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「七人の特命隊 」(1968) AMMAZZALI TUTTI E TORNA SOLO監督 エンツォ・G・カステラッリ製作 エドモンド・アマティ脚本 ティト・カルピ フランチェスコ・スカルダマーリャ エンツォ・G・カステラッリ ジャクリン・R・ヘルナンデス撮影 アレハンドロ・ウジョア音楽 フランチェスコ・デ・マージ出演 チャック・コナーズ、フランコ・チッティ、フランク・ウォルフ レオ・アンチョリス、ケン・ウッド、ヘラクレス・コルテス 本編97分 総天然色 シネマスコープサイズ マカロニ西部劇「七人の特命隊」をレンタルDVDで鑑賞しました。 時は南北戦争の真っ最中(という設定)。南軍のフッド将軍(アルフォンソ・ロハス)はクライド・マッケイ(チャック・コナーズ)という男に特命を与えます。 北軍のサントス砦火薬庫に、軍用金の金貨100万ドルがダイナマイトに偽装して蓄えられていると云い、それをお前が悪党仲間を率いて奪って来いと。将軍の傍らにいる情報将校リンチ大尉(フランク・ウォルフ)は、任務が成功したら「仲間を殺して一人で帰ってくるように」と命令します。 爆発物のプロ、怪力の大男、ナイフ使いのインディアン、根っからの殺し屋の若者、拳銃使い、など5人の札付きの仲間を連れて出発したクライドに、途中からリンチ大尉が加わって7人の男たちが北軍のサントス砦をめざす。 高い崖上にある教会を利用した北軍の砦。なんとか潜入に成功するが、発見されて銃撃戦となります。 敵の軍用金奪取の特命を受けた主人公のクライド・マッケイなる男は何者なのだろうか? 軍人でもなさそうだし、悪党どもの仲間らしいが正体不明です。なぜ軍に雇われて危険な任務を引き受けないとならないのか? この正体不明のキャラと、俳優チャック・コナーズの魅力の薄さのせいか、銃撃戦のアクション場面はそれなりなのに、どうもパッとしない印象の映画になっています。 チャック・コナーズといえばテレビ西部劇「ライフルマン」でおなじみですが、放送されていた当時、子供心にも魅力を感じなくて水曜夜につづけて8時から放送の「ララミー牧場」のほうが断然おもしろかった記憶があります。チャック・コナーズさんは、せいぜいがテレビ俳優で、映画に出ても脇役のほうが適していたのではないか? この「七人の特命隊」は日本では1970年に劇場公開され、金沢ロキシー劇場かパリー菊水だったか定かではないけれどリアルタイムで見ています。当時は先に見た「五人の軍隊」となぜか比較してしまって、「なんだか面白くない映画」だったなーとの印象が残っている。今回は50年後の最鑑賞ですが、おもしろくない印象は同じでした。 裏切者だと最初から予想できる怪しげなリンチ大尉を演じるフランク・ウォルフ。マカロニではよく顔を見る俳優ですが、この人と、爆弾魔のレオ・アンチョリスがよく似た同じような顔立ちであり、これも失敗の一因かもしれない。銃撃戦はエンツォ・G・カステラッリ監督作品らしいアクロバティックな撮影を駆使していて良くできているので、なおさらに残念な一作か? チャック・コナーズがミスキャストなのだろうか?
2021年06月30日
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「白昼の大列車強盗団」 1967 UNO TRENO PER DURANGO製作 ビアンコ・マニーニ監督 マリオ・カイアーノ脚本 マリオ・カイアーノ ドゥッチオ・テッサリ ホセ・グティエレス・マエッソ撮影 エンツォ・バルボーニ音楽 カルロ・ルスティケリ出演 アンソニー・ステファン、マーク・ダモン エンリコ・マリア・サレルノ、ドミニク・ボシェロ、ホセ・ボダロ ロベルト・カマルディエル、アルド・サンブレル 本編95分 カラー シネマスコープサイズ メキシコ革命で混乱する時代。一攫千金を夢見て中米グアテマラへ行ったものの、挫折して帰って来た主人公2人。尾羽打ち枯らしたグリンゴ(アンソニー・ステファン)とルカ(エンリコ・マリア・サレルノ)は馬と銃を安く買いたたかれて、やっとのことで列車に乗り込みます。 その列車にはアメリカの武器商人2人と同行する金髪美女が乗っていて、グリンゴはその金髪美女に一目ぼれする。ところが列車がメキシコの革命軍ならぬ山賊団に襲撃されてしまう。 アメリカの武器商人がディアスに資金提供するために積んでいた金庫が山賊団に奪われ、金髪美女が拉致されてしまいます。 何とか襲撃から命が助かった主人公の二人組は、殺された武器商人のふところから金庫のカギを入手し、グリンゴは金髪美女を奪還するために、ルカは金庫内の大金を手に入れるために、逃走した山賊強盗団の後を追います。山賊に信用されて仲間として入り込んだものの、金庫と美女は山賊の他グループのもとにあると教えられる。 そんな主人公二人組が危機におちいるたびに、自動車に乗った謎のアメリカ人紳士(マーク・ダモン)が現れて助けてくれる。 マカロニウエスタンの第四のスターといわれるアンソニー・ステファンが主演したコメディ調の日本未公開作品です。 アンソニー・ステファンといえばあまり颯爽としない俳優ですが、その頼りなさが愛嬌ある魅力に思えて、私はけっして嫌いではありません。「荒野の棺桶」(同じマリオ・カイアーノ監督)「地獄から来たプロガンマン」「嵐を呼ぶプロファイター」も褒められたものではないかもしれないけど、ちょっと気に入っています。 ですが、この「白昼の大列車強盗団」にはガッカリ。マーク・ダモンとエンリコ・マリア・サレルノが共演していることと、列車強盗団という邦題が面白そうな感じで、期待があったぶん意気消沈、へこんでしまいました。主人公たちが悪党をやっつける銃撃戦があるわけでもなく、いっこうに盛り上がらない展開ぶりです。 アンソニー・ステファンという俳優は頼りないながらも髭面のガンマン役で銃撃戦を演じる方が似合っているのではないか。本作のような、誰かに出し抜かれる人の好い人物役は適していないのでは。 日頃から「列車が出る映画は秀作になる」と思っているですが、この映画では機関車は冒頭にちょっと出るだけで、あとは山賊団を追って金庫と美女を取り返そうとする主人公をコメディ調で描いているだけで、「白昼の大列車強盗団」とは邦題にいつわりあり、です。 冒頭、線路の上を馬で歩いていると後ろから機関車が迫ってきて、線路の両側は切通の崖のために避ける場所がない。迫る機関車の前を2騎が必死に駆けて、やっと切通を抜けて難をのがれるシーン。 山賊団に捕まった2人が首だけ出した状態で土中に埋められ、その眼前周囲を何頭もの馬を駆けさせて金庫のカギを渡せと脅迫されるシーン。このような危険な撮影は、さすがマカロニウエスタンの真骨頂であり、見どころと云えばそれくらいか。 ガッカリな作品です。レンタルDVDでの鑑賞なので腹も立ちませんが、今度からはもっと厳選しないと。
2021年05月27日
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「荒野の女ガンマン ガーター・コルト」(1968) GIARRETTIERA COLT監督 ジャン・ロッコ音楽 ジョヴァンニ・フスコ出演 ニコレッタ・マキャヴェリ、ヨルゴ・ボヤジス クラウディオ・カマソ、ウォルター・バーンズ マリサ・ソリナス、ガズパーレ・ゾラ 本編86分 カラー ビスタサイズ 1867年頃のメキシコ。フランス軍と抵抗組織が争い、治安が悪化するなか武器の密売が横行していた。密売組織をつぶす特命をうけたフランス軍中尉ジャン(ガスパーレ・ゾラ)は革命軍に捕えられてしまう。なんとか逃げ出したジャンは通りかかった駅馬車に助けられるが、その馬車が無法者ロッソ(クラウディオ・カマソ)に襲われる。その時、乗客の麗しいドレス姿の婦人(ニコレッタ・マキャヴェリ)があざやかなガンさばきで悪党のロッソを追い払うのだった。 美女がドレスの下の太腿に隠した拳銃を抜いて悪党を撃ち倒す映画、ときけば関心を抱いてしまうのだけれども、そんな不純な期待は微塵に砕かれてしまいます。 旧作55円のレンタルDVDでの鑑賞なので腹も立たないけれど、これが劇場料金を払って見ていたとしたら、「金を返せ!」と云いたくなるのではないか。 これまで数多くの映画を見て来たけれども、こんなに下手くそなのは初めてです。 ふつうだったら、悪党には彼らなりの目的があって、そのために行動するし、主人公も同様に目的があって、映画を見る者は意識しないでも彼らの行動に沿って見ているはずです。 ところが、この映画にはそれがない。いちおうは武器密売買の阻止という目的があるようだが、悪党も主人公も、その目的などそっちのけで、彼らはそれぞれかってな方を向いて、なんの脈絡も関連もなく、ストーリー展開とは関係がない無意味な行動をする。彼らが何をしようとしているのか不明で、それが本編86分間もずっと続くのだから、たまったものではありません。 登場人物の演技も演技以下のシロウト同然のものだし、監督がいるとしたら(いるだろうけど)、映画の演出と作り方を勉強してから出直せと云いたくなるくらいです。 1968年のイタリア映画だそうだが、これを西部劇とはいえないのは当然だし、マカロニウエスタンともいえない、それ以下の、映画ともいえない、ただの退屈な場面をつないだだけのもの。 映画ファンは、けっして映画をけなすものではない、どんなにまずい作品でも、一つでも良いところをさがしなさい、と故淀川先生に教わったけれど、あえて良いところをあげれば、ヒロインのチラリと見える太腿ぐらいか?
2020年07月06日
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「荒野のドラゴン」(1973) IL MIO NOME E SHANGHAI JOE製作 レナート・アジョリーニ 、ロベルト・ベッシ監督 マリオ・カイアーノ脚本 カルロ・A・アルフィエリ マリオ・カイアーノ 、T・F・カーテク撮影 グリエルモ・モンコーリ音楽 ブルーノ・ニコライ出演 チェン・リー、ピエロ・ルリ、カーラ・ロマネリ クラウス・キンスキー、ミクリヤ・カツトシ、ロバート・ハンダー 本編98分 カラー シネマスコープサイズ マカロニウエスタン「荒野のドラゴン」をレンタルDVDで鑑賞しました。 日本公開は1974年5月。前年12月に「スコルピオ」と同時上映された「燃えよドラゴン」が誰もが予想もしなかった大ヒットとなって、香港製カンフー映画が大流行となった。この1974年はその大流行真っ最中であり、イタリア映画でも、さっそくその商売熱心さを発揮して製作した「カンフー・マカロニウエスタン」の一作です。 主演のチェン・リーはイタリアで空手の指導をしていた早川明心という日本人だそうです。 1882年のアメリカ西部という設定。旅の中国人「上海ジョー」(チェン・リー)が行く先々で差別を受けながら、やっと得た仕事は牛追いではなく、メキシコから貧しい農民を買ってきて奴隷に売る人身売買だった。ボスは町の顔役である牧場主スペンサー(ピエロ・ルリ)で、義憤にかられたジョーは彼の奴隷売買をやめさせようとする。目障りなジョーを消してしまうべくスペンサーは4人の殺し屋を差し向けるが、ことごとく返り討ちにされ、切り札としてミクリヤという東洋人の剣豪を雇う。ミクリヤ(ミクリヤ・カツトシ)はかつてジョーと同じ師匠のもとで修練した相弟子だった。 ジョーは虐殺から救った老人の娘クリスティーナ(カーラ・ロマネリ)に慕われて一時のやすらぎを得るが、彼に4人の殺し屋が次々と襲いかかります。殺した相手を食べるという食人鬼とか、頭の皮を剥いで喜ぶイカレ野郎とかの殺し屋キャラが見どころなのか? 極めつけは髪を結い上げて、赤い着物に黒い帯を締め、背中に刀を負った奇妙奇天烈な格好をした剣豪ミクリヤのキャラクター。 落とし穴におちた殺し屋が串刺しになって絶命するとか、目玉をつかみ出すなどの残酷描写は今の目で見れば笑ってしまう程度であり、もうひとつミクリヤの心臓をつかみ出すというのがあったが編集でカットされたらしく、その場面は指を胸に突き刺すだけになっています。ジョーとミクリヤの2人を演じるのはともに日本人であり、マカロニウエスタンでは唯一の日本人同士の対決シーンです。 差し向けられた殺し屋をぜんぶ倒したジョーが、きっと戻ってくるからとクリスティーナに約束して、ボスのスペンサーを殺しに向かうシーンで終わっています。こういう最後のボスを倒す場面を省略した映画というのは初めて見ました。 この「荒野のドラゴン」をトンデモ映画とかおバカ映画だとか云う人がいますが、私にはまっとうな?マカロニウエスタンに思えます。俳優の演技も監督の演出も音楽もよくできているし、マカロニウエスタンのひとつとして面白かったですよ。傑作、力作、秀作、佳作、・・・いや快作か?
2020年06月07日
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「新・脱獄の用心棒」VIVA LA MUERTE...TUA! (1971)監督 ドゥッチオ・テッサリ脚本 マッシモ・デ・リタ、ギュンター・エバート ディノ・マイウリ、ファン・デ・オルドーニャ撮影 ホセ・F・アグアイヨ音楽 ジャンニ・フェリオ出演 フランコ・ネロ、イーライ・ウォラック リン・レッドグレーヴ、エドゥアルド・ファヤルド ホルスト・ヤンセン、マリル・トロ 本編112分 カラー シネマスコープサイズ 1971年のマカロニウエスタン。日本では劇場未公開です。 フランコ・ネロ主演作でメキシコ革命を背景としたものでは「豹 ジャガー」(68)「ガンマン大連合」(70)がありますが、本作も同じような雰囲気を持った作品です。ポーランド人の殺し屋やスウェーデンの武器商人を演じたネロが、今度はロシアの公爵を自称する男の役。 ロシア公爵を自称するディミトリ・オルロウスキー(フランコ・ネロ)が牧師に化けて悪事を働いたことから、本物の牧師と勘違いされ、瀕死の老人からメキシコ ソノラ州の知事が100万ドルの大金をいずこかに埋めたことを告白されます。隠し場所は村の名しかわからず、その正確な場所を知るロゾ-ヤという男(イーライ・ウォラック)がユマ刑務所に入っていると教えられたディミトリは、さっそく刑務所へ面会に向かう。 一方、保安官事務所に現れたアイルランド人の記者メアリー(リン・レッドグレーヴ)が保安官に、服役しているメキシコ人の英雄エル・サルバドルを脱獄させるよう依頼する。保安官は刑務所長と結託し、囚人を金銭で脱獄させては、追跡して殺している悪党だった。しかしエル・サルバドルはすでに獄死していたため、どうせ顔が知られていないからと、コソ泥のロゾーヤを身代わりにして脱獄させる。 革命の英雄を脱獄させてスクープにしようとする女性記者と、隠された大金を掘り出そうとするディミトリとロゾーヤ。彼らを追う保安官の一行。ロゾーヤを英雄と信じた貧しい村人たちが革命に立ち上がり、政府軍との戦いとなる。 先日の「荒野の三悪党」ではその持ち味がまったく活かされていなかったイーライ・ウォラックが、ここでは生き生きとしています。コソ泥がいつの間にか革命の英雄に仕立て上げられて、本人もそのつもりになっていく過程がユーモラスに、うまく描かれて、このひょうきんなキャラが彼の持ち味なのでしょう。 革命の混乱と戦乱のなかでスクープ記事をねらう、お転婆な女性記者が政府軍の2人の兵隊にパンチをくらわせて叩きのめすアクション場面も楽しい見ものです。こういうのを見ると女性も強くなければ、男なんかに負けていてはならないのだ、とつくづく思います。 自動車やサイドカーが登場し、フランコ・ネロが持っている拳銃はドイツ製のルガーP08であり、20世紀初頭のメキシコ革命を背景にしたマカロニウエスタンのジャンル中での好一編。こないだ見た「荒野の三悪党」なんかより100倍ぐらい面白い作品でした。
2020年06月06日
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「荒野の三悪党」ACE HIGH(1969)監督 ジュゼッペ・コリッツィ製作 ビノ・チコーナ、ジュゼッペ・コリッツィ脚本 ジュゼッペ・コリッツィ撮影 マルチェロ・マシオッキ音楽 カルロ・ルスティケリ出演 テレンス・ヒル、バッド・スペンサー イーライ・ウォラック、ブロック・ピータース 本編122分 カラー シネマスコープサイズ 日本公開は1971年10月。製作は1969年なので遅れての輸入(配給はパラマウントCIC)です。この頃になるとマカロニウエスタンのブームは去っていて、この作品も見どころがあるわけでもなく、わざわざ映画館へ出かけて行って見るような価値はありません。話題作との同時上映として、刺身の妻といったところか。 キャット(テレンス・ヒル)とハッチ(バッド・スペンサー)の2人組が、悪党と結託して裏で稼いでいた銀行頭取を脅迫して、30万ドルをせしめる。 頭取は金を取り返すために、処刑が間近に迫っているカカポラス(イーライ・ウォラック)を脱獄させて後を追わせようとするが、魂胆を見破ったカカポラスに殺されてしまう。キャットとハッチの後を追ったカカポラスは不意を突いて大金を奪うが、こんどは逆に2人から追われることになる。 カカポラスはかつて、盗賊仲間に裏切られて、追っ手の前に置き去りにされて捕えられた。十数年間の獄中生活の恨みを晴らすために、今では善人ぶって私腹を肥やしている昔の仲間を探し出そうとしていた。金を返してほしいキャットとハッチはやむを得ずカカポラスの復讐行につきあうことになり、3人は最後の標的が経営しているカジノへ乗り込んでゆく。 本編122分はマカロニウエスタンとしては長すぎないか? 前半の展開が退屈で、「つまらないな」と毒づきながらの鑑賞で、後半になって敵のカジノへ乗り込むあたりからようやく、少々だけだが面白くなった。 店が仕掛けるイカサマのルーレット賭博を見破った3人は、そのいかさまを利用して大儲けして敵を破産に追い込みます。3人に綱渡りのアクロバット芸人の黒人が協力して(三悪党ではなく四悪党か)、敵をやっつけて大金を仲良く山分けにしてハッピーエンド。 最近、立て続けにマカロニウエスタンを見たけれど、その中ではいちばん劣っている作品です。音声が英語なせいかマカロニウエスタンらしさがなく、登場人物にも魅力がなくて、生ぬるい展開は盛り上がらない。こんなに刺激がないマカロニウエスタンに出会ったのは初めてです。これまではどんなに不出来な作品でも「下手くそだな~」と苦笑しながら、それなりに楽しめたのだが。
2020年06月03日
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「アヴェ・マリアのガンマン」(1969) IL PISTOLERO DELL’AVE MARIA監督 フェルディナンド・バルディ製作 マノロ・ボロニーニ脚本 ピエロ・アンキーシ、フェルディナンド・バルディ ヴィンセンツォ・セラミ、フェデリコ・デ・ウルティア マリオ・ディ・ナルド撮影 マリオ・モントゥーリ美術 エドゥアルド・トレ・デ・ラ・フエンテ編集 エウヘニオ・アラビソ音楽 ロベルト・プレガディオ出演 レナード・マン、ルチアナ・パルッツィ、アルベルト・デ・メンドーサ ピーター・マーテル、ピラール・ヴェラスケス、ピエロ・ルリ 本編80分 カラー ビスタサイズ 劇場未公開のマカロニウエスタン「アヴェ・マリアのガンマン」を鑑賞。シネフィルWOWOWでの放送を録画したもので、画質はとても良い。「アヴェ・マリアのガンマン」というマカロニ西部劇らしくない題名のためか、あまり期待せずに見始めたのですが、しっかりした作りで意外に面白かった。「ア~ヴェ マリ~ア、階段の前に立ちエレベーターにしようかな♪」と子供の時によく歌ったものですが、聖母マリアへの祈祷をあらわす言葉がマカロニの題名とは、なんか変な感じです。 荒野の一軒家に、母親が死んだあと一人で暮らすセバスチャン(レナード・マン)は、追われて傷ついた男(ピーター・マーテル)を助けて介抱する。その男は幼馴染のラファエルで、子供の頃の記憶を失っているセバスチャンに彼の過去を語ります。セバスチャンの父親はメキシコの将軍であり、本当の母親はトマスという男と密通して夫を殺したアンナ(ルチアナ・パルッツィ)で、いまは夫婦として暮らしていると云う。そしてセバスチャンには生き別れた姉イザベル(ピラール・ヴェラスケス)がいると。 自分の過去を知ったセバスチャンはラファエルとともに、生まれ故郷のオクサカへと向かいます。 主人公のレナード・マンは「悦楽の貴婦人」(77)に出ていた俳優で、その物静かな風貌はマカロニの主役ガンマンがよく似合って格好いい。 彼らが故郷の町オクサカへ向かい、いまは大農園主として威張りくさっている父親の仇であるトマスと対決し、父を裏切った母親に落とし前をつけさせようとします。ラストは炎上する屋敷での対決。 オクサカの町は撮影用のオープンセットではなく、実際の歴史的由緒ある町を使っての撮影だそうです。 セバスチャンの生き別れになった姉イザベルを演じるピラール・ヴェラスケスという女優さんがとてもきれいです。 このような美しい女優をさりげなく出演させるところがマカロニ西部劇のひとつの特徴か?アメリカの西部劇では美人女優が目立つ度合いというか、印象度が少ないような気がします。 粗製乱造、玉石混淆、有象無象(意味が違うか?)とされるマカロニウエスタンだけれども、その中では水準に達している一編です。個人的には面白かったです。「007サンダーボール作戦」や「0011ナポレオン・ソロ 消された顔」のルチアナ・パルッツィが悪女役で出ていますが、肉欲に負けて男と密通し、夫を裏切ってしまった女を演じて、ラストでは彼女なりに後悔して苦しんでいたのが明かされます。
2020年06月02日
