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2014.12.20
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カテゴリ: 読書案内
【村松友視/幸田文のマッチ箱】
20141220

◆幸田露伴の娘・文についての世界観を探る
一般的な女子にとっての父親という存在は、ある年齢まではあこがれであり尊敬の対象であるが、いつのまにか嫌悪感を抱くようになるものだ。
何となく距離を置きたくなる存在とでも言おうか。
何かの本で読んだのだが、それは当然の帰結であるらしい。
遺伝子レベルで父娘の間違いを阻止するため、本能的に女子が父親を拒否するように作られているらしいのだ。
それはともかく、娘は父性によって守り抜かれる。
父の死ぬその日までーーー

幸田露伴は明治期の日本を代表する作家で、知らぬ者はないほどの天才作家である。
代表作に『小説神髄』や『五重塔』などがあり、格調高く壮大な表現力で読者を魅了した。
幸田文というのは、その露伴の娘であり、プレッシャーと闘いながらも自分流を貫いた女流作家なのだ。


村松友視は、慶応義塾大学文学部卒で、もともと中央公論社に入社したのだが、作家に転向。
代表作に『時代屋の女房』や『鎌倉のおばさん』などがある。
村松自身、数奇な生い立ちであり、祖父が村松梢風で、養子縁組をしていることもあり、友視が梢風の孫でありながら養子でもあるのだ。
これは私の勝手な解釈だが、実父が偉大にして著名な人物の幸田文に、村松は少なからず親近感を覚えたのではなかろうか。

あらすじと言っても、あくまで幸田文という作家がどのように形成されていったのか、その内側に迫るものなので、一口に紹介することはできない。
そんな中、私がとくに気に入ったのは、幸田文が銀行でもらうマッチ箱に千代紙を貼ってリビングに置いておくというくだりである。
銀行のマッチ箱は味気ないので、季節の千代紙を貼ってみるという幸田文。
何とチャーミングでピュアな女性なんだろう!
そしてそのマッチ箱に気付いた村松友視が、珍しがって「欲しい」と言うのだ。
それも幸田邸に来たたびにマッチ箱を手土産にもらって帰るというのが、ちょっとユニークではないか。

著名人の二世というと、何かともてはやされて七光を羨ましがられそうではあるが、現実はそうでもないらしい。

父である露伴から厳しい躾を受け、露伴の後妻(文にとっては継母)との関わりも、微妙な空気が流れる。
そういうデリケートな背景を踏まえながら一読すると、いっそう楽しめるかもしれない。
村松友視、渾身の傑作なのだ。

『幸田文のマッチ箱』村松友視・著


☆次回(読書案内No.153)は未定です、こうご期待♪


コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から



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最終更新日  2014.12.20 05:15:39
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