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大晦日ですね。そこで今日はお題のように、何冊か本を紹介していきたいと思います。まずは、海軍関係の本の中から戸高一成先生の『海戦からみた日清戦争』(2011年5月)、『海戦からみた日露戦争』(2010年12月)、『海戦からみた太平洋戦争』(角川書店、2011年11月)のシリーズが読みやすくて良かったですね。戸高先生は呉市海事歴史科学館の館長さんで、海軍史の研究家として著名な方です。 あと、作家の半藤一利さん、歴史学者の秦郁彦先生、軍事史研究家の原剛先生、作家で評論家の松本健一さん、先に紹介した戸高一成先生が参加した『文藝春秋』の『坂の上の雲』について日清・日露戦争に関する二日間にわたる長い座談会をまとめた『徹底検証 日清・日露戦争』(文藝春秋、2011年11月)が面白い内容でした。また、同じ文春新書だと別宮暖朗さんの『帝国海軍の勝利と滅亡』(文藝春秋、2011年3月)が日本海海戦の完勝へと導いた山本権兵衛と、太平洋戦争で破滅への道を開いてしまった山本五十六の二人の海軍軍人を対比して、明治期と昭和期の海軍の性質を描き出していたのが面白かったです。 柔らかい読み物の方を紹介しますと、今年はなんといっても支倉凍砂さんの『狼と香辛料』(アスキー・メディアワークス、2011年7月最終巻)シリーズが終わってしまったことが少し寂しいですね。剣も魔法もないのにちゃんとファンタジーの世界を作り上げて、中世ヨーロッパの経済の仕組みをしっかり押さえて本書は、長々と続けずにスパッと切りの良いところでハッピーエンドで終わったのが良かったです。それから単行本時代から図書館でもおすすめしていた菅野雪虫さんの『天山の巫女 ソニン 黄金の燕』(講談社、2011年9月)が新書サイズで刊行されたことも良かったですね。これは落ちこぼれの巫女、ソニンが言葉を発することができない王子イウォルとの出会いから始まる冒険を描いたファンタジー作品で、とても面白いので手に取ってみて下さい。後は、ブログでも紹介したパトレシア・C・リーデさんの『魔法の森』シリーズの最終巻『困っちゃった王子さま』(東京創元社、2011年9月)が出たことでしょうか。これまでの主人公シモーリンの礼儀正しく教育を受けた息子ディスターが、魔法の森で魔法が使えない炎使いの少女と大活躍するお話です。それから、桜庭一樹さんの『GOSICK』(角川書店、2011年4月)シリーズが角川ビーンズ文庫で再刊行されたのも書いておきます。 あとは、マーク・ポールさんという英国のフリーエコノミー(無銭経済)運動を創始した人の、一年間お金を使わずに暮らす実験を描いた『ぼくはお金を使わずに生きることにした』(紀伊国屋書店、2011年11月)という本。この本は、いかに我々の生活が「便利」という名の色々なものに束縛され、自由を失い地球環境に負荷をかけているかに気づかせてくれる本です。それから、新井潤美さんの『執事とメイドの裏表』(白水社、2011年12月)も。この本は、英国社会は、執事やメイドなど伝統的な使用人に対して、歴史的にどのようなイメージを持ってきたのか? そして、その実像は? 日本や米国で流布しているイメージとのギャップからイギリス文化を考える、という本です。最後は、このブログで大々的に取り上げようと思っている家事使用人だったマーガレット・パウエルが書いた階下の真実の記録『英国メイド マーガレットの回想』(河出書房新社、2011年12月)です。詳しくは追々紹介しますが、訳者があの村上リコさんというだけでも内容に期待できる作品です。では、この位で。皆様、良いお年を。
2011年12月31日
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久々の更新は、速水螺旋人著『送料無料!ポイント5倍!!【漫画】大砲とスタンプ 全巻セット (1巻 最新刊) / 漫画全巻ドットコム』(講談社、2011年12月)を紹介していきたいと思います。この漫画を描いている速水螺旋人さんは、今私が最も好きな漫画家の一人です。ソ連邦時代を舞台にしたモノなどのミリタリー法螺漫画や空想的武器などイラストを得意にされている方で、今月は『【送料無料】靴ずれ戦線』(徳間書店、2011年12月)も出されています。今回は、先に「送料無料!ポイント5倍!!【漫画】大砲とスタンプ 全巻セット (1巻 最新刊) / 漫画全巻ドットコム』の方を取り上げてみたいと思います。時代設定が1940~1950年代くらいの感じを持った、架空の世界が舞台のお話になります。何人かの人が先に指摘していますが、トルコ風の共和国とロシアをモチーフにした大公国が帝国(どこがモチーフか不明)と共同戦線をはりながら戦争している世界です。場所的には、出てくる地図なんかからロシアの黒海北部をモチーフとしているようです。で、この大公国には陸軍・海軍・空軍の三軍のほかに、後方で補給を担当する兵站軍という軍種がありまして、その兵站軍に所属するカタブツで四角四面な書類仕事大好き女性将校マルチナ・M・マヤコフスカヤ少尉(表紙で書類の束を抱えている人)が主人公です。ところで「兵站」とは何か?それは、平たく言えば軍隊の後方支援全般の事です。