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「荒野のみな殺し」(1966) DEGUEJO監督 ジョセフ・ウォーレン製作 セルジオ・ガローネ脚本 ジョセフ・ウォーレン、ウィリー・レーガン、ロベルト・アモロソ撮影 ステファン・サンター音楽 アレクサンドル・デレビスキー出演 ジャック・スチュアート、ダン・ヴァディス、ダナ・ギア リカルド・ガローネ、ホセ・トーレス、ジョン・マクダグラス 本編93分 総天然色 ビスタサイズ シネフィルWOWOWでの放送を録画したものを鑑賞しました。これまでに見たことも聞いたこともないマカロニウエスタンの一編ですが、ちゃあんと劇場公開されているんですね。1967年2月25日公開。主題曲のサントラレコード盤も発売されたようです。 当時はユナイトや20世紀フォックス、コロムビア、MGMなどのアメリカ系メジャー大手会社だけでなく、日本ヘラルドや東和とか、松竹映配、東京第一フィルム、NCC(ニュー・シネマ・コーポレーション)などの邦人系の配給会社が、おもにヨーロッパ映画を買い付けてき映画を日本で公開していました。 現在の外国映画が低調な原因のひとつには、そういった邦人系配給会社がなくなったとか不活発なことがあるのかもしれない。外国映画にかつてのようなブームとなるジャンルが存在しないし、映画産業自体が廃れているようです。この「荒野のみな殺し」はNCCの配給ですが、当時のマカロニウエスタンの大ブームの背景にはこのような邦人系配給会社が競っての外国映画買い付けがあったのでしょう。 メキシコ国境付近の(マカロニはこればっかり)小さな農場に瀕死の男がたずねて来る。老人とその息子ノーマンが出迎えると、男を追ってきた覆面2人組の男が抵抗する老人を射殺。息子が2人組を倒します。瀕死の男はノーマン(ジャック・スチュアート)に「クック大佐に危険が迫っている」と云って息絶える。 ノーマンの父親は南北戦争でクック大佐の部下だった。その大佐を助けに行けとはどういう意味か?大佐はいまどこにいるのか? ノーマンは父の部下だったフランクとローガンに協力を頼み、大佐が住んでいるという町へ向かいます。 その旅の途中3人は強盗に襲われて無一物になった旅の行商人フォラン(リカルド・ガローネ)を助ける。 4人が目的地の町へ着いてみると、ゴーストタウンのようなありさまで、住んでいるのは怯えた女や子供と老人ばかりだった。酒場の女主人ジェニー(ダナ・ギア)に事情を聞くと、ラモン(ダン・ヴァディス)を首領とする山賊の一団が町を襲い、クック大佐と町の男たちを人質として連れ去ったという。 ノーマンは逃げ帰ってきたロージー(ロージー・ジチェル)という女からラモンの隠れ家を教わると、ラモン一味が再び町を襲撃してきた隙にクック大佐を助けに向かった。 大佐が保管しているという南軍の莫大な軍用金を狙っているラモンは、大佐に逃げられて激怒。子分を率いて町に押し寄せてきたラモンは、大佐が隠している軍用金を渡さなければ町の者を皆殺しにすると宣告する。 隠された軍用金をめぐって、山賊を相手に主人公たち4人の男と町の女性たちが銃を持って戦うのですが、題名のとおりに、ノーマンと幼い少年のほか(おばあちゃんたちもいる)は、みんな死んでしまいます。夫を山賊に連れ去られた若妻たちもみんな死んでしまうし、主人公ノーマンといい感じになっていたロージーという女もラモンに撃たれて死んでしまうし。こうまで死なせる必要があったのだろうか? 山賊のボスのラモンは大佐から金のありかを白状させるために、大佐と町の男たちを人質にするのだが、なんで男たちなのか? 人質に連れ去るならば女性たちのほうがいいと思うが(みんな美人ばかりなのに、なぜか悪党どもは手を出さない)理解にくるしむところではある。 で、肝心の南軍の軍用金だけれど、このたくさんの札束は南部連合の紙幣かもしれず、その描写はないが、だとすれば、この紙くず同然の紙幣のために多くの人が死んだことになります。
2020年05月31日
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「西部の無頼人」 Lo voglio morto (1967)監督 パオロ・ビアンチーニ脚本 カルロス・サラビア撮影 リカルド・アントセレイ編集 エウヘニオ・アラビソ音楽 ニコ・フィデンコ出演 クレイグ・ヒル、レア・マッサリ、アンドレア・ボシック ホセ・マヌエル・マルティン、クリスティーナ・バシナリ リシア・カルデロン 本編82分 総天然色 ビスタサイズ 劇場未公開のマカロニウエスタンで、シネフィルWOWOWでの放送を録画しての鑑賞です。 主人公クレイトン(クレイグ・ヒル)は妹(クリスティーナ・バシナリ)を連れての旅の末にある町に着きます。町はずれに土地を買うことになっていて、妹をホテルに残して行くが、やっと貯めた資金4000ドルが南部連合の紙幣だったために購入を断られてしまう。牛追いや護衛の仕事でやっと貯めた金が紙くず同然だったことに落胆してホテルに帰って来た彼は、暴行されて殺された妹の死体を発見する。 現場に残されていたタバコ入れから犯人が広大な農園を営む権力者マレック(アンドレア・ボシック)に雇われているジャックという男だと知ったクレイトンはマレックの屋敷へと向かう。 時は南北戦争の真っ最中で、マレックは武器商人として暗躍していた。ところが両軍に休戦協定が結ばれるとの情報を得た彼は戦争が終われば仕入れた武器弾薬が無駄となって大損してしまう。焦ったマレックは休戦交渉がおこなわれる場に爆弾をしかけて両軍代表の暗殺をジャックたちに命令する。 南北戦争の休戦を妨害しようとする悪党と、その一味の中にいる妹の仇を追う主人公の話です。 悪党の農園で奴隷にされている2人の女性の役をレア・マッサリとリシア・カルデロンが演じています。虐待から助け出してほしいと主人公に懇願しますが、農園主の暗殺計画を聞いてしまった1人が殺され、レア・マッサリのほうが主人公とともに悪党一味を追って出発することになる。 見ていて主人公の行動がマヌケに思えてしまいます。そもそも妹が殺されたのは、物騒な町に一人で残して行ったからではないか。酒場の2階がホテルになっていて、荒くれどもが酒を飲んでいる中を通って2階へあがって、そのために悪党に目をつけられた。(アメリカの西部劇では酒場の2回は売春宿であり、ご婦人は酒場に入らないのが常識であるのに) 働いて苦労の末に貯めた土地購入資金が南部連合の紙幣だったというのも、バカじゃないのかと思えてしまうし、敵のいる所へ忍び込んでも、後ろから殴られて捕らえられたりする。 けっきょく悪党どもは仲間割れで滅び、主人公は空から風に舞って降って来た合衆国(北部)の紙幣を拾い集めて、その金で念願の土地を買うことができた、というハッピーエンドです。 ヒロイン役のレア・マッサリはフランスの有名女優です。「南から来た用心棒」ではコリンヌ・マルシャン、「さいはての用心棒」はソフィー・ドーミエ。男優では「殺しが静かにやって来る」のジャン・ルイ・トランティニャン、「傷だらけの用心棒」のロベール・オッセンなど、フランスからの出稼ぎというより、イタリアがお招きしたということでしょうか。
2020年05月30日
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「待つなジャンゴ引き金を引け」(1967) NON ASPETTARE DJANGO SPARA監督 エドアルド・ムラルジア脚本 ヴィンチェンツォ・ムソリノ撮影 ヴィタリアーノ・ナタルッチ音楽 ルイジ・セカレッリ出演 ショーン・トッド、ペドロ・サンチェス ラーダ・ラシモフ、ジーノ・ブッツァンカ イタリア映画 本編88分 総天然色 シネマスコープサイズ 久しぶりにマカロニウエスタンを見ました。シネフィルWOWOWでの放送を録画したものです。 ちなみに私は「マカロニウエスタン」と表記しています。「マカロニ・ウェスタン」でもなく「マカロニ・ウエスタン」でもない。なぜなら、イタリア製西部劇が大ブームだった1967年頃は「マカロニウエスタン」と一般的に云われていたからです。 で、「待つなジャンゴ引き金を引け」ですが、日本では劇場未公開で、テレビ局が輸入して放送した作品です。1968年4月から7月まで、日本テレビ系で毎週木曜日夜8時に11作品がプロ野球ナイター中継と交互に放送され、その最後の11作目が「待つなジャンゴ引き金を引け」です。 開巻、牧場主とおぼしき老人が馬車で走っていると、メキシコのならず者集団が現れて射殺されてしまう。この時の会話で、「10万ドル払ったのに馬が届かないとアルヴァレスが云ってるぞ。金を返せ」とならず者の親分ナヴァロが云う。老人は「私は正直者だ。アルヴァレスが嘘をついてるんだ」と。 つまりアルヴァレスという農園主?か地元のボスがこの老牧場主から馬を10万ドルで買ったのに馬が届いていないと苦情を云っていて、ナヴァロは問答無用と老牧場主を撃ち殺して10万ドルを奪います。 この老牧場主の息子ジャンゴ(ショーン・トッド)は殺された父親の仇を討つんだと、妹(ラーダ・ラシモフ)が止めるのをふりきって家を出る。ここまでは話がスムースに進んだけれど、このあとがわけがわからなくなります。 ならず者親分ナヴァロの息子が金を盗んで家出したというので、怒ったナヴァロが追跡し、ある村でその息子が殺されているのを発見、誰が殺したんだと、村民を壁に並ばせて、云わないと殺すぞと脅していると、ジャンゴが現れて、ナヴァロと子分どもを撃ち倒します。 そしてこのあと、ジャンゴは何かを待ち続ける。何を、誰を待ってるんだろう? なぜか10万ドルは、この村の家の2階に女と一緒に泊まっている拳銃使い(殺し屋?)が持っていて、この男も何かを待っている。この男がナヴァロの息子を撃って金を奪ったのか? 10万ドルを取り返したいアルヴァレスは手先のナヴァロが殺され、子分どももジャンゴにやられてしまった。近くに住む凄腕のならず者ホンドを雇ってジャンゴの居所を探せと命令し、ジャンゴの妹を連れてきて人質にする。子分の一人に「妹を助けたかったら金を持ってこい」とジャンゴに伝えろと命じるのだが、ここで??となる。ジャンゴを探せと云っておきながら、ジャンゴに妹のいのちと引き換えに金を持ってこいと云いに行ってこい、とは変な展開だ。居場所がわからないのではなかったのか? で、なんでか?ジャンゴを待つ間にアルヴァレスはホンドに殺されてしまい、村の2階にいた拳銃使いを倒して10万ドルを奪ったジャンゴが伝言をうけてやってくる。そしてジャンゴとホンドの対決となります。 話がいい加減というかわかりにくいというか。そもそもジャンゴの父親が10万ドルでアルヴァレスに売った馬はどこへ行った? もとから馬がいなくて金を受け取ったのなら、悪いのはジャンゴの父親ではないか。10万ドルの持ち主はアルヴァレスであり、なぜ彼が悪役になってしまうのか? 主人公ジャンゴの目的は父親の仇討ちのはずなのに、早々に仇のナヴァロを倒したあと、なぜか10万ドルの争奪戦になってしまった。10万ドルを返してもらえず、雇った手先ホンドに殺されてしまったアルバレスこそ浮かばれない? かなりいい加減なマカロニウエスタンの玉石混淆の、石コロである一編です。劇場未公開なのは当然で、いくらブームでもこれでは商品にならないだろう。でも主役ジャンゴのショーン・トッドは拳銃を撃つのも様になってるし、マカロニのガンマンとしては良い感じです。 こういう作品でもご愛嬌と、笑って許せないとマカロニウエスタンのファンはつとまらない。
2020年05月29日
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「カリフォルニア ジェンマの復讐の用心棒」(1977) LO CHIAMAVANO CALIFORNIA監督 ミケーレ・ルーポ製作 マノロ・ボロニーニ脚本 ロベルト・レオーニ、フランコ・ブッチェリ撮影 アレハンドロ・ウジョア音楽 ジャンニ・フェリオ出演 ジュリアーノ・ジェンマ、ウィリアム・バーガー ライムンド・ハームストロフ、ミケル・ポゼ、パオラ・ボゼ、ロバート・ハンダー 本編96分 カラー シネマスコープサイズ「カリフォルニア ジェンマの復讐の用心棒」のDVDを鑑賞。ジュリアーノ・ジェンマ主演のマカロニウエスタンです。1977年作品で、日本に輸入されたらしいが結局はお蔵入りになって劇場未公開。かつては世界を席巻したマカロニ西部劇も、この頃には興行価値がないものと見なされたのだろうか。 南北戦争が終結し、北軍の駐屯地にいる南軍捕虜たちが解放される。すぐに職につかない者は一週間以内に州から出ていけとか言われている。 捕虜のひとりカリフォルニア(ジュリアーノ・ジェンマ)は、人懐っこく慕ってくる若者ウィリー(ミケル・ポゼ)と一緒に町を出て、ウィリーの故郷ジョージアへと向かう。 旅の途中でウィリーは南軍に憎しみをいだく北部人たちに殺されてしまい、彼が大事に持っていた勲章を故郷の家族へとどけ、ウィリーの死を報告したカリフォルニアはその両親と姉ヘレン(パオラ・ポゼ)から暖かく歓待される。 人手が足りない農場を手伝うことになったカリフォルニアはヘレンと愛し合うようになるが、買い物に出かけた町で賞金稼ぎたちの騒動に巻き込まれ、ヘレンが人質にされ、拉致されてしまう。 愛するヘレンを救出するためにカリフォルニアは賞金稼ぎの一味に加わり、その隠れ家をさぐろうとするが。 マカロニウエスタンもこの1970年代後半になると、ずいぶん洗練されたというかアメリカ映画らしくなったというか、60年代マカロニ作品とは色彩が異なるのを感じます。同じミケーレ・ルーポ監督とジェンマの「南からきた用心棒」(66)とは演出もカラーもまったく異なるし、作風も俳優たちの雰囲気もまるでちがったものになっていて、60年代とは時代が大きく変化したのだろうか。 悪役の賞金稼ぎのリーダー ウィテカーをライムンド・ハームストロフという俳優が演じているのですが、この人などかつてのマカロニ悪役のような脂ぎった下品さがなくて、むしろスマートな格好良さを感じる。 ジュリアーノ・ジェンマはそれほど変化していないようだけれど、彼の周囲の人たち共演者たちが大きく変わったように思えます。泥臭さがなくなって、西部劇としての作風が現代映画的というかアメリカ映画らしくなったというか、うまく表現できけれど、やはり一言でいえば作風が「洗練された」ということか。 若者ウィリーとその姉ヘレンを演じるミケル・ポゼとパオラ・ボゼは同じ姓ですが、実際の姉弟でしょうか?
2018年12月16日
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「荒野の墓標」(1967) DOVE SI SPARA DI PIU監督 ジャンニ・プッチーニ 脚本 ブルーノ・バラッティ マリア・デル・カルメン、マルチネス・ロマン 撮影 マリオ・モントゥーリ 音楽 ジーノ・ペグリ 出演 ピーター・リー・ローレンス、クリスチーナ・ガルボ マリア・クアドラ、ピエロ・ルリ 本編88分 総天然色 シネマスコープサイズ 1967年のマカロニウエスタン「荒野の墓標」のDVDで鑑賞。 イタリア製西部劇が好きで、これまでにかなり見てきたつもりだけれど、このような作品があるのを知りませんでした。日本公開は1967年12月。よく見ていたテレビのゴールデン洋画劇場でも1975年6月20日に放送されているのに。 カリフォルニアがアメリカ合衆国に併合された頃(という設定)。メキシコ人のカンポス牧場と新たに入植してきたアメリカ人のマウンター牧場が土地をめぐって憎しみをつのらせて対立している。 カンポス家の長であるペドロ・カンポスが、マウンター家に「いつまでも争っていてもきりがない。正々堂々と決闘して決着をつけようではないか。負けたほうが土地をあけ渡すのだ」と提案をもちかけて、マウンター家の長 ビルもそれを承知する。ところが戦いの日、カンポスがマウンターの一行を待ち伏せて銃撃を浴びせる。 町のクーパー保安官(ピエロ・ルリ)はカンポス家と結託していて、戦いは正当な決闘だったと裁定する無法ぶり。 そんな状況下で、マウンターの末息子ジョニー(ピーター・リー・ローレンス)は、東部?から帰省してきたカンポス家の娘ジュリエッタ(クリスチーナ・ガルボ)と出会い、二人は恋に落ちる。 敵対する二つの家の息子と娘が恋をするというので、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の翻案だとされるマカロニ西部劇の一編です。 マウンター家とカンポス家の対立と両家の息子ジョニーと娘ジュリエッタの恋。それにジョニーに射撃を手ほどきしてガンマンの心得を伝授するお尋ね者の老人(アンドレス・メフート)との師弟関係のエピソードを加えている。 争いの結果、ジョニーとジュリエッタだけが生き残り、あとの全員が死に絶えるという救いのない話。たいして見どころのない映画だが、どくろの仮面を着けた黒衣のガンマン(死神か?)が息のある者にとどめを刺していくラストがなかなか面白い。 主演のピーター・リー・ローレンスは、クリスチーナ・ガルボとの共演がきっかけで結婚したそうだけれど、1974年に脳腫瘍が原因で、30歳の若さで亡くなったそうです。
2018年12月15日
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NHKのBSプレミアムでマカロニウエスタンが4本放送されました。3/19 「荒野の1ドル銀貨」(65)3/20 「続・荒野の1ドル銀貨」(65)3/22 「続・さすらいの一匹狼」(65)3/23 「真昼の用心棒」(66) ジュリアーノ・ジェンマ主演作品が3本と、フランコ・ネロの代表作である1本です。このなかでは、「真昼の用心棒」の現在発売されているDVDソフトは4:3シネスコ版しかないので、16:9シネスコでの、このNHK放送版は貴重なものではないか?「真昼の用心棒」(1966) LE COLT LA MORTE E FU TEMPO DI MASSACRO監督 ルチオ・フルチ製作 フェルナンド・ディ・レオ オレステ・コルテラツィ脚本 フェルナンド・ディ・レオ撮影 リカルド・パロッティーニ音楽 ラッロ・ゴーリ セルジオ・エンドリゴ出演 フランコ・ネロ、ジョージ・ヒルトン ニーノ・カステルヌオーヴォ、ジョン・マクダグラス リン・シェイン 本編90分 総天然色 シネマスコープサイズ 河で砂金採取の仕事をしている主人公トム・コーベット(フランコ・ネロ)に故郷から「すぐ帰ってこい」という内容の手紙が届く。 故郷のララミータウンという町に帰ったトムは、町がスコットという男の暴力に支配されているのを知ります。町の銀行や酒場もスコットの経営になっており、兄ジェフリー(ジョージ・ヒルトン)が跡を継いだ牧場もスコットの所有になっている。 兄ジェフリーは町外れの小屋で乳母と生活していて、アル中になって落ちぶれている。再会したトムだが、兄に事情を聞いても何も話してくれない。 町は実力者スコットとその息子ジュニアの完全な支配下にあり、トムは自分を呼び戻す手紙を書いたジェンキンスという男を訪ねるが、彼もスコットの凶弾に殺されてしまう。 町の人たちもスコットを恐れて何も語ろうとしない。トムは酒場でスコットの子分たちと出会うが、彼らにとって目障りなはずのトムなのに、なぜか手出しを避けるそぶりをみせる。 日本公開は1967年1月。マカロニウエスタンが驚異的な大ブームになった年の幕開けになった作品であり、「ガンマン無頼」(66)とともにフランコ・ネロの初期マカロニウエスタン出演の代表作です。 先年にDVDソフトが低価格化された時に約40年ぶりに見て、それ以来の再鑑賞ですが、今回はなぜか、あまり面白いとは感じなかった。 先日の「ヒッチハイク」(76)でのフランコ・ネロがあまりのゲス野郎な役だったためか、その悪いイメージが残っていて、この「真昼の用心棒」を見ていても気分が乗らなかったのだろうか。 それとNHKでの放送は独自の字幕翻訳であって、DVDソフトの字幕とは異なっているのも一因かもしれない。映画の字幕を読み慣れない人に配慮しているのだろうか?、読みやすいのは確かだが、簡略化されすぎているような印象を受けます。それと「復しゅう」など、ひらがな表記にするのはなぜか?、「復讐」を読めない人はいないだろうに。
2018年03月25日
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「ハチェット無頼」(1977) MANNAJA監督 セルジオ・マルチーノ 脚本 セルジオ・マルチーノ サウロ・スカヴォリーニ 撮影 フェデリコ・ザンニ 音楽 マウリツィオ・デ・アンジェリス グイド・デ・アンジェリス 出演 マウリツィオ・メルリ、ジョン・スタイナー ドナルド・オブライエン、フィリップ・ルロワ、ソーニャ・ジャニーン マルティーヌ・ブロシャール 本編92分 総天然色 シネマスコープサイズ 先日の「盲目ガンマン」(72)がそうですが、ハンディキャップを負ったヒーローについて。「続 荒野の用心棒」(65)のジャンゴは敵につかまって両手をつぶされるリンチを受ける。両手が使えない身で敵との対決となります。 ハンデを負った主人公という設定では、日本の時代劇映画でも「座頭市」や「丹下左膳」があり、松山容子さんの「めくらのお市」があります。 マカロニウエスタンの「ミネソタ無頼」(64)は目を病んでいて一時的に目が見えなくなる。敵との対決のさいに見えなくなって、音と勘をたよりに戦わざるを得なくなり、観客に不安感をあたえるのですが、マカロニでは他に「さいはての用心棒」と、本作の「ハチェット無頼」が敵に捕まってリンチを受け、目を太陽で焼かれてしまう。「さいはての用心棒」(67)はいつの間にか回復して見えるようになるけれど、「ハチェット無頼」(77)は見えないままで敵との対決をむかえます。 マカロニウエスタン「ハチェット無頼」は1977年作品で日本では劇場未公開。当時はマカロニウエスタンの世界的大ブームは終わっていて、商業価値がないと判断されたのでしょうか。 マカロニ後期の傑作と云われるけれど、傑作はおおげさとしても、秀作と云ったところか。 主人公マンナーヤ(マウリツィオ・メルリ。マンナーヤは斧という意味らしい)は賞金稼ぎで、5000ドルの賞金をかけられた悪党を追い詰めて、抵抗するので得物の斧をぶん投げて片腕を切断して、近くの鉱山町へ連行します。 その町は銀を採鉱しているマッゴーワン(フィリップ・ルロワ)という富豪が支配し、坑夫を奴隷のように使役して大きな権力を握っている。 マンナーヤは酒場でマッゴーワンの腹心ボレル(ジョン・スタイナー)とカード賭博の勝負をして5000ドルを巻き上げる。いきり立つボレルの子分たちを早撃ちで撃ち倒すマンナーヤ。 マッゴーワンは採掘した銀を都会に輸送するのだが、その輸送馬車が途中でドルマンという男が率いる無法者集団に襲われて奪われてしまう。 マンナーヤはマッゴーワンに自分を雇えと売り込むが、恨みを抱くボレルの子分に待ち伏せされて命を狙われる。深手を負ったマンナーヤは通りかかった旅芸人の一座に助けられます。 ボレルはマッゴーワンの娘デボラ(ソーニャ・ジャニーン)とできていて、彼女を偽装誘拐してマッゴーワンと取引し、銀山の実権を握ろうと画策します。 娘を奪われたマッゴーワンはマンナーヤに助けを求める。雇われたマンナーヤは娘を救出に出かけるが、ボレルに捕まって太陽で目を焼かれるリンチをうけて失明してしまう。 クライマックスは洞窟に身を隠したマンナーヤがやがてやって来るボレルたちを迎え撃つために石斧を作って準備する。目が見えない絶対不利な状況で、いかに勝つことができるのか。 足が不自由で車椅子の権力者マッゴーワン。その信頼される片腕の位置にありながらマッゴーワンの地位を狙うボレル。2頭の猛犬を連れた、痩せぎすで黒い衣服の悪党ボレルの、悪役としての憎々しい存在感。 玉石混淆のマカロニウエスタン。ブームの去った70年代になるとコメディ路線や007的なアクション路線などが目立つようになり、マカロニウエスタン本来の復讐の執念を描いた作品が見られなくなっていたなかで、本作品はそんなマカロニの陰惨な世界を再び描き、原点回帰ともいえる作品になっています。お尋ね者の腕を斧でぶった切るなどの残酷描写もあって気色がいい。 この「ハチェット無頼」については以前に、主人公がしょぼくれていて華がないなどと書いていますが、いま、これで3度目か?、再び見ると思っていたほど悪くはない。映画はその時々の気分や環境で評価が変わるものだということだろうか。
2018年01月09日
