全42件 (42件中 1-42件目)
1
「哀愁の夜」(1966 日活)監督 西河克己企画 笹井英男脚本 千葉茂樹撮影 高村倉太郎美術 佐谷晃能音楽 池田正義出演 舟木一夫、和泉雅子、藤竜也、山本陽子 神田隆、浜田寅彦、柳瀬志郎 本編85分 総天然色 シネマスコープサイズ チャンネルNECOで放送された日活映画「哀愁の夜」を録画して鑑賞しました。 1966年3月27日に公開(東京地区)された作品です。 弁護士見習いの木場正彦(舟木一夫)は、仕事帰りの夜更け、信号無視の車に轢かれそうになる。運転していたのは宇月美紗緒(和泉雅子)という女性で、美紗緒が謝罪した時、ヤクザのチンピラたちに車を囲まれる。正彦の機転で美紗緒を逃がすことができたが、正彦はヤクザがたむろするバーに連れこまれてしまう。そこでヤクザの男が業界紙の編集長 広瀬(杉江弘)を痛めつけているのを見た正彦は、そのヤクザを見て驚く。それは小学校時代の同級生 吉田一也(藤竜也)だった。 一也の友達とのことで正彦は無事に帰されるが、翌朝の新聞で、広瀬が殺された記事を見て、犯人として一也が逮捕されたことを知る。 一也の無実を信じる正彦は、事件の真相調査を始める。仕事の用事で宇月産業を訪問した正彦は、そこで美紗緒と再会。彼女は宇月産業社長(神田隆)の娘だったのだ。美紗緒はアニメ会社Qプロダクションの代表取締役をしていて、「オバケのQ太郎」を製作している現場へ正彦を案内する。お互いに好意を持って惹かれあう二人だが。宇月産業には総務部長(浜田寅彦)がいかがわしい地回りと面会しているなど、正彦は怪しいものを感じるのだった。 昨日の「友を送る歌」は同年の6月に公開、9月にはあの「絶唱」が公開される。この1966年は舟木一夫さんのレコード盤が立て続けに発売され、それらが映画化されて、「絶唱」はこの年の第8回日本レコード大賞を受賞。NHKの紅白歌合戦にも同曲で出場するという、1963年6月に「高校三年生」でデビューしてから3年が経つのですが。まだまだ人気絶頂期が続いていました。「哀愁の夜」は舟木一夫さんの歌謡映画といえる作品で、映画の中で、バックミュージックではなく舟木さんが歌い出すシーンがあって、真剣にストーリーを追って見ていると戸惑いを覚えます。ミュージカル映画ではないのだから、背景に挿入歌として曲を流すだけでいいのではないか。 正義漢の弁護士志望の若者が、友人の無実を証明しようと奔走する話で、恋した女性の父親が事件の黒幕だったというのは、この手の物語では定番です。 事件を追及するサスペンスストーリーがメインなのか、ヒロインとの恋愛がメインなのか、どっちつかずの展開。娯楽映画としては、昨日の「友を送る歌」の方が格段に面白くて楽しめました。 和泉雅子さんも今回の役はあまり冴えない感じがする。TVアニメの「オバケのQ太郎」を製作しているというのは面白い場面だけれど、提供の不二家の人がお菓子の差し入れを持ってくるのだが、これは本当の不二家の社員かもしれない?
2022年09月12日
コメント(0)
「友を送る歌」(1966 日活)監督 西河克己企画 笹井英男脚本 棚田吾郎撮影 高村倉太郎美術 佐谷晃能音楽 池田正義出演 舟木一夫、山内賢、和泉雅子 二谷英明、江戸屋猫八、土方弘、中野未知子 本編77分 総天然色 シネマスコープサイズ チャンネルNECOで放送された時に録画した「友を送る歌」を鑑賞しました。 1966年(昭和41年)6月公開の日活映画です。 北海道に住む大津良夫(舟木一夫)と中川玄一(山内賢)は親友同士だった。二人は横浜で船乗りになるのが夢で、先輩にあたる中川玄一が一足先に横浜へ向かう。二年後、大津良夫が玄一を訪ねて横浜港にやって来る。 良夫は玄一が乗っているという「あさひ丸」を尋ねるが不明で途方にくれていた時、船員組合に弁当を配達しているみどり(和泉雅子)という女の子と出会う。彼女は父(江戸屋猫八)の食堂「みなと亭」に出入りしていた玄一を知っていたが、彼は店に支払う船員組合の金を持ち逃げしたきり音沙汰がないと云う。 良夫はオンボロ船の船長 田山(二谷英明)と、小学生の息子マン坊と親しくなる。良夫とみどりは横浜の街で偶然 玄一に出会い、親友に再会した玄一は、入った店で外国航路の体験談を得意げに語る。良夫は嬉しく聞いていたが、みどりには玄一のホラ話がうさん臭く、すっかり変わってしまった彼が信じられない。 玄一がやくざ風の男 黒沼(土方弘)と店の奥に消えたあと、睡眠薬の入った酒で酔って意識もうろうの良夫は玄一が持っていたスーツケースが置きっぱなしになっていたのを持ち帰る。翌朝、スーツケースを開けた良夫は密輸品らしい大量の腕時計が入っているのを見て驚く。黒沼はスーツケースを紛失した玄一を責め、取り戻すよう命令する。玄一は船員になるどころか密輸品の運び屋をさせられる泥沼にはまりこんでいたのだった。 悪の道に入り込んでしまった親友を救おうとする主人公を舟木一夫さんが演じています。先に見た「高校三年生」「続 高校三年生」では脇役で、この時はまだ台詞を云えればそれでいい、との扱いだったのが、「友を送る歌」では堂々たる主役を演じています。 舟木一夫、山内賢のコンビでは弱いと思われたのか、ベテランの二谷英明さんが彼らをバックアップする形で、オンボロ船の船長役で出演している。クライマックスのヤクザのアジトに乗り込んだ玄一(山内賢)を助けに行くのも彼の役。この乱闘の殴り合いで舟木一夫さんが働いていないのは、舟木さんに殴り合いはふさわしくないとの判断からでしょうか。 二谷英明さんに世話をしてもらった船員見習いの仕事で舟木一夫さんが乗り込んだ客船が横浜港を出港してゆき、見送る和泉雅子さんと大きく手を振りあう別れのシーンが、映画のエンディングらしい余韻を残します。 舟木さんと山内賢さんに和泉雅子さんが加わり、青春映画ともアクション映画とも、どちらともいえない感じの、ユーモアを加えた明るい作品になっています。 横浜港で、舟木さんの着替えと1万円が入ったバッグを二人組のチンピラが盗むのですが、そのバッグを組の事務所に持ち帰ってボスに叱られる。「そんな物で足が付いたらどうするんだッ!ばかやろう。持ち主に返してこい! 返してくるまで顔を出すなッ!」とドヤされるのが人の良さを感じて可笑しい。
2022年09月11日
コメント(0)
「海の情事に賭けろ 」(1960)監督 野口博志企画 坂上静翁脚本 滝口速太撮影 永塚一栄美術 小池一美音楽 鏑木創出演 赤木圭一郎、中原早苗、三島雅夫 近藤宏、笹森礼子、南田洋子、深江章喜、高品格、郷えい治 本編85分 総天然色 シネマスコープサイズ 赤木圭一郎さん主演の日活アクション映画「海の情事に賭けろ」を鑑賞しました。数年前にチャンネルNECOで放送された時の録画です。 赤木圭一郎さんは、1959年は脇役で映画出演(9月の「素ッ裸の年令」が初主演だが)し、主役として注目されて人気スターになったのは1960年2月の、やはり「拳銃無頼帖シリーズ」からと云って良いのでしょう。翌1961年2月21日に事故死するまでの1年の間の作品がすべてで、その間の9月に公開された「海の情事に賭けろ」ですが、今回初めて見る作品です。 房州の別荘に避暑に来ていた社長令嬢の牧 蘭子(中原早苗)は遊び仲間たちとヨットで沖に出ていた。彼女たちは海に浮かぶ男(赤木圭一郎)を発見し救助する。栗谷剛一と名乗る男は乗っていた客船で、うり二つの誰かと間違えられて殺し屋にピストルで撃たれ、海に飛び込んだのだった。 剛一は蘭子の別荘で銃傷を癒し、情熱的な蘭子は彼に恋をする。東京に戻った剛一は大学の先輩の新聞記者 殿村(近藤宏)にその話をする。自分と同じ顔をした男と間違えた殺し屋が「加東」と呼んだことや、水野の指示だと云ったことなどを手掛かりにして殿村は新聞社の調査部に調べてもらうと請け合う。 調査の結果、剛一そっくりの暴力団水野組の幹部で加東勇二という男がいることが分かり、足を洗おうとした加東を許さぬ親分の水野(高品格)が殺し屋を差し向けたのだろうと推理した殿村と剛一。 剛一は自分と同じ顔の男に会いたいと興味を持ち、加東になりすまして水野組の本拠キャバレー「サブリナ」に入り込む。水野は彼が生きているのに驚き、剛一を撃った殺し屋(深江章喜)は面目をつぶされる。剛一は堅気になろうとしたが無理だった、やはりヤクザがいいといって水野に謝る。しかしサブリナのホステスで加東の愛人 百合子(南田洋子)は彼が加東でないことに気付きます。 裏で密輸をやっている水野は戻って来た加東(剛一)の処置を会長に判断してもらうので、それまで待っていろと剛一に命令する。 赤木圭一郎さんが二役を演じます。双子の弟がいて産まれたすぐに里子に出された。その弟がヤクザ者になっている。弟に会いたい願いと、弟が属する密輸組織を潰すために、弟になりすまして組織に入り込む。 いつ正体がバレるかというサスペンスのない展開が物足りなく、密輸組織を相手にするのに味方は先輩の新聞記者だけというのも心細いところだし、警察がいっさい出てこないのも物足りません。普通だったら警部さんとか出るのに。 ヒロインは新聞記者の妹役で笹原礼子さんが出ているけれど、富豪令嬢の中原早苗さんですね。密輸組織のボスが実は・・・というのは意外性のない定番の話でした。 意外性もなくサスペンスもないストレートな物語ですが、赤木圭一郎さんのファンなら見ておいても良いのではないでしょうか。好演しています。 昨日の東宝の「マタンゴ」のヨットはセットでの合成撮影だったけど、日活のヨットは本物でした。
2021年10月20日
コメント(2)
「俺にさわると危ないぜ 」(1966)監督 長谷部安春企画 浅田健三原作 都筑道夫脚本 中西隆三撮影 永塚一栄美術 佐谷晃能音楽 山本直純出演 小林旭、松原智恵子、北あけみ、西尾三枝子 浜川智子、左卜全、郷えい治 本編87分 総天然色 シネマスコープサイズ 小林旭さん主演の日活アクション映画「俺にさわると危ないぜ」をレンタルDVDで鑑賞しました。1966年2月に公開された、日活アクション映画としては最盛期を過ぎて末期作品にあたるのかな。 ベトナムから休暇で帰った報道カメラマン 本堂大介(小林旭)が飛行機の中で親切にしてくれたスチュワーデスの沢之内ヨリ子(松原智恵子)をナイトクラブに誘います。ヨリ子は何者かに見張られていると語り、本堂が目を離したすきに彼女が誘拐されてしまいます。 本堂はさらわれたヨリ子を探そうと、手掛かりを追っていくと、ヨリ子の父は戦時中 沖縄の陸軍参謀であり、終戦後10億円相当の金塊を持ち帰って隠匿したということが判明する。戦争中に軍用資金として沖縄の住民から強制的に集めた金塊のありかをめぐって、不良外人(死語?)の国際ギャングや、日本の暴力団、金塊を取り返すために沖縄から来たアキ子(北あけみ)をリーダーとする妹と従姉妹たち6人、フユ子(西尾三枝子)、ナツ子(浜川智子)、ハル江(斎藤仁子)、キク江(可能かず子)、ヨシ江(加茂こずえ)で構成したブラックタイツ団(女忍者みたいな)が暗躍する。本堂はさらわれたヨリ子を探すべく、彼らの争いの中に巻き込まれてゆきます。 当時の流行だった「007映画」の影響もあるのか、ブラックタイツ団が使う秘密兵器の数々。刃が仕込まれたメジャー(巻尺)や、ブラジャーに隠された爆弾、ゴルフボールの爆弾をクラブで打ったり、レコード盤を手裏剣にして投げるなどの秘密兵器が面白いですが、彼女たちが主人公を助けるために一人ずつ犠牲になって死んでいくのが哀れです。 本堂が下宿する屋敷の主人 百地三斉(左卜全)が忍術の研究家で、主人公に秘密兵器を持たせるのも、当時のスパイ映画調で面白いところ。 メイン女優は松原智恵子さんですが、敵に捕まって下着姿で縛られて金塊のありかを白状しろと拷問されたりするけれど、主人公といっしょに活躍するブラックタイツ団のほうが目立つために、ヒロインとしての見せ場はあまりありません。最後に主人公がアキ子と一度だけ愛し合ったと白状すると、許してあげると言いながら目をつむらせて思い切りぶん殴るというのが、松原さんの役としては珍しいのかもしれない。 クライマックスで金塊が隠されている小島(コンクリートやレンガ造りの廃墟がある。ロケ地はどこだろう?)で敵にヘリコプターから銃撃を浴びせられるが、左卜全に持たされた大時代な火縄式大筒で撃墜する。 コメディ調アクション映画として、渡り鳥や風来坊のシリーズから、次の小林旭さんの日活アクションとして新しい役どころを目指した作品なのかなと思います。赤や黄、青など原色を多用した前衛的、サイケデリックな美術も66年当時の風潮。
2021年10月13日
コメント(0)
「波止場の賭博師」(1963)監督 山崎徳次郎脚本 大工原正泰、山崎 巌撮影 萩原憲治音楽 大森盛太郎出演 小林旭、高須賀夫至子、白木マリ、小高雄二 信 欣三、安部 徹、深江章喜、高品 格 本編94分 総天然色 シネマスコープサイズ 数年前にチャンネルNECOで放送された時に録画した「波止場の賭博師」を鑑賞しました。小林旭さんの日活アクション映画で、今回初めて見る作品です。1963年2月公開。 冒頭場面で各地の密輸組織のボスたちが集まって会合を開き、情報交換をやっている。裏切者を始末したとかの近況報告の中で、神戸のボスが加山という若造が1000万円相当のダイヤと組織の全貌や取引の暗号などが記された機密ファイルを盗んで逃げたと発言して、騒然となる。組織の密輸活動を詳細に記した、その機密ファイルがサツの手に入ったりしたら組織は壊滅してしまう。全力をあげて加山とかいう奴をさがし出して始末し、ファイルを取り戻さないとならない。 横浜でクラブ「ジャルダン」を経営する秋津五郎(小林旭)は、裏で「逃がし屋」をやっている。彼を頼って来る者は確実に海外へ逃がしてくれるという裏社会では定評がある人物です。 横浜のボス(安部 徹)が加山(小高雄二)が現れるのを待って港に網を張っている。はたして秋津のもとに加山が恋人リエ(高須賀夫至子)を伴って姿を現した。マカオへの密航を依頼する加山。秋津は加山に寄り添うリエを見て驚く。彼女は3年前に神戸に置き去りにした、秋津が愛した女だった。当時、密輸の取引現場を荒す一匹狼だった秋津は、住む世界がちがうリエを愛するが故に身を引いたのだった。その愛した女がいま、恋人と共に海外への密航を依頼に眼前に現れるとは。 クラブを経営する主人公の店に、かつて愛した女が恋人(または夫)をともなって訪ねてきて、海外への渡航を依頼する。この映画を見ている途中で設定が「カサブランカ」だとすぐにわかります。パクリとかではなく、「カサブランカ型」といえば良いのかと。そういえば同じ山崎徳次郎監督作である傑作「霧笛が俺を呼んでいる」は「第三の男 型」でしたね。 せっかくの「カサブランカ型」だけれども、話の展開が平板で単調なためにいっこうに盛り上がらないのが残念です。最後に地下水道の中での銃撃戦があって、やっと見せ場になるが、そこへ行くまでが我慢を強いられます。 主人公を頼って来た男は、密輸組織の機密ファイルとダイヤモンドを盗んで逃げて来た。そんなことをすれば組織が怒り心頭になって追って来るのが当然であり、こんな危険で無茶なことをやっての逃避行に愛する女を一緒につれてくるとは、この男の身勝手さに呆れてしまいます。 そのために、この加山という男に応援する気にならないし、感情移入もできないのが、この映画を面白く見られない一因かもしれません。 主人公がかつて愛し、今も愛している女リエを演じる高須賀夫至子さん。どこかで見た覚えがするのは、誰かに似ているのだろうか? 映画の出演は少ないようですが、テレビドラマにはたくさんお出になっているようです。 日活アクション映画としては失敗作かな?と。
2021年09月28日
コメント(0)
