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こうなるとキャブのオーバーフローが一番怪しい。もう一度分解すべく取り外した。フロートバルブを取り出し天眼鏡でティーパー状の先をじっくりと調べて見るも色の変わっている所や段差も確認できないが、念のためにバルブシートと共にキャブクリーナーに一晩漬け、コンパウンドで念入りに磨いた。ついでにメインジェットやパイロットジェットなども点検を行うがどれも問題無い。もう一度清掃して組み立てに掛かる。オーバーフローの原因はフロートバルブとバルブシートの合わせ面にゴミ噛みや摩耗による隙間があるか、フロートが上がり切ってもバルブがバルブシートを閉じ切れない事が考えられる。バルブシートとの合わせ面は大丈夫そうなので、バルブが確実にシートを塞ぐようにフロートの爪を少し曲げて取り付けた。油面が少し下がる事になるが、オーバーフローは直るかも知れない。
キャブを取り付けてみるとオーバーフローは直っているようだが、キックするも掛かる気配も無い。撃沈である。こうなると徹底的にキャブを攻めるしかない。覚悟してキャブの脱着が容易に出来るようにマフラーを外し、エアクリも外して身軽にする。
キャブをバラしてみると、フロートチャンバーに燃料が半分ほどしか入っていない。フロートの爪を曲げすぎたようだ、大体の油面はフロートチャンバーの縁から1cm位下がった辺りだが、これではメインジェットが燃料を吸えないかも知れない。SMを見ると「キャブをひっくり返してフロートの爪がフロートバルブの凸に僅かに触れる所で止めて、キャブの縁からフロート高さが24ミリになるように調整せよ」と書いてある。測ってみると20ミリもない。24ミリに再調整して組み上げ、エンジンを掛けてみるが全く反応しない。掛かる気配も無い。
再びキャブを外し傾けないように真っ直ぐにしてフロートチャンバーのビス4本を外す。燃料がこぼれないようにゆっくりとチャンバーを外してみると、燃料は縁から1センチ弱の所まで入っている。フロートの高さも再度測るが、24ミリで変わっていない。ジェットの詰まりは何回も確認した。特にスローのパイロットジェットとチョークに繋がる細いパイプは念入りに掃除し何回も貫通を確かめている。キャブは完璧な筈である。
再び組み立てて、キックするが全く掛からない。10回程キックすると初爆があった。「おっこれは掛かるな」と思いながらキックするも10回に1回ほど一瞬掛かるが後が続かないのだ。おかしい。プラグを確認するも元気の良い火花がバチバチ飛んでいる。汗が出るほどキックを繰り返すが同じ事である。迷宮に入ってしまった。燃料は来ている。火花も飛んでいる。エアークリーナーを外しているので詰まりはない。キャブは完璧だと思う。それなら何故一瞬で止まる。後はアイドリングスクリューの締め具合か?それともエアースクリューの締め具合か?アイドリングはさて置き、エアースクリューはSMに「1回転と1/4戻し」と書いてあるので、その通りにしている。そんなにシビアな物では無いだろうと思っていたが、エアクリを外しているので、ひょっとしてエアーが入り過ぎて薄くなっているのだろうかと思い、試しにエアースクリューを全て締め込み戻し無しにしてキックしてみると、掛かった。エンジンは勢い良く回っている。チョークを戻しアイドリングスクリューを回しアイドリングを調整する。エアースクリューをナメてはいけなかったのだ。こんな落とし穴があったとは…..。やっと掛かったのは良いが、何故急に掛からなくなったのか、それが分からないので不安はつきまとうが、取り敢えず目出度し、目出度しだ。
一番下のホールの上にある切り欠きがフライホイールの合わせマーク
クランクケースには合わせマークがない
電球による点火時期の確認
フロートバルブとバルブシート
分解して洗浄したパーツ
一番下に見える細いパイプが詰まりやすい
油面が下がりすぎているフロートチャンバー内の燃料
爪を戻し過ぎてフロートが下がり過ぎている状態