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2013.11.02
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カテゴリ: 読書案内
【酒井順子/負け犬の遠吠え】
20131102

◆高学歴・高収入・独身女性の抱える苦悩と開き直り

“負け犬”という流行語まで生み出した話題の本を、今ごろになって読んでみた。
この本がベストセラーになったのはすでに10年も前のことである。
今さらだがここで言う“負け犬”の定義とは、「30代以上・未婚・子ナシ」の女性のことだ。(オスの負け犬についての記述もあり)
心当たりのある方は、居心地の悪い思いをされるかもしれない。でも大丈夫。この本はそういう方々を非難するものではなく、「負け犬ですけど、何か?」と、むしろ開き直ってみせるエッセイなのだ。

『負け犬の遠吠え』の著者が視野に入れている“負け犬”というのは、高学歴・高収入で、しかも見た目もなかなかという女性である。
実際、都会に行けば行くほどそういうインテリ美人は多いはずだ。
私のようなド素人がちょっと考えただけでも「それは難しいなー」と思うのは、自分の力で生活できて、異性に対する依存から解放されている女性がわざわざ結婚というイバラの道を選ぶわけがないと思うからだ。(イバラの道というのはちょっとオーバーな言い回しだが)
「私は結婚なんてしないわ」という何らかの思想とか信念によるものではなく、結婚したいと思う相手が見つからないからたまたましないだけでいる負け犬の方々に、「理想が高すぎるせい」だとか「完璧主義だから」だなどと決め付けるのは余りに酷な話だと思うわけだ。
だから、著者の発信する一つ一つの事柄や事象に、素直に肯かずにはいられない。

考えてみると私の周囲にいる負け犬の友人は、とても真面目で真摯に生きている。
決して贅沢な暮らしはしていないが、知的だし、質の高い自分磨きに余念がない。
反って、自営業のカレと結婚して二児の母親となった友人の方が、姑との関係悪化と子育ての悩みなどを抱えていて、何やら切実に思えてしまう。
まぁ、実際のところそれぞれに良い面、悪い面があって、甲乙つけがたいけれど、それでも30代以上・未婚・子ナシの友人を“負け犬”と呼ぶのは抵抗があるぐらい充実した生活ぶりだ。

著者・酒井順子の言うように、そんな負け犬は現代日本において、家庭を持たないことはまだまだ罪悪なのだ。
だから結婚もせず、子どもを産み育てていないような女性はずっと自分で自分を正当化しつつ生きていかなくてはならないらしい。
実際は、お金も時間も自分の自由にできる負け犬らは、どこかで勝ち犬らに遠慮し、気を使いながら、「すみませんねぇ、私、負け犬なんで」と、あくまで下でに出て、相手を立てることを忘れない。
先々のことを考えると、やっぱり寂しい独身女は同情される対象になりやすいようだが、いくら結婚していても老後になって嫁にいびり倒され、孤独で虚しい晩年を過ごす勝ち犬(?)も少なくはないことを知ると、「どっちもどっちだなー」とつくづく思ってしまう。
大切なのは、どちらの生き方もお互いに尊重し合うということだろうか?
読み易い文体と現代社会に即した内容は、読者を選ばないので、とりあえずの一読をすすめたいエッセイである。

『負け犬の遠吠え』酒井順子・著

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最終更新日  2013.11.02 05:56:49
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