カイバーマンのお仕事2

カイバーマンのお仕事2

2007年02月01日
XML
カテゴリ: チャドウリ
「この中で、啓吾だけがいたってふつーの名前だよね」


大袈裟に非難する啓吾を軽く無視、
「僕の名前は、母親が好きな色をそのままつけたらしいんだけど、チャドと石田君は?」
「……知らん」
名前の由来など考えたことも無い。多分肉親の好む字を充てたんだろう。
しかし石田は、
「親の名前から一文字取るのが家の決まりらしくてね」
と素っ気無く、それでも真面目に答えた。

「武家に限った話じゃないさ」
一護と石田がアカデミックな喧嘩を始めたため、それで名前の話は流れてしまったが、石田の表情が僅かに曇っていたのが気になった。

「……どちらだ」
「え?」
どうしてもその話の続きがしたくて、部活が終わるのを待った。互いにバイトがない日で助かった。
「名前」
「ああ」
どちらの字を貰ったのか。それだけの問いに、石田は歩きながら顔を顰めた。
「竜の方だよ」
「そうか」
「父の名が竜弦。祖父が宗弦」

単なる法則の確認に、何故か石田は溜息をついた。
「いや。……僕でお仕舞いだ」
「……」
「何故僕の家が名前を繋げると思う?滅却師の血筋を絶やさないためだよ。でも僕は生憎、滅却師として相応しい能力を持たずに産まれて来た。だから父は僕に、自分の竜と、一番最初の滅却師の名から一文字取って雨竜と名づけた。僕で終わりにするために。道を伸ばすんじゃなく、ループさせたんだ」
苦々しげに言い募る。

「……最後の滅却師」
「そうだよ。僕は生まれたときから、最後の滅却師だ」

どういったらいいんだろう。
自分から水を向けたくせに、俺は正直途方にくれた。
「……最初の滅却師の名前は?」
「石田時雨。うちの祖先というだけで、世界初ってわけじゃないけど」
時雨か……時雨。
それは、確か。
「降ったり止んだりする雨」
「ああ、うん」
「だったら心配ないな」
「は?」

たとえ石田で滅却師が終わってしまうとしても。
雨がまた降るように、虚から人間を護ろうとする者はきっと現れるだろう。
「考えてみれば……石田は俺のものだから、どうあれ此処で終わりだ」
「……随分手前勝手な考え方だよ、それ」
石田は俺をじろりと睨みつけたが。

それでも表情は幾分明るく、それが俺の気持ちを軽くしてくれた。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年02月01日 21時59分59秒
コメント(1) | コメントを書く
[チャドウリ] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

バックナンバー

2024年11月
2024年10月
2024年09月
2024年08月
2024年07月

コメント新着

有馬頼寧@ Re:新必殺仕事人 「主水 バクチする」感想(04/15) 冒頭の坊ちゃん 泣けますね。
多田和己@宮城野高校16回生@ Re:魔神英雄伝ワタル 最終回感想(02/04) うんこちんこまんこうんこちんこまんこう…
多田和己@宮城野高校16回生@ Re:必殺仕置人 15話「夜がキバむく一つ宿」感想(04/21) うんこちんこまんこうんこちんこまんこう…
多田和己@宮城野高校16回生@ Re:五瓣の椿 最終回「父と娘」(10/26) うんこちんこまんこうんこちんこまんこう…
多田和己@宮城野高校16回生@ Re:五瓣の椿 最終回「父と娘」(10/26) うんこちんこまんこうんこちんこまんこう…

カレンダー


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: