濫読屋雑記
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みなさま、ご無沙汰しています。今日は、平岩弓枝さんの『聖徳太子の密使』(新潮社、2012年5月)について、雑感を綴っていきたいと思います。 さて、私は異動で学校が変わったので、書店さんとの取引の確認(学校が買うと、消費税をおまけしてもらったり、税込価格から0.××%引いてもらったりと、サービスしてくれるのですよ。)やら、備品購入書類の形式や書き方など、前の学校とは異なるところがいっぱいあって、ようやくそれらの“流儀”になれてホッと一息ついたところです。それにしても、会計に関する書類の作成は面倒でなりません。エクセルに打ち込む数字一桁間違うだけで大ごとになりますので気が抜けず、文系の思考回路でできている私の頭は処理能力の限界寸前になっています。そんな状態なので、最近はあまり小難しい本を読むのはやめて「頭にやさしい」本を読んでいます。その中の一冊が『聖徳太子の密使』なのです。この本は元々、単行本が出た時に前の学校に入れた一冊なのですが、ちょっとこれまでの平岩さんの作品と毛色が違うぞ、と思っていた本です。平岩弓枝さんと言えば、『御宿かわせみ新装版』といったように時代小説や女性を主人公にした小説を主に書いているというイメージが私にはありました。ですが、この『聖徳太子の密使』は、和製古代史ファンタジーという新しいジャンルに手を付けて、新境地を開いた作品といった位置づけができるのではないかと思います。そんな『聖徳太子の密使』のあらすじですが、まず主人公が聖徳太子(厩戸王子)と海神の娘との間に生まれた王女「綿津見珠光王女(わたつみのたまひかるのひめみこ)」です。この珠光王女が、父である厩戸王子から日本の文化を発展させるために各国の文化を見聞きするようにとの密命を受けて、三匹の猫と一頭の馬をお供に難波津から天の鳥舟(あまのとりふね)に乗って冒険に出かけるという内容です。で、ファンタジーということですのでお供の三匹の猫と一頭の馬も只者ではありません。まず、猫の方から紹介しますと、一匹目は純白の毛並みを持つ白猫で、名前は北斗。なんでも生まれた時から厩戸王子のお傍にいて、王子の読まれる万巻の書をすべて記憶してしまったという博学の知恵猫です。物語では、天帝を守る七つ星にして、古来より北天をめぐる七星の位置で季節の到来を告げる北斗星、智と勇を合わせ持つ名前にちなんで、厩戸王子の愛刀、七星剣を与えられて活躍します。次の猫は、三毛猫で紅玉、緑玉、黄玉の三つ珠をはめ込んだ首輪をしているオリオン。性格は天衣無縫な優しさで人の心を魅きつけ、当意即妙に機転がきく三匹の中で一番おしゃれな猫です。ちなみに先に述べた三つの珠は、光の当たり具合で虹色に変化するそうで、このことがのちの物語の中で役に立ちます。オリオンは厩戸王子より三つ星の首輪を持っているので、大王家に伝わる天沼矛(あめのぬぼこ)を授かります。最後の猫は、本物の虎そっくりな毛並みがふさふさとして勇ましい顔立ちをした虎猫です。名前はスバルといって、腕自慢で猫には惜しいという武勇の持ち主。性格は、一本気で少々短気ですが情にもろく、泣き虫だそうです。このスバルは、小ぶりの銀の弓を厩戸王子から授かりますが、矢がありません。王子曰く、「矢はそなた自身が持って居る。いざという時、この弓を高くかかげよ。屋はおのずから走りて敵を倒すと思え」と言われます。ですが、三匹とも猫の姿のままでしたら王女の従者として何かと不都合です。そこで、厩戸王子が蓮の一枝を使って術をかけ、十二、三歳の少年の姿にしてもらいます。それでも、顔は猫のままで発する声も猫のままだったのを住吉の大伸の力で、人の顔と言葉を授かりこれで旅の支度は整いました。 あと、書き忘れるところでしたが珠光王女の愛馬「青龍」。この馬は百済の国から献上された全身青毛の駒で、物語の過程で明らかになりますが、実は本物の龍です。この一人の王女、厩戸王子の名で王子と身と名を変えた珠光王子は、父親から母親が去る際に残していった九つの乳白色の珠が連なる「龍の珠の連」と倭国から遣わす正使である旨を記載した書状、そして白銀五百枚を持ち、三匹の猫を従者として伴い、青竜にまたがり飛鳥の地を旅立ちます。そして、住吉の大社を経て四天王寺を参り、塩椎翁(しおつきのおきな)と塩椎姥(しおつちのおうな)から天の鳥舟を受け取り、操船を習って食料・水・備品を積み込み、大海原へ漕ぎ出していくことになります。そして、舟が行き着く先々で魔物と遭遇して退治していく、という展開でお話は進みます。このような物語なのですが、読んでいて聖徳太子の姫君が男装をして、猫の家来を連れて、異国を見聞しに行くという設定は面白いのですが、ストーリーは単調なように感じました。なにしろ、各国を巡り、魔物によって苦しめられている人たちを救うという話です。ですが、魔物を倒す場面がかなり呆気無いです。緊迫した戦闘は無く、特に苦戦もせず、お供の猫が厩戸王子から授かった神力を秘めた武器をひとふりすれば魔物はあっさり消滅するのですから、戦闘シーンに緊迫感もスリルもありません。素材は良いのに味付けがイマイチという感じがして、作者の平岩さんもこの物語の舞台を上手く生かし切れていないような気がします。冒険物なのだから、もっと勢いと先に述べた緊迫感、ハラハラドキドキするシーンや智謀をめぐらす場面などがあった方が楽しめたと思います。このような小説ですが、淡白といった軽さがかえって読みやすく、ライトノベルと異なり文章がしっかりしていてきちんとした小説を読んでいる感じが残るので、今の私の状況、頭が飽和状態にある人間はかえって良いのではないかと思います。読後感があっさり過ぎる本作ですが、頭が疲れていても読書がしたい!という活字中毒者はお手頃の本だと思いました。こんな感じで今日はこの位にしておきます。それにしてもあぁ、早くガッツリとした読書ができる環境にならないかしら・・・。
2012年05月16日
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