したのが1993年の「逃亡者」です。 日本公開は1993年9月。 医師リチャード・キンブルを演じるのはハリソン・フォード。 彼を追跡するジェラード連邦保安官を演じるのはトミー・リー・ジョーンズです。 テレビではインディアナ州スタッフォードの小児科医リチャード・キンブルでしたが、映画では現代のシカゴに舞台が変えられていて、ハリソン・フォードさんのキンブル先生は外科医という設定になっています。 追跡するジェラード警部も連邦保安官にかえられています。 無実の妻殺しで死刑の宣告を受け、護送の途中に脱走するという基本設定は同じですが、大きなちがいは追跡するジェラード連邦保安官に部下たちがいてチームを組んでいること。 テレビではバリー・モース演じるジェラード警部の人物像はあまり個性的に描かれず、執念を見せるものの、憎まれ役として登場していました。 映画のトミー・リー・ジョーンズさんの連邦保安官はキンブルを追跡する過程で、しだいにキンブルの無実を感じるようになってゆく。けっして憎まれ役ではなくて、主演のハリソン・フォードに匹敵するくらいの印象を残します。 逃亡者リチャード・キンブル。観客は彼に同情し、応援する。ハリソン・フォードさんはキンブル役をじょうずに演じていますね。 ジェラード連邦保安官と彼のチームの場面は、彼らが主役の刑事捜査ドラマを見ているような感じで、この部分が昔のテレビドラマとの大きなちがいになっています。 惜しいのは、テレビ版のテーマ曲が使われていなかったこと。あのテーマ曲が流れれば雰囲気が出て良かったのに。
2014年12月07日
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1970年(日本公開1971年4月)のフランス映画「夜の訪問者」をDVDで鑑賞。至福の時間を過ごしました。 IVCから発売されたニュープリント版で、税込909円(ネット通販amazon)で買ったものです。 最近はまったく見られなくなったフランスのサスペンス・アクション映画。 そのヨーロピアンな懐かしいムードと出演俳優の魅力を楽しみました。ジョー・マーティン チャールズ・ブロンソン 大塚周夫 ファビエンヌ・マーティン リヴ・ウルマン 武藤礼子 ロス大尉 ジェームズ・メイソン 鈴木瑞穂 モイラ ジル・アイアランド 有馬瑞子 カタンガ ジャン・トパール 山内雅人 ファウスト ルイジ・ピスティッリ 青野武 ホワイティ ミシェル・コンスタンタン 加藤精三 ミッシェル・マーティン ヤニック・ドリュール 市原由美子 南フランスの港町で釣り船(クルーザー)の船長をしているジョー(チャールズ・ブロンソン)はスネに傷持つ身で、かつての軍隊仲間の仕返しを恐れている。 字幕では朝鮮戦争となっているが、日本語吹替ではアルジェリア戦争と言っています。 フランス映画なのでアルジェリア戦争が妥当かと思うのですが、このソフトはアメリカ向けの英語版なのでアメリカ人になじみのある朝鮮戦争にしたのだろうか? 軍隊時代の上官ロス大尉(ジェームズ・メイソン)は物資の横流しであくどく稼いだ男。やりすぎたために刑務所へ送られ、同じ刑務所に将校を殴った罪で服役していた主人公ジョーもいて、彼らが計画した脱獄に加わった。 脱獄のさいに、彼らが警官を殺害したために、ジョーは殺人の共犯にされてはたまらんと、自分だけ逃走し、置き去りにされたロス大尉たちは捕らえられて長期服役になった。 服役を終えたロス大尉たちがジョーの居所を探り出してお礼参りに現れた。恨みを晴らすとともに、ジョーの妻子を人質にして自分たちの密輸に彼のクルーザーを使おうとの思惑で。 主人公ジョー(ブロンソン)と、その妻ファビエンヌ(リヴ・ウルマン)、娘のミッシェル(ヤニック・ドリュール)の平和な家庭がおびやかされる。 悪人一味のロス(ジェームズ・メイソン)と、その3人の手下、最初に1人で現れてジョーに殺されて断崖から落とされたホワイティ(ミシェル・コンスタンタン)、凶悪なカタンガ、短気なファウスト。 ロスの愛人モイラ(ジル・アイアランド)、彼女は麻薬密輸の資金を持って空港に到着したところをジョーに誘拐されて監禁。ジョーは彼女を妻子の安全と解放の取引に使おうとする。 写真・下は単身で現れた「夜の訪問者」であるホワイティ(ミシェル・コンスタンタン)が拳銃でファビエンヌを脅しているところ。 俳優ミシェル・コンスタンタン、お猿さんみたいな顔の、脇役として印象に残る俳優ですね。 同じ1970年のイタリア映画「狼の挽歌」にも殺し屋の役でブロンソンさんと共演しています。 ロス大尉を演じるジェームズ・メイソンはさすが大物俳優であり、その存在感の大きさ。 それと特筆すべきは、主人公の妻ファビエンヌ役のリヴ・ウルマンさんです。 夫の過去を知って、その共犯になるのを厭わない。この1970年時代のアクション映画の女優として、ただのお飾り的な足手まといな存在ではなく、主人公といっしょになって戦う姿は魅力たっぷり。 リヴ・ウルマンさんはノルウェーの女優。私にはイングマール・ベルイマン監督の芸術映画出演のイメージがあって、このような娯楽サスペンス・アクション映画の出演はたいへん珍しい感じがします。しかし、さすがにその演技はお見事でありました。
2014年08月27日
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「夜の訪問者」(1970) DE LA PART DES COPAINS 英題COLD SWEAT製作 ロベール・ドルフマン監督 テレンス・ヤング原作 リチャード・マシスン脚本 アルベール・シモナン、シモン・ウィンセルベルグ撮影 ジャン・ラビエ音楽 ミシェル・マーニュ 出演 チャールズ・ブロンソン、リヴ・ウルマン、ジェームズ・メイソン ジル・アイアランド、ミシェル・コンスタンタン 本編94分 総天然色 ビスタサイズ フランス映画「夜の訪問者」(70)。金沢での公開は1971年4月頃で、「北国シネラマ会館」。 チャールズ・ブロンソンさんの最も輝いていた時期の作品ですが、なぜかこれまでDVDは非正規の廉価版しかなく、ビデオテープからダビングしたようなピンぼけ画質のお世辞にもほめられない品でした。 それが2012年2月にIVCから「夜の訪問者 ニュープリント版」が発売されて、なんと5000円以上の高額。こんな高いものを買えるか!と、あきらめていたところ、この8月22日に1944円の低価格になって再発売、実売価格1000円くらいで買えるようになった。これには日本語吹替音声(大塚周夫、武藤礼子)も入っていて、私を大いに嬉しがらせています。 南フランスの港町で観光客相手のクルーザーの船長をしているジョー(チャールズ・ブロンソン)には、ファビエンヌ(リヴ・ウルマン)という美しい妻と、彼女の連れ子で12歳の娘ミッシェル(ヤニック・ドリュール)がいて、3人で平和に暮らしている。 ある夜、帰宅したジョーに1本の電話がかかってくる。人違いだと言って電話を切るのですが、こんどは銃を持った男(ミシェル・コンスタンタン)が家に押し入ってきます。 男はジョーの軍隊時代の知り合いで、仕事のために船を出せと銃で脅迫する。 スキを見て飛びかかったジョーは男と格闘の末、殺してしまいます。 ジョーは妻ファビエンヌに、学校のキャンプに行っているミッシェルを迎えに行って、義母さんの家に身を隠していろと言うのですが、彼女はきかず協力すると言い張ります。 ジョーとファビエンヌは男の死体を車で崖まで運んで処分して、家に帰ってくると、これもジョーの軍隊時代の知り合いでロス(ジェームズ・メイソン)という男が2人の手下を連れて家に入り込み、居座っていた。 監督は「007」でおなじみのテレンス・ヤング。製作はこの翌年に「レッド・サン」(71)で同監督とブロンソン主演でコンビを組むフランスのロベール・ドルフマン。 この時期のブロンソンさんは主にヨーロッパ映画に出演して人気を得た、そのキャリアで最も活躍していた絶好調期にあたります。「レッド・サン」(1971)フランス「扉の影に誰かいる」(1970)フランス「夜の訪問者」(1970)フランス「狼の挽歌」(1970)イタリア 「アドベンチャー」(1970)アメリカ「雨の訪問者」(1970)フランス「おませなツインキー」(1969)イギリス 「大砂塵の男」(1968)アメリカ「ウエスタン」(1968)イタリア「戦うパンチョ・ビラ」(1968)アメリカ 「さらば友よ」(1968)フランス 恨みをかった昔の悪い仲間に脅迫されるが屈することなく、家族を守るために敢然と戦う男の物語。風光明媚な南フランスを舞台にしたサスペンス・アクション映画です。 長くなるので、つづく。
2014年08月26日
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チャールズ・ブロンソン主演の映画「テレフォン」(1977)を見ました。 ヤマダ電機限定発売の「シネマ・コレクターズ」というDVDソフトのひとつです。 このシリーズでは「ダラスの熱い日」(73)や「ザ・ヤクザ」(74)「テキサスの五人の仲間」(65)「ポイントブランク殺しの分け前」(67)など、いまは廃盤になっている珍しい作品が含まれている。しばらく前まで1100円だったけれど、いまは990円に値下げされました。 そんなわけで、これまで見る機会がなかった「テレフォン」を買って鑑賞。チャールズ・ブロンソン主演映画DVDコレクションにひとつ追加です。「テレフォン」(1977) TELEFON監督 ドン・シーゲル 脚本 ピーター・ハイアムズ、スターリング・シリファント 撮影 マイケル・C・バトラー 音楽 ラロ・シフリン 出演 チャールズ・ブロンソン、リー・レミック、タイン・デイリー パトリック・マギー、ドナルド・プレザンス 本編103分 総天然色、ビスタサイズ 音声は英語(モノラル)のみ 字幕翻訳 高瀬鎮夫さん 1977年。冷戦時代が終わって東西陣営の緊張緩和(デタント)時代に移ろうとしている頃。 かつてスターリン時代にKGBによりアメリカ国内の軍事施設へのテロ計画が立案され、全米に54人の、電話で暗号を告げられると爆破テロを起こすという薬物催眠をかけられたソ連工作員を潜伏させる。 その計画が中止されることなくそのまま放置されていて、急進派に対する粛正から逃れたKGB職員のダルチムスキー(ドナルド・プレザンス)がその潜伏工作員の名簿を持ってアメリカへ逃亡し、「テレフォン作戦」を実行しようとしている。 ふたたび冷戦に戻る危機の事態収拾をはかるべくKGB首脳はソ連軍人ボルゾフ少佐(チャールズ・ブロンソン)をアメリカへ派遣。ボルゾフ少佐は現地工作員バーバラ(リー・レミック)を助手にしてダルチムスキーを追います。 ふだんは一市民として生活している者が、電話で作戦決行の暗号を伝えられると夢遊病者のようになって、隠していた爆弾を取り出して破壊活動をおこなうというアイデア。 アメリカ映画なのに主人公はソ連のKGB工作員という設定で、ブロンソン演じるソ連軍人ボルゾフ少佐の視点から描かれる、追う者も追われる者もソ連人という、いっぷう変わったサスペンス映画です。 主人公のボルゾフ少佐が完全記憶(目にしたものはすべて記憶する)の持ち主とか、CIA女性職員のタイン・デイリーさんの扱いなど、あまり活かされていないのが残念なところ。 アメリカに潜入したKGB工作員の主人公を、かつての「ジャッカルの日」のようにCIAやFBIが全力上げて追跡するというような、作りようによっては、もっとハラハラするスリル満点の作品になったと思われるのが、惜しまれます。
2014年04月15日
