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2015.03.21
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カテゴリ: 映画/歴史・伝記
【ノア 約束の舟】
20150321

「辛いことだが、、、殺らねばならない。これが、、、正義なのだ」
「正義、、、? どこが? 一体どこが正義なの? 生まれてくる赤ん坊を殺すことが? もしあなたがそう言って、、、正義のために手を下すのなら、、、あなたは息子たちとイラを失い、、、私を失うことになるのよ、、、!」


タイトルだけを見ると、宗教色の強そうな作品に思える。
だが決してそんなことはない。
神話としての物語を、何やら壮大なヒューマン・ドラマに完成させている。
学生時代、機会があって聖書を読むことが度々あったのだが、“ノアの箱舟”は選ばれし人間の、真の救済のドラマとして捉えていた。
この大洪水によって、ノアの家族と一つがいずつの動物たちのみ生き残り、あとの人類は神の怒りをかい、呑み込まれてしまう、、、というのがオリジナル。
しかし、『ノア 約束の舟』においてはSFチックにも、泥でできた“ウォッチャーズ”と呼ばれる巨人が登場したり、実はそれらが神の楽園から追放された堕天使であり、さらに、ノアには心を許して箱舟づくりを手伝うという脚色がされている。
よくよく考えてみると、この作品におけるテーマは、「ノアの信仰心」なんかではない。
「ノアの神への絶対的信頼」でもない。
聖書解釈は、既存のものではないことだけは確かである。

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ノアがまだ少年だったころ、カインの末裔であり人間の王を名乗るトバル・カインは、ノアの目の前で父親を殺害した。
ノアはその場から必死になって逃げた。
成人したノアには、妻と3人の男の子に恵まれた。
ある晩、眠っていたノアは、恐ろしい夢をみる。
それは、神が堕落した人間を一掃するために、地上が大洪水に見舞われるというものだった。
ノアは、その夢を神のお告げであると信じ、箱舟をつくり始める。
そんな中、大地は枯れ、食料はなくなり、人間たちは争って肉を欲した。
女は犯され、子は口減らしに捨てられた。
宿敵トバル・カインは仲間を引き連れ、ノアのもとへやって来てその計画を知る。
そこで、ノアのつくった箱舟を我が物にしようとしたところ、泥の塊でできた“ウォッチャーズ”と呼ばれる巨人たちが立ちふさがるのだった。

ユダヤ教の選民思想を理解するのは、ちょっと難しい。

動物を助けていながら、どうして幼い子どもぐらいは助けてやらないのかと、常識人ならそう考えるだろう。
というのも、この時ノアは、一切の人間を救わなかったのだ。
つまり、唯一絶対の神のお告げは、いかなる例外も許されない。
神の意志は尊きものであり、絶対的であり、罪深き人間の命など、大した価値はないのである。
このへんを踏まえて鑑賞しないと、ユダヤ教に対する理解に苦しむ。


どの作品の主人公も、憑りつかれたように前のめりになっていく姿が、狂信的に描かれている。
『ノア 約束の舟』においても同様、神とのあまりにも密な関係が、果ては、冷酷非情な決断を迫られるシーンへと突入し、この作品のピークとなっている。

私は意外にも楽しむことができたが、人によっては嫌悪感をもよおす場合もあるかもしれない。
聖書物語の入門編としておすすめしたい。
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2014年公開
【監督】ダーレン・アロノフスキー
【出演】ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、エマ・ワトソン


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最終更新日  2015.03.21 07:20:19
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