ようするに、武器弾薬・食料・燃料・医薬品といった戦闘に必要な物資から酒やタバコやら棺桶、はては避妊具までも本国から前線へと管理・輸送するのがお仕事なわけです。というわけで、華々しい戦闘とは無縁な配置なわけなのですが、兵站が機能しないと太平洋戦争の時の日本軍みたいに、鉄砲玉に撃たれるより先に輸送船が潜水艦に撃沈されて溺死(これはちょっと違うか?)。無事に上陸できても行軍途中でのマラリアや赤痢などの罹患で病死。運良く戦場にたどり着いても、インパール作戦の時のビルマ(今のミャンマー)やパプア・ニューギニアみたいに食い物も無く小銃で一日に撃てる弾が五発、とかいう木の根を齧り石を投げて戦争するといった悲惨なものになりかねません。現在でも前線の一人の兵士を戦闘に投入するには後方勤務要員が八人以上必要である、という数字(うろ覚えですが)があるくらいなのです。そんな重要な任務を帯びた兵站軍なのですが、漫画では長引く戦争のせいなのかはたまた元からなのか、大公国軍の兵站はグダグダで予算はカツカツ、さらに汚職や横領が蔓延するという酷い有様が描かれています。そういうワヤクチャな現場で、マルチナ少尉と配属された管理部第二中隊の世慣れた面々が、書類と機転(たまに実力行使)を武器に問題を解決していきます。自分の信念を貫きながらも、良き同僚や先任に囲まれ、現状に揉まれつつ次第に慣れ、成長していく彼女の活躍というか仕事ぶりを描いたこの漫画には、普通の戦争系漫画には無い「最前線の裏の戦い」をかいま見ることができます。それでは、いつものように漫画の細かいところを取り上げていきましょう。先に書きましたが大公国・帝国連合軍と共和国の戦争は二年目に突入、当然戦争が長引きけば後方では先に書いた通り汚職が蔓延するわけで、とくに現金(金や軍票も含む)や物資の輸送や補給などの後方支援を主な任務とする、安全な(?)デスクワーク中心の軍である兵站軍は腐敗が最も進んだところになるわけです。そこへ、士官学校出のキャリア軍人(本の帯には「俗に言う「眼鏡っ娘」というジャンルに属す。と書いてあります)である堅物のマルチナ少尉が本国から前線基地の大公国兵站軍アゲゾコ要塞補給廠管理部第二中隊に赴任してくるわけです。その赴任にも特別任務、就役直後の軍艦を前線に輸送するというもの、が付いているのですが、この辺は漫画を読んでみて下さい。で、赴任地のアゲゾコ要塞に着任してみれば先述の通り、グダグダのナアナア状態。上司の中隊長のキリール・K・キリュシキン大尉はやる気なしのダメ人間。そこへ張り切った「突撃タイプライター」マルチナ少尉が来たものですから、大騒動が起きるのは必定。要塞参謀長の汚職を当人に告発して、身代わりにキリール大尉が銃殺されそうになるは、大公軍の攻勢の際に必要となる(戦死者が当然出ますからね)棺桶を発注する予算がなくて不正徴発した金の延べ棒を味方の装甲列車から強奪半分で奪ったり、戦意高揚のために偽の慰問郵便を書いてみたり、果ては管轄ではない任務、中立国の記者団を視察用のモデル陣地に案内したりと前線の後方で縦横無尽に暴れまわります。ともかく、「兵站」という戦記モノでは取り上げられることが少ない(一応、そのようなものを取り上げているところを挙げてみますと、光人社のノンフィクション文庫とか、学研M文庫の大井篤氏の『【送料無料】海上護衛戦』(絶版)は、大日本帝国海軍の海上輸送をテーマとした一級の資料で一読の価値がありますよ。)ので、ミリタリーマニア中のマニア、というかミリタリー関連の頭の先までずっぽり埋まった人しか、そのような本にたどり着けないのが現状です。しかし、このようにして漫画でわかりやすく面白く(戦争モノなので不謹慎な言葉かもしれませんが)物語にして読めることは、良いことだと思います。漫画の中でも兵站軍のことを「紙の兵隊」といって陸海空軍から馬鹿にされていますが、このような後方補給があってこそ、戦争という歯車が動くわけです。大日本帝国も輜重兵を馬鹿にして、補給を軽視して太平洋戦争に敗れました。現代社会で例えるなら会社に例えるなら兵站軍の仕事は総務と経理を兼ねた様な、地味だけど必要不可欠な仕事をこなす部署です。戦争というものが単純に鉄砲撃って・・・なんて考えている人にも読んでもらいたいし、さらにミリタリー関連がお好きな方は一読の価値のある作品ですよ。では、最後に勤めている学校図書館の近況について。年の瀬になって、ようやく廃棄図書の三分の二を処分しました。この図書の廃棄、図書の受入よりはるかに面倒なのですよ。何しろ、廃棄する図書を選び出すのに一苦労。価値のある本とか色々ありますからね。それから、県に出す廃棄手続きの面倒さ。県費で買った備品ですので、とに各書類の多いこと。それから廃棄する図書から蔵書印を消し、捨印を押し、表紙や背に「除籍図書」の印を押して、校名の入ったバーコドを図書からはぎ取って十冊ぐらいを紐で括ってまとめて業者に引き取ってもらう。あ~、面倒くさい。それなら、職員や生徒にあげれば良いと思う方、これは県の規定で禁止されているのですよ。ですから廃棄処分しかできない(泣)。もったいないし、本が好きな人間が本を捨てるという行為は苦痛なのですが、仕事ですからしょうがないですね。というわけで、最後に愚痴を少々。それでは。
2011年12月29日
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