先日も少々述べたが、ジェイムズ・ホール監督のこの『透明人間』はホラー映画史のなかに新しいキャラクターを創りだすことに成功した。それだけではなく、恐怖のなかに思わぬ笑いをもたらすことにも成功した。それはかつての恐怖映画にはなかった新局面だったのである。 たとえば、納屋の異変におどろいた農夫が警察に駆け込んで言うセリフ。‘There's breathin' in me barn!’(ワシの納屋が息してるでやんす!) あるいは、夜道を農婦が悲鳴をあげて走ってくる。その後ろから顔も手足も見えないパジャマだけが大声で‘Here we come gathering nuts in May’(ぼくらは胡桃を拾いにここに来るのさ、5月だよ)と唄いながらスキップしながらついて来る。‘nuts’という言葉には「変わり者」という意味がある。そりゃそうだ、顔も手足も見えないパジャマだけの存在なんて、「変わり者」以外の何者でもない!