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「ガンマン無頼 地獄人別帖」(1971)LA VENDETTA E UN PIATTO CHE SI SERVE FREDDO監督 ウィリアム・レッドフォード原案 ウィリアム・レッドフォード脚本 ウィリアム・レッドフィールド モニカ・フェルト撮影 アンジェロ・ロッティ音楽 ピエロ・ウミリアーニ出演 レオナード・マン、クラウス・キンスキー アイヴァン・ラシモフ、エリザベス・エヴァースフィールド エンツォ・フィエルモンテ、ステファン・ザカリアス 本編95分 総天然色 シネマスコープサイズ 1971年のマカロニウエスタンです。日本公開は1973年3月で、この頃になるとマカロニ西部劇ブームは終わっていて、私もあまり関心がなかったらしく、スター俳優も出ていないし、この作品のことはまったく記憶がありません。 開拓者の一家がインディアンに襲われて皆殺しにされる。少年ジムと妹はインディアンに友好的に接して共存している両親に育てられていたが、土地の有力者パーキンス(アイヴァン・ラシモフ)と新聞記者プレスコット(クラウス・キンスキー)が訪ねて来て、インディアンの襲撃事件が増えているから土地を手放して避難するよう忠告される。しかしパーキンスの悪い評判を知っている父は追い返します。その夜インディアンの襲撃を受けて、ジムを残して一家全員が殺されてしまう。 両親と幼い妹を殺されて、ただ一人生き残ったジムは激しい憎悪を抱いて成長し、インディアンとみれば殺して頭髪を剥ぎ、インディアンたちから「黄色い髪のボーイ」と呼ばれて恐れられる復讐鬼となった。 いつものようにインディアンを殺したジム(レナード・マン)は、インディアン娘トーネを捕らえて町へ連れて行く。町に居合わせたパーキンスの子分たちの侮辱的で横柄な態度と、娘を横取りしようとしたことから争いになる。 開拓者を追い出して土地を手に入れるために、あくどい陰謀をめぐらす町の権力者パーキンス。町民にインディアン憎悪を持たせるためにでっちあげ記事を書いて扇動する新聞記者プレスコット。 ジムはやがて、彼の家族が殺された事件の真相を知ることになる。 マカロニウエスタンの最大のテーマだった「復讐」ですが、この映画が公開された1970年代に入ると、復讐よりも金目当て、この世はカネがいちばん大事といったふうになっていて、マカロニの主人公たちは金稼ぎにあくせくするように変化していた。そんな時期に王道のテーマ「復讐」を題材にした、でもただ復讐を果たしてサッパリするというものではなく、その復讐する相手をまちがえていたとしたら、憎悪を向ける相手がまちがっていたとしたら、という「マカロニにそれまではなかった復讐」を描いています。 主人公ジムはインディアンに激しい憎しみを抱いて殺しまくっていた。しかし真の敵はインディアンではなかった。いままで罪のないインディアンを殺していたが、それは間違いでしたと改心して、それだけで済ませていいものか? 真犯人を倒して、殺された家族の恨みを晴らしたが、自分の犯した罪業をみればそれでは済まないはずではないか。 本作を「マカロニの傑作」と見るむきがあるけれど、あまり感心したものではありません。 自分が復讐されるべき対象になっていることに気がつかず、おめおめと生き延びて去ってゆくラストは、これは許せるものではないだろう。普通の神経を持つ人間なら、最後は死ぬしかないだろうに。 そんなわけで、あまり感心しないマカロニウエスタンの一編でした。 私にはやはり単純明快、お気楽な映画のほうがいいようです。マカロニウエスタンにインディアンが出る数少ない一作。
2018年01月05日
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「盲目ガンマン」(1971) BLINDMAN監督 フェルディナンド・バルディ製作 トニー・アンソニー、ソウル・スウィマー脚本 トニー・アンソニー 、ヴィンセンツォ・セラミ撮影 リカルド・パロッティーニ音楽 ステルヴィオ・チプリアーニ出演 トニー・アンソニー、リンゴ・スター アグネタ・エクミール、ロイド・バチスタ、マグダ・コノプカ 本編101分 総天然色 シネマスコープサイズ 邦題の「盲目ガンマン」は「めくらガンマン」と読みます。今まで知らなくて「もうもくガンマン」だと思っていました(公開時のポスターにはちゃんと「めくら」と振り仮名がある)。 日本公開は1972年10月。北国第一劇場での上映ですが、同じ頃に見たマカロニウエスタンで主人公が鎖帷子を防弾チョッキのように着ていて銃弾を跳ね返すシーンが記憶にあって、最近までその映画がこの「盲目ガンマン」だと思っていました。勘違いで、それは「スペシャリスト」というフランスの歌手ジョニー・アリディが主演したマカロニウエスタンだった。45年も前の記憶はあてにならないものです。「暁の用心棒」(67)「荒野の復讐」(81)のトニー・アンソニーがみずから製作と脚本を担当したマカロニウエスタンの異色作、というか珍作の「盲目ガンマン」。もう一度見たいと思っていた作品で、たまたまレコード店に500円(税込み)で並んでいるのを見つけて、即購入しました。 主人公の盲目男(トニー・アンソニー)はテキサスの鉱山で働く坑夫たちのための花嫁50人を運ぶ仕事をうけおっていた。しかし旅の途中でだまされて奪われてしまい、その50人の女性を奪い返すために山賊のドミンゴ(ロイド・バチスタ)一味を追うことになる。 メキシコへ向かったドミンゴたちのあとを追って盲目男もメキシコへ。 国境に近いある村で一味の情報を得ようと一軒の家にたちよった盲目男。そこへドミンゴの弟キャンディー(リンゴ・スター)が子分を連れてあらわれ、その家の娘ピラー(アグネタ・エクミール)を奪い去る。 ピラーの父親からドミンゴの居所を聞いた盲目男は一味の隠れ家へと向かい、女たちを返してくれるよう迫る。しかし盲目男はドミンゴの部下たちに放り出されてしまう。 悪党のドミンゴと姉スイート・ママ(マグダ・コノプカ)は奪った50人の女性をメキシコ軍隊向けの売春婦にしようとしていた。軍の将軍(ラフ・バルダサリ)以下、兵隊たちを宴に招いたドミンゴは、女たちを与えると思わせておいて多勢の兵隊たちを機関銃で皆殺しに。将軍を捕虜にして檻禁する。 ドミンゴの弟キャンディを捕えた盲目男は50人の女たちと交換しようと申し出るが、目が見えないためにまたもや不覚を取ってだまされて悪党たちに捕まってしまう。 目が見えないハンデを主人公に負わせ、奪われた50人の金髪美女を奪還するために山賊一味に立ち向かわせるマカロニウエスタンです。 主人公を盲目の男にする必然性はあまりないような感じがするけれど、新味をだそうとしたのだろうか。しかし、自分一人では歩く方角も方向もわからず、銃を撃つにも敵がいる位置がわからないのだから、常に誰かの手助けを必要とする。目が見えないのでだまされたり、出し抜かれたり、これほど頼りないマカロニウエスタンのヒーローも珍しいのではないか。 主人公の盲目男が敵ドミンゴの弟キャンディをやっつけるのに、女のパンツをぶらさげておいて、それに気をとられたすきを突く。 この女のパンツを餌にするという、マカロニのヒーローにあるまじき卑怯な手段にかかって撃たれてしまうキャンディを演じるのは元ビートルズのリンゴ・スターというのが可笑しい。 50人の金髪美女がワーッと一斉に逃げ出して走るのは壮観。他人様にはおすすめできない珍品映画ですが。
2018年01月02日
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「キングと呼ばれた男」LO CHIAMAVANO KING監督 ドン・レイノルズ脚本 レナート・サヴィーノ音楽 ルイス・エンリケス・バカロフ出演 リチャード・ハリソン、クラウス・キンスキー セルジオ・スマッキ、ゴッフレード・アンガー ロレンツォ・フィネッキ、アン・バスキン 本編74分 総天然色 ビスタサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第29号(5/11発売)は「必殺の用心棒」と「キングと呼ばれた男」です。「必殺の用心棒」は500円の廉価版があるのでありがたみは少ないけれど、「キングと呼ばれた男」は大変めずらしい作品です。 1971年のマカロニウエスタンですが、日本には輸入されず、このDVDは本邦初公開なのだろうか? この年はマカロニウエスタンのブームが終わっていて、商業価値がないとして買い付けがされなかったのかもしれない。 アメリカとメキシコ国境付近(マカロニはこればっかり)。悪党のベンソン三兄弟がメキシコ人の山賊団に武器を密輸している。 そのベンソン兄弟を追っている、キングという通称で呼ばれる賞金稼ぎジョン・マーレー(リチャード・ハリソン)。彼の弟ジョージが結婚したばかりの新妻との新婚旅行?の途中でベンソン兄弟に襲われてジョージは殺され妻は暴行される。友人の保安官ブライアン(クラウス・キンスキー)と復讐を誓うキング。 仇敵のベンソン兄弟を追跡するキングは、ある町でベンソン兄弟の情報を得ようと保安官を訪ねるが、そこへ兄弟が現れて銃撃戦となる。撃ち合いのすえに撃退したキング。逃げたベンソン兄弟を追ってキングは馬を走らせる。ベンソン兄弟はメキシコ人の山賊団と合流し、キングはその本拠をつきとめるが捕まって縛り上げられてしまう。キングはなんとか逃げるのに成功するが、敵の一味のなかにブライアン保安官の助手がいるのを見かける。 そこへベンソン兄弟を追って到着したアメリカの軍隊と協力してメキシコ人山賊とベンソン兄弟を一掃。町に戻ったキングは、武器密輸の黒幕だったブライアン保安官との決闘に挑む。 本編74分と比較的短い映画なのに、その短い時間のなかで、馬車の移動や軍隊の行軍など物語のうえで重要とは思えないシーンが延延と続いたりして、その上手とはいえない描写にイラつかせられてしまいます。 それがマカロニウエスタンだと云ってしまえば,身も蓋もないけれども、こういう作品ばかり見ていると、いくら好きだとはいってもいささかうんざりさせられる。 表面は善人面した黒幕として怪優クラウス・キンスキーを使っているのに、悪役としてその悪辣さが感じる描写がないので、ラストの主人公キングとの決闘もまるで盛り上がらない。 日本で初めて公開されたマカロニ西部劇「赤い砂の決闘」(まだ見たことがない)で左利きのガンマンを演じていたリチャード・ハリソンが本作では右利きのガンマンを演じています。ベンソン兄弟との戦いで右手を負傷したキング(リチャード・カリソン)は、最後のブライアン保安官(クラウス・キンスキー)との決闘シーンで拳銃を左手で抜く。相手の利き手が使えないと見ていたブライアン保安官は油断があったのか、トリックプレイに引っかかって「なんで?」といった顔でやられてしまう。こういう演出はマカロニウエスタンらしさがあってなかなか良いのですが。 初DVD化された「キングと呼ばれた男」。マカロニウエスタン好きなら、一度は見ておいていいかな?と思うけれど、あまりオススメできない(たいしたことがない)作品です。 賞金稼ぎキングを演じるリチャード・ハリソンにヒーローらしい格好良さというか「華」が感じられないし、邦題「キングと呼ばれた男」もまるでマカロニウエスタンらしくない(原題どおりだが)。いかにもマカロニらしいワクワクするような邦題にできなかったものか?
2017年05月13日
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「復讐のガンマン・ジャンゴ」(1971) W DJANGO監督 エドワルド・G・ミュラー脚本 ニーノ・ストレッサ撮影 マルチェロ・マスオッキ音楽 ピエロ・ウミリアーニ出演 アンソニー・ステファン、ステリオ・カンデッリ クラウコ・オノラート、ドナート・カステラネッタ 本編94分 総天然色 シネマスコープサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第26号(3/30発売)収録の「復讐のガンマン・ジャンゴ」を鑑賞しました。 冒頭で夫の帰りを待つ若妻が押し入った数人の男たちに乱暴されて殺される。 妻を殺された主人公ジャンゴ(アンソニー・ステファン)はメキシコとの国境にある町に現れ、無法者のジェフ一味に縛り首にされそうになったメキシコ人の盗賊カランサ(クラウコ・オノラート)を助けます。 カランサはジャンゴの妻を殺した犯人たちを知っていて、ジャンゴは彼を連れて、妻殺しの犯人一味である武器商人やメキシコ軍の将校などに復讐をしていくという物語。 全編、主人公と悪党たちのガンアクションばかりと言って良いような展開です。単純な撃ち合いだけでなく、ジャンゴが銃の弾丸を途中の2発を抜いておいて相手に弾切れと思わせて油断したところを撃ったり、手を上げて降参したと見せかけて上着の下から本物の手を出してファニングで敵を倒すなど、マカロニらしいお遊び的な場面もあり、楽しませてくれる(撃ち合いばかりで飽きる感じもあるが)。 ラストで、仇をすべて倒して復讐が終わったとジャンゴが思ったところで、それまで行動を共にしていたカランサが真相を告白します。 マカロニウエスタン定番の復讐テーマだが、ブームが終わった1971年製作という時期は、主人公たちは復讐をやめて,自由を得て晴れ晴れと金儲けに精を出すなど、アクション中心やコメディ路線が中心になっていた。そんな時期に製作されたにもかかわらず、あえてマカロニ最盛期を思わせるような復讐をテーマにした作品。 アンソニー・ステファンは日本ではあまり人気が出なかったけれど、ブーム最盛期の1967年には「荒野のプロ・ファイター」「地獄から来たプロガンマン」「荒野の棺桶」「無宿のプロガンマン」「嵐を呼ぶプロ・ファイター」と、日本で5本も劇場公開されている。 クリント・イーストウッドやフランコ・ネロばかりに目を付けて、ジュリアーノ・ジェンマを女子供のアイドルと蔑み、このアンソニー・ステファンも含めてマカロニ西部劇ブームになんの貢献もしていない、などと通(つう)ぶってほざく人がいますが、はたしてそうなのか? ジュリアーノ・ジェンマやアンソニー・ステファンは,マカロニ西部劇の大ブームの裾野を大きくひろげる貢献をしたのではないか。本国イタリアで25本(27本とも)も西部劇に出演したアンソニー・ステファン。彼らがいなければあれだけ巨大なブームにならなかったのではないか。「復讐のガンマン・ジャンゴ」は1971年制作。日本では劇場未公開(TV放送)作品です。 背が高くてスマートなアンソニー・ステファンはライフル銃がよく似合い、拳銃を腕を伸ばして撃つ姿勢もカッコ良い。人が良くてあまり強そうには見えないけれど、応援したくなる魅力があります。
2017年04月30日
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「皆殺し無頼」(1966) JOHNNY YUMA監督 ロモロ・グェッリエリ脚本 ロモロ・グェッリエリ ジョヴァンニ・シモネッリ フェルナンド・ディ・レオ サウロ・スカヴォリーニ撮影 マリオ・カプリオッティ音楽 ノーラ・オルランディ出演 マーク・ダモン、ロザルバ・ネリ、ローレンス・ドブキン ルイジ・ヴァヌッチ、フィデル・ゴンザレス 本編99分 総天然色 ビスタサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」の第28号(4/27発売)は「新・さすらいの用心棒 ベン&チャーリー」と「皆殺し無頼」の2作品です。 今号の目玉は「皆殺し無頼」。日本ではDVDが未発売だった作品で、この収録が世界初の公式DVDだそうです。(4月にイマジカBSで放送され、それも録画した) 日本公開は1967年10月。日本ヘラルドが配給。 事故で下半身不随になったサンタマルゴの大牧場主トーマス・フェルトン(レスリー・ダニエルズ)は全財産を旅に出て不在の甥ジョニー・ユマ(マーク・ダモン)に譲ろうとする。 その財産を狙う若い妻サマンタ(ロザルバ・ネリ)は兄(ルイジ・ヴァヌッチ)と共謀して夫フェルトンを殺し、ジョニー・ユマを亡き者にするためにかつて愛人だった殺し屋キャラダイン(ローレンス・ドブスキン)に連絡をつける。 早撃ちの殺し屋キャラダインはジョニー・ユマと出会い、彼に男気を感じて共感する。 ジョニー・ユマは炎熱の砂漠を越えてサンタマルゴの町にやって来る。彼は自分を消すために雇われたキャラダインと協力して、悪党一味を銃撃戦のすえに一掃。 かつての愛人サマンタに利用されただけだと知ったキャラダインは、あまりの汚さに彼女を訪れて難詰するが、油断したところを背後から撃たれてしまう。馬車で逃げるサマンタに向かって乱射する瀕死のキャラダイン。馬車はあざ笑うように走り去るが・・・・。 小品ながらもマカロニウエスタンらしさの溢れた力作です。 実のところ本作を見るのはこのDVDが初めて。ただ主題曲は私が持っている「マカロニ・ウエスタン ベスト・セレクション」という音楽CDに入っていて何度も聴き、耳に馴染んだ曲です。 遺産を残して殺された叔父の復讐。敵であるはずのキャラダインとの友情。自分をかくまってくれた少年ペペの死とそれに対する敵への怒り。 悪役が女性というのはたいへん珍しく、子役が殺されるのを含めて、当時のアメリカ映画にはないものです。 強欲非道な悪女とはいえ、相手が女性ではラストで怒りの銃弾を撃ち込むわけにはいかないのか、間接的に苦悶の末の死を与える結末はなかなかのアイデアです。 主演のマーク・ダモン。「リンゴ・キッド」などもそうだがマカロニのヒーローらしさがあって好演。
2017年04月29日
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「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」は昨年4月14日(木)に創刊号「荒野の用心棒」が発売されてちょうど1年が経ちました。 最新号の第27号は「キラー・キッド」と「行け、野郎、撃て!」の2作品。 DVDはこれで53枚になり、来年4月までの全51号予定なので、あと24号、48作品です。「行け、野郎、撃て!」(1972) ANDA MUCHACHO, SPARA!監督 アルド・フロリオ製作 エドゥアルド・マンザノス・ブロチェロ脚本 アルド・フロリオ、ブルーノ・ディ・ジェロニモ エドゥアルド・マンザノス・ブロチェロ撮影 エミリオ・フォリスコット音楽 ブルーノ・ニコライ出演 ファビオ・テスティ、ホセ・カルヴォ エドゥアルド・ファヤルド、チャロ・ロペス、フランシスコ・サンズ 本編99分 総天然色 シネマスコープサイズ 邦題の「行け、野郎、撃て!」は原題「ANDA MUCHACHO, SPARA!」の直訳とのことで、1971年イタリア・スペイン映画、日本劇場未公開作品。 監督は「五匹の用心棒」のアルド・フロリオ。主演のファビオ・テスティは「荒野の処刑」(75)と「悲しみの青春」(71)があるけれど、日本ではあまり知られていない俳優です。主人公を助ける老人役のホセ・カルヴォは「荒野の用心棒」(64)で酒場のオヤジに扮していて顔なじみ。悪役のエドゥアルド・ファヤルドは「続 荒野の用心棒」でジャクソン少佐役が印象に残っていますが、全体的にスター性の少ない地味な作品であり、日本に輸入されなかった理由もそんなところかと? 強制労働させられていた刑務所から脱獄した主人公ロイ・グリーンフィールド(ファビオ・テスティ)。鎖の足かせで繋がれている仲間といっしょに逃げるが、仲間は途中で力尽きて死に、主人公は出会った老坑夫(ホセ・カルヴォ)に助けられる。老坑夫は男に食事と衣服を与え、さらに「投資」だと云って隠していた金を与える。 ガンマン姿となった主人公は町の床屋を訪ね、「エミリアーノの紹介で来た」と云うと床屋はうろたえて発砲。主人公手練れの抜打撃ちで床屋を倒す。町は横暴な権力者レッドフィールド(エドゥアルド・ファヤルド)に牛耳られていて、坑夫たちを食い物にしている。主人公の早撃ちを伝え聞いて関心を示したレッドフィールドは、彼を雇う。 主人公が何をしようとしているのか、その目的がはっきりしないので、前半の展開が少しもたつく感じがするが、目的が少しずつ明らかになってくると盛り上がりを見せます。脱獄したあとのできごとがフラッシュバックで挿入され、途中で力尽きて死んだ仲間がエミリアーノという名前で、彼がレッドフィールド一味に陥れられて服役していたことがわかり、主人公の目的がその復讐であることが明かされていきます。 本作が制作された1971年は、マカロニ西部劇の世界的ブームは過ぎていて、その内容もアクション路線やコメディ路線が主流になっていたが、本作は「復讐」がテーマの王道を行くものになっている。出演俳優はジェンマやフランコ・ネロのようなスターではないけれども、出演者はイタリア人とスペイン人で占めて、ブルーノ・ニコライの正統派マカロニ西部劇的テーマ曲もあってか、純粋でまっとうなマカロニウエスタンになっています。 主人公が強制労働させられている冒頭シーン。囚人たちがハンマーやツルハシで岩石を割っているのですが、「星空の用心棒」などでも同様な場面があって、これは何をやっているのだろうか? 石を割っているのは何のため? ただの懲罰が目的とは思えないのですが。
2017年04月15日
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1972年頃に映画誌「スクリーン」(近代映画社)や「ロードショー」(集英社)を読んでいた人ならご存じだと思いますが、アメリカ映画俳優バート・レイノルズさん。 バート・レイノルズ Burt Reynolds 1936年2月11日 アメリカ・ジョージア州生まれ「複数犯罪」(72)「脱出」(72)「シェイマス」(72)「白熱」(73)「キャット・ダンシング」(73)「ロンゲスト・ヤード」(74)「ラッキー・レディ」(75)「ハッスル」(75)「トランザム7000」(77)「シャーキーズ・マシーン」(82) 1972年から75年くらいにかけて最も注目された俳優です。72年にはアメリカの女性誌「コスモポリタン」にヌード写真が載って話題になった。当時はテレビ「刑事コジャック」のテリー・サヴァラスと共に最高にセクシーな男といわれました。 このバート・レイノルズさんが「さすらいのガンマン」(66)というマカロニウエスタンに出演していたのを知ったのは近年になってからです。上記の出演作品をすべて公開時に見ていた私ですが、この「さすらいのガンマン」のことは知らなかった。「さすらいのガンマン」はセルジオ・コルブッチ監督(「続 荒野の用心棒」「殺しが静かにやって来る」など)が当時無名だったアメリカ人俳優バート・レイノルズさんを主役に抜擢した作品です。 悪党ダンカン一味がナバホ・インディアンの集落を襲って皆殺しにする。妻を殺され部族民を殺されて、ただ一人生き残った主人公のナバホ・ジョー(バート・レイノルズ)の復讐物語です。日本公開は1967年8月で、8410万円の配給収入をあげている。 クリント・イーストウッドさんがマカロニウエスタンの「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「続 夕陽のガンマン 地獄の決斗」(セルジオ・レオーネ監督の「ドル3部作」といわれる)に出演し、世界的にその名前が知られたことが成功への第一歩になり、アメリカに凱旋して「奴らを高く吊せ!」(68年テッド・ポスト監督)に出演したあとドン・シーゲル監督の「マンハッタン無宿」(68)に出演し、さらに「ダーティハリー」のハリー・キャラハン刑事という当たり役を得て出世街道を進むことになった(セルジオ・レオーネ監督とドン・シーゲル監督はイーストウッドさんにとって恩人である)。 そんなクリント・イーストウッドさんに比べるとマカロニウエスタン出演はバート・レイノルズさんの場合は俳優として成功するきっかけにはなっていないようです。 その代表作といわれる「脱出」や「ロンゲスト・ヤード」がさかんに話題になっていた1972~75年当時はまったく「さすらいのガンマン」にはふれられていず、当然のこと私も知りようがありませんでした。バート・レイノルズさんが俳優として人気を得て成功したのは別の作品、「脱出」あたりからですね。 だからバート・レイノルズさんはマカロニウエスタンに出ていたことがある、というだけでマカロニ西部劇スターとはいえないようです。 マカロニ西部劇スターといえるのは、やはり、クリント・イーストウッドさんと、フランコ・ネロ、ジュリアーノ・ジェンマの3人がその代表的地位にあり、あと日本では評価が低いアンソニー・ステファンさんがいる(マカロニウエスタン最多出演)。 それとイーストウッドさんと同じように鳴かず飛ばずだったリー・ヴァン・クリーフ(「夕陽のガンマン」「続 夕陽のガンマン 地獄の決斗」で共演)にとっても成功へのきっかけとなり、イーストウッドさんがアメリカに帰ったあともイタリア映画界に残ってマカロニ出演を続けました。リー・ヴァン・クリーフさんはマカロニウエスタンにはなくてはならない俳優の一人であり、もしかするとアメリカから出稼ぎに行った俳優では最大の貢献者でもあるのかもしれません。