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1977年の外国映画興行成績です。 金額は配給収入。1位 「キングコング」 30億9000万円2位 「遠すぎた橋」 19億9000万3位 「カサンドラ・クロス」 15億3000万4位 「ロッキー」 12億1600万5位 「サスペリア」 10億9000万6位 「ザ・ディープ」 10億7位 「アドベンチャーファミリー」 8億9000万8位 「がんばれ!ベアーズ 特訓中」 7億9000万9位 「エアポート’77 バミューダからの脱出」 6億7400万10位 「ダーティハリー3」 6億600万円「ザ・ディープ」は「ジョーズ」(75)が大ヒットした余勢で、「がんばれ!ベアーズ特訓中」は「がんばれ!ベアーズ」(76)が大ヒットした余勢での成績かと思われます。 第5位の「サスペリア」はイタリアのホラー・ミステリ映画で、監督はダリオ・アルジェント。 日本公開は1977年6月。これは、うちのカミさんと結婚する前のデートで見に行った思い出のある作品です(金沢ロキシー劇場)。 主人公のアメリカ人女の子スージー(ジェシカ・ハーパー)が嵐の夜にドイツのバレエ寄宿学校にやって来る。入れ違いに寄宿生が何か秘密を知っているようなそぶりで大雨の中を飛びだしてゆき、その寄宿生が惨殺される。 この学校には副校長やバレエ教師(アリダ・ヴァリ)、使用人などいわくありげな謎めいた人物がいて、ヒロインは怪奇なできごとに悩まされながらも魔女崇拝の根城である学校の秘密を暴き出すことになります。 この作品が公開された1977年当時は、「ローズマリーの赤ちゃん」(68)あたりを先駆けとし、「エクソシスト」(73年。日本公開74年7月)を代表とするオカルト映画ブームの頃で、「オーメン」(76)など悪魔崇拝や魔女崇拝の作品が多かったですね。 まだホラー映画とかスプラッタ映画などの呼称はなくて、怪奇とかオカルト(は新語だった)と呼んだ時代です。 商売上手なイタリア映画がこのブームを見逃すはずがなく、「サスペリア」もそんな作品のひとつ。 あれから37年。テレビ放送を録画したもので再見すると、それほどの作品ではなく、大ヒットしたのは時代の風潮だったのでしょう。一緒になる前のカミさんが「見たーい」と云うから見に行ったのですが、女の子受けのする映画だったのではないかと思います。 当時の宣伝文句は「けっして一人では見ないでください」といったもので、怖い物見たさの心理を突いたのかと。それと立体音響が新しく感じたことかと。まだ映画館がせいぜい2チャンネル・ステレオだった時期に登場した横や後ろからも音が聞こえる(4チャンネル?)大音量の騒々しいくらいの立体音響が売りでした。 今回の鑑賞は、ただのステレオ放送なので、また印象が違っているのかとは思いますが。
2014年03月21日
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先日見たアルフレッド・ヒッチコック監督の映画「ハリーの災難」は朝から晩までの一日間の物語。「ロープ」(1948)は遅い午後から夕暮れを経て日暮れまでの1時間20分の出来事を描いた物語です。「ロープ」(ROPE)。1948年作品で、なぜか日本公開は遅れて1962年10月だそうな。本編81分で、ヒッチコック監督初の総天然色映画。 ニューヨークのあるアパートの一室で、大学を出たばかりのブランドン(ジョン・ドール)とフィリップ(ファーリー・グレンジャー)の二人が友人のディビッドをロープで絞殺するところから始まります。 死体をチェスト(衣装箱)に隠した彼らは、その箱をテーブルがわりにして知人を招いてパーティーを開く。殺した友人ディビッドの婚約者ジャネット、ディビッドの父親、母親が風邪引いて来られないので代わりのご婦人、ジャネットと以前に交際していた友人のケネスという若者。それと大学時代の恩師であるカデル教授(ジェームズ・スチュワート)と家政婦のおばさん。 彼らはなかなか姿を見せないディビッドに何かあったんじゃないだろうか?と次第に心配をしだす。 カデル教授はブランドンとフィリップの様子がどこかおかしいと感じる。 「ロープ」予告編はこちら。 衣装箱に隠された死体がいつ露見するか。窓の外の風景が昼から夕方、日が暮れてネオンが点くまで変化してゆくのが面白いし、もちろん部屋はセットで、窓外の風景も作り物です。「ハリーの災難」ではヒッチコック監督としては珍しく屋外ロケを多用していたけれど、この「ロープ」は100パーセント、すべての場面をセットで撮影している。 全編ワンショットで撮られたということになっていますが、実際は10分間のショットをつなぎ合わせている。 当時のカメラは1回の撮影が10分間しか撮れなかったそうで、しかしワンショットが10分間というのも凄いことです。10分間、俳優はカメラの前で演技を続けるのだから。細切れ短時間のショットをつなぎ合わせて編集するのが多い現代の映画は見習うべきでもある。 ブランドンとフィリップが友人のディビッドを殺した動機はとくにない。自分たちは優秀なエリートでディビッドは凡人だから殺した。 優秀な選ばれた人間は既成の道徳観にしばられないのだと。優秀な人間は何をしても許され、凡人を殺してもかまわないのだと、それを実際におこなってみせた。 だったら、その優秀な人間と凡人の基準はなにか?、それは誰が決めるのか? ブランドンとフィリップは自分たちをエリートだと決めたが、その判断基準は?、誰がそれを決めることができるのか、自分が神にでもなったつもりか! 他人の生命をかってに奪う権利が君たちにあるのか!と。 最後はカデル教授がディビッドを死体を衣装箱から発見し、ブランドンとフィリップを弾劾する。 全編ワンショット撮影というのが売りの実験作のようですが、見ていてワンショット、俳優がずっと演技をし続けてカメラが追い続けるというのがそれほど意識しなくなって、舞台劇を見ているような感じです。 今回はブルーレイでの鑑賞だけれど、これはDVD(著作権切れの格安盤ではなく正規品のユニバーサル盤)でも充分な感じがする。ただブルーレイには日本語吹替え音声が入っているのが特徴です。 予告編の冒頭では殺されたディビッドが恋人と公園に座って話している。全編アパートの外へ出ないセット撮影だから当然この公園シーンは本編にはありません。
2014年02月18日
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アルフレッド・ヒッチコック監督作品で、これまで見ていなかった「ハリーの災難」(1955年アメリカ映画。日本公開は1956年)をブルーレイソフトで鑑賞。 ヒッチコック作品としてよく知られた「タイトル」なのにこれまで見なかったのは、コメディということと、シャーリー・マクレーンさんの映画デビュー作という以外はほとんど知らない出演者ばかりということであまり関心がなかったからです。「ハリーの災難」。原題は「THE TROUBLE WITH HARRY」脚本 ジョン・マイケル・ヘイズ 撮影 ロバート・バークス 衣装デザイン イーディス・ヘッド 音楽 バーナード・ハーマン出演 エドマンド・グウェン、ジョン・フォーサイス、シャーリー・マクレーン ミルドレッド・ナトウィック、ロイヤル・ダノ 本編99分 総天然色 ビスタサイズ 結論を先に言うと、これはたいへん面白かった。しかもブルーレイソフトでの鑑賞で大正解。舞台となるのはヴァーモント州の田舎町で、紅葉した木々の風景が、マイ・パソコンの壁紙にしたいくらいに美しい。 登場人物は死体のハリーを入れて12人。静かな田舎町の朝、森で狩りをしていたワイルス船長(エドマンド・グウェン)が死体を発見する。自分が過って撃ってしまったと早合点して死体を隠そうとするが、そこへ次々と町の住人がいれかわりたちかわり現れて、しかも彼らは死体を見てもまったく驚かない。 ワイルス船長という老人が森で狩りをしていて死体を発見し、以下、小さな町なので住人は顔見知りで、42歳のミス・グレブリー(ミルドレッド・ナトウィック、「黄色いリボン」に出ていた人)、子持ちのジェニファー(シャーリー・マクレーン)、売れない画家サム(ジョン・フォーサイス)、読書家の医者、死体から靴を盗んでいく浮浪者の男・・・・・彼ら彼女らが次々と登場し、じゃまな死体を埋めたり掘り返したり。 物語としては「じゃまな死体を埋めたり掘り返したり」、それだけですが、死体となって発見されたハリーの死因は?、彼を殺したのは誰? 死体を隠すのに関わった人たちが、保安官代理(ロイヤル・ダノ)にバレないかという、ここだけがちょっとハラハラする、サスペンス映画の巨匠ヒッチコック監督のブラック・ユーモアを優先した異色作です。 実に奇妙な映画です。死体を埋めて隠すのに誰も罪の意識がなく、死人への同情もない。こんな所で死にやがってまったく迷惑な、死ぬなら他で死んでくれといった感じで。 美しい風景のなかに死体があった。それが大事件ともいえず、誰かが逮捕されるわけでもないし、結局は埋めて汚れた死体を洗って、あった場所に戻しておくことで自分たちは何も関係ないのだということにする。 サスペンス映画というには異色だし、アメリカで興行的にふるわなかったのも納得。でもヨーロッパではロングラン上映の劇場が出たり、大ヒットしたことで採算がとれたそうです。 シャーリー・マクレーンさんってこんなに可愛いかった?、さすが女優さんを美しく魅力的に撮るヒッチコック監督です。
2014年02月17日
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先日、映画「ヒッチコック」(2012)を見たことで、ヒッチコック監督作品に対する興味が再燃しました。「ヒッチコック」の中で、「間違えられた男」(57)と「めまい」(58)が失敗作だったと言っていました。「めまい」が失敗作だなんて信じられないのですが、公開当時は評論家たちにも受けが悪く、興行的にもかんばしくなかったようです。 その後、1959年の「北北西に進路を取れ」が大ヒットしたことにより、映画会社は次作に同じような系統の作品を望んだが、 ヒッチコック監督が猟奇殺人事件をテーマにした「サイコ」(60)を企画したことで、そのあまりの違いに拒否反応を起こされてしまった。 ヒッチコック監督としては、「間違えられた男」と「めまい」のような興行的失敗を繰り返したくないし、「北北西に進路を取れ」と同じような作品を撮っても能の無いことになってしまう。 新しい趣向を凝らした作品ということで「サイコ」を企画したようですが、これが結果的に大ヒットしました。 続いての「鳥」(63)も大ヒット。 日本では1960年の興行成績で「サイコ」が第10位。1963年では「鳥」が第9位です。 昨年の9月に「めまい」が低価格のブルーレイソフトになって発売され、そのことは9月7日に書きました。 「めまい」は、高所恐怖症のため警察を辞めた主人公スコティ(ジェームズ・スチュワート)が、不審な行動をする旧友の妻マデリン(キム・ノヴァク)の尾行を依頼される。 尾行を続けるうちにマデリンに惹かれてゆくのですが、彼女が教会の鐘楼から飛び降りようとした時、スコティは高所恐怖症のために動けず、彼女を見殺しにしてしまう。 自責の念にかられるスコティの前にマデリンに瓜二つの女性ジュディが現れ、事件の意外な真相へと。「美貌の人妻の不思議な行動を追って発展するロマンスとサスペンス」 内容を一言でいうと、そんなところですが、サスペンスとラブロマンスを見事に絡み合わせた、サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の傑作です。 公開当時は認められず、興行的にも失敗だった「めまい」(58) その後、再評価されて、現在ではヒッチコック監督の最高傑作のひとつとまで言われています。 ヒッチコック監督はヒロイン役にヴェラ・マイルズを想定し、彼女をスターとして売り出す自信があったそうです。ところが彼女が妊娠して役を降りてしまう。 映画「ヒッチコック」の中でも、ジェシカ・ビールさん扮するヴェラ・マイルズに、「なぜだ。スターにしてやれたのに」と恨みがましく言っています。 結局は、「ピクニック」や「愛情物語」のキム・ノヴァクさんがヒロインの人妻マデリン役を演じることになり、彼女の代表作になる。 現在、この映画を見るなら絶対にブルーレイソフトです。1490円で買えるし、その画質の美しさはDVDとは比較にならない。
2014年01月30日
