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2020.04.20
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第73話「行幸を仰ぐ」

ついに涇陽(ケイヨウ)女子学堂の開校日を迎えた。
周瑩(シュウエイ)は来賓の陝甘(センカン)総督・趙白石(チョウハクセキ)を出迎え、控え室に案内する。
すると趙白石は縁談の件を考えてみたかと聞いた。
周瑩はまだ冷静に考えられないとはぐらかし、ちょうど千紅(センコウ)が呼びに来たことから出て行ってしまう。

千紅は縁談をどうするつもりか聞いた。
しかし周瑩はどこか歯切れが悪い。
「多分、応じるべきだわ、だって彼ほど呉家に尽くしてくれた人はいない

周瑩の心には沈星移(シンセイイ)がいたが、もう会えないと分かっていた。
しかし千紅は愛していないなら、良い人だろうと無意味だという。
「じゃあ、趙大人との結婚に反対なの?」
「あなたの好きにすればいい、嫁ぎたければ嫁げばいいし、嫌なら断ればいい
 これぞ本当の自由よ?」
( ゚д゚)ピコーん!@周瑩

いよいよ開校式が始まった。
すると周瑩は彭(ホウ)学堂長が挨拶している間に、隣に立っていた趙白石にふと返事をする。
「決めたわ」
「今ここで返事をするのか?」
「ええ…申し訳ないけど、お断りする」


周瑩は王世均(オウセイキン)が準備してくれた原稿を読み始めた。
しかし時候の挨拶だけであきらめ、結局、自分の言葉で話すことにする。
「なぜ私が女子の学堂を建てたか…私にもよく分からない、友人の願いだったの
 こう言ってたわ、女子が学べば国は救われると…
 私もこれだけは確信してる、人は勉強すれば悟れるようになる

 有能な者はいじめられない、男も女も同じよ、国も同じかも?
 …学堂を建てた理由が少し分かった気がする
 能力があれば自分で自分を養え、好きなように生きられる
 例えば毎日、何を食べたり飲んだりするか?どこで誰と話をするか?
 嫁ぐ相手だって選べるかも…(あっ)」
ザワザワ>ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ<ザワザワ
「話がそれたわ…私は自分の人生に悔いはない
 評判が悪く、家族を次々に亡くしたけど、己の意思には背かなかった
 みんなも同じように生きて欲しい
 欲しい物は手に入れ、欲しくなければ拒否するの
 愛したい人を自由に愛し、痛快な人生を送るのよ!」
趙白石はそれが周瑩の答えだと知り、自然と拍手を送っていた。


…1900年8月、義和団の反乱を鎮圧するため、8カ国連合軍が北京を占領
西太后は光緒(コウショ)帝と共に西安へ逃れた…

巡撫(ジュンブ)・端方(タンホウ)は富商を集め、皇太后と皇帝のための寄付を募り、その額に応じて爵位を申請すると言った。
爵位がもらえると聞いた各地の商家は続々と寄付を申し出たが、周瑩だけは手を挙げない。
「呉夫人?どうしますか?」
「大人、陝西は春から虫害や干ばつに見舞われ、農家の大半が不作です
 呉家は数十万両も投じて災民を救済して来ました
 また銀子を差し出せと言われても、これ以上は無理です」

西太后と皇帝が西安に到着し1ヶ月が経った。
そんなある日、趙白石は端方と共に行宮へ呼び出される。
端方の話では皇太后と皇帝の支出がすでに30万両にも上っていた。
しかし陝西の富商から寄付を募ったので急場はしのげるという。
すると端方は恨みがましく、呉夫人が銀1両すら出さなかったと訴えた。
何も知らなかった趙白石は自分から話してみると持ちかけたが…。

趙白石と端方が拝謁した。
西太后は行宮と呼ぶには小さ過ぎるとご立腹、他にもっとゆったり過ごせる場所はないかと聞く。
そこで趙白石は、南院門通りにあるかつての巡撫署なら部屋が100室以上あるためくつろげると上奏した。
すると西太后は今すぐ移ると言い出す。
とは言え長らく空き家だった巡撫署、趙白石は片付けや掃除で3日はかかると答えた。
「まだ3日もここで耐えろと?」
「太后、私に妙策がございます」
端方は寄付をしなかった周瑩に格好の仕返しを思いつく。
「富商が多く住む涇陽という街があります
 中でも有名な呉家東院は紫禁城を真似て建てられたらしく、間取りも庭も広いとか
 よろしければそこで数日、過ごされては?新居の片付けが終わるまでです」
慌てた趙白石はむやみに動くのはかえって危険だと反対したが、端方は陝甘総督が護衛すれば逆賊も近づけないと押し付けた。
しかもかつて県令を務めた趙白石なら涇陽の地理に詳しいと、今回の行幸の責任者にと推薦する。
こうして端方にまんまとはめられた趙白石は急いで織物工場にいる周瑩を訪ねた。