2017年02月12日
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「荒野の用心棒」(64年イタリア映画 日本公開1965年12月)が世界的に大ヒットしてマカロニウエスタンのブームが巻き起こった。 当時はテレビの「ローハイド」くらいしかなかった俳優クリント・イーストウッドがイタリアに招かれて出演しました。「こんな映画が売れるはずがない」と思ったが「ヨーロッパ旅行ができるから、まあいいか」という軽い気持ちで引き受けたそうです。それが思いもかけずに大ヒットして、イーストウッドさんにとって成功への第一歩となった。 同じ事が、「続 荒野の用心棒」のジャンゴを演じたフランコ・ネロにもいえるようです。「続 荒野の用心棒」(66)、日本公開1966年9月。棺桶を引いて歩く男、ということで強いインパクトがある作品ですが、フランコ・ネロさんはマジメな映画に出たいと思っていたのであまり乗り気ではなかった。しかし勧める人があって出演することにしたそうです。 フランコ・ネロ Franco Nero 1941年11月23日、イタリアのパルマ生まれ。「続 荒野の用心棒」撮影時は24歳。顔が若すぎるというのでヒゲを生やして目尻にシワを描いたとか。 セルジオ・コルブッチ監督はジャンゴ役を「リンゴ・キッド」のマーク・ダモンにほぼ決めていたのがスケジュールの都合がつかないとのことでフランコ・ネロに回ってきた。彼に決まったのは「澄んだ青い眼」が気に入られたからだそうです。 本名はフランチェスコ・クレメンテ・ジュゼッペ・スパラネロ。 それがプロデューサーから「そんなややこしい名前はアメリカ人が発音できないから変えろ」と云われ、名前をなぜかカステッロ・ロマーニにしろと云われた。そんな名前はイヤだと泣いたら、事務所の人がそれでは本名を短くすればいいと云ってくれて、フランチェスコをフランコに、スパラネロをネロにして、フランコ・ネロになった。 しかし前出演作「殺しのテクニック」の時にはフランク・ネロと、アメリカ風だった。フランクではなくフランコになったのは「続 荒野の用心棒」からだそうです。「続 荒野の用心棒」はその暴力場面(神父の耳をナイフで切り取って食わせる)のためにイギリスでは約20年間も上映禁止だったそうだが、ヨーロッパでは高い評価を得ました。棺桶を引いて歩く主人公ジャンゴを演じたフランコ・ネロも高評価を得て、その名前を広く知られることになった。人生、なにが成功のきっかけになるかわからないもの。気が進まなかった「続 荒野の用心棒」に出たことが成功へのきっかけとなりました。 マカロニウエスタンでは「ガンマン無頼」(66)「真昼の用心棒」(66)、「豹ジャガー」(68)「ガンマン大連合」(70)、「ケオマ・ザ・リベンジャー」(77 未公開)。「裏切りの荒野」(67)。「ネレトバの戦い」(69)「哀しみのトリスターナ」(70)「警視の告白」(71)。 エロ映画の「スキャンダル」(76)、「ヒッチハイク」(76)。「ナバロンの嵐」(78)と「ダイ・ハード2」(90)では悪役。 近年ではクエンティン・タランティーノ監督の「ジャンゴ繋がれざる者」(2013)にゲスト出演していました。
2017年02月11日
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「スペシャリスト」(1969)GLI SPECIALISTI監督 セルジオ・コルブッチ脚本 セルジオ・コルブッチ サバティーノ・チュフィーニ撮影 ダリオ・ディ・パルマ音楽 アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノ出演 ジョニー・アリディ、ガストーネ・モスキン フランソワーズ・ファビアン、マリオ・アドルフ シルヴィ・フェネック、セルジュ・マルカン 本編98分 総天然色 シネマスコープサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第19号は「ガンマン無頼」と「スペシャリスト」です。「ガンマン無頼」のほうは500円DVDがあるので容易に見られますが、「スペシャリスト」は珍しい作品ではないでしょうか。 ブラックストーンの町にハッド(ジョニー・アリディ)という男がやって来る。彼の生まれ育った町だが、銀行から大金を奪った罪を着せられて住民にリンチを受けて残虐に殺された兄チャーリーの恨みを晴らしに帰って来た。町の人々は怯えて戦々恐々。 ハッドは保安官(ガストーネ・モスキン)に武装解除されるやいなや刺客に狙われるが手練の早業で返り討ちにする。 兄が殺される前に隠したとされる盗まれた大金。ハッドに近づく銀行経営者の未亡人、幼馴染みの片腕の山賊ディアブロ(マリオ・アドルフ)。 手がかりは焼け焦げのある一枚のドル紙幣だけである。兄が殺された真相を調べていくうちにハッドは偽札をめぐる陰謀と、臆病で強欲な町の住民たちの醜悪さが見えてくる。そして山賊ディアブロ一味が町を襲って来てハッドは単身で戦うことに。 セルジオ・コルブッチ監督のマカロニウエスタンで、日本公開は1972年7月。 初めて見る作品だと思っていたらそうではなかったようで、主人公ハッドが着ている鎖帷子に憶えがあります。もう40年以上も昔に北国第一劇場で見たマカロニウエスタンで、鎖帷子のみを憶えていて、いままでそれが「盲目ガンマン」(1972年10月公開。今もって再見の機会がない)だとばかり勘違いをしていました。 ビートルズのリンゴ・スターが出ていた「盲目ガンマン」と、フランスのロック歌手ジョニー・アリディ主演の本作「スペシャリスト」という点からの勘違いかもしない。 主人公ハッドの孤高の男ぶりが格好いい。逆境にあっても挫けない、群れない、無駄口をたたかない、金銭に執着しない。 セルジオ・コルブッチ監督の代表的傑作とされる「続 荒野の用心棒」のジャンゴ(フランコ・ネロ主)は身勝手で金銭欲の強い主人公だったけれど、本作のハッド(ジョニー・アリディ)の孤高さは「殺しが静かにやって来る」(68)のサイレンス(ジャン・ルイ・トランティニャン)に通じるものかもしれません。そういえば雪は無いが寒々しい撮影地も似通っているような。 映画の字幕では「防弾チョッキ」となっているが、「鎖帷子」というほうがイメージに適っているようです。チェーンメイルアーマーともいい、敵の弾丸をバチーンと跳ね返す。マカロニウエスタンばかりでなく西部劇でこういうのを見るのは大変めずらしいのでは。 ヒッピーのような4人組の若者が出てくるのも、1970年前後の時代に撮られた映画ならではか。
2016年12月26日
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セルジオ・コルブッチ監督のマカロニウエスタン「リンゴ・キッド」(66)。原題は「JOHNNY ORO」で、「黄金ジョニー」という意味だそうな。 それをアメリカでは「RINGO AND HIS GOLDEN PISTOL」というタイトルで公開し、主人公の名前をリンゴにした。「リンゴと彼の黄金銃」といったところか。 そのリンゴから日本では「リンゴ・キッド」としたようですが、リンゴ・キッドはまったく関連がなく、映画ではジョニーという名前にすぎません。 リンゴ・キッドをウィキペディアで調べると、「ジョニー・リンゴ (1850年5月3日 - 1882年7月13日)は、アメリカ西部開拓時代のガンマン、無法者。本名John Peters Ringo。インディアナ州生まれ。 出生に関する経歴は不明だが、南部の出身で教養があり格調の高い英語を話していたという。シェークスピアやラテン文学などの古典を愛読していたとのこと。3人の無法者に兄を殺され、西部の町々を仇をたずねて歩き、出会ったときには、たった3発で彼らを仕止めた。このエピソードは映画『駅馬車』の登場人物、リンゴ・キッドのモデルにされた。 ワイアット・アープと親交があったが、クラントン一家とも交流し牛泥棒や駅馬車強盗を手伝っていた。OK牧場の決闘では、クラントン一家に味方した(銃撃戦に加わってはいない)。OK牧場の決闘の翌年、West Turkey Creek Valley にあった大木の上で死体が発見された。奇妙なことにリンゴの死体からはブーツが脱がされていた。遺体の発見場所から数十キロ離れた所でリンゴが乗っていた馬が発見され、鞍にブーツが残されていたという」 となっています。 映画ではジョン・ウェインがリンゴ・キッドに扮した「駅馬車」(1939)とグレゴリー・ペックの「拳銃王」(1950年ヘンリー・キング監督)があります。 アメリカではビリー・ザ・キッドなどと並んで歴史上のガンマンとして名前が知られているのだろうか。私はどうしても「果物のリンゴ」を連想してしまっていまひとつなじむことができません。「駅馬車」の場合でもジョン・ウェインのキャラクターが前面に出てしまっていてリンゴという役名が印象に残らない。どんな役を演じてもジョン・ウェインになっていて、それが大スターの所以でもあるのだろうけど。 グレゴリー・ペックがリンゴ・キッドを演じた「拳銃王」はずっと昔にテレビ洋画劇場で見たきりなのでぜんぜん憶えていない。格安DVDがあるのでこんど見てみよう。 マカロニウエスタンの「リンゴ・キッド」。黄金のジョニーを演じているマーク・ダモンは「殺して祈れ」(マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクションの第14号)で吸血鬼ドラキュラを思わせるような悪役を演じていて、同じ俳優だとは思えないくらいです。黄金の拳銃と黄金のパイプ。黒ずくめの服装。アメリカの西部劇だったら恥ずかしくてできないスタイルではないか。それを平然とやってしまうあたりが西部劇ごっこともいえるマカロニウエスタンならでは。
2016年12月20日
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「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」の第16号に「ウエスタン」とともに収録された「リンゴ・キッド」を鑑賞しました。「リンゴ・キッド」(1966) JOHNNY ORO 英題 RINGO AND HIS GOLDEN PISTOL監督 セルジオ・コルブッチ製作 ジョゼフ・フライド脚本 アドリアーノ・ボルツォーニ フランコ・ロゼッティ撮影 リカルド・パロッティーニ音楽 カルロ・サヴィーナ 出演 マーク・ダモン、エットレ・マンニ、フランコ・デ・ローサ ヴァレリア・ファブリッツィ、ジュリア・ルビーニ、ロリス・ロディ 本編86分 装天然色 ヨーロピアンビスタ この「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」ではセルジオ・コルブッチ監督作品がつぎつぎと収録されています。代表的な「続 荒野の用心棒」「殺しが静かにやって来る」だけでなく、「さすらいのガンマン」「豹ジャガー」「ガンマン大連合」などの有名どころの他に、未公開作の「黄金の棺」。そして今回は「リンゴ・キッド」が、さらに12月22日発売の第19号には「スペシャリスト」が予定されています。「リンゴ・キッド」の日本公開は1966年10月。マカロニ西部劇としては「続荒野の用心棒」(66年9月公開)が最初で、それに次ぐ公開第2作目になります。 黄金の拳銃を持つ賞金稼ぎのジョニー(マーク・ダモン)は、その早撃ちでメキシコ人悪党一味を射殺。賞金のかかってないホアニト(フランコ・デ・ローザ)を賞金がかかっていないので見逃す。 ジョニーが向かった町ゴールドストンは保安官(エットレ・マンニ)の方針で銃の携帯が禁止されていた。兄弟を殺された復讐のためにホアニトは次々に殺し屋を差し向ける。だが、保安官に銃を取り上げられて丸腰のジョニーは機転を効かせて刺客を返り討ちにする。業を煮やしたホアニトはインディアンと手を組んで町を襲撃する。保安官は拘留中のジョニーに銃を返し、町を守るべく戦いが開始される。 賞金首の悪党を倒して受け取る賞金を、紙幣は信用できないとして金貨(きん)で受け取るのをモットーにしているキザな賞金稼ぎジョニーが主人公のマカロニウエスタンの秀作です。「続 荒野の用心棒」のようなあくの強さがなく、どちらかといえばアメリカ西部劇のタッチに近い。町に入る者を武装解除して銃をあずかる保安官。そしてガンマンにあこがれる幼い息子(ロリス・ロディ)など「シェーン」を思わせる。子役が活躍するマカロニウエスタンというのは、あまりない(「帰って来たガンマン」があるけど)なかで、これを撮ったのが「続 荒野の用心棒」「殺しが静かにやって来る」と同じ監督とは思えないくらいです。 黄金の銃を持つ男、黒ずくめのガンマン ジョニーを演じるマーク・ダモン。邦題はなんでか「リンゴ・キッド」などとあさっての方へ向いているけれど、この主人公はマカロニらしい格好良さがあってとても良い感じです。軽快なマカロニ西部劇の秀作として必見の一作。このような作品が見られるのは嬉しい。 町の広場に古い大砲がおいてある。町に来た主人公が「町は少しも変わっていない。大砲が少し錆びただけだ」と云う。保安官が「無用の長物だ」と答えるが、この大砲の扱いかたも気が利いています。
2016年12月19日
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「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第17号(11月24日発売)は「皆殺しのガンファイター」と「荒野の復讐」でした。「皆殺しのガンファイター」(1969) A MAN CALLED JOE CLIFFORD UN UOMO CHIAMATO APOCALYSSE JOE監督 レオポルド・サヴォーナ 脚本 エドゥアルド・ブロチェロ レオポルド・サヴォーナ 撮影 フリオ・オルタス 、フランコ・ヴィラ 音楽 ブルーノ・ニコライ 出演 アンソニー・ステファン、エドゥアルド・ファヤルド フェルナンド・セルリ、メアリー・パズ・ボンダル、ヴェロニカ・ロロセック 本編91分 総天然色 シネマスコープサイズ 1965年から1975年のあいだに27本のマカロニウエスタンに出演したアンソニー・ステファンの日本未公開作である「皆殺しのガンファイター」(1970)。 アンソニー・ステファン主演作は、この「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」では第10号の「砂塵に血を吐け」につづいて2本目の収録です。 シェイクズピア演劇好きの暴れん坊ジョー・クリフォード(アンソニー・ステファン)が保安官に捕まって留置されているのを叔母が保釈金を払って出させる場面から始まります。 ジョーは出たくないと云うが、叔母は強引に保釈させて、彼に仕事を依頼する。叔父が金鉱を持っているのだが、その叔父が崖から転落して死んだという。叔父の遺言で金鉱を引き継いだジョーは、叔母にたのまれて金鉱があるランドベリーという町へ向かう。着いてみると、叔父の金鉱は町の有力者バーグ(エドゥアルド・ファヤルド)の所有になっていた。バーグが云うには、賭博で負けた叔父がバーグに譲ったのだと。叔父は酔って崖から落ちて死んだのだと。納得がいかないジョーは町に滞在して真相をさぐろうとするが、悪党のバーグはジョーの命を狙う。 クリント・イーストウッド、フランコ・ネロ、ジュリアーノ・ジェンマに次ぐマカロニウエスタン第4のスターと云われたりするアンソニー・ステファン。でも日本ではあまり評価されず、確かに見ていて颯爽とせず、殴り合いをやってももたついてそんなに強くない。どこか頼りない感じがする。そんなことで私もしばらく前までは「なんだかな~」と思っていたのだが、現在はその「颯爽としない」のが愛敬というか、魅力を感じるようになって、マカロニウエスタンのスターではジュリアーノ・ジェンマと並ぶくらいに好きになってしまいました。「皆殺しのガンファイター」を見るのはこのDVDが初めてです。第16号収録の「ウエスタン」を超大作(A級作品)とすれば、本作はその対極にあるといえる低予算(B級作品)です。 マカロニウエスタンの魅力は本作のようなB級作品にあるのでしょう。「バカバカしいな」「ヘタクソだな」「んなアホな~」と思いながらも、可笑しがりながらも、最後まで見てしまう。それがマカロニウエスタンの楽しさなのだろう。「生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ」としゃれこうべを抱えた主人公が悪党?を撃ち倒すオープニングから始まり、乗っ取られた金鉱を奪い返すために悪党一味に挑戦する。 多勢の悪党一味相手に、後半ラスト30分間のマカロニ最長ともいえる銃撃戦が展開される。主人公に味方するのは床屋の爺さんと娘、酒場のねえちゃんとバーテン、たった4人。押し寄せてくる敵は30人。 トリックプレイで敵を撃ち倒してゆくのだが、敵30人というのに倒しても倒しても一向に減らず、まだいるのかい?と。(いちど数えてみるといいかもしれない) 飄々とした床屋の爺さんが好演していて、彼とバーテンが撃たれてしまった時は「何でだ!」とショック。床屋の爺さんは怪我しただけで生きていたが、バーテンは生死不明。酒場のねえちゃんは撃たれて死んだのは可哀想。死なせる必要があったのか! 悪党を一掃した主人公が「ロンドンへ行ってシェイクスピアに会う」と云って、床屋の爺さんにあとを託して町を去って行く。それを見送って、娘が「シェイクスピアってだれ?」と問うのに爺さんが「海の向こうのガンマンじゃろ」と答える。
2016年11月29日
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11月10日(木)に発売された「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」の第16号は「ウエスタン」と「リンゴ・キッド」です。「ウエスタン」(1968)はセルジオ・レオーネ監督の最高傑作(と私は思っている)です。マカロニウエスタン、イタリアン・ウェスタンズとしても最高傑作であり、本場アメリカの西部劇を含めてもベスト10上位に位置する傑作西部劇だと思います。 でも、本作のDVDとブルーレイソフトが1000円、1500円で買える現状では、「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」に収録するのはちょっと時期尚早なのではないか?、後回しにして、もっとマイナーな珍しい作品を優先的に収録するべきなのでは? 大好きな作品なので、まあ良いけれど。「ウエスタン」についてはこれまでに何度も書いたので、ここでは簡単に。「ウエスタン」ONCE UPON A TIME IN THE WEST (伊題)C'ERA UNA VOLTA IL WEST監督 セルジオ・レオーネ 製作 フルヴィオ・モルセラ原案 セルジオ・レオーネ、ダリオ・アルジェント ベルナルド・ベルトルッチ脚本 セルジオ・レオーネ セルジオ・ドナティ撮影 トニーノ・デリ・コリメイクアップ ジャネット・デ・ロッシ音楽 エンニオ・モリコーネ 出演 チャールズ・ブロンソン、ヘンリー・フォンダ、クラウディア・カルディナーレ ジェイソン・ロバーズ、ガブリエル・フェルゼッティ、フランク・ウォルフ 本編165分 総天然色 シネマスコープサイズ「ウエスタン」は日本ではアメリカ公開版が劇場公開されたので(1969年10月。石川県は翌年1月末か2月頃だった。北国シネラマ会館)原題は「ONCE UPON A TIME IN THE WEST」として知られているけれど、この「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」版のジャケットには伊題で「C'ERA UNA VOLTA IL WEST」となっている。「かつて西部があった」という意味だそうですが、このDVDにイタリア語音声が入っているわけではありません。英語と日本語吹替え音声、音声解説なので内容は既発売DVDソフトと同じです。 撮影はスペインだけでなくアメリカのモニュメントバレーでもロケをおこなった(ジルが馬車を雇ってマクベイン家へ向かう道中シーン)。その赤い土をわざわざスペインへ運んだそうです。マカロニ西部劇はスペインの白っぽい土色が特徴だが、この「ウエスタン」は赤っぽい土色が印象に残り、そのためかマカロニのニオイが薄い感じがします。 出演俳優のチャールズ・ブロンソン、ヘンリー・フォンダ、ジェイソン・ロバーズ、それにオープニングでのジャック・イーラムとウディ・ストロードなどアメリカ映画勢が豪華に顔を見せているのでなおさらマカロニらしさが薄まっているのかもしれません。 鉄道の開発と利権をめぐっての野望。そのために開拓者マクベイン一家がジャマになり殺し屋フランク(ヘンリー・フォンダ)をさし向けて皆殺しにした。そのマクベインと結婚するために東部からやって来た女性ジル(クラウディア・カルディナーレさんが美しい)。そして彼女を守るためにハーモニカの男(ブロンソン)とシャイアン(ジェイソン・ロバーズ)が力を貸す。ハーモニカの男と悪党フランクの因縁の対決をクライマックスに、町の開発発展と鉄道敷設をテーマにした超大作西部劇です。このようなスケールの大きさという点でも従来のマカロニウエスタンにはないものです。 アメリカの良心ともいわれる大スター ヘンリー・フォンダが悪役を演じている。子供まで殺す極悪非道な男。この役に批判的な意見もあるようですが、私はさすがに名優ヘンリー・フォンダさんならではの悪役ぶりだと感心して見ています。彼の前に現れてジャマをするハーモニカの男。この謎の男はいったい何者なんだ?と。最期の時になってようやく思い出す。ハーモニカ?、あの時の奴かと。エンニオ・モリコーネの迫力ある音楽「復讐のバラード」が場面を盛り上げます。 演出、撮影、音楽、出演俳優の豪華さ、超一級品のマカロニウエスタンです。
2016年11月19日