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1960年の外国映画興行成績です。 金額は配給収入。1位 「ベン・ハー」 5億9025万円 2位 「アラモ」 2億6754万円 3位 「眠れる森の美女」 1億7824万円 4位 「チャップリンの独裁者」 1億6800万円 5位 「許されざる者」 1億3330万円 6位 「連邦警察」 1億2791万円 7位 「太陽がいっぱい」 1億2441万円 8位 「バファロー大隊」 1億1992万円 9位 「スパルタカス」 1億1014万円 10位「サイコ」 1億512万円 アルフレッド・ヒッチコック監督の「サイコ」が興行成績の第10位に入っています。 健闘したとみるべきか、もっと上位に来るべきかは、どうなのでしょうか? ヒッチコック監督は芸術家というより職人なのですね。サスペンス映画の巨匠といわれますが、サスペンスものは娯楽映画なので、当時の日本では根強いファンは存在しただろうけれども、映画を芸術とする人たちには低く見られていたのかもしれない。「サイコ」はヒッチコック監督の代表作ではなくて、どちらかといえば異色作です。「鳥」(64)などもそうですが、私が代表作だと思っているのは、「泥棒成金」(55)「裏窓」(54)「めまい」(58)「北北西に進路を取れ」(59)です。このような豪華絢爛な娯楽的サスペンス映画がヒッチコック監督らしさを感じます。「北北西に進路を取れ」のあと、次作はどのようなものを撮るか?、となって選んだのがロバート・ブロックの「気ちがい」の映画化。いつまでも同じような路線を撮っていても飽きられるだけというのは、確かにそうなのですが、それまでとは大きくイメージチェンジしたような「サイコ」の製作です。 映画会社が資金提供を拒んだのもわかるような気がするし、周囲の人たちが拒否反応を示したのもわかります。それまでのヒッチコック作品から外れるような題材です。 私がこの映画を初めて見たのはテレビのゴールデン洋画劇場です。調べてみると、1975年9月5日の放送。当時は土曜日ではなくて金曜の夜9時からの放送でした。 現在とはちがって、過去の映画を見るにはテレビ洋画劇場しかなく、ヒッチコック作品の放送は貴重な鑑賞機会でした。 昨日見た2012年公開の「ヒッチコック」。アンソニー・ホプキンスさんがヒッチコック監督になりきっていて、ブロンド女性への執着もちゃあんと描かれていて面白かったです。「サイコ」のシャワーシーンには最初は音楽が入っていなかったそうで、監督が音楽を入れるのに反対する。音楽入りの方がぜったいに良いと主張する奥さんのアルマ。 音楽を入れることで、結局は、よりいっそうショッキングな場面になりました。 ラストシーンでヒッチコック監督が、「次回作のアイデアはまだ浮かんでいませんが、きっと空からおりてくるでしょう」と言う、その肩に、飛んできた一羽のカラスが止まって。 このエンディングには思わずニンマリと嬉しくなりますね。
2014年01月29日
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1992年の外国映画興行成績です。 金額は配給収入1位 「フック」 23億3000万円 2位 「エイリアン3」 19億5000万円 3位 「氷の微笑」 19億円 4位 「JFK」 17億円 5位 「美女と野獣」 16億円 6位 「パトリオット・ゲーム」 12億円 7位 「ホット・ショット」 10億2000万円 8位 「愛人 ラマン」 10億円 9位 「リーサル・ウェポン3」 10億円 10位 「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の七日間」 8億円 第3位のミステリ映画「氷の微笑」(1992年6月公開)。劇場公開時に見て以来、何度かDVDなどで再見しているのですが、何度見てもスッキリしません。疑惑を残したままの事件解決は、ミステリとしてはどうなんでしょう? 真犯人は誰なのか?、いちおうは犯人が射殺されて、自宅から証拠物件も発見され、決着。しかし本当に彼女が犯人なのか?という疑問を残したままのラストは、何度見てもスッキリとしないものです。 先日、古書店の閉店セールで20冊を420円で買ったなかの一冊。「氷の微笑」リチャード・オズボーン著 東江一紀 訳 扶桑社ミステリ 原題は「BASIC INSTINCT」(「基本的な」、「本能」?、それとも「直感」?)で、ジョー・エスターハスの映画脚本のノヴェライズ小説です。 本を読めば、映画が理解しやすくなるかと思ったのですが、整理はできても真相はやはり謎でした。 ロックの元スター歌手が自宅のベッドでアイスピックの滅多突きで惨殺される。 サンフランシスコ市警殺人課の刑事ニック(マイケル・ダグラス)とガスが捜査にあたるのですが、容疑者にあげられたのは豪邸に住み、ロータスを乗り回す大富豪の美女キャサリン・トラメル(シャロン・ストーン)。カリフォルニア大学バークレー校で心理学と文学を修めた才媛で、サスペンス小説「愛の傷あと」の著作者としても知られている。 その小説の内容が元ロックスターが女にアイスピックで殺されるというもので、彼女が自分が書いた話そのままの犯行におよんだのか? 映画は、市警専属の精神科医ベス・ガーナー(ジーン・トリプルホーン)が犯人としてニックに射殺されて終わるのですが、本当に彼女が犯人なのか? キャサリンはベスの過去をすべて知っていて、彼女をアイスピックを持った異常殺人者に仕立て上げたのか? キャサリンの両親が事故死したのも事故に見せかけた殺人なのか? バークレー校時代に恩師の教授を殺したのもキャサリンで、冒頭の元ロック・スターを殺したのも彼女、ベスの夫を帰宅途上の路で射殺したのも、警察内部管理課のニルセン調査官を撃ったのも、ニックの相棒ガスをアイスピックで刺殺したのも彼女。そのすべてをベスによる犯行のように仕組んだのか? 映画は殺人事件の謎解きものではなく、怪しいと思えばすべてが怪しく見え、幾通りもの解釈ができる。ベスの部屋から家宅捜索で発見された凶器の38口径拳銃も本当にベスの物なのか、それともキャサリンが部屋に忍び込んで隠したのか? ミステリとしては謎だらけでスッキリしない話ですが、映像的にはヒッチコック監督の「めまい」を連想させるものがあって、ヤン・デ・ボンの撮影がとても素晴らしい。 サンフランシスコの街をこれだけ魅力的に美しく意識して見せてくれた映画は、ヒッチコック監督の「めまい」以来のように思えます。 サンフランシスコの市街地や金門橋、キャサリンの別荘があるスティンソンへ向かう崖に沿ってくねくねと延びる沿岸道路。背景の海が見える風景は、ヒッチコック作品へのオマージュのようです。 監督はポール・ヴァーホーヴェン。 ジェリー・ゴールドスミスによるミステリ調の音楽も効果的です。 主演の魔性の女キャサリン・トラメル役にシャロン・ストーンさんを強く推薦したのはポール・ヴァーホーヴェン監督だとのこと。「トータル・リコール」(1990)でシュワルツェネッガーの妻役を好演してヴァーホーヴェン監督に認められたそうです。
2014年01月16日
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アルフレッド・ヒッチコック監督がアメリカに渡って最初の作品が「レベッカ」(REBECCA)です。1940年(昭和15年)の映画で、日本で公開されたのは戦後の1951年4月。 ダフネ・デュ・モーリアの原作小説は新潮文庫から上下巻として出ていて、現在は新訳版(あまり評判がよろしくない)です。 私が持っているのは旧版で大久保康雄さんによる格調ある翻訳。この旧版は絶版のようで、大久保康雄さんの名訳があるのになぜわざわざ新訳版を出したのか、理解に苦しむところ。 その映画化のヒッチコック作品。この映画はかつてのテレビ洋画劇場でも放送されたし、現在は著作権切れの格安DVD(300円くらい)が各種発売されている。 モンテカルロのホテルでヒロインの「わたし」(ジョーン・フォンテイン)は英国紳士のマキシム(ローレンス・オリヴィエ)に見初められて結婚する。 マンダレーの古い屋敷の女主人となり、古い因習と伝統にがんじがらめになって、日夜不安にさいなまれる。さらにマキシムの前妻レベッカは1年前にヨット事故で水死したといい、そのレベッカにいまだに忠義をささげる女中頭のダンヴァース夫人はことあるごとにヒロインに意地悪く接する。ヒロインはレベッカの死の謎と、その影におびえ、精神的に追い詰められてゆく。 ヒッチコック監督のサスペンス作品としての位置付けは、「めまい」や「裏窓」、「泥棒成金」など華やかでゴージャス感のあるカラー作品、「断崖」や「汚名」、「白い恐怖」などスリラー風味のモノクロ作品、それらの陰になってしまっているようで、目立たない感じがする。 サスペンスというより幻想的といったほうがいいような、でもけっして古さを感じさせない、むしろ現在の目で見ても、ヒッチコック監督の編集のうまさ、物語のうまさをあらためて認識させられる名作だと思います。 ケン・フォレットの戦争冒険スパイ小説(ハーレクイン・ロマンスみたいな感じもする)「レベッカへの鍵」(新潮文庫 矢野浩三郎 訳)では、ドイツ軍スパイのヴォルフが、この小説「レベッカ」を暗号のコードブックとして使う。それだけ欧米では広く知られた小説だという証です。 その「レベッカへの鍵」のなかでは、イギリス軍情報参謀部のヴァンダム少佐の息子ビリー少年がヒロインのエレーネに、「それは面白くないですよ。良人(おっと)の家政婦を怖がる馬鹿な女の話。全然アクションがないんだ」なんて言っている。 映画「レベッカ」。忘れたところも多くあるので、こんどの正月休みにゆっくりとDVDを再見することにします。
2013年12月12日
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2006年の映画「さらば、ベルリン」を鑑賞。 数年前に家電量販店で特価300円で買ったまま未見だったDVDです。監督 スティーヴン・ソダーバーグ脚本 ポール・アタナシオ撮影 ピーター・アンドリュース出演 ジョージ・クルーニー、ケイト・ブランシェット、トビー・マグワイア 2006年のアメリカ映画で日本公開は2007年9月。 1945年。第二次大戦でドイツが降伏したすぐあとの、日本がまだ交戦中だった時期のベルリンを舞台にしたサスペンス映画。 邦題の「さらば、ベルリン」は1966年のスパイ映画「さらばベルリンの灯」と酷似していてまぎらわしいですね。「さらばベルリンの灯」の原題は「THE QUILLER MEMORANDUM」で、クイラー(主人公の名前)の覚書」ですが、「さらば、ベルリン」は「THE GOOD GERMAN」で、「良いドイツ人」。「ナチスに協力しなかったドイツ人」のような意味らしいです。「さらば」では「GOODBYE」と勘違いされそうな、妙な邦題になっているようです。 実際の記録フィルムをスクリーン・プロセスで合成し、人物の背景にすることで臨場感を出そうという試みと思われる、モノクロの映像は昔の、1940年代、50年代の映画の雰囲気を出そうとねらったものでしょうか? ベルリンへポツダム会議の取材に訪れた記者ガイズマー(ジョージ・クルーニー)が、戦前に駐在していたときの助手だった女性レーナ(ケイト・ブランシェット)に再会する。 彼女は元ナチス親衛隊員の妻で、夫はV2号ロケット(弾道ミサイルの原型)開発者の秘書をしており、その秘密工場はドーラ収容所とよばれ、ユダヤ人や囚人からなる労働者に非人道的な虐待行為をおこなっていた。 連合軍にはその戦争犯罪を弾劾しようとするグループと、ロケット科学者を確保する必要から免罪しようとするグループがある。 レーナはドイツからの出国を望んでいて、彼女の夫はドーラ収容所の機密記録書類を持って地下に潜伏している。 その機密書類を狙う者たちからガイズナーはレーナ夫妻を逃がそうとするのだが・・・ 終戦直後の、アメリカ統治区域とソ連統治区域に分割された、瓦礫と荒廃と混乱のベルリン。 名作「第三の男」のような緊張感があってもよさそうなのに、そういう緊張感は感じられず、「カサブランカ」のようなロマンティシズムもまったく感じられない。 昔の映画ふうの白黒撮影も効果が出ていないし、これでは何のためにモノクロで撮ったのかわからない。 ジョージ・クルーニーさん、ケイト・ブランシェットさん、ともに好きな俳優だけれど魅力的なキャラクターになっていないのが致命的です。 ケイト・ブランシェットさんのヒロインは、生き延びるために同胞のユダヤ人をゲシュタポに密告していた、その過去から逃れることだけを目的にしているようで、二人が愛し合っているのかさえ不明。こういう映画では美しいヒロインとカッコ良い男のロマンスが重要なのに、それがまるで感じられない。 本編108分、とくに退屈はしなかったけれども、面白かったとは言えない映画でした。 定価3980円の新品DVDが300円で売られていた、その理由は「誰も買わない」からですかね? 昔の娯楽映画に手慣れた職人監督が撮れば、もっと面白い作品になったのではないか?
