話飲徒然草〜Tokyo Meanderings

話飲徒然草〜Tokyo Meanderings

2021年06月03日
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2018年に書いた記事です。


前号の原稿を書き終えたあと、盆休みを家族と台湾で過ごし、すっかりリフレッシュして、さあ仕事に本腰を入れるぞと意気込んでいた矢先、地下鉄構内の階段で足を踏み外して転倒、救急車で病院に搬送される失態を演じてしまった。
ちなみにこれが人生二度目の救急搬送だった(一度目は6年前。「腸管出血」で下血が止まらなくなって1週間入院した)。
階段で足を踏み外すことはそれまでも幾度となくあったが、せいぜい尻餅をついたり、足首を軽く捻挫したりといった程度だった。今回落下したのは段数にしてほんの2〜3段だったものの、着地時に腕をかばったせいで、体をねじったような体制になってしまったのがよくなかった。右腿に激痛が走り、それきり動くことすらできなくなってしまったのだ。駅の係員やら善意の通行人たちに取り囲まれ、現場にはロープが張られて交通整理が始まり、ちょっとした騒ぎになってしまった。私はと言えば、悶絶するばかりで脂汗まで出てきて、「これはきっと骨折しているかも?」と半ば覚悟したが、搬送先の病院での診察は「右腿の肉離れと膝の靭帯損傷」ということで、骨折がなかったのが不幸中の幸いだった。ただし膝については、状態によっては手術が必要になるかもしれないので、後日あらためて整形外科に罹るように言われた。安心と不安の入り混じった気持ちを抱えながら、その日は松葉杖とともにタクシーで帰宅した。

■翌週
翌日、職場のそばの行きつけの整形外科であらためて診察してもらった。MRIの設備等のない町場の整形外科だが、過去数回の骨折のリハビリで通い慣れていて、医師やスタッフのこともよく知っているので、まずはここで診てもらうことにしたのだ。
とりあえず触診とX線による診察は、「手術をしなければならないほどではないと思う。9月初旬まではギプスで固定して様子をみましょう。」とのこと。ただし、「ひょっとしたら半月板を損傷している可能性もある」ので、「膝が曲がるようにならなければ(この時点では45度以上曲げることができなかった)、もっと詳しく検査する必要がある」とも言われた。
「アルコールはまだ飲んではいけないですよね?」
「やめておいたほうがよいですね。外傷はないといっても体の内部では炎症が収まっていませんから。」


というわけで、この日以来、数年ぶりのギプス生活が始まった。当初は1週間もすればかなりのところまで回復するだろうと高をくくっていたが、翌週になっても膝から下の自由がきかず、右膝をギプスで固定されていることもあって、松葉杖なしでの歩行は困難を極めた。会社への通勤はラッシュの時間を避け、エレベーターやエスカレーターを探して回らねばならなかった。タクシー代もかなり嵩んだ。
その一方で、怪我後3~4日後あたりから、晩酌にワインを飲みたいなぁという気持ちが少し頭をもたげてきたのは、全身の状態が少しは快方に向かっているシグナルだろうと思われた。(結局、病院の指示を守って、1週間経過するまでは飲酒を控えた。)