「君は恋人」(1967)監督 斎藤武市企画 水の江滝子脚本 若井基成撮影 山崎善弘美術 坂口武玄音楽 中村八大出演 浜田光夫、和泉雅子、蕃ユミ、山内賢 清川虹子、克美しげる、林家こん平、近藤宏 本編94分 総天然色 シネマスコープサイズ 1967年の日活映画「君は恋人」をレンタルDVDで鑑賞しました。 前年の1966年7月に暴漢に襲われて眼球に重傷を負った浜田光夫さんが約400日ぶりに撮影所に復帰。そのカムバック第1作にあたる作品です。 浜田光夫さんを多勢の俳優仲間が歓迎する場面から始まります。つづいて映画「君は恋人」が石原裕次郎監督の「よーいスタート!」の声で撮影が開始される。 貧乏な暮らしから抜け出そうとする矢代光夫(浜田光夫)は母親(清川虹子)の制止をきかず、ヤクザの大幹部になって羽振りの良い暮らしをすることを夢見ている。彼を気にかけて心配するトンカツ屋の娘(和泉雅子)や流しの克美しげる。しかし、光夫が望んだヤクザ世界はそんな甘いものではなく、彼はやがて利用されただけだと思い知ることになります。 そんな劇中劇「君は恋人」の撮影進行が当時の日活映画オールスター出演で展開される。 石原裕次郎、小林旭、二谷英明、葉山良二、宍戸錠、高橋英樹、渡哲也、和田浩治、近藤宏、岡田真澄。和泉雅子、吉永小百合、松原智恵子、芦川いづみ、浅丘ルリ子、伊藤るり子、水の江滝子(プロデューサー)などなど。 ほかに当時の歌謡界で人気のあったザ・スパイダース、ジャニーズ。舟木一夫、坂本九、克美しげる、荒木一郎、黛ジュンなどが出演し、当時のヒット曲を劇中で歌います。 前半はちょっとシリアスな話で始まったのに、それでは暗すぎるというので光夫の仲間スパイダースが渡哲也扮する脚本家に書き直すよう騒音で強要するあたりから、ハチャメチャなコメディになってしまう。 歌舞伎町をギター抱えて歌い歩く流しの姿や、新宿歌舞伎町の実景と日活銀座?のオープンセットを併用した撮影。実景では映画館の前に「アラモ」や「嵐を呼ぶプロファイター」の絵看板が見られます。 黛ジュンさんがミニスカートで「恋のハレルヤ」を歌い、ヤクザの本拠があるキャバレーでのセクシーなショーなどおなじみの日活キャバレーの場面もあり、出演俳優の顔ぶれと共に、日活映画のすべてのエッセンスが一本の映画に収められているようです。 当時を知っている人は懐かしい気持ちで見られるだろうけど、当時を知らない若い人にとってはつまらないと思うだろう「お遊び映画」です。 この1967年は、和泉雅子さんと山内賢さんにとって「二人の銀座」と「東京ナイト」が大ヒットした年でもありますが、日活映画だけでなく日本の映画産業が斜陽に向かいつつあった時代です。
2021年07月02日
コメント(0)
「危いことなら銭になる」(1962)監督 中平康脚本 池田一朗、山崎忠昭原作 都筑道夫撮影 姫田真佐久音楽 伊部晴美出演 宍戸錠、長門裕之、浅丘ルリ子 草薙幸二郎、左卜全、武智豊子、浜田寅彦 本編82分 総天然色 シネマスコープサイズ 日活アクション映画「危い(やばい)ことなら銭になる」をレンタルDVDで鑑賞しました。 1962年(昭和37年)12月1日公開の作品です。 紙幣印刷用の三俣和紙を積んだワゴン車が造幣局へ向かっている途中で襲われ、運転手2人が殺されて透かし入りの和紙、千円札で10億8千万円相当分がワゴン車ごと奪われる事件が起こる。 事件をニュースで知った「ガラスのジョー」こと近藤錠次(宍戸錠)は儲け話を思いついて行動を開始する。 同じことを考え付いた男がほかに2人いて、砂利運搬ダンプの運転手「ダンプの健」こと芹沢健(草薙幸二郎)と、雑誌「週刊犯罪」の編集長で「計算尺の哲」こと沖田哲三(長門裕之)である。 彼らが思いついた儲け話とは、贋札作りの名人 坂本雅章〔がしょう〕(左卜全)を強奪犯人どもに売り込むことだった。 坂本名人は東南アジアへ行っていて2日後に帰ってくるという。当日、3人は羽田空港のロビーで鉢合わせをし、お互いにけん制しあい出し抜こうとする。拳銃の腕は一流だがガラスをひっかく音に弱いという錠、計算尺の計算で確率を計算し、その通りに行動する哲、ダンプが愛車の腕力自慢の健。 税関職員に変装した哲が出し抜いて坂本名人を連れ去ろうとするが失敗し、横から現れた強奪犯の一味に名人を奪い去られてしまう。 一味が持っていた拳銃トカレフに注目した錠は、拳銃密売屋からそのトカレフの買い主を聞き出す。その線を追った錠は共栄商会という事務所を訪問する。共栄商会とは名ばかりで部屋には女の子が一人で電話番をしているだけ。錠はその秋山とも子(浅丘ルリ子)にボスへ連絡をとらせて自分を売り込むが、ボスは拒否し、とも子もクビだと云い渡す。 フランスで柔道を教えるのが夢で、その旅費を稼ぐアルバイトが首になったとも子はボスから退職金をもらうのだと、錠といっしょに行動することに。 贋札作りの名人を奪い合って3人の男と1人の女が呉越同舟、共闘して悪党どものアジト、キャバレー「アカプルコ」で大奮戦を展開します。 贋札作りの世界的な名人を演じる左卜全さんのエロじじいぶりも可笑しいが、この映画の最大の得点は紅一点の浅丘ルリ子さんが可愛らしく大活躍することでしょう。 和紙を積んだワゴン車を油断している男をぶん殴って奪い返して、ガタゴトと東京の大通りを運転しているのを、並んだトラックの運転手に冷やかされて路上で柔道の大げんかをしたり、鼻歌を歌いながら電柱をヒョイヒョイとよじ登ったり。砂利ダンプで敵のアジトのキャバレーへ突っ込んだり。 敵に捕まって縛られて地下室に主人公たちといっしょに転がされた彼女が、お尻のポケットにナイフがあると云う。錠が縛られた後ろ手で彼女のポケットをさぐろうとすると「あ~ん、そこそこ」なんてギャグもあります。鼻歌を歌いながらスキップする明るく無邪気な女の子の役で、こんな浅丘ルリ子さんを見たのは初めて。これが浅丘ルリ子さんの役か?という場面もあったりして。 日本映画にはめずらしく、銃撃戦で悪党どもを皆殺し。その流血を見た浅丘さんがたまらずに「おえ~」となる。敵を一掃して贋札名人といっしょに贋札を刷り始めた主人公たちだったが・・・。 犯罪は成功しない的ストーリーは倫理的には当然だが、それをいかに面白い話として見せるか。 日本映画にもこんな愉快な犯罪コメディ・アクション映画があったんだね。傑作です。
2020年09月03日
コメント(0)
「拳銃は俺のパスポート」(1967)監督 野村孝脚本 山田信夫、永原秀一原作 藤原審爾撮影 峰重義音楽 伊部晴美出演 宍戸錠、小林千登勢、ジェリー藤尾 武智豊子、内田朝雄、佐々木孝丸、嵐寛寿郎 日活 本編84分 モノクロ シネマスコープサイズ 宍戸錠さん主演の日活アクション映画「拳銃(コルト)は俺のパスポート」をレンタルDVDで鑑賞しました。1967年2月4日公開作です。 赤木圭一郎さんの「紅の拳銃」(1961)の冒頭で、垂水悟郎さん演ずる殺し屋が「殺し屋なんて実際にはいやしねえんだから。大体、日本じゃ、殺し屋商売が成り立つわけがないんですよ。警察もあれば法律もある。第一、ピストルを持つこと自体が銃砲等所持禁止令第一条ってやつにひっかかる。違反すれば3年以下の懲役ですからな」と云います。 はたして殺し屋なんて映画や小説の虚構で、現実にはいないのだろうか? それはわからないけれど、日本映画でも欧米の映画のように殺し屋を主人公にしたアクションものがあってもいいのではないか、と考えて撮られたのだろうか? 宍戸錠さんは小林旭さんや赤木圭一郎さんの映画でも殺し屋の役だったけれど、それらの人間味のあるコミカルなキャラとは異なって、本作ではこの世の裏社会で孤独に生きざるを得ない殺し屋を寡黙に暗~く演じています。この変化は、もしかして前年1966年公開されたイタリア映画「殺しのテクニック」の影響を受けたものだろうか? ハジキを持った拳銃の名人だった「殺し屋」のイメージが「狙撃者(スナイパー)」というイメージに変わったとすれば、「殺しのテクニック」が与えた影響は大きなものだったのではないか。 殺し屋の上村(カミムラ)は関東の組織のボス大田原(佐々木孝丸)から仕事を受ける。関西から進出してきた島津組のボス 島津(嵐寛寿郎)を暗殺することで、上村は貸マンションの一室からライフルで狙撃して島津と用心棒を見事に仕留める。 上村は弟分の塩崎(ジェリー藤尾)とともに羽田から海外へ逃げる手はずだったが、会長を殺された島津組の手がまわり、飛行機に乗れなくなってしまう。とりあえず大田原組が手配してくれた横浜にあるモーテル「渚館」に身を隠し、横浜一帯を仕切る津川(内田朝雄)の手を借りて船で国外へ出ることになるが。 ところが島津組と大田原組、津川組が抗争はお互いの利益にならないとして、手を握ってしまう。組織が和解した裏取引で上村と塩崎を島津会長の仇として消してしまうことになる。 昨日に見た東宝の「狙撃」のようなモダンさはないけれど、プロの殺し屋をリアルに描いたということではこの「拳銃は俺のパスポート」のほうが一段勝っているのではないか。 狙撃のシーンで、タバコの煙で風向きを確認するという同様の演出もあり、仕事に使ったライフルは惜しげもなく一度きりで処分するというのも、プロの心得として真実感があります。 主人公たちが身を隠すモーテル(兼レストラン)渚館で働く女性 美奈を演じる小林千登勢さんがとても良い。世間のはみ出し者たちの生活から抜け出したいと願う薄幸の女がお尋ね者といっしょに逃げようとする。この役が日活常連の浅丘ルリ子さんや笹原礼子さん、松原智恵子さんとかだったら、また異なる印象を受けることになるのだろう。「狙撃」のラストもそうでしたが、敵との対決で相手を倒して、撃たれて傷ついて生き残った主人公が、このあとどうなるのか?と、結末をあいまいなままにしています。 日活アクション映画の傑作です。日本にもこのような優れた殺し屋映画があったとは。
2020年07月09日
コメント(1)
「南海の狼火(のろし)」(1960)監督 山崎徳次郎原作 原健三郎 脚本 山崎巌撮影 高村倉太郎音楽 大森盛太郎 主題歌「さすらい」小林旭出演 小林旭、浅丘ルリ子、宍戸錠 金子信雄、白木マリ、岡田真澄、内田良平 本編81分 総天然色 シネマスコープサイズ 小林旭さんの日活アクション映画「南海の狼火」を鑑賞しました。数年前にチャンネルNECOで放送されたときの録画ブルーレイです。 小林旭さんの「流れ者シリーズ」第3作目。昭和35年(1960)9月公開。 四国宇和島へ本土からの連絡船で、ギターを持った流れ者 野村浩次(小林旭)がやって来る。町は闘牛と和霊祭りでにぎわっていて、野村は到着早々に真珠養殖業者と地元の暴力団の争いに首を突っ込んでゆく。 真珠養殖業を営む須田(菅井一郎)は暴力団の黒田(金子信雄)に多額の借金をしていて、その返済を迫られていた。近く開催される闘牛で須田の持ち牛「荒岩」が勝てば返済できる見込みだった。 野村は須田の娘 清子(浅丘ルリ子)から、兄の周一(中田博久)がキャバレー「パラダイス」の踊り子ハルミ(白木マリ)と恋仲になり、嵐の海で不慮の死をとげたことや黒田一味の横暴さを聞き知った。 黒田は良質の真珠を産出する須田の養殖場を狙っていて、そのアジトのキャバレー「パラダイス」でのイカサマ賭博で須田の従業員を買収し、闘牛で荒岩が負けるように工作していた。「パラダイス」のフロアでは、野村浩次と同じくして宇和島についた自称 坊主の政(宍戸錠)が黒田の子分たちと乱闘をおこしていた。政は黒田をゆすりに来た僧籍を破門になったという殺し屋?だが、主人公の野村とは妙に馬が合い、助けたり助けられたりする、この小林旭さんと宍戸錠さんとの関係は毎度おなじみのものです。 日活キャバレーとも云われるらしい? セットのキャバレーが出てくるとなぜか嬉しくなってしまいます。フロアでは踊り子役の白木マリさんのセクシーなダンスが。このようなシーンが遠く懐かしいような、ムズムズするような記憶になっていて、当時はまだ小学校に入ったばかりなのに、映画館で見たのだろうか? 金子信雄さんの悪役も毎度ですが、浅丘ルリ子さんを押し倒してのしかかるなど、エロジジイな悪役でした。宇和島でロケ撮影されたご当地映画でもあり、観光絵葉書的な映画でもあるようです。 この昭和35年は日活アクション映画の最盛期といえるのではないか。裕次郎さん、赤木圭一郎さん、小林旭さんの三大スターがそろい踏みだった年で、宍戸錠さんのコミカルな殺し屋役もなくてはならない存在になっている。そして、いつも浅丘ルリ子さんが出ています。
2020年06月22日
コメント(0)
「錆びた鎖」(1960)監督 斎藤武市脚本 池田一朗 秋元隆太撮影 高村倉太郎美術 千葉一彦音楽 小杉太一郎出演 赤木圭一郎、笹森礼子、小沢栄太郎、小高雄二 白木マリ、宮城千賀子、大坂志郎、高野由美 近藤宏、西村晃、杉山俊夫、藤村有弘 本編95分 総天然色 シネマスコープサイズ 赤木圭一郎さん主演の日活アクション(と云っていいのか?)映画をレンタルDVDで鑑賞しました。 クランクイン1960年10月13日、クランクアップ11月6日、初号試写11月10日、封切日11月12日です。 横浜港の荷役業を扱う長岡企業の社長 長岡康三郎(小沢栄太郎)の次男 英二(赤木圭一郎)は学校よりも沖仲仕と一緒に荷役作業をしている方が楽しいという明朗な青年だった。くらべて兄の健一は秀才型で、父の跡継ぎとされているが万事に付けて頼りがない。その健一が商談に出向いた先で2000万円の手形を奪われてしまう。 同業者の罠にはめられて、社長が病死に見せかけて殺される。兄の健一が新社長に就任するが、奪われた手形を入手した悪徳金融業の水原(大坂志郎)が現れて、専務として経営に参画することを強要する。労務にまで口出しをする水原のために労働環境が悪化し、過重労働がたたって英二と気が合う政吉(杉山俊夫)がハッチから落下して事故死し、沖仲仕たちの不満と憤激が高まってゆきます。わが物顔にふるまう水原を会社から追い出すには2000万円を調達しなければならない。 熱血漢の主人公が沖仲仕たちの団結した協力を得て、手形パクリ屋 水原の悪辣な会社乗っ取りを阻止して会社を救おうと立ち上がる。 本作での赤木圭一郎さんは、暗黒街を舞台にしたアクション映画「拳銃無頼帖シリーズ」の拳銃使いのような陰のある役とは違って、どちらかといえば加山さんの「若大将」を思わせる明朗快活なおぼっちゃん的キャラです。青春映画の熱血漢な主人公が父の会社を乗っ取ろうとする一味と戦う。それを荒くれな港湾労働者たちが支持する。 会社乗っ取りを阻止する戦いと家族をめぐるドラマです。金策につまった兄の健一が持参金を目当てに同居している従妹 美枝(笹森礼子)と結婚をしようとする。健一と英二の間で心が揺れる美枝と、兄と弟の人物比較と、やがて兄弟の対立が起きて、出生の秘密が明らかにされた弟 英二の苦悩。 俳優として経歴の浅い赤木圭一郎さんはいまだ演技が上手とはいえない俳優であり、開巻で多勢の沖仲仕たちが乗りこんで、沖に停泊する貨物船に向かう船に遅れて駆け込んで仲間と談笑する主人公と、それにかぶさるように、これもけっして上手ではない赤木さんが歌う主題歌が流れると、「こんなんで大丈夫か?」と不安になるような始まり方だけれども、話が進むあいだにまったく気にならなくなるのは、悪役も含めて共演者たちのおかげなのだろう。陰険で悪辣な悪役を演じるのは大坂志郎さんですが、ふつうは温厚な父親の役が多いイメージがあり、この悪役は珍しいのではないか? そして英二の男ぶりの良さを気に入って力を貸す風太郎(会社に属さない港湾労働者)の、「だから今どきの若いモンは嫌いだ」が口癖のぐちりの平太を喜劇的に演じる西村晃さんの好演と存在感がひかっています。 監督の斎藤武市さんは「渡り鳥シリーズ」で小林旭さんとのコンビで知られていますが、新たな方向として赤木圭一郎さんとのコンビを始めようとしたのかはわからないけれども、赤木さんの事故死がなかったなら、このあとも監督作がつづいたのかもしれない。
2020年06月14日
コメント(0)