2013年11月13日
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映画「第三の男」のブルーレイソフトを買った。 定価1980円で、販売価格は1490円。 この作品はパブリックドメイン(著作権により保護されていた著作物が、著作権の保護期間を経過して社会の公共財産になり、だれでも自由に利用できる)になっていて、格安DVDが各種売られています。 私も3枚ばかり持っていますが、それぞれ一長一短といった感じで、画質の悪いものや、画質はそれなりでも翻訳字幕に誤字があったりと、いろいろ。そんな中では、マックスター盤は日本語吹替え音声が入っているのが珍しい。 やはり正規盤といえるのはジェネオン・ユニバーサルの製品で、字幕翻訳も自然な感じだし、脱字(マーチンスがアンナの楽屋を訪れる場面)さえなければ最高なのに惜しいところ。 今度、といっても今春の3月ですが、同社からブルーレイソフトが発売され、それを買いました。 1949年のイギリス映画。60年以上も昔の作品で、しかも白黒。たしかに最新の映画と同じ画質とはいかないのは当然だろうし、とくに不満もなく、及第点でしょう。 DVDにあった脱字が修正されていて、翻訳もDVDよりずっと良くなっている感じがします。 これまでにVHSビデオ、レーザーディスク、DVD各種、と出された中では、最高の品質だと思います。ブルーレイ化なので当然だろうけれど。 価格1490円はとくに高いものではなく、「第三の男」マニアやコレクター(そんな人がいれば)は買って損はないだろうし、決定盤としてコレクションに加えるべきです。 日本語吹替え音声があればもっといいのだけれど、そこまでぜいたくは言いますまい。 この名作を見て退屈だとか、つまらないとか、言う人がいるのは映画ファンとして残念です。 映画はストーリーを知るために見るものではない。作品全体を味わうもので、演出と撮影、演技、美術、衣装、音楽、見るべき箇所はいくらもあります。その意味でこの「第三の男」すべての点で完成されていて、故淀川長治先生もおっしゃっていたけれど、教科書ですね。
2013年09月18日
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アルフレッド・ヒッチコック監督の「めまい」以下、これまでブルーレイ未発売だった「疑惑の影」、「ロープ」、「ハリーの災難」、「知りすぎていた男」、「マーニー」、「引き裂かれたカーテン」、「トパーズ」、「フレンジー」、「ファミリー・プロット」が9月5日に低価格で発売されました。 定価は1980円ですが、ヤマダ電機さんでは1490円です。 今年の5月10日に「裏窓」、「鳥」、「逃走迷路」が発売されたときに、「裏窓」と「鳥」を買って、「逃走迷路」は後日でもいいかと思っていたら、誰かが買ったとみえ、買いに行ったら無くなっていた。こういうものは、見かけて欲しいと思ったときが買い時です。 1940年代から60年代、70年代前半の古い映画ですが、これはDVDよりもやはりブルーレイでそろえたいですね。「めまい」は1958年作品。 主人公の刑事スコティ(ジェームズ・スチュワート)は街の屋根を逃げる犯人を追跡中に、落ちそうになった自分を助けようとした同僚を転落死させてしまいます。そのことが原因で高所恐怖症になり、警察を辞職。 そんなスコティは、大学時代の旧友に妻マデリン(キム・ノヴァク)を尾行してくれないかと頼まれます。スコティは彼女を尾行監視するのですが、自殺した曾祖母に操られるように不可解な行動をかさねる彼女をいつしか愛するようになる。 彼女は教会の塔から衝動的に身を投げて自殺してしまいます。失意に落ち込むスコティの前に、死んだはずのマデリンに瓜二つの女性ジュディ(キム・ノヴァク)が現れる。 マデリンを尾行するスコティ。美術館からゴールデンブリッジへ。この金門橋の風景が素晴らしくて、絵葉書のようです。 サンフランシスコのロケが効果的で、この尾行シーンはブルーレイソフトで見るべきかと。これまでに何度も見た映画ですが、このブルーレイの映像はこれが同じ映画かと思うくらいに美しい。 ミステリ好きなら絶対に買うべきブルーレイソフトの「めまい」です。あとは「裏窓」と「鳥」、他社製品ですが「北北西に進路を取れ」と「泥棒成金」をそろえれば、とりあえずは良いのではないかと? すべて日本語吹替音声が入っていて、ヒッチコック作品を日本語吹替えで見るのも楽しいのではないでしょうか。特に「めまい」や「鳥」、「マーニー」など。 「めまい」(1958)の予告編はこちら。 この予告編では映画の素晴らしさが伝わらないですが、おもしろいショットがあります。59秒あたりの箇所で、ハッとしてベッドで振り向くキム・ノヴァクさん。このショットは「007ロシアより愛をこめて」(63)のダニエラ・ビアンキさんのとまったく同じですね。
2013年09月07日
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ブライアン・デ・パルマ監督の作品では「殺しのドレス」(80)と「ボディ・ダブル」(84)が気に入っています。 どちらもエロチック・サスペンス映画ですが、好きな理由はそんなことでなく、映画の撮り方というか、カメラのアングルや構図、撮影手法、演技など、そういう教科書的な作品だから。 映画をストーリー中心で見ている人には面白くないかもしれません。 映画はストーリーだけではなく、あたりまえだけれど、監督の演出、俳優の演技、撮影手法、画面構図など、そういう点にも注目しながら楽しむものです。 そんな映画本来の楽しみ方を知っている人なら、「殺しのドレス」も「ボディ・ダブル」もきっと楽しめると思います。「ボディ・ダブル BODY DOUBLE」とは、身代わりの意味。 たとえば有名な女優がいて、ヌード場面があっても脱ぐわけにはいかない。そういう場合に、顔は本人を撮って、身体の部分を別の女優で撮る。 編集した映像を見る観客には、あたかもその有名女優が全裸でシャワーを浴びているように見える。 危険なシーンに代役をつかうスタントマンと同じような意味で、身体の部分だけを代役を使って撮影するということです。「殺しのドレス」の冒頭。アンジー・ディキンソンさんがシャワーを浴びているヌードシーンは身体部分をボディ・ダブルで撮ったものです。 映画「ボディ・ダブル」は売れないB級怪奇映画の俳優がだまされて殺人の目撃者にされてしまう。 ハリウッドの豪邸の留守番を頼まれた主人公ジェイクは、丘の下にある隣家を望遠鏡でのぞき見する。きれいな女性が半裸で踊っている。 その女性に興味をおぼえたジェイクは買物中の彼女を尾行するのだが、もう一人の怪しい男が彼女をつけ回しているのを知ります。 その女性の家にその怪しい男が電動ドリル持って侵入するのを望遠鏡で見たジェイクはいそいで彼女に知らせようと走るけれど間に合わず、彼女は殺されてしまう(この殺人シーンはエグい)。 ジェイクは警察に疑われたりして(疑われるようなことをしているのですが)、やけ酒飲んでポルノビデオを見ていると、そのポルノ女優の踊っているのが殺された女性が踊っていたのとそっくりなのに気づきます。 ジェイクはそのビデオを製作したプロダクションへ行って、そのポルノ女優に会うことにする。 主人公の売れない怪奇映画の俳優ジェイクを演じるのはクレイグ・ワッソン。 彼をだまして目撃者にしたてる男にグレッグ・ヘンリー。 殺される美しい女性にデボラ・シェルトン ポルノ女優にメラニー・グリフィス 嫌みなB級怪奇映画の監督にデニス・フランツ この中で知られているのはメラニー・グリフィスさん(「鳥」のティッピ・ヘドレンさんの娘)ぐらいで、あとはB級映画の俳優といった方々ばかりです。 デニス・フランツは「殺しのドレス」で刑事役をやった人で、ブライアン・デ・パルマ監督の初期作品の常連ですね。 最初のシーンで、ジェイクが閉所恐怖症で、監督から「棺がこわい吸血鬼がいるものか!」と言われて、凹んで家に帰ってくると、同棲中の恋人が間男をしていた。 その時の彼女の顔が輝いていた。これは男にとっては相当なショックだろう。 DVDでは、この浮気を目撃するシーンはボカシなし。 ヒッチコック監督の「裏窓」と「めまい」をモチーフにした作品です。 アルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画が好きな人なら、きっと楽しめると思う、私はこの映画、好きです。
2013年07月26日
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ブライアン・デ・パルマ監督のエロチック・サスペンス映画「殺しのドレス」(1980)。 初めて見たのは1983年にテレビの月曜ロードショーで放送された時ですが、現在発売されているDVDは本編109分だから、テレビのより15分くらい長い完全版です。 夫との性生活に満足できないケイト(アンジー・ディキンソン)は、精神分析医エリオット(マイケル・ケイン)のカウンセリングを受けている。 その帰りに立ち寄った美術館で出会った男とタクシー内で情事に及び、さらに男のアパートへ。 彼が性病を持っていることを知って、あわてて部屋を飛び出したケイトは、エレベーター内で、途中の階から乗ってきた黒いコートにサングラスの女にカミソリで切り刻まれて惨殺されてしまう。 事件を偶然に目撃してしまった娼婦リズ(ナンシー・アレン)は警察にいったんは疑われるのだけども釈放されて、ケイトの息子ピーターと協力して真犯人を追うことに。 アルフレッド・ヒッチコック監督の「サイコ」にモチーフをとった作品で、設定がよく似ています。 最初に主人公と思われた位置にある女性が謎の女に惨殺されてしまう。その近親者が犯人を追跡する。「サイコ」では被害者の妹と、被害者の婚約者のコンビで、この「殺しのドレス」では被害者の息子と事件を目撃した若い娼婦のコンビ。そして真犯人が二重人格者だという点ですね。 邦題は「殺しのドレス」。妙なタイトルだけれど、原題の「DRESSED TO KILL」は直訳すると「悩殺するような服装をしている。殺すために服を着ている。殺すために服を着ました」ということで、普通は「男の目を引くために派手な服装をする」という意味のようです。 この映画の場合は、ちょっとひねって、「殺すために着替える」というようなニュアンスになるのでは?、「悩殺」ではなく、文字通りに「殺人」のための服装ということで、映画では犯人の「女装」ですね。 カミソリで切られるといういかにも痛そうな殺されかたをするアンジー・ディキンソンさん。冒頭のシャワーシーンではボカシもモザイクもない。もちろんヌードは別人を撮ったのだろうけれど。それとタクシー内でパンツを脱がされたりして、エッチだねぇ。 ブライアン・デ・パルマ監督流の「下品な官能場面」は、この後の「ボディ・ダブル」(84)もそうだけれど、このようなエロチック場面はヒッチコック先生の作品にはなかったものです。 お母さんを殺された少年が犯人を追うのに力を貸す娼婦リズを演じるのはナンシー・アレンさん。「ロボコップ」(87)で、ロボコップの相棒の婦警さんに扮した素敵な人。いかにも1980年代の女優さんだなって感じがします。
2013年07月25日
