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2014.09.13
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カテゴリ: 読書案内
【海音寺潮五郎/天と地と(上)】
20140913

◆優秀な人材こそ人を育て、国を盛り立てる
私が歴史上の人物で大好きなのは武田信玄で、その気持ちが揺らぐことはないと思っていた。
それは、こちらのブログでも取り上げた新田次郎による『武田信玄』を読んだことで、何やら戦国武将の熱い血潮と漲る野性に強烈な魅力を感じたからであった。
それがどうだ、人間の感情ほどあてにならぬものはない。
あれだけ傾倒していた武田信玄から、いとも簡単に上杉謙信に対して並々ならぬ興味を抱くことになろうとは!
もちろん、武田信玄に対する熱情が冷めたとか嫌いになったとかいう話ではなく、武田信玄も好きだが上杉謙信もまた好きだということなのだ。
たとえるなら、大沢たかおも好きだが福山雅治も好きだというような感覚である。(←わざわざたとえるほどのものではないけれど、、、)

前置きが長くなってしまい恐縮だが、私が上杉謙信という人物に興味を抱くきっかけを作ってくれたのは、海音寺潮五郎の『天と地と』という著書である。
海音寺潮五郎は国学院大学卒で、もともと中学校教員として勤務していた。
先生として働きながらの執筆活動で、多忙を極めながらも、よくぞあきらめずに創作を続けられたものだと、今さらながら敬意を払わずにはいられない。(後に教員を辞め、作家業一本にする。)

登場人物のセリフには力があり、読者がページを追うごとに行間から感じられる味わいが、もう何とも言えない。見事な筆致である。

『天と地と』(上)では上杉謙信の出生と、父から愛されることのなかった幼少期、だが生まれ持った聡明さと頑なまでの意思の強さなど、性格や性質が丁寧に描かれている。
あらすじはこうだ。

越後の守護代・長尾為景に男児が誕生した。
為景はこの時すでに63歳で、妻はまだ20歳であった。
年が孫ほどに離れていたが、美女として名高い姫君を妻妾としてもらい受けることに、何の申し分もなかった。
ところが嫁いで早、三月目にみごもったことが分かり、にわかに妻への疑惑が生じた。
みごもるには早すぎるのではないかと。
そんなあらぬ疑いに駆られたこともあり、生まれて来た男児を為景は愛さず、目もくれなかった。
この時の男児こそ後の上杉謙信である。
産後の肥立ちの悪かった為景の妻は、この後まもなく死んだ。

いよいよ越後は、お家騒動の危機に瀕した。
しかし、知将・宇佐美定行の筋の通った意見が通り、長尾為景の嫡男である晴景が新守護代として決定した。
この晴景は、景虎(後の謙信)にとって異母兄であったが、賢さに足りず、武勇にも長けてはいなかった。
とはいえ、武将の器たる気質を持ち合わせていた景虎は、この時まだ13歳。
いかんともしがたい立場にあった。


まず、守り役に就けられたのが忠臣・金津新兵衛である。
また、兵法の師として仰いだのが宇佐美定行。
さらには亡父の妻妾であった女傑・松江。
それらの優秀な人材が、景虎を支え、盛り立てたのだ。
不遇な幼少期を送った景虎が、世に出るまでの間に経験したであろうあれやこれやが、手に取るように分かる。
不朽の名作というのは、正にこういう作品をして言うのではなかろうか。
歴史ファン必読の書である。

『天と地と』(上) 海音寺潮五郎・著


☆次回(読書案内No.143)は海音寺潮五郎の「天と地と(中巻)」を予定しています。


コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から



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最終更新日  2014.09.13 06:07:26
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