「殺しの烙印」(1967)監督 鈴木清順脚本 具流八郎撮影 永塚一栄美術 川原賢三音楽 山本直純出演 宍戸錠、南原宏治、玉川伊佐男、真理アンヌ 小川万里子、南廣 本編91分 モノクロ シネマスコープサイズ 宍戸錠さんが殺し屋役を演じる日活アクション映画「殺しの烙印」を見ました。 チャンネルNECOで放送された時の録画です。画質はとても良い。 殺し屋のランキングがあり、殺し屋たちがランクをあげようと競っているらしい世界。殺し屋ナンバー3の花田五郎(宍戸錠)は、アル中で落ち目の殺し屋 春日(南廣)が名誉挽回する仕事に力を貸すことになる。それは、ある人物(南原宏治)を護送することで、その途中で花田は襲撃者を撃ち倒してゆくが、錯乱した春日は撃たれて死んでしまう。目的を果たした花田に、組織の薮原(玉川伊佐男)から新たな仕事がくる。こんどは4人の男を始末することで、花田は殺しのテクニックで3人を消すが、4人目に手間取って失敗してしまう。 花田は、部屋中に蝶の死骸を散りばめて住む自殺願望がある謎の女 美沙子(真理アンヌ)と出会い、彼女に依頼された狙撃にも失敗してしまう。プロの殺し屋として徐々におかしくなってゆく花田の前に、だれも顔を見たことがないという伝説の殺し屋ナンバー1が現れる。 公開時のポスターを見るとサングラスの宍戸錠さんと黒い下着姿のセクシーな真理アンヌさんが描かれて、面白そうなハードボイルド活劇映画に思えますが、ところが見てびっくり、なんだこれは?な、わけがわからない、作者は何を云いたいのか? 観客を無視した監督の独りよがりな作品ではないか。 開巻の、護送の仕事を受けた主人公が襲撃を撃退しながら車で進んでゆくまではよかったのだが、そのあとが常軌を逸する展開というか、主人公の女房(小川万里子)の狂気じみた演技に辟易させられるあたりからおかしくなってくる。 蝶や小鳥の屍骸が散乱する部屋の意味がわからない。主人公が錯乱状態になっていったり、彼を狙うナンバー1との奇妙な共同生活など、こんなシーンを観客に見せてなにをいいたいのか? ご飯が炊きあがる時の匂いが好きだという主人公の異常な趣味は、なんだこれは?です。 この映画を見た日活の社長が監督の鈴木清順に電話をかけて契約解除を言い渡したそうですが、会社の金でわけがわからん映画を撮ってはならない。アバンギャルドな、前衛的な映画を撮りたければ自分で金を出して撮るのが筋合いってものだろう。日活は大衆娯楽映画の会社であり、その路線から逸脱しています。 プロの殺し屋が破滅へとむかってゆく、という映画を撮るなら、そういう作品はいくつもあるけれど、こんな前衛的な撮り方ではなく、ほかに方法があるのではないか? サイケデリックが流行した時代ならでは、な作品だろうか。
2020年06月12日
コメント(1)
「夜霧よ今夜も有難う」(1967)監督 江崎実生脚本 石森史郎、江崎実生撮影 横山実美術 坂口武玄音楽 伊部晴美出演 石原裕次郎、浅丘ルリ子、二谷英明、佐野浅夫 高品格、郷英治、太田雅子、二本柳寛、伊藤るり子 本編93分 総天然色 シネマスコープサイズ 石原裕次郎さん主演の日活ムードアクション映画「夜霧よ今夜も有難う」を鑑賞しました。5年ほど前にチャンネルNECOで放送したさいに録画したものです。 神戸港。外国航路から帰って来た貨物船の船長 相良徹(石原裕次郎)が、恋人の北沢秋子(浅丘ルリ子)に電話をかけて求婚する。待ち合わせの教会へ急ぐ秋子は途中で花を買おうとして交通事故にあってしまいます。相良は日が暮れるまで待ち続けるが彼女は来ない。 そして4年後。相良は船乗りを辞めて横浜でナイトクラブの経営者となり、裏稼業で「逃がし屋」を営んでいた。密出国を望む者にパスポートと乗船の斡旋をおこなっているのだ。 そんな相良の店にある日、東南アジア某国の革命指導者であるグエン(二谷英明。彼が秋子を車ではねた)が妻を同伴で現れる。相良はその女性を見て驚きます。自分の前から姿を消した秋子ではないか。グエンは相良に国外脱出の手助けを依頼するのだが、相良は断り、秋子を冷淡な目でみつめる。 アメリカ映画の名作「カサブランカ」(1942年 日本公開1946年6月)をモチーフにした作品です。結婚を約束しながら男の前から消えた女が4年ぶりに現れて、夫を助けてほしいと訴える。 クラブのコックとして働く仙吉(高品格)はかつて相良の貨物船での部下であり、「この4年間、マスターは忘れようとして苦しんできた。やっと立ち直ったのに、いまさら現れやがって、とっとと出ていけ」と店から追い出そうとします。 浅丘ルリ子さんが演じるヒロインが嫌な女に感じられてしまうのは、「カサブランカ」のイングリッド・バーグマンがそうなのだから当然かもしれない。ここでの見どころは男と女の愛情なんかではなくて、裕次郎さんのマスターに仕える高品格さんとの、男同士の心の深いつながりなのでしょう。「カサブランカ」を題材としながら、裕次郎さんの相良とリックとのちがいは、リックのやせ我慢が描かれていないことです。その分、男のやせ我慢という格好良さが感じられないのがこの映画の物足りなさになっているのかもしれません。 それと死なせないでもいい人物を死なせているのではないか。相良に出国を頼みに来た若いチンピラ(杉山俊夫)とその恋人(伊藤るり子)は無事に逃がしてやるべきであり、彼らを死なせたのは相良の手配が手落ちだったということではないか。「夜霧よ今夜も有難う」のタイトルなのに夜霧がなく、効果的に夜霧が使われていれば、もっとムードがあっただろうにな。
2020年06月11日
コメント(0)
「夕陽の丘」(1964)監督 松尾昭典原作 菊村到脚色 山崎巌、国弘威雄撮影 荻原泉美術 木村威夫 音楽 池田正義出演 石原裕次郎、浅丘ルリ子、和田浩治 中谷一郎、野呂圭介、名古屋章 本編88分 総天然色、シネマスコープサイズ 石原裕次郎さんの日活ムードアクション映画「夕陽の丘」を鑑賞。数年前にチャンネルNECOで放送された時に録画したものです。 篠原健次(石原裕次郎)は兄貴分の森川(中谷一郎)の情婦 聖子(浅丘ルリ子)と隠れて愛し合う深い関係になってしまった。明日、森川が出所してくるという夜、聖子は一緒に逃げようと云うが、健次は逃げても兄貴はきっと追ってくる、森川の影に怯えて暮らすのはまっぴらだと。 逢引きのあと聖子がアパートに帰ると、森川の舎弟 串田(名古屋章)がいて、浮気を黙っててやるからと迫る。聖子は抵抗するが押し倒され、そこへ健次が助けに現れる。串田が拳銃を取り出して脅すのを健次が取り上げて、なりゆきで発砲し串田に重傷を負わせてしまう。 このままでは済まない。聖子は健次に妹からの葉書を渡して、函館のその住所で待っていてほしい、自分もあとから行くからと、健次を逃がす。 函館に着いた健次は聖子の妹 易子(浅丘ルリ子 二役)を見て、聖子にそっくりなことに驚く。姉の暮らしを知らない易子はヤクザな健次を嫌ったが、彼が心底 姉を愛しているのを知る。健次は場末のホテルに投宿して聖子を待つが彼女は現れない。数日後、聖子からアシタイクとの電報が来て喜び、連絡船発着場と空港で一日中待ち続けた。しかし聖子は現れない。 いたって単純なストーリーです。兄貴分の女と愛し合うようになってしまった主人公が、函館へ逃げて、そこで女を待つがなかなか来ない。兄貴はきっと追ってくる。かつて拳銃で撃たれて死ぬところを輸血をして助けてくれた恩人でもあり、その女を寝取ってしまった後ろめたさ。女への愛との板挟みになり、兄貴の仕返しを恐れる。 浅丘ルリ子さんがヤクザの情婦と、堅気の清い娘との二役を演じています。ヘアスタイルを変えて演じ分けていますが、髪形を変えるだけで女性は別人に見える。 最後、森川が函館に現れ、無人の競馬場で健次と拳銃での対決となるが、森川の銃は健次ではなく、うしろにいた聖子を撃つ。もんどりうって倒れる聖子、浅丘ルリ子さんのこんなシーンはたいへん珍しいのではないか。森川は裏切った弟分の健次を恨んではいなかった。許せないのは聖子であったのか。聖子はおまえには渡さないぜ、ということか。 石原裕次郎さんのデュエット曲の代表は「銀座の恋の物語」と「夕陽の丘」かと思いますが、その「夕陽の丘」を題材にした映画です。 昨日の「赤いハンカチ」では作中で何度も歌われて効果的だったのに、今作ではオープニングでも途中でも歌われることがなく、エンディングでやっと流れる。もっと作中でも歌ってほしかったです。「俺は待ってるぜ」をギター弾きながら歌ったけれど。
2020年06月10日
コメント(0)
「赤いハンカチ」(1963)監督 舛田利雄脚本 小川英、山崎巌、舛田利雄音楽 伊部晴美 主題歌「赤いハンカチ」(石原裕次郎)撮影 間宮義雄美術 千葉和彦出演 石原裕次郎、二谷英明、浅丘ルリ子 金子信雄、桂小金治、笹森礼子、芦田伸介 本編98分 総天然色 シネマスコープサイズ 石原裕次郎さんの代表作「赤いハンカチ」をレンタルDVDで鑑賞しました。 深夜の操車場で麻薬の運び人を捕えようとした2人の刑事 三上(石原裕次郎)と石塚(二谷英明)。逃げた男を追うがトラックに轢かれて死んでしまう。男が持っていたバッグが現場に見当たらず、逃げる途中にあったおでんの屋台に気付いたが、すでにバッグはなくなっていた。 三上と石塚は屋台のおやじ 平岡(森川信)を取り調べるが、口を割ろうとはしない。 父親が警察に拘留されたことを娘 玲子(浅丘ルリ子)に告げに行った三上は、天真爛漫で屈託のない彼女に好感をいだき、父親のことについて何も訊けなくなってしまう。 平岡が地検に送られることになり、その護送車に乗ろうとした時、不意を突かれた石塚は拳銃を奪われてしまう。乱射する平岡に石塚がしがみつこうとし、三上は石塚を守るために発砲、平岡を射殺してしまった。 査問委員会が開かれ、オリンピックの射撃の選手候補になるほどの腕を持つ三上が、容疑者を撃ち殺すのは不自然ではないか、殺意があったのではとされ、結局、三上と石塚は、地方へ左遷される事になる。 三上と石塚は、玲子を訪ねて、平岡の死は過失だったと謝罪するが、玲子は「あなたが殺したのよ、許さない」と罵倒する。 そして4年後。三上は北海道のダム建設現場で日雇い労働者として働いていた。 そこへ神奈川県警の土屋警部補(金子信雄)が探し訪ねてきて、三上に4年前の事件について疑惑があることを語ります。石塚も警察を辞めたが、いまは大実業家として成功している。その資金はどこから出たんだ?と。 石原裕次郎さんのヒット曲を題材にした日活ムードアクション映画の傑作です。同僚を守るため容疑者を射殺した刑事が、辞職して自暴自棄になっていたが、4年後、射殺事件の裏に隠された奸計に気付き、事件の真相を解こうとする。港町横浜を舞台に、石原裕次郎、二谷英明、浅丘ルリ子の三角関係が描かれます。 主人公の行動は大儀とか正義とか義務とかのためではなく、すべての希望を失った男が自分を取り戻すために事件の真相追及に立ち上がる。遠近感のある港町横浜の撮影が素晴らしく、「赤いハンカチ」の曲が流れる効果もあって、フランス映画を見ているかのような、とても良いムードのある作品です。 いつもは悪役の金子信雄さんが刑事役で登場し、タヌキおやじ的な好演。 公開されたのは昭和39年(1964)1月です。当時、裕次郎ファンだった姉に連れられて映画館で見た記憶がありますが、小学生だったので少しも面白くなかった。大人の映画なのであたりまえです。
2020年06月09日
コメント(2)
「邪魔者は消せ」(1960)監督 牛原陽一脚本 熊井啓撮影 姫田真佐久音楽 小杉太一郎出演 赤木圭一郎、葉山良二、穂積隆信、金子信雄 清水まゆみ、渡辺美佐子、近藤宏、内田良平、高品格 本編83分 総天然色 シネマスコープサイズ 赤木圭一郎さん主演の日活アクション映画「邪魔者は消せ」を鑑賞しました。8年ほど前にチャンネルNECOで放送された時に録画したものです。 封切りは1960年(昭和35年)4月16日。 似たタイトルに「邪魔者は殺(け)せ」という英国映画(1947年 監督キャロル・リード)があってまぎらわしいけれど、こちらは赤木圭一郎の潜入捜査ものです。 羽田空港に降り立った、香港を根城に暗躍する麻薬組織の大物クレイグ(ヴェルナル・バーレー)を追跡する刑事たちが、接触した連絡人とおぼしき男(待田京介)を尾行するが眼前で射殺されてしまう。捜査に行き詰った警察は麻薬売買で目を付けている岩瀬運輸の社長 岩瀬(金子信雄)の周辺をひそかに監視する。 警察に目をつけられて麻薬取引が困難になった岩瀬は、用心棒の拳銃使い 永塚(穂積隆信)と網走帰りと称する秋津信太郎(赤木圭一郎)をクレイグとの取引に使うことにする。 抜群の腕を持つ拳銃使いの主人公が麻薬Gメンの正体を隠し、組織に潜入して悪人の企みをつぶして追い詰めてゆく話です。 赤木圭一郎さんの主演作としては3作目にあたり、わずか1年余のその映画スター期間のなかでは初期作品にあたるせいか、演技に慣れていないようです。相手役女優の清水まゆみさんはほとんど目立たないし、渡辺美佐子さんもヒロインという立場でも役柄でもなく、物足りない感じがします。 主人公の正体を怪しみながらも、いっしょに行動することになる用心棒の穂積隆信さんは、これは宍戸錠さんでも良いのかもしれなく、暗い過去と十字架を背負った男の哀しみがあって、ヒーローらしさが薄い赤木さんより、穂積さんのほうが存在感がある渋い演技を見せてくれます。 赤木さんがカミナリ族みたいにバイクに乗って、うしろに女の子を乗せて走るシーンがあって、このために遊んでいるただの若者に見えてしまう。潜入捜査官の役に徹するなら、このバイクのシーンはないほうが良かったのではないか。 後半部での、バスケットボールに仕掛けられた時限爆弾というハラハラドキドキ的な展開の、街中をパトカーがサイレン鳴らして走るシーンでは、昭和35年当時の東京の風景と交通状況がたっぷりと記録されており、現在では大きな見せ場のひとつです。 赤木圭一郎さんを知らない人が、ひとつ試しに見てみようか、という作品とするにはあまり適さないようで、その意味ならば「霧笛が俺を呼んでいる」か「拳銃無頼帖 不敵に笑う男」をおすすめします。
2020年05月24日
コメント(0)
「俺の血が騒ぐ」(1961)監督 山崎徳次郎脚本 池田一朗、長谷部安春、加藤新二撮影 姫田真佐久音楽 斎藤高順出演 赤木圭一郎、葉山良二、南田洋子 笹森礼子、小沢栄太郎、沢本忠雄、安部徹 本編86分 総天然色 シネマスコープサイズ 赤木圭一郎さん主演の日活アクション映画「俺の血が騒ぐ」をDVD鑑賞しました。 1961年1月9日公開。クランクインは1960年11月12日、クランクアップが12月17日、初号試写12月21日です。 外国航路貨物船 玄海丸の船長だった父が麻薬密輸容疑を着せられて殺された笠原邦夫(赤木圭一郎)は犯人を探し出して復讐する決心をしていた。船医として邦夫の父親の船で働いていた宮沢浩平(小沢栄太郎)は、父親が死んで生活が一変した邦夫と弟の明(沢本忠雄)を援助し、娘の節子(笹森礼子)は邦夫の婚約者だった。 邦夫は商船大学生の弟を無事に卒業させるために、船員の仕事をしながら月謝の支援していたが、復讐しか頭にない邦夫の行動に恋人の節子はついて行けなくなり、いつしか明と愛し合うようになっていた。弟が節子と愛し合っているのを知った邦夫は、心の淋しさをかくしながら、2人を祝福するのだった。 邦夫はバー「エルム」での乱闘をきっかけに健次という男(葉山良二)と知り合って意気投合する。健次は邦夫に極東貿易の社長 立岩(安部徹)を紹介し、健次は立岩の用心棒だった。邦夫の拳銃の腕前に惚れ込んだ立岩は邦夫を仲間に誘う。立岩は貨物船で密輸をおこなう組織のボスであり、邦夫に今度の航海に加われば、父親の仇に会えるだろうとほのめかし、邦夫は誘いにのって航海に参加することになった。同じころ、弟の明も大学の練習船「海洋丸」で遠洋航海に出航する。 赤木圭一郎さんの海洋アクション映画で、濡れ衣を着せられて撃ち殺された父親の無念を晴らすために、密輸組織に加わって、貨物船に同乗して真犯人をさがし出そうとする話です。 冒頭、練習船「海洋丸」が海を漂う幽霊船めいた無人の貨物船を発見し、船内を調べて2体の死体を発見するところから始まり、後半部で時間がリンクした同じ場面が繰り返されることで種明かしがおこなわれるという凝った構成になっている。 赤木圭一郎さんが「霧笛が俺を呼んでいる」(同年7月)に続いて船乗りの役を演じています。撮影は東京--釧路航路の新造貨物船「大雪山丸」にておこなわれ、釧路沖での撮影は寒かったそうです。「霧笛が俺を呼んでいる」でも共演した葉山良二さんが敵でありながら主人公を助ける男の役で、「拳銃無頼帖」や小林旭さんの「渡り鳥」の宍戸錠さんと同じような役回りだが、宍戸錠さんは海が似合わないと思われる?ので、海が似合うわけではないけれど葉山良二さんで良かったのかもしれない。しかし拳銃使いの好敵手というキャラでもなく、ちょっと中途半端な感じがするけれど。 同じことは南田洋子さんにも云えるようで、バー「エルム」のマダム役だが、店を畳んで同じ貨物船に乗り組むのだけれど、その動機が主人公に恋したからというのもイマイチ伝わらないので中途半端な感じ。でもこの映画でのヒロイン役は、笹森礼子さんではなく南田洋子さんの方だといえるようです。 赤木さん、葉山さん、南田さんの3人が救命ボートで海を漂うシーンで終わりますが、遠くに助け船が見えるカットを入れれば良かったのに、それがないので、このあと救助されるのだろうか?との不安が残ります。 それはともかくも、面白くて楽しめる日活アクション映画の一編でした。