■2週間後~暗転
そんなこんなで2週間ほど不自由な生活を過ごしたあと、「順調に回復しているようなので、ギプスをとってリハビリに入りましょう。」とのことになった。
ギプスがなくなって、何が有難かったかといえば、なんといっても風呂の浴槽につかれることだった。また、ギプスをしながらの入浴は、一歩間違えば転倒の可能性もあったので、慎重にならざるをえず、そのため、晩酌の酒量も控えめになりがちだった。この時期はワインを飲んでも、1日あたりせいぜいグラス2杯程度、ボトル1本を数日かけて飲む生活が続いていた。そんなわけで、やっと思う存分飲めるという解放感もあった(それが数日後の悲劇に繋がるのだが…)。
一方でギプスがなくなると、右足にうまく力が入らず、杖なしではぐらついてしまってうまく歩けないことに困惑させられた。そういえば、いったんギプス等で固定すると、その2~3倍の期間リハビリが必要だと、かつて右足甲を剥離骨折したときに言われたのを思い出した。
 事態が悪化したのは、ギプスがとれて三日後の金曜日の夜のことだった。
新橋のイタリアンで同僚たちとしこたまワインを飲み、千鳥足で深夜に帰宅した際、車道と歩道のほんの数センチの段差につま先をゴツンとぶつけてしまった。そのときは、ちょっと強めの衝撃を加えてしまったな、という程度だったが、そもそもアルコールで痛覚が鈍っていたのかもしれない。翌朝起きてみると、激しい痛みと膝が抜けたような感覚とでトイレへの往復すら困難な有様だった。結局週末の間、痛み止めのロキソニンを飲みながら、安静にして過ごすしかなかった。これは振り出しに戻ってしまったかなと、まったくもって暗澹たる気分だった。
 翌月曜日に整形外科に行き、再び固定をしてもらったのだが、今度はギプスはせず、包帯とテーピングだけの固定だった。今にして思えば、ギプスをとるのが1週間早すぎたのではないかなぁと思うし、再固定の方法もとにかく中途半端だった。杖を用いても歩くのが痛くてたまらず(この頃は松葉杖からT字型のステッキに変えていた)、本当にシンドかった。思い返せば、怪我の当日以降では、この時期が一番つらかったかもしれない。

私が痛めた靭帯は、「右膝内側側副靭帯」という箇所で、膝の靭帯の中では比較的予後がよく、他の靭帯や半月板を痛めていなければ、基本的には手術をせずに保存療法で治せる箇所だそうだ。歩道の段差にぶつけて何が起こったのかはMRIをやっていないのでわからないが、損傷の程度がかなり酷くなってしまったのは間違いない。これは長期戦になるなぁと覚悟をせざるを得なかった

■その後の経過

ちなみに1か月経過した時点でどんな具合だったかといえば、右膝を完全にたためるところまではいかないものの、120度ぐらいは曲げられるようになり、歩くスピードも(杖をつきながらとはいえ)だんだんと世の中の流れに乗れるようになってきた。それでも、階段の上り下りで足をスムーズに動かせないのと、ちょっとした段差や坂道で不安定になったり、長く歩くと膝がガクッと抜けたようになることがあって、T字ステッキとサポーターを手放せない生活は続いていた。
膝をぴったりと折り曲げられるようになったのは、怪我からおおよそ2か月後、ステッキなしで通勤できるようになったのは2か月半後のことだった。

この原稿を書いている11月中旬現在、怪我後3か月近く経過してどんな具合かといえば、ケガ前の状態を10とすると、ようやく5か6ぐらい、どんなに甘く見積もっても7まではいかないなぁという状況だ。
日常生活に不自由することはほぼなくなったが、まだ歩行時には右足を引きずりながらになってしまうし、走ることはできない。しっかり踏ん張れないので、満員電車の通勤や階段の昇降(特に降りるほう)は緊張する。
整形外科のリハビリはマッサージに加えて筋トレが加わった。仰向けに寝た姿勢で膝の部分をギュッと床に向けて力を入れたり、足を挙げて足首をたたんだ姿勢で静止したりといった簡単なものだが、左右の足を比べると、すぐにわかるぐらい、右足の筋肉が落ちてしまっているので、筋トレを気長にこなさないことには、怪我前の状態には戻らないのだろう。


