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2013.09.22
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カテゴリ: 映画/犯罪
【ストーン】
20120923


「ムショを出たい気持ちは変わらねぇよ。けど外でも中でも・・・感じることは同じだ」
「何も問題ないとでも言うのか?」
「突然前向きになったわけじゃないさ。ずっと考えてることだ。今でも善人じゃない。相変わらず短気を起こして悪態ついて手も出すだろうぜ。でも俺は俺でしかない。それでいいんだ」


久しぶりに見ごたえのある作品に出合えて、本当に嬉しい。
しかもロバート・デ・ニーロとエドワード・ノートンの二大俳優の共演とあっては、見ないでいられるわけがない。

強烈な印象を受けるはずのデ・ニーロが、ここでは至って平凡なサラリーマン役で、いつもの凶悪なマフィアのドンみたいな雰囲気は微塵も感じられない。
職場に必ず持参している水筒や、ヨレヨレの背広姿を見ても、しがない公務員にしか見えない。
一方、こういう捉えどころのないキャラを十八番として演じられるのが、エドワード・ノートンだ。この俳優さん以外には、ちょっと考えられないぐらいハマっていた。

さらに、ミラ・ジョヴォヴィッチにも驚かされた。
これがあのジャンヌ・ダルクを演じた女優なのか?!
囚人である夫の面会には欠かさぬ良妻でありながら、性欲を持て余して行きずりの男を求める。そして昼間は幼稚園の先生としてかいがいしく働いているのだ。
こういう人間模様は、ストーリー展開上とても興味深いし、ワクワクする。


最後に担当するのは、放火犯のジェラルド・クリーソン(ストーン)だった。
ストーンは、自分の犯した罪の償いを充分に果たしたと訴え、早く刑務所から出してくれるようにと強く希望する。
だがジャックは、ストーンのその態度から誠意が感じられず、保留。
ストーンは刑務所生活に耐えられず、妻のルセッタにジャックを誘惑するように頼む。

そうすることで、自分の仮釈放の申請が早まるように画策するのだった。

真面目で宗教心の篤いジャックだが、いつも何か抑圧されたものを抱え込んでいて、それが自分でもよく分からず、いっそのこと誰かが自分を殺してくれれば良いとさえ思うことがある。
ジャックの妻も同様で、自分本位の夫にはとっくに愛想を尽かしているのだが、甘んじて良妻を演じている。
だが自分の中に溜まっているオリのようなものは、すでに爆発寸前だ。
一方、刑務所で悶々と過ごすストーンは、ある自己啓発のパンフレットを読み、何か憑き物がとれたように人格が一変する。
作品の捉え方は皆それぞれだが、ストーンのセリフにもあったように、偉そうな顔をして囚人の仮釈放管理官をやっていても、お互い五十歩百歩なのだと。
法を犯すことは何一つやっていない、ということはあり得ない。

どんな人間も神の前には平等で、それを認めなければ生涯孤独の中を彷徨うしかないのだと、ストーンのセリフを通じて表現されている。
しがない、ちっぽけな、取るに足らない自分を受け入れる・・・それがどれほど苦しく切ないことかを、ジャックが納得するのは難しい。
人はみな罪深い偽善者なのだと省みた時、初めて人が人である所以を理解するのであろう。

2010年公開
【監督】ジョン・カーラン


20130124aisatsu





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最終更新日  2013.09.22 06:00:55
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