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第20話「忠誠の証し」

寧鈺軒(ネイギョクケン)は季曼(キマン)が自分で船を出し、軟膏の原料を安く仕入れていると聞いた。
鬼白(キハク)の報告ではそれだけでなく、民のために薬材も一緒に仕入れているという。
しかし陸上げの際には港の検査があり、検査人は王錦堯(オウキンギョウ)の息がかかっていた。
すると鬼白が蛟龍(コウリュウ)幇も港に権限があると思い出す。
そこで寧鈺軒はまだ新幇主となった袁朗(エンロウ)に挨拶していなかったと口実をつけ、港の様子を見に行くことにした。

袁朗は海坊(カイホウ)港で配下たちと一緒に荷物の陸揚げで汗を流していた。
すると寧鈺軒が袁朗の右腕にある包帯に目をつける。

寧鈺軒は他にも茶幇の残党がいるのかと聞いたが、袁朗は茶幇など知らないという。
「なら潔白を証明してくれ」
「いいだろう、だが入れ墨がなかったら二度と蛟龍幇の仲間にからむな」
実は袁朗はあらかじめ右腕の入れ墨を自ら削り取っていた。
包帯の下から現れたのは入れ墨でなく傷跡だけ。
仕方なく寧鈺軒は丁重に謝罪して引き上げたが、どこか不自然だと怪しんだ。



季曼は自分で仕入れた薬材を民のため安価で卸した。
そのせいで海上貿易組合に入っている薬舗に客が来なくなり、店主たちはこのままではいずれ食糧にも手を出すはずだと王錦堯に泣きつく。
そこで王錦堯は組合員たちを引き連れ、県令に訴え出た。
組合は相場を安定させるため商品の価を決めているが、寧夫人は掟に従わず、安価な薬材を売って秩序を乱しているという。
しかし寧鈺軒は組合が決めた価が妥当とは限らないと取り合わず、まっとうな運営手段を考えろと追い返した。


最近、組合を通さず荷を陸上げし、安価で市場に流している船があるという。
袁朗は海賊の仕業と見せかけ船を襲えばいいと提案、王錦堯は喜んで袁朗を厚遇すると約束して帰した。

実は王錦堯は袁朗と寧夫人が顔見知りと承知していた。
「ふん、友人の船さえ襲ってこそ私に忠誠を誓う証しとなる」

季曼は原料費を計算しながら、これなら非晩霜も値下げできると喜んでいた。

「小姐、大変です!船が海賊に襲われました!」
驚いた季曼は苜蓿(ムーシュ)を県衙に行かせたが、寧鈺軒は留守だった。
仕方なく苜蓿と桑葚に他の店で在庫を探すよう頼み、季曼は袁朗を頼ることにする。
その頃、寧鈺軒はちょうど別の船を襲った海賊を捕まえ、陶思維(トウシイ)と一緒に戻る途中だった。
すると鬼白が駆けつけ、季曼の船まで海賊に襲われたという。

袁朗は海賊を装って荷物を強奪、皓雪堂(コウセツドウ)の荷だけ別に保管し、季曼に返すことにした。
その時、突然、季曼が訪ねてくる。
「船が海賊に襲われて荷物を奪われたの!どこかに隠したはずよ?」
焦った袁朗は店で待つよう言ったが、季曼は強引に袁朗を連れて行こうとした。
すると咄嗟に趙虎(チョウコ)が怪しい船が何隻か着いて山に荷物を運んだらしいと嘘をつく。
「俺たちは倉庫を探すから、老大は山へ行ってみたらどうだ?」

季曼と袁朗は郊外の山間で偶然、小さな村を見つけた。
どうやら流民が住み着いた村のようで、暮らし向きが苦しいことは見てすぐ分かる。
「…私にできることはないかしら」
一方、寧鈺軒は港で季曼の荷物を探していた。
すると発荷主も着荷主も書いていない怪しい荷物を発見、肥料の中から紙包を発見する。
寧鈺軒は季曼を呼んで荷を改めさせることにしたが、そこへ慌てて苜蓿と桑葚がやって来た。
「侯爺!こちらでしたか!夫人が袁幇主と荷を探しに出かけました」
「何だと?!」

寧鈺軒と鬼白は馬を駆けて山の中を探した。
すると運良く村から戻って来た季曼と袁朗を発見する。
寧鈺軒は季曼の荷物なら見つかったと話し、袁朗が倉庫に隠したと疑った。
「彼女の目を欺くために山へ連れてきたのか?」
「確かに蛟龍幇は港の一部倉庫の管理を任されている、だが保管するだけで中身までは知らぬ」
袁朗は嘘をついて真相を調べるとごまかしたが、季曼は見つかったのならそれで良いと笑った。




荷が見つかったと聞いて袁朗は先に帰った。
すると寧鈺軒は季曼に今後、袁朗と2人きりで会うなという。
「嫉妬?」
「…違う(ボソッ」
「分かったわ、もうしない…それより大事な用があるの、付き合って」

季曼は寧鈺軒と2人で流民の村に食べ物や衣を届けた。
村人たちは喜んでくれたが、なぜか2人を疫病神だと嫌って追い返そうとする老婆が現れる。
しかし村人は老婆を追い払い、気にしないで欲しいと取り繕った。

その村は劉家村と呼ばれ、働き盛りの男たちの姿はなかった。
聞けば男たちの大半は航海に出ており、乗った船も行き先も色々だという。
一方、港へ戻った袁朗は王錦堯に盗んだ積荷を確認させていた。
「寧夫人の荷物は寧鈺軒が探し回って持ち去った、荷を分けておいて正解だったな」
すると袁朗は船員たちなら海に放り込んだと嘘をついた。
王錦堯はすっかり袁朗を信じ、組合の息がかかった場所に出入りできる腰牌を渡す。
「今後は家族も同然だ」

その頃、寧鈺軒は慣れない力仕事で村人を助けていた。
季曼のためとは言え散々な目に遭わされたが、村人たちに恩人だと感謝され、その夜は焚き火を囲んで歓迎会に参加する。
寧鈺軒は楽しそうな季曼の姿を見ながら、ささやかな幸せは身近な所にあるのだと実感した。

つづく





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最終更新日  2024.04.27 22:42:44
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