■ワインや趣味への影響
 今回の怪我でとにかく辛いのは、「山歩き」をまったくできなくなってしまったことだ。山歩きはここ数年、私の中でワインと並ぶ趣味となっていて、週末になれば2週に1回ぐらいのペースで近郊の山にでかけていた。怪我した当初は、秋口になればまた再開できるだろうと楽観視していたが、今から思えば、とんでもない認識の甘さだった。3か月近く経過した今の時点でも、本格的な山はおろか、2~300m程度の低山ですら歩ける気がしない。今年の紅葉狩りは諦めざるを得ないのはもちろんだが、では来春になれば岩場や急な斜面を上ったり下ったりできるレベルまで回復するのかというと、今の時点ではちょっと自信がない。そもそも年間20回以上も山歩きをしていた人間が地下鉄の駅構内で転んで大けがをするというのが笑い話以外のなにものでもないが、逆にもし人気(ひとけ)のない山の山頂付近で同じような目に遭っていたら、ヘリコプターで救助されたり、場合によっては遭難して新聞沙汰になっていたのかと思うと、山歩きそのものに対してやや及び腰になってしまう。
ワインについてどうだろうか?前述の通り、怪我のあと1週間後ぐらいから飲み始めたが、運動をしなくなって代謝が衰えたせいか、あまり量を飲めないし、酔いが回るのが早くなった気がする。
そもそも週末どこにも行けずに鬱々と過ごしていては、晩酌でワインを飲んでもあまり美味しいと感じない。山歩きとワインとは、アウトドアとインドアというだけでなく、いつのまにか私の中で相互補完の関係になっていたのだなぁと実感する。
 ではワイン関連で何か目新しいことがなかったかというと、ひとつあるのだ。
遠出ができなくなった分、ウインドウショッピングの延長で、近所の酒屋を見て回るようになった。これが私に懐かしい感覚を思い出させてくれた。
今でこそ購入ワインの9割以上をネット経由で仕入れているが、ワインに凝り始めた90年代半ばから後半にかけては、ショップの店頭でいろいろ物色して購入していた。あらかじめ銘柄名を調べて買うものもあれば、店のおすすめに従って購入したり、衝動的に「ラベル買い」することもあった。そのプロセス自体が楽しかったことを思い出して、再び初心に戻ってワインを選んでみたくなった。
また、そうした店には、かつて私がよく飲んでいた懐かしい銘柄も並んでいる。たとえば、90年代の私は今のようにブルゴーニュやシャンパーニュ一辺倒でなく、チリやオーストラリア、ボルドーなどの安価なワインを幅広く飲んでいた。それらの銘柄を今飲んでみたら、どう感じるのだろうか?
題して「温故知新プロジェクト」(プロジェクトというのはシャレだと思ってほしい)。
最近、居酒屋やビストロなどで飲むショップ価格2千円前後と思われるワインたちが思いのほか美味しくて、自宅の晩酌ならこれぐらいで十分だなぁとしばしば思うことも背景にある。ためしに、実家の近所のスーパーで「コンチャイトロ」や「ロバートモンダヴィ」を購入して飲んでみた。なかなか、悪くないじゃないかと思った。
それでは、ということで、今度は近所の「信濃屋ワイン館」で店のおすすめワインや懐かしい銘柄を12本見繕って購入してみた。私自身、店頭で12本まとめ買いするのは実に久しぶりだったが、それ自体とても楽しい体験だった。プライスはトータルでも2万6千円程度。一本当たり価格は平均2000円強というところだ。自宅の晩酌ワインがだんだんとこのような銘柄に回帰していくのか、それとも、結局はブルゴーニュ+シャンパーニュに戻るのか、。。
次回はこうした銘柄を中心に「温故知新プロジェクト」の進捗を報告したいと思う。

実は三年経過した今もまだ、膝は完全に戻っていません。全力で走れませんし、膝を曲げるたびにカクカクひっかかるする感じがします。怪我をした時点で手術をしたほうがよかったのかもしれません。まあ日常生活に困ることはほぼありませんが(点滅中の青信号を渡るときぐらいでしょうか)。
「温故知新プロジェクト」については、このブログ上でもいくつか試したアイテムを掲載しています。





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Last updated  2021年06月03日 20時17分11秒
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Re:人生二度目の緊急搬送と「温故知新」プロジェクト(RWGコラム拾遺集)(06/03)  
noir-fun  さん
大変ご無沙汰しております。
そんな大変なことがあっていたなんて驚きました。
くれぐれもご自愛くださいね。 (2021年06月03日 20時30分28秒)

Re[1]:人生二度目の緊急搬送と「温故知新」プロジェクト(RWGコラム拾遺集)(06/03)  
shuz1127  さん
noir-funさんへ

ご無沙汰しております。そうなんです。こちらのブログでもリアルタイムで報告していましたが、他の記事にすっかり埋もれてしまいました。
たまにこうして過去の記事を転載するのもアリですね。
(2021年06月04日 08時35分04秒)

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shuz1127 @ Re[1]:祝日セール情報1103 Holiday Sale Info(11/03) Echezeaux14さん、お久しぶりです。 10月…
Echezeaux14 @ Re:祝日セール情報1103 Holiday Sale Info(11/03) お久しぶりです。 ワインと関係ないです…

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