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2009.09.04
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 雨模様の陰鬱な日の夕方6時頃であった。既に暗くなった中庭にある置いてある鉢植えのモッコクの葉と葉の間に中位の大きさの「ハエ」が居た。位置的に非常に撮り難く、何枚か撮ったのだが、真横からも正面からも撮れない内に逃げられてしまった。



シロガネアシナガバエ属かその近縁属の1種(雌)


アシナガバエ科シロガネアシナガバエ属( Argyra )か

その近縁属の1種(雌).眼に短毛が密生している

一見ハエだが、実際はアブの1種

(写真クリックで拡大表示)

(2009/07/09)

 真横からの写真は無いし、背側からでは翅が腹部を隠しているので、正確な体長は分からないが、翅端まで5.5mm、翅長約3.5mm、最近掲載している双翅目昆虫としては大きめと言える。

 背側から見ると、眼に細かい毛が密生しているのが分かる。全身の姿は特に変わってはいないが、顔は何とも言い難い奇妙な顔(3番目の写真)!!
 一体何バエか? これがどうにも分からなかった。検索表で調べても行き詰まってしまい、該当する科が無いのである。他の検索表を調べたり、画像を探したりしたのだが、納得の行く結果は得られなかった。其処で仕方なく、恥を忍んで何科に属すのか「一寸のハエにも五分の大和魂」に御伺いを立てることと相成った。


シロガネアシナガバエ属かその近縁属の1種(雌)2


横やや上側から見た Argyra 属かその近縁属の1種

胸背には金属光沢があり、胸側は真っ白

(写真クリックで拡大表示)

(2009/07/09)

 早速、九州大学名誉教授の三枝豊平先生が対応して下さった。何と、先生の御回答は「アシナガバエ科の Argyra 属かその近縁属のメスです」!!!

 分からない筈である。ハエの仲間ではなく、アブの仲間だったのだ。以前紹介した「 ”ニセ”アシナガキンバエ 」と同じ科である。アシナガバエ科はアブ類と同じ直縫群に属し、ハエは環縫群に属す。アシナガバエは、名前はハエでもアブの仲間なのである。


シロガネアシナガバエ属かその近縁属の1種(雌)3


斜め前から見ると、何とも変な顔をしているのが分かる

口器の中程にある左右に分かれた部分は小腮鬚の変形

(写真クリックで拡大表示)

(2009/07/09)

 環縫群(ハエ)だと思って検索表を引いていたのだから、行き着く先が無いのは当たり前である。やはり、検索表で行き詰まったら、前提を疑うべきであった。

 アブ類の翅脈は、基本的にハエ類の翅脈とは異なる。しかし、このアシナガバエ科の「ハエ」は、写真では良く見えない翅の基部に近い所では大いに異なるのだが、それ以外の(写真で良く見える)部分ではハエ類とよく似た翅脈をしているものが多い。

 しかし、直縫群なので囲蛹を割る為の額嚢が無く、従って環縫群の額にある額嚢線がない(下図参照)。正面からの写真が無いせいもあり、これには全く気が付かなかった。また、先生の御話では、口器の中程にある平板状の構造は小腮鬚の変形とのこと。やはり、変な顔をしているのは、アブの仲間であったから、と言うべきであろう。


額嚢線


チビクチナガハリバエの1種 ( Siphona paludosa の頭部

羽化時に額嚢線に沿って額が割れ、中から大きな袋状の額嚢が出て来る

その圧力により囲蛹はその輪に沿って割れ、成虫は表に出られる

羽化後、額嚢は萎んで中に収まり、額は閉じられる

尚、このヤドリバエの同定は三枝先生による

(写真クリックで拡大表示)

(2008/09/28)

 九州大学の日本産昆虫目録やそれよりも新しい「みんなで作る双翅目図鑑」の目録には、 Argyra 属(シロガネアシナガバエ属)は僅か2種しか登録されて居らず、またその亜科(Diaphorinae:和名なし)にはこの Argyra 属以外の属はない。三枝先生は「 Argyra 属かその近縁属」とされているが、日本には同亜科に属す近縁属は記録されていないのである。しかし、「 ”ニセ”アシナガキンバエ 」のところで書いた様に、アシナガバエ科は現在記載されている種類の5倍位が棲息すると推定されている非常に研究の遅れた科である。まだ、記録されていない属があっても些かも不思議ではない。


シロガネアシナガバエ属かその近縁属の1種(雌)4


胸側には剛毛が見られない.腹部の大部分には金属光沢がある

(写真クリックで拡大表示)

(2009/07/09)

 北隆館の圖鑑にはシロガネアシナガバエ属( Argyra )についての記載がある。三枝先生が執筆されたものである。その儘転記すると、「前額と額面は広い;触角柄節には刺毛を生じ、梗節は第3節の内側に延びる;第3節は三角形ないし長三角形;触角刺毛は第3節亜背部から生じる。口器や小顎鬚は小型。背中剛毛は5~6本、中剛毛は1~2列、小楯板剛毛は2対。翅は腎葉がよく発達する;前縁脈はM1+2脈に達する;M1+2脈は中央部でS字型に弱く湾曲する」(メンドーなので解説は省略)。大体の特徴は写真と一致するが、触角の細微な構造については倍率不足で判断できないし、また、小楯板剛毛は1対しか無い様に見える。先生が「 Argyra 属かその近縁属」とされた所以であろう。







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最終更新日  2009.09.05 09:12:08
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