2020年05月22日
コメント(0)
「拳銃無頼帖 不敵に笑う男」(1960)監督 野口博志原作 城戸禮脚本 山崎巌撮影 横山実音楽 山本直純出演 赤木圭一郎、宍戸錠、笹森礼子、藤村有弘 二本柳寛、青山恭二、南風洋子、吉永小百合 本編84分 総天然色、シネマスコープサイズ 赤木圭一郎さん主演の日活アクション映画「拳銃無頼帖」シリーズの第3作「不敵に笑う男」をレンタルDVDで鑑賞しました。この作品は以前にも書いていますが、再度ということで。 公開は1960年(昭和35年)8月6日。クランクインは7月4日、クランクアップが7月30日。初号試写8月3日。 北陸刑務所を出た主人公 壇竜四郎(赤木圭一郎)は「早打ちの竜」の異名を持つ拳銃使いである。2年前、浜田組の組長(藤村有弘)の足を撃って服役していた。堅気になって恋人ユリといっしょになるつもりで金沢に帰ってきたが、ユリは駅のホームで事故にあって死んでいたことを知らされる。 洋装店を営むユリの妹 博子(笹森礼子)は竜を責め、金沢の盛り場を支配しようとする二大勢力の浜田組と船場組の組長の、浜田(藤村)はユリを事故死に見せかけて殺したのは船場(二本柳寛)だと云い、船場は浜田が殺したと云う。 宝石店強盗の盗難品のダイヤ売買取引をめぐって、浜田組と船場組のあらそいの中で、恋人の仇を討とうとする竜と、目障りな竜を始末しようとする浜田と船場。東京からやってきた殺し屋「コルトの謙」(宍戸錠)が竜を殺るのは俺だと云いながらも、竜に加勢する。 前作からご当地ものになった「拳銃無頼帖」シリーズ。今作は金沢市が舞台で、早打ちの竜が出所する北陸刑務所は金沢刑務所で、当時は小立野にあった。天神町の椿原神社の横にある坂を上ったところにあった赤レンガ造りの建物です。 金沢駅と、駅前のタクシー乗り場。香林坊の日銀前と横の道。香林坊交差点の付近。博子の洋装店があるのは横安江町アーケード商店街。能登の和倉や珠洲市の見附島海岸が金沢の近くとして描写されるなど地理的におかしな点があるけれども、石川県でロケ撮影されたのは、当時のことは知りませんが、地元では大きな話題になったものと思われます。 金沢の盛り場支配をめぐって浜田組と船場組が争うのだが、お互いに相手を潰したいと思いながらも、時には利用したり手を組んだりするが、お互いに一杯食わせようとしているのが可笑しい。船場の役を演じるのは二本柳寛さんで、陰険で腹黒い悪役だが、小林旭さんの「渡り鳥」では刑事の役をやったりしている。そして、浜田組の組長を変なイントネーションで日本語を話す藤村有弘さん。 藤村さんは年配に見えるけれど、この時はまだ26歳でしかないのが驚き。 共演女優は浅丘ルリ子さんから笹森礼子さんになっています。笹森礼子さんはこの年4月公開の「青年の樹」が映画デビュー作なので、ホヤホヤの女優さんです。2人はこのあとも、赤木さんが亡くなるまで共演することになります。 そして、やはり宍戸錠さんが最高にカッコいい。ラストは銃撃戦の末に赤木圭一郎さんの罪まで背負って駆け付けた警官隊にしょっ引かれてゆく。ハッピーエンドのエンディングはいい感じの余韻を残します。
2020年05月21日
コメント(0)
「二階堂卓也 銀座無頼帖 銀座旋風児」(1959)監督 野口博志脚本・原作 川内康範撮影 永塚一栄音楽 小川寛興出演 小林旭、浅丘ルリ子、青山恭二、宍戸錠、南風洋子 芦田伸介、藤村有弘、西村晃、白木マリ、高品格 稲垣美穂子 本編83分 総天然色、シネマスコープサイズ 小林旭さん主演の日活アクション映画「二階堂卓也 銀座無頼帖 銀座旋風児」をレンタルDVDで鑑賞しました。1959年(昭和34年)9月20日公開。クランクインは8月18日、クランクアップ9月12日、初号試写9月17日。「銀座旋風児」のシリーズは1963年までに全6作があり、その第1作です。 装飾デザイナーの二階堂卓也(小林旭)は、銀座のクラブ「モナコ」のオーナー 王徳宝(芦田伸介)という中国人がクラブの改装資金として戦時中の供出品のダイヤを売りさばいているのを知る。 情報屋の政(宍戸錠)の報せで香港に発った王徳宝の後を追った卓也は、村越明子(浅丘ルリ子)という女が王を殺そうとした現場に出会う。明子に事情をきくと彼女の父は戦時中、特務機関員として働き、政府が国民から接収した宝石や貴金属を軍資金として売りさばいていた。戦後、残ったそれらを国民に返そうとしたが、同じ特務機関員だった堀田・中村・木原・丸山らによって無実の罪を着せられて殺された。 本来は国民に返すべき宝石を着服した堀田たち4人。リーダー格の堀田こそが身分と名前を変えた王徳宝だという。明子を連れて日本に戻った卓也は、友人の荒木記者(青山恭二)が勤める東都タイムスの新聞記事に村越の名で彼らへの挑戦状を載せる。荒木記者の恋人がぐうぜんに木原の娘(稲垣美穂子)だったことから、木原に話を聞こうとするが、木原は何者かに銃撃されて殺されてしまう。 銀座界隈で「銀座退屈男」と呼ばれる二階堂卓也は粋で喧嘩に強い神出鬼没の快男児。その男っぷりから女性たちが大騒ぎする銀座のヒーロー。彼が助手役の政(宍戸錠)や浅丘ルリ子、友人の新聞記者たちとともに悪をこらしめる娯楽映画です。 脇役の一人として、主人公の二階堂卓也にお近づきになろうとする広告会社の社長役の藤村有弘さん。 小林旭さんの映画ではあまり見かけないけれど、赤木圭一郎さんの作品では常連の悪役俳優です。NHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」のドン・ガバチョの声で知られていますが、この人が日活アクション映画の悪役で常連俳優だったのは、いまの若い人たちは知らないのではないでしょうか。主人公を引き立てる名わき役のおひとりです。 この日活アクション映画や東映の時代劇映画がそうなのですが、プログラムムービーといわれるB級映画です。低予算で量産される映画のことで、娯楽映画として3週間くらいの日数で撮影される、このような映画が多くの監督やスタッフ、俳優を育て、生み出しました(現在の映画界にはこういうのがない)。玉石混交、大量の映画が作られ、忘れ去られる作品が多い中で、記憶される傑作や名作もある。 考えてみると、石原裕次郎さんや小林旭さん、赤木圭一郎さん、宍戸錠さんなどはこのようなB級映画で人気を得てスターになったんですね。
2020年05月19日
コメント(0)
「拳銃無頼帖 電光石火の男」(1960)監督 野口博志脚本 松浦健郎原作 城戸禮撮影 永塚一栄音楽 山本直純出演 赤木圭一郎、浅丘ルリ子、宍戸錠 二谷英明、白木マリ、藤村有弘、菅井一郎、 杉山俊夫、吉永小百合(新人) 本編86分 総天然色 シネマスコープサイズ 日活アクション映画「拳銃無頼帖 電光石火の男」をDVDで鑑賞しました。 1960年(昭和35年)5月14日公開。「拳銃無頼帖」シリーズ第2作です。 付け加えると、クランクインが4月17日、クランクアップ5月7日、初号試写5月11日。 走る夜汽車の中で、女性が愚連隊にからまれているのを救った男。男は3年の刑期を終えて四日市へ帰るところの丈二(赤木圭一郎)で、女も四日市へ向かうジーナ中川というクラブ歌手(白木マリ)だった。 迎えを避けるために一つ前の駅で降りた丈二は、朝の海岸で五郎という殺し屋に撃たれようとしている若いヤクザ者 貞夫(杉山俊夫)を救う。貞夫は大津組の者で、五郎は敵対しているハイライト興行の殺し屋。貞夫に感謝された丈二は彼の案内で大津組の親分に会うことになる。 丈二はかつてハイライト興行のヤクザで、大津組の親分を撃った罪で服役していたのだが、ボスの身代わりだったのを大津組の親分 仁作(菅井一郎)は知っていて、彼を歓迎する。親分の自慢の息子 大津昇(二谷英明)が警察官になって四日市署へ赴任してくるという。昇は丈二の高校の先輩であり、丈二は恋人 圭子(浅丘ルリ子)を残して服役したのだが、その圭子が昇と婚約していることを知らされる。 暴力団の抗争事件と、暴力団撲滅をめざす若い刑事。3年ぶりにム所から帰ってきた主人公が、かつての恋人が刑事となった親友の婚約者になっていたという男女の三角関係。そして殺し屋の五郎(宍戸錠)と歌手のジーナ(白木マリ)の関係。男と別れたいと思っている女ジーナと、愛しながらも女に優しくしてやれない武骨な殺し屋という恋愛要素が絡む。 脇役として、杉山俊夫の若いチンピラと、彼が心を寄せるウェイトレス役の吉永小百合さん。ム所から帰ってきたかつての恋人と婚約者の刑事との間で心が揺れる浅丘ルリ子さん。なぜかヒロインの浅丘ルリ子さんより15歳の清純可憐な吉永さんのほうが印象に残ってしまいます。 そしてハイライト興行の幹部だが、ワルになりきれず、ボスの悪どさに嫌気がさしてしまう藤村有弘さんが良い味を出しています。 前作「抜き打ちの竜」は舞台が東京だったが、今作からご当地映画となって四日市が舞台。次作は金沢市が舞台、4作目が岐阜市であり、シリーズの形ができてきた感じがするが、主人公の丈二は一作目の竜二ではなくて別人の設定になっている。赤木圭一郎さんの役は3作目から「抜き打ちの竜」こと壇竜四郎として定着します。
2020年05月18日
コメント(0)
「拳銃無頼帖 抜き射ちの竜」(1960)監督 野口博志脚本 山崎巌原作 城戸禮撮影 永塚一栄 音楽 山本直純出演 赤木圭一郎、浅丘ルリ子、宍戸錠 西村晃、香月美奈子、藤村有弘、二本柳寛 本編86分 総天然色 シネマスコープサイズ 日活アクション映画「拳銃無頼帖 抜き射ちの竜」をDVDで鑑賞しました。 1960年(昭和35年)2月14日公開。赤木圭一郎さんの「拳銃無頼帖」シリーズの第1作であり、初主演を務めたのが前年1959年9月の「素っ裸の年令」(監督 鈴木清順)だから、まだ半年ぐらいしか経っていない時期の作品。この「抜き打ちの竜」以降、1960年の一年間に主演作が12本公開され、翌年2月に事故で亡くなるわけだから、彼が人気を得て石原裕次郎、小林旭と並ぶ日活の3大スターになる出発点にあたるともいえる作品です。 暗黒街で「抜き射ちの竜」の異名を持つ拳銃使い 剣崎竜二(赤木圭一郎)は、その拳銃ではけっして人を殺さずに相手の肩や腕を撃つことに徹していた。彼は麻薬中毒で、その仕事中、相手を倒すが禁断症状が起こって気を失い、謎の男に助けられて病院へ運ばれる。一か月後、回復した竜二は自分を助けた男が「コルトの銀」と呼ばれる殺し屋(宍戸錠)だったことを知る。 竜二はコルトの銀に雇い主の楊三元(西村晃)を紹介される。楊三元は麻薬密輸組織のボスで、竜二は彼の誘いを断れず、殺しはしないという条件で雇われることになる。 竜二が「俺を何に利用したいのだ?」と楊に問うと、楊が「あなたがハジキ持つと、みんな震え上がります。“抜き射ちの竜”いうレッテル、あなた死なない限り消えません。わたくし、そのレッテル、買いたいのです」という。 竜二は「俺はそいつを捨てたいばっかりにヤクを打った体だ」と云うが、楊は「よくわかります。あなた、一生懸命に足洗おうとする。でも、はたの者、許さない。有名なハジキ撃つ人、みんな、あなた狙ってます。あなた抜くより先に早く抜き、そしてあなたに勝ちたい。それ、みんな、このレッテルのためです」と云う。 やくざな拳銃稼業から足を洗いたいが、周囲の者がそれを許さない。一度その道に入った者は死ぬまでそこから抜け出せないのだと。 本作での赤木圭一郎さんの演技は、そのぶっきらぼうな感じがするセリフの言い方など、まだ不慣れな感じがする。このあとの一年間でずいぶんと成長してゆくのだが、ここではいまだ、初々しい感じがします。そんな彼を助けるかのように、宍戸錠さんや悪役の麻薬密輸組織のボスである変な中国人の役を西村晃さんが好演しています。 宍戸錠さんの殺し屋の役はすでに完成されていますが、ラストで主人公を助ける形で撃たれて死んでしまう。次作の「電光石火の男」でも死んでしまうし、ということは、この時点ではまだシリーズとしての方向性(渡り鳥シリーズのような)ができていなかったのだろうか? 主人公も悪役も、拳銃をバンバン撃つのですが、この日活アクション映画が盛んだった時期、1960年頃は子供たちのあいだで拳銃ブームが巻き起こり、おもちゃの拳銃を持って「バンバン」云いながら町内や空き地を駆け回って遊んだ。その拳銃ブームは一部の人たちが云うような「西部劇映画」なんかの影響ではけっしてなく、この日活アクション映画の隆盛と、テレビの「月光仮面」を始めとするヒーロー物の影響だったはずです。これはまちがいなく、ぜったいにそうです。
2020年05月17日
コメント(0)
「大草原の渡り鳥」(1960)監督 斎藤武市原作 原健三郎脚本 山崎 巌、大川久男撮影 高村倉太郎音楽 小杉太一郎出演 小林旭、宍戸錠、浅丘ルリ子、白木マリ 金子信雄、南田洋子、佐々木孝丸、江木俊夫 本編83分 総天然色 シネマスコープサイズ 小林旭さん主演の日活アクション映画「大草原の渡り鳥」をレンタルDVDで鑑賞しました。 1960年10月12日公開で、「渡り鳥」シリーズの第5作にあたります。 北海道の釧路や摩周湖の地域が舞台になっていて、広大な草原を小さな男の子を馬の後ろに乗せた主人公 滝伸次(小林旭)がやって来る。子供が水がほしいというので、湖のほとりのアイヌ部落に立ち寄った滝伸次は、アイヌ文化を研究する清里順子(浅丘ルリ子)やアイヌを保護する地元の硫黄精錬所を経営する清里大造(佐々木孝丸)と知り合う。そのアイヌの土地を悪党の高堂(金子信雄)一味が狙っていて、高堂は飛行場を手始めに大掛かりな観光施設を建ててひと儲けしようとたくらんでいる。その建設用地となるアイヌ部落から彼らを追い出そうとする高堂一味の悪謀からアイヌ部落の人たちを守るために協力することになります。 小さな男の子を連れて、その母親を探すために北海道にやって来た主人公が行きがかり上、土地を奪われそうになっているアイヌの人たちに協力して活躍する物語。悪党側の殺し屋 網走帰りのハートの政(宍戸錠)が雇い主の悪辣さに嫌気がさし、主人公に味方することになるのは定番だが、それが安心して見ていられる要因でもあっていい感じ。 西部劇風味の日活アクション映画の秀作ですが、佐々木孝丸さん演じている精錬所の社長 清里が悪党の高堂からアイヌ部落の土地が担保になっている多額の借金をしていて、やっと調達した返済金を息子の茂(木浦佑三)が託されて高堂のところへおもむくが、キャバレーの地下にある賭場でポーカーに誘われて返済金を巻き上げられ、だけでなく新たな借金を作ってしまう。 小林旭さんとジョーさんの対決とか、クライマックスの銃撃戦とかとても面白いのだが、この清里の息子のヘタレぶりがやりきれず、なんだ?この情けないヘタレ男は。返済金を巻き上げられたのをその場に現れた滝に救われるのだが、ふつうの男なら自己嫌悪で生きては帰れないだろう。それなのに、だけでなく高堂にそそのかされたこのバカヘタレ男は子供を誘拐して滝の命をねらう。これが悪党の強制ではなく、自身の劣等感と嫉妬からきていて、このあまりに情けない男の存在が、見ていてやりきれない思いがしてしまうのが、本作の欠点といえるかと。 共演は浅丘ルリ子さんですが、アイヌ女性を演じた白木マリさん(この人も日活アクションの常連だね)のほうが目立っている感じがする。 宍戸錠さんのクサくてキザなセリフがあいかわらずカッコいい。
2020年05月16日
コメント(0)