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アルフレッド・ヒッチコック監督の1945年作品「白い恐怖」。 これは、おそらく私が初めて見たヒッチコック作品です。といっても日本で劇場公開(1951年)された時ではなく(生まれる前だから当然)、1971年ごろにテレビの洋画劇場です。 原題は「SPELLBOUND」。スペルバウンド?、辞書で調べると「魅了される」、「呪いで縛られた」、「呪文で封じられる」というような意味で、ヒロインが殺人容疑がかかった男に恋して、最後まで信じ抜いて、その無実を晴らす、恋人の魅力に完全にまいってしまった、恋は盲目というような意味らしい。 監督アルフレッド・ヒッチコック、脚本は「汚名」と同じベン・ヘクト。音楽はミクロス・ローザ。 主演はイングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック、レオ・G・キャロル。 ニューヨークの郊外らしい地方にある精神病院に新任の院長がやって来る。 エドワーズ博士というその若い院長(グレゴリー・ペック)に精神分析医のコンスタンス(イングリッド・バーグマン)は一目惚れしてしまう。 彼女はこれまで、同僚の誘いをはねつけ、恋よりも仕事一途で来たのだが、ハンサムな新院長に恋してから変化してしまう。 このエドワーズ院長にはどこか不審な点が見られ、コンスタンスは彼の手紙のサインが著書のものと異なるのに気づきます。 さらに、彼が白地に黒い縦模様の、テーブルクロスにフォークで描いた線、縦縞のナイトガウン、ベッドカバーの模様などを見ると恐怖に襲われて意識を失ってしまうことを知る。 エドワーズ博士になりすましてやって来た男は何者なのか、彼は記憶を失っていて過去のことを覚えていない。自分は本物のエドワーズ博士を殺したと思い込んでいて、ある日、ニューヨークのエンパイア・ホテルに宿泊するという書き置きを残して病院から姿を消します。 あくまでも彼の無実を信じるコンスタンスは、後を追ってニューヨークへ。 警察によりエドワーズ博士失踪の捜査が始まり、彼と彼女の二人は警察の追跡をかわしながらホテルからグランドセントラル駅へ、コンスタンスの恩師である老博士の家に向かいます。 このコンスタンスが前に助手を務めていたという精神分析医のおじいちゃんの家に世話になるのが良い展開になっています。 「白い恐怖」予告編はこちら。 私が愛したのだから悪人ではない、ぜったいに無実に決まっているという、それだけの根拠で、恋する女性にとってはそれだけで充分なのでしょう。 愛する人を守るのは私しかいないという、女性のたくましい心を描いた、これはヒッチコック監督好みのラブロマンス&サスペンスですね。 心理分析をテーマにした作品で、初めて見た時も(先に書いたテレビ放送)、話がよくわからなかったおぼえがあります。 現在は著作権切れによる廉価DVDがあって、久しぶりに見ても、やはり真犯人へたどり着く道筋がいまいち理解できない。 むずかしいことを考えずに、美しいイングリッド・バーグマンさんのクールからホットへの変化と、若くハンサムなグレゴリー・ペックさん(まさにヒロインが一目惚れするのが不思議ではない男振り)を楽しんでいればいいのではないか。 廉価DVDでは、KEEPのは画質がよくない。ビデオメーカーというメーカーのは画質は黒白がクッキリしていて良いけれど字幕に何箇所か誤字があります。
2013年07月10日
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アルフレッド・ヒッチコック監督の「汚名」(1946年)。 父親がドイツのスパイとして国家反逆罪に問われ有罪判決を受ける。 売国奴の娘という汚名を着たアリシア(イングリッド・バーグマン)は記者の執拗な質問をうけたり、警察に尾行されたり。 自暴自棄になった彼女はその夜、親しい友人たちとパーティを開く。 その席にFBI捜査官のデブリン(ケイリー・グラント)の姿がある。 宴会をお開きにしたあと、アリシアは暑いから外へ行くと言って、デブリンといっしょに車でドライブに。酔って時速100キロの危なっかしい運転に助手席のデブリンは気が気でない。 その時に白バイが追ってきて車を止める。「飲酒運転で刑務所行きね。親子で刑務所とはお笑いだわ」と嘲るアリシアだが、デブリンは身分証を出して見せると、警官は敬礼して立ち去ります。 あなた何を見せたの?、あの警官敬礼をして行ったわ。あなた警察だったのね! この白バイ警官にFBIの身分証を見せて飲酒運転を見逃させるのが許せないという批評をサイトで目にします。職権乱用だと。 この場面はけっして、そうではないですね。デブリンはアリシアをスパイに仕立ててブラジルのドイツスパイ組織に潜入させようとしています。 重要な国家機密の任務遂行中に彼女を飲酒運転で逮捕させるわけにはいかない。これは当然のことで、いま妨害されてたまるかということで自分が任務遂行中である捜査官の身分をあかして警官を立ち去らせたのです。 セリフにはない、その場面の意味を考えないで、現在の道徳観のみからの視点で昔の古い映画(1946年)を見て批判するのは間違った鑑賞だと思います。 この白バイ警官は不通の制帽で、ヘルメットではない。これも当時はそういう時代だったし、飲酒運転に対する認識も現在の日本とは違うだろうと考えるべきです。「汚名」はロマンチックな、メロドラマともいえるサスペンス劇。 イングリッド・バーグマンとケイリー・グラントの目くるめくようなキスシーンがあります。 ヒッチコック監督はキスシーンを撮るのが大好きで、そのためにキスのじょうずな俳優ケイリー・グラントを起用したのではないか、と映画評論家の川本三郎さんが何かで書いていました。 当時のプロダクション・コード(映画倫理自主規制)では「キスシーンは3秒まで」という規定があったそうです。ヒッチコック監督はそれならばと、3秒以内のキスを断続的に繰り返すことで、その規定に挑戦しました。 バーグマンとグラントの2人がホテルのバルコニーでかわすキスシーンは2分半もあり、官能的なものです。「泥棒成金」のグレース・ケリーさんとの花火の夜のキス。「北北西に進路を取れ」のエヴァ・マリー・セイントさんとの列車の車室でのキス。ヒッチコック作品でもとくにロマンス色の強いサスペンスの傑作で、これもキスの上手なケイリー・グラントさんあってこそでしょうか? ケイリー・グラントさんはハリウッドの大スターとしては珍しく西部劇に1本も出ていない。 都会的な洗練されたスマートな俳優。 イングリッド・バーグマンさんがのちに不倫スキャンダルでハリウッドを追われたときも、ずっと友人関係を保ち続けたそうで、私生活でもダンディでロマンチックな好男子だったのでしょうか。
2013年07月09日
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アルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画が大好きです。 期待した「サイコ」の製作裏話を題材にした映画「ヒッチコック」(2012)が石川県で公開されなかったのは、商品価値が薄いと判断されたのでしょうか?「マリリン7日間の恋」(2011)など、映画ファンが真に見たいと思う上質な作品が上映されないのは困った世の中です。 ヒッチコック監督の「裏窓」(54)、「泥棒成金」(54)、「北北西に進路を取れ!」(59)、「サイコ」(60)、「鳥」(63)などのブルーレイが安くなって発売されています。 これらはDVDを持っているけれど、とくに「裏窓」や「鳥」は日本語吹替え音声が入っているとなれば欲しいですね。いちどに買えなくても、順に一枚ずつでも買っていこうと思う。 そのような正規メーカーのブルーレイではないけれど、KEEP社の500円DVDの「白い恐怖」(45)と「汚名」(46)。 廉価DVDの中にはひどい画質のものがあってガッカリすることが多いですが、このKEEPの2作品は画質に不満は感じず、特に「汚名」は他社製品より断トツに良いのでは?「汚名」Notorious 1946年アメリカ映画。主演はイングリッド・バーグマンとケイリー・グラント。当時の大スター共演です。 ヒロインのアリシア(バーグマン)のお父さんがドイツのスパイだったというので、その彼女にアメリカのFBIが接近。彼女を南米のドイツスパイ組織に送り込んで内情を探らせようとし、捜査官のデブリン(グラント)が連絡員となる。 彼女が正体を見破られて、毒の入ったコーヒーを飲まされて少しずつ衰弱してゆく。 ケイリー・グラントとバーグマン、潜入員と連絡員という立場を越えて内心は愛しあうようになるけれど、会えば気持ちがすれ違って喧嘩ばかりする。ケイリー・グラントはバーグマンにずいぶん酷い態度をとります。「レベッカ」(40)もそうだけど、ヒッチコック監督はヒロインを苛めますね(笑) 見ていてイングリッド・バーグマンが可哀想で、もう少し優しくしたらどうだ、と思いました。 父親が敵国のスパイとして反逆罪で逮捕されることで、その娘が国家機関に利用されてつらい目にあわされる。 彼女が接近するドイツスパイを演じるのがクロード・レインズ。「カサブランカ」(42)で警察署長をしていた人です。スパイの大物なのに、マザコンで嫉妬深く、それでいて気が良い面もあり、ラストはちょっと哀れ。 アリシアとデブリンは酒蔵の鍵をひそかに手に入れて、ワインの瓶に入ったウラニウム鉱石をさぐるのですが、このウラニウム鉱石そのものには意味がなく、関係者には重要な物でも、他人にとっては気にする価値のないもので、ヒッチコック監督のいうところのマクガフィンですね。 瓶を落として割ってしまったり、酒蔵に忍びこんでいるのを見つかりそうになるサスペンス。とっさにキスをして逢びきしているようにごまかすのは、うまい場面です。 「汚名」予告編はこちら 官能的なイングリッド・バーグマンさんがとても美しい。「白い恐怖」(45)の女医さん役も良かったです。こちらの共演は若きグレゴリー・ペックでした。「白い恐怖」といえば、「パラダイン夫人の恋」(47)「見知らぬ乗客」(51)「砂漠の鬼将軍」(51)などに出ていたレオG・キャロルが重要な役で出ています。古い映画を見続けているせいか、よく顔を見かけます。 あの大ヒットしたTVドラマ「0011ナポレオン・ソロ」で諜報機関アンクルのウェーバリー課長をやっていた人ですが、年齢だけでなく俳優歴でもソロやイリヤよりもずっと先輩なんですね。
2013年07月08日
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スナイパー(狙撃者)の映画かと思って見たらそうではなかった。「ラスト・ターゲット」(2010年アメリカ映画)。原題は「THE AMERICAN」。「ジ・アメリカン」、アメリカ人ということですが、舞台がイタリアの静かな田舎町で、その土地でのアメリカ人の主人公は「よそ者」で、この原題にはそういう意味があるようです。 DVDジャケットにはジョージ・クルーニーさんが狙撃ライフルを持った写真が載っていて、てっきりそういうスナイパー映画かと思いました。 内容は足を洗おうとした暗殺者が主人公で、しかし組織はそれを許してくれなかったというものです。映画では組織との関係など、そういう説明はなく、画面から想像で読み取るしかないようで、セリフの少ない静かな作品です。 イタリアの小さな田舎町に身を潜めた暗殺を生業として生きてきたジャック(ジョージ・クルーニー)。 彼は今度の仕事を最後に足を洗おうと思っている。 その仕事とは、ある女性から依頼された狙撃用ライフルの改造。 注文は射程150メートルくらいで、連射ができて、消音器を着ける。弾薬はフルメタルジャケット弾(被甲弾)とホローポイント弾、水銀弾を用意する。 ベースとなる銃はM14。ジャックは消音器は無理だが減音器なら作れると答え、車の修理工場から廃材をもらってきて、それを加工して減音器を作る。 彼は組織の連絡者に「友人を作るな」と忠告されているのですが、町で生活するうちに知人ができ、神父と知り合い、娼婦クララとなじみになる。 ジャックはこの狙撃銃の改造を最後の仕事にして、クララとの平穏な生活を望むのだが、組織がそれを許すほど甘くはなかった、という話です。 「ラスト・ターゲット」予告編はこちらです。 アクション場面は少なく、全体に静かなムードがただよう。 舞台が美しいイタリアの田舎町。アメリカ映画なのにヨーロッパ映画の雰囲気で、ちょっと1970年前後のフランスやイタリア映画を思わせます。 これで音楽がエンニオ・モリコーネあたりだったら、もっと雰囲気が出ていたかもしれない。 映画の中で、バーのテレビに「ウエスタン」の映像が映し出され、店主が「セルジオ・レオーネ監督の作品だ」と言うのは何を意味するのか? DVD収録のメイキングで、監督(アントン・コービン)が、「この映画は西部劇を意識して撮った」と言っています。 人を殺す稼業で生きてきた主人公が、ある静かな町に落ち着き、そこで神父と出会い、娼婦に惚れる。この女といっしょに人生を過ごしてもいいかと思って、ガンマン生活から足を洗い、生き方を変える決心をするが・・・という設定はまさに西部劇。 暗殺者として生きてきた男の「贖罪」の物語で、過去のおこないの責任から結局は逃れられなかった、という物語で。これは良い映画でした。 人を殺す稼業、暗殺者、スナイパーなどいつまでもやっているものではない、ということで、45年以上も暗殺者をやっている漫画のゴルゴ13は何も考えないアホだということですかね?