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「黄金の棺」(1966)THE HELLBENDERS監督 セルジオ・コルブッチ脚本 アルバート・バンド、ウーゴ・リベラトーレ撮影 エンツォ・バルボーニ音楽 エンニオ・モリコーネ出演 ジョゼフ・コットン、ジュリアン・マテオス、ノーマ・ベンゲル ジーノ・ベルニーチェ、エンジェル・アランダ アルド・サンブレル 本編88分 総天然色 ビスタサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」の第13号は「黄金無頼」と「黄金の棺」ですが、この書店販売のDVDシリーズも、このようなちょっと珍しい、マイナーな作品が収録されるようになりました。「黄金の棺」はセルジオ・コルブッチ監督の1966年作品。日本では劇場未公開です。 位置的には「続荒野の用心棒」(66)と「さすらいのガンマン」(66)の間に入るのでしょうか? 南北戦争が南軍の敗北によって終結した直後の頃。 約40人の護衛兵に守られた北軍の現金輸送馬車が襲われて、皆殺しにされた末に積んでいた150万ドルが奪われる。 奪ったのは南軍のジョナス大佐(ジョゼフ・コットン)とその3人の息子たち。彼らは奪った札束を馬車に載せた棺桶に入れ、戦死したアレン大尉の棺ということにして故郷に埋葬するために旅しているように偽装する。 ジョナス大佐は南軍の敗北を認めず、奪った金を軍資金にして南軍を再興し、戦争を続けようと夢見ている。棺を運ぶ旅にアレン大尉の未亡人役が必要だとしてキティという女を雇ったが、これがアル中の強欲なあばずれだったために危うく窮地に陥り彼女を殺してしまう。 旅をつづけるためにどうしても未亡人役の女性が必要な彼らは、クレア(ノーマ・ベンゲル)という女賭博師を雇う。 クレアをメンバーに加えたジョナス大佐と3人の息子、ジェフ、ナット、ベン(ジュリアン・マテオス)たち5人は、南部の故郷へと道を急ぐが、行く手には北軍の検問、自警団、山賊、インディアンの集落などの難関が待ちうけているという物語です。 棺を馬車に載せて5人の男女が旅をするというロードムービーです。 父親のジョナス大佐は偏執狂的な人物で、南軍が敗北したあとも戦いをあきらめない。見ていて、いまさら一個人の力で何ができるか?と思うし、3人の息子の、末子のベンは腹違いということでまともな好男子だが、長男と次男は胸くそ悪いろくでなしなので、困難を乗り越えて旅するこの親子を応援や心配をする気にならないのが難点。 途中で北軍の巡邏隊や、保安官に率いられた町の自警団に遭遇して棺の中を調べられそうになったり、棺の中の故人を知っているという町の牧師に出会ったりして、どうなるハラハラな場面があったりするが、そこまでです。 先に見た「黄金無頼」は素人が撮ったようなヘタクソな映画だったけれど、この「黄金の棺」はさすがにプロが撮ったと思える、撮影も見事だし、物語に緊張感もあるし、構成もしっかりしています。 でも、どっちが好みか?と問われるとヘタクソな「黄金無頼」の方と答えるしかありません。 冒頭の場面で北軍の現金輸送隊の兵士が、積荷の札束が旧札であり回収するために運んでいるんだと云ってますね。それを知らない主人公たちが40人の兵士を皆殺しにしてまで強奪し、その紙くず同然の札束を後生大事にして運ぶ話です。 地獄へ向かって旅をしているような、救いのない物語。 ようするに、映画ってのは見る人にとって「好き」か「嫌い」のどちらかで、私はこの映画は「嫌い」です。 同じセルジオ・コルブッチ監督の「続 荒野の用心棒」も「さすらいのガンマン」も日本でヒットしたのに、本作が日本の配給会社に買われなかったのは、この作品に魅力が感じられなかったのが理由かもしれない。
2016年10月10日
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「黄金無頼」(1967) PROFESSIONISTI PER UN MASSACRO監督 ナンド・チチェロ製作 オレステ・コルテラツィ脚本 ヘザス・バルカザーニ ロベルト・ジャンヴィッティ ホセ・アントニオ・デ・ラ・ローマ エンツォ・デラクィラ撮影 フランシスコ・マリン 音楽 カルロ・ペス出演 ジョージ・ヒルトン、ジョージ・マーティン、エド・バーンズ ジェラルド・ハーター、モニカ・ランドール、ホセ・ボダロ 本編89分 総天然色 シネマスコープサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」の第13号は「黄金無頼」と「黄金の棺」です。どちらもこれまでに見たことがない作品で、今回がまったくの初鑑賞。「黄金無頼」の日本公開は1969年4月です。 このようなマカロニウエスタンがあるのは知りませんでした。1969年といえばすでに映画館へはよく通っていたし、映画誌「スクリーン」も毎月購読していたのに。 時は南北戦争の真っ最中。武器不足の南軍はメキシコ人から銃器を買おうとしていたが、その購入を担当したたロイド少佐(ジェラルド・ハーター)が資金の金塊を奪って逃走してしまう。 南軍の将軍は銃殺刑に処される寸前だった3人のごろつき兵士スティール、フィデル、ジムを、罪を赦す条件で、ロイド少佐から金塊を奪還する任務を与えます。 戦争のどさくさで一儲けをたくらむ3人組のスティール(ジョージ・ヒルトン)は元神父なのに爆薬の専門家。フィデル(ジョージ・マーティン)は馬泥棒のプロ。ジム(エド・バーンズ)は早撃ちの銀行強盗。 かくして一筋縄ではいかない3人組はお目付役のローガン中尉といっしょに軍資金の金塊を強奪して逃げたロイド少佐一味を追跡することになる。 金塊をめぐって、追う者、追われる者、それを横から奪うメキシコ山賊の一味がしてやったりやられたりを繰り広げる。 爆薬、馬泥棒、射撃など特技を持った男たちが、戦争のどさくさの中で一儲けを狙う話ですが、いかにもマカロニウエスタンらしい、適当に物語をでっちあげたようなお手軽感のある一作です。 砲弾炸裂する戦場なのに、銃を持って走る南軍兵たちの姿に緊張感がなくチョコチョコという感じで走り回る素人くさいオープニング。見ていて最初っから脱力してしまうような、へたくそな演出。 登場するガトリング機関銃もブリキ板とパイプで作った、いかにもヘナチョコ機関銃ぶり。 このお手軽感のある素人臭さとヘタクソ感がマカロニウエスタンのひとつの特徴であると云ってしまえばそれまでですが、マカロニウエスタンのファンにとっては、このヘタクソ感もご愛敬であり、笑って許せるというところか。 ジョージ・ヒルトンは「真昼の用心棒」でフランコ・ネロの兄貴を演じたり、「荒野の無頼漢」などでもお馴染みだし、ジョージ・マーティンもジュリアーノ・ジェンマ主演の「夕陽の用心棒」「続・荒野の1ドル銀貨」などで知られる顔です。エド・バーンズはご存じテレビ映画「サンセット77」でお茶の間の人気を集め、その後マカロニウエスタンにアメリカから出稼ぎに来た俳優の一人。 金塊を奪って逃げた南軍のロイド少佐を演じているのは「復讐のガンマン」でリー・ヴァン・クリーフと決闘するオーストリアの男爵役で印象に残っている俳優です。 その金塊を横取りするメキシコの山賊親分のホセ・ボダロは「続 荒野の用心棒」でもメキシコの山賊を演じていました。出演俳優はその顔をよく見かける方々です。
2016年10月07日
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「帰って来たガンマン」(1966)UN FIUME DI DOLLARI 英題 THE HILLS RUN RED監督 リー・W・ビーヴァー (カルロ・リッツァーニ)製作 エルマンド・ドナティ、ルイジ・カルペンティエリ 製作総指揮 ディノ・デ・ラウレンティス 原案・脚本 ディーン・クレイグ(ピエロ・リニョーリ)撮影 トニ・セッチ音楽 レオ・ニコルス(エンニオ・モリコーネ)出演 トーマス・ハンター 、ヘンリー・シルヴァ ダン・デュリエ、ナンド・カツォーロ、ニコレッタ・マキャヴェリ ロリス・ロディ、ジアンナ・セラ 本編90分 総天然色 シネマスコープサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第12号(9/15発売)は「帰って来たガンマン」と「ザ・サムライ荒野の珍道中」です。「帰って来たガンマン」(66)は1967年3月に日本公開され、9700万円の配給収入は当時の入場料金が300円くらいとすれば、ブームに乗ってヒットした作品といえるのでしょう。 南北戦争が終わりにさしかかっている頃、北軍の軍資金60万ドルを盗んで逃げた2人組ジェリー・ブルースター(トーマス・ハンター)とケン・シーガル(ナンド・カツォーロ)。騎兵隊に追われた彼らは逃げられないと悟り、どちらかが囮になることにしてクジ引きをする。クジに負けたジェリーは妻子の面倒を頼んで相棒を逃がし、追跡隊に捕まります。 5年間の服役を終えて刑務所を出所したジェリーは妻と息子の待つ故郷へと帰るが、彼がそこで聞いたのは金を独り占めして大牧場主として成り上がったシーガルのあくどい評判で、頼んでおいたはずの妻は生活苦の末に死に、一人息子は行方不明になっていた。 ジェリーの出所を知ったシーガルは殺し屋をさし向けるが、そんなジェリーの危機を救ったのはウィニー・ゲッツ(ダン・デュリエ)と名乗る男だった。ジェリーはこの謎の男ウィニー・ゲッツの助力を得て憎むべき仇敵シーガルとその腹心メンデス(ヘンリー・シルヴァ)一味に戦いを挑んでゆく。 製作エルマンド・ドナティ、ルイジ・カルペンティエリ、製作総指揮 ディノ・デ・ラウレンティス は「さすらいのガンマン」と同じで、この2作品は同時に並行して撮影されたそうです。「さすらいのガンマン」は1967年8月に日本公開され、これも好成績(配収8410万円)。配給会社は同じユナイトです。 セルジオ・コルブッチ監督の「さすらいのガンマン」はマカロニウエスタンらしい残酷描写があったけれども、こちらはあまりマカロニらしさはなく、どちらかといえばアメリカの西部劇のような雰囲気を感じます。この本場西部劇の雰囲気は謎の男ダン・デュリエと主人公の息子を演じる子役ロリス・ロディの好演によるものだろうか。 ダン・デュリエはアメリカの西部劇ではお馴染みの悪役スター俳優だし、子役が重要な役で登場することの少ないマカロニウエスタンでは珍しく、主人公が生き別れになった息子を健気に愛らしく演じる子役がほのぼの感を醸し出しているようです。子役のほのぼの感などマカロニではありようが無いものであり、アメリカ映画らしさを感じる所以です。 主人公の復讐に謎の男が付き合って、力を合わせて押し寄せてくる悪漢一味と対決する。ダイナマイトを使った戦いは見応えあるものですが、銃の撃ち合いが少ない点がちょっと物足りない。拳銃での決闘や、抜き撃ちで一瞬のあいだに数人の敵を倒すような場面があればよかったのに。 けっして傑作ではないけれども、女優さんもきれいだし、マカロニウエスタンとしてはじゅうぶんに水準作だと思います。ダン・デュリエはゲスト出演のような扱いで、その存在感は名優といわれるだけのことはある。 エンニオ・モリコーネの音楽はマカロニ主題曲を収めたCDやレコードではおなじみの定番曲ですね。
2016年09月17日
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「群盗荒野を裂く」(1966)QUIEN SABE?監督 ダミアーノ・ダミアーニ脚本 サルヴァトーレ・ラウリーニ撮影 トニ・セッチ音楽 ルイス・エンリケス・バカロフ エンニオ・モリコーネ出演 ジャン・マリア・ヴォロンテ、ルー・カステル クラウス・キンスキー、マルティーヌ・ベズウィック カルラ・グラヴィーナ 本編118分 総天然色 シネマスコープサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第11号に収録の「群盗荒野を裂く」を鑑賞しました。 この書店販売のDVDシリーズ、今回の第11号で全21作品になるわけですが、本作はその中でも屈指の傑作ではないかと思います。 ジャン・マリア・ヴォロンテという俳優は「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」を見るとその演技が過剰というかオーバーすぎる感じがするのですが、本作ではさすがに演技派というべきか、彼がオーバーな演技をしがちなところを監督が抑えたのか?わからないけれど、顔の表情で見せる、さすがの好演です。 革命の嵐が吹き荒れる1910年代のメキシコ。エル・チュンチョ(ジャン・マリア・ヴォロンテ)が率いる盗賊団が列車を襲うところから物語が始まります。 盗賊団の首領チュンチョは粗野で無教養な男であり、政府軍が武器弾薬を運ぶ列車を襲って、その積み荷を奪い、革命軍のリーダー エリアス将軍に売りつけようとしている。チュンチョもその仲間も革命の理念に共鳴したわけではなく、武器を売って金を得るのが目的なだけ。 チュンチョたちが襲った列車に乗り合わせていたアメリカ人青年ビル(ルー・コステル)が運転士を射殺して列車を停止させ、なぜかチュンチョに協力。ビルはチュンチョに取り入って仲間に加わる。 スーツを着こなして都会的な男ビルと、粗野で読み書き計算もできない無教養な男チュンチョだが、2人はなぜか馬が合い、チュンチョはビルを気に入ってしまう。 奪った武器弾薬を革命軍のところへ早く運びたいビル(隠された思惑がある)と、途中で彼らが立ち寄った、虐げられた貧しい村の解放に手を貸したいチュンチョ。 大地主を処刑して村を解放するが、すぐに政府軍がやって来るだろう。こんな所に長居しないで先を急ごうと云うビルはチュンチョの仲間たちを誘って、村を守ろうとするチュンチョとその弟を村に残して、袂を分かって出発する。 ところが、とっておきの武器である機関銃をビルたちが持ち去ったのを知ったチュンチョは弟が止めるのをきかずにビルたち一行のあとを追う。そして追いついた所へ政府軍が現れて銃撃戦になり、チュンチョとビルは政府軍を機関銃でなぎ倒す。 列車を襲い、政府軍の駐屯地を襲い、武器弾薬を奪って革命軍リーダーのエリアス将軍に売りつけようとするチュンチョたち盗賊団。彼らと行動を共にするアメリカ人のビルの目的があきらかになってくる。 ビルはチュンチョを利用して、みごとその任務を果たし、報酬の大金を得る。 裏切られたチュンチョが現れてビルを殺そうとするが、ビルは大金を2人で山分けしていっしょにアメリカへ行こうと誘う。その誘いにのってアメリカへ行くつもりになったチュンチョだが。 アメリカへ向かう列車に乗る直前になってチュンチョはビルを撃ち殺します。「なぜだ?」と呆然と問うビルにチュンチョは「わからん」と云う。チュンチョはなぜビルを撃ったのか?、彼にもはっきりとはわからない。 祖野な盗賊だったチュンチョが革命意識を持ったとか、愛国心とか民族意識にめざめたとか、信じた男の裏切りを許せないとか、そういうことではないだろう。 ビルに誘われて大金を持ってアメリカへ行って贅沢な暮らしをする気になった、しかしそれをやめてチュンチョはビルを撃ち殺した。 冒頭場面で、列車のキップを買うのに並んで順番を待っているメキシコ人たちを無視して先頭に割り込むアメリカ人青年のビルが描かれます。少年が「おじさん、メキシコが好き?」と聞くと、ビルは「嫌いだね」と云う。 同じ駅の場面がラストでもあって、ここでもビルは並んで列をつくっているメキシコ人を押しのけるように無視してキップを買う。それをチュンチョが見た、ということですね。傲慢なアメリカ人ビルを見て、チュンチョは自分を取り戻す。 発車の汽笛がなって出発する、ビルが早く列車に乗れよと云うのに、「やっぱりアメリカへ行くのはやめる」と云ってチュンチョはビルの腹を撃つ。「なぜだ?」とビル。 ビルが稼いだ汚い金を半分もらったチョンチョは、その大金を貧しい靴磨きの青年にやってしまう。「その金でパンを買うなよ!、腹をこわすからな!」と言い残してチュンチョが駆け去って行くラストシーン。 アメリカなんかへ行って贅沢な暮らしをする、それは自分なんかのすることではないし、アメリカは自分の居る場所ではないだろう。自分は野卑な盗賊以外の何者でもないし、少なくともアメリカ人と同じではないし、アメリカは自分の行くべき所ではないのだ、そしてビルを撃ったのは人間としてのケジメをつけたということか。 メキシコ革命もののマカロニウエスタンの傑作です。 アメリカ人のビルを演じるのは、先日見た「殺して祈れ」で知ったばかりのルー・コステル。 演技派ジャン・マリア・ヴォロンテを相手に負けていない、良い演技をしています。
2016年09月07日
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「戦場のガンマン」(1968)5 PER L'INFERNO 英題 FIVE FOR HELL監督 フランク・クレイマー製作 パオロ・モッファ、アルド・アッドバティ原案 セルジオ・ガローネ脚本 レナート・イッツォ ジャンフランコ・パロリーニ音楽 ヴァスコ・マンキューソ出演 ジョン・ガルコ、クラウス・キンスキー マーガレット・リー 、ニック・ジョーダン サル・ボルゲーゼ、ルチアノ・ロッシ、 本編94分 総天然色 シネマスコープサイズ「戦場のガンマン」(68)はマカロニコンバットと称されるイタリア製戦争映画の一本です。 日本公開は1969年8月。金沢では香林坊にあった「小劇場」で、「テキサスの七人」「ジブラルタル海峡」との3本立て上映でした。当時はマカロニウエスタンのブームが終わりにさしかかっていて、西部劇にかわるジャンルとして戦争映画か?といわれましたが、マカロニコンバットは数本だけで、ブームにはならなかった。 監督のフランク・クレイマーは変名で、ジャンフランコ・パロリーニのことです。脚本のジャンフランコ・パロリーニと同一人物ですね。 アメリカ軍のホフマン少尉(中尉?)が率いる5人の特務隊がドイツ軍司令部に潜入して機密書類を奪取する話。 ドイツ軍内に潜入している女スパイ(マーガレット・リー様)が手引きして、彼女に色目をつかっている親衛隊の大佐(クラウス・キンスキー)を色仕掛けでたらしこんでいるすきに司令部内に潜入するが、彼女がスパイだと発覚して銃殺刑にされてしまう。 眼前での銃殺刑に、なすすべもなく彼女を見殺しにせざるをえない。そのあとでの派手な銃撃戦はまさにマカロニウエスタンばりの展開。潜入した特務隊メンバーに犠牲者を出しながらも、なんとか脱出に成功し、任務を達成する、というストーリーです。 特務隊を率いるホフマン少尉を演じるのがジョン・ガルコ。ジャンニ・ガルコの変名です。 今ではジャンニ・ガルコは日本の映画ファンというより、マカロニウエスタンのファンには知られた存在だが、当時の日本ではまだそれほど有名ではなかったようです。 カトリーヌ・スパークと共演した「太陽の下の18歳」(62)「狂ったバカンス」(62)。マカロニ西部劇「二匹の流れ星」(67)「砂塵に血を吐け」(67)があるけれど、ジュリアーノ・ジェンマのような人気俳優ではありませんでした。「砂塵に血を吐け」の悪役サルタナが欧州では話題になって「サルタナ」シリーズが作られたくらいなのに、日本ではまったく、といっていいほどだった。 映画誌「スクリーン」を毎月購読していた私でもジャンニ・ガルコ、ジョン・ガルコの名をまったく知らず、この「戦場のガンマン」で初めて知ったしだい。一緒に見に行った友人と「コンバット」のサンダース軍曹となんとなく似ているね、と言い合ったくらいです。 邦題の「戦場のガンマン」はあきらかにマカロニウエスタンを意識したものですね。 公開当時は主演のジョン・ガルコなど、まだ知らなかったけれども、今になって見ると、これはマカロニウエスタンの匂いがプンプン感じます。 数人のメンバーが集められて特殊任務につくというのはこの1968年、69年頃のブームであり、プロフェッショナルたちがチームを組んで、不可能と思える目的に挑戦する(泥棒が多い)映画が流行していた、その変形のひとつです。 先日、「スレッジ」をマカロニウエスタンのジャンルに入れるのは問題がある、と書きましたが、少しもマカロニウエスタンらしさのない「スレッジ」なんかより、この「戦場のガンマン」のほうがよほどマカロニウエスタンだとは云わないまでも、それらしさがあるのではないか。マカロニウエスタンとするには最低限、監督はイタリア人であるべきだろう。 マカロニウエスタンとは何か?、もちろんイタリアを中心に西ドイツ、スペイン、ユーゴスラビアが参加して製作した西部劇のこと。基本的には西部劇の贋物であり、外国人による西部劇ごっこです。 ごっこ、というのは日本の時代劇ならチャンバラだし、アメリカの西部劇なら拳銃の撃ち合いと決闘でしょう。なのでそれをアメリカ人ではないヨーロッパ人が西部劇ごっことして映画にするなら当然のことにテーマ性よりも「拳銃の撃ち合いと決闘」に重点が置かれなければならないはず。 そしてなにより重要なのは「いかがわしさ」と「泥くささ」があることです。アメリカ人が監督してアメリカ人俳優たちが中心となった「スレッジ」はマカロニと同じスペインで撮影したとしても、そこに「いかがわしさ」がなく、少しもマカロニウエスタンらしさが感じられないのは当然のこと。「戦場のガンマン」は単純明快なストーリーで、考証もなにもなく、かなり「いかがわしい」。 マカロニウエスタン好きな人なら、けっこう楽しめる作品です。 敵の司令部に、女スパイが色仕掛けで敵の大佐をたぶらかしているうちに潜入し、女スパイが発覚して銃殺され、もうれつな撃ち合いになって敵をやっつける。ただそれだけの映画ですが、この単純さといかがわしさと、色っぽい女優さんの登場。マカロニの典型です。
2016年08月30日
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書店で隔週木曜刊のマカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション。 今年4月14日に創刊号「荒野の用心棒」が出て、第2号から2作品収録として、今月18日に第10号が発売された。買いもらしがないので、これでDVD19枚、マカロニ西部劇映画19作品がそろいました。 1960年代後半に世界的なブームをまきおこしたイタリア製西部劇。1970年代初頭あたりまで外国映画のひとつのジャンルとして存在したが、いつの間にか消滅して無くなっていた。 私にとっては思い出深いものがあり、中学生の頃にはラジオやレコード盤を通してその主題曲を聴いていた。「荒野の用心棒」の「さすらいの口笛」や「続 荒野の用心棒」の主題歌「さすらいのジャンゴ」などが大ヒットしてヒットチャートにのぼり話題になったのをおぼえているし、映画館でマカロニウエスタンを見ることができた、私はギリギリ間にあった世代なのかもしれない。 第10号(8月18日発売)は「砂塵に血を吐け」と「夕陽の用心棒」です。「砂塵に血を吐け」はアンソニー・ステファン主演ですが、ヨーロッパでは悪役サルタナを演じたジャンニ・ガルコが注目されたとか。ジャンニ・ガルコの狂気じみた悪役サルタナがそれほどまでに良かっただろうか?と思うのですが、日本では公開当時に話題になった記憶もないし、ちょっと印象に残る悪役といった程度ではないか。 DVDを日本語吹替え音声で見ていると、サルタナが悪徳判事を射殺する場面で「星空の用心棒」の音楽が使われている。この同場面を「イタリア語・字幕」で見ると音楽が入っていませんね。テレビ放送の吹替え収録のさいに効果音楽として日本のテレビ局が他のマカロニ作品から音楽をもってきて入れたのでしょう。「夕陽の用心棒」はジュリアーノ・ジェンマの西部劇初主演作です。 既発売のDVDは画質があまり良くないのでこの「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」収録に期待があったのですが、内容は既発売DVDとまったく同じものでした。画質も字幕翻訳もまったく同じ。現時点ではこれしかないのか?もっときれいな画質のフィルムはないのか?、ちょっと残念。 次号(第11号)は「群盗荒野を裂く」と「バンディドス」です。 そのあとの予定は何だろうか?
