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2021.06.04
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第19話

李玄(リゲン)は龍嶶児(リュウビジ)が女だとは知らず、誕生日祝いにうっかり百花楼(ヒャッカロウ)へ案内した。
憤慨した嶶児は店を出ると、李玄はなぜ怒らせてしまったのか分からないまま後を追う。
「まだ次があるんだ」
二人は和安(ワアン)門へやって来た。
門衛は当然ながら護国師を城外に出せないと止めたが、嶶児は自分のお供で数刻で戻ると説明する。
しかし門衛は対処に困って黙り込んだ。
「仕方ない、百花楼へ戻って誕生日祝いをしよう」

すると嶶児は自分たちが10里を進む間、祝辞を繰り返し述べろと命じる。
こうして李玄はついに念願叶い、城外に出た。

李玄は辺令誠(ヘンレイセイ)の紹介状を持って尽歓居(ジンカンキョ)にやって来た。
店の主人はあらゆる人脈を通じて宝物を収集しており、競売で一番の高値をつけた者が落札できるという。
すると嶶児は宝剣にも名画にも目もくれず、なぜか″銀の月″と呼ばれる帯が欲しいと言い出した。
この帯の前の持ち主は鳳尾(ホウビ)谷の戦いで紫極(シキョク)に殺された昆吾(コンゴ)族の龍皇(リュウコウ)の妹・青笙(セイセイ)だという。
「女物の帯だぞ?」
「だから?」
競売が始まっても李玄はなかなか札を上げなかった。
嶶児は落胆したが、最後に李玄が高値をつけて競り落としてくれる。
「お幸せな奥方ですな~では黄金2万両です」

てっきり銀2万両だと勘違いしていた李玄は焦った。
そこで嶶児に考え直すよう提案したが、かえって崔翩然(サイヘンゼン)と結婚するかと脅されてしまう。
仕方なく李玄は令誠の顔を利用し、銀票をひとまず手付けにすることで難を逃れた。

李玄は都へ戻る前に百暁生(ハクギョウセイ)を訪ねた。
早速、百暁生に母のことを聞いてみたが、何も教えることはできないという。

「だめだ…話してくれるまで帰らないぞ」
すると百暁生は咳き込みながら、秘密を明かす代わりにある手がかりを教えた。
「答えを知ることができる場所がある、盤龍(バンリュウ)の聖域だ
 そこに宝剣が安置されている、その剣を抜けば知りたいことの答えが分かるだろう」
その話を奥の部屋で蘇猶憐(ソユウレン)と御風穆(ギョフウボク)が聞いていた。

李玄は外で待っていた嶶児と帰って行った。
そこで百暁生は頼まれた通り伝えたと沙国王子に報告する。
「ご苦労だった、これは沙国王国だけに伝わる秘薬だ」
風穆は肺病の薬を渡した。
…李玄、ごめんなさい…
李玄と嶶児の背中を眺めながら良心が咎める猶憐、しかしもう後には戻れなかった。



その夜、令誠にそそのかされた蕭鳳鳴(ショウホウメイ)は雲杉(ウンサン)に告白しようと街へ誘い出した。
しかしいざとなると何も言い出せない。
そこでひとまず食事に誘い、準備していたろうそくを取り出して灯した。
「鳳鳴?…もしかして目が悪いの?明るいのにろうそくなんか出して…」
「人から聞いたんだ、ろうそくを灯すと…その…食事が旨くなるって」
「で、話って何?」
「ぁ…腹が減ったから食べてから言うよ」
鳳鳴はなかなか勇気を出せず、結局、麺を5杯も平らげて気分が悪くなり、席を立ってしまう。

鳳鳴は気を取り直し、露店で花火を買うことにした。
「(銀子バラバラ~)ここにある花火、全部くれ!」
「蕭鳳鳴、何てバカなこと…1年分の食費でしょう?」
「公主のためなら10年分でも惜しくないよ」
雲杉はいつもの鳳鳴ではないと驚いたが、自信に満ちあふれる鳳鳴が格好良く見えた。
しかし有り金を叩いたにもかかわらず、手持ち花火を1袋しか買えない。
実は最近、都中の花火を買い取った客がいて品薄状態、値段が急騰していた。

都に戻った李玄は最後の贈り物を見せるため、嶶児を眼鏡橋へ案内した。
川沿いの露台には確かに綺麗な灯籠が飾ってあったが、この程度のものなら宮中にもある。
しかし李玄はこれではなく、あっちだと空を指した。