2013年06月03日
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暗号名ジャッカル。ブロンド、長身、射撃の腕は超一流。 フレデリック・フォーサイスのサスペンス小説「ジャッカルの日」(篠原 慎 訳)が角川書店から単行本(定価1000円)で発売されたのはいつだったでしょうか? 映画が公開されたのが1973年9月だから、それ以前の1972年だったか? カバーが青い色で、ドゴール大統領の黒いシルエットの頭部分に白い穴が開いているデザイン。この本は現在はなくなってしまって、その後、赤い色の表紙カバーになった文庫本が出て、これも現在はなくなってしまいました。 いま、書店にあるのは、同文庫のカバーを取り替えたものですね。何を表しているのかよくわからないつまらない表紙デザインになってしまった。 1970年から80年ころにベストセラー作家として人気があったフレデリック・フォーサイスさんのサスペンス小説。 その代表作が「ジャッカルの日」で、つぎが「オデッサ・ファイル」。「ジャッカルの日」は映画化されて、監督はフレッド・ジンネマン。1973年の英国映画です。 主人公の殺し屋ジャッカルをエドワード・フォックス。彼を追跡するルベル警視をマイケル(ミシェル)・ロンズデールが演じています。 アルジェリアを放棄したドゴール大統領の弱腰に我慢ならず、暗殺を計画する秘密軍事組織OASがプロの殺し屋ジャッカルを雇います。 姿を変えてフランスへ潜入したジャッカルという正体不明の暗殺者を追跡する官憲の緊迫感ある捜査の描写は一級品の娯楽映画になっています。 近年になってこの映画を退屈だと評する若い人が出始めているのは、私には理解の出来ないことです。映画鑑賞法が私のような古い人間とはちがっているのかもしれない、そんな世の中になったようです。 南フランスの田舎にある静かなホテルでジャッカルはシャロンニエール男爵夫人をナンパする。その後、自動車事故を起こしたジャッカルはひとまず身を隠すために彼女の館へ向かうのですが、その彼女に正体を知られてしまって殺害する。 この殺人がプロの殺し屋としての大失敗になって、それまではルベル警視たち官権は秘密捜査として追跡をしていたのが、「殺人事件の容疑者」としてテレビで大々的にジャッカルの顔写真を公開するのです。 8月25日のパリ解放記念日。そのセレモニー席上でドゴール大統領を狙撃すべくジャッカルは傷痍軍人に変装して非常線をくぐり抜け、会場を見下ろすアパートの部屋に身を潜ませる。 ジャッカルは標的の頭部に向けて狙撃銃を発射するのだが、彼には思いも寄らぬできごとが起こって・・・。 この手の娯楽作品では間一髪その犯行を阻止するのが定番だが、ここでは狙撃が実行されてしまう。このサスペンス描写は超一級品です。 フレデリック・フォーサイスの原作小説を生かしたドキュメンタリータッチの演出と、緻密な追う者と追われる者の追跡戦。 背景となるヨーロッパの国々の景観がすばらしく、俳優たちも最高だ。 「スナイパー」の映画としては、ぜったいに欠かせない「ジャッカルの日」です。
2013年05月30日
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1963年の映画「シャレード」。監督スタンリー・ドーネン、音楽ヘンリー・マンシーニ。オードリー・ヘップバーン主演のミステリ・サスペンス・ロマンス映画です。 ヘップバーンさんのために作られた作品といえるようで、衣装(デザインはジバンシィ)をとっかえひっかえ替えて、ファッションショーのようなのは当時のハリウッド娯楽映画らしいところか。 昨日のジェームズ・コバーンさんの写真は「シャレード」のもので、悪役の一人テックスという男の役。主演のケイリー・グラントは59歳で、脇役のジェームズ・コバーンさんが35歳、ジョージ・ケネディが38歳、ウォルター・マッソーが43歳。 このあたりの作品から俳優たちの世代交代が見られるようです。 第二次大戦中に横領し隠匿した25万ドルのゆくえをめぐって、まずヒロインのレジーナ(ヘップバーン)のご亭主が列車から転落して殺される。 その葬式の場に怪しい男たちが現れる。 夫が持っていたという名義が異なる何通ものパスポートを警察で見せられ、彼女の周囲には夫が戦争で欧州にいた頃の仲間たちがつきまとい、25万ドルをどこへやったと脅迫する(ジェームズ・コバーンがその一人)。 レジーナがスキー場で知り合ったピーター・ジョシュア(ケイリー・グラント)というプレイボーイ風の男がなにかと力になってくれるが、彼にも怪しいところがあり、レジーナは誰も信じられなくなってゆく。夫が隠匿したという25万ドルはどこにあるのか? 一昨日の「大脱走」で、1963年の外国映画興行成績ベスト10を書きましたが、「シャレード」は同年の第7位。 ヘンリー・マンシーニの流麗な主題曲も大ヒットし、今では古典的な映画音楽の名曲になっています。 そんな「シャレード」を2002年にジョナサン・デミ監督がリメイクしています。 こちらはケイリー・グラントの役をマーク・ウォルバーグさん、オードリー・ヘップバーンのレジーナ役をサンディ・ニュートンさんが演じている。 リメイク版「シャレード」(2002)の予告編はこちら。 1963年のオリジナルは、原題が「CHARADE」。 シャレードとは「ジェスチャーゲーム」のことらしいが、「見え透いたマネごと」や「偽装」という意味もあるようで、ケイリー・グラントのピーター・ジョシュアの正体が一転二転して謎の人物になってゆくあたりや、レジーナの殺された夫の謎めいた過去など、なるほどというタイトルです 2002年のリメイク版は「THE TRUTH ABOUT CHARLIE」で、「チャーリーについての事実」といったところでしょうか? チャーリー(チャールズ)とはヒロインの殺された亭主の名前です。 このリメイク版を1963年オリジナル版と比べてこきおろす人がいますが、いったい何を見ているのか?と思いますね。 サスペンスも秀逸だし、パリの風景(とくに雨に濡れた街が)もうまく生かされています。そしてヒロインのレジーナ役のサンディ・ニュートンさんの表情がとても素敵でチャーミングです。 オリジナル版ではピーター・ジョシュアという名前だったのが、こちらはジョシュア・ピーターズと逆になっていて、マーク・ウォルバーグさんが感じよく演じています。
2013年04月28日
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以前に戦争映画として書いた「大脱走」を、今度はサスペンス映画のジャンルとして。 1963年の外国映画興行成績です。金額は配給収入。1位 「史上最大の作戦」 8億9586万円 2位 「アラビアのロレンス」 5億9527万 3位 「大脱走」 5億2722万 4位 「クレオパトラ」 4億2678万 5位 「北京の55日」 3億3933万 6位 「地下室のメロディー」 2億4681万 7位 「シャレード」 2億2650万 8位 「隊長ブーリバ」 2億2478万 9位 「鳥」 2億501万 10位 「チコと鮫」 2億187万円 第3位の「大脱走」は1963年アメリカ映画。 製作・監督ジョン・スタージェス。製作も兼ねているジョン・スタージェス監督が西部劇「荒野の七人」(60)の出演者たちに声をかけて撮った、脱獄サスペンスアクション戦争映画です。 本編173分もある長編で、1971年10月1日、8日の前後編2回に分けてテレビの「ゴールデン洋画劇場」で放送されたのが、当時大きな話題になりました。この時がテレビ初放送で、私が初めて「大脱走」を見たのがこのテレビ放送です。 昨日20世紀フォックスさんのスタジオ・クラシック・プレミアム・クラブからミニマガジン「シネマスコープ」第12号が送られて来ました。特集は「大脱走」。4月24日にブルーレイソフトが発売された案内で、チラシがたくさん同封されています。 第二次大戦末期の1944年3月にドイツ空軍が管理する捕虜収容所から連合軍捕虜がトンネルを掘って脱走する。予定は250人(史実では220人)だったが途中で発見されて76人が逃げます。 無事に逃げおおせたのは3人。映画ではジェームズ・コバーン(自転車で)、チャールズ・ブロンソンとジョン・レイトン(手こぎボートで川を下って海へ)。 あとは捕らえられて収容所に連れ戻されたり、50人がゲシュタポに捕まって処刑されました。 現在から見るとオールスター出演のにぎやかな顔ぶれです。 スティーブ・マックィーン、ブロンソン、ジェームズ・コバーンさんは「荒野の七人」の出演者です。 戦時下の捕虜収容所。ドイツ空軍の管理なので待遇も良く、虐待されることもない。衣食住も娯楽設備も完備され、戦争が終わるまでおとなしくしていれば安全が保証されています。 それなのに、彼ら捕虜たちは脱走を計画し、トンネルをせっせと掘る。「たとえ殺されても、こんな所にいてやるものか!」という不撓不屈の精神と勇気を持った男たちの物語。「誇り高き男たち」といったところだろうか。 実話をもとにした映画で、1963年の公開は、「シネマスコープ」に書かれていたのですが、1944年3月の脱走決行日から19年しか経っていない。わずか19年前の出来事を描いているのです。
2013年04月26日
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1967年度キネマ旬報の外国映画ベストテンです。第1位 「アルジェの戦い」 監督ジロ・ポンテコルヴォ 第2位 「欲望」 監督ミケランジェロ・アントニオーニ 第3位 「戦争は終った」 監督アラン・レネ 第4位 「わが命つきるとも」 監督フレッド・ジンネマン 第5位 「気狂いピエロ」 監督ジャン・リュック・ゴダール 第6位 「ふたりだけの窓」 監督ジョン・ボウルティング 第7位 「仮面ペルソナ」 監督イングマール・ベルイマン 第8位 「夜の大捜査線」 監督ノーマン・ジュイソン 第9位 「戦争と平和 完結編」 監督セルゲイ・ボンダルチュク 第10位 「真実の瞬間」 監督フランチェスコ・ロージ 映画には、その公開時に大ヒットし、あるいは高評価を得て各賞を受賞したとしても、年月が経つと忘れられてしまう作品があるようです。長い年月にわたって、人々の心から忘れられない作品こそ名作といえるものだと思います。 この1967年にキネ旬が選出したベストテンの中で、今でも人々の思い出に残り、語り続けられる名作といえるものは、第8位の「夜の大捜査線」くらいではないでしょうか。 1967年のアメリカ映画「夜の大捜査線」。原題は「IN THE HEAT OF THE NIGHT」、「夜の熱気の中で」です。 人種差別の激しいアメリカ南部ミシシッピ州の小さな町で、うだるような暑い夜に殺人事件が起きる。 深夜の駅で列車を待っていた黒人男性が容疑者として署に連行される。その男は北部フィラデルフィア市警殺人課の敏腕刑事ヴァージル・ティッブス(シドニー・ポワティエ)。 身元照会で疑いは晴れますが、そうでなければ(警察官でなければ)殺人容疑者にでっちあげられていたかもしれない、そのような南部の黒人差別が背景にあります。 大都会の殺人課敏腕刑事と聞いた南部の田舎警察署長(ロッド・スタイガー)は殺人事件の経験に乏しいために彼に協力を要請することになる(黒人の助けを借りることに気乗りしないが、やむをえず)。 被害者の財布を持っていた男が州境での追跡のすえに逮捕され、署長は彼が犯人だと決めつけるが、ティッブス刑事は無実を主張します。 殺人事件の捜査と、南部の人種偏見を描いた刑事映画です。 これまでに刑事映画はたくさんあるけれど、傑作と言えるのは翌年の「ブリット」(68)と、「ダーティハリー」、「フレンチ・コネクション」(共に1971年)の3本、それと本作「夜の大捜査線」が代表的なもので、この1970年前後の時代に最高峰をきわめてしまったために、これらを越える刑事映画はいまだに現れていないようです。 監督ノーマン・ジュイソン、脚本スターリング・シリファント、音楽クインシー・ジョーンズ、主題歌レイ・チャールズ、錚々たる顔ぶれで、一流のスタッフです。 出演はシドニー・ポワティエ(ティッブス刑事)、ロッド・スタイガー(警察署長)、リー・グラント(殺人被害者の妻)、ウォーレン・オーツ(サム・ウッド巡査)、スコット・ウィルソン(財布を盗んで殺人容疑で逮捕された男)・・・・これで傑作ができないはずがないですね。 南部の田舎町警察の署長を演じたロッド・スタイガーさんがアカデミー主演男優賞を受賞しました。黒人に偏見を持っていたのですが、ティッブス刑事といっしょに行動することで少しずつ変わってゆく。ただの武骨な男でなく、強い信念を持っていて、南部の黒人差別者のなかで「お前らといっしょにするな、俺を見損なうな!」という公平な見方ができる強さがあります。 ラスト場面で、都会に帰る列車に乗り込むティッブス刑事の荷物を持ってやり、「元気でな」と握手をかわす。定番といえばそれまでだけれど、こういうお互いを認め合う関係は良いものです。