2016年08月23日
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「砂塵に血を吐け」(1966)1000 DOLLARI SUL NERO監督 アルバート・カーディフ脚本 エルネスト・ガスタルディ ヴィットリオ・サレルノ撮影 ジーノ・サンティーニ音楽 ミケーレ・ラチェレンツァ出演 アンソニー・ステファン、ジャンニ・ガルコ(ジョン・ガルコ) エリカ・ブラン、ジェリー・ウィルソン、アンジェリカ・オットー キャロル・ブラウン 本編104分 総天然色 シネマスコープサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第10号(8/18発売)は「砂塵に血を吐け」と「夕陽の用心棒」です。「砂塵に血を吐け」の既発売DVDは高額なので手が出ず、今回の収録はたいへんありがたく嬉しい。 日本公開は1968年4月。これまでに見たことがなかった作品で、初めての鑑賞です。 見始めて「あれ?」と思ったのは主題曲に聴いた記憶がある。トランペットが高々と鳴り響くカッコ良い曲です。かつて持っていたレコード盤に入っていたのを聴いたのだろうか? 殺人の濡れ衣を着せられて服役していた主人公ジョニー(アンソニー・ステファン)が12年ぶりに(吹替えでは8年)故郷の町へ帰ってきた。彼は弟のサルタナ(ジャンニ・ガルコ)が兄の恋人を暴力で奪って妻にし、さらに多勢の手下を率いて近隣の町を荒らし回っていることを知る。ジョニーは正義のため、悪事やりたいほうだいの弟と対決することになる。 人々はジョニーが町の住人エドワード殺しの犯人だと信じていて、サルタナの無法を恐れていることもあって誰も彼に協力しようとはしない。事なかれ主義の、臆病で卑怯な住民たちというのはマカロニ西部劇のひとつの定番でもある。 主人公が誤解され疑われながらも悪党に孤独な戦いを挑んでゆく、という話ですが。敵は実の弟であり、彼ら兄弟の母親、主人公を親の仇と信じ込んでいるヒロイン、悪徳判事、主人公の元恋人とその弟などの脇役が話に関わってストーリーに厚みが加わっている? マカロニウエスタンに27本も出演したというアンソニー・ステファン。日本ではあまり人気がでなかったようですが、確かに殴り合いの格闘でも一発で相手をノシてしまうような力強さがない頼りなさ。しかし身長が高くてライフル銃の連射がよく似合う。あまり強そうでなく、颯爽とした格好良さがないところが逆に魅力になっていて応援したくなる。奇妙な俳優です。 そんな影の薄いアンソニー・ステファンの敵役としてまったく正反対に強烈な存在感で印象に残るのが弟サルタナ役のジャンニ・ガルコ。公開時の日本ではそれほど話題にならなかったようだがヨーロッパでは主役をしのぐ人気を得たようです。 ジャンニ・ガルコ扮するサルタナを、キャラクターとしては同じではないが主役に抜擢してサルタナ・シリーズが4本も作られたとか。なぜか日本未公開であり、DVDでは「サルタナがやって来る~虐殺の一匹狼~」の1本のみが見られます。「砂塵に血を吐け」。展開にもたつきがあるけれども、女優さんもきれいだし、マカロニ西部劇のかなり面白い一編。
2016年08月22日
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「スレッジ」(1969)A MAN CALLED SLEDGE 伊題 LO CHIAMAVANO SLEDGE監督 ヴィック・モロー 製作 ディノ・デ・ラウレンティス ハリー・ブルーム脚本 フランク・コワルスキー 撮影 ルイジ・クヴェイレル 音楽 ジャンニ・フェリオ 出演 ジェームズ・ガーナー、デニス・ウィーバー ラウラ・アントネッリ、クロード・エイキンス ロバート・マーレイ、ブルーノ・コラッツァリ 本編92分 総天然色 シネマスコープサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第9号に収録の「スレッジ」を鑑賞しました。 日本公開は1971年7月。テレビ映画「コンバット!」のサンダース軍曹役で知られるヴィック・モローさんが監督した西部劇映画です。 製作のディノ・デ・ラウレンティスは「にがい米」(49)「道」(51)「河の女」(55)などで知られるイタリア人映画プロデューサーですが、1970年頃には、その活動はアメリカ映画界が主になっていたのではないか。なのでこの「スレッジ」を「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」に収録するのは疑問のあるところです。 マカロニウエスタンを、イタリア人を本来の観客対象にしたものと定義づけるなら、本作はちがうのではないか。アメリカ映画がスペインのアルメリア(マカロニ西部劇の撮影地)で撮ったというだけではないか。私たちも公開当時はこの映画をマカロニウエスタンだとは思っていなかったはずです。 賞金首のおたずね者スレッジ(ジェームズ・ガーナー)は知り合った老人から30万ドルの砂金が輸送されているという情報を得る。 金鉱から30万ドル相当の砂金が馬車に積まれ、厳重に護衛されて定期的に輸送されている。それが途中にある監獄で一泊するのだと。スレッジはその砂金を強奪すべく、仲間たちといっしょに計画を練る。 40人のガードマンに守られた輸送隊を襲うのは無理だと判断したスレッジは監獄内で奪うことにし、自分が捕らえられたふりをして収監され、監獄内に入り込む。看守を殺して囚人を解き放ち、監獄を混乱におとしいれたすきに砂金強奪に成功する。 この砂金強奪が成功するまではテンポ良く快調に話がすすんで、イタリア映画マカロニウエスタンにはない、さすがアメリカ映画だと思わせる展開です。 俳優の演技も洗練されたもので、彼らの馬の乗り方、銃の扱い、男達の服装などあきらかにマカロニウエスタンではなくアメリカ映画のものですね。 しかし面白かったのは、この砂金強奪計画が成功してまんまと30万ドルの砂金を手に入れたところまで。 山分けした砂金を元手に、彼らは仲間内でポーカー賭博を始めて、案の定、仲間割れを起こして死人をだしてしまう。一人勝ちしたスレッジと無一文になった仲間たちが無事で済むはずがなく、仲間たちはスレッジの恋人(ラウラ・アントネッリ)を人質にして砂金と交換を迫る。 なんでこうなるのか? 長年(おそらく)いっしょに苦労しながら強盗稼業に精出してきたはずの仲間なのに、なぜ欲に目がくらんで殺し合うことになってしまうのか。気が重くなる展開です。 このような話はマカロニウエスタンらしくなく、やはりアメリカ映画らしさを感じるものです。 犯罪を成功させてはならない。犯罪者は幸福な隠退生活を手にいれてはならない、というアメリカ映画の良識がこんなところに出ているのではないだろうか(アメリカの西部劇が衰退した一因か?、こんな展開では観客がそっぽを向くだろう)。 この砂金強奪を最後に引退して恋人といっしょに安楽な余生を送ろうとしたスレッジだったが、アメリカ映画はそうはさせてくれなかった。悪事で大金を手に入れた者は、仲間割れして自滅しなければならない時代遅れの決まりがあり、サンダース軍曹の監督はそれを律義に守った? 途中までは面白かったのに、失速してしまった残念な一作です。
2016年08月21日
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『復讐の用心棒』 (1967) DUE ONCE DI PIOMBO監督 マウリツィオ・ルチディ脚本 アドリアーノ・ボルツォーニ撮影 フランコ・ヴィラ音楽 ラッロ・ゴーリ出演 ロバート・ウッド、ピエル・パオロ・カポーニ ルチア・モドゥーニョ、ペーター・カルスティン、ルイス・カッセル、 ジュリアーノ・ラファエリ、クリスティーナ・ジョサニ、ウンベルト・ラホ 本編85分 総天然色 シネマスコープサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第9号に収録の「復讐の用心棒」を鑑賞しました。 日本公開は1970年1月。私が見たのもその頃で、横安江町アーケード街の入り口にあったテアトル会館。「続 荒野の用心棒」「真昼の用心棒」との3本立て上映でした。 悪党クライン(ピエル・パオロ・カポーニ)一味を裏切った男が銀行から強奪した8万ドルを持って町に逃げ込む。 追って町にやって来たクラインたちは、金の有りかを聞き出す前に男を射殺してしまう。 8万ドルは酒場の主人が酒樽に隠しているのだが、クライン一味はその金を捜そうとやっきになり、町に現れたメキシコ人のガンマン ペコス(ロバート・ウッズ)が早撃ちでクラインの子分たちを一人二人とかたづけてゆく。 ペコスは執拗にクラインを狙うのだが、彼の目的は何か? マカロニウエスタンの定石として主人公ペコスはクラインに捕まって殴る蹴るのリンチを受ける。地下室に捕まった彼を助けようと、ヒロインのニーナ(クリスティーナ・ジョサニ)が階上の床穴から紡ぎ糸の先にナイフをくくり付けて降ろしてゆく。 かつてクラインに両手をつぶされた医師とその娘が町に住んでいてペコスに協力したり、墓掘り人を兼ねている牧師(ウンベルト・ラホ)が欲深く、クラインに密告したり、死人から金を巻き上げていたりという趣向だが、とくに真新しいものではないようです(悪徳牧師というのはマカロニウエスタンらしいところか?)。 いかにも低予算映画といった感じがしますが、画質の良さもあって、しかも本編85分なので退屈することもなく気軽に見られる典型的マカロニウエスタンの小編です。 かつて映画館で見たが、同時上映が「続荒野の用心棒」と「真昼の用心棒」といった強烈な作品だったせいか記憶にのこらない結果になっていた。いままで内容をまったく覚えていず、約46年ぶりにDVDでの鑑賞です。
2016年08月06日
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「ガンマン大連合」(1970) VAMOS A MATAR, COMPANEROS監督 セルジオ・コルブッチ原案・脚本セルジオ・コルブッチ共同脚本 ディノ・マイウリ、マッシモ・デ・リタ フリッツ・エバート撮影 アレサンドロ・ウロア音楽 エンニオ・モリコーネ出演 フランコ・ネロ、トーマス・ミリアン ジャック・パランス、フェルナンド・レイ、アイリス・バーベン 本編119分 総天然色 シネマスコープサイズ マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション第7号に収録の「ガンマン大連合」(1970)を鑑賞しました。 監督はセルジオ・コルブッチで、マカロニ西部劇作品は以下の順です。「ミネソタ無頼」(1965)「続 荒野の用心棒」(1966)「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第2号「リンゴ・キッド」(1966)「さすらいのガンマン」(1966)「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第3号「黄金の棺」(1966)「豹/ジャガー」(1968) 「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第4号「殺しが静かにやって来る」(1968)「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第5号「スペシャリスト」(1969)「ガンマン大連合」(1970)「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第7号「ガンマン大連合」の日本公開は1972年4月です。 この映画は、これまでに見たことがないと思っていたのですが、登場人物のバスコ(トーマス・ミリアン)が拷問でモグラ責めにされるシーンに記憶があって、もしかしたら忘れただけで、映画館で見たのかもしれない。 メキシコ革命の頃。ディアス大統領の再選がどうのと云ってるので1910年くらいだろうか? スウェーデン人の武器商人ヨドラフ・ペテルセン(フランコ・ネロ)が革命軍のモンゴ将軍(フランシスコ・ボダロ)に会いにやって来る。ところが武器を購入する資金は占拠した銀行の頑丈な金庫に入っていて開けることができない。それを開けるキーワードを知っているのはアメリカで監禁されているサントス教授だけだという。 そこでペテルセンは金庫内にある資金の3分の2を報酬とする条件で、アメリカからサントス教授を連れてくることを請け負います。ペテルセンはモンゴ将軍の部下バスコ(トーマス・ミリアン)とともに国境を越えて、サントス教授が捕らえられているユマ砦へと向かう。 サントス教授から非暴力主義の教えを受けた学生たちが革命に立ち上がっており、メキシコでの石油採掘利権を革命後も望むアメリカの資本家に雇われたペテルセンの宿敵ジョン(ジャック・パランス)一味も加わって政府軍とともに三つどもえの戦いになる。 金目当てで教授奪還を引き受けたスウェーデン人の武器商人ペテルセンと、粗野で陽気なお調子者バスコが革命の動乱の中で、サントス教授や教え子の若者たちの感化を受けて、しだいに人間的に成長して変化を見せてゆく。「豹/ジャガー」(68)とともにセルジオ・コルブッチ監督の「メキシコ革命もの」です。 先の「豹/ジャガー」の時にも書きましたが、マカロニウエスタンとしてはアメリカらしさを装うよりもメキシコが舞台という設定にしたほうが作りやすかったということでしょうか。撮影地スペインの乾燥した土地風俗とメキシコの類似性、現地の俳優やエキストラを使う上でメキシコという設定にしたほうがやりやすい。 メキシコ革命ものが目立つようになった1968年以降のマカロニウエスタンです。 当時、私はこのような作品をマカロニウエスタンだという意識を持って見ていたわけではありません。同じメキシコ革命ものの「五人の軍隊」(69年、日本公開69年11月)や「七人の特命隊」(68年、日本公開70年3月)などアメリカ映画だと思っていたほどだから。 メキシコの政府軍、革命軍が入り乱れて銃火を交えて戦うアクションシーン。 多数の馬が駆け回り、機関銃がうなり、自動車や飛行機が登場し、機関車が走る。 スケールが大きくなったのは、それだけ製作費が増えたということだろうけれど、同じセルジオ・コルブッチ監督の「続 荒野の用心棒」(66)ではゴーストタウンのような町に悪党が巣くって、その殺され役の悪党たちのエキストラを使い回したという人員不足だったことを思えば、このようなメキシコ革命ものの、なんとにぎやかなことか。 政府軍に追われるペテルセンが橋に爆薬を仕掛けて点火する。爆発して、追ってくる政府軍の兵隊たちが馬ごと川に落ちるシーンがあり、これなどはサム・ペキンパー監督のアメリカ映画「ワイルドバンチ」(69)の同様なシーンのいただきだろうか? サム・ペキンパーがマカロニウエスタンを意識して撮った「ワイルドバンチ」を、マカロニウエスタンが意識して、そのアクションシーンを参考にするとは。
2016年07月16日
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「ミスター・ノーボディ」(1974) IL MIO NOME E NESSUNO 英題 MY NAME IS NOBODY監督 トニーノ・ヴァレリ製作 セルジオ・レオーネ クラウディオ・マンシーニ原案 セルジオ・レオーネ フルヴィオ・モルセラ、エルネスト・ガスタルディ脚本 エルネスト・ガスタルディ撮影 ジュゼッペ・ルッツォリーニ、アルマンド・ナンヌッツィ音楽 エンニオ・モリコーネ 出演 ヘンリー・フォンダ、テレンス・ヒル ジャン・マルタン、レオ・ゴードン、ジェフリー・ルイス 本編116分 総天然色 シネマスコープサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第7号に収録の「ミスター・ノーボディ」(1974)を鑑賞しました。「荒野の用心棒」(64)「夕陽のガンマン」(65)「続 夕陽のガンマン」(66)「ウエスタン」(68)と、西部劇を撮り続けてきた監督セルジオ・レオーネが製作・原案のマカロニウエスタン後期の傑作です。監督はセルジオ・レオーネの愛弟子トニーノ・ヴァレリ。 日本公開は1975年11月。配給はユニヴァーサル映画/CIC。 この映画が公開された時の宣伝チラシには、「靴下は破れ 靴底は穴があき 名前もなければ金もなし 住む家なく親もなし ホレる女もいなければ 好いてくれる女もいない 何処から来て…何処へ行くのか 知っている者は誰れもいない ないないづくしの-ぶらりひょうたん 人呼んで彼の名を ミスター・ノーボディ!!」 と宣伝文句が書かれています。名無しの、ないないづくしの風来坊が主人公であるかのような売り方がされているのはなぜだろうか? 確かに「風来坊」(70年、日本公開72年11月)のテレンス・ヒルが出演しているけれども、主人公は明らかにヘンリー・フォンダでしょう。ヘンリー・フォンダ扮する「初老ガンマンの引退」の話です。 西部に名をとどろかせる腕利きのガンマン ジャック・ボーレガード(ヘンリー・フォンダ)。 有名なガンマンの宿命ともいえるのは、彼を倒して名を上げようとする者にたえず命を狙われること。 比類なき早撃ちのガンマンとして誰一人知らぬ者のないボーレガードも寄る年波、引退を考えるようになっていた。彼はニューオーリンズから船でヨーロッパへ渡り、静かな余生を送ることを望むようになっている。 ある村でボーレガードはヒゲを剃ってもらいに床屋に入ります。 彼の命を狙う殺し屋が床屋の主人に化けていて、外にも仲間が2人待ち伏せている。 ヒゲを剃らせながら、ボーレガードは床屋の正体を見破り、あっという間に3人を射殺する。 縛られて閉じ込められていた床屋の主人と幼い息子。 息子が「銃声が一発しか聞こえなかったのに3人も倒したよ!」とビックリ。 父親が「それほど早いってことさ」。息子が「彼より早い人っているのかな?」と問うと、父親が「彼より早い者?、ノーボディ(そんな者はいない)」と云う。 旅の途中でボーレガードは川で魚を素手でつかまえている変な男(テレンス・ヒル)と出会います。 彼は氏名不詳で、自称ノーボディ。ボーレガードに対して尊敬と憧れの気持ちを持ちながらも、ボーレガードを倒して名を上げたいという野心を持っている。彼は150人のワイルドバンチ(無法者集団)にボーレガードが1人で立ち向かうようにお膳立てをして、その名を伝説化し、不滅のものとして歴史に刻み、しかる後に倒して自分が取って代わってやろうと考えています。 すでにマカロニウエスタンのブームが終わった1975年に公開された作品。 ここにはマカロニの特徴である残酷も暴力も復讐もありません。初老ガンマン ボーレガードは弟が悪党に殺されたことを知るが、復讐をする気はない。弟も札付きの悪党だったのだからと。 ボーレガードが望むのは唯一、ヨーロッパでの静かな隠退生活のみです。 そして、そんな彼につきまとって150人のワイルドバンチと戦わせようとするミスター・ノーボディ。 腕利きガンマンに最後の花道を飾らせてやろうとする、そして自分がその後継者になろうと。 カメラワークと構図の見事さは必見です。製作・原案は「ウエスタン」のセルジオ・レオーネ。なぜ自分で監督しなかったのだろう? 殺伐とした殺しと暴力の世界ではなく、マカロニらしくない、やさしい視線で老ガンマンを見守る作品です。 こうなるとマカロニウエスタンではないだろうし、冒頭の床屋の対決シーンなどアメリカ映画の趣が濃厚です。 製作されたのは1974年、日本公開された1975年。すでにマカロニウエスタンのブームはとっくに終わり、アメリカの西部劇も極度に本数が減っていた。いまから思えば、世の中が明らかに変わろうとしていたようです。 ノーボディが爺さんから聞いたという寓話。過って巣から落ちた小鳥が寒さでピーピー鳴く。牛が通りがかって、哀れに思って小鳥の上に湯気が立つ糞をした。小鳥は糞の熱で暖まったが、なおもピーピー鳴いた。そこへコヨーテが現れて小鳥の汚れをはらってきれいにしてやってから、パクッと喰ってしまった。 これは、「世間」の比喩であり、一見、悪に見える善もあれば、善に見える悪もある。肝心なことは、ヘタに騒ぐなということだ、という教訓話。 西部開拓時代が終わって20世紀になろうとしている。これからは、そんな複雑な時代になるぞ、というのですが、表面上からでは判断できない、裏がある。複雑な時代がやってくるぞ、と。
2016年07月15日