その頃、ちょうど鳳鳴は全ての花火に火をつけ、雲杉に告白しようとしていた。
「雲杉!どうだい?」
「綺麗よ!それで話って何?」
「雲杉!聞いてくれ!…君が好きだ!」
その瞬間、李玄が嶶児のために花火を打ち上げた。
ヒュウ~ドッカーン!
夜空に次々と浮かぶ大輪の花、鳳鳴の告白は爆発音にかき消され、雲杉に届かなかった。
「え?何か言った?」



嶶児は自分の誕生日を初めて心から楽しんだ。
嬉しそうに空を見上げる嶶児、その姿を見ていた李玄は第二皇子が本当に女のようだと困惑する。
「どうだ?宮中にはないだろう?」
「ふふっ」
実はその花火を猶憐は風穆と二人で酒楼から見ていた。

酒楼に李玄と嶶児がやって来た。
驚いた猶憐は外を眺めるふりをしてやり過ごそうとしたが、李玄に見つかってしまう。
嫉妬した李玄は強引に相席すると、四人の方が楽しいと言って嶶児まで巻き込んだ。
「どうだった?…花火だよ、たくさん上がっただろう?明日はお前のために打ち上げようか?」
「そうね、綺麗だったけれどあっという間だったわ」
「あっという間か…なら三日三晩、打ち上げ続けるのは?1年でもいいぞ?」
「バカらしい…」
嶶児はすっかり誕生日気分が吹き飛び、愚痴をこぼしてしまう。
すると居たたまれなくなった猶憐は先に帰ると席を立ち、風穆と一緒に出て行った。

李玄は猶憐への未練を断ち切れず、泥酔して嶶児にからんだ。
「どうしてだ?どうして猶憐は俺に冷たくするんだ?!こんなに好きで尽くしてるのに…」
「猶憐に尽くしていたとは初耳だな」
すると李玄は酔った勢いで、これまで皇太子に対抗できたのは傷を治せる能力があったからだと明かした。
李玄自信もなぜそんな力を持っているのか分からなかったが、どれほど深い傷を負っても知らぬ間に治っていたという。
しかし氷血(ヒョウケツ)の聖域から猶憐を逃すため、李玄はその特別な能力を天書(テンショ)仙人に譲っていた。
「猶憐には黙っていてくれ、負い目を感じさせたくないからな~グビッ」
「もし知ったら戻ってくるかもしれないぞ?」
「そんな手は使わない…そんなことせずとも心から俺を好きだと言わせてみせるさ~ヒック」
「真正のバカだな」
「自信家と言ってくれ、賭けてもいい、猶憐は俺の元に戻ってくる、必ずだ~!」
その時、嶶児はまだ酒を飲もうとする李玄から瓶を取り上げようとして奪い合いになった。
嶶児は思いがけず李玄と顔が接近、そのまま二人は見つめあってしまう。
「…嶶児?お前って本当に女みたいだな?」
急に恥ずかしくなった嶶児は書院に戻ると言ったが、李玄はまだひとりで飲むと言った。



嶶児は主人に心付けを渡し、李玄の面倒を任せて帰った。
一方、李玄が心配で風穆と別れた猶憐は、酒楼から聞こえる土笛に驚く。
…あの男の子はあなただったのね…
振り返ると酔った李玄が上階で土笛を吹いている姿が見えた。
あれは猶憐がまだ幼い頃、川岸で仲間たちと踊っていた時のことだ。
笛の音に導かれ川岸へやって来ると、ちょうど川を下っている舟に乗った少年が土笛を吹いている。
するとその少年も猶憐に気づき、二人はしばし見つめ合った。

猶憐は泥酔している李玄が心配になり酒楼へ戻った。
すると給仕がちょうど李玄を寝床に運び込んでいる。
猶憐はそのまま酔い潰れた李玄を介抱していたが、ふいに李玄が猶憐の手を握りしめた。
「李玄…ごめんね、何もかも私が悪いの…傷つけてごめんなさい」
その時、李玄が首を横に振りながら、むっくり起き上がった。
「覚えているよな?俺たちは婚儀も済ませて枕も共にした仲だって…
 互いに心を通わせた…なのになぜだ?なぜ″真言の陣″では愛していないと答えた?教えてくれ?」
李玄は猶憐の肩をつかんで揺さぶった。
「李玄、やめて…全部、私が悪いの、憎まれてもいい」
「憎むわけないだろう?愛しているんだ…」

つづく


|ω・`)猶憐…もうちょっと何とかならんのか…色々な意味でw





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最終更新日  2021.06.04 10:34:10
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