「銀座旋風児 嵐が俺を呼んでいる」(1961)監督 野口博志 企画 茂木了次 原作 川内康範 脚本 織田清司 撮影 峰重義 美術 小池一美 音楽 山本直純 出演 小林旭、浅丘ルリ子、近藤宏 青山恭二、松尾嘉代 、山内明、南風夕子 本編79分 総天然色 シネマスコープサイズ 小林旭主演の日活映画「銀座旋風児 嵐が俺を呼んでいる」をレンタルDVDで鑑賞しました。「渡り鳥」シリーズで知られる小林旭さんですが、このような作品があるのは今まで知らなかった。初めての鑑賞です。 ある夜、深夜の京浜国道を走るトラックから男の死体が投げ出された。殺されたのは東京税関の木田という男だった。東都タイムズの社会部記者 荒木(青山恭二)は数時間前に木田と別れたばかりだったので驚き、殺された木田から恋人の妹が誘拐されたと打ち明けられ、隠し撮り用小型カメラを預けられていた。 誘拐されたのは東京税関の関税課長 柴田(浜村純)の末娘で、警視庁の捜査係長(山内明)が事件を担当するが、柴田は何かを恐れて真実を語ろうとしない。 二階堂卓也(小林旭)は木田が死ぬ前に荒木に渡した小型カメラの謎をD・P屋をたずね歩いて調べる。柴田の娘で木田の恋人だった京子(松尾嘉代)に会い、誘拐事件を警察に届けるなと柴田が言っていたことを聞かされた。 卓也の助手明子(浅丘ルリ子)は女中として柴田家に潜入する。 高級外車の密輸入組織を追う二階堂卓也と警察。東京と名古屋を舞台にした銀座旋風児シリーズ第4作です。 日活アクション映画は石原裕次郎さんと赤木圭一郎さんばかりを見ていて、なぜか小林旭主演作を見ることがなく、近年になってようやく「渡り鳥」シリーズに接して、その面白さと魅力を知った。 そんなわけで、この「銀座旋風児」を興味をもって鑑賞したのですが、アクション場面のキレが悪くてどこか間が抜けた感じがします。 颯爽と現れて事件解決に協力する旋風児 二階堂卓也の気障な立ち居振る舞いは、小林旭のスター性に似合っていて、それは良いのだけれど、宍戸錠さんのようなアクの強いキャラが脇にいないのがさみしい。 助手の浅丘ルリ子さんがお手伝いさんになって潜入するのだが、いつもヒロイン役をつとめるのに、このような探偵助手の役はめずらしい感じがします。 そしてこの日活アクション映画全体にいえることだけれども、昭和30年代前半の東京の都会風景がたいへんにノスタルジックで、これが一番の、今となっては見どころかもしれない。 このDVDにデータとして載っていたのですが、それによると クランクインは1961年2月1日。クランクアップが2月17日。撮影がわずか2週間でおこなわれ、初号試写が2月22日で3日後の25日に封切りとなっている。当時はこのような映画が量産されていたんですねぇ。
2019年10月29日
コメント(0)
「野獣の青春」(1963)監督 鈴木清順原作 大藪春彦「人狩り」脚本 池田一朗、山崎忠昭撮影 永塚一栄美術 横尾嘉良音楽 奥村一出演 宍戸錠、木島一郎、渡辺美佐子 川地民夫、香月美奈子、金子信雄、信欣三 小林昭二、江角英明、鈴木瑞穂 本編92分 総天然色 シネマスコープ チャンネルNECOで放送された日活アクション映画「野獣の青春」を録画して鑑賞しました。 1963年(昭和38年)4月に公開された作品。 大藪春彦の小説「人狩り」が原作とのことですが、主人公の名前が水野というだけで、ストーリーは完全なオリジナルです。大藪春彦さんのアクション小説は高校生の時から愛読し、この「人狩り」も徳間文庫版で読んだはずだけれど、内容を覚えていません。 このような映画を見ると原作小説を読みたくなりますが、大藪春彦作品は書店にはあまり置かれていない昨今です。かつて何冊も持っていた大藪春彦作品をすべて処分し、こういう時に処分してしまったことを悔やむようです。 刑事とコールガールの無理心中とおもわれる死体が発見される。その町の盛り場でチンピラを痛めつけ、キャバレーで派手に遊ぶ男が現れる。水野錠次と名乗るその男(宍戸錠)は、野本興業の社長(小林昭二)に拳銃と喧嘩の腕を買われて雇われる。 水野はかつて神戸で刑事だった過去があり、追求していた暴力団の罠にはまって公金横領の罪で服役していた。そのさいに同僚だった映画の始めに死体で発見された竹下刑事に恩を受けており、その竹下刑事が女と心中なんかするはずがない、彼は殺されたのだと水野は思っている。 水野は竹下刑事が殺された真相をあばきだして仇を討とうと考え、事件に関係しているらしい野本興業に雇われたのだった。彼は野本興業と対立する三光組の組長(信欣三)に野本興業の情報を流すと持ちかけて、取り入る。 野本興業は裏で麻薬取引とコールガール組織を持っており、水野は竹下刑事が殺された背後に売春組織があることを直感する。しかし、野本興業の麻薬取引相手の者が刑事時代の水野をおぼえていた者がいて、正体が露見した彼は窮地におちいる。 恩がある親友が殺され、その仇討ちをしようと、犯罪組織に潜入する主人公を描いた日活アクション映画です。彼は雇われた組織と対立する組織にも取り入って、お互いを争わせようと画策する。 そして麻薬売買と売春。親友の刑事が殺された背景には、意外な真相と真犯人がいた。 暴力団のアジトがキャバレーというのは、日活アクション映画では毎度のこと。キャバレーはホールと事務所との境がマジックミラーになっていて、ホールでヌードショーが演じられているのが見える。対立する組のアジトが映画館で、スクリーンの裏が事務所になっていて、つねに映画が映っているのも面白く、凝った美術です。 野本興業の社長 野本(小林昭二)に秀夫(川地民夫)という弟がいる。彼は母親がパンパンだったというので、他人からそれを云われると切れてカミソリで顔をスダレにするというので「スダレのヒデ」の異名を持つ危ない男。彼の前では「パンパン」は禁句だというのがラストへの伏線になっている。 主人公が親友の仇を討つ話だけれども、復讐を遂げてもだれも喜ぶ者がいない、という虚しい話です。 監督の鈴木清順は「ツィゴイネルワイゼン」(1980)が有名ですが、これまで外国映画ばかりしか見てこなかったのでまだ未見。鈴木清順さんといえば、テレビの「美少女仮面ポワトリン」の神様しか知らない私です。
2018年04月28日
コメント(0)
「探偵事務所23 くたばれ悪党ども」(1963)監督 鈴木清順原作 大藪春彦 「探偵事務所23」脚本 山崎巌撮影 峰重義美術 坂口武玄音楽 伊部晴美出演 宍戸錠、笹森礼子、金子信雄、川地民夫 佐野周夫、信欣三、星ナオミ、初井言栄 本編91分 総天然色 シネマスコープサイズ チャンネルNECOで放送された映画「探偵事務所23 くたばれ悪党ども」を録画して鑑賞しました。 1963年1月に公開された日活アクションで、大藪春彦の小説を映画化したものです。 深夜に、立川米軍基地の近くで、米軍の横流し品の拳銃を暴力団員たちが密売買取引をしていると、そこへペプシコーラの運搬車が突っ込んできて、乗っていた男たちとの銃撃戦になる。十数人のヤクザが殺され、取引品の拳銃が何者かに奪い去られる。翌朝、現場付近で不審な男、真辺(川地民夫)が武蔵野署に逮捕された。 最近、暴力団の闇取引の現場を襲われる事件が頻発し、取引品を奪い取る者たちがいる。逮捕された真辺という男はその一味らしいが、証拠が不十分で拘留期限がきて釈放される。彼が出てくるのを警察署の前で待ち構えて仕返ししようとする暴力団員たち。 私立探偵事務所23の所長である田島英雄(宍戸錠)は武蔵野署の熊谷警部(金子信雄)から特命を受けて、その暴力団の密売の上前をはねている組織に潜入することになる。 釈放されて警察署を出た真辺が暴力団員たちに襲われそうになるのを救った田島は、彼の信用を得て、彼に案内されて組織に入り込もうとします。 組織のアジトはクラブ「エスカイア」の隣にあるガソリンスタンドだった。ボスの畑野(信欣三)は真辺がつれてきた田島を怪しんで疑い、その身元を徹底的に調べる。 組織の潜入捜査をしようにも警察の刑事たちの顔が知られているので、民間の私立探偵に拳銃所持の許可を一時的に与え、偽の身分証明のための運転免許証を持たせる。 宍戸錠さんが強面(こわもて)でタフな私立探偵を演じ、悪の組織に潜入する話です。アメリカ映画では私立探偵ものは一つのジャンルになっているけれど、日本では私立探偵というと素行調査か浮気調査をするくらいであり、私立探偵がギャングを相手にするアクション映画は、拳銃を持てないので無理があるという難点がある。それを警察から一時的に許可を与えられて、という設定にしたのが解決法なのか。 宍戸錠さんといえば、赤木圭一郎さんや小林旭さんとの共演作で殺し屋をコミカルな感じで演じて、すこぶる好印象だったのですが、そのキャラクターをそのままに私立探偵役に活かし、ユーモアとアクションが程良く織り込まれて成功しています。 主人公の潜入捜査をバックアップする警部を演じる金子信雄さんは、いつもは悪役が多いけれど、今作ではユーモアのある食えない狸オヤジみたいな演技をみせていて、こんな役もやるんだね。 このような昔の日活映画の楽しさは昭和30年代の風景を、作り物ではない本物として見ることができることです。当時の東京の町並みや行き交う車や人々のファッションが、そのままに時間を切り取って記録されている。
2018年03月19日
コメント(0)
「霧笛が俺を呼んでいる」(1960)監督 山崎徳次郎企画 水の江滝子脚本 熊井啓撮影 姫田真佐久美術 木村威夫編集 鈴木晄音楽 山本直純出演 赤木圭一郎、葉山良二、芦川いづみ 吉永小百合(新人)、天路圭子、二本柳寛、内田良平、西村晃 本編80分 総天然色 シネマスコープサイズ 先日、「チャンネルNECO」で赤木圭一郎さんが脇役として出演した映画「清水の暴れん坊」と「鉄火場の風」(ともに石原裕次郎、北原三枝 主演 1960年)が放送され、さっそく録画しました。 1958年12月公開の「紅の翼」でのエキストラ出演から、1961年2月公開の主演作品「紅の拳銃」(遺作)まで、わずか2年間の短い期間ですが、石原裕次郎、小林旭とともに日活アクション映画のスターとして活躍した赤木圭一郎さん。当時は姉が大ファンだったことから、我が家にも芸能月刊誌「明星」や「平凡」が何冊もあり、そのグラビアなどでまだ幼かった私でも名前と顔を知っていました。 その赤木圭一郎さんの「拳銃無頼帖シリーズ」とともに代表作の「霧笛が俺を呼んでいる」(1960年7月公開)をDVDで鑑賞。 横浜港に係留する貨物船すずらん丸はエンジンの故障で出航が延期され、二等航海士 杉敬一(赤木圭一郎)は親友の浜崎(葉山良二)をたずねようと上陸する。船員バー「35ノット」の女給 サリー(天路圭子)や浜崎の恋人 美也子(芦川いづみ)と出会い、浜崎が死んだことを知らされる。浜崎は二週間前に港の防波堤で溺死体となって発見され、警察の検死結果から自殺と断定されたと。 しかし浜崎の妹ゆき子(吉永小百合・新人)は兄が自殺などするはずがないと云う。 親友の死に不審をいだいた杉に、警察の森本刑事(西村 晃)が接近し、浜崎が麻薬の売人だったと云う。浜崎の麻薬密売のために多くの人が廃人になったのだと。杉は麻薬犯罪の残酷な実態を教えられる。 親友をたずねて来た主人公が、その親友が死んだと知らされ、警察は彼が極悪人だったと云う。主人公は親友の死に不審を感じ、殺されたのではないかと疑問をいだくが・・・。 物語の基本設定はイギリス映画「第三の男」だけれども、モチーフにしたとかパクッたとかではなく、こういう話の展開は物語制作のひとつの定型パターン(「第三の男」型)なのだろう。 横浜、港、貨物船、霧と霧笛、船員、酒場とホテル、刑事、やくざな悪党たちの暗躍、そして美しい女性たち。昭和30年代のノスタルジックなムードが満点。特に港と霧と霧笛が、赤木圭一郎と芦川いづみさんの別れのラストシーンで気分を出していて心地良い余韻が残ります。日活アクション映画のエッセンスがつめこまれた秀作です。 赤木圭一郎が唄う主題歌「霧笛が俺を呼んでいる」は、けっして上手とはいえないけれど、それが良い持ち味を出していると思われ、オープニングとラストシーンで効果的に使われていて、主題歌をうまく使った好例の一作。
2018年02月12日
コメント(0)
1957年日本映画興行成績 金額は配給収入1位「明治天皇と日露大戦争」 5.4億円2位「喜びも悲しみも幾歳月」 3.9億円3位「水戸黄門」 3.5億円 4位「嵐を呼ぶ男」 3.4億円 5位「任侠東海道」 3.4億円 6位「大忠臣蔵」 2.6億円 7位「錆びたナイフ」 2.4億円 8位「夜の牙」 2.3億円 9位「挽歌」 2.3億円 10位「大当り三色娘」 2.2億円 1957年(昭和32年)の日本映画興行成績ランキングですが、石原裕次郎さんの日活アクションが3本はいっています。でもこのデータはおかしな点があって信用できません。「嵐を呼ぶ男」は1957年12月28日、「錆びたナイフ」は翌1958年3月11日、「夜の牙」は翌1958年1月15日に公開された作品であり、「嵐を呼ぶ男」は大目に見るとしても、「錆びたナイフ」と「夜の牙」は1958年公開なのであきらかにおかしい。「錆びたナイフ」(1958)監督 舛田利雄製作 水の江滝子原作 石原慎太郎脚本 石原慎太郎、舛田利雄撮影 高村倉太郎美術 松山崇編集 辻井正則音楽 佐藤勝出演 石原裕次郎、北原三枝、小林旭、宍戸錠、杉浦直樹 安井昌二、白木マリ、河上信夫、高原駿雄、清水将夫、広松三郎 本編90分 モノクロ シネマスコープサイズ 日本映画専門チャンネルで放送された日活アクション映画「錆びたナイフ」を鑑賞しました。1958年3月11日公開。石原裕次郎さんの人気絶頂期の作品です。 暴力がはびこる架空の都市が舞台。勝又運輸の社長 勝又(杉浦直樹)は殺人容疑で検察庁に召喚されたが、狩田検事(安井昌二)の追求にもかかわらず証拠不十分で釈放された。そこへ、5年前に自殺した西田市会議員は勝又に殺されたという内容の投書が届く。手紙の主は島原(宍戸錠)というヤクザ者で、彼は自分と橘(石原裕次郎)、寺田(小林旭)の3人で現場を目撃したという。島原は検事に投書する一方で、勝又にも同じ内容の手紙を送って20万円を強請った。だが島原は勝又の手下たちに列車から突き落とされて殺されてしまう。 目撃者の一人 橘は彼の恋人を暴行して自殺に追いやった男を刺殺したために5年の懲役をうけたという前科があり、出所後はヤクザから足を洗って、バーのマスターになっていた。狩田検事が聴取のためバーにやって来たとき、偶然、西田議員の娘でラジオアナウンサーの啓子(北原三枝)が婚約者の間野明(弘松三郎)と店にいた。間野は橘の学友で、市議会の有力者 間野慎吾(清水将夫)の息子である。店では同じ目撃者の一人 寺田(小林旭)もバーテンとして働いていた。 寺田は恋人の由利(白木マリ)と一緒にいるところを勝又の子分に拉致され、金で口止めされる。橘は買収にきた勝又の子分から、寺田が金で買収されたことを聞かされる。 西田啓子が持ち込んだ取材テープに5年前の橘の恋人が暴行された事件の目撃者証言が録音されていた。それを聞いた橘は、恋人がヤクザの事務所に連れ込まれて集団で暴行されたことを知る。 橘は勝又から金を受け取った寺田を叱りつけるが、寺田は橘の恋人暴行事件の張本人は勝又とその子分たちだと捨て台詞を残して飛び出していった。橘は自分がおかした刺殺事件に裏があるのを知る。 勝又はさらに金を要求してきた寺田を捕らえ、始末しようとトラックに乗せて港へ向かうが、橘がトラックで追い、カーチェイスの末に勝又を殴り倒して寺田を助け出した。勝又は自分たちに橘の恋人を暴行するよう命じた大物が背後にいることを橘に教えてあざ笑った。 主題歌「錆びたナイフ」は裕次郎さんの代表的な歌でもあり、私が持っているCDにも収録されています。でもその映画を見たのは今回が初めてです(もしかしたら公開時に裕次郎ファンの姉に連れられて見たかもしれないが、小学校に入るか入らぬかの年齢の子供にこの映画を理解できるわけがない)。 恋人が暴行されて、それで自殺した。その犯人を刺殺したことで服役し、前科者の烙印を押されて苦悩する主人公の橘。足を洗ってまじめになろうとするが世間の目は冷たい。そんな主人公の前に検事が現れて、目撃したことを証言してくれと云われる。彼は自分は関係ないと断るのだが、恋人が勝又たちに集団暴行されていた事実を知り、事件の裏にカラクリがあったと知った時、怒りの炎が燃え上がる。 日活アクション映画ですが、勧善懲悪の活劇ではなく、全体に暗く重い雰囲気がただよう。 町から暴力を追放しようと検事がいくら頑張っても町の人たちは後難を恐れて協力しようとしないし証言しようとしない。検事が法律の無力を実感したとき、橘は法で裁けないのなら暴力には暴力で返すという復讐の手段で、その正義を実行できるのは自分しかいないではないかと検事に告げます。 主演は石原裕次郎さんに、相手役は毎度お馴染みの北原三枝さん。そして特筆すべきはまだ売り出す前の小林旭さんと宍戸錠さんが出ていることです。宍戸さんは早々に列車から落とされて殺されてしまうし、小林旭さんも若い小僧っ子の役。コルトの錠などの殺し屋役で売り出す前の宍戸錠さんと渡り鳥シリーズで人気を得る前の小林旭さんが裕次郎さんと共演した珍しい一作です。