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「殺して祈れ」(1967) REQUIESCANT監督 カルロ・リッツァーニ脚本 アドリアーノ・ボルツォーニ アルマンド・クリスピーノ ルチオ・バティストラーダ音楽 リズ・オルトラーニ 出演 ルー・カステル、マーク・ダモン、ピエル・パオロ・パゾリーニ バーバラ・フレイ、ルイーズ・バレット、ロザンナ・クリスマン 本編102分 総天然色 ビスタサイズ 1968年11月に日本公開されたマカロニウエスタンです。 先日7月6日に発売された3枚のマカロニウエスタンDVD「キラー・キッド」「荒野のお尋ね者」、そしてこの「殺して祈れ」。このような作品があるのを知らず、今回初めて見るものばかりです。 これまでマカロニウエスタンをいくつも見てきたつもりですが、まだまだ知らない、見たことがない作品がいくつもあるのを思い知らされました。 舞台はミズーリ州サンアントニオ(という設定)。アメリカ人とメキシコ人の間で土地を分配する取り決めが成立するが、アメリカ人たちはメキシコ人を騙して油断させて機関銃で虐殺してしまう。 ただ一人生き残った少年は、通りかかった旅の牧師に保護され、その家族の一員として育てられます。 成長した主人公(ルー・カステル)は牧師夫妻、その娘プリンシー(バーバラ・フレイ)と一緒に旅をつづけている。 ある時、ダンサーに憧れるプリンシーが町に興行に来ていた旅芸人一座についていってしまう。 そこで主人公が彼女を連れ戻すために牧師夫妻と別れて追いかけます。 サンアントニオの町で、酒場の二階にはたいていの場合売春婦が置かれているのだが、そこで主人公はプリンシーを見つけます。彼女は悪い男にだまされて、自業自得とはいえ転落の悲惨な生活を送っていた。 サンアントニオの町を支配するのはファーガソンという男(マーク・ダモン)で、プリンシーを娼婦として監禁しているのはその用心棒のディーンライトという男だった。 主人公はファーガソンに交渉してしてプリンシーを解放してもらおうと、その邸へと向かうが。「聖人」と呼ばれる主人公(ルー・カステル)は親を殺された孤児で、牧師夫妻に育てられた男です。牧師のような格好をして、牧師から渡された聖書を持っている。そして生まれつきの拳銃の名手。彼を狙ってくる男たちを返り討ちに射殺して、聖書を開いて冥福の言葉をつぶやく。 牧師の服装に、腰にはガンベルトではなくホルスターを荒縄で吊っている。フライパンで馬の尻を叩いて走らせる、こんな奇妙で珍妙なマカロニウエスタンの主人公を初めて見ました。 主人公は凄みのあるガンマンではなく、どこか頼りなげな若者。その仇敵であるファーガソンという男は偏執的な貴族で、どこかイカレていて、怪奇映画のドラキュラを思わせるような異常な感じがする。 主人公に協力する革命運動のリーダー役で映画監督のピエル・パオロ・パゾリーニ(「アポロンの地獄」「テオレマ」など有名だが、まだ作品を見たことがない)が出ていて、なぜか印象に残ります(真正面から顔を大きく目立つように撮るなど、意図的な撮影なのか)。 メキシコとの国境近くの町が舞台となっていて、虐げられているメキシコ人たちが最後には白人の支配に抵抗して立ち上がります。このような所はマカロニウエスタンの定番ストーリーではあるが、全体を覆う暗鬱で異様な雰囲気など、異色なマカロニウエスタンではないだろうか。「キラー・キッド」「荒野のお尋ね者」「殺して祈れ」の3作品では、本作がいちばん構成もしっかりしていて楽しめます。
2016年07月11日
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「荒野のお尋ね者」(1966) SETTE WINCHESTER PER UN MASSACRO監督 エンツィオ・G・カステラッリ(E・G・ローランド名義)脚本 マリノ・ジローラミ撮影 アルド・ピネリ音楽 フランチェスコ・デ・マージ出演 エド・バーンズ、ガイ・マディソン ルイーズ・バレット、トーマス・ムーア、リック・ボイド 本編94分 総天然色 シネマスコープサイズ 南北戦争が終わって2年後1867年のテキサスとメキシコ国境付近。 群盗と化した南軍のブレイク大佐(ガイ・マディソン)がチャマコ(エンニオ・ジローラミ)やメサ、ディオス、ゼブなど元部下やならず者たちを率いて略奪、殺人、放火、婦女暴行など、悪の限りを尽くして暴れ回っていて、彼らに高額の賞金がかけられていた。 ある町で軍隊に逮捕されたブレイク大佐の手下チャマコが銃殺されそうになった時、スチュワートという男(エド・バーンズ)が現れて彼を救い出して、国境を越えたメキシコにあるブレイク大佐のアジトへと案内させます。 ブレイク大佐は用心深い男だったが、スチュワートが自分は元南軍の大尉であり、戦争中に南軍のポーレガード将軍が隠した軍用金20万ドルの在り処を知っているので掘り出して山分けしようと持ちかけた話を信じて仲間に入れる。 ブレイク大佐はスチュアートを疑いながらも、手下と共に軍用金が埋めてあるというデュランゴという町の外れにあるインディアン墓地へと向かう。 その道中で、野営中に彼らを崖の上からライフルで銃撃した者がいた。スチュワートが崖に登って捕まえるとそれはマヌエラ(ルイーズ・バレット)という女で、彼らを北軍だと思って撃ったと云う。だが、この女も怪しく、彼女は敵か味方か? そしてスチュワートの真の狙いは何なのか? 主演はエド・バーンズ。 エド・バーンズはアメリカのテレビ映画「サンセット77」に出ていた俳優で、「ローハイド」のクリント・イーストウッドのように成功しなかったけれど、マカロニウエスタンへの出稼ぎ出演です。「サンセット77」はエフレム・ジンバリスト・ジュニアとロジャー・スミス主演の探偵ドラマで、エド・バーンズはその助手の若者役。いつも櫛で髪を手入れしているおしゃれな若者役で人気があった、ということですが、実のところ、私は「サンセット77」をまともに見たことがありません。 でも、日曜の10時だったかに放送されていて、兄が毎週見ていたのは覚えているし、テーマ曲やナレーションの芥川隆行さんや、エフレム・ジンバリスト・ジュニアの黒沢良さんの声などは記憶にあります。 いつも髪を整えていた若者の役だったということからか、このマカロニウエスタン「荒野のお尋ね者」では、西部劇なのに帽子を被っていない。砂塵舞う西部の荒野(スペインだけど)で、いくら髪形が崩れるからとはいえ、それでは頭が砂だらけになってしまうではないか。 そういう批判は野暮なのだろうけれども、とくに見所のないマカロニウエスタンの一編でした。 ただ、悪役のブレイク大佐の5人の手下どもが、5人衆といった感じで、ナイフや鞭、靴に付けた拍車を武器にしたり、それぞれが得意技を持っているのが珍しい。 それと、女賞金稼ぎが登場するのも、こんなのは初めてではないか?
2016年07月10日
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「キラー・キッド」(1967) KILLER KID監督 レオポルド・サヴォーナ 製作 セルジオ・ガローネ 脚本 レオポルド・サヴォーナ セルジオ・ガローネ 音楽 ベルト・ピサーノ出演 アンソニー・ステファン、ルイーズ・バレット フェルナンド・サンチョ、ケン・ウッド 本編98分 総天然色 シネマスコープサイズ アンソニー・ステファン主演のマカロニウエスタンです。日本では劇場未公開でTV放映のみの作品。 メキシコ国境に近い陸軍の砦に収監されていた男が何者かの手引きで脱獄します。彼は通称キラー・キッドと呼ばれる殺し屋(アンソニー・ステファン)。彼はメキシコに逃げ込み、革命派のリーダー エル・サント(ハワード・ネルソン・ルビアン)に出会う。エル・サントの信用を得たキラー・キッドは手厚くもてなされますが、手下のビラール(フェルナンド・サンチョ)は彼を疑ってかかる。 エル・サントたち革命派はアメリカの武器密売人から多量の銃器を入手しようとしていて、行動を共にするうちにキッドはエル・サントの姪メルセデス(ルイーズ・バレット)と親しくなってゆく。 キッドには隠された目的があり、彼の正体はアメリカ陸軍の特命を受けたモリソン大尉。アメリカ製の武器がメキシコ革命派に渡っていのをメキシコ政府に知られれば両国の関係悪化に影響する、それを回避するために武器の密輸商人を潰し、密輸された武器を爆破して始末するのが彼の任務だった。 ある夜、キッドは隙を見て、革命派が入手した武器弾薬を積んだ荷車を崖から落下させて爆発炎上させる。ビラールはキッドを疑うが、あくまで彼を信頼するエル・サント。 キッドを信用するしないをめぐってエル・サントとビラールが対立し、キッドがいない隙を見て反逆したビラールがエル・サントを襲って軟禁、革命派の実権を奪います。 アンソニー・ステファン主演のマカロニウエスタンはこれまでに、「地獄から来たプロガンマン」(66)「荒野の棺桶」(66)「嵐を呼ぶプロ・ファイター」(67)の3本を見て、今回の「キラー・キッド」(67)で4本目。 アンソニー・ステファンはマカロニウエスタンでは最高の27本に出演した、云ってみればクリント・イーストウッドやジュリアーノ・ジェンマ、フランコ・ネロより圧倒的に多くの主演作があるわけで、マカロニウエスタンでは一番のスター俳優なのかもしれない。しかしながら、日本ではそれほど人気が出なかった俳優です。 確かに颯爽とした格好良さがない、というか逞しい感じがなくて、殴り合いではあまり強くなく、相手を倒すのにもたついたりして頼りなさを感じる。 それなのに撃ち合いの場面では拳銃を持つよりライフル銃の連射をするシーンが似合っている。この「キラー・キッド」など特にライフル銃で敵を倒す場面はカッコ良い。 マカロニウエスタンが当時、世界的にあれほどの人気があり、ブームになった根底にはアンソニー・ステファンさんのような縁の下での活躍があったからこそなのかもしれません。 颯爽としない俳優だけれど、なぜか好ましくて、もっと主演作を見たいな、と思わせる不思議な魅力があります。 メキシコの革命派リーダー エル・サントの仲間ビラールを演じるのはマカロニ悪役でおなじみのフェルナンド・サンチョ。いつもは極悪な山賊の親分役で冷酷非情な悪人役が多いけれども、今作では意外に根は良い奴です。エル・サントスを裏切ったりするが、最後には戻って来てキラー・キッドに手を貸す。 戦いで撃たれて死んでしまうけれども、生かしておいてほしかったキャラクターです。
2016年07月08日
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「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第6号に収録の「怒りの荒野」(67)を鑑賞。 ジュリアーノ・ジェンマとリー・ヴァン・クリーフの代表作であり、マカロニウエスタンのベスト10に入るだろう傑作のひとつです。 日本公開は1968年5月。配給は東和で、配給収入6094万円。「怒りの荒野」(1967) I GIORNI DELL'IRA監督 トニーノ・ヴァレリ脚本 エルネスト・ガスタルディ トニーノ・ヴァレリ撮影 エンツォ・セラフィン音楽 リズ・オルトラーニ出演 ジュリアーノ・ジェンマ、リー・ヴァン・クリーフ アンドレア・ボシック、ウォルター・リラ、ルーカス・アマン 本編110分 総天然色 シネマスコープサイズ メキシコ国境付近(マカロニはこればっかり)にあるクリフトンという町。主人公スコット(ジュリアーノ・ジェンマ)は売春婦の息子という出自のために、住民の虐めと差別を受けていて、家々の糞尿やゴミを集めてまわる仕事をしている。 彼はマーフ爺さん(ウォルター・リラ)と一緒に馬屋で暮らしながら、いつか強いガンマンになって馬鹿にした奴らを見返してやろうと思っている。 ある日、町にフランク・タルビー(ヴァン・クリーフ)という強面のガンマンがやって来る。 タルビーに声をかけられたスコットが、出入り禁止にされている酒場に入ったことで争いが起こり、タルビーはスコットを侮辱して差別した男を一瞬の抜き打ちで射殺する。 裁判で正当防衛が認められ無罪になったタルビーは町を出て行くが、残されたスコットは住民たちからリンチを受けそうになって、急いでタルビーの後を追い、ガンマンの弟子入りを願い出る。 タルビーが町に現れた目的は、近郊に住んでいる10年前の悪事の仲間であるワイルド・ジャック(アル・ムロック)に会って、自分が手にするはずだった5万ドルを受け取ることだったが、その5万ドルはクリフトンの有力者たち(銀行の頭取、判事、酒場の主人)に奪われたことを知らされる。 タルビーに弟子入り志願を認められたスコットは、行動を共にしながらガンマンの心得を教え込まれ、2人は5万ドルを横領して知らん顔をしている腹黒い有力者たちに対抗してゆく。 主人公スコット(ジュリアーノ・ジェンマ)は町の住民から虐げられている私生児です。 罵倒され、侮辱され、無視される毎日。「糞尿を集める仕事」を映画では、おそらくこういう排泄物に関係する描写はタブーなはずではないか、それを描いたのはさすがマカロニウエスタンならでは。 社会の底辺で黙々と働く主人公にとって、唯一の希望は「凄腕のガンマンとなって」、いつか町の人間を見返してやること。 この映画は、迫害されている若者が、自分を人間扱いしてくれたガンマンに出会って弟子入りする。ガンマンの「心得十箇条」の指導を受けて、いっぱしの男に成長してゆき、町の人々を見返す報復の物語でもあります。 そして自分を指導してくれた師匠タルビー(リー・ヴァン・クリーフ)が、しだいにその悪の本性を露わにしてゆく。スコットはタルビーのやり口に疑問を持ち始め、恩人でもある老人(元は保安官だった)が眼前でタルビーに撃ち殺された時、ついにスコットは反旗を翻し、タルビーとの宿命の対決へと。 監督はセルジオ・レオーネの助監督だったトニーノ・ヴァレリ。「さすらいの一匹狼」(1966)に次いでの監督第2作です。 ガンマンの心得十箇条1 他人にものを頼むな。2 他人を信用するな。3 標的と拳銃のあいだに立つな。4 最初の弾は絶対にはずすな。5 相手に傷を負わせたらトドメを刺せ。6 危険が迫る時ほどよく狙え。7 縄を解く前に拳銃を取り上げろ。8 相手に必要以上の弾を与えるな。9 挑戦されたら逃げるな。10 皆殺しにするまでやめるな。
2016年06月26日
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「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第6号を購入しました。(6月23日発売。石川県は1日遅れで24日発売。定価1990円税込)「暁の用心棒」(66)と「怒りの荒野」(67)のDVD2枚が収録されています。「暁の用心棒」(1966) UN DOLLARO FRA I DENTI監督 ヴァンス・ルイス 製作 カルロ・インファスチェリ 脚本 ジュゼッペ・マンジョーネ ウォーレン・ガーフィールド 撮影 マルチェロ・マシオッキ 音楽 ベネデット・ギリア出演 トニー・アンソニー、フランク・ウォルフ ジア・サンドリ、ヨランダ・モディオ 本編84分 総天然色 ビスタサイズ 日本公開は1967年(昭和42年)6月。この作品はこれまでに見たことがなく、今回が初めての鑑賞です。 メキシコ国境にある死んだような町にやって来た主人公「よそ者(Stranger)」(トニー・アンソニー)は、盗賊団のアギラ(フランク・ウォルフ)一味がメキシコ政府軍を機関銃で皆殺しにするのを目撃する。 アギラは子分どもにメキシコ政府軍の格好をさせて、アメリカ軍が運んで来る援助金を横取りしようとたくらんでいた。「よそ者」はアギラに、強奪を手伝う代わりに分け前を寄こせと提案する。 アメリカの騎兵隊が町に到着し、「よそ者」はまんまと金を奪うのに成功するが、だがアギラは「よそ者」に分け前を与えず、1ドル銀貨1枚を渡しただけで彼を殺そうとする。 分け前をよこさない強盗団に業を煮やした主人公が独り占めしようとして捕まって、リンチされて痛めつけられるが、隙を見て獲物の金貨袋を奪って逃げる。追ってくる強盗団一味との、ラストの対決、となる「マカロニウエスタン」の定石のようなありふれたストーリーです。 主人公の名無しの男を演じるのはトニー・アンソニー。「盲目ガンマン」(71)というのを公開時に見たけれど、完全に内容を覚えていないので、初めて見る俳優のようなものです。マカロニウエスタンの主人公として、軽い感じがして、それほど魅力があるわけでもない。悪役の盗賊アギラは「殺しが静かにやって来る」(68)で保安官を演じていたフランク・ウォルフ。メキシコの盗賊団の親分役だが、ミスキャストと云ってもいいくらいにパッとしない。フェルナンド・サンチョのような太った男のほうがよかったのでは。 唯一の見所はクライマックスの対決場面で、盗賊アギラが重機関銃。よそ者が二連の散弾銃(ショットガン)。このショットガンは彼が助けた、赤ん坊を連れた未亡人(ヨランダ・モディオ)が差し入れたものです。 マカロニウエスタンの主人公がショットガンを使うのを初めて見ました。銃身をノコギリで切り詰めたものです。散弾ではなく、スラッグ弾という一粒弾で熊や猪などの大型動物を撃つのに使う近距離用の実包のようですが、その威力を描写したシーンはありません。娯楽映画なのでまともに描写できない規制があるのだろうか? 強盗団の親分との対決に勝利したあと、このショットガンを無造作に投げ捨てて、未亡人に礼も言わずに町を出て行くのは納得がいかない。未亡人に丁寧に感謝を述べて返却するべきであり、それが礼儀だろうに。
2016年06月25日
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「情無用のジャンゴ」(1966) SE SEI VIVO SPARA監督 ジュリオ・クエスティ脚本 フランコ・アルカッリ ジュリオ・クエスティ撮影 フランコ・デリ・コリ音楽 イヴァン・ヴァンドール出演 トーマス・ミリアン、ロベルト・カマルディエル ピエロ・ルリ、レイモンド・ラヴロック、マリル・トロ 本編117分 総天然色 シネマスコープサイズ 日本公開は1967年7月。配給会社は東京第一フィルムで、6300万円の配給収入をあげています。 公開時の宣伝は「身の毛もよだつ超残酷シーン」「インディアンの頭の皮を剥ぐ」「生きたまま腹の中から銃弾をえぐり出す」などと残酷シーンを売りにしました。そのことで、私は今まで、長年ずっと意識的に見るのを避けてきた作品です。 今回この「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」に収録されたのを機会に、やっと重い腰を上げたという感じで、話題作でもあり見てみようかと。 メキシコ人とインディアンの混血である主人公(トーマス・ミリアン 日本語吹替え版では「ジャンゴ」と云っている)は強盗団ホークス(ピエロ・ルリ)と手を組んで軍隊の輸送隊を襲撃し、積荷の大量の砂金を奪います。 成功したものの、ジャンゴはホークスに裏切られ、撃たれて地面に掘った穴に埋められてしまう。 たまたま通りかかった2人のインディアンに救われた彼は傷の手当てをしてもらって、裏切ったホークス一味を追跡する。 奪った大量の砂金を持ったホークスたち強盗団は熱砂の砂漠を越えて、とある町に入る。 ところがその町の住人たちは彼らが砂金を持っているのを知ると、酒場の主人テンプラー(ミロ・ケサダ)と雑貨屋の主人ハガーマン(フランシスコ・サンズ)が先頭になって強盗団の男どもを襲って虐殺を始める。ある者は撃ち殺され、ある者はロープで吊し首に。 ホークスだけが納屋に立て籠もって抵抗するが、そこへ追って町にやって来たジャンゴが現れ、復讐のために用意した金の銃弾を撃ち込んで倒します。 まんまと強盗団一味を始末して砂金を奪ったテンプラーとハガーマンは、砂金の分配をめぐって対立する。 そこへ介入してきた町の権力者ソロウ(ロベルト・カマルディエル)はテンプラーの息子エバン(レイモンド・ラブロック)を人質にして、強盗団から奪った砂金を渡せと脅迫するが、テンプラーは砂金など知らぬ存ぜずと云って応じない。 仲間に裏切られ、一度殺されて生き返った男ジャンゴの復讐物語かと思ったら、通常のマカロニウエスタンなら、そうなるはずの復讐物語ではなくて、彼らが砂漠を越えてたどり着いた、とある町の住人たちの異常な残虐さ、金(ゴールド)に対する執着から来る醜悪な争奪を描いた作品でした。 結局は主人公ジャンゴ(トーマス・ミリアン)が何がしたかったのかよくわからない。裏切って殺そうとした悪党への復讐が目的だったら、その相手ホークスを倒した時点で目的を果たしたわけで、そのあとも町に留まる理由がわからない。 そんな曖昧な主人公なので、この映画では砂金をめぐって醜く争う悪党ども、テンプラーとハガーマン、ソロウたちの欲深い邪悪さだけが印象に残ります。 マカロニウエスタンの体裁をとっていますが、マカロニウエスタンの痛快さなどどこにもなく、描きたかったテーマは人間の欲望の醜さと残酷性、なのだろうか。 頭の皮を剥ぐなどの残酷シーンを売りにした作品だけれども、いま見ると拍子抜けするようなシーンでした。 現在では、もっとエグい描写を見慣れてしまって、でも当時はやはりショッキングだったのかも。これを映画館の大きなスクリーンで見せつけられると、やはりゲンナリするかもしれません。
2016年06月12日