2013年03月02日
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ずっと前から見たいと思っていた1966年のイギリス映画「さらばベルリンの灯」をDVDで鑑賞しました。 原題は「THE QUILLER MEMORANDUM」。「クイラーの覚書」といったところですが、マット・モンローさんが歌って大ヒットした主題歌(音楽ジョン・バリー)のタイトルは「Wednesday's Child」で、「水曜日の子供」です。この曲は映画中でも使われていて、ラジオから流れ、「マット・モンローの新曲でした」とか言っています。 この映画が日本公開された1967年には、同じ英国映画「007は二度死ぬ」があって、荒唐無稽SF的スパイアクションである「二度死ぬ」の対極にあるかのような「さらばベルリンの灯」。 恋愛映画のような邦題だという人がいますが、「ベルリンの灯」の語感からは、背景には哀愁が濃厚に漂い、ベルリンとくればやはり戦後東西冷戦時代の緊張感いっぱいの、スパイが暗躍するイメージが強いですね。 地味なスパイ映画です。銃撃戦もないし、秘密兵器も水着のお姉さんも出てこない。 当時はスパイ物のブームだったころで、テレビや映画では007の同類、亜流が各種いろいろあった時代。そんなブームの中で、あえてというか意識して、徹底的にアクションを除外し、現実のスパイはこうだぞ、といった作品に仕上げたのではないか? 西ベルリンを舞台にネオ・ナチ組織のアジトを探るために英国情報部員クイラー(アメリカ人ではないか)がネオ・ナチ組織に接近する。 捕らえられて薬物を注射され、逆に情報部のベルリン支部の機密を尋問される。最後まで自白を拒否して耐えたクイラーは、いったん解放される(殺されるはずだったのになぜか?、生かして帰すことで泳がす罠か?)が、アジトを突き止めた彼はふたたび単独で潜入する。そこには彼が親しくなった小学校教師インゲ(センタ・バーガーさん)が捕らえられていた。彼女の命とひきかえに情報を教えろと脅迫されることになる。 けっして痛快なサスペンス映画ではないし、人によれば退屈かもしれません。 主演の情報部員クイラーを演じるのはジョージ・シーガルさん。タフガイでもないし、平凡な勤め人タイプの、一見やる気のない顔つきをした人物。007のボンドとはまったく逆のタイプです。 本当の忍者が黒装束やミニの衣装に網タイツではないように、本当のスパイも目立たない、どこにでもいるようなサラリーマンみたいな人たちなのでしょう。 ネオ・ナチ組織が一網打尽となり、事件は一件落着。しかし逮捕されたなかに「女性」が含まれていなかったという。それでは彼女はどうやって囚われの身から逃げることができたのか? 本人を学校に訪ねると。「逃がしてくれた」という。彼女は二重スパイだったのか?、最後まで正体がわからないままです。 センタ・バーガーさんはオーストリア出身の女優。この時期の「0011ナポレオン・ソロ消された顔」(1965年劇場版)や「サイレンサー待伏部隊」(67)などスパイ映画によく似合う?美しい人でしたね。
2013年02月28日
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「リスボン特急」(1972年フランス映画。監督ジャン・ピエールメルヴィル)の、昨年11月だったかに「ザ・シネマ」という外国映画専門チャンネルで放送された時に録画したものを見ました。 現在発売されているDVDの字幕で、アラン・ドロンのコールマン刑事、が「警察署長」となっているのが気になって、このTV放送版ではどうなっているのかを確認するのが目的です。 字幕の翻訳はDVDのものと同じでした。でも「警察署長」ではなくて「警視」に改められていました。あきらかにおかしな翻訳の「警察署長」を訂正したのでは? 警察署内で部下が上司に向かって「警察署長」と呼ぶわけがないし、肩書きとしてもいちいち「警察署長」と呼ぶはずがない。 階級的に「署長」は「警視」だとすれば、この場合は「警視」とするほうが適当でしょう。 英語だと「警視」はインスペクターで、セリフを注意して聞いていればわかるのですが、フランス映画だとまるでチンプンカンプンです。 英語では、「Lieutenant(警部補)」 、 「Captain(警部)」 、 「Deputy Inspector(警視)」、「Inspector(警視正)」 という順序でしょうか。 アメリカ映画の場合はこれでいいと思いますが、フランス映画ではまるでわかりません。この「リスボン特急」のアラン・ドロンの場合は署長かどうかもわからず、「警視」よりも「警部」の方が最適なのではないかと思います。 アラン・ドロンのコールマン警部(警視?)と、親友関係にあるナイトクラブの経営者シモン(リチャード・クレンナ)。刑事と犯罪者に分かれて、ラストは悲劇的なものです。 この結末は映画としては当然のもので、犯罪が成功してはならない、犯罪者は幸福な生涯を送ってはならない、という決まり事があるのではないだろうか。 パリ発リスボン行きの特急列車で、組織が麻薬を運ぶ。 シモンが疾走する列車の上空を飛ぶヘリコプターからワイヤロープを下ろして乗り移ります。 列車が速度を落とす20分間の犯行で、シモンが運び屋から麻薬の入ったスーツケースを奪って、ふたたびヘリコプターに戻る。 このシーンのヘリコプターと列車がミニチュア模型だというのがよく指摘されます。 そのようなことはメルヴィル監督やスタッフは充分に承知していることではないか? 映像として意味が観客に伝われば、そのようなことにこだわりを持たなかったのではないかと思います。 現在だったらヘリコも特急列車もCGで作ることができるのかもしれないけれど、当時は実物を使って撮影するか模型を使うしかない。 じっさいにヘリコプターと列車を使って撮影するには費用がかかるし、監督はその必要なしとしたのかもしれないですね。
2013年01月30日
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ジャン・ピエール・メルヴィル監督のフレンチ・フィルム・ノワール「リスボン特急」(1972)をDVDで鑑賞しました。 先日見た「いぬ」(63)の方が自分的には好みですが、この「リスボン特急」は総天然色映画であり、全体に青を強くしたクールな色調です。 冒頭の銀行強盗のシーン。海沿いの無機質なマンションの建物。荒れた海の波と吹きつける雨。そんな薄暗い人気のない悪天候の中を一台の車がゆっくりと銀行に向かう。運転手を残して男が3人、雨風のなかを一人ずつ車から降りて銀行に入っていく。 全体に冷え冷えとした感触の映画で、この銀行強盗のシーンは語りぐさにもなっているくらい良くできています。 原題は「UN FLIC」で、「刑事」とか「デカ」という意味か?。アラン・ドロンは犯罪者の役を多く演じましたが、刑事の役はこれが初めてだそうです。「リスボン特急」の邦題は、映画の見せ場である麻薬横取りの場面がパリ発リスボン行きの特急列車内ということからきているようで、ストーリー的に見て意味を持つタイトルではありません。 ただの「刑事」という邦題だとありふれた感じがするし、この場合は「リスボン特急」でも悪くはないですね。 嵐の波が打ち付ける海辺の銀行に強盗に入ったシモン(リチャード・クレンナ)とその3人の仲間たち。 この強盗事件の捜査にあたるのがシモンの親友でもあるコールマン警部(字幕は警察署長。アラン・ドロン)で、実はシモンの彼女(カトリーヌ・ドヌーヴ)といい仲になっている。 組織がパリ発リスボン行の特急列車で麻薬を運ぶとの情報を密告屋から入手したコールマンは監視体制を敷く。しかし同じ情報をつかんでいたシモンが麻薬の奪取を計画して、実行する。刑事と犯罪者、親友同士である2人に対決の時が訪れる。 アラン・ドロンは私の好きな俳優ですが、見ていると決して演技が上手とはいえないようです。 共演のカトリーヌ・ドヌーブは当時、「スクリーン」や「ロードショー」など映画雑誌の表紙やグラビアを飾った女優さんです。私には魅力があるとは思えず、確かにお人形さんのように美しいけど、ただそれだけといった感じがして、好みのタイプではありません。 字幕ではドロンのことを「警察署長」となっていて、「署長」で良いのにご丁寧にすべて「警察署長」。署内でも行きつけのバーでも「警察署長」と呼ばれる。「署長」、「署長さん」で充分なのに。そもそも警察署長なのかどうかもわからず、「警部」のほうが適しているのかもしれないと思う。 字幕が日本語の会話として不自然で、この下手くそな翻訳はなんとかならないものか。 ドロンに麻薬輸送の情報を売る「情報屋」のきれいなおネエさんが出ます。 映画を公開時に劇場で見たときには、これが男だとはわからなかった(笑)、そもそもこの世にこのような男がいることすら知りませんでした。 ガセネタをつかませたと怒るドロンに張り倒された彼女(?)が署から追い出されるシーンの、恨めしそうな悲しそうな視線。 この映画は全体にセリフが少なく、表情で見せているようです。 ドロンとリチャード・クレンナ(ナイトクラブ経営者、強盗のボス)とは親友だという設定ですが、それを説明するシーンもセリフもない。表情だけでそれをわからせようとしているようです。 二人が友人であることは映画を観ていれば分かるのですが、しかし、友情で結ばれていると思われる二人が、なぜ刑事とギャングという正反対の立場に置かれているのか、そういう説明はいっさいされません。 女性(ドヌーヴ)を巡る三角関係や、ラストの銃撃も、なぜシモン(クレンナ)が丸腰でコールマン警部にわざと撃たれたのか?、よくわからない。 二人が親友同士になったいきさつもまったく不明。アルジェリアかインドシナの戦争でいっしょだった戦友でもあるのだろうか?、そういう説明のシーンがあればよかったと思います。 このようなクールな雰囲気を持つ犯罪映画は、近年はなくなったので、これは貴重な私のDVDコレクションでもあります。「リスボン特急」明日につづきます。
2013年01月29日