2017年02月24日
コメント(0)
「渡り鳥いつまた帰る」(1960)監督 斎藤武市企画 児井英生原作 原健三郎脚本 山崎巌、大川久男撮影 高村倉太郎美術 坂口武玄音楽 小杉太一郎出演 小林旭、浅丘ルリ子、宍戸錠、金子信雄 南田洋子、川地民夫、中原早苗、内田良平 本編79分 総天然色 シネマスコープ 小林旭さん主演の日活アクション「渡り鳥シリーズ」第3作。公開は1960年4月23日。 チャンネルNECOでの放送を録画しての鑑賞です。 佐渡島が舞台。第1作「ギターを持った渡り鳥」のラストで、元上司だった警部が主人公 滝伸次(小林旭)に警察に復職しないかというのを断って佐渡へ行くと言った。死んだ恋人の故郷の佐渡へ行って墓参りするんだと。 その佐渡が舞台ということはこれが第2作として企画されたのだろうか?しかし物語は続きではなく、墓参りにも触れていません。 ギターを背に馬に乗って滝伸次が登場する。 滝を慕うダンサーのユリという女(中原早苗)と、滝を弟を殺した仇として狙う日下部哲(宍戸錠)も連絡船で佐渡へやって来る。 鉱山のトラックの乱暴な運転に滝が抗議するため高見鉱山の事務所を訪れると、主人の高見静江(南田洋子)が応対する。しかし鉱山は支配人の榊原(金子信雄)に仕切られていた。そこに静江の義妹の則子(浅丘ルリ子)が帰って来る。静江の夫が事故死した後、鉱山は榊原の思うがままになっている。榊原の横暴に抵抗しようとする奥山(川地民夫)は血気にはやるが、滝がそれを制止する。 榊原は子分たちを使って廃坑を掘っていが、何もない廃坑をなんのために掘るのか? 伸次は榊原の秘密を探ぐろうとし、そして日下部哲は滝の弟殺しの確証を掴むため滝につきまとう。 戦時中、静江の亡父は榊原の部下で、国民から供出させた貴金属類を共謀して横領、廃坑にそれを埋めて隠匿した。その貴金属を榊原は掘り出そうとしていたのだ。それを妨害する滝たちに対抗するため、榊原は東京から殺し屋ジョウ(内田良平)を呼び寄せる。 第1作は函館、第2作は宮崎、そして第3作は佐渡。地方でロケをおこない、観光映画のおもむきもあって、見ていて楽しく、面白い。こまどり姉妹も特別出演し、キャバレーとラストのおけさ踊りの会場で歌います。小林旭さんも歌うスターとして、主題歌とこれもおけさ踊り会場で「おけさ数え歌」を歌う。 この映画の面白さは、宍戸錠さんの個性的な魅力がうまく活かされていることもあるのでしょう。主人公の敵か味方か?敵として登場し、最後には味方になる。この錠さんの殺し屋キャラクターのなんと魅力的なことか。
2017年02月17日
コメント(0)
「口笛が流れる港町」(1959)監督 斎藤武市 企画 児井英生 原作 山崎巌 脚本 松浦健郎 撮影 高村倉太郎 美術 坂口武玄 音楽 小杉太一郎出演 小林旭、浅丘ルリ子、宍戸錠 渡辺美佐子、山内明、近藤宏、白木マリ、小高雄二 本編84分 総天然色 シネマスコープサイズ 1960年(昭和35年)1月3日公開。小林旭主演の「渡り鳥シリーズ」第2作。 チャンネルNECOでの放送を録画して鑑賞です。 タイトルが「口笛が流れる港町」なので横浜か神戸が舞台のようなイメージを持っていたのですが、まったく異なって南九州の高原地帯でした(宮崎県と阿蘇か?)。港町の風情はどこにも出てこない。 西部劇を思わせるような高原をギターを背にした主人公 滝伸次(小林旭)が馬に乗ってやって来る。放れ馬らしく馬が行くままに歩ませているのだと。その途中で黒ずくめの太刀岡という男(宍戸錠)と出会い、拳銃の応酬で挨拶代わり。 馬は寂れた鉱山へ着き、馬を届けてくれたお礼にと食事にありつく滝。この相良鉱山がさびれたのは先代亡き後、若旦那が博奕で借金をつくったことが原因だと管理しているオヤジが話す。そこへ暴力団の的場組の連中が測量にやって来て、ここに観光ホテルを建てるんだと。滝が一宿一飯?のお礼にヤクザたちを追い払う。 相良鉱山の土地を奪おうとする的場(山内明)。相良の先代の娘 相良杏子の役が浅丘ルリ子。権利書は彼女の手にあり、兄の若旦那 相良信夫(木浦佑三)は博奕と酒びたりで的場に400万円の借金がある。その返済を迫る的場に脅迫された相良信夫は権利書を持ち出そうとするが。 宍戸錠さん演ずる殺し屋 太刀岡という男。主人公 滝と拳銃で勝負したりするのですが、この殺し屋が3年前に相良鉱山主の先代を殺すように的場から依頼された。ところが彼が撃つ前に背後から何者かに撃たれていっしょに殺されそうになった。撃ったのは的場の子分(近藤宏)で、その仕返しの意味もあって殺し屋 太刀岡は主人公の味方になって的場を敵にすることになる。 悪党の的場は相良鉱山で働いていた男で、娘の杏子と結婚の申し入れをいたが先代は「他所者のせがれにはやれない」と断った。その恨みがあって相良鉱山の土地を狙っているという事情がある。このような事情がある悪役でもあり、しかも演じているのが山内明さんということもあって、悪役としては憎らしさが足りず、弱い感じがします。今作には金子信雄さんや小池朝雄さんのような個性ある俳優が出ていないのが惜しいところ。 最後は的場組を相手に銃撃戦となって、警官隊が駆けつけて的場が逮捕される。宍戸錠さんも連行されるが主人公はおとがめなしなのはなぜだろう? 拳銃不法所持とかもあるのに。 最近は小林旭さんにハマった感じがします。日活アクション映画では赤木圭一郎さんがお気に入りだったのですが、小林旭さんもスマートでカッコ良い。主題歌は赤木圭一郎さんのより小林旭さんのほうが上手ですね。「ギターを持った渡り鳥」と、この「口笛が流れる港町」。CDが欲しい。
2017年02月16日
コメント(0)
「ギターを持った渡り鳥」(1959)監督 斎藤武市企画 児井英生原作 小川英脚本 山崎巌、原健三郎撮影 高村倉太郎美術 坂口武玄音楽 小杉太一郎出演 小林旭、浅丘ルリ子、金子信夫 中原早苗、渡辺美佐子、宍戸錠、青山恭二、二本柳寛 本編78分 総天然色 シネマスコープサイズ 日活アクション映画の代表的作品でもある小林旭さん主演の「渡り鳥シリーズ」第1作。 チャンネルNECOで放送された第8作「渡り鳥北へ帰る」(62)を見たからには、やはり第1作も見なければなるまい、というわけで録画してあったのを取り出して、さっそく鑑賞しました。 公開は1959年(昭和34年)10月。 ギターを背中に函館にやって来た流れ者の滝伸次(小林旭)。酒場で外国人に殴られていた流しのサブ(野呂圭介)を救った滝は、その腕っ節を買われて親分の秋津(金子信夫)に雇われる。 地元のボスである秋津はあくどい手段で住民を立ち退かせて、手に入れた土地にアミューズメントセンターを建設しようと計画していた。滝は弱い者いじめは嫌いだと云いながらも、秋津が船を担保に貸した金を取り立てるために丸庄海運という会社に出向く。 500万円を返せないなら持ち船の松陽丸か、この家をいただくと迫る滝の前に丸庄の女房 澄子(中原早苗)が現れ、彼女が秋津の妹だと知った滝は手を引く。 秋津に滝は相手はあんたの妹さんじゃないですか、と呆れたように報告すると、秋津は俺の反対を押し切ってあんな意気地なしと結婚した澄子が許せんのだ、と云う。 そんな秋津と滝の前に、神戸の田口組から来たジョージ(宍戸錠)という男が現れ、ジョージは滝に以前にどこかで会ったな?と。 地方都市を牛耳るボスと、そこへ現れた流れ者の主人公。拳銃つかいの殺し屋(宍戸錠)と、ボスの情婦。ボスが土地を奪おうとする計画を主人公が阻止して、というお馴染みの設定。 古くさいとも云えるし、他愛ないとも云えるが、しかし、この面白さはなんだろうか? ノスタルジックな昭和30年代の風景。そしてなんといっても現代の映画には見られなくなった主人公の格好良さ。格好いい主人公と美しいヒロインの、プラトニックな心の交流。小林旭は21歳、浅丘ルリ子19歳、宍戸錠は26歳、中原早苗24歳、みなさんお若い。 いつもは悪役を演じる二本柳寛さんが神戸からジョージを追って来た刑事を演じています。そして彼は主人公の元上司だった。なぜ滝が拳銃の名手だったのか?の答えはそういうことだったんですね。
2017年02月15日
コメント(0)
「渡り鳥北へ帰る」(1962)監督 斎藤武市 企画 児井英生 原作 山野良夫 脚本 山崎巌 撮影 高村倉太郎 音楽 小杉太一郎出演 小林旭、浅丘ルリ子、白木マリ 内田良平、郷英治、佐々木孝丸、青山恭二、二本柳寛 本編79分 総天然色 シネマスコープ チャンネルNECOで放送された映画「渡り鳥北へ帰る」を鑑賞。1962年(昭和37年)1月3日に公開された日活アクションです。小林旭さんの「渡り鳥シリーズ」の最終作で第8作。 主人公 滝伸次(小林旭)の麻薬中毒の親友 岡田浩一(青山恭二)が東京で殺された。滝はその遺骨を持って浩一の故郷 函館へと向かいます。訪ねた実家は造船所で、その父(佐々木孝丸)は勝手に出て行って麻薬中毒になった息子など勘当したので、遺骨なんか届けられても迷惑だとにべもない。妹の由美(浅丘ルリ子)はそれではあまりに滝さんに失礼だととりなすが。 岡田造船所は経営が苦しく多額の借金を抱えている。ボスの黒川(内田良平)は岡田の造船所を乗っ取ろうと企んでいて、借金返済を迫る。黒川が経営するキャバレーを訪ねた滝はそこで掃除婦をしている浩一の妻幸江(小園蓉子)に会う。 黒川は麻薬密売の黒幕である漢栄昌(二本柳寛)と取引をしていて、滝の前に殺し屋 ハジキの政(郷英治)が現れる。 日活の3大スターである石原裕次郎、小林旭、赤木圭一郎。その代表的作品をチャンネルNECOで次々と放送されるのは大変ありがたく、嬉しいことです。 実のところ、小林旭さんの映画をほとんど見たことがなく、この「渡り鳥シリーズ」を見るのも今回が初めて。石原裕次郎さんと赤木圭一郎さんの作品はわりと見るのですが、なぜか小林旭さんのは見ていない。正直なところ、共演相手の浅丘ルリ子さんにあまり魅力を感じないというのも理由のひとつかもしれません。「渡り鳥シリーズ」前8作品が放送されてすべて録画したので、これを機会に鑑賞することにします。なぜか最後の8作目を一番先に見てしまいましたが。 日活アクション映画。ストーリーは基本的にはみな同じようです。小林旭演じる流れ者(全作とも名前は滝伸次)が地方都市に立ち寄る。そこでは暴力団の悪の一味に乗っ取られようとしている牧場や会社があり、その牧場や会社には娘がいて、浅丘ルリ子が演じる。小林旭は正義感から、助っ人となって悪の一味の悪謀を阻止します。宍戸錠が演じる殺し屋(ハジキの政)が登場し、最初は小林旭と敵対するが、最後は協力関係になります。そして小林旭は浅丘ルリ子の恋心を知らぬかのように土地を去ってゆきます。主役はヒロインの前から去ってゆき哀愁が残る。 悪の一味のアジトは、その街のナイトクラブやキャバレーなのが定番です。そこのママは一味のボスの情婦で、主人公側に味方して撃たれて死んだり怪我したり。ステージやフロアではエッチな衣裳の踊り子によるショーをやっている(こういう場面が好き)。 昭和30年代の勧善懲悪の娯楽活劇映画。現在見るととても面白く、昔の町並みやファッションが新鮮でもあります。
2017年02月14日
コメント(0)
「俺は銀座の騎兵隊」(1960)監督 野口博志企画 児井英生原作 原健三郎脚本 山崎巌撮影 永塚一栄美術 小池一美音楽 三保敬太郎出演 和田浩治、清水まゆみ 二本柳寛、守屋浩、杉山俊夫、神戸瓢介 初井言栄、岡田真澄、近藤宏、待田京介、刈屋ヒデ子 本編79分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画チャンネルのチャンネルNECOで放送された「俺は銀座の騎兵隊」を鑑賞。 1960年(昭和35年)6月に公開された日活映画です。 仲間と港の廃バスをねぐらにしている不良少年 良坊(杉山俊夫)は、風来坊少年の三郎(和田浩治)と知り合う。喧嘩もドラムもギャンブルも玄人ハダシの三郎は、バーのボーイ守山(守屋浩)や自動車修理工リチャード(神戸瓢介)、花売り娘の久子(刈屋ヒデ子)らハイティーンたちのリーダー格となる。 あるとき、三郎と銀座で遊んでいた良坊が地下鉄の中で少女ユミ子(清水まゆみ)のバッグからフィルムの入った封筒をスリ取ってしまう。それは国際的密輸組織の麻薬売春計画に関する暗号を写したものだった。社長の神山(近藤宏)は手下のチンピラどもを使って、三郎たちからフィルムを取り返そうとする。 他愛のない青春アクションドラマです。少年が掏摸取った封筒が思いがけず怖い犯罪組織に関係していた。 戦後まだ15年しか経っていない東京を舞台にしている。この昭和30年代の映画は当時の風景をそのまま記録していてとても懐かしいですね。東京の都電が走る町並み、行き交う車。 それと主人公たちが戦災を受けていて、孤児だったり、顔を黒く塗ったリチャードなどは母親がクロンボのオンリーだったとかで英語混じりの台詞を云う。三郎は長崎で原爆を体験し、父親は戦死したと。知り合った占い師のお春(初井言栄)というおばさんに馬上の父親が写った写真を「騎兵隊にいたんだ」と云って見せる。 主役の和田浩治さんは1944年生まれだから、この映画では、なんと16才です。 上着を肩にかけて清水まゆみさんと川沿いの道を歩いている場面(写真)など、しっかりと落ち着いた若者ぶり。現代の目では20才以上の年齢に見えるのは、現代の若者たちがそれだけ幼いということだろうか? 悪役で二本柳寛、岡田眞澄、待田京介、近藤宏さんなどが出ていますが、若者たちの演技を支えているといった感じがします。 相手役の清水まゆみさんは20才。映画中では17才だと云っている。 和田浩治さんと清水まゆみさんの共演作は多くあり、名コンビとされたとか。 石原裕次郎さんに似ているとのことでスカウトされ、「やんちゃガイ」のフレーズで売り出された和田浩治さんですが、映画ではあまり成功しなかったそうです。 1967年のテレビドラマ「ある日わたしは」(NECOで再放送されている)で好演しています。
2016年07月29日
コメント(0)