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「殺しが静かにやって来る」(1968) IL GRANDE SILENZIO 英題 THE GREAT SILENCE監督 セルジオ・コルブッチ脚本 セルジオ・コルブッチ ヴィットリアーノ・ペトリリ マリオ・アメンドラ ブルーノ・コルブッチ撮影 シルヴァーノ・イッポリティ音楽 エンニオ・モリコーネ出演 ジャン・ルイ・トランティニャン、クラウス・キンスキー ヴォネッタ・マギー、フランク・ウォルフ、ルイジ・ピコラッリ マリオ・ブレガ 本編102分 総天然色 ビスタサイズ 配給会社のどなたが考え出したのか知らないけれども、このセンスあふれる邦題の素晴らしさ。「殺し屋が静かに」ではなく「殺しが静かに」というのがすごいです。外国映画の邦題史上で屈指の名邦題ではないだろうか。 日本公開は1969年9月。私が高校2年生の時で、さかんに映画館通いをしていた時期でもあり、映画誌「スクリーン」を毎月購読していて新作紹介の記事は読んでいたのに、この映画が公開された記憶がないのはなぜだろう? 同時期の「ワイルドバンチ」「豹/ジャガー」「吸血鬼」「戦場のガンマン」「屋根の上の赤ちゃん」「空軍大戦略」などは劇場名までよく覚えているのに。 そんなわけで、この映画を初めて見たのは40数年前の深夜に放送されたテレビの洋画劇場です。 白黒テレビだったので、当然のこと白黒であり、その雪に閉ざされた異様な世界と衝撃のラストは印象に強く残り、ジャン・ルイ・トランティニャンという俳優を知ったのもこの「殺しが静かにやって来る」においてです。 ユタ州(という設定)のスノーヒルという深い雪に閉ざされた町。悪徳判事が町民を野盗にならざるをえないよう追いやって賞金をかける。それを賞金稼ぎたちが射殺して賞金を手にするという仕組みで、判事と薄汚い賞金稼ぎどもが町を支配している。 眼前で賞金稼ぎのロコ(クラウス・キンスキー)に無抵抗の夫を射殺されたポーリーン(ヴォネッタ・マギー)は殺し屋サイレンスを呼び寄せ、復讐を依頼する。「男の歩いたあとには死の沈黙が訪れる」と云われる伝説的な殺し屋サイレンス(ジャン・ルイ・トランティニャン)。彼は無口なのではなく、幼い時に悪党どもに声帯を切り裂かれたために声を出すことができない。 早撃ちのサイレンスは、相手を挑発して怒らせて先に銃を抜かせることで、つねに正当防衛としてターゲットを始末していた。 雪深い山間地にあるスノーヒルという町が舞台で、閉ざされた空間という雰囲気があり、異世界のような感じがします。観客はその異様な世界に紛れ込み、異様な体験をすることになる。 無法者が町を支配している、というのは間違った見方です。 極悪非道な無法者に見えても、彼ら賞金稼ぎたちは法の執行を代行する者たちであり、正義の側にある。彼らに抵抗することは法に背くことになる。無法者は悪党のロコたち賞金稼ぎではなく、主人公の殺し屋サイレンスこそが無法者の立場にあります。 だからこそサイレンスは賞金稼ぎたちに挑むのに、相手に先に銃を抜かせて「正当防衛」とする必要があるのです。 観客は主人公の殺し屋サイレンスと、その依頼者である未亡人ポーリーンに感情移入します。 極悪な賞金稼ぎロコたちと悪徳判事の支配に挑んでゆくのですが、「続 荒野の用心棒」のジャンゴ(フランコ・ネロ)がラストの墓場での対決でジャクソン少佐一味を相手に一発逆転の勝利を得る、その再現をここでも期待するのですが、それが見事に裏切られてしまう。 観客たちにとって、こんなの有りか?と、あっけにとられるエンディングは、勧善懲悪を基本とする娯楽映画の結末としては前代未聞のことでしょう。
2016年06月11日
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マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション第5号が発売されました。「情無用のジャンゴ」と「殺しが静かにやって来る」のDVD2枚が入っています。 好き嫌いはともかくとして、マカロニ西部劇のカルト的、異色作2作品が収録されていて、ちょっと特別な号なのではないでしょうか。「殺しが静かにやって来る」についてですが、とりあえずおさらいの意味で2012年3月17日に書いたものを以下に再掲いたします。「殺しが静かにやって来る」(1968)はマカロニ西部劇の異色作といわれます。それどころかすべての映画作品の中でも異色作なのではないか、と思います。 なにしろ、主人公(ジャン・ルイ・トランティニャン)がラストで悪党の前になすすべもなく撃ち殺されてしまうのだから。「昔、夫から聞いたわ、復讐者の話を。影を見れば賞金稼ぎ震え上がる。名はサイレンス。男の歩いたあとは死の沈黙が訪れるからよ」 幼い時に喉を切られて言葉を失った殺し屋サイレンス(ジャン・ルイ・トランティニャン)に、夫を殺された女(ヴォネッタ・マギー)が復讐を依頼する。 悪徳判事に支配されるユタ州の、いちめん雪に覆われた町。残忍な賞金稼ぎロコ(クラウス・キンスキー)との因縁の対決。 監督はセルジオ・コルブッチ。「続 荒野の用心棒」(66)では、主人公のジャンゴは両手を潰され、ズタボロになりながらも、ラストの対決では一発逆転で悪党どもを撃ち倒しました。 従来の映画というか、それが映画では常識なのだけれど、この「殺しが静かにやって来る」は、正義が悪の前になすすべもなく、ラストの対決でヒロインともども主人公が射殺されてしまう。しかもそれが、当時は「男と女」などで人気があったフランスのスターのジャン・ルイ・トランティニャンなのだから、見ている人はさぞかし驚いたことでしょう。 かつてのアメリカ映画にはヘイズ・コード(映画製作倫理規定)というのがあって、「映画は人生の正しい規範を示すべきであり、観客を犯罪や不道徳なことに共感させてはならない」となっていた。 この倫理規定が1968年に廃止され、レイティング・システムが採用されて、自由な映画表現が可能になるわけですが、この1968年のイタリア映画「殺しが静かにやって来る」は、その移行期にあたる次期に作られた、規定がおよばない外国映画ですね。「残忍な殺人を詳細に示してはならない」 「復讐を正当化してはならない」 「窃盗、強盗、金庫破り、爆破などの方法も詳細に示してはならない」 「犯罪の手口を詳しく示してはならない」などなど。「映画は人生の規範を示し、不道徳なことに観客を共感させてはならない」というのがアメリカ映画の基本姿勢ならば、この「悪が善に勝つ」というラストの、これはマカロニ西部劇のイタリア映画ならでは描き得たということか、と思うけれど、イタリアはカトリックの本家本元ではないか?、そんな国で神聖であるはずの棺をないがしろにする「続 荒野の用心棒」や、正義に勝った悪人の高笑いが聞こえる反宗教的不道徳な映画を作るのは不思議な?「殺しが静かにやって来る」として、つづきます。
2016年06月10日
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「豹/ジャガー」(1968) IL MERCENARIO (英題)THE MERCENARY監督 セルジオ・コルブッチ 製作 アルベルト・グリマルディ 原案 フランコ・ソリナス、ジョルジオ・アルロリオ 脚本 ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ セルジオ・スピーナ、セルジオ・コルブッチ アドリアーノ・ボルツォーニ撮影 アレハンドロ・ウジョア音楽 エンニオ・モリコーネ ブルーノ・ニコライ出演 フランコ・ネロ、ジャック・パランス トニー・ムサンテ、ジョヴァンナ・ラッリ エドゥアルド・ファヤルド、フランコ・レッセル、ブルーノ・コラッツァリ 本編107分 総天然色 シネマスコープサイズ(DVDはノンスクイーズ)「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第4号収録の「豹/ジャガー」を鑑賞。 1968年作品で、日本公開は1969年9月です。 個人的な思い出では、当時は高校2年生で、この映画を香林坊にあったパリー菊水で見ました。「チキ・チキ・バンバン」を見てきた友人が「パリー菊水」は料金が高いと云ったことから、ずっと足を向けることがなかった映画館ですが、この「豹/ジャガー」を見に行くと、高校生350円で、なーんだ普通じゃないかと思った。 以来、パリー菊水へも、何事もなく通うようになり、そんなきっかけになった作品です。 マカロニウエスタン監督の三大セルジオ(セルジオ・レオーネ、セルジオ・コルブッチ、セルジオ・ソリーマ)の一人であるセルジオ・コルブッチ監督の、1900年代初頭のメキシコ革命を背景にした物語です。 メキシコ革命の動乱真っ最中の話を「西部劇」といって良いのか、という問題があるけれども、飛行機や自動車、機関銃や自動拳銃が登場し、時代は20世紀。細かいことを気にせず、おおらかな気持ちで「西部劇」の範疇に入れても良いんじゃないかと。 メキシコの銀鉱山で鉱夫として働いていたパコ(トニー・ムサンテ)は、非人道的な扱いに憤激して仲間とともに反乱を起こします。 その鉱山にたまたま銀の輸送を請け負って現れたポーランド人のセルゲイ・コワルスキー、通称ジャガー(フランコ・ネロ)は、パコたちの虜になってしまう。 反乱を起こして山賊となった彼らは鎮圧しようとする政府軍の攻撃を受け、パコは捕らえていたジャガーの機転で撃退する。 パコはジャガーを多額の報酬を払って軍事アドバイザーとして雇い、革命軍に参加してメキシコのために身を捧げる決意をする。 政府軍の駐屯地や町の銀行、警察署を襲うパコたちは高額の賞金をかけられて民衆の英雄になってゆく。 革命を成功させようと躍起になる理想主義者パコと、革命騒ぎのドサクサに乗じての金儲けにしか関心がない現実主義者のジャガー、男2人の交流をアクションをまじえて描いたマカロニウエスタンの一作です。 マカロニウエスタンが日本に入って来てブームになったのは1966年頃からで、この「豹/ジャガー」の1969年あたりからメキシコ革命を背景にした作品が目立つようになりました。「群盗荒野を裂く」「ガンマン大連合」「夕陽のギャングたち」「五人の軍隊」など。(本場アメリカ製の西部劇でも「戦うパンチョ・ビラ」と「ワイルドバンチ」がある) とくにマカロニウエスタンに多いような感じ(他に日本未公開の「復讐無頼・狼たちの荒野」も)がするのは、撮影地がスペインなので設定をむりやりにアメリカにするよりメキシコにした方が作り安かったのだろうか。 マカロニウエスタン全体が「アメリカとメキシコ国境の付近」を舞台設定にしていて、登場人物たちの顔つきがメキシコ人っぽいので、メキシコの話にしたほうがやりやすかった、というのは間違いないところではないかと。「革命」とは何なのか?というテーマ性があるマカロニウエスタンです。「豹/ジャガー」で、パコがジャガーに「革命とはなんだ?」と問う。ジャガーは寝ている女の頭と尻の高さを示して、頭が金持ちで尻が貧乏人だ、と云う。革命とは頭と尻を同じ高さにするようなものだと。パコは「じゃあ俺は尻の方がいい」、みたいに云う。 貧乏人に味方して、金持ちを襲って金を奪うことが革命だとしたら、自分が金持ちになったらその時には、その後はどうするのか、という問題がある。
2016年05月29日
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5月26日発売の「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」の第4号を購入。 収録DVDは「南から来た用心棒」と「豹/ジャガー」の2枚です。「南から来た用心棒」(1966) ARIZONA COLT監督 ミケーレ・ルーポ製作 エリオ・スカルダマーリャ脚本 エルネスト・ガスタルディ ルチアーノ・マルチーノ音楽 フランチェスコ・デ・マージ出演 ジュリアーノ・ジェンマ、コリンヌ・マルシャン フェルナンド・サンチョ、ロベルト・カマルディエル ロザルバ・ネリ 本編117分 総天然色 シネマスコープサイズ メキシコの山賊ゴルドー(フェルナンド・サンチョ)に率いられた一団が刑務所を襲撃して囚人を解放します。 ゴルドーは減った子分を囚人たちで補充する目的ですが、獄房にいたアリゾナ・コルト(ジュリアーノ・ジェンマ)も一緒に助け出されます。 ゴルドーは彼らに手下となるよう強要し、拒んだ者はその場で射殺する。 アリゾナ・コルトは山賊の手下などになる気はさらさらなく、ゴルドーの話を拒否し、銃を抜いたゴルドー一味を手玉に取って去ってゆく。 ゴルドーはブラックストーン・ヒルという町の銀行を襲う計画を立てていて、手下のケイ(ネロ・パッツァフィーニ)を町の下見に行かせます。 そのケイが乗ったブラックストーン・ヒルへ向かう駅馬車にアリゾナ・コルトも同乗していた。 酒場の主人に2人の娘がいて、ケイがゴルドー一味であることに気づいた次女が口封じに殺されてしまう。ゴルドーたちが現れ、銀行を襲った時、一味のなかにケイの姿を見た酒場の主人は彼が娘を殺したと知り、仇を討って欲しいとアリゾナ・コルトに頼む。アリゾナ・コルトは姉娘ジェーン(コリンヌ・マルシャン)と一夜を共にする条件で承諾する。「マカロニ・ウエスタンのプリンス」といわれたジュリアーノ・ジェンマ主演作品です。「夕陽の用心棒」(65年 未公開)「荒野の1ドル銀貨」(65)「続・荒野の1ドル銀貨」(65)「続・さすらいの一匹狼」(65)に次いでのマカロニ主演。 楽しんで人を殺している悪役、山賊ゴルドーを演じているのはおなじみのフェルナンド・サンチョ。マカロニウエスタンでは代表的な悪役俳優ですが、今作では大きな印象を残します。 今回、何度目かの鑑賞ですが、人が殺される数の多いことをあらためて感じました。 山賊ゴルドー一味が刑務所を襲う冒頭から、銀行強盗、牛を売った金を持って町へ帰る人たちを待ち伏せて皆殺し、町へ入っての乱暴狼藉。それに主役のアリゾナ・コルトが悪党どもを撃ち倒すのが加わって、いったい何人が死んだことやら。殺される人が多いほど面白い?と云われるマカロニウエスタンだけれども、こうまで多いと食傷気味。 自分的には「夕陽の用心棒」や「荒野の1ドル銀貨」などのほうがマカロニウエスタンらしさを感じて、好みに適っています。たくさんの人が殺されすぎな、この「南から来た用心棒」は監督ミケーレ・ルーポの作風なのか、ちょっと明るすぎる。人が殺されて明るいというのは変だが、でもそうなんだから。 ジュリアーノ・ジェンマのアリゾナ・コルトも飄々としすぎて、地に足が付いていないような不安定なキャラクターになっている。でも馬にパッと軽くまたがる、きれいな乗馬を見せる運動神経の良さはさすがです。 ヒロイン役のコリンヌ・マルシャンさんはきれいな女優だけれども、西部劇にはパリジェンヌすぎて似合わない?
2016年05月28日
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「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」の第3号が 先週12日(木)に発売されました。第1号「荒野の用心棒」(創刊号のみ税込990円)第2号「荒野の1ドル銀貨」「続 荒野の用心棒」 (2号以降は税込1990円)そして第3号の「続・荒野の1ドル銀貨」「さすらいのガンマン」です。 今後のラインナップは第4号「南から来た用心棒」「豹/ジャガー」(5月26日発売予定)第5号「情無用のジャンゴ」「殺しが静かにやって来る」(6月9日発売予定)第6号「暁の用心棒」「怒りの荒野」第7号「ガンマン大連合」「ミスター・ノーボディ」第8号「荒野の大活劇」「復讐のガンマン」第9号「復讐の用心棒」「スレッジ」 となっています。 一昨年の9月にパラマウント・ジャパンから「マカロニウエスタン誕生50周年」としてDVD19作品が発売され、ほとんどを購入しましたが、作品としては良いのに、仕様がスクイーズではないなどの不満が残るものでした。 今回のラインナップを見ると、その時に発売された作品と重複するのを意識的に避けている感じがします。 これまで安価で買えなかった作品を頭にもってくることで購買意欲をそそらせる、ということだろうか。 セルジオ・コルブッチ監督の作品がこれだけで、ほとんどがそろうことになります。「続 荒野の用心棒」「殺しが静かにやって来る」「さすらいのガンマン」「豹/ジャガー」「ガンマン大連合」。 あとは「黄金の棺」があるけれど、これもいつか出してくれそうです。 それとジュリアーノ・ジェンマ主演作が目立ち、「荒野の1ドル銀貨」「南から来た用心棒」「怒りの荒野」「荒野の大活劇」。これに先のパラマウント・ジャパン発売のDVDを加えると、ジェンマのマカロニウエスタン作品がほとんど出そろう、ということになる。「さいはての用心棒」「荒野の一つ星」。それにパラマウント・ジャパンが出した「星空の用心棒」「夕陽の用心棒」も、このDVDコレクションにいずれ含まれると思いますが、野沢那智さんの日本語吹替えで、スクイーズ仕様で、きれいな画質で、出してくれるのを期待。 ジュリアーノ・ジェンマ、良いですね。 イーストウッドやバート・レイノルズのようなアメリカからの出稼ぎ組ではなく、本家イタリアの俳優で、マカロニ西部劇に出演することで人気を得ました。日本でもスズキの原付スクーターの名前(スズキ ジェンマ)になって、テレビCMにも出演した。 何度も言いますが、「続 荒野の用心棒」「殺しが静かにやって来る」「さすらいのガンマン」など、確かに傑作だけれども、それらの暴力と流血と残酷、そのような作品だけだったら、マカロニウエスタンがあれだけの大きなブームにならなかっただろう。 ジュリアーノ・ジェンマの存在は、そんな流血と暴力世界に一服の清涼剤のようだった。 彼の爽やかさが多くの女性ファンの心をとらえ、支持を得ました。 私にとってもジュリアーノ・ジェンマさんは忘れ得ぬ映画スターです。 初めて見たマカロニウエスタンが「星空の用心棒」だったからでしょうか。 「星空の用心棒」と「さいはての用心棒」を映画館のスクリーンで見た時の楽しさは、一生わすれない記憶になっている。
2016年05月16日
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「さすらいのガンマン」(1966) NAVAJO JOE監督 セルジオ・コルブッチ製作 ルイジ・カルペンティエリ エルマンノ・ドナーティ製作総指揮 ディノ・デ・ラウレンティス原案 ウーゴ・ピロ脚本 ディーン・クレイグ フェルナンド・ディ・レオ撮影 シルヴァーノ・イッポリティ音楽 エンニオ・モリコーネ出演 バート・レイノルズ、アルド・サンブレル フェルナンド・レイ、ニコレッタ・マキャヴェリ、ピーター・クロス アントニオ・インペラート、タニヤ・ロパート、フランカ・ポルセッロ 本編92分 総天然色 シネマスコープサイズ 5月12日に発売された「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」の第3号は「続・荒野の1ドル銀貨」と「さすらいのガンマン」です。「続・荒野の1ドル銀貨」は500円DVDがあるので、容易に入手できるけれど、「さすらいのガンマン」の方は3000円以上する高額だし、店頭で売られているのを見かけたことがない。 そんな「さすらいのガンマン」が安価で入手できる、ファンにとってはこのマカロニDVDシリーズはありがたいです。「さすらいのガンマン」(1966年 イタリア・スペイン映画) 日本公開は1967年8月。8410万円の配給収入をあげて好成績だった作品ですが、私はこのマカロニウエスタンを近年まで知りませんでした。 同じセルジオ・コルブッチ監督の「続 荒野の用心棒」「殺しが静かにやって来る」は有名で、私でも3000円以上も払ってDVDを買ったくらいなのに、この「さすらいのガンマン」はあまり知られていないのか?、私が知らなかっただけなのか。 極悪非道なダンカン(アルド・サンブレル)が率いる無法者の一団がナバホのインディアン集落を襲って皆殺しにする場面から始まります。 川で洗濯しているインディアン娘が、馬に乗って現れたダンカンに微笑みかけると、ダンカンは拳銃を抜いて娘を射殺し、その頭皮をナイフで剥いでしまう。皆殺しにされたインディアンたちの頭皮を戦利品のように鞍に下げて馬を走らせる男たち。酸鼻を極めるオープニングに、エンニオ・モリコーネの音楽が入って、「続 荒野の用心棒」「殺しが静かにやって来る」のセルジオ・コルブッチ監督の面目躍如といったところ。 ダンカンはとある町の酒場で、昔のムショ仲間から列車強盗の話をもちかけられる。この男(ピーター・クロス)は、現在はエスペランザという町でドクター・リンという名で医者をしていて、銀行家の娘婿におさまっている。50万ドルを積んだ列車がエスペランザに向かうという情報をダンカンに教える。 その二人の会話をひそかに聞いていた酒場の3人の踊り子とギター弾きの男(アントニオ・インペラート)。踊り子の一人がリンの顔を見ていて、命の危険を悟ったギター弾きが踊り子たちを連れて馬車で町を逃げ出す。 ダンカンが「奴らを逃がすな、殺せ!」と子分に追跡を命じ、追いつかれて危うく殺されそうになるのを救ったのが主人公のナバホ・ジョー(バート・レイノルズ)です。 手慣れた早業でダンカンの子分たちを倒して、ギター弾きと踊り子たちを救ったナバホ・ジョーは彼女たちからダンカンたちが列車強盗を計画している話を伝えられる。 ダンカンたちは列車を襲い、護衛の兵隊もろとも乗客たちまで皆殺し。襲撃は成功するが、その列車をナバホ・ジョーが奪ってエスペランザの町へと届けます。 怒り狂ったダンカン一味がエスペランザの町へ押しかけて来て、50万ドルの金をどこへ隠した!と町民を脅します。 集落の仲間を皆殺しにされたナバホ・ジョー。冒頭で殺されて頭皮を剥がれたインディアン娘は彼の愛妻だったわけで、その復讐が描かれ、ダンカンとジョーの殺しの場面がつづくことになります。 ジョーはウインチェスター銃の正確な射撃とインディアンらしい戦法(密かに忍び寄ってナイフでぐさりと)でダンカンの子分どもを次々と倒し、一時は捕まってリンチを受けて半殺しで逆さ吊りにされるが、酒場のギター弾きに助けられる。 極悪非道な悪党ダンカンだが、彼にも言い分があって、彼はインディアンとの混血で、子供の時に虐められ迫害された恨みがある。インディアンも白人も憎んでいて、だから片っ端からインディアンも白人も情け容赦がない殺戮をつづける。 人が殺されるのが多ければ多いほど面白い?というのがマカロニウエスタンだけれども、邦題の「さすらいのガンマン」からくる語感からははずれていて、主人公はナバホ・インディアンの男ジョーだし、このような主人公はたいへん珍しいのではないか。マカロニウエスタンの異色作と云っていいかと。 1970年代に「脱出」(72)「白熱」(73)「ロンゲスト・ヤード」(74)「トランザム7000」(77)などで大人気スターとなるバート・レイノルズがこのようなマカロニウエスタンに出演していた、その意味からでも見逃せない作品。 マカロニウエスタンとしても傑作だし、必見の一本だと思われます。
2016年05月15日
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