周瑩は寄付を断ったことが原因で大変なことを押し付けられることになった。
何と皇太后と皇帝が呉家東院に滞在することになったという。
しかし趙白石の心配をよそに、周瑩はあっさり了承した。
「だって婆婆と大兄弟でしょう?」
「太后が婆婆?皇上が大兄弟?」
実は周老四(シュウロウシ)は周瑩から出自を尋ねられると、周瑩の本当の正体は皇女で、偽皇太子とすり替えられたと話していた。
「な、何の話だ?!」
↓まさに鳩に豆鉄砲w


呉家東院は皇太后と皇帝を迎えることになり、その準備に追われた。
趙白石は部屋割りを決め、灯籠などの飾り付けや掃除を指示し、警備上の下調べなどを済ませたが、まだ一番の懸念事項が目の前にいる。
それは周瑩だった。

趙白石は呉家の大当主である周瑩が皇太后に呼ばれることを想定、予行練習をさせることにした。
「私、周瑩が太后にご挨拶申し上げま~す」
「こっちを見るな!お顔を見るなどもっての外だ!」
「分かったわ~ヤレヤレ…」
「それもダメだ!お許しが出るまで上体を起こすな!…よしそれでいい」
「…(ドッコイショ)」
「立つ時はきちんと立て!」
すると趙白石は答える時は必ず″お答えします″という前置きを忘れるなと釘を刺した。
「もう終わった?」
「家に帰るまでが遠足だ!」←正確には″六椽庁を出たら終わりだ!″
そしてついに皇太后と皇帝が呉家東院へやって来た。

周瑩は予想外に早く皇太后に呼ばれた。
さすがに春杏(シュンキョウ)も心配して歩き方に気をつけるよう助言し、見送る。
趙白石はぎりぎりまで周瑩に不興を買わぬよう釘を刺し、外で待つことにした。

周瑩は六椽(ロクテン)庁で皇太后と皇帝に拝謁した。
すると皇太后から年齢を聞かれ、周瑩は数え年で32になると答える。
次に出自を聞かれたが、周瑩は正直に拾われたので分からないと言った。
皇太后はそこで下がるよう命じ、周瑩の謁見は早々に終わる。
しかし周瑩が立ち上がろうとした時、皇帝が急に咳払いをした。
驚いた周瑩は慌ててひざまずくと、珍しく皇帝が口を開く。
「そなたは若くして寡婦となり、没落した呉家を一手に担って見事に再興したとか… 」
「お答えします、家を斉(トトノエ)ねば天下は収まらずと言います
 私は家を担うのみ、国を担っておられる太后と陛下には遠く及びませぬ」
皇太后は周瑩に学があると知って驚き、どうやって家業をここまで大きくしたのかと聞いた。
そこで周瑩は″変″を心がけたと答える。
「今や天下とは世界です、古いやり方にとらわれていては衰退の一途をたどります
 時勢に応じて変化できる柔軟性が大切かと…」
すると皇太后に実権を握られている光緒帝はきまり悪そうな表情になった。



皇太后にとって耳の痛い話だったが、周瑩の手腕に興味を持ち、立って話すことを認めた。
「そなたが当主になった時、男たちも従ったのか?」
「とんでもない!…でも私がたくさん稼ぐようになると承服してくれました」
「やはりな〜そなたは時勢に応じて変化すべきだと申したが、祖法は必要ないということか?」
「銀子を稼ぐのに役立つなら必要ですが、そうでなければ不要かと…」
「現実的だな」
「長年の商いの経験から申しますと、西洋人のやり方の方が祖法より役に立つことも…」
そこで周瑩は例として呉家が扱っていた手織り綿布が数年前に廃れ、今はイギリスの機械で洋布の生産をしていると説明し、呉家で一番の収益だと話した。
「他にはどんな商いの秘訣が?」
「他に挙げるとすれば…権限を手放すことです」
さすがにこれには皇太后も皇帝も動揺を隠せない。
しかし周瑩は家は1人のものではないと話し、呉家では使用人や番頭も店の株を持っていると教えた。
商いに関して誰もが意見を述べ、周瑩は利益になる意見なら採用し、不利益となるなら耳を貸さないという。
「株を分けるのは求心力を高めるためです、もうけを独占しても銀子しか残りませんが、
 株を分ければ家業は栄え、例え3割の持ち株でも数万両の収入になります
 …民を尊べば国がよく治るのと同じです(はっ)」
「…下がるがよい」
「感謝いたします、太后、皇上…」
周瑩は決して背を向けず、外へ出た。

趙白石は無事に周瑩が戻り、安堵した。
しかし周瑩は皇太后の不興を買ったかもしれないという。
「何の話をした?」
「当主の心得とかよ、ただ″変法″の標語だった言葉をうっかり引用しちゃって…」
「どの言葉だ?」
「民を尊べば国がよく治るよ…」

つづく

(  ̄꒳ ̄)皇太后、けっこう好きだわ、でももっと毒毒しくても良かったw





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最終更新日  2020.04.20 00:08:01
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