「二人の銀座」(1967)監督 鍛治昇企画 坂上静翁原案 雪室俊一脚本 才賀明撮影 山崎善弘美術 木村威夫音楽 林一出演 和泉雅子、山内賢、和田浩治 小林哲子、新田昌玄、片山明彦、伊藤るり子 本編80分 モノクロ シネマスコープサイズ 映画チャンネルNECOで2年くらい前に放送された「二人の銀座」(67)を録画してあったので鑑賞しました。「東京ナイト」がとても良かったので、同じ和泉雅子さんと山内賢さん共演の「二人の銀座」も見たくなって、録画してブルーレイディスクにダビングしたきりになっていたのを探し出しての鑑賞です。 グループサウンズが大ブームだった1967年の日活映画。公開は「二人の銀座」が2月、「東京ナイト」が10月で、その間の5月に「夕陽が泣いている」があり、山内賢さんと和泉雅子さん共演作が連続していた人気絶頂期の頃です。「二人の銀座」はザ・ベンチャーズが作曲し、それを山内賢さんと和泉雅子さんがデュエットして、レコード売上げが100万枚以上の大ヒット。 この映画は私が中学3年生の時に夏休みの「映画教室」で見ました。小中学生しか入れない映画鑑賞の催しなので、最後の映画教室だったと思います。(余談ですが、保護者同伴でないと映画館に入れない小中学生にとって、春夏休みの「映画教室」は貴重な鑑賞機会だった) 瀬川マコ(和泉雅子)が電話ボックスに落としていった楽譜をひろった村木健一(山内賢)。 健一は東南大学の学生で、仲間とアマチュアのエレキバンド ヤング&フレッシュを結成していて、その楽譜をジャズ喫茶のステージで演奏してしまう。 その楽譜はマコの姉 玲子(小林哲子)が想い続けている失踪した恋人 戸田周一郎(新田昌玄)が作曲したものだった。 健一たちヤング&フレッシュが演奏し歌う「二人の銀座」が銀座界隈で流行し始める。それを聴いたマコは、健一を責め、楽譜を返して欲しいと迫ります。 健一は作曲者の戸田さんが現れたら、謝って、あらためて曲を使わせてほしいと頼むつもりだ、と云う。 曲の作曲者であり、マコの姉の恋人でもある戸田を捜すことにする二人。「二人の銀座」は大人気を博し、健一たちはジャズフェスティバルに出場することになる。プロになれると喜ぶが、健一はジャズ喫茶の経営者小泉(片山明彦)に、曲は自分が作曲したものではないことを話す。 小泉は戸田周一郎の名前を聞いて驚く。戸田はかつて、自分の作品を有名作曲家に盗作されたと訴えたことで業界を去った人物だったのだ。彼なら何を言ってきても誰も信じないだろうと小泉は云う。 健一とマコたちは場末のキャバレーでピアノ弾きをしている戸田をみつけるが、戸田は「曲は自由に使っていい」と云って彼らの前から去っていく。そして健一たちは、自分たちより先に小泉が訪ねて来ていて、彼を脅迫的に買収していたことを知ります。 プロの世界の汚さを知った健一たちは、ジャズフェスティバルの当日、ステージから観客に向かって曲の作曲者は自分ではなく戸田周一郎という人だと本当のことを話す。 不遇な作曲家の名誉回復を訴え、そしてマコも一緒になって歌い上げる「二人の銀座」は大きな拍手をあびる。観客席の片隅でひっそりと見ていた戸田が会場の外に出ると、そこには彼を長く待ちわびていた玲子の姿があった。「東京ナイト」も良かったけれど、この「二人の銀座」はそれ以上に良かったです。 山内賢さん演じる主人公の、若者らしい善良さと清潔さが好ましくてとても良い。 和泉雅子さんのお茶目な可愛らしさも。そして姉役の小林哲子さんの美しさと、その恋人 戸田周一郎役の新田昌玄さんの寡黙な演技の素晴らしさ。 和泉雅子さんと山内賢さんが歌う「二人の銀座」が持つパワーの大きさ、を感じます。映画の中で何度も演奏され歌われる。当時も、今でも好きなエレキサウンドの魅力。 ジャッキー吉川とブルーコメッツも出ていて、「ブルー・シャトウ」「甘いお話」「青い瞳」の3曲が歌われる。
2016年03月05日
コメント(0)
「東京ナイト」(1967)監督 鍛治昇企画 笹井英男脚本 才賀明撮影 小栗準之助美術 深民浩音楽 川口真出演 和泉雅子、山内賢、和田浩治 高千穂ひづる、長内美那子、杉山元 三遊亭歌奴、小橋玲子、徳永芽里、金原亭馬の助 本編81分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画チャンネルNECOで3月3日に放送された「東京ナイト」、たいへん良かったです。 和泉雅子さんと山内賢さん共演の青春映画。「二人の銀座」をデュエットで歌って大ヒットした和泉雅子と山内賢さんの、同じようにザ・ベンチャーズ作曲の主題歌を使った青春映画です。映画の中でもふんだんに歌うシーンがあって、楽しい。 加山雄三さんの「エレキの若大将」(1965年12月公開)もそうですが、当時に大流行したグループサウンズのエレキ・サウンド。こういう映画を見ると懐かしいだけでなく、高度成長期の、あの頃の日本は夢があって良かったなと思います。現代は夢も希望もない、自分の欲望を果たすためには他人を傷つけてもかまわないというような、日本人が自己中心的になってしまって、どこかおかしくなっている。このような優しい昔の映画を見ると心が洗われるような気がします。 京都の舞妓 小はな(和泉雅子)が置屋の家を継ぐのがいやで家出をする。長距離運送トラックの荷台にもぐりこんで東京にやって来た小はな。着いた所は運送屋で、そこの若旦那 小杉賢(山内賢)は大学の友人たちとエレキバンドをやっていて、テレビの大学対抗エレキ合戦に出ていた。 優勝すればハワイ旅行があたるが、決勝戦を前にしてボーカルの女の子(徳永芽里)が交通事故で全治一ヶ月。 どうしよう、困ったなと相談している所へトラックを降りた小はなが現れる。わからずやの親が嫌で家出して来たという小はなを小杉は取りあえず自分の部屋にこっそり泊めることに。 小はなは賢の父親(三遊亭歌奴)に見つかってしまい、今度は小杉の友人 和田(和田浩治)の家に泊まることに、結果的には事故にあった女の子のアパートに泊まることになる。 小はなは親切にしてくれる彼らに嘘をつくのがいやで、自分は京都の舞妓だと正体を明かし、舞妓を嫌って駆け落ちして先に東京に来ている姉(長内美那子)に会いたくて家出して来たのだと話す。 和泉雅子さんは日活の青春スター女優です。ザ・ベンチャーズ作曲の「東京ナイト」を主題歌として、山内賢さんと共演し、デュエットし、和泉雅子さんの可愛らしさを満喫できる作品です。 どこか、アメリカ映画「ローマの休日」(53)を思わせるような、自由を求めて家出した女の子が大都会で親切な男性とめぐりあい、冒険を体験し、お互いに心を通わせるのですが、最後には、自分の居るべき場所へ帰って行く。 大学対抗エレキ合戦。決勝戦は舞子姿で山内賢といっしょに「東京ナイト」を歌う。これだと優勝まちがいなしではないか?
2016年03月04日
コメント(0)
日活アクション映画「男の怒りをぶちまけろ」を鑑賞。 監督 松尾昭典 出演 赤木圭一郎、二谷英明、浅丘ルリ子、渡辺美佐子 金子信雄、西村晃 本編81分 総天然色 シネマスコープ 赤木圭一郎さん主演の1960年6月18日公開の作品です。 タイトルはその主題歌によって知っていましたが、この映画を見るのはまったくの初めてです。 赤木圭一郎さんが歌う主題歌「男の怒りをぶちまけろ」は「霧笛が俺を呼んでいる」と共に昭和の歌謡曲として聴き慣れたもので、映画を見たことがなかった私でも口ずさむことができる。 45回転シングル盤「霧笛が俺を呼んでいる」のB面曲です。 星の無い 暗い空 燃える悪の炎 こらえこらえて 胸にたぎる怒りを 冷たく月が笑った時に 命かけて 男の怒りをぶちまけろ 怒りをぶちまけろ (作詞 中川洋一、滝田順 作曲編曲 鏑木創) 二人組の男が旅客機をハイジャックして、乗客が持っていた時価数億円のダイヤを強奪。 その乗客をなんと扉を開けて突き落としてしまう。 パイロットを殴って気絶させ、自分たちは用意した落下傘で脱出する。 その二人組が通りかかった運送トラックを乗っ取って東京へ向かう。そのトラックに知らずに便乗したのが主人公の新聞記者三沢(赤木圭一郎)。 証拠隠滅のために運転手もろともトラックを海に落とされて口封じされるが、彼だけが九死に一生を得る。「事件屋」の村西という男(二谷英明)に助けられた三沢は、彼といっしょに事件の真相と黒幕をあばくべく調査を開始する。 これまでに見た赤木圭一郎さん作品と同じく、二つのヤクザ組織が争う展開で、その根城がキャバレーだというのは定番なのでしょうか。 しかし今作はこれまでより暴力的であり、人が何人も殺されます。 ダイヤを奪うために旅客機を墜落させるし、飛行中に乗客を突き落とす。 何の関係もない運送トラックの運転手を口封じのために泥酔事故に見せかけて殺したり、走行中の車から放り出された人が後続車に轢き殺される場面は過激です。 爆弾を爆発させたあとの銃撃戦から警官隊が駆けつけるラストまでは黒幕を含めて何人も死んでゆく。 見始めた最初の30分くらいはあまり面白くないな、と思ったものの、見終えたあとではそれなりによくまとまった佳作といった感じがする。 クライマックスへ盛り上がるアクションが小気味よく盛り上がります。 ヒロイン役に浅丘ルリ子さん。 殺された運送トラック運転手の妹の役で、はじめは赤木圭一郎さんの主人公を「自分だけが助かって」と批難するけれど、彼に協力するようになってゆく。 芦川いづみさんと、最も共演が多かった笹森礼子さんは何回か見たけれど浅丘ルリ子さんは初めて。今後見る予定の「拳銃無頼帖 抜き射ちの竜」と「電光石火の男」も浅丘ルリ子さんの共演で、ちょいと楽しみです。 本編80数分というのも気軽に見られる。短い上映時間というのは、当時の興業は2本立てだったからか。短い映画は大歓迎です。
2014年02月04日
コメント(0)
日活アクション映画「紅の拳銃」(1961)を鑑賞。 これまでにチャンネルNECOで放送されたものを録画した一つです。 1961年2月11日公開で、その10日後に赤木圭一郎さんが事故死するのですが、当時は衝撃的なニュースだったのではないでしょうか。「紅の拳銃」は赤木圭一郎さんの遺作となった作品です。監督 牛原陽一出演 赤木圭一郎、垂水悟郎、笹森礼子、芦田伸介 小沢昭一、藤村有弘、白木マリ、吉行和子、小沢栄太郎 本編87分 総天然色 シネマスコープ 開巻、垂水悟郎さんが画面から観客に向かって話しかけるように映し出されます。「また殺し屋の話ですか? かんべんしてくださいよ。殺し屋なんて実際にいやしないんだから。 だいたい日本じゃ殺し屋商売が成り立つ訳ないんですよ。 警察もあれば法律もある。第一ピストルを持つこと自体が銃砲等所持禁止令第一条てやつにひっかるんです。違反すれば三年以下の懲役ですからな」 石岡(垂水悟郎)という男が軍隊時代の上官だった芦田伸介さん扮するボスから殺し屋を派遣して神戸暗黒街のボスを消すように命令されます。 日本には殺し屋なんかいない、という冒頭の台詞はその時のものですが、石岡は殺し屋を養成し始めます。 石岡に見こまれてスカウトされた男が中田と自称する赤木圭一郎さん。 石岡が驚くほどに中田は素質があり、すぐに拳銃の腕が上達し、石岡は免許皆伝を与える。 石岡には目が見えない妹(笹森礼子)がいて、彼女は中田に恋をする。 中田は彼女の目を治す手術費を稼ぐためにも命じられた殺しを引き受ける。 その仕事は神戸のボス(小沢昭一)を消すことだった。 藤村有弘さんや小沢昭一さんの悪役がユニークなキャラで楽しませてくれますが、先に見た「拳銃無頼帖」の宍戸錠さんのような漫画チックなライバルは登場せず、物語自体はマジメなものです。 拳銃を持った殺し屋の話は、拳銃になじみがない日本では(冒頭で垂水悟郎さんが語るように)外国映画のようなわけにはいかず、このようなジャンルの作品は現代の日本映画では皆無です。 昭和30年代の当時は「拳銃ブーム」だったようで、映画の中でも垂水悟郎さんがキャバレーのウエスタン風のショーを見て言ってますが、「どこもかしこも拳銃ばかりだ」と。 私が小学校入学前後から低学年の頃はたしかに子供の玩具にも拳銃が氾濫していて、「バン、バン」と言って撃ち合いのマネをして遊んだものです。 無国籍アクション映画といわれる日活アクション映画だけでなく、貸本屋には「影」や「街」といった漫画単行本があって、そこでも殺し屋が氾濫していた。 1961年2月公開の「紅の拳銃」を見ていて、そんな拳銃ブームの時代があったことを思い出しました。 「紅の拳銃」のラストシーンがいいですね。 目の手術が成功して視力を取り戻した石岡の妹(笹森礼子さん)が、「同じ列車に中田さん(赤木圭一郎)が乗っているような気がするので探してくる」と言って席を立つ。 デッキに立っている中田の前で、「この人かしら?」と一瞬感じるのだけれど、顔を知らない彼女はそのまま通り過ぎてゆく。「僕が中田です」などと名乗らないのが良い感じです。
2014年02月03日
コメント(0)
いま、最も関心のある映画俳優は赤木圭一郎さんです。 最近になってチャンネルNECOで赤木圭一郎さんの作品が続けて放送され、それを録画して見ています。 これまでに「邪魔者は消せ」、「男の怒りをぶちまけろ」、「霧笛が俺を呼んでいる」、「紅の拳銃」、「錆びた鎖」、そして「拳銃無頼帖シリーズ」の「抜き射ちの竜」、「電光石火の男」、「不敵に笑う男」、「明日なき男」の全4作。 まだすべてを見たわけではありませんが、赤木圭一郎さんの魅力を堪能し、昭和35年(1960)の懐かしい時代を楽しんでいます。 赤木圭一郎 昭和14年(1939)5月8日生まれ、昭和36年(1961)2月21日没。 昭和33年に日活のニューフェイスとして入社。映画デビューは昭和34年(1959)の「紅の翼」にエキストラ出演。 この1959年は、石原裕次郎さんや川地民夫さんなどが主演で、その映画に脇役として出ていたようです。 赤木圭一郎さんが主演となるのは1960年で、「拳銃無頼帖 抜き射ちの竜」からでしょうか。 そして、この1960年の1年間が赤木圭一郎さんのすべてなのですね。「拳銃無頼帖 抜き射ちの竜」 1960年2月公開「邪魔者は消せ」 1960年4月公開「拳銃無頼帖 電光石火の男」 1960年5月公開「男の怒りをぶちまけろ」 1960年6月公開「霧笛が俺を呼んでいる」 1960年7月公開「拳銃無頼帖 不敵に笑う男」 1960年8月公開「海の情事に賭けろ」 1960年9月公開「幌馬車は行く」 1960年10月公開「錆びた鎖」 1960年11月公開「拳銃無頼帖 明日なき男」 1960年12月公開 1960年の1年間にこれだけたくさんの作品が、月に1本の割で公開されています。 翌1961年の1月に「俺の血が騒ぐ」。2月11日公開の「紅の拳銃」が遺作となる。 赤木圭一郎さんが「激流に生きる男」撮影中の日活撮影所で、昼休みにゴーカートに乗っていて事故死したのが2月21日。 21歳の若さです。 デビューしてからわずか2年間の映画出演。 その主演作品は1年間のみ。 まさに伝説の映画スターです。 先日から、いくつかの作品を見ているのですが、これだけカッコ良いと思う日本の映画スターはいないですね。孤独感を感じる陰りのある表情。女性に対する礼儀正しさ。 最も共演が多かった笹森礼子さんは同じ学校の同窓だとか。 まだ新人の吉永小百合さんが「拳銃無頼帖 電光石火の男」と「不敵に笑う男」、「霧笛が俺を呼んでいる」に出ていて、高校生だった吉永さんに撮影の合間に宿題をみてあげていたとか。兄妹のように仲がよかったそうで、いっしょに遊んでいたそうです。 写真は私が最も好きな「霧笛が俺を呼んでいる」のラストシーン。共演は芦川いづみさんで、プラトニックな心の触れあいがとても良く、このシーンが好きです。
2014年02月01日
コメント(0)
赤木圭一郎さん主演「拳銃無頼帖 明日なき男」(1960年)を鑑賞。 先日(2月3日午前)、「チャンネルNECO」で「拳銃無頼帖」の全4作品が連続して放送され、その第4作にあたります。「抜き射ちの竜」(1960年2月公開)「電光石火の男」(5月公開)「不敵に笑う男」(8月公開)「明日なき男」は12月に公開。 赤木圭一郎さんは翌1961年2月21日に事故で亡くなるのですが、この「明日なき男」というタイトルは不吉なものを感じますね。「拳銃無頼帖 明日なき男」 1960年 日活 監督:野口博志 出演:赤木圭一郎、宍戸錠、笹森礼子、藤村有弘、水島道太郎 本編85分 総天然色 シネマスコープ コルトの錠(宍戸錠)が明日をも知れぬ病気だと知らされて、見舞いに岐阜市の病院を訪ねようとした抜き射ちの竜こと剣崎竜次(赤木圭一郎)は岐阜駅を出るところで思いがけぬトラブルに巻き込まれ、警察署に連行されてしまう。そこの留置所でコルトの錠と出会い、何者かにおびき寄せられたことが判明する。 岐阜の街には敵対する二つのヤクザ組織があって、その一つである辻堂という親分(水島道太郎)が抜き射ちの竜に恨みを抱いて、罠を張っている。辻堂に雇われるコルトの錠。 抜き射ちの竜はもう一つの組織の有村(藤村有弘)の用心棒に雇われ、その屋敷で、駅前のトラブルの現場にいた美しい女性(笹森礼子)に再会する。 辻堂に雇われたコルトの錠との因縁の対決は思うように果たせず、二人は協力し合って辻堂と有村の陰謀を妨害する。 二つのヤクザ組織がお互いを騙し合って、その間に入って行動する抜き射ちの竜とコルトの錠。 この「拳銃無頼帖」の魅力は赤木圭一郎さんと宍戸錠さんのコメディのような絶妙の掛け合いがすべてと言っても良いのかもしれない。 南田洋子さんが辻堂の妹役を演じて、今作品の登場人物では最も悪(ワル)かも。 藤村有弘さんは、相変わらずの悪役ですが、この人の悪役は面白いですねぇ。 この拳銃無頼帖シリーズは「ご当地シリーズ」なのでしょうか? まだ第3作と4作しか見てないので確かではないのですが、「不敵に笑う男」は石川県の金沢と能登。今回の「明日なき男」は岐阜市が舞台です。 岐阜駅や金華山ロープウェー。長良川でしょうか?、が出てきて、地元の人が見れば懐かしい風景だと思います。 このシリーズはまだまだ続く予定だったのでしょうか?
