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2016.03.20
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カテゴリ: 読書案内
【河合隼雄/こころの処方箋】
20160320

◆「常識」を知らない現代人のための指南書
こういう本は、まず自分から買い求めることはない。
どちらかと言えばこれまで興味がない分野だったからだ。
今回はたまたま大学生の息子が読了し、「なかなか良かった」とのことだったので、私も読んでみることにした。
『こころの処方箋』は“新刊ニュース”に1988年2月号から1991年12月号まで連載されたものである。
内容はエッセイとして万人に読み易いように工夫がこらされている。

著者の河合隼雄は兵庫県出身の臨床心理学者である。
京大理学部卒で、日本におけるユング派心理学の第一人者とのこと。(著者プロフィールによる。)
代表作に『母性社会日本の病理』等がある。

『こころの処方箋』は、大学生の息子が読むぐらいなので、いわゆる一般常識が平易にまとめられている。(著者自身のあとがきにも「常識を売物にして」いるとある。)

その理由はいろいろとあげられるけれど、ここでは省略する。

読んでみるとなかなか面白いことが書かれていた。
当たり前のことなのに、ふだんすっかり忘れているようなことである。
たとえば、

「人の心などわかるはずがない」
「ふたつよいことさてないものよ」
「マジメも休み休み言え」
「男女は協力し合えても理解し合うことは難しい」
「ものごとは努力によって解決しない」
「善は微に入り細にわたって行わねばならない」
「『昔はよかった』とは進歩についてゆけぬ人の言葉である」

「心配も苦しみも楽しみのうち」

などなど、カレンダーの標語になりそうな見出しで、それを読むだけでも力になりそうな言葉なのだ。
今を生きる若い人たち、あるいは見えない壁にぶち当たってもがいている人たちにお勧めいたいのは、「ものごとは努力によって解決しない」という“処方箋”である。
これは私自身にも覚えがあるのだが、自分なりにコツコツと努力を続けているにもかかわらず、一向にそれが報われないことがある。
あるいはその努力を誰も認めてくれない場合がある。

これは一体どういうことなんだろう?
著者が言うには、「確かにいくら努力しても報われないとか不運としか言いようがないとか、そのような人が居られることは事実」であるとのこと。
しかし翻って考えてみると、「努力すればうまくゆく」などということが本当に正しいのだろうか?
著者ははっきり名言する。
「人間が自分の努力によって、何でも解決できると考える方がおかしいのではないか」
この言葉は、目から鱗が落ちる思いだった。
もちろん、だからと言って一切の努力を放棄して問題を投げ出してしまうことが良策だとは思わない。
河合隼雄が言おうとしているのは、努力をすることが目標なのではないし、解決などというものは、「しょせん、あちらから来るもの」だから、そんなことを目標にするな、と言うことなのである。

つまり、「せいぜい努力でもさせて頂き」、やるだけやってみるか、ぐらいの気持ちでいるのが望ましいというわけだ。
肩肘張らず、自分のできる範囲内で頑張ってみて、その後、「ひょっとして解決でも訪れたら、嬉しさこの上なし」というスタンスがベターなのではと述べている。

4月からフレッシュマンとして社会人スタートを切る皆さん、何らかの問題にぶつかったとき、「自分の努力が足りないからだ」と不必要に自分を責めることなく、また努力ということばに踊らされることなく、がんばって下さい!
メンタルが疲れたなぁと思ったら、枕元に『こころの処方箋』を置いて、憂鬱な五月病を乗り越えて下さいね!

『こころの処方箋』河合隼雄・著



コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から



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最終更新日  2016.03.20 07:40:04
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