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私が映画を見るようになった1968年から1970年頃にかけては、アメリカ映画やイギリス映画だけでなく、フランス映画、イタリア映画、そしてスウェーデンや西ドイツ、ソ連、チェコスロバキア(現在はチェコ共和国とスロバキア共和国)などの映画が各種たくさん公開されていました。 そのような映画鑑賞の環境において、好んで見ていたのがイタリア映画とフランス映画です。 フランスの暗黒街映画、フレンチ・フィルム・ノワールというそうですが、フランスのギャング映画、犯罪映画のこと。 ジャン・ピエール・メルヴィル監督の「仁義」(70)と「リスボン特急」(72)。 ジャン・エルマン監督の「さらば友よ」(68)と「ジェフ」(69)。 アンリ・ヴェルヌイユ監督の「シシリアン」(69)、「華麗なる大泥棒」(71)。(同監督には「地下室のメロディー」という有名作品があるが、1963年なので世代がちがいます)。 ロベール・アンリコ監督の「オー!」(68) ジョルジュ・ロートネル監督の「牝猫と現金(げんなま)」(68) いま考えてみると、もっと見たような気がするけれど、案外本数的には多くない。記憶にあるヨーロッパ映画の光景は、犯罪映画のものだけではなかったのでしょう。 ジャン・ピエール・メルヴィル監督の代表作の「いぬ」(63)。 原題は「Le Doulos」。「帽子」のことらしく、それを隠語では「いぬ」と言うそうな。警察への密告者の意味で、犯罪者仲間ではもっとも軽蔑、唾棄すべき奴、死を以て制裁されるべき奴、のこと。 その傑作といわれる「いぬ」を初めてDVDで鑑賞しました。 トレンチコートを着た男が、鉄橋の高架下の歩道を歩いてくる。頭上を何本もの線路が通っているらしく、横断するのにずいぶん長くかかる高架下です。 通り抜けた土手の上を何本もの列車が走ってゆく。 一軒の家に入ってゆく男。彼は出所したばかりのモーリス(セルジュ・レジアニ)で、故買屋のジルベールを訪ねて来た。 いろいろ親切にしてくれるジルベールが振り向いたところを、いきなり射殺するモーリス。 モーリスは仲間といっしょに、老人一人が留守居をしている屋敷に押し入り、金庫破りをするが、そこへ警察が現れ、仲間は射殺され、モーリスは警官を撃って、自分も傷ついて逃走する。 なぜ現場に警察が現れたのか?、モーリスは金庫破りの道具を調達してもらったシリアン(ジャン・ポールベルモンド)が密告者(いぬ)ではないかと疑う。 予告編はこちらです。 フランスの暗黒街映画は、その大きな特徴として、「男同士の友情と裏切り」をテーマにしている作品が多いこと。 彼らは犯罪において、それを決行しながら、結局は破滅への道を進んでゆく。その過程における「男同士の友情と裏切り」が描かれます。 男女間の愛情が描かれることは少ないようで、もっぱら男と男の心の交流が描かれる。ラストは悲劇的だとしても、それが男性観客の琴線に触れるのだと思います。この「いぬ」も例外ではないですね。 モノクロ映画ですが、その光と影のコントラストが美しく、この暗い世界は魅力的です。 背景となる時代が1960年代というのも、どこかノスタルジックです。 ただ、この「いぬ」は人物関係が入り組んでいて、人物の名前も混乱し、話が理解しづらい。 一度見て、それほど面白くなかった、と感じても、翌日にはもう一度見ようかと思うような、そんな不思議な作品です。
2013年01月27日
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ニコラス・ケイジさんは好きな俳優の一人です。 そんなわけで「デビルクエスト」(2011)をブルーレイで鑑賞。 ニコラス・ケイジさんが十字軍の騎士を演じていて、その遠征で女子供まで殺すのに嫌気がさして相棒と一緒に帰国します。 国に帰ると、彼らを待っていたのはペストの蔓延と脱走の罪。 二人は、立ち寄った町で、ペストを広めた疑いのある魔女を裁判にかけるために修道院まで護送するという仕事を引き受けることになります。 十字軍と魔女裁判が同じ時代だったのかは知りませんが、十字軍帰りの屈強な二人の騎士が魔女容疑をかけられた女性を護送する、その道中の冒険と、目的地でのできごとが描かれるオカルト・アクション映画です。 護送隊に犠牲者を出しながらも一行は目的地の修道院にたどり着くが、そこはペストで全滅していた。裁判をおこなうことができなくなったために、同行していた神父は修道院にあった書物「ソロモンの鍵」で魔女を退治しようとするが・・・。 彼らに護送される女性が道中で怪しいそぶりを見せるために、本当に魔女なのか?、という興味でラストまで引っ張ります。 この世に魔女など存在しないという話ではなくて、映画の冒頭で魔女を登場させることで魔女の実在をしめし、彼女が魔女か否か、という物語が成立しています。 山中と森、霧の夜、など背景となる舞台は陰鬱な暗い雰囲気が漂う。 ニコラス・ケイジさんはもう少しひょうきんな感じを出してもよいか、と思いますが、物語が「魔女裁判をするために修道院のある町へ護送する」というものだから、暗い話にしかならなくて当然か。 原題は「SEASON OF THE WITCH」で、「魔女の季節(時期、期間)」です。 魔女がいると信じられた時代。「デビルクエスト」は邦題で、日本題名をカタカナにするなよ、と思うけれど、このセンスのない邦題は何なんだと。「悪魔冒険の旅」、「悪魔探索」、何のこっちゃ?、です。 ストーリーは魔女だと思ったものが、もっと大物だった、ということで、本編95分だから、気軽に見られる、うまくまとまった映画になっています。 そのためか、お手軽感のあるB級作品みたいな感じもする。このような歴史を題材にした娯楽作品は好きなので退屈はしなかったけれど、オススメというわけにはいかない? ペスト(黒死病)の蔓延は、当時のヨーロッパ社会の不衛生な環境が一因だったそうですね。下水道がなく、住居にはトイレがないので糞尿を窓から街路に捨てたとか。
2013年01月17日
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いまハヤカワ文庫の「ミレニアム2 火と戯れる女」の上巻を読んでいます。 著者スティーグ・ラーソン、翻訳ヘレンハルメ美穂、岩澤雅利。 約500ページ余の文庫本で、手に持った時のボリューム感がなんとも気持ちがいい(笑) 数年前にベストセラーになったスウェーデンのミステリ小説です。 今年の2月に、その全3部作の第1部「ドラゴン・タトゥーの女」のアメリカでの映画化作品が公開されたこともあって、また昨年10月に文庫化されたこともあり、大きな話題になりました。 書店の平台にうずたかく並べられていた文庫本を見かけた人も多いのではないでしょうか? そのアメリカ映画「ドラゴン・タトゥーの女」(2011)のDVDが今月16日に低価格化されて発売されました。Y電機さんでは990円。他店でも3枚3000円セールなどで売られていますね。 監督デヴィッド・フィンチャー、出演ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー。 小説の映画化は本とのイメージがちがってガッカリすることが多いものですが、これは良かったです。さすがに上下巻約850ページを158分の映画にまとめるために登場人物がかなり整理されています。でも原作のイメージを壊すことなく、うまく映像化している。 ジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィスト(ダニエル・クレイグ)は、経済界の大物ヴェンネルストレムの不正をスクープしたのだが、名誉毀損で有罪判決を受けてしまう。 発行責任者として属している雑誌「ミレニアム」を辞め、失意にある彼に奇妙な仕事の依頼がまいこむ。 ヴェンネルストレムとはライバル関係にある往年の大実業家ヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)が40年前に失踪した、兄の孫にあたる当時16才の少女ハリエットの行方を突き止めて欲しいという。 ヘンリックはハリエットが一族の誰かに殺されたに違いないと思っていて、その失踪の謎を解明してくれれば、ヴェンネルストレムの悪事の証拠を提供すると。 警察でも事件を解決できなかった40年前の謎に挑むミカエル・ブルムクヴィスト。 彼は、天才的ハッカーであり天才的リサーチャーでもあるリスペット・サランデル(ルーニー・マーラ)の手を借りて、ついに事件を解決するが、その陰惨な真相は・・・。 原作小説は、第1部「ドラゴン・タトゥーの女」、第2部「火と戯れる女」、第3部「眠れる女と狂卓の騎士」。それぞれ上下巻で全6冊です。 私は読むのが遅いので、やっと第2部の上巻を330ページまで読んだところ。 この「ミレニアム」のテーマは「女を憎む男たち」。女性を差別する下司(げす)な男ども。女性に対する差別や暴力です。 現代の日本でも、このテーマは大きな日常的問題になっています。 小説も映画でも、ミカエル・ブルムクヴィストとリスペット・サランデルの2人が主人公ですが、とくに異色なヒロインであるリスペットの、なんと大きな魅力。 映画の中で彼女は「男の暴力と虐待」から逃げたハリエットに対して「あのバカ女」と言っている。なぜ逃げずに反撃しないのか、なぜ戦おうとしないのか、リスペットだったら「相手をぶっ殺している」ところです。 リスペットから見れば、男に虐待されっぱなしの女を見ると歯がゆくてならないのでしょう。闘う女性リスペットが最高にカッコ良い。 映画「ドラゴン・タトゥーの女」は、おもしろいミステリ・サスペンスに仕上げられていました。寒々しい北欧スウェーデンが舞台というのもアメリカ映画っぽくなくて良かったです。 第2部、第3部の映画化も決定しているそうです。
2012年11月19日
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角川文庫から「将軍たちの夜」という戦時下のヨーロッパを舞台にしたミステリ小説が出ています。 著者はハンス・ヘルムート・キルスト。翻訳は安岡万里、美村七海さん。定価は940円。 文庫なのに高価な本です。すごく興味があって読んでみたいのに、でも買う気がしません。 その理由は表紙カバーのイラスト。テレビアニメの「ガンダム」を思わせるマンガ調の絵が本の格調を奪っていて、低年齢層の読者にうけようとする販売方針かもしれないけれど、これでは作品をおとしめ、作者や翻訳者に対しても失礼ではないか、と思う。 このような安っぽい装丁では、いくら内容が良い本でも、買おうにも買えない。「将軍たちの夜」は1967年に映画化され、監督がアナトール・リトヴァク。出演がピーター・オトゥール(写真)、オマー・シャリフさんなど。ジョアンナ・ペティットという懐かしい女優さんが出ています。 1942年、ドイツ軍占領下のワルシャワを舞台に物語が始まります。 ある娼婦が惨殺され、目撃者によると「犯人の男のズボンに赤い線が入っていた」。これは犯人がドイツの将軍だということです。 探偵役はドイツ軍情報部の少佐(オマー・シャリフ)。 そして三人の容疑者である将軍を、ピーター・オトゥール、ドナルド・プレザンス、チャールズ・グレイが演じていて、後者の二人は共に007のブロフェルドの役をやってるのが偶然ですが、おもしろいですね。 多くの人が死んでいる戦争中に一人の娼婦が殺され、その犯人を裁くことに熱中するドイツ情報部の少佐。「なぜ、そんなにこだわるのだ?」との問いに「たとえ戦争中でも犯罪を看過できない」と答える。 1942年のワルシャワ、1944年のパリでヒトラー暗殺計画に熱中する将軍たちを描きながら、そして戦後20年の1965年のハンブルクへと舞台が移り、同じ犯行がおこなわれる。 映画「将軍たちの夜」予告編はこちらです。 この作品は、戦時下を舞台にしたサスペンス映画です。ピーター・オトゥールさんが美術館でゴッホの自画像を前にしたときの狂気を感じる演技はさすが。 将軍の娘役のジョアンナ・ペティットさんも美しく、登場する俳優たちに存在感があります。冬のワルシャワ(撮影はどこで?)の占領下の重苦しい雰囲気がとてもよく出ています。 アメリカ映画なのに登場人物のほとんどがドイツ軍人ばかりで、殺人事件の捜査と、総統暗殺計画に熱中する将軍たち。将校から一兵卒まで、ドイツ軍の軍装に興味のある人にはたまらない映画ではないでしょうか? アメリカ映画なのに、主人公がドイツ軍人で、登場人物もドイツ軍人ばかりというのは珍しいのでは? この映画は、ずっと昔にテレビの洋画劇場で見て、その面白さが心に残って、ぜひもう一度見たいと思っていたものです。数年前にソニー・ピクチャーズからDVD(990円)が期間限定発売されましたが、現在も売っているかは不明です。 その原作小説の角川文庫。読みたいけれど、あの表紙カバーイラストでは、いらない。 イラストを描いた人にはもちろん責任はありません。出版社の販売方針の問題です。
2012年11月18日
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