2014年01月31日
コメント(0)
赤木圭一郎さん主演「拳銃無頼帖 不敵に笑う男」(1960年)。 先日(2月3日午前)、「チャンネルNECO」で「拳銃無頼帖」の全4作品が連続して放送されたのを機会に録画しました。「抜き射ちの竜」「電光石火の男」「不敵に笑う男」「明日なき男」の4作品を連続放送。見るのが楽しみですが、全部見終えるのはいつになるか?、とりあえず傑作と評判の「不敵に笑う男」を鑑賞。 1960年(昭和35年)の日活アクション映画で、この1年間に「拳銃無頼帖」シリーズ4作品が製作されている。この年は他に「霧笛が俺を呼んでいる」や「邪魔者は消せ」など8本が公開され、1年間に12本とは、赤木圭一郎さんが当時いかに人気があったかがわかります。(赤木圭一郎さんは翌1961年2月21日に亡くなる) 予備知識なしで見たので驚きました。舞台が金沢ではないですか。 昭和35年当時の金沢の街が出てきて、香林坊と金沢駅と横安江町、天神橋と、死んだ恋人の妹(笹森礼子さん)と語る墓地は卯辰山でしょうか。 まるでタイムカプセルを開けたように、昭和35年の懐かしい金沢の風景が広がります。 出所した早射ちの竜こと壇竜次(赤木圭一郎)は恋人の待つ金沢へ帰ってくるが、恋人はすでに事故死していたことを知らされる。 金沢の町では浜田組と船場組という二つのヤクザ組織の対立が激化していた。 竜次は恋人の妹の安全と引きかえに船場組の用心棒になり、浜田組の用心棒「コルトの謙」(宍戸錠)と対決する。 金沢の繁華街の縄張りをめぐって二人の親分が対立。浜田組の親分は藤村有弘さんで、おかしなアクセントで話すおかしなキャラクターです。独特のユーモアがあって、しかも悪役が似合ったりして。 船場組の親分は二本柳寛さん、藤村さんのような愛嬌ある悪役でなくて憎らしい卑怯者。 竜次の恋人を事故に見せかけて殺したのはどちらか? 二人ともが主人公の竜次を消してしまいたいと思いながら竜次の拳銃の腕を買っていて、二人ともが盗難ダイヤの売買をめぐって、裏で罠をめぐらしている。 赤木圭一郎さん、あいかわらず良いですねぇ。 拳銃稼業から足を洗いたいと思いながらも、周囲がそれを許さない。 ハンサムな二枚目であり、その暗い表情と孤独感。 そして登場する宍戸錠さんの殺し屋「コルトの謙」。 赤木圭一郎さんに向かって「お前を殺るのは俺だ」と言いながらも、その危機にはどこからか現れて助勢する。「俺が殺る前に死なれちゃ困るんでな」と。こういうキザな殺し屋役は宍戸錠さんならではの味ですね。まだ27歳の若々しい錠さん(1933年生まれ)です。
2014年01月27日
コメント(0)
石原裕次郎さんの映画「俺は待ってるぜ」の数年前に録画したDVD-Rを見ました。 1957年の日活アクション。白黒でスタンダードサイズ、本編91分。 裕次郎さんの主題歌「俺は待ってるぜ」が流れるタイトルに始まって、深夜の雨と蒸気機関車が通る引き込み線沿いに建つ小さなレストラン。横浜の港と波止場、街灯の明かりを反射する濡れた路面。 裕次郎さんが郵便ポストに兄にあてた手紙を出しに行った帰り、波止場に雨に濡れて立つ女性(北原三枝さん)を見て、こんな深夜に何をしている?と不審に思って声をかけます。 すっかり濡れて冷え切った彼女に、うちにいらっしゃい、と。 裕次郎さん扮する主人公は港の片隅でレストランを開いていて、ブラジルへ渡った兄からの手紙を待っています。 彼は元ボクサーで、売られたケンカで相手を殴り殺してしまった。ライセンスを剥奪され、現在はレストラン経営をしながらブラジルで兄といっしょに牧場をやることだけを夢に、その兄からの手紙を待っている。 兄に出した手紙がすべて宛先に該当者なしということで戻されてくる。ブラジルへ渡って成功しているとばかり信じていた兄が実は・・・・。 私の年齢では、石原裕次郎さんの日活映画全盛期はまだ小学校に入る前か入ったばかりの頃で、その記憶は少なく、かろうじて、何の作品だったか?、拳闘の場面と台風の大嵐の場面の記憶がかすかにあるくらいです。 それなのに、「霧笛が俺を呼んでいる」の赤木圭一郎さんの時も同じだけれども、見ていてノスタルジックな感傷をおぼえるのはなぜだろう? 裕次郎さんの主人公とヒロイン北原三枝さんが出会う場面のカッコ良さ、そのムードのすばらしさ。モノクロ画面の、なんともいえない美しさ。撮影の構図もとても良い。 その無性に懐かしい感じは、見ていて涙が出るくらいです。 裕次郎さんが、とにかくうちにいらっしゃい、とヒロインをさそって、そこでブランデーとスープで冷えた身体を暖まらせ、濡れた服を着替えさせ、翌朝になって礼を言って出て行こうとする彼女を引き留めて、店を手伝うようになる。 店の常連のお医者が「いい娘(こ)じゃないか、君もすみにおけないな」と、すっかり彼女を気に入ってしまうのも定石とは言え、心が温かくなってとても良い展開です。 ブラジルへ渡航直前に兄はだまされて、ギャング一味に殺されていた。 兄が失踪した真相を知った主人公は、これも元ボクサーというギャングのボス(二谷英明さん)と対決する。 日活アクション映画では、どちらかといえば裕次郎さんより赤木圭一郎さんのほうが好きですが、裕次郎さんの作品ではこの「俺は待ってるぜ」がいちばんで、日本映画全体でも屈指の傑作ではないでしょうか。 裕次郎さんの主題歌が効果的に流れ、当時の日活映画のひとつの魅力でもあるのでは? 前にも書いたけれど、裕次郎さんも北原三枝さんもまだ20代、大人の雰囲気ですねぇ。 北原三枝さん、最高に素敵です。
2013年06月13日
コメント(0)
1958年 日本映画の興行成績です。 金額は配給収入 1位 「忠臣蔵(大映)」 4億1033万円 2位 「陽のあたる坂道」 4億71万 3位 「紅の翼」 3億6495万 4位 「忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻(東映)」 3億6122万 5位 「隠し砦の三悪人」 3億4264万 6位 「明日は明日の風が吹く」 3億2150万 7位 「風速40米」 3億1809万 8位 「日蓮と蒙古大襲来」 3億512万 9位 「人間の条件 第1・2部」 3億404万 10位 「彼岸花」 2億9422万円 第2位の「陽のあたる坂道」、3位「紅の翼」、6位「明日は明日の風が吹く」、7位「風速40米」の4本が石原裕次郎さん主演作。 裕次郎さんの主演映画が興行成績トップ10に4本も入っています。翌1959年には、「世界を賭ける恋」「男が命を賭ける時」「鉄火場の風」「男なら夢を見ろ」「天と地を駈ける男」 の5本がトップ10に入っている。 この昭和33年、34年頃には石原裕次郎さんはマネーメイキングスターでした。 その日本映画界に果たした功績は大きなものがあるようです。入場料金が100円くらいだった時代に年間10数億円の配給収入をあげる(興行収入はその約1.5~2倍)のだから、現代より観客動員数が圧倒的に多かったということです。 石原裕次郎さん。1934年12月28日生まれ、1987年7月17日没。 映画デビューが「太陽の季節」(1956)で、この時は主演が長門裕之さん。 初の主演が2作目の「狂った果実」(56)で、昭和31年7月公開。当時の映画は全国一斉公開ではなく、地方では都会より遅れて上映されたようです。 その裕次郎さん初主演作「狂った果実」を見ました。数年前にチャンネルNECOで放送された時に録画したものを、たくさんある録画DVDを整理していて発見。 本編87分、モノクロ、スタンダードサイズ。 石原慎太郎さんの同名小説を、弟の裕次郎さん主演で描いた青春映画。 太陽族の滝島夏久(石原裕次郎)はまだ純真な弟・春次(津川雅彦)の初恋の女性・恵梨(北原三枝)を奪う。 恵梨は夏久のたくましい肉体に強く惹かれていく。恵梨と夏久の関係を知った春次は、憑かれたようにモーターボートでヨットの二人を追った。 昭和30年頃の、戦後10年の風俗が描かれています。もちろん当時の一般庶民の生活ではなく、鎌倉に別荘を持つような大金持ちの子弟から見た世界、彼らの倦怠と退廃の生活の中での愛憎劇。 のちのフランス映画に影響を与えたというのも、その世界観や雰囲気からうかがえます。57年も昔の作品なのに、今見ても古さを感じない。むしろ現代映画よりも先進的でオシャレな感じすらします。 キャスティングのタイトル順は北原三枝さんがトップに来て、裕次郎さんはその下。まだ新人だった。 北原三枝さんの日本人離れしたスタイルの美しさ。北原三枝さんは23歳で、その上品な落ち着いた美しさは、現代の女優さんには見られないものですね。 このような大人びた落ち着きと美しさを、現代の日本人はいったいどこへやってしまったのか? 裕次郎さんの弟役の津川雅彦さん(16歳)。撮影時に、北原三枝さんと砂浜で重なって寝転ぶ場面でモッコリしてしまったとか。北原さんは気づいたはずなのに知らん顔していてくれたと、津川さんが何かのインタビューでおっしゃっていました。
2013年05月19日
コメント(0)
北國新聞赤羽ホールで7月12日(金)から15日(月・祝)までの4日間、「香林坊日活まつり」と題して、日活黄金時代の映画6作品が上映されます。「嵐を呼ぶ男」(1957)、「ギターを持った渡り鳥」(59)、「拳銃無頼帖 不敵に笑う男」(60)、「上を向いて歩こう」(62)、「非行少女」(63)、「青い山脈」(63)の6作品。 石原裕次郎さん、赤木圭一郎さん、宍戸錠さん、北原三枝さん、芦川いづみさん、浅丘ルリ子さん、吉永小百合さん、浜田光夫さん、和泉雅子さん、など銀幕を彩った日活のスターたち。 このような日活のアクションや青春映画は昭和30年代なので、見ていたのは現在の65歳くらいから以上の年齢の人たちではないでしょうか? 私のような年では、日活といえば「日活ロマンポルノ」の世代です。 その前の日活黄金時代となるとまだ幼かったので、「嵐を呼ぶ男」や「風速40米」などを姉に連れられて見に行ったけれど、その内容はまったく記憶にありません。 中学生の時だったかに「二人の銀座」という山内賢さんと和泉雅子さんの青春映画を見ましたが、これも内容はおぼえていません。 姉が好きだった赤木圭一郎さんと石原裕次郎さん。家に姉が読んでいた「平凡」や「明星」という芸能雑誌があって、それをよく見せてもらっていたので、わりとなじみ深い俳優さんたちでした。 日活映画は裕次郎さんの「狂った果実」や「嵐を呼ぶ男」、「俺は待ってるぜ」、「陽のあたる坂道」。赤木圭一郎さんの「霧笛が俺を呼んでいる」と「邪魔者は消せ」。 これらの内容をおぼえているのは映画館で見たからではなく、テレビやビデオで見たからです。 今度上映されるという日活の6作品では、赤木圭一郎さんの「不敵に笑う男」を見てみたい。赤木圭一郎さん(写真)、いいですね。いまの時点で最も興味のある日活スターです。女優さんでは芦川いづみさんが最高です。
2013年05月17日
コメント(0)
チャンネルNECOで放送された「邪魔者は消せ」(昭和35年日活映画)を録画しました。内容確認のために最初の30分ばかりを見ただけですが、面白そうです。こんど時間がある時にゆっくり見ようと思います。 写真は「霧笛が俺を呼んでいる」(昭和35年)。 姉が赤木圭一郎さんと石原裕次郎さんの大ファンだったので、私がまだ幼い頃、よく映画に連れて行ってくれました。 そのせいか、この「霧笛が俺を呼んでいる」は私の大好きな日本映画で、これまでに何度も見ました。 監督 山崎徳治郎 音楽 山本直純 出演 赤木圭一郎、芦川いづみ、葉山良二、吉永小百合(新人) 霧、港、波止場、貨物船、船乗り、ヒロイン、酒場、麻薬犯罪と刑事・・・・、往年の日活アクション映画の素晴らしさが80分あまりの作品に凝縮されています。 赤木圭一郎さんがスマートで、礼儀正しいカッコ良さ。そしてヒロインの芦川いづみさんのなんと素敵なこと。映画のシーンを見ていると泣けてくるくらいです。 この昭和30年代の映画に登場する俳優たちは、みな大人ですね。 赤木圭一郎さんは当時まだ21歳くらいの若さなのに、現代のようなチャラチャラした若僧ではありません。当時の20代、30代の俳優、そして女優さんも、みな大人らしい落ち着いた雰囲気があります。 ラストシーンの波止場での別れ。彼女に言う台詞のていねいな言葉遣い。「きっといい人に会えますよ。めまぐるしい数日で、悲しいことも多かったけれど、あなたといっしょで楽しいときもありました。最初の霧の晩、ホテルの窓辺ではじめてあなたとお会いしたときの 霧笛がいまでも耳 に残っています」「さようなら」「ごきげんよう」 このような美しい日本語の会話が現代の映画で聞くことができるでしょうか。 いま映画館で上映中の「ALWAYS三丁目の夕日’64」は昭和30年代を再現したものなのに、すこしも当時の雰囲気が感じられないし、懐かしさもありません。 赤木圭一郎さんや石原裕次郎さんの昔の映画を見ていると、その懐かしさに涙が出てしまう。当たり前のことだけど、これこそが真の昭和30年代の世界です。 今度ゆっくり「邪魔者は消せ」を見るつもりです。「男の怒りをぶちまけろ」「拳銃無頼帖シリーズ」「俺の血が騒ぐ」「紅の拳銃」なども機会があったら、ぜひ見たいです。
2012年02月27日
コメント(2)
全42件 (42